説明

電気インピーダンストモグラフィー法および装置

画像作成される媒質の外面(3)上に所定の電気的状態が与えられ、一方、前記媒質のインピーダンスを局所的に修正することによって前記媒質の所定の位置で力学的摂動を生成し、前記媒質の外面上のいくつかの位置(7)で電気的パラメータが測定される電気的測定ステップと、前記摂動による電気インピーダンスの修正についての法則によって、前記摂動の間に実行される測定を考慮して、前記媒質の内容積(2)の中のいくつかの位置で電気インピーダンスが決定される計算ステップと、を有する電気インピーダンストモグラフィー法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気インピーダンストモグラフィー法および装置に関する。
より詳しくは、本発明は、外面によって境界を定められた、ある内容積を有する媒質の画像作成のための電気インピーダンストモグラフィー法に関し、この方法は、
媒質の外面上に所定の電気的状態が与えられ、媒質の所定の位置で力学的摂動を生成し、従って、媒質のインピーダンスを局所的に修正する一方で、媒質の外面上のいくつかの位置で少なくとも1つの電気的パラメータが測定される、少なくとも1つの電気的測定ステップと、
媒質の内容積におけるいくつかの位置で電気インピーダンスに関する少なくとも1つのパラメータが決定される、少なくとも1つの計算ステップと、
を有する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は上記方法の一例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/028092号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている方法を含む、全ての周知の電気インピーダンストモグラフィー法は、画像作成される媒質の外面に対する深さに応じた(医療用に約数センチメートルの、地球物理学の分野において約数十メートルの)低い解像度を欠点としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、これらの欠点を改善することである。
この目的のために、本発明によれば、上記方法は、前記計算ステップにおいて、電気インピーダンスに関する前記パラメータは、前記摂動による前記電気インピーダンスの修正のために所定の法則を用いて、前記摂動の間に実行された測定を考慮して決定されることを特徴とする。
この構成によれば、上述した摂動が媒質の局所的な“マーキング”を実行することによって、本発明による方法の実現の正確さと迅速さを著しく向上させることができる。特に、たいへん手ごろな実現コストで、媒質の外面に対するたいへん深い深さまで、ミリメートルの精度を得ることが可能である。
【0006】
また、本発明による方法の様々な実施形態において、オプションで、次の構成のうち、あるもの、および/または、他のものを用いることが可能である。
【0007】
前記与えられる電気的状態は、前記媒質の外面上の少なくとも1つの位置で与えられる少なくとも1つの電流を含み、前記測定される電気的パラメータは電位である(もちろん、電位を与え、電流を測定することが可能である)。
【0008】
前記電気インピーダンスに関するパラメータは導電率である。
【0009】
前記力学的摂動は、前記媒質の中の少なくとも1つの位置に焦点を合わせた波動である。
【0010】
前記波動は音波である。
【0011】
前記音波は(例えば、ピエゾ電気トランスデューサの集合によって生成された)超音波である。
【0012】
前記音動は、結果として前記媒質の局所的な変位となる超音波放射力を生成するために適合した変調周波数における振幅変調信号に対応する。
【0013】
前記波動は弾性波(例えば、土壌の表面上に配置された機械的な起振機の集合によって生成された圧縮波または剪断波の混合)である。
【0014】
前記波動は符号化された信号に対応する。
【0015】
前記計算ステップにおいて、前記画像作成される媒質の任意の位置zについて次式
【0016】
【数1】

【0017】
が解かれ、ここで、
kは、前記媒質の外面に印加される少なくとも1つの電流の集合jを示すインデックスであり、iはこの集合の各々の電流を示すインデックスであり、
(z)は、前記電流の集合jを印加する間に前記波動によって生じる摂動に対応するエネルギーであり、
(z)は、前記媒質の位置zにおける電位であり、
Aは、焦点を合わせた位置の周囲に前記波動によって生じる焦点領域の形状を表わす行列である。
【0018】
前記焦点領域は球形であり、Aは単位行列である。
【0019】
前記計算ステップにおいて、前記エネルギーは、前記摂動による電気インピーダンスの修正についての前記法則によって決定される。
【0020】
前記エネルギーは次式
【0021】
【数2】

【0022】
で計算され、ここで、
zは、前記媒質の中の位置を示し、
(z)は、前記媒質の外面上のインデックスiの位置において測定された電気的摂動を表わす値であり、前記位置iにおいて電流の集合jを印加する間に前記波動によって生成される。
【0023】
(z)は次式
【0024】
【数3】

【0025】
に対応し、ここで、γは導電率であり、G(z,i)は前記媒質のノイマン関数である。
【0026】
(z)の値は、異なる信号S(t)に対応する波動を使用して、実行された測定から計算され、lは1とLの間のインデックスである。
【0027】
Lは2に等しく、それぞれ振幅S、SであるS(t)=S・s(t)、S(t)=S・s(t)の2つの信号が使用され、
(z)の値は、焦点領域の形状が円または球であるとき、次式
【0028】
【数4】

【0029】
によって計算され、ここで、
dは、2次元の画像作成について2に等しく、3次元の画像作成について3に等しく、
|V|は、2次元の画像作成について焦点領域の面積、3次元の画像作成について焦点領域の容積である。
【0030】
前記波動は超音波であり、
Lは2に等しく、それぞれ振幅S、SであるS(t)=S・s(t)、S(t)=S・s(t)の2つの信号が使用され、s(t)は結果として前記媒質の局所的な変位となる超音波放射力を生成するために適合した変調周波数における振幅変調信号であり、
(z)の値は、焦点領域の形状が円または球であるとき、次式
【0031】
【数5】

【0032】
によって計算され、ここで、
dは、2次元の画像作成について2に等しく、3次元の画像作成について3に等しく、
|V|は、2次元の画像作成について焦点領域の面積、3次元の画像作成について焦点領域の容積である。
【0033】
前記計算ステップにおいて、仮定された導電率γから始めて次のサブステップが繰り返され、サブステップa)からd)は停止の基準が満たされるまで繰り返され、
a) 次式を数値的に解き、ここで、γは前に評価された導電率の値(従って、最初、γは上記仮定された値)であり、
【0034】
【数6】

【0035】
b) 前記導電率において評価された誤差eを計算し、
c) 次式を解き、
【0036】
【数7】

【0037】
d) 次式によって前記導電率を更新し、
【0038】
【数8】

【0039】
ここで、vは式(11)の解であり、uは式(9)の解であり、γは、前記媒質の少なくとも1つの領域において、電流の集合jによって生成される電流の列と一致しない電流の列を生成するもう1つの電流の集合jとともに新たな導電率の値として使用される。
【0040】
前記サブステップb)において、前記導電率において評価された誤差eは次式
【0041】
【数9】

【0042】
によって計算される。
【0043】
前記サブステップb)において、前記導電率において評価された誤差eは次式
【0044】
【数10】

【0045】
によって計算される。
【0046】
前記サブステップd)において、
前記媒質の各々の位置zについて、電気的状態のどのインデックスkが最大のエネルギー
【0047】
【数11】

【0048】
に対応するかを求め、これは関数k(z)を与え、
前記導電率は次式のように更新され、
【0049】
【数12】

【0050】
ここで、γk(z)は導電率の値γとして使用される。
【0051】
前記画像作成される媒質は生物学的組織である。
【0052】
前記画像作成される媒質は人間の器官(例えば、乳房、脳、肝臓、その他)である。
【0053】
前記画像作成される媒質は地球の土壌である。
【0054】
さらに、本発明は、上記方法を実現するように構成された装置である。
【0055】
本発明の他の特徴および効果は、添付図面を参照して、限定でない例として与えられた続く実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態による電気インピーダンストモグラフィー装置の図である。
【図2】図1の装置によって印加される超音波に対応する信号を表わすグラフである。
【図3】本発明の変形についての図2と同様のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。異なる図において、同一の参照符号は同一または類似の構成要素を示す。
【実施例1】
【0058】
図1は、電気インピーダンストモグラフィー装置1を表わし、外面3によって境界を定められた、ある内容積2を有する媒質(例えば、生物学的媒質、例えば、乳房、脳、肝臓、または、任意の他の組織のような人体の一部)の画像作成のために使用される。
【0059】
装置1は、コンピュータまたは類似物のような中央ユニット(UC)4を備え、中央ユニット4は、スクリーン5および(図示しない)他の入出力インタフェースのような各種の周辺機器に接続することができる。
中央ユニット4は、電気インピーダンストモグラフィーにおいて従来使用されているような電気的測定インタフェース6(INT.1)に接続され、画像作成される媒質の外面3に配置された複数の電極7に接続される。電極7の数はI(ゼロでない自然数)であり、各々は1とIの間のインデックスiによって示される。
【0060】
電気的測定インタフェース6は、ある電極7に所定の電気的状態を与え、全てまたはいくつかの電極7について少なくとも1つの電気的パラメータを測定するように構成される。例えば、電気的測定インタフェース6は、1つの電極7について少なくとも1つの所定の電流jを与え、全ての電極7について電圧uを測定するように構成することができる。より詳しくは、中央ユニット4は、いくつかの電流j,…j,…j(kは各々の測定を示すインデックスであり、Kは異なる電流を用いた測定の総数を示すゼロでない自然数である。インデックスkの各々の電流は、印加される電極7によって、かつ/または、対応する信号によって、他の電流と異なりうる。)を連続的に与えるように電気的測定インタフェース6を制御し、各々の電流jについて電圧uを測定するように構成される。
その代わりに、電気的測定インタフェー6は、1つまたは複数の電圧を与え、電極7について電流を測定するように構成することができる。
上記の電流および電圧は、例えば、約1kHzの周波数で交互に変動する。
【0061】
さらに、中央ユニット4は、信号処理インタフェース8(INT.2)に接続され、信号処理インタフェース8は、画像作成される媒質の外面3に当てられる超音波ピエゾ電気トランスデューサアレイ9(例えば、直線状の細長い一片のトランスデューサ)を制御する。トランスデューサアレイ9は、2次元アレイとし、かつ/または、アレイの位置および/または方向の変化を可能とする可動支持物の上に搭載されることが可能であることに留意すべきである。
【0062】
信号処理インタフェース8は、トランスデューサアレイ9に、画像作成される媒質内に位置する所定の位置z(個数はZ)に連続的に焦点を合わせた超音波を発生させるように構成される。これらの位置zのうち少なくともいくつかは、内容積2の中に位置する(その他は任意選択で外面3上に存在する)。上記超音波は、例えば、0.5MHzと15MHzの間、特に、約1MHzの周波数とすることができる。
【0063】
媒質の内容積2の画像作成が望まれるとき、中央ユニット4は、電気的測定インタフェース6によって、電流jを全てまたはいくつかの電極7に連続的に印加する。
各々の電流jについて、電気的測定インタフェース6は、画像作成される媒質内に超音波が存在しない、各々のインデックスiの電極7の電圧(u1≦i≦Iを測定する。
【0064】
そして、中央ユニット4は信号処理インタフェース8によって放射を引き起こし、各々の位置zにおいて局所化された媒質の力学的摂動を生成するために、上述した所定の位置zに連続的に焦点を合わせた超音波のトランスデューサアレイ9は、結果として、媒質の電気インピーダンスの局所化された摂動(特に、導電率)となる。
【0065】
超音波は、超音波の数百の周期について各々の位置zに焦点を合わせられる。
この超音波は、低周波数変調されていない波動であり、超音波ビームの焦点領域内に局所的で微小な容積の変動を引き起こす。この振動が生じる周波数は、超音波励起周波数である。そして、超音波信号と同一の周波数を有する、電気インピーダンスの局所的な摂動が生じる。超音波ビームの電気信号への影響を検出するために必要な信号対ノイズ比を向上させるために、例えば、図2に表わされているような符号化された超音波信号S(t)を放射することが可能である。
【0066】
符号化された信号として、例えば、“チャープ”関数S(t)=sin(2π(f0+Δf・t)t)を使用することが可能である。ここで、f0は周波数、Δfは周波数帯域幅である。変形として、所定の形態の白色ノイズを符号化として使用することが可能である。
【0067】
より一般に、信号S(t),… S(t),… S(t)に対応する超音波の放射を連続的に引き起こすことが可能であり、ここで、lは1とLの間の指数であり、Lはゼロでない自然数である(1つのみの信号S(t)が使用されるならばL=1である)。この場合において、各々の信号Sに対応する波動は、例えば、信号Sl+1に対応する波動を放射して焦点を合わせる前に、異なる位置zに連続的に焦点を合わせることができる。信号S(t)は、オプションで、振幅のみが互いに異なることが可能であることに留意すべきである。
【0068】
電流jおよび信号Sが印加され、信号Sに対応する超音波が所定の位置zに焦点を合わせられるとき、インデックスiのI個の電極7において電圧(uk,l,z1≦i≦Iが測定される。信号S(t)が上述したように符号化されるならば、測定の感度は信号S(t)に適用される符号による電気信号(uk,l,z1≦i≦Iの解析によって向上させることができる。
結局、中央ユニットは、音波の焦点を合わせることなく実行されたI、K電圧の測定値(u1≦i≦I,1≦k≦K、および、音波の焦点を合わせて実行されたI、K、L、Z電圧の測定値(uk,l,z1≦i≦I,1≦k≦K,1≦l≦Lを格納する。
【0069】
これらの測定値に基づいて、復元の計算が実行され、これは、画像作成される媒質の任意の位置zにおける導電率γ(z)を見つけ出すことを含む。
【0070】
この復元は、次の問題に対応する。
【0071】
【数13】

【0072】
ここで、uは外面3上の電圧(電位)であり、u(z)は内容積2の中の位置zにおける電圧であり、
【0073】
【数14】

【0074】
は媒質の外面3への法線である。
【0075】
この数学的問題を解くために、オプションで、測定データとの差を最小化することによって、例えば、最小二乗法によって、異なる導電率をテストすることを含む標準的な方法を使用することが可能である。
【0076】
より好ましくは、以下で述べる、特に、効果的、正確、かつ、強固であることが分かっている方法を使用することが可能である。
この方法は、H.AmmariとH.Kangの著作(“Reconstruction of Small Inhomogeneities from Boundary Measurements, Lecture notes in mathematics”,ベルリン,Springer Verlag,第1846巻,2004年)に教示されているように、画像作成される媒質の位置zにおける局所的な導電率の変化による電気的摂動は、主として次式で与えられる、という事実に基づく。
【0077】
【数15】

【0078】
ここで、
は位置iにおける電位、uk,l,zは位置zに焦点を合せられた、信号lに対応する超音波摂動による電位であり、
γは超音波によって局所的に摂動した導電率であり、
Mは、γ、および、超音波の焦点領域(例えば、超音波の振幅が最大振幅の半分より大きい領域)の形状に依存した幾何係数である極性テンソルであり、
関数Gは、導電率γの媒質のノイマン関数、従って、既知である。
【0079】
これらの電気的摂動から、電流kが存在する位置zにおける電気的摂動を表わす行列Dを導き出すことが可能である。
【0080】
【数16】

【0081】
ここで、Aは、焦点領域の形状のみに依存する既知の正定値行列である。
この行列Aは、式 A=1/d(γ/γ+(d−1))M によって極性テンソルMと関係付けられる。ここで、dは空間次元(2次元の画像作成についてd=2、3次元の画像作成についてd=3)である。
超音波の焦点領域の形状は既知であり、この行列Aは既知である。例えば、円形または球形の焦点領域について、Aは単位行列Idに等しい。
【0082】
行列Dは、異なる信号S(t)に対応する超音波の振幅における差のみを使用して、実行された測定値から計算することができる。
上記行列は、焦点領域の形状が円または球であるとき、例えば、それぞれ振幅S、Sの2つの信号S(t)=S・s(t)、S(t)=S・s(t)から次式によって計算することができる。
【0083】
【数17】

【0084】
ここで、
dは空間次元(2次元の画像作成についてd=2、3次元の画像作成についてd=3)であり、
|V|は、超音波の焦点領域の面積(2次元の画像作成)または容積(3次元の画像作成)であり、S、Sは超音波の振幅である。
この行列Dは、各々の電流kについて、位置zにおける音波の摂動に等しい電気的エネルギーE(z)の計算を可能とする。
この電気的エネルギーは次式
【0085】
【数18】

【0086】
で定義され、実際は、次式
【0087】
【数19】

【0088】
で計算される。
【0089】
また、例えば、電極iについての電流は測定できないが、画像作成される媒質の外面3と異なる位置で電流が測定できるとき、他の積分式を使用することが可能である。
式(6)を式(1)に代入することによって、解くべき数学的問題は、次のように表わすことができる。
【0090】
【数20】

【0091】
画像作成される媒質の外面3上の導電率γは、適切ならば、この方法を用いることなく、別個の測定によって決定することができることに留意すべきである。
画像作成される媒質の任意の位置zにおいてu(z)を与える、未知の係数を含まないこの非線形方程式を解く。これは、画像作成される媒質の任意の位置zにおいて次式を生じる。
【0092】
【数21】

【0093】
この非線形方程式を解くために、次のアルゴリズムを使用することが可能である。
【0094】
1) 媒質の任意の位置において、仮定された導電率γ、例えばγ=1から始める。
2) 次のステップを繰り返す。
a) 電流jについて標準的な線形ソルバーを用いて、次の問題を数値的に解く。
【0095】
【数22】

【0096】
b) 次式で誤差を計算する。ここで、Eは式(6)によって計算する。
【0097】
【数23】

【0098】
c) 次の問題を解く。
【0099】
【数24】

【0100】
d) 次式によって導電率を更新する。
【0101】
【数25】

【0102】
ここで、vは電位であり、式(11)の解である。uは電位であり、式(9)の解である。式(12)によって与えられるγは、適切な(少なくとも画像作成される媒質のある領域内で、jによって生成される電流の列と一致しない電流の列を生成する)電流の集合jについて、続く繰り返しにおいて導電率の値γとして使用される。
【0103】
停止の基準が満たされるまで、例えば、
誤差eのノルムが小さくなるとき、
または、∇vのノルムが小さくなるとき
まで、ステップa)からd)が繰り返される。
実際、ステップa)からd)の約10回の繰り返しが収束に十分である。
【0104】
変形として、例えば、図3に表わされているような数百Hzの変調周波数を有する、相対的に低周波数で変調された信号S(t)に対応する超音波を使用することが可能である。この場合において、超音波ビームは、媒質を押す、焦点領域における局所的な力を誘発する。この力は、超音波放射力として知られ、時間に基づく変化が超音波周波数に関係しないが超音波信号の低周波数包絡線に関係する、媒質の局所的な変位を引き起こす。また、この第2の技術の使用の間、超音波与圧信号の振幅を時間において変調することによって、超音波放射力を時間において符号化することができる。
【0105】
この場合において、焦点領域の形状が円または球であるとき、好ましくは、式(4)を次式(4’)で置き換えて、上述したのと同じ方法を使用することが可能である。
【0106】
【数26】

【0107】
さらに、アルゴリズムをより安定して強固にするために、誤差の式(10)を次式で置き換えることが可能である。
【0108】
【数27】

【0109】
この場合において、収束はより遅いが、不安定になることなく、物質内のたいへん強いコントラストを検出することができる。
【0110】
さらに、上記方法において同時にいくつかの電流のデータを使用することが可能である。
この目的のために、ステップ(d)において、
・領域の各々の位置zについて、どの電流kが最大のエネルギー
【0111】
【数28】

【0112】
に対応するかを求め、これは関数k(z)を与え、
・各々の電流k(z)について、導電率が次のように更新され、ここで、γは前の導電率の値であり、
【0113】
【数29】

【0114】
・続く繰り返しにおいてγk(z)が導電率の値γとして使用される。
【0115】
本発明による方法は地球物理学においても使用できることに留意すべきである。この場合において、画像作成される媒質は地球の土壌であり、超音波は弾性波、特に、低周波数の圧縮波または剪断波(例えば、5Hzから5000Hz)で置き換えられる。そして、上述したピエゾ電気トランスデューサは、地表に配置された機械的な起振機またはアクチュエータの集合で置き換えられる。
【符号の説明】
【0116】
1 ・・・ 電気インピーダンストモグラフィー装置
2 ・・・ 内容積
3 ・・・ 外面
4 ・・・ 中央ユニット
5 ・・・ スクリーン
6 ・・・ 電気的測定インタフェース
7 ・・・ 電極
8 ・・・ 信号処理インタフェース
9 ・・・ トランスデューサアレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面(3)によって境界を定められた、ある内容積(2)を有する媒質の画像作成のための電気インピーダンストモグラフィー法であって、
前記媒質の外面(3)上に所定の電気的状態が与えられ、前記媒質の所定の位置で力学的摂動を生成し、従って、前記媒質のインピーダンスを局所的に修正する一方で、前記媒質の外面(3)上のいくつかの位置(7)で少なくとも1つの電気的パラメータが測定される、少なくとも1つの電気的測定ステップと、
前記媒質の内容積(2)の中のいくつかの位置で電気インピーダンスに関する少なくとも1つのパラメータが決定される、少なくとも1つの計算ステップと、
を有する方法において、
前記計算ステップにおいて、前記電気インピーダンスに関するパラメータは、前記摂動による電気インピーダンスの修正についての所定の法則を使用して、前記摂動の間に実行される測定を考慮して決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記与えられる電気的状態は、前記媒質の外面上の少なくとも1つの位置(7)で与えられる少なくとも1つの電流を含み、
前記測定される電気的パラメータは電位である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気インピーダンスに関するパラメータは導電率である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記力学的摂動は、前記媒質の少なくとも1つの位置に焦点を合わせた波動である請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記波動は音波である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記音波は超音波である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記波動は、結果として前記媒質の局所的な変位となる超音波放射力を生成するために適合した変調周波数における振幅変調信号に対応する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記波動は弾性波である請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記波動は符号化された信号に対応する請求項4から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記計算ステップにおいて、前記画像作成される媒質の任意の位置zについて次式
【数1】

が解かれ、ここで、
kは、前記媒質の外面における少なくとも1つの電流の集合jを示すインデックスであり、iはこの集合の各々の電流を示すインデックスであり、
(z)は、前記媒質の外面における電流の集合jを印加する間に前記波動によって生じる摂動に対応するエネルギーであり、
(z)は、前記媒質の位置zにおける電位であり、
Aは、焦点を合わせた位置の周囲に前記波動によって生じる焦点領域の形状を表わす行列である請求項4から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記焦点領域は球形であり、Aは単位行列である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記計算ステップにおいて、前記エネルギーは、前記摂動による電気インピーダンスの修正についての前記法則によって決定される請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記エネルギーは次式
【数2】

で計算され、ここで、
zは、前記媒質の中の位置を示し、
(z)は、前記媒質の外面(3)上のインデックスiの位置において測定された電気的摂動を表わす値であり、前記位置iにおいて電流の集合jを印加する間に前記波動によって生成される請求項10から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
(z)は次式
【数3】

に対応し、ここで、γは導電率であり、G(z,i)は前記媒質のノイマン関数である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(z)の値は、異なる信号S(t)に対応する波動を使用して、実行された測定から計算され、lは1とLの間のインデックスである請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
Lは2に等しく、それぞれ振幅S、SであるS(t)=S・s(t)、S(t)=S・s(t)の2つの信号が使用され、
(z)の値は、焦点領域の形状が円または球であるとき、次式
【数4】

によって計算され、ここで、
dは、2次元の画像作成について2に等しく、3次元の画像作成について3に等しく、
|V|は、2次元の画像作成について焦点領域の面積、3次元の画像作成について焦点領域の容積である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記波動は超音波であり、
Lは2に等しく、それぞれ振幅S、SであるS(t)=S・s(t)、S(t)=S・s(t)の2つの信号が使用され、s(t)は結果として前記媒質の局所的な変位となる超音波放射力を生成するために適合した変調周波数における振幅変調信号であり、
(z)の値は、焦点領域の形状が円または球であるとき、次式
【数5】

によって計算され、ここで、
dは、2次元の画像作成について2に等しく、3次元の画像作成について3に等しく、
|V|は、2次元の画像作成について焦点領域の面積、3次元の画像作成について焦点領域の容積である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記計算ステップにおいて、仮定された導電率γから始めて次のサブステップが繰り返され、サブステップa)からd)は停止の基準が満たされるまで繰り返され、
a) 次式を数値的に解き、ここで、γは前に評価された導電率の値であり、
【数6】

b) 前記導電率において評価された誤差eを計算し、
c) 次式を解き、
【数7】

d) 次式によって前記導電率を更新し、
【数8】

ここで、vは式(11)の解であり、uは式(9)の解であり、γは、前記媒質の少なくとも1つの領域において、電流の集合jによって生成される電流の列と一致しない電流の列を生成するもう1つの電流の集合jとともに新たな導電率の値として使用される請求項10から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記サブステップb)において、前記導電率において評価された誤差eは次式
【数9】

によって計算される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記サブステップb)において、前記導電率において評価された誤差eは次式
【数10】

によって計算される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記サブステップd)において、
前記媒質の各々の位置zについて、電気的状態のどのインデックスkが最大のエネルギー
【数11】

に対応するかを求め、これは関数k(z)を与え、
前記導電率は次式のように更新され、
【数12】

ここで、γk(z)は導電率の値γとして使用される請求項18から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記画像作成される媒質は生物学的組織である請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記画像作成される媒質は人間の器官である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記画像作成される媒質は地球の土壌である請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項に記載の方法を実現するように構成された装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−504781(P2010−504781A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529743(P2009−529743)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052021
【国際公開番号】WO2008/037929
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】