電極部および組織刺激システム
【課題】長期間にわたり埋植する場合にも線状組織への負担の少ない電極部を提供する。
【解決手段】所定の線状組織Nを取り巻くように湾曲した湾曲形状に形成された電極部1であって、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材2と、絶縁部材2が湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面2aに設けられ電圧を印加可能な少なくとも2つの電極3と、を備え、湾曲形状の自然状態での内径が線状組織Nの外径より大きく設定され、絶縁部材2および少なくとも2つの電極3は、線状組織Nから離間してそれぞれ配置される。
【解決手段】所定の線状組織Nを取り巻くように湾曲した湾曲形状に形成された電極部1であって、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材2と、絶縁部材2が湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面2aに設けられ電圧を印加可能な少なくとも2つの電極3と、を備え、湾曲形状の自然状態での内径が線状組織Nの外径より大きく設定され、絶縁部材2および少なくとも2つの電極3は、線状組織Nから離間してそれぞれ配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状組織に電気的刺激を与える電極部および組織刺激システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、神経刺激装置、疼痛緩和装置、てんかん治療装置、および筋肉刺激装置などの、電気的刺激を直接または間接的に神経組織および筋肉などの生体組織(線状組織)に与え、治療を行う刺激発生装置が知られている。これらの刺激発生装置は内部に電源を有していて、電気的刺激を伝達する電極リードとともに生体に埋め込まれて使用される。
一般に、電極リードは、生体組織に電気的刺激を与え、もしくは生体組織に生じる電気的興奮を検出するための少なくとも1つの電極部と、刺激発生装置と電気的に接続するための電気コネクタと、電極部と刺激発生装置との間に設けられ電気的刺激を伝達するためのリードボディとを有している。
【0003】
特許文献1に記載された神経刺激用の電極アセンブリ(電極部)は、螺旋状に形成された電極構造体と、電極構造体の螺旋の内側となる面に配置された2つの電極とを有している。
電極構造体は、伸縮可能な生体適合材料で形成されている。2つの電極は、神経組織の軸線に対して螺旋状に配置されるとともに、神経組織の外周面のほぼ全周にわたり接触するように構成されていて、電極アセンブリはスクリュー型と呼ばれる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4979511号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電極アセンブリのように電極が直接神経組織に接触する場合、たとえば、数週間以上という長期間にわたり埋植すると、電極に対する生体の異物反応による炎症により、電極と神経組織との間に石灰化した線維被膜が形成され、インピーダンスが上昇して電気的な刺激効果が減少したり、電極と神経組織の間に成長する線維組織が神経組織を圧迫して神経組織を損傷したりする可能性がある。このため埋植後に時間が経過するにつれて、電極による電気的な刺激効果が減少する問題が懸念されている。
この問題は、電極アセンブリがスクリュー型に構成されている場合に限らず、電極が神経組織の軸線回りに配置されるように構成されたカフ型である場合においても生じている。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、長期間にわたり埋植する場合にも線状組織への負担の少ない電極部、およびこの電極部を備える組織刺激システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の電極部は、所定の線状組織を取り巻くように湾曲した湾曲形状に形成された電極部であって、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ電圧を印加可能な少なくとも2つの電極と、を備え、前記湾曲形状の自然状態での内径が前記線状組織の外径より大きく設定され、前記絶縁部材および少なくとも2つの前記電極は、前記線状組織から離間してそれぞれ配置されることを特徴としている。
【0008】
また、上記の電極部において、前記絶縁部材には、自身の厚さ方向に貫通するとともに少なくとも2つの前記電極間に隙間を形成する貫通孔が形成されていることがより好ましい。
また、上記の電極部において、前記絶縁部材における、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときの湾曲の軸線方向側の縁部は、前記絶縁部材の前記軸線方向における中間部から縁部に向かうにしたがって前記軸線から離間するように形成されていることがより好ましい。
また、上記の電極部において、前記絶縁部材の縁部には、前記絶縁部材の厚さ方向に貫通する切欠き部が形成されていることがより好ましい。
【0009】
また、上記の電極部において、前記絶縁部材には、前記一方の面および前記一方の面とは反対側の面の少なくとも一方に、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときの湾曲の軸線方向に平行に延びる溝部が形成されていることがより好ましい。
また、上記の電極部において、前記絶縁部材は、外力が作用していない自然状態において、自身が湾曲する湾曲方向の両縁部が互いに一定距離離間するように形成されていることがより好ましい。
また、上記の電極部において、前記絶縁部材は、前記湾曲形状であるときに湾曲の軸線方向に平行に見たときに、前記一方の面が長円形状となるように形成されていることがより好ましい。
【0010】
また、上記の電極部において、前記絶縁部材の前記一方の面から突出して設けられ、前記一方の面を前記線状組織から離間させる突出部を備えることがより好ましい。
また、本発明の他の電極部は、所定の線状組織を取り巻くように湾曲した湾曲形状に形成された電極部であって、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ電圧を印加可能な少なくとも2つの電極と、前記絶縁部材の湾曲方向の両縁部間に配置され、前記絶縁部材および少なくとも2つの前記電極を前記線状組織から離間させる隙間保持部材と、を備えることを特徴としている。
また、本発明の組織刺激システムは、上記のいずれか一項に記載の電極部と、前記線状組織に付与する電気的刺激を発生させる刺激発生部と、前記電極部と前記刺激発生部とを電気的に接続するリードと、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電極部および組織刺激システムによれば、長期間にわたり埋植する場合であっても電極による電気的刺激効果が低減するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図2】同電極部の湾曲を伸ばして平坦形状にしたときの斜視図である。
【図3】同電極部を神経組織に取付けたときの状態を説明する断面図である。
【図4】同電極部を備える組織刺激システムの平面図である。
【図5】患者の神経組織の状態を示す図である。
【図6】同組織刺激システムを用いた電極埋植方法を説明する図である。
【図7】同組織刺激システムを用いた電極埋植方法を説明する図である。
【図8】従来の電極部を埋植した直後における電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図9】従来の電極部を埋植して長期間経過したときの電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の電極部を埋植した直後における電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図11】同電極部を埋植して長期間経過したときの電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図12】同電極部が捻れた場合の状態を説明する断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図14】同電極部の湾曲を伸ばして平坦形状にしたときの斜視図である。
【図15】従来の電極部を埋植して長期間経過したときの電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図16】本発明の第2実施形態の電極部を埋植した直後における電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図17】同電極部を埋植して長期間経過したときの電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図18】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図19】同電極部の湾曲を伸ばして平坦形状にしたときの斜視図である。
【図20】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図21】図20中の切断線A1−A1の断面図である。
【図22】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図23】図22中の切断線A2−A2の断面図である。
【図24】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図25】図24中の切断線A3−A3の断面図である。
【図26】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図27】図26中の切断線A4−A4の断面図である。
【図28】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図29】図28の縦断面図である。
【図30】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図31】図30中の切断線A5−A5の断面図である。
【図32】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図33】本発明の実施形態の変形例における電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図34】図33中の切断線A6−A6の断面図である。
【図35】本発明の実施形態の変形例における電極部を神経組織に取付けたときの状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電極部の第1実施形態を、図1から図12を参照しながら説明する。この電極部は、たとえば、神経組織などの線状組織に電圧を印加するためのものである。
本実施形態の電極部1は、図1に示すように、外力が作用していない自然状態で神経組織Nを取り巻くように湾曲した湾曲形状となるように形成されているとともに、外力を加えることで、図2に示すように平坦に延びた平坦形状に変形可能となっている。図1および図2に示すように、電極部1は、弾性材料でシート状に形成された電極支持体(絶縁部材)2と、電極支持体2が湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面2aに露出した状態で設けられ、電圧を印加可能な一対の電極3とを備えている。
【0014】
電極支持体2は、神経組織Nを損傷させないように、シリコーンゴムなどの柔らかい絶縁材料で形成されている。電極支持体2は、電極3を流れる電流が外部に漏れるのを防止するためのものである。
一対の電極3は、電極支持体2が湾曲形状であるときの湾曲の軸線C1方向に間隔をあけて、電極支持体2が湾曲する湾曲方向D1に平行に延びるように設けられている。電極3は弾性を有し生体適合性の高い金属などで形成され、自然状態で湾曲形状に形成されている。つまり、本実施形態では、電極3の弾性力により、電極部1の形状は自然状態で湾曲形状になって電極支持体2と神経組織Nとの間の隙間が維持されるとともに、平坦形状に変形できる。本実施形態では、電極部1はいわゆるカフ型の構成となっている。
図3に示すように、外径L1が、たとえば1.5mmの神経組織Nに対して電極部1を用いる場合、湾曲形状であるときの内径L2が2.5mmである電極部1を選択して、神経組織Nに対して一方の面2aが概ね全周にわたって0.5mm程度離間した状態で使用することが好ましい。さらに一般的には、神経組織Nの外径L1に対して、0.2mm以上2mm以下内径の大きな電極部1を選択することが好ましい。
【0015】
続いて、本実施形態の電極部1を備える組織刺激システムについて説明する。
本組織刺激システム10は、図4に示すように、前述の電極部1と、神経組織Nに付与する電気的刺激を発生させる神経刺激装置(刺激発生部)11と、電極部1と神経刺激装置11とを電気的に接続するリードボディ(リード)12とを備えている。
神経刺激装置11は不図示の電源を有し、神経組織Nが発生する電気的信号を一対の電極3間の電位差として検出する。神経刺激装置11は、一対の電極3の一方を陽極、他方を陰極として機能させ、一対の電極3間に所定の電位差を生じさせる。これにより、神経刺激装置11は、電極部1が取得した神経組織Nの信号を検出し、必要に応じてこの神経組織Nに電位差による電気的刺激を与えることができる。
リードボディ12は公知の構成のものが用いられ、たとえば、電極3と神経刺激装置11とを電気的に接続する不図示のコイルと、コイルの外周を覆う絶縁性で可撓性を有するチューブ13とを有している。
【0016】
次に、以上のように構成された組織刺激システム10を用いて、図5に示すような、たとえば、胸腔内上大静脈上迷走神経である神経組織Nに電極部1を取付ける電極埋植方法について説明する。
まず、術者は処置対象となる神経組織Nを特定する(特定工程)。具体的には、患者の胸部に不図示のトロッカーを取付け、トロッカーを通して胸腔鏡を胸腔内に挿入する、胸腔の内部を胸腔鏡で観察し、処置を行う神経組織Nを特定する。そして、トロッカー経由で胸腔内に不図示のナイフなどの切開用処置具を挿入し、所望の神経組織Nの周辺に位置する膜などの周辺組織M(図5参照)を切開して神経組織Nを露出させる。
【0017】
次に、特定した神経組織Nの外径より内径が所定長さ大きい電極部1を選択する(選択工程)。すなわち、特定工程で特定した神経組織Nを胸腔鏡で観察し、この神経組織Nの外径を測定する。そして、図3に示すように、たとえば神経組織Nの外径が1.5mmだった場合、湾曲形状であるときの内径L2が2.5mmである電極部1を選択する。このように、取付ける神経組織Nの外径に対して、内径が約1mm大きい電極部1を選択することが好ましい。そして、選択した電極部1をリードボディ12に接続して、組織刺激システム10を構成する。
続いて、湾曲形状である電極部1を平坦形状に伸ばす(平坦化工程)。図6に示すように、湾曲形状となっている電極支持体2の湾曲方向D1の縁部(基端側)2bを把持鉗子Tにより把持した状態で、トロッカーを通して電極部1を胸腔内に挿入する。さらにトロッカーから挿入した不図示の把持鉗子で電極支持体2の縁部2bとは反対側の縁部(先端側)2cを把持し、両把持鉗子により電極部1の湾曲を伸ばすように所定のトルクを作用させることで電極部1を平坦形状に伸ばす。
次に、平坦形状に変形させた電極部1の縁部2cを、神経組織Nと周辺組織Mとの間に挿入する(位置決め工程)。このとき、縁部2cを把持していた把持鉗子を電極支持体2から取外しながら、電極部1の縁部2cを神経組織Nと周辺組織Mとの間に潜り込ませていく。電極部1における作用されていたトルクが解除された縁部2c側の部分は、神経組織Nを取り巻くような元の湾曲形状に戻る。
【0018】
続いて、把持鉗子Tを操作しながら、図3に示すように電極部1を、神経組織Nを取り巻くように配置された湾曲形状に戻し、電極部1を胸腔内に留置する(留置工程)。このとき、神経組織Nと電極部1が一定距離離間した状態で、電極部1を留置するようになっている。この後で、図7に示すように、周辺組織Mを縫合糸Uなどで縫合し、電極部1を体内に埋込む。
【0019】
次に、以上のように体内に埋植されてから長期間経過したときの電極部1の周辺組織の状態を、従来の電極部と比較しながら説明する。
最初に、従来の電極部について、電極部がカフ型の構成である場合で説明する。
図8に示すように、従来の電極部E1では、湾曲形状である電極支持体E2の内側の面に設けられた電極E3は、神経組織Nの外周面のほぼ全周にわたり接触するように、神経組織Nに密着させた状態で配置される。電極部E1を埋植した後、電極部E1に対して異物反応が発生し、電極部E1と接触する組織から不図示の線維組織が成長する。電極部E1では、電極支持体E2と神経組織Nとの間に十分な隙間が無いため、成長する線維組織に栄養を供給する血管などは成長することができずに線維組織は壊死し、壊死細胞はリン酸カルシウム沈着の核となり、線維組織は石灰化する。石灰化した組織は通常の線維組織に比べて硬く、インピーダンスも高い。
また、心臓の拍動や体動などで電極部E1が動く場合、電極部E1と神経組織Nとは擦れ合い、炎症を引き起こす。電極部E1を埋植して長期間経過したときには、図9に示すように、電極部E1の周囲のみならず、神経組織Nの周囲にも石灰化した線維組織N1が成長し、神経組織Nを圧迫する。その結果、最終的には神経組織Nが壊死し、電極部E1による電気的な刺激効果が低減したり、消失したりする。
【0020】
続いて、本実施形態の電極部1を埋植した場合について説明する。
電極部1を埋植した場合、図10に示すように、神経組織Nは、電極部1と接触することなく電極部1に挿通された状態、すなわち、電極支持体2の一方の面2aから離間して隙間S1が形成された状態となる。電極部1を埋植する術後に、隙間S1は、血液などの不図示の浸出液で満たされる。浸出液には導電性があり、浸出液に電流を流すことで神経組織Nの電気刺激は可能である。ただし、電極部1は浸出液を介して神経組織Nに間接的に接続されているので、心臓の拍動などにより電極部1が動いても、神経組織Nに外力は加わらない。
【0021】
そして、電極部1を埋植して長期間経過したときには、図11に示すように、電極支持体2と神経組織Nとの隙間S1は線維組織N1で埋められる。この時、神経組織Nに栄養を供給するための血管も隙間S1に形成されるため、線維組織N1の石灰化は引き起こされにくい。
また、成長した線維組織N1は柔軟な組織であり、神経組織Nを保持するクッション(緩衝材)の役割を果たす。このため、たとえば、図12に示すように、電極部1が外力により捻れた場合であっても、神経組織Nの周囲に配置された線維組織N1が神経組織Nの変形の仕方を緩やかにすることで、神経組織Nが損傷することが抑えられる。この線維組織N1は、従来の電極部E1を理植したときに発生していた石灰化した組織に比べてインピーダンスは低く、電極部1により神経組織Nを電気的に刺激することが可能である。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の電極部1によれば、電極部1は、絶縁部材2の一方の面2aが神経組織Nに対して離間した状態で、神経組織Nを取り巻くように配置される。このため、電極支持体2と神経組織Nとの間に隙間S1が形成され、この隙間S1に線維組織N1とともに、神経組織Nに栄養を供給するための血管も形成される。したがって、線維組織N1の石灰化が抑制され、電極部E1を長期間にわたり理植したときの神経組織Nへの負担を低減させることができる。
また、本実施形態の組織刺激システム10によれば、電極部1の一対の電極3およびリードボディ12を介することで、神経組織Nが発生する電気的信号を神経刺激装置11で検出するとともに、神経刺激装置11により神経組織Nに電気的刺激を印加することができる。
【0023】
なお、本実施形態の組織刺激システムを用いずに、通常の神経刺激装置を用いる方法も考えられる。この場合、電極支持体2と神経組織Nとの間に隙間を形成することで、繊維組織の石灰化を抑制し、電極部を長期間にわたり理植したときの神経組織Nへの負担を低減させる。
この場合、上記の組織刺激システム10と同様に、特定した神経組織Nの外径より内径が所定長さ大きい電極部を選択する(選択工程)。次に、電極部を、神経組織Nと周辺組織Mとの間に挿入する(位置決め工程)。そして、神経組織Nと電極部が、一定距離離間した状態で、電極部を留置するように行う(留置工程)。以上の工程を行うことで、どのような形状の電極であっても、電極支持体2と神経組織Nとの間に隙間を形成することができる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図13から図32を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図13および図14に示すように、本実施形態の電極部21は、前記第1実施形態の電極部1の電極支持体2に代えて、電極支持体22を備えている。
絶縁部材22には、絶縁部材22の厚さ方向に貫通するとともに一対の電極3間に隙間S2を形成する貫通孔22aが形成されている。
貫通孔22aは、電極支持体22に湾曲方向D1に延びるように形成されている。
【0025】
次に、このように構成された電極部21を神経組織Nに取付けたときの電極部21の周辺組織の状態を、前述の従来の電極部E1と比較しながら説明する。
従来の電極部E1を神経組織Nに取付けた場合、電極支持体E2と神経組織Nとの間に十分な隙間が無いため、神経組織Nが損傷する問題に加えて、線維組織N1が石灰化することにより線維組織N1のインピーダンスが上昇する問題が生じる。線維組織N1のインピーダンスが上昇することで神経組織Nに電流が流れにくくなり、線維組織N1を刺激する効果が減少する。通常、電流は一方の電極3から他方の電極3まで様々な経路を通って流れる。神経組織Nを通る経路のインピーダンスが他の経路のインピーダンスより小さいときに、神経組織Nの刺激が可能となる。
【0026】
従来の電極部E1を埋植して長期間経過したときには、図15に示すように、神経組織Nの周りにインピーダンスの高い石灰化した線維組織N1が発生することで、神経組織Nを通る電流経路のインピーダンスは上昇する。電極部E1と神経組織Nとの界面では、浸出液N2が発生することがある。一般的に、浸出液は血液や体液であり、線維組織に比べてインピーダンスが低い。このため、電流は一方の電極E3から浸出液N2を通して他方の電極E3に流れ(図15中に、実線で示した矢印)、神経組織Nを流れる電流は更に少なくなり、神経組織Nの刺激効果が減少する。なお、図15から図17中、実線で示した矢印は電流が流れる経路を示し、点線で示した矢印は電流が流れない経路を示す。
従来の電極部E1には本実施形態の電極部21のように貫通孔22aが形成されていないので、線維組織N1は、電極支持体E2の端面E4から徐々に成長する。電極支持体E2の軸線C2方向の長さが比較的長い場合には、線維組織N1の成長に時間がかかるために神経組織Nの周囲にある線維組織N1の細胞に栄養が行かず、この線維組織N1の細胞が壊死することがある。神経組織Nの周囲の細胞の壊死は、線維組織N1の細胞の石灰化を進める。
【0027】
続いて、本実施形態の電極部21を埋植した場合について説明する。
電極部21を埋植した直後には、図16に示すように、電極部21と神経組織Nとの間には隙間S3があり、この隙間S3は浸出液N2で満たされている。一対の電極3間に電圧を印加すると電流が様々な経路を通って流れるが、浸出液N2は導電液なので神経組織Nを電気的に刺激することが可能である。
電極部21を埋植して長期間経過すると、図17に示すように、電極部21の周囲に線維組織N1が成長する。前述の従来の電極部E1と同様に、本実施形態の電極部21においても、電極部21と線維組織N1との界面に浸出液N2が発生する可能はある。しかし、電極部21と神経組織Nとの間に隙間S3があり一対の電極3が浸出液N2で接続されることがないので、神経組織Nに電流が流れることなく浸出液N2を通して一対の電極3間に電流が流れることが防止される。
この場合、一対の電極3間でインピーダンスが最も低いのは、神経組織Nを経由する経路となり、神経組織Nを電気的に刺激することが可能である。一対の電極3間の距離に対する電極3と神経組織Nとの距離の比が1/2以上である場合には、神経組織Nを通らない経路に流れる電流量が増えて神経組織Nを刺激する効率が悪くなるため、一対の電極3間の距離に対する電極3と神経組織Nとの距離の比は1/2より小さいことが望ましい。
【0028】
このように構成された本実施形態の電極部21によれば、長期間にわたり埋植する場合であっても電極3による電気的刺激効果が低減するのを防止することができる。
さらに、貫通孔22aにより一対の電極3間に隙間S2が形成されているので、隙間S2を埋める線維組織N1の成長が早まって壊死組織が発生しにくくなり、線維組織N1の石灰化を防ぎインピーダンスの上昇が防止される。これにより、神経組織Nを確実に電気的に刺激することができる。
【0029】
なお、図18および図19に示す電極部31のように、電極支持体22の一方の面2aに湾曲方向D1に平行に延びるとともに軸線C1方向に間隔をあけた3つの電極3を備えるときには、軸線C1方向に隣合う一対の電極3の間にそれぞれ貫通孔22aを形成してもよい。
電極部に4つ以上の電極3を備える場合も同様である。
【0030】
本実施形態では、電極部21の構成を以下に説明するように様々に変形させることができる。
たとえば、図20および図21に示す電極部41のように、電極支持体22における一対の電極3の間に、前記第2実施形態の電極部21の貫通孔22aに代えて、電極支持体22の厚さ方向に見たときに略円形の一対の貫通孔22bを形成してもよい。本変形例では、一対の貫通孔22bは、電極部41が湾曲形状であるときに軸線C1を挟んで対向するように形成されている。
また、図22および図23に示す電極部51のように、電極支持体22に、電極支持体22の厚さ方向に貫通する多数の貫通孔22cを形成してもよい。貫通孔22cの内径は、前記変形例の電極部41の貫通孔22bの内径より小さく設定されている。
【0031】
図24および図25に示す電極部61のように、電極支持体22における一対の電極3の間に、複数の貫通孔22dを形成するとともに、電極支持体22の軸線C1方向の縁部に、電極支持体22の厚さ方向に貫通する複数の切欠き部22eを形成してもよい。本変形例では、貫通孔22dは、長径が軸線C1方向に設定された長孔状に形成されている。
電極部41、51、61をこのように構成することで、電極部61と神経組織Nとの間に成長する線維組織N1に栄養を容易に供給し、神経組織Nが壊死するのを防止することができる。
また、電極部41、51、61のように構成することで、電極部から漏れる電流を低減させることができる。
【0032】
図26および図27に示す電極部71において、電極支持体22は、外力が作用していない自然状態において、湾曲方向D1側の両縁部22h、22iが互いに一定距離離間するように形成されている。両縁部22h、22iが離間する距離Bは、神経組織Nの外径L1より短い値、神経組織Nの外径L1より長い値など、適宜設定することができる。心臓の拍動などで動く神経組織Nに電極部71を取付ける場合には、距離Bは外径L1より短いことが好ましい。一方で、電極部71を取付ける神経組織Nがほとんど動かない場合には、距離Bは外径L1より長いことが好ましい。
なお、両縁部22h、22iの内面から延びる面が互い略平行に配置されている場合には、距離Bが電極支持体22における湾曲形状の自然状態での内径となる。
電極部71をこのように構成することで、神経組織Nに電極部71を取付けるときに、電極部71を平坦形状に変形させる必要がなくなるため手技が簡単になり、手技において神経組織Nを損傷させる可能性を低減することができる。
ただし、電極支持体22が、たとえば、シリコーンゴムのような、比較的弾性係数の小さな弾性体のみで形成されていると神経組織Nと電極部71との隙間を維持することが困難であるため、電極支持体そのものの剛性を高めるか、電極支持体の内部に電極支持体が湾曲形状を維持するための不図示の形状維持部材などの構造体を有するように構成してもよい。
【0033】
また、電極部71を神経組織Nに取付けた後で、電極支持体22の外周面に縫合糸を巻きつけたり、電極支持体22の外周面にバネクリップを取付けたりすることで、電極部1と神経組織Nとを離間させつつ、電極部71の両縁部22h、22iを互いに当接した状態に保持してもよい。縫合糸は、ポリプロピレンなどの生体適合性の高い材料で形成されていることが好ましく、バネクリップは、NiTiなどの生体適合性の高い材料で形成されていることが好ましい。
縫合糸を用いる場合には、電極支持体22の外周面に周方向に溝を形成しておくことが好ましい。このように構成することで、縫合糸が電極支持体22の外周面上で軸線C1方向に移動するのを防止し、電極支持体22から縫合糸が外れるのを防ぐことができる。
【0034】
図28および図29に示す電極部81のように、電極支持体22における軸線C1方向側の縁部22j、22kは、電極支持体22の軸線C1方向における中間部から縁部に向かうにしたがって軸線C1から離間するように形成されていてもよい。本実施例の電極支持体22は、軸線C1方向において、縁に向かうにつれて細くなるテーパー形状になっていることで、軸線C1から離間するように形成されている。
一般的に、電極支持体22において一対の電極3より外側の部分を長くすることによって、電極支持体22から外部へ漏れる電流を減らすことができる。本変形例の電極部81は縁部22j、22kを有することで、電極支持体22において一対の電極3より外側の部分が長いときに、電極部81が外力により捻れた場合であっても、神経組織Nが損傷することを抑えることができる。
なお、電極支持体22の中間部から縁部に向かうにしたがって軸線C1から離間するように形成された縁部は、軸線C1方向の少なくとも一方に形成されていればよい。
【0035】
また、図30および図31に示す電極部91のように、電極支持体22において、一方の面2aおよび一方の面2aの反対側の面となる他方の面2dにおける湾曲方向D1側の縁部22hには、軸線C1方向に平行に延びる切断溝(溝部)22lが形成されていてもよい。本変形例では、電極支持体22内に、電極支持体22の湾曲方向D1側の両縁部22h、22iを湾曲方向D1に互いに近づけるように付勢し当接させるバネ部材92が内蔵されている。
一般的に、神経組織Nは部位や患者により外径が異なるため、神経組織Nの外径に合わせて電極部の内径を変えて隙間を適切に調節できることが望ましい。電極部91をこのように構成することで、神経組織Nの外径が当初の予測より小さい場合であっても、切断溝22lに沿って電極支持体22を切り取ることで湾曲形状であるときの電極支持体22の内径が小さくなり、電極部91から神経組織Nまでの距離を調節することができる。
さらに、外径の異なる神経組織Nに対応させるために必要な電極部の種類を少なくすることができる。
【0036】
なお、切断溝22lは、一方の面2aおよび他方の面2dの少なくとも一方に形成されていればよい。
また、電極部に、電極支持体が湾曲する曲率半径を大きくする方向で湾曲形状を調節可能な調節機構を備えてもよい。
【0037】
図32に示す電極部101のように、絶縁部材22が湾曲形状であるときに軸線C1方向に平行に見たときに、一方の面2aが長円形状となるように形成されていてもよい。たとえば、神経組織Nの外径L1が1.5mmの場合、一方の面2aの形状は、長径が2.5mmであって短径が1.5mmの長円形状とする。
一般的に、神経組織Nの断面は円形に近い形状となっているので、電極部101をこのように構成することで、一方の面2aの長径側において電極部101と神経組織Nとの間に隙間が確実に形成される。このため、線維組織N1の石灰化を防ぎ、神経組織Nを確実に電気的に刺激することができる。
なお、本変形例では、軸線C1方向に平行に見たときに、一方の面2aが長円形状となるように形成されているとした。しかし、一方の面2aの形状は長円形状に限ることなく、一方の面2aは、たとえば数学的(幾何学的)な楕円形状のように、自身の互いに交差する2つの径の長さが互いに異なるように形成されていればよい。
【0038】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、電極の厚さが薄い場合など、電極の弾性力だけでは電極支持体と神経組織Nとの間の隙間を維持しにくい場合には、図33および図34に示すように、針金などの線材で形成された形状維持部材105を電極支持体が内蔵するように構成してもよい。
形状維持部材105としては、生体適合性があり、弾性変形可能なニッケルチタンなどの形状記憶合金を用いることが望ましい。形状維持部材105の外径は、0.2mm程度が好ましい。
【0039】
また、前記第1実施形態および第2実施形態において、電極部に、絶縁部材の湾曲方向D1の両縁部間に配置され、絶縁部材および一対の電極3を線状組織Nから離間させる隙間保持部材を備えるように構成してもよい。隙間保持部材の湾曲方向D1における長さは、処置対称となる線状組織Nの外径に応じて適宜調節して用いる。
この隙間保持部材を備える組織刺激システムを用いて、線状組織Nに電極部を取付ける電極埋植方法は以下のようになる。なお、前記第1実施形態において説明した電極埋植方法と共通する部分は説明を省略する。
まず、術者は処置対象となる神経組織Nを特定する(特定工程)。
次に、電極部の先端側を線状組織Nと周辺組織Mとの間に挿入する(設置工程)。このとき、電極部を一度平坦形状に伸ばしてから挿入してもよい。
続いて、電極部の先端側と基端側との間に不図示の隙間保持部材を配置することで、電極部を線状組織Nから離間させ、この状態で電極部を胸腔内に留置する(介装工程)。
【0040】
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、図35に示すように、電極支持体2が、一方の面2aから突出して設けられ一方の面2aを神経組織Nから離間させる突出部106を備えてもよい。
突出部106は、湾曲形状であるときの電極支持体2の軸線C1を挟んで対向する位置に配置されているとともに、神経組織Nとの接触面積が小さく設定されていることが好ましい。
突出部106が軸線C1を挟んで対向する位置に配置されていることで、一方の面2aを神経組織Nから確実に離間させることができる。また、突出部106と神経組織Nとの接触面積が小さく設定されていることで、神経組織Nに与える影響を低減させることができる。
【0041】
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、電極支持体を、線維組織は通らないが酸素などのガスと体液が透過可能な微細な孔が形成されたメッシュ構造としてもよい。さらに、1つの電極を備える電極支持体を、接続部材などで複数接続することで電極部を構成してもよい。
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、線状組織を神経組織Nとしたが、線状組織はこれに限られることなく、血管や筋肉などの他の線状の生体組織にも適用することができる。
【0042】
また、本発明には、以下のものが含まれる。
〔付記項1〕
処置対象となる線状組織を特定する特定工程と、
特定した前記線状組織の外径より内径が所定長さ大きい電極部を選択する選択工程と、
前記電極部の先端側を前記線状組織と、前記線状組織の周辺に位置する周辺組織との間に挿入する位置決め工程と、
前記線状組織と前記電極部が一定距離離間した状態で、前記電極部を留置する留置工程と、
を備えることを特徴とする電極埋植方法。
【0043】
〔付記項2〕
外力が作用していない自然状態で所定の線状組織を取り巻くように湾曲した湾曲形状となるように形成され、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ所定の電圧を印加可能な電極と、を備える電極部を用いる電極埋植方法であって、
処置対象となる線状組織を特定する特定工程と、
特定した前記線状組織の外径より内径が所定長さ大きい前記電極部を選択する選択工程と、
前記湾曲形状である前記電極部を平坦形状に伸ばす平坦化工程と、
前記平坦形状に変形させた前記電極部の先端側を前記線状組織と、前記線状組織の周辺に位置する周辺組織との間に挿入する位置決め工程と、
前記電極部を前記平坦形状から前記線状組織を取り巻くように配置された前記湾曲形状に戻し、前記電極部を留置する留置工程と、
を備えることを特徴とする電極埋植方法。
【0044】
〔付記項3〕
処置対象となる線状組織を特定する特定工程と、
電極部の先端側を、前記線状組織と前記線状組織の周辺に位置する周辺組織との間に挿入する設置工程と、
前記電極部の先端側と基端側との間に隙間保持部材を配置することで、前記電極部を前記線状組織から離間させる介装工程と、
を備えることを特徴とする電極埋植方法。
【符号の説明】
【0045】
1、21、31、41、51、61、71、81、91、101 電極部
2、22 電極支持体(絶縁部材)
2a 一方の面
3 電極
10 組織刺激システム
11 神経刺激装置(刺激発生部)
12 リードボディ(リード)
22a 貫通孔
22e 切欠き部
22h、22i、22j、22k 縁部
106 突出部
C1 軸線
D1 湾曲方向
N 神経組織(線状組織)
S2 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状組織に電気的刺激を与える電極部および組織刺激システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、神経刺激装置、疼痛緩和装置、てんかん治療装置、および筋肉刺激装置などの、電気的刺激を直接または間接的に神経組織および筋肉などの生体組織(線状組織)に与え、治療を行う刺激発生装置が知られている。これらの刺激発生装置は内部に電源を有していて、電気的刺激を伝達する電極リードとともに生体に埋め込まれて使用される。
一般に、電極リードは、生体組織に電気的刺激を与え、もしくは生体組織に生じる電気的興奮を検出するための少なくとも1つの電極部と、刺激発生装置と電気的に接続するための電気コネクタと、電極部と刺激発生装置との間に設けられ電気的刺激を伝達するためのリードボディとを有している。
【0003】
特許文献1に記載された神経刺激用の電極アセンブリ(電極部)は、螺旋状に形成された電極構造体と、電極構造体の螺旋の内側となる面に配置された2つの電極とを有している。
電極構造体は、伸縮可能な生体適合材料で形成されている。2つの電極は、神経組織の軸線に対して螺旋状に配置されるとともに、神経組織の外周面のほぼ全周にわたり接触するように構成されていて、電極アセンブリはスクリュー型と呼ばれる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4979511号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電極アセンブリのように電極が直接神経組織に接触する場合、たとえば、数週間以上という長期間にわたり埋植すると、電極に対する生体の異物反応による炎症により、電極と神経組織との間に石灰化した線維被膜が形成され、インピーダンスが上昇して電気的な刺激効果が減少したり、電極と神経組織の間に成長する線維組織が神経組織を圧迫して神経組織を損傷したりする可能性がある。このため埋植後に時間が経過するにつれて、電極による電気的な刺激効果が減少する問題が懸念されている。
この問題は、電極アセンブリがスクリュー型に構成されている場合に限らず、電極が神経組織の軸線回りに配置されるように構成されたカフ型である場合においても生じている。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、長期間にわたり埋植する場合にも線状組織への負担の少ない電極部、およびこの電極部を備える組織刺激システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の電極部は、所定の線状組織を取り巻くように湾曲した湾曲形状に形成された電極部であって、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ電圧を印加可能な少なくとも2つの電極と、を備え、前記湾曲形状の自然状態での内径が前記線状組織の外径より大きく設定され、前記絶縁部材および少なくとも2つの前記電極は、前記線状組織から離間してそれぞれ配置されることを特徴としている。
【0008】
また、上記の電極部において、前記絶縁部材には、自身の厚さ方向に貫通するとともに少なくとも2つの前記電極間に隙間を形成する貫通孔が形成されていることがより好ましい。
また、上記の電極部において、前記絶縁部材における、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときの湾曲の軸線方向側の縁部は、前記絶縁部材の前記軸線方向における中間部から縁部に向かうにしたがって前記軸線から離間するように形成されていることがより好ましい。
また、上記の電極部において、前記絶縁部材の縁部には、前記絶縁部材の厚さ方向に貫通する切欠き部が形成されていることがより好ましい。
【0009】
また、上記の電極部において、前記絶縁部材には、前記一方の面および前記一方の面とは反対側の面の少なくとも一方に、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときの湾曲の軸線方向に平行に延びる溝部が形成されていることがより好ましい。
また、上記の電極部において、前記絶縁部材は、外力が作用していない自然状態において、自身が湾曲する湾曲方向の両縁部が互いに一定距離離間するように形成されていることがより好ましい。
また、上記の電極部において、前記絶縁部材は、前記湾曲形状であるときに湾曲の軸線方向に平行に見たときに、前記一方の面が長円形状となるように形成されていることがより好ましい。
【0010】
また、上記の電極部において、前記絶縁部材の前記一方の面から突出して設けられ、前記一方の面を前記線状組織から離間させる突出部を備えることがより好ましい。
また、本発明の他の電極部は、所定の線状組織を取り巻くように湾曲した湾曲形状に形成された電極部であって、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ電圧を印加可能な少なくとも2つの電極と、前記絶縁部材の湾曲方向の両縁部間に配置され、前記絶縁部材および少なくとも2つの前記電極を前記線状組織から離間させる隙間保持部材と、を備えることを特徴としている。
また、本発明の組織刺激システムは、上記のいずれか一項に記載の電極部と、前記線状組織に付与する電気的刺激を発生させる刺激発生部と、前記電極部と前記刺激発生部とを電気的に接続するリードと、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電極部および組織刺激システムによれば、長期間にわたり埋植する場合であっても電極による電気的刺激効果が低減するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図2】同電極部の湾曲を伸ばして平坦形状にしたときの斜視図である。
【図3】同電極部を神経組織に取付けたときの状態を説明する断面図である。
【図4】同電極部を備える組織刺激システムの平面図である。
【図5】患者の神経組織の状態を示す図である。
【図6】同組織刺激システムを用いた電極埋植方法を説明する図である。
【図7】同組織刺激システムを用いた電極埋植方法を説明する図である。
【図8】従来の電極部を埋植した直後における電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図9】従来の電極部を埋植して長期間経過したときの電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の電極部を埋植した直後における電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図11】同電極部を埋植して長期間経過したときの電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図12】同電極部が捻れた場合の状態を説明する断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図14】同電極部の湾曲を伸ばして平坦形状にしたときの斜視図である。
【図15】従来の電極部を埋植して長期間経過したときの電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図16】本発明の第2実施形態の電極部を埋植した直後における電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図17】同電極部を埋植して長期間経過したときの電極部の周辺組織の状態を説明する断面図である。
【図18】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図19】同電極部の湾曲を伸ばして平坦形状にしたときの斜視図である。
【図20】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図21】図20中の切断線A1−A1の断面図である。
【図22】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図23】図22中の切断線A2−A2の断面図である。
【図24】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図25】図24中の切断線A3−A3の断面図である。
【図26】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図27】図26中の切断線A4−A4の断面図である。
【図28】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図29】図28の縦断面図である。
【図30】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図31】図30中の切断線A5−A5の断面図である。
【図32】本発明の第2実施形態の変形例の電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図33】本発明の実施形態の変形例における電極部が湾曲形状であるときの斜視図である。
【図34】図33中の切断線A6−A6の断面図である。
【図35】本発明の実施形態の変形例における電極部を神経組織に取付けたときの状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電極部の第1実施形態を、図1から図12を参照しながら説明する。この電極部は、たとえば、神経組織などの線状組織に電圧を印加するためのものである。
本実施形態の電極部1は、図1に示すように、外力が作用していない自然状態で神経組織Nを取り巻くように湾曲した湾曲形状となるように形成されているとともに、外力を加えることで、図2に示すように平坦に延びた平坦形状に変形可能となっている。図1および図2に示すように、電極部1は、弾性材料でシート状に形成された電極支持体(絶縁部材)2と、電極支持体2が湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面2aに露出した状態で設けられ、電圧を印加可能な一対の電極3とを備えている。
【0014】
電極支持体2は、神経組織Nを損傷させないように、シリコーンゴムなどの柔らかい絶縁材料で形成されている。電極支持体2は、電極3を流れる電流が外部に漏れるのを防止するためのものである。
一対の電極3は、電極支持体2が湾曲形状であるときの湾曲の軸線C1方向に間隔をあけて、電極支持体2が湾曲する湾曲方向D1に平行に延びるように設けられている。電極3は弾性を有し生体適合性の高い金属などで形成され、自然状態で湾曲形状に形成されている。つまり、本実施形態では、電極3の弾性力により、電極部1の形状は自然状態で湾曲形状になって電極支持体2と神経組織Nとの間の隙間が維持されるとともに、平坦形状に変形できる。本実施形態では、電極部1はいわゆるカフ型の構成となっている。
図3に示すように、外径L1が、たとえば1.5mmの神経組織Nに対して電極部1を用いる場合、湾曲形状であるときの内径L2が2.5mmである電極部1を選択して、神経組織Nに対して一方の面2aが概ね全周にわたって0.5mm程度離間した状態で使用することが好ましい。さらに一般的には、神経組織Nの外径L1に対して、0.2mm以上2mm以下内径の大きな電極部1を選択することが好ましい。
【0015】
続いて、本実施形態の電極部1を備える組織刺激システムについて説明する。
本組織刺激システム10は、図4に示すように、前述の電極部1と、神経組織Nに付与する電気的刺激を発生させる神経刺激装置(刺激発生部)11と、電極部1と神経刺激装置11とを電気的に接続するリードボディ(リード)12とを備えている。
神経刺激装置11は不図示の電源を有し、神経組織Nが発生する電気的信号を一対の電極3間の電位差として検出する。神経刺激装置11は、一対の電極3の一方を陽極、他方を陰極として機能させ、一対の電極3間に所定の電位差を生じさせる。これにより、神経刺激装置11は、電極部1が取得した神経組織Nの信号を検出し、必要に応じてこの神経組織Nに電位差による電気的刺激を与えることができる。
リードボディ12は公知の構成のものが用いられ、たとえば、電極3と神経刺激装置11とを電気的に接続する不図示のコイルと、コイルの外周を覆う絶縁性で可撓性を有するチューブ13とを有している。
【0016】
次に、以上のように構成された組織刺激システム10を用いて、図5に示すような、たとえば、胸腔内上大静脈上迷走神経である神経組織Nに電極部1を取付ける電極埋植方法について説明する。
まず、術者は処置対象となる神経組織Nを特定する(特定工程)。具体的には、患者の胸部に不図示のトロッカーを取付け、トロッカーを通して胸腔鏡を胸腔内に挿入する、胸腔の内部を胸腔鏡で観察し、処置を行う神経組織Nを特定する。そして、トロッカー経由で胸腔内に不図示のナイフなどの切開用処置具を挿入し、所望の神経組織Nの周辺に位置する膜などの周辺組織M(図5参照)を切開して神経組織Nを露出させる。
【0017】
次に、特定した神経組織Nの外径より内径が所定長さ大きい電極部1を選択する(選択工程)。すなわち、特定工程で特定した神経組織Nを胸腔鏡で観察し、この神経組織Nの外径を測定する。そして、図3に示すように、たとえば神経組織Nの外径が1.5mmだった場合、湾曲形状であるときの内径L2が2.5mmである電極部1を選択する。このように、取付ける神経組織Nの外径に対して、内径が約1mm大きい電極部1を選択することが好ましい。そして、選択した電極部1をリードボディ12に接続して、組織刺激システム10を構成する。
続いて、湾曲形状である電極部1を平坦形状に伸ばす(平坦化工程)。図6に示すように、湾曲形状となっている電極支持体2の湾曲方向D1の縁部(基端側)2bを把持鉗子Tにより把持した状態で、トロッカーを通して電極部1を胸腔内に挿入する。さらにトロッカーから挿入した不図示の把持鉗子で電極支持体2の縁部2bとは反対側の縁部(先端側)2cを把持し、両把持鉗子により電極部1の湾曲を伸ばすように所定のトルクを作用させることで電極部1を平坦形状に伸ばす。
次に、平坦形状に変形させた電極部1の縁部2cを、神経組織Nと周辺組織Mとの間に挿入する(位置決め工程)。このとき、縁部2cを把持していた把持鉗子を電極支持体2から取外しながら、電極部1の縁部2cを神経組織Nと周辺組織Mとの間に潜り込ませていく。電極部1における作用されていたトルクが解除された縁部2c側の部分は、神経組織Nを取り巻くような元の湾曲形状に戻る。
【0018】
続いて、把持鉗子Tを操作しながら、図3に示すように電極部1を、神経組織Nを取り巻くように配置された湾曲形状に戻し、電極部1を胸腔内に留置する(留置工程)。このとき、神経組織Nと電極部1が一定距離離間した状態で、電極部1を留置するようになっている。この後で、図7に示すように、周辺組織Mを縫合糸Uなどで縫合し、電極部1を体内に埋込む。
【0019】
次に、以上のように体内に埋植されてから長期間経過したときの電極部1の周辺組織の状態を、従来の電極部と比較しながら説明する。
最初に、従来の電極部について、電極部がカフ型の構成である場合で説明する。
図8に示すように、従来の電極部E1では、湾曲形状である電極支持体E2の内側の面に設けられた電極E3は、神経組織Nの外周面のほぼ全周にわたり接触するように、神経組織Nに密着させた状態で配置される。電極部E1を埋植した後、電極部E1に対して異物反応が発生し、電極部E1と接触する組織から不図示の線維組織が成長する。電極部E1では、電極支持体E2と神経組織Nとの間に十分な隙間が無いため、成長する線維組織に栄養を供給する血管などは成長することができずに線維組織は壊死し、壊死細胞はリン酸カルシウム沈着の核となり、線維組織は石灰化する。石灰化した組織は通常の線維組織に比べて硬く、インピーダンスも高い。
また、心臓の拍動や体動などで電極部E1が動く場合、電極部E1と神経組織Nとは擦れ合い、炎症を引き起こす。電極部E1を埋植して長期間経過したときには、図9に示すように、電極部E1の周囲のみならず、神経組織Nの周囲にも石灰化した線維組織N1が成長し、神経組織Nを圧迫する。その結果、最終的には神経組織Nが壊死し、電極部E1による電気的な刺激効果が低減したり、消失したりする。
【0020】
続いて、本実施形態の電極部1を埋植した場合について説明する。
電極部1を埋植した場合、図10に示すように、神経組織Nは、電極部1と接触することなく電極部1に挿通された状態、すなわち、電極支持体2の一方の面2aから離間して隙間S1が形成された状態となる。電極部1を埋植する術後に、隙間S1は、血液などの不図示の浸出液で満たされる。浸出液には導電性があり、浸出液に電流を流すことで神経組織Nの電気刺激は可能である。ただし、電極部1は浸出液を介して神経組織Nに間接的に接続されているので、心臓の拍動などにより電極部1が動いても、神経組織Nに外力は加わらない。
【0021】
そして、電極部1を埋植して長期間経過したときには、図11に示すように、電極支持体2と神経組織Nとの隙間S1は線維組織N1で埋められる。この時、神経組織Nに栄養を供給するための血管も隙間S1に形成されるため、線維組織N1の石灰化は引き起こされにくい。
また、成長した線維組織N1は柔軟な組織であり、神経組織Nを保持するクッション(緩衝材)の役割を果たす。このため、たとえば、図12に示すように、電極部1が外力により捻れた場合であっても、神経組織Nの周囲に配置された線維組織N1が神経組織Nの変形の仕方を緩やかにすることで、神経組織Nが損傷することが抑えられる。この線維組織N1は、従来の電極部E1を理植したときに発生していた石灰化した組織に比べてインピーダンスは低く、電極部1により神経組織Nを電気的に刺激することが可能である。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の電極部1によれば、電極部1は、絶縁部材2の一方の面2aが神経組織Nに対して離間した状態で、神経組織Nを取り巻くように配置される。このため、電極支持体2と神経組織Nとの間に隙間S1が形成され、この隙間S1に線維組織N1とともに、神経組織Nに栄養を供給するための血管も形成される。したがって、線維組織N1の石灰化が抑制され、電極部E1を長期間にわたり理植したときの神経組織Nへの負担を低減させることができる。
また、本実施形態の組織刺激システム10によれば、電極部1の一対の電極3およびリードボディ12を介することで、神経組織Nが発生する電気的信号を神経刺激装置11で検出するとともに、神経刺激装置11により神経組織Nに電気的刺激を印加することができる。
【0023】
なお、本実施形態の組織刺激システムを用いずに、通常の神経刺激装置を用いる方法も考えられる。この場合、電極支持体2と神経組織Nとの間に隙間を形成することで、繊維組織の石灰化を抑制し、電極部を長期間にわたり理植したときの神経組織Nへの負担を低減させる。
この場合、上記の組織刺激システム10と同様に、特定した神経組織Nの外径より内径が所定長さ大きい電極部を選択する(選択工程)。次に、電極部を、神経組織Nと周辺組織Mとの間に挿入する(位置決め工程)。そして、神経組織Nと電極部が、一定距離離間した状態で、電極部を留置するように行う(留置工程)。以上の工程を行うことで、どのような形状の電極であっても、電極支持体2と神経組織Nとの間に隙間を形成することができる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図13から図32を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図13および図14に示すように、本実施形態の電極部21は、前記第1実施形態の電極部1の電極支持体2に代えて、電極支持体22を備えている。
絶縁部材22には、絶縁部材22の厚さ方向に貫通するとともに一対の電極3間に隙間S2を形成する貫通孔22aが形成されている。
貫通孔22aは、電極支持体22に湾曲方向D1に延びるように形成されている。
【0025】
次に、このように構成された電極部21を神経組織Nに取付けたときの電極部21の周辺組織の状態を、前述の従来の電極部E1と比較しながら説明する。
従来の電極部E1を神経組織Nに取付けた場合、電極支持体E2と神経組織Nとの間に十分な隙間が無いため、神経組織Nが損傷する問題に加えて、線維組織N1が石灰化することにより線維組織N1のインピーダンスが上昇する問題が生じる。線維組織N1のインピーダンスが上昇することで神経組織Nに電流が流れにくくなり、線維組織N1を刺激する効果が減少する。通常、電流は一方の電極3から他方の電極3まで様々な経路を通って流れる。神経組織Nを通る経路のインピーダンスが他の経路のインピーダンスより小さいときに、神経組織Nの刺激が可能となる。
【0026】
従来の電極部E1を埋植して長期間経過したときには、図15に示すように、神経組織Nの周りにインピーダンスの高い石灰化した線維組織N1が発生することで、神経組織Nを通る電流経路のインピーダンスは上昇する。電極部E1と神経組織Nとの界面では、浸出液N2が発生することがある。一般的に、浸出液は血液や体液であり、線維組織に比べてインピーダンスが低い。このため、電流は一方の電極E3から浸出液N2を通して他方の電極E3に流れ(図15中に、実線で示した矢印)、神経組織Nを流れる電流は更に少なくなり、神経組織Nの刺激効果が減少する。なお、図15から図17中、実線で示した矢印は電流が流れる経路を示し、点線で示した矢印は電流が流れない経路を示す。
従来の電極部E1には本実施形態の電極部21のように貫通孔22aが形成されていないので、線維組織N1は、電極支持体E2の端面E4から徐々に成長する。電極支持体E2の軸線C2方向の長さが比較的長い場合には、線維組織N1の成長に時間がかかるために神経組織Nの周囲にある線維組織N1の細胞に栄養が行かず、この線維組織N1の細胞が壊死することがある。神経組織Nの周囲の細胞の壊死は、線維組織N1の細胞の石灰化を進める。
【0027】
続いて、本実施形態の電極部21を埋植した場合について説明する。
電極部21を埋植した直後には、図16に示すように、電極部21と神経組織Nとの間には隙間S3があり、この隙間S3は浸出液N2で満たされている。一対の電極3間に電圧を印加すると電流が様々な経路を通って流れるが、浸出液N2は導電液なので神経組織Nを電気的に刺激することが可能である。
電極部21を埋植して長期間経過すると、図17に示すように、電極部21の周囲に線維組織N1が成長する。前述の従来の電極部E1と同様に、本実施形態の電極部21においても、電極部21と線維組織N1との界面に浸出液N2が発生する可能はある。しかし、電極部21と神経組織Nとの間に隙間S3があり一対の電極3が浸出液N2で接続されることがないので、神経組織Nに電流が流れることなく浸出液N2を通して一対の電極3間に電流が流れることが防止される。
この場合、一対の電極3間でインピーダンスが最も低いのは、神経組織Nを経由する経路となり、神経組織Nを電気的に刺激することが可能である。一対の電極3間の距離に対する電極3と神経組織Nとの距離の比が1/2以上である場合には、神経組織Nを通らない経路に流れる電流量が増えて神経組織Nを刺激する効率が悪くなるため、一対の電極3間の距離に対する電極3と神経組織Nとの距離の比は1/2より小さいことが望ましい。
【0028】
このように構成された本実施形態の電極部21によれば、長期間にわたり埋植する場合であっても電極3による電気的刺激効果が低減するのを防止することができる。
さらに、貫通孔22aにより一対の電極3間に隙間S2が形成されているので、隙間S2を埋める線維組織N1の成長が早まって壊死組織が発生しにくくなり、線維組織N1の石灰化を防ぎインピーダンスの上昇が防止される。これにより、神経組織Nを確実に電気的に刺激することができる。
【0029】
なお、図18および図19に示す電極部31のように、電極支持体22の一方の面2aに湾曲方向D1に平行に延びるとともに軸線C1方向に間隔をあけた3つの電極3を備えるときには、軸線C1方向に隣合う一対の電極3の間にそれぞれ貫通孔22aを形成してもよい。
電極部に4つ以上の電極3を備える場合も同様である。
【0030】
本実施形態では、電極部21の構成を以下に説明するように様々に変形させることができる。
たとえば、図20および図21に示す電極部41のように、電極支持体22における一対の電極3の間に、前記第2実施形態の電極部21の貫通孔22aに代えて、電極支持体22の厚さ方向に見たときに略円形の一対の貫通孔22bを形成してもよい。本変形例では、一対の貫通孔22bは、電極部41が湾曲形状であるときに軸線C1を挟んで対向するように形成されている。
また、図22および図23に示す電極部51のように、電極支持体22に、電極支持体22の厚さ方向に貫通する多数の貫通孔22cを形成してもよい。貫通孔22cの内径は、前記変形例の電極部41の貫通孔22bの内径より小さく設定されている。
【0031】
図24および図25に示す電極部61のように、電極支持体22における一対の電極3の間に、複数の貫通孔22dを形成するとともに、電極支持体22の軸線C1方向の縁部に、電極支持体22の厚さ方向に貫通する複数の切欠き部22eを形成してもよい。本変形例では、貫通孔22dは、長径が軸線C1方向に設定された長孔状に形成されている。
電極部41、51、61をこのように構成することで、電極部61と神経組織Nとの間に成長する線維組織N1に栄養を容易に供給し、神経組織Nが壊死するのを防止することができる。
また、電極部41、51、61のように構成することで、電極部から漏れる電流を低減させることができる。
【0032】
図26および図27に示す電極部71において、電極支持体22は、外力が作用していない自然状態において、湾曲方向D1側の両縁部22h、22iが互いに一定距離離間するように形成されている。両縁部22h、22iが離間する距離Bは、神経組織Nの外径L1より短い値、神経組織Nの外径L1より長い値など、適宜設定することができる。心臓の拍動などで動く神経組織Nに電極部71を取付ける場合には、距離Bは外径L1より短いことが好ましい。一方で、電極部71を取付ける神経組織Nがほとんど動かない場合には、距離Bは外径L1より長いことが好ましい。
なお、両縁部22h、22iの内面から延びる面が互い略平行に配置されている場合には、距離Bが電極支持体22における湾曲形状の自然状態での内径となる。
電極部71をこのように構成することで、神経組織Nに電極部71を取付けるときに、電極部71を平坦形状に変形させる必要がなくなるため手技が簡単になり、手技において神経組織Nを損傷させる可能性を低減することができる。
ただし、電極支持体22が、たとえば、シリコーンゴムのような、比較的弾性係数の小さな弾性体のみで形成されていると神経組織Nと電極部71との隙間を維持することが困難であるため、電極支持体そのものの剛性を高めるか、電極支持体の内部に電極支持体が湾曲形状を維持するための不図示の形状維持部材などの構造体を有するように構成してもよい。
【0033】
また、電極部71を神経組織Nに取付けた後で、電極支持体22の外周面に縫合糸を巻きつけたり、電極支持体22の外周面にバネクリップを取付けたりすることで、電極部1と神経組織Nとを離間させつつ、電極部71の両縁部22h、22iを互いに当接した状態に保持してもよい。縫合糸は、ポリプロピレンなどの生体適合性の高い材料で形成されていることが好ましく、バネクリップは、NiTiなどの生体適合性の高い材料で形成されていることが好ましい。
縫合糸を用いる場合には、電極支持体22の外周面に周方向に溝を形成しておくことが好ましい。このように構成することで、縫合糸が電極支持体22の外周面上で軸線C1方向に移動するのを防止し、電極支持体22から縫合糸が外れるのを防ぐことができる。
【0034】
図28および図29に示す電極部81のように、電極支持体22における軸線C1方向側の縁部22j、22kは、電極支持体22の軸線C1方向における中間部から縁部に向かうにしたがって軸線C1から離間するように形成されていてもよい。本実施例の電極支持体22は、軸線C1方向において、縁に向かうにつれて細くなるテーパー形状になっていることで、軸線C1から離間するように形成されている。
一般的に、電極支持体22において一対の電極3より外側の部分を長くすることによって、電極支持体22から外部へ漏れる電流を減らすことができる。本変形例の電極部81は縁部22j、22kを有することで、電極支持体22において一対の電極3より外側の部分が長いときに、電極部81が外力により捻れた場合であっても、神経組織Nが損傷することを抑えることができる。
なお、電極支持体22の中間部から縁部に向かうにしたがって軸線C1から離間するように形成された縁部は、軸線C1方向の少なくとも一方に形成されていればよい。
【0035】
また、図30および図31に示す電極部91のように、電極支持体22において、一方の面2aおよび一方の面2aの反対側の面となる他方の面2dにおける湾曲方向D1側の縁部22hには、軸線C1方向に平行に延びる切断溝(溝部)22lが形成されていてもよい。本変形例では、電極支持体22内に、電極支持体22の湾曲方向D1側の両縁部22h、22iを湾曲方向D1に互いに近づけるように付勢し当接させるバネ部材92が内蔵されている。
一般的に、神経組織Nは部位や患者により外径が異なるため、神経組織Nの外径に合わせて電極部の内径を変えて隙間を適切に調節できることが望ましい。電極部91をこのように構成することで、神経組織Nの外径が当初の予測より小さい場合であっても、切断溝22lに沿って電極支持体22を切り取ることで湾曲形状であるときの電極支持体22の内径が小さくなり、電極部91から神経組織Nまでの距離を調節することができる。
さらに、外径の異なる神経組織Nに対応させるために必要な電極部の種類を少なくすることができる。
【0036】
なお、切断溝22lは、一方の面2aおよび他方の面2dの少なくとも一方に形成されていればよい。
また、電極部に、電極支持体が湾曲する曲率半径を大きくする方向で湾曲形状を調節可能な調節機構を備えてもよい。
【0037】
図32に示す電極部101のように、絶縁部材22が湾曲形状であるときに軸線C1方向に平行に見たときに、一方の面2aが長円形状となるように形成されていてもよい。たとえば、神経組織Nの外径L1が1.5mmの場合、一方の面2aの形状は、長径が2.5mmであって短径が1.5mmの長円形状とする。
一般的に、神経組織Nの断面は円形に近い形状となっているので、電極部101をこのように構成することで、一方の面2aの長径側において電極部101と神経組織Nとの間に隙間が確実に形成される。このため、線維組織N1の石灰化を防ぎ、神経組織Nを確実に電気的に刺激することができる。
なお、本変形例では、軸線C1方向に平行に見たときに、一方の面2aが長円形状となるように形成されているとした。しかし、一方の面2aの形状は長円形状に限ることなく、一方の面2aは、たとえば数学的(幾何学的)な楕円形状のように、自身の互いに交差する2つの径の長さが互いに異なるように形成されていればよい。
【0038】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、電極の厚さが薄い場合など、電極の弾性力だけでは電極支持体と神経組織Nとの間の隙間を維持しにくい場合には、図33および図34に示すように、針金などの線材で形成された形状維持部材105を電極支持体が内蔵するように構成してもよい。
形状維持部材105としては、生体適合性があり、弾性変形可能なニッケルチタンなどの形状記憶合金を用いることが望ましい。形状維持部材105の外径は、0.2mm程度が好ましい。
【0039】
また、前記第1実施形態および第2実施形態において、電極部に、絶縁部材の湾曲方向D1の両縁部間に配置され、絶縁部材および一対の電極3を線状組織Nから離間させる隙間保持部材を備えるように構成してもよい。隙間保持部材の湾曲方向D1における長さは、処置対称となる線状組織Nの外径に応じて適宜調節して用いる。
この隙間保持部材を備える組織刺激システムを用いて、線状組織Nに電極部を取付ける電極埋植方法は以下のようになる。なお、前記第1実施形態において説明した電極埋植方法と共通する部分は説明を省略する。
まず、術者は処置対象となる神経組織Nを特定する(特定工程)。
次に、電極部の先端側を線状組織Nと周辺組織Mとの間に挿入する(設置工程)。このとき、電極部を一度平坦形状に伸ばしてから挿入してもよい。
続いて、電極部の先端側と基端側との間に不図示の隙間保持部材を配置することで、電極部を線状組織Nから離間させ、この状態で電極部を胸腔内に留置する(介装工程)。
【0040】
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、図35に示すように、電極支持体2が、一方の面2aから突出して設けられ一方の面2aを神経組織Nから離間させる突出部106を備えてもよい。
突出部106は、湾曲形状であるときの電極支持体2の軸線C1を挟んで対向する位置に配置されているとともに、神経組織Nとの接触面積が小さく設定されていることが好ましい。
突出部106が軸線C1を挟んで対向する位置に配置されていることで、一方の面2aを神経組織Nから確実に離間させることができる。また、突出部106と神経組織Nとの接触面積が小さく設定されていることで、神経組織Nに与える影響を低減させることができる。
【0041】
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、電極支持体を、線維組織は通らないが酸素などのガスと体液が透過可能な微細な孔が形成されたメッシュ構造としてもよい。さらに、1つの電極を備える電極支持体を、接続部材などで複数接続することで電極部を構成してもよい。
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、線状組織を神経組織Nとしたが、線状組織はこれに限られることなく、血管や筋肉などの他の線状の生体組織にも適用することができる。
【0042】
また、本発明には、以下のものが含まれる。
〔付記項1〕
処置対象となる線状組織を特定する特定工程と、
特定した前記線状組織の外径より内径が所定長さ大きい電極部を選択する選択工程と、
前記電極部の先端側を前記線状組織と、前記線状組織の周辺に位置する周辺組織との間に挿入する位置決め工程と、
前記線状組織と前記電極部が一定距離離間した状態で、前記電極部を留置する留置工程と、
を備えることを特徴とする電極埋植方法。
【0043】
〔付記項2〕
外力が作用していない自然状態で所定の線状組織を取り巻くように湾曲した湾曲形状となるように形成され、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ所定の電圧を印加可能な電極と、を備える電極部を用いる電極埋植方法であって、
処置対象となる線状組織を特定する特定工程と、
特定した前記線状組織の外径より内径が所定長さ大きい前記電極部を選択する選択工程と、
前記湾曲形状である前記電極部を平坦形状に伸ばす平坦化工程と、
前記平坦形状に変形させた前記電極部の先端側を前記線状組織と、前記線状組織の周辺に位置する周辺組織との間に挿入する位置決め工程と、
前記電極部を前記平坦形状から前記線状組織を取り巻くように配置された前記湾曲形状に戻し、前記電極部を留置する留置工程と、
を備えることを特徴とする電極埋植方法。
【0044】
〔付記項3〕
処置対象となる線状組織を特定する特定工程と、
電極部の先端側を、前記線状組織と前記線状組織の周辺に位置する周辺組織との間に挿入する設置工程と、
前記電極部の先端側と基端側との間に隙間保持部材を配置することで、前記電極部を前記線状組織から離間させる介装工程と、
を備えることを特徴とする電極埋植方法。
【符号の説明】
【0045】
1、21、31、41、51、61、71、81、91、101 電極部
2、22 電極支持体(絶縁部材)
2a 一方の面
3 電極
10 組織刺激システム
11 神経刺激装置(刺激発生部)
12 リードボディ(リード)
22a 貫通孔
22e 切欠き部
22h、22i、22j、22k 縁部
106 突出部
C1 軸線
D1 湾曲方向
N 神経組織(線状組織)
S2 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の線状組織を取り巻くように湾曲した湾曲形状に形成された電極部であって、
弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、
前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ電圧を印加可能な少なくとも2つの電極と、
を備え、
前記湾曲形状の自然状態での内径が前記線状組織の外径より大きく設定され、
前記絶縁部材および少なくとも2つの前記電極は、前記線状組織から離間してそれぞれ配置されることを特徴とする電極部。
【請求項2】
前記絶縁部材には、自身の厚さ方向に貫通するとともに少なくとも2つの前記電極間に隙間を形成する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電極部。
【請求項3】
前記絶縁部材における、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときの湾曲の軸線方向側の縁部は、前記絶縁部材の前記軸線方向における中間部から縁部に向かうにしたがって前記軸線から離間するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電極部。
【請求項4】
前記絶縁部材の縁部には、前記絶縁部材の厚さ方向に貫通する切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電極部。
【請求項5】
前記絶縁部材には、前記一方の面および前記一方の面とは反対側の面の少なくとも一方に、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときの湾曲の軸線方向に平行に延びる溝部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電極部。
【請求項6】
前記絶縁部材は、外力が作用していない自然状態において、自身が湾曲する湾曲方向の両縁部が互いに一定距離離間するように形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電極部。
【請求項7】
前記絶縁部材は、前記湾曲形状であるときに湾曲の軸線方向に平行に見たときに、前記一方の面が長円形状となるように形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電極部。
【請求項8】
前記絶縁部材の前記一方の面から突出して設けられ、前記一方の面を前記線状組織から離間させる突出部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電極部。
【請求項9】
所定の線状組織を取り巻くように湾曲した湾曲形状に形成された電極部であって、
弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、
前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ電圧を印加可能な少なくとも2つの電極と、
前記絶縁部材の湾曲方向の両縁部間に配置され、前記絶縁部材および少なくとも2つの前記電極を前記線状組織から離間させる隙間保持部材と、
を備えることを特徴とする電極部。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電極部と、
前記線状組織に付与する電気的刺激を発生させる刺激発生部と、
前記電極部と前記刺激発生部とを電気的に接続するリードと、
を備えることを特徴とする組織刺激システム。
【請求項1】
所定の線状組織を取り巻くように湾曲した湾曲形状に形成された電極部であって、
弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、
前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ電圧を印加可能な少なくとも2つの電極と、
を備え、
前記湾曲形状の自然状態での内径が前記線状組織の外径より大きく設定され、
前記絶縁部材および少なくとも2つの前記電極は、前記線状組織から離間してそれぞれ配置されることを特徴とする電極部。
【請求項2】
前記絶縁部材には、自身の厚さ方向に貫通するとともに少なくとも2つの前記電極間に隙間を形成する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電極部。
【請求項3】
前記絶縁部材における、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときの湾曲の軸線方向側の縁部は、前記絶縁部材の前記軸線方向における中間部から縁部に向かうにしたがって前記軸線から離間するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電極部。
【請求項4】
前記絶縁部材の縁部には、前記絶縁部材の厚さ方向に貫通する切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電極部。
【請求項5】
前記絶縁部材には、前記一方の面および前記一方の面とは反対側の面の少なくとも一方に、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときの湾曲の軸線方向に平行に延びる溝部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電極部。
【請求項6】
前記絶縁部材は、外力が作用していない自然状態において、自身が湾曲する湾曲方向の両縁部が互いに一定距離離間するように形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電極部。
【請求項7】
前記絶縁部材は、前記湾曲形状であるときに湾曲の軸線方向に平行に見たときに、前記一方の面が長円形状となるように形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電極部。
【請求項8】
前記絶縁部材の前記一方の面から突出して設けられ、前記一方の面を前記線状組織から離間させる突出部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電極部。
【請求項9】
所定の線状組織を取り巻くように湾曲した湾曲形状に形成された電極部であって、
弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、
前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ電圧を印加可能な少なくとも2つの電極と、
前記絶縁部材の湾曲方向の両縁部間に配置され、前記絶縁部材および少なくとも2つの前記電極を前記線状組織から離間させる隙間保持部材と、
を備えることを特徴とする電極部。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電極部と、
前記線状組織に付与する電気的刺激を発生させる刺激発生部と、
前記電極部と前記刺激発生部とを電気的に接続するリードと、
を備えることを特徴とする組織刺激システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2012−130579(P2012−130579A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286564(P2010−286564)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]