説明

電気エネルギーを用いて褐色脂肪組織を活性化する方法および装置

褐色脂肪組織(BAT)を活性化させる方法および装置を提供する。一般に、これらの方法および装置は、熱発生を増大させる、例えば前記患者における熱発生を増大させるために、BATを活性化させることができ、これにより、経時的に体重減少が生じ得る。一実施形態では、BATを活性化させる神経を電気刺激すること、および/また褐色脂肪細胞を直接電気刺激することにより、BATにおける熱発生を増大させ、エネルギー消費を通じて体重減少を誘発することで、BATを活性化させる医療装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、「Methods And Devices For Activating Brown Adipose Tissue」の名称で2010年1月22日に出願された米国仮特許出願第61/297,405号の優先権を主張するものであり、この仮特許出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、「Diagnostic Methods And Combination Therapies Involving MC4R」という名称の米国仮特許出願第61/297,483号の優先権を主張する、「Diagnostic Methods And Combination Therapies Involving MC4R」という名称の米国特許出願第12/980,635号(代理人整理番号100873−446(END6733USNP/MGH20597))と同時出願されており、これらの特許出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0003】
〔発明の分野〕
本発明は、体重減少を誘発する方法および装置に関し、特に、電気エネルギーを用いて褐色脂肪組織を活性化する方法および装置に関する。
【0004】
〔発明の背景〕
肥満は、特に米国で、大きな懸念となっている。それは、肥満人口が増え続けており、肥満の健康への悪影響について、より多くのことが分かってきたためである。理想体重を45.36kg(100ポンド)以上も上回る重症の肥満は、特に、重度の健康問題の重大な危険性を引き起こしている。したがって、肥満患者の治療には、大きな注目が集まっている。
【0005】
重症の肥満を治療する外科的処置には、様々な形態の胃腸バイパス(胃のステープル留め)、胆膵路転換手術、調節可能な胃緊縛術、垂直帯胃形成術、胃ひだ形成術(gastric plications)、および袖状胃切除術(胃のすべてまたは一部の除去)が含まれてきた。そのような外科的処置は、次第に腹腔鏡下で行われるようになってきた。術後の回復時間の減少、術後の疼痛および創傷感染の著しい減少、ならびに外見的な結果の改善(improved cosmetic outcome)は、腹腔鏡手術の実証された利点であり、これは、主に、腹腔鏡外科医が体腔壁の小さな切開部を利用して手術を行う能力から生じるものである。しかしながら、そのような外科的処置は、手術中に様々な合併症の危険を冒すものであり、疼痛および外見的な瘢痕などの望ましくない術後結果を引き起こし、しばしば、長期間の患者の回復を必要とする。したがって、肥満患者は、めったに外科的介入を求めたり承諾したりせず、わずかに約1%の肥満患者がこの疾患の外科的治療を受けているに過ぎない。さらに、うまく実施されて初期の体重減少が起こったとしても、肥満を治療する外科的介入は、持続的な体重減少を引き起こさない場合があり、それによって、追加的な別の肥満治療に対する患者のニーズが示される。
【0006】
肥満を治療するための非外科的処置も開発されてきた。しかしながら、エネルギー消費を増やし、かつ/または代謝結果(metabolic outcomes)の改善、例えば体重減少につながる、患者の代謝、例えば基礎代謝率を変える、有効な療法は、薬剤的アプローチに焦点を当てており、これには、様々な技術的および生理学的制約がある。
【0007】
例えば、「Slimming Device」の名称で2000年12月20日に出願された米国特許第6,645,229号では、褐色脂肪組織(BAT)は、エネルギー消費の調整に関与していること、および、BATを刺激すると、患者の痩身を生じ得ること、が認められている。BATの活性化は、交感神経系、ならびに他の生理学的作用、例えばホルモンおよび代謝の作用により、調整される。BATは、活性化されると、熱を生成するため、血液供給から遊離脂肪酸(FFA)および酸素を除去する。活性化したBATのミトコンドリアで生じる酸化的リン酸化サイクルを、図1および図2に示す。
【0008】
したがって、肥満を治療するため、特にBATを活性化するための、改善された方法および装置が必要とされている。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明は、概して、電気エネルギーを用いて褐色脂肪組織を活性化する方法および装置を提供する。一実施形態では、医療方法が提供され、この方法は、褐色脂肪組織の貯蔵所(depot)に近接した患者の組織と接触させて装置を位置付けることと、褐色脂肪組織を活性化し、褐色脂肪組織のエネルギー消費を増やすため、患者に電気信号を送るように装置を活性化することと、を含む。電気信号は、変調信号、および搬送波信号を有する。搬送波信号は、約10〜400kHzの範囲、例えば約200〜250kHzの範囲の搬送波周波数など、任意の搬送波周波数を有してよい。変調信号は、約0.1〜100Hzの範囲、例えば約10Hz未満の活性化周波数(activation frequency)など、任意の活性化周波数を有することができる。
【0010】
電気信号は、様々な特徴を有することができる。例えば、電気信号は、約10μs〜10msの範囲のパルス幅、約1〜20Vの範囲の振幅を有する電圧、および/または約2〜6mAの範囲の振幅を有する電流を有することができる。電気信号は、所定の期間、例えば少なくとも4週間にわたり、継続的に患者に送られ得る。装置は、少なくとも1日の間、患者の組織と継続して直接接触するように構成されてよく、装置は、電気信号を生成し、少なくとも1日の間、患者に電気信号を継続的に送る。
【0011】
褐色脂肪組織の貯蔵所は、患者の鎖骨上領域など、患者の体内のどこに位置してもよい。
【0012】
装置は、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、装置は、褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した患者の組織と直接接触して配されるように構成されたハウジングと、そのハウジングに連結され、電気信号を発生させ、その電気信号を患者に送るように構成された、信号発生器と、を含むことができる。信号発生器は、ハウジング内部に位置してよい。ハウジングは、患者に取り付けられるパッチのハウジングを含み得る。装置は、コントローラーも含んでよく、このコントローラーは、信号発生器をオンにして信号発生器に電気信号を発生させ始めるか、信号発生器をオフにして信号発生器が電気信号を発生させるのを止めるか、またはその両方を行うように構成される。コントローラーは、患者から離れて位置し、信号発生器と電子通信するように構成されてよく、かつ/またはコントローラーは、患者の内部に完全に植え込まれるように構成されてもよい。
【0013】
装置は、様々な方法で、患者の組織と接触して位置付けられることができる。例えば、装置を患者の外皮表面に経皮的に取り付けることによって、装置は、患者の組織と接触して位置付けられることができる。別の実施例では、装置の少なくとも一部を患者内部に皮下的に位置付けることによって、装置は、患者の組織と接触して位置付けられることができる。いくつかの実施形態では、装置は、患者の内部に完全に植え込まれてよい。さらに別の実施例では、装置は、鎖骨上領域、うなじ、肩甲骨、脊髄、BAT貯蔵所で終わる交感神経系の近位枝、および腎臓のうち少なくとも1つに近接して位置付けられてよい。
【0014】
医療方法は、装置を患者から除去することと、装置を、褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて再び位置付けることと、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所を活性化し、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所のエネルギー消費を増やすよう、患者に別の電気信号を送るために装置を活性化することと、を含むこともできる。褐色脂肪組織の貯蔵所は、患者の矢状面の左側および右側のうち一方における鎖骨上領域にあってよく、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所は、患者の矢状面の左側および右側のうちもう一方における鎖骨上領域にあってよい。装置は、電気信号が閾値時間、例えば少なくとも7日間にわたり、褐色脂肪組織の貯蔵所に送られた後など、任意の時点で除去され再び位置付けられることができる。装置は、閾値時間にわたり、患者に電気信号を継続して送ることができる。いくつかの実施形態では、引き金事象に応じて、装置は、患者の組織との接触した状態から取り去られ、褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した患者の組織の別のエリアと接触するように再び位置付けられることができる。引き金事象には、患者の摂食、患者の休息、患者の閾値温度、患者の向き(directional orientation)、患者の体重の変化、患者の組織インピーダンスの変化、患者もしくは他の人間による手動での活性化、患者の血液化学の変化、および装置と電子通信しているコントローラーからの信号のうち少なくとも1つが含まれ得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、方法は、電気信号の印加を止めることと、所定の期間、待機することと、褐色脂肪組織の貯蔵所を活性化し、褐色脂肪組織のエネルギー消費を増やすよう、患者に別の電気信号を送るために装置を活性化することと、を含むことができる。止めることと、待機することと、活性化することとは、閾値事象が起こるまで繰り返されてよい。閾値事象には、例えば、所定の期間、および所定の生理学的作用のうち少なくとも一方が含まれ得る。
【0016】
装置は、患者もしくは褐色脂肪組織を冷やすことなく、かつ/または褐色脂肪組織を活性化するいかなる薬剤も患者に投与することなく、活性化されて患者に電気信号を送り、褐色脂肪組織を活性化することができる。
【0017】
方法は、褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて第2の装置を位置付けることと、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所を活性化し、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所のエネルギー消費を増やすよう、患者に第2の電気信号を送るために第2の装置を活性化することと、をオプションとして含むことができる。第2の装置は、装置が電気信号を患者に送るのと同時に、第2の電気信号を患者に送ることができる。
【0018】
方法は、いくつかのバリエーションを有し得る。例えば、方法は、第1の所定の閾値事象が起こるまで電気信号の電力を減少させることと、その後、第2の所定の閾値事象が起こるまで電気信号の電力を増加させることと、を含むことができる。別の実施例では、装置は、患者の摂食、患者の休息、患者の閾値温度、患者の向き、患者の体重の変化、患者の組織インピーダンスの変化、患者もしくは他の人間による手動での活性化、患者の血液化学の変化、および、装置と電子通信しているコントローラーからの信号のうち少なくとも1つを含む引き金事象に応じて、活性化されることができる。さらに別の実施例では、方法は、褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した患者の組織に接触させて装置を位置付ける前に、褐色脂肪組織の貯蔵所を突き止めるため、患者を撮像することを含み得る。
【0019】
別の実施形態では、医療方法が提供され、この方法は、褐色脂肪組織の第1の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて装置を位置付けることと、第1の貯蔵所を活性化し、第1の貯蔵所のエネルギー消費を増やすよう、患者に第1の電気信号を送るために装置を活性化することと、第1の閾値事象が起こるまで患者に第1の電気信号を送ることと、第1の閾値事象が起こったら、患者に第1の電気信号を送るのを止めることと、褐色脂肪組織の第2の貯蔵所を活性化し、第2の貯蔵所のエネルギー消費を増やすよう、患者に第2の電気信号を送ることと、第2の閾値事象が起こるまで患者に第2の電気信号を送ることと、第2の閾値事象が起こったら、第2の電気信号を送るのを止めることと、を含む。
【0020】
第1および第2の電気信号は、様々な特徴を有し得る。例えば、第1および第2の電気信号はそれぞれ、変調信号、および搬送波信号を有することができる。変調信号は、約0.1〜100Hzの範囲の活性化周波数を有してよく、搬送波信号は、約10〜400kHzの範囲の搬送波周波数を有することができる。別の実施例では、第1および第2の電気信号は、患者に同時に送られてよい。さらに別の実施例では、第1および第2の電気信号は、患者に連続して送られてよく、患者は、第1および第2の電気信号のうち一方のみを一度に受信する。第2の閾値事象が起こると、第1の貯蔵所に近接した患者の組織と接触している装置は、第1の貯蔵所を活性化し、第1の貯蔵所のエネルギー消費を増やすよう、患者に第3の電気信号を送るために活性化され得る。
【0021】
第1および第2の閾値事象は様々であってよく、それらは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、第1の閾値事象には、第1の所定の期間の経過が含まれてよく、第2の閾値事象には、第2の所定の期間の経過が含まれてよい。第1および第2の所定の期間は、様々であってよく、それらもまた、互いに同じであっても、異なっていてもよい。例えば、第1および第2の所定の期間はそれぞれ、少なくとも約24時間であってよく、例えば、それぞれ、少なくとも約7日間であってもよい。
【0022】
褐色脂肪組織の第1および第2の貯蔵所は、患者のどこに位置していてもよく、例えば、第1の貯蔵所は、患者の矢状面の左側および右側のうち一方に位置してよく、第2の貯蔵所は、患者の矢状面の左側および右側のうちもう一方に位置してよい。
【0023】
方法は、様々な方法で異なっていてよい。例えば、患者に第2の電気信号を送る前に、装置は、患者に第2の電気信号を送る装置を用いて、第2の貯蔵所に近接した患者の組織に接触するように再び位置付けられてよい。別の実施例では、第2の装置が、第2の貯蔵所に近接した患者の組織と接触して位置付けられてよく、この第2の装置は、患者に第2の電気信号を送るのに使用され得る。
【0024】
別の態様では、医療装置が提供され、この医療装置は、褐色脂肪組織に近接した患者の身体と直接接触して配されるように構成されたハウジングと、ハウジング内に位置し、電気信号を発生させ、その電気信号を患者の身体に送って、褐色脂肪組織を電気刺激するように構成された、信号発生器と、を含む。電気信号は、様々な構成を有してよく、例えば、最大約20Vの振幅を有する電圧を有し、約5〜10Hzの範囲の活性化周波数を有し、また、約200〜250kHzの範囲の搬送波周波数を有する。
【0025】
ハウジング、例えば、患者に取り付けられるパッチのハウジングは、様々なサイズ、形状、および構成を有することができる。ハウジングは、例えば患者の外皮表面と直接接触した電極を用いて、電気信号を経皮的に送るため、患者の外皮表面に取り付けられるように構成されてよい。別の実施形態では、ハウジングは、少なくとも部分的に患者内部に植え込まれる、例えば患者内部に完全に植え込まれて、患者に電気信号を皮下的に印加するように構成されてよい。ハウジングは、少なくとも1日間、患者の身体と継続的に直接接触するように構成されてよく、信号発生器は、電気信号を発生し、患者の身体にその電気信号を送る。
【0026】
いくつかの実施形態では、医療装置は、コントローラーも含んでよく、コントローラーは、信号発生器をオンにして、信号発生器に電気信号を発生させ始め、かつ/または、信号発生器をオフにして、信号発生器が電気信号を発生するのを止めるように構成される。コントローラーは、患者から離れて位置し、かつ信号発生器と電子通信するように、構成されてよい。コントローラーは、患者内部に完全に植え込まれるように構成されてもよい。
【0027】
別の態様では、医療方法が提供され、この方法は、褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて装置を位置付けることと、例えば交感神経刺激および/または褐色脂肪細胞を直接刺激することによって褐色脂肪組織を活性化し、褐色脂肪組織のエネルギー消費を増やすよう、患者に電気信号を送るために装置を活性化することと、を含む。患者の組織と接触させて装置を位置付けることは、患者の外皮表面に装置を経皮的に取り付けること、または、患者内部に装置を皮下的に位置付けることを含み得る。いくつかの実施形態では、患者は、患者の組織と接触させて装置を位置付ける前に、褐色脂肪組織の貯蔵所を突き止めるため撮像され得る。装置は、うなじ、肩甲骨、脊髄、BAT貯蔵所で終わる交感神経系の近位枝、および腎臓のうち少なくとも1つに近接して位置付けられてよい。いくつかの実施形態では、褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて装置を位置付けることは、脱分極された際に褐色脂肪組織の活性化をもたらす神経に近接して、装置を位置付けることを含み得る。電気信号は、様々な構成を有してよく、例えば、約20ボルトの振幅を有する電圧を有し、約5〜10Hzの範囲の活性化信号パルス周波数を有し、約200〜250kHzの範囲の搬送波周波数を有する。
【0028】
方法は、様々な方法で変化してよい。例えば、装置は、患者の摂食、患者の休息、患者の閾値温度、患者の向き、患者の体重の変化、患者の組織インピーダンスの変化、患者もしくは他の人間による手動での活性化、患者の血液化学の変化、および、装置と電子通信するコントローラーからの信号のうち少なくとも1つを含む、引き金事象に応じて、活性化されてよい。別の実施例では、装置は、患者もしくは褐色脂肪組織を冷やすことなく、かつ/または、褐色脂肪組織を活性化するいかなる薬剤も患者に投与することなく、活性化されて、患者に電気信号を送り褐色脂肪組織を活性化することができる。さらに別の実施例では、電気信号は、所定の期間、例えば少なくとも4週間、患者に継続して送られてよい。別の実施例では、方法は、電気信号の印加を止めることと、所定の期間、待機することと、褐色脂肪組織の貯蔵所を活性化し、褐色脂肪組織のエネルギー消費を増やすよう、患者に別の電気信号を送るために装置を活性化することと、を含むことができる。止めることと、待機することと、活性化することとは、閾値事象、例えば、所定の期間、および患者が落とした所定の体重量などの所定の生理学的作用のうち少なくとも一方が起こるまで、繰り返されてよい。別の実施例では、方法は、第1の所定の閾値事象が起こるまで(例えば、第1の所定の期間が経過するまで)電気信号の電力を減少させることと、その後、第2の所定の閾値事象が起こるまで(例えば、第1の所定の期間と同じでも異なっていてもよい第2の所定の期間が経過するまで)電気信号の電力を増加させることと、を含むことができる。さらに別の実施例では、第2の装置が、褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した患者の組織と接触して位置付けられてよく、第2の装置は、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所を活性化し、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所のエネルギー消費を増やすよう、患者に第2の電気信号を送るために活性化され得る。第2の装置は、装置が電気信号を患者に送るのと同時に、第2の電気信号を患者に送ることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、方法は、患者から装置を除去することと、褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて装置を再び位置付けることと、例えば交感神経刺激および/または褐色脂肪細胞の直接刺激によって褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所を活性化し、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所のエネルギー消費を増やすよう、患者に別の電気信号を送るように装置を活性化することと、を含むこともできる。装置は、閾値時間、例えば少なくとも7日間にわたり、電気信号が褐色脂肪組織の貯蔵所に送られた後で、除去され再び位置付けられることができる。あるいは、またはさらに、装置は、患者の摂食、患者の休息、患者の閾値温度、患者の向き、患者の体重の変化、患者の組織インピーダンスの変化、患者もしくは他の人間による手動での活性化、患者の血液化学の変化、および装置と電子通信しているコントローラーからの信号のうち少なくとも1つを含む、引き金事象に応じて、除去され再び位置付けられることができる。
【0030】
別の実施形態では、医療方法が提供され、この方法は、患者の身体上、例えば患者の皮膚上に装置を位置付けることと、その装置で電気信号を発生させることと、患者の体内のエネルギー消費を調整する組織を刺激するため電気信号を向ける(targeting)ことと、を含む。電気信号の少なくとも一部は、周期的であってよい。装置の少なくとも一部は、患者の体内に皮下的に位置付けられることができる。
【0031】
本発明は、添付図面と共に理解される以下の詳細な説明から、より十分に理解されるであろう。
【0032】
〔発明の詳細な説明〕
本明細書に開示する装置および方法の構造、機能、製造、および使用の原理の総合的な理解を提供するために、ある例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態のうち1つまたは複数を添付図面に示す。当業者は、本明細書に具体的に記載され、添付図面に示される装置および方法が、非限定的な例示的実施形態であること、ならびに、本発明の範囲が、請求項によってのみ定められることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して例示または記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。そのような改変および変形は、本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0033】
電気エネルギーを使用して褐色脂肪組織(BAT)を活性化する、様々な例示的な方法および装置が提供される。一般に、それらの方法および装置は、BATを活性化し、熱発生を増加させる、例えば患者における熱産生およびエネルギー消費を増やすことができ、これにより、経時的に、体重減少、患者の代謝の変化、例えば患者の基礎代謝率の増大、および、肥満に伴う共存症、例えば、II型糖尿病、高血圧等、の改善のうち1つまたは複数が生じ得る。例示的な実施形態では、医療装置が提供され、この医療装置は、BATを活性化する神経を電気刺激し、かつ/または褐色脂肪細胞を直接電気刺激することによりBATを活性化し、それによって、BATにおける熱発生を増加させ、エネルギー消費により体重減少を誘発する。このように、大きな外科的処置を行わずに、1つまたは複数の薬剤の投与に頼らずに、患者を冷却することに頼らずに、かつ患者の胃および/または他の消化器官を手術で変えることなく、体重減少を誘発させることができる。
【0034】
ルーワイ胃バイパス(Roux-en-Y gastric bypass)(RYGB)などの、肥満を治療する外科的処置後、患者は、げっ歯類モデル、例えばStylopoulos et al., "Roux-en-Y Gastric Bypass Enhances Energy Expenditure And Extends Lifespan In Diet-Induced Obese Rats," Obesity 17 (1 October 2009), 1839-47で、説明されるように、エネルギー消費の増加により体重が減少し得る。Stylopoulos et al.の追加データ(この非仮出願の出願日現在、先の記事その他には公開されていない)では、RYGBは、BATのミトコンドリア内の脱共役タンパク質である脱共役タンパク質(UCP1)レベルの増大、ならびにBAT内部の脂肪蓄積の大きさの著しい減少、およびBATの容量の増大とも関連していると示されている。したがって、RYGBはBATの活性化を引き起こすようであるが、前述したように、胃バイパスなどの、肥満を治療する外科的処置は、必ずしも様々な望ましくない結果をもたらすわけではないが、危険がある。したがって、RYGBのような大きな外科的処置をせず、代わりにエネルギー消費を増やす電気神経刺激を用いて、BATを活性化する装置および方法を提供する。
【0035】
BATを白色脂肪組織(WAT)の蓄積と区別する、BATの1つの特徴は、1つのBAT細胞中に多数のミトコンドリアがあることである。この特徴により、BATは、エネルギーを燃焼させるための優れた供給源となる。BATの別の際立った特徴は、活性化されると、UCP1が使用されて、熱生成を生じるアデノシン三リン酸(ATP)産生のプロセスを無効にする(introduce inefficiency)ことである。したがって、UCP1のアップレギュレーションは、BAT活性化のマーカーである。
【0036】
褐色脂肪細胞の活性化により、これらの細胞自体の内部の脂肪蓄積の可動化(mobilization)が引き起こされる。これにより、細胞外空間および血流からの、これらの細胞内へのFFAの輸送も増大される。血液中のFFAは、WAT中の脂肪細胞から代謝および放出された脂肪から、そして、摂取された脂肪から、主に得られる。交感神経系の刺激は、BATを生理学的に活性化する主要な手段である。交感神経刺激は、WAT中の脂肪分解、およびWATから血流中へのFFAの放出も誘発して、FFAレベルを維持する。このように、交感神経刺激は、最終的に、WATからBATへの脂質の移動を引き起こし、それに続いて、BATの熱生成能力の一部として、これらの脂質が酸化される。
【0037】
WAT中のトリグリセリドの蓄積を減少させることにより、BATの制御された活性化を最適化することができ、体重減少が生じる。当業者は、低温への暴露が、BATの活性化を引き起こし、体温調節に役立つことを理解するであろう。この知識により、陽電子放出断層撮影−コンピュータ断層撮影(PET−CT)画像法を用いてBATの場所を容易に評価することができる。図3は、寒い環境にさらされた患者のスキャン(左側の2つの画像)と、通常の暖かい環境でスキャンされた同じ患者のスキャン(右側の2つの画像)を示す。黒で示したところは、グルコース摂取が激しい領域、すなわち、脳、心臓、膀胱と、寒い環境ではBATである。しかしながら、これらの画像は、例えば、Rothwell et al, "A Role For Brown Adipose Tissue In Diet-Induced Thermogenesis," Nature, Vol. 281, 6 September 1979、およびVirtanen et al., "Functional Brown Adipose Tissue in Healthy Adults," The New England Journal of Medicine. Vol. 360, No. 15, April 9, 2009, 1518- 1525、により参照されるように、BAT貯蔵所の場所、すなわち、うなじ、鎖骨上領域、肩甲骨の上、脊髄のそば、および腎臓の周り、を示す。
【0038】
当業者は、例えば、J. M. Heaton, "The Distribution Of Brown Adipose Tissue In The Human," J Anat., 1972 May, 1 12(Pt 1): 35-39、およびW.D. van Marken Lichtenbelt et al, "Cold- Activated Brown Adipose Tissue in Healthy Men," N. Engl. J. Med., 2009 April, 360, 1500-1508で示されるように、成人がかなりのBAT貯蔵所を有することを理解するであろう。当業者は、例えば、Lever et al., "Demonstration Of A Catecholaminergic Innervation In Human Perirenal Brown Adipose Tissue At Various Ages In The Adult," Anat Rec. 1986 July, 215(3): 251-5, 227-9で示されるように、BATが交感神経系によりはなはだしく神経支配されることも理解するであろう。さらに、「ノルエピネフリン(NPYではない)を含有する細かい無髄神経線維は、実際に褐色脂肪細胞自体を神経支配するものである。それらの線維は、各褐色脂肪細胞(通過ボタン(bouton-en-passant))と接触しながら、組織内部に密集したネットワークを形成し、それらのノルエピネフリンの放出により、熱産生が激しく刺激され、長期にわたって、褐色脂肪組織の漸増が引き起こされる」。B. Cannon, and J. Nedergaard, " Brown Adipose Tissue: Function And Physiological Significance," Physiol Rev., 2004: 84: 277-359。
【0039】
BATを神経支配する神経を刺激して、UCP1を活性化でき、したがって、BATを神経支配する神経の経皮的および/または直接刺激による熱放散を通じてエネルギー消費を増大させることができる。経皮的および直接刺激はそれぞれ、以下でより詳細に論じる。
【0040】
いくつかの実施形態では、BATを神経支配する神経の経皮的および/または直接刺激は、BATの経皮的および/もしくは直接刺激の前ならびに/または後で、1つまたは複数の治療と組み合わせられてよく、これは、BATの刺激の促進および/または患者内のBATの量の増加に役立つことができる。非限定的な実施例では、薬を患者に投与することができ、その患者は冷却されてよく、患者は暖められてよく、磁場を患者の領域に向けることができ、BAT刺激処置が、患者に対し、BAT貯蔵所および/またはBATを神経支配する神経に向けて行われてよく、患者は、体重減少療法に携わることができ、かつ/または、体重減少を誘発し、かつ/もしくは代謝機能、例えばグルコース恒常性(glucose homeostatis)、脂質代謝、免疫機能、炎症/消炎のバランス等、を改善する処置などの外科的処置を、患者に行うことができる。患者を冷却する非限定的な例には、冷湿布をしばらくの間、患者の皮膚に貼ることが含まれる。この冷湿布は、冷温レセプター(cold receptors)が多く集中している皮膚領域、例えば手首、足首の近く、および/または感熱性の一過性受容器電位(TRP)チャネル(例えばTRPA1、TRPV1、TRPM8など)を有する領域に貼り付けられてよい。代わりに、または加えて、冷湿布は、BAT貯蔵所に近接した皮膚に、かつ/またはBAT貯蔵所を神経支配する神経に、貼り付けられてもよい。例えば植え込まれた電気刺激装置を使用した、電気刺激の場合、BAT貯蔵所が、低下した体温に関連するメカニズムを通じて同時に活性化および電気刺激されることができ、それにより、BATのさらなる追加的または相乗的な活性化が潜在的にさらに促進される。BATを神経支配する神経を刺激するよう構成された神経刺激技術の非限定的な例には、その神経の活動電位、例えば電気、光、機械的操作もしくは振動、磁場、化学物質などを誘発する媒体を神経に送達することが含まれる。BAT刺激処置の非限定的な例は、筋肉、WAT、前脂肪細胞、または他の細胞の、BATへの分化を引き起こすこと、および/または、BAT細胞を患者に植え込むかもしくは移植すること、を含む。BAT細胞を植え込むかもしくは移植することの、非限定的な例は、細胞を患者から除去すること、除去した細胞を培養すること、培養した細胞を再び植え込むこと;細胞を別の患者から移植すること;胚幹細胞、成体幹細胞、もしくは他の供給源から成長した細胞を植え込むこと;細胞機能を改善するため細胞を遺伝学的、薬理学的、もしくは物理的に変えること、を含む。そのような体重減少療法の非限定的な例には、規定された食事、および規定された運動が含まれる。そのような外科的処置の非限定的な例には、胃バイパス、胆膵路転換手術、垂直袖状胃切除術(vertical sleeve gastrectomy)、調節可能な胃緊縛術、垂直帯胃形成術、胃内バルーン療法、胃ひだ形成術、Magenstrasse and Mill法、小腸転置、胆汁分流、迷走神経刺激、十二指腸腔内障壁、および胃から食物を除去することを可能にする処置、が含まれる。1つまたは複数の治療、特にBATを活性化させない体重減少療法もしくは体重減少外科的処置、例えば、RYGB、十二指腸の移転(duodenal switch)を伴うかもしくは伴わない胆膵路転換手術(BPD)、または何らかの十二指腸もしくは他の腸の障壁以外の処置(例えば規定された食事および/または運動プログラム、調節可能な胃緊縛術、垂直帯胃形成術、袖状胃切除術、胃ひだ形成術、Magenstrasse and Mill法、胃内バルーン療法、何らかの十二指腸もしくは他の腸の障壁、および小腸転置)を、本明細書で論じる神経刺激など、BATを急性もしくは慢性に活性化する手段と組み合わせることにより、組み合わせたアプローチを通じて望ましい患者結果を得ることができる。
【0041】
BATの活性化は局所的、限局的、または全身的に体温の上昇を引き起こし得るので、BATを神経支配する神経の経皮的および/または直接刺激は、BATの経皮的および/または直接刺激の前および/または後で、1つまたは複数の熱放散治療と組み合わせられることができる。そのような熱放散治療の非限定的な例は、皮膚/周縁の血管拡張を誘発すること、例えば、α拮抗薬もしくは遮断薬の局所もしくは全身投与、直接的な熱冷却等を含む。
【0042】
BATが直接かつ/または経皮的に活性化されるかどうかにかかわらず、BAT神経刺激および/または褐色脂肪細胞の直接刺激の標的エリアは、BAT貯蔵所に近接したエリア、例えば、鎖骨上領域、うなじ、肩甲骨の上、脊髄のそば、BAT貯蔵所で終わる交感神経系の近位枝の近く、および腎臓のうち少なくとも一方の周り、を含み得る。任意のBAT貯蔵所を、活性化のため選択することができる。非限定的な例では、図4に示す一実施形態において、装置(不図示)を、鎖骨上領域Sの肩甲骨の上のエリアに近接して位置付けることができる。活性化のための1つまたは複数のBAT貯蔵所の識別は、当業者には理解されるように、PET−CT画像法、断層撮影法、サーモグラフィー、または任意の他の技術を使用して患者を撮像またはスキャンし、患者のBAT貯蔵所を突き止めることにより、患者個人に合わせて決定され得る。非放射性の撮像技術を使用して、貯蔵所内部のBATの活性化と関連する血流の変化を測定することができる。一実施形態では、微生物を含有する造影剤を使用して、BATを突き止めることができる。造影剤は、BATが活性化されている患者に注入することができる。低周波数超音波などのエネルギー源を目的の領域に取り付けて、造影剤による気泡を破壊することができる。この空間を補充する速度を、定量化することができる。補充速度の増大は、活性なBAT貯蔵所と関連付けられ得る。別の実施形態では、蛍光媒体を含有する造影剤を使用して、BATを突き止めることができる。造影剤は、BATが活性化されている患者に注入することができる。針ベースのプローブ(needle based probe)を目的の領域に置くことができ、このプローブは、プローブを通過する蛍光造影剤の量をカウントすることができる。単位時間当たりのカウントの増加は、血流の増大に対応し、活性化したBAT貯蔵所と関連付けられることができる。ヒトは、比較的少量のBATを有することができるので、また、うなじなど、典型的なBAT貯蔵所の近くですら、どこでBATが最も広く行き渡っているかを予測することは困難であり得るので、より正確にBAT貯蔵所の位置を示すために患者を撮像することにより、BATを神経支配するより多くの神経が、非常に正確に刺激されることができる。患者の撮像を通じて識別された任意の数のBAT貯蔵所が、永続的または一時的なマーカーを用いて、将来参照するためにマークされてもよい。当業者には理解されるであろうが、任意のタイプのマーカー、例えば表皮の上および/または下に塗布されたインク、染料注入など、を使用してBAT貯蔵所をマークすることができる。マーカーは、紫外線、例えばブラックライトなどの特別な照明条件下で見えるようにのみ、構成され得る。
【0043】
BATが直接および/または経皮的に活性化されるかどうかにかかわらず、BAT神経刺激および/または褐色脂肪細胞の直接刺激のための標的細胞エリアは、細胞表面レセプター(例えば、TGR5、βAR、βAR、βARなど)、核レセプター(例えば、PPARγ、FXR、RXRなど)、転写コアクチベーターおよびコレプレッサー(例えば、PGClαなど)、細胞内分子(例えば、2型脱ヨード酵素(2-deiodinase)、MAPキナーゼなど)、UCP1アクチベーター、個々の細胞および関連成分(例えば、細胞表面、ミトコンドリア、および/またはオルガネラ)、輸送たんぱく質、PKA活性、ペリリピン、およびHSL(リン酸化PKA基質(phospho PKA substrate))、CREBP(cAMP応答エレメント−結合たんぱく質)、アデノシン一リン酸活性化たんぱく質キナーゼ(AMPK)、胆汁酸レセプター(例えば、TGR5、FGF15、FXR、RXRαなど)、ムスカリンレセプターなど、を含み得る。
【0044】
患者を治療する過程で、BAT神経および/または褐色脂肪細胞は、任意の1つまたは複数のBAT貯蔵所で直接的または間接的に刺激されてよく、同時に刺激されてよい。例えば、2つまたは3つ以上のBAT貯蔵所が同時に刺激されるか、または連続して刺激され、例えば、異なるBAT貯蔵所が、異なる時間に刺激される。BATの同時刺激は、より多くの、かつ/またはより速いエネルギー消費を促進するのに役立ち得る。BATの連続的な刺激は、標的神経の「消耗(burning out)」を防ぐのに役立つことができ、また、新しいBAT細胞の産生を刺激するのにも役立つ。連続的な神経刺激は、少なくとも1つの他のBAT貯蔵所が、先に活性化されたBAT貯蔵所を活性化する前に活性化された状態で、同じBAT貯蔵所を2回以上刺激することを含み得る。同時および/または連続的な刺激は、速成耐性(tachypylaxis)を防ぐのに役立ち得る。
【0045】
電気信号は、経皮的に送達されるか、または直接送達されるかにかかわらず、様々な方法で構成されることができる。時間振幅「上(on)」の刺激は、短い適用期間では、より高く、長い適用期間では、増大または減少し得る。電気信号は、印加電圧の任意の「形態(geometry)」、例えば、方形波、ランプ波(ramp waves)、正弦波、三角波、および複数の形態を含む波形、を有することができる。図5は、振幅、パルス幅、活性化信号パルス周波数、信号列(signal train)の持続時間、および一般的な(特定の数値パラメータなしの)電気信号の、信号列の開始間の時間、を示す。例示的な実施形態では、BATに送られる電気信号は、約1〜20Vの範囲、例えば約10V、例えば約4V、約7Vなどの振幅を有する電圧;約2〜6mAの範囲、例えば約3mAの振幅を有する電流;約10μs〜40msの範囲、例えば約0.1ms、約2ms、約20msなどのパルス幅;約0.1〜40Hzの範囲、例えば約6Hz、または約1〜20Hzの範囲の活性化信号パルス周波数;および、約1秒〜継続、例えば約30秒などの範囲の信号列の持続時間、を有し得る。BATに送られる非継続の電気信号の信号列の開始間の時間は、任意の規則正しい、予測可能な持続時間、例えば、1時間ごと(hourly)、毎日(daily)、調整された約24時間周期(coordinated around circadian)、超日周期(ultradian)、または他の目的の周期など、例えば、約10分もしくは約90分であってよく、あるいは、以下でさらに説明するように、任意の不規則な、予測不可能な持続時間、例えば、1つまたは複数の所定の引き金事象に応答するもの、であってもよい。
【0046】
非限定的な1つの実施例では、BATに継続的に送られた電気信号は、約7Vの振幅、約0.1msのパルス幅、約6Hzの活性化信号パルス周波数を有する、パルスであってよい。図6は、5日間にわたる、総エネルギー消費と、植え込まれた装置により肩甲骨間のBAT貯蔵所にこの電気信号が継続して直接送られる時間と、のグラフの一例を示している。この電気信号を使用した電気刺激の結果は、1日目の約970で始まるグラフ線により示され、非電気刺激の対照(control of non-electrical stimulation)は、1日目の約900で始まるグラフ線で示される。このグラフに示すように、電気信号の送達は、酸素消費量の持続的な増加を引き起こすことができ、これは、例示した実施例ではラットである被験者におけるエネルギー消費の増加と相互に関連する。経時的に、エネルギー消費の増加は、体重減少を引き起こし得る。5日間にわたりこの電気信号を受信した被験者の活動は、5日間にわたり電気刺激を受けなかった被験者の活動と同様であることが観察され、それにより、例示される、刺激を受けた被験者のエネルギー消費の増加は、電気刺激によるものであり、身体的活動の増加によるものではないこと、および、被験者は、刺激処理中、正常に振舞っていたこと、が示された。
【0047】
図7のグラフの一実施例では、酸素消費量が、48時間にわたる時間に対してプロットされており、ここでは、10分ごとに測定が行われている。図7の上のプロットでは、この電気信号を使用した電気刺激の結果が、時間0のときに、約825で始まるグラフ線で示され、非電気刺激の対照が、時間0のときに、約800で始まるグラフ線で示される。図7の下のプロットでは、この電気信号を使用した電気刺激の結果が、48時間の終わりに約9gのところにあるグラフ線で示されており、非電気刺激の対照が、48時間の終わりに約11gのところにあるグラフ線により示されている。電気刺激された動物について、エネルギー消費の持続的で穏やかな増加が、2つの明るい時間帯(two light time periods)、例えば動物が休息していた時に存在し、一方、電気刺激された動物について、エネルギー消費の、より顕著な増加が、2つの暗い時間帯(two dark time periods)、例えば動物が活動的で、かつ食事をしていた時に存在した。したがって、この電気信号で刺激された被験者が活動的で、かつ食事をしていた場合、エネルギー消費は実質的に増加したが、休息時には穏やかな増加が観察された。このような増加は、食事が誘発する熱発生と一致している。この増加は、図8のグラフの一例で示すように、継続した直接的な電気刺激が、被験者が食事をするときはいつでも、刺激されたBATが摂取カロリーを取り込み、それらを熱に変え、それにより経時的な体重減少を促進する用意ができていることを確実にするのを助け得ることも明らかにしている。体重は、図8では6週間にわたる時間に対してプロットされ、時間0は、すべての被験者に対して行われた、電極を植え込む手術時を表わし、3週間では、非対照群被験者に対する電気刺激の開始時間がマークされている。この電気信号を用いた電気刺激の結果は、時間0のときに約550gで始まるグラフ線により示され、非電気刺激の対照は、時間0のときに約560gで始まるグラフ線で示されている。図8は、3週間目にBATの電気刺激を始めた際に、電気刺激された動物が少なくとも6週目まで継続的な体重減少を経験したことを示している。それとは反対に、対照の電気刺激されていない動物は、3週目から開始する同じ期間中に体重が増え、結果として、刺激された群と刺激されていない群との間で約15%の体重差が生じた。
【0048】
別の非限定的な実施例では、BATに送られる電気信号は、約4Vの振幅、約20msのパルス幅、約6Hzの活性化信号パルス周波数、約30秒の信号列持続時間、および約10分の信号列開始間の時間を有する、パルスであってよい。図9は、BAT温度(℃)と、一患者のBAT貯蔵所へのこの電気信号の間欠性直接送達時間との、グラフの一例を示す。グラフに示すように、電気信号送達は、BAT温度の持続的な増大をもたらすことができ、これは、例示した実施例ではラットである被験者の核心温度の遅い増大と関係し得る。時間とともに、BAT温度の持続的な増大は、体重減少を生じ得る。
【0049】
別の非限定的な実施例では、BATに送られた電気信号は、約10Vの振幅、約2msのパルス幅、約6Hzの活性化信号パルス周波数、約30秒の信号列の持続時間、および、約10分の信号列開始間の時間を有する、パルスであってよい。図10は、被験者(例示されたこの実施例ではラット)への継続的な電気信号送達の5〜6時間目の間の、BAT温度と、一患者のBAT貯蔵所へのこの電気信号の間欠性直接送達時間との、グラフの一例を示す。核心温度は、時間5:15に約36.7℃で始まるグラフ線で示され、BAT温度は、時間5:15に約35.3℃で始まるグラフ線で示される。このグラフに示されるように、電気信号送達は、BATの持続的な活性化を生じ得る。時間とともに、BATの持続的な活性化は、体重減少を生じ得る。
【0050】
別の非限定的な実施例では、BATに送られる電気信号は、Shimizu et al., "Sympathetic Activation of Glucose Utilization in Brown Adipose Tissue in Rats," Journal of Biochemistry, Vol. 110, No. 5, 1991, pgs 688-692に、より詳細に記載されるように、方形の波形、約0〜20Vの振幅で変化する電圧、約5〜10Hzの範囲の活性化信号パルス周波数、約2msのパルス幅(持続時間)、約20秒の「オン」および約40秒の「オフ」の、パルス列オン/オフ時間、ならびに約11分の処置時間を有する、単相方形パルスとして構成されてよい。BATに送られ得る電気信号のさらなる非限定的な例は、Flaim et al., "Functional and Anatomical Characteristics of the Nerve-Brown Adipose Interation in the Rat," Pflugers Arch., 365, 9-14 (1976);Minokoshi et al., "Sympathetic Activation of Lipid Synthesis in Brown Adipose Tissue in the Rat," J. Psysio. (1988) 398, 361-70; Horwitz et al., "Norepinephrine-Induced Depolarization of Brown Fat Cells." Physiology (1969) 64, 113-20;および「Brown Adipose Tissue Utilization Through Neuromodulation」という名称で2010年5月5日に出願された米国特許出願公開第2010/0312295号に、さらに詳細に記載されている。
【0051】
一実施形態では、同じ電気信号を、絶え間なく、または連続的に、特定のBAT貯蔵所へ送ることができる。別の実施形態では、第1の電気信号が、経皮的に、または直接、特定のBAT貯蔵所に送られてよく、その後、その直後に、または、しばらく時間が経過した後で、第2の異なる電気信号を、同じ特定のBAT貯蔵所に送ることができる。このように、BAT貯蔵所が、特定の電気信号に適応する可能性を低減させることができ、それにより、BAT貯蔵所が電気刺激をあまり受容しなくなることを妨げるのに役立つ。
【0052】
継続的な電気信号もしくは間欠性電気信号が、例えば以下でさらに説明する経皮的パッチによって、経皮的に送られるか、または、少なくとも部分的に植え込まれた装置により皮下に送られるかにかかわらず、電気信号は、低周波変調信号および高周波搬送波信号を含んでよい。概して、高周波搬送波信号は、高インピーダンス組織(皮下または経皮的)を通過するのに使用されることができ、一方、変調信号は、神経組織および/または電気応答褐色脂肪細胞を活性化するのに使用され得る。波形は、パルス包絡線で搬送波形(carrier waveform)を変調することにより、発生させられ得る。振幅、周波数などの搬送波形の性質は、標的神経の組織インピーダンスおよび刺激閾値を克服するように選択されてよい。パルス包絡線は、標的神経を選択的に刺激するように設計された特定のパルス幅、振幅および形状を有する波形であってよい。この波形は、皮膚などの組織を効率よく貫通することができ、電気信号の強度の損失を最小限にして標的神経に到達することができるので、バッテリー電力が節約でき、これは、別の状況では、低周波信号で標的神経を刺激するいくつかの試みで使用されてきたものである。さらに、標的神経のみが刺激され、非標的神経、例えば疼痛と関連する神経は、刺激されない。高周波搬送波信号を含む信号を適用する方法および装置の例示的な実施形態は、「Implantable Pulse Generators And Methods For Selective Nerve Stimulation」という名称で2007年10月3日に出願された米国特許出願公開第2009/0093858号、「System And Method For Nerve Stimulation」という名称で2005年6月7日に出願された米国特許出願公開第2005/0277998号、および「System And Method For Selectively Stimulating Different Body Parts」という名称で2006年1月31日に出願された米国特許出願公開第2006/0195153号に、より詳細に記載されている。
【0053】
低周波変調信号および高周波搬送波信号はそれぞれ、様々な値および構成を有し得る。低周波変調信号は、例えば、約0.1〜100Hzの範囲、例えば約0.1〜40Hzの範囲、例えば約10Hz未満の、活性化信号パルス周波数を有する信号であってよい。高周波搬送波信号は、例えば約10〜400kHzの範囲、例えば約200〜250kHzの範囲であってよい。パルス幅はまた、例えば、約10μs〜10msの範囲、例えば約2ms未満で、変化してもよい。例示的な一実施形態では、電気信号は、約2〜15Hzの範囲、例えば約6Hzの変調信号、約210kHzの搬送波周波数、および約0.1〜2msの範囲のパルス幅を有してよい。図11は、低周波変調信号Lおよび高周波搬送波信号Hを含む、一般的な(特定された数値パラメータなしの)電気信号を示す。
【0054】
概して、低周波信号は、タイプAおよびBの線維、例えば有髄ニューロン、ならびにタイプCの線維、例えば無髄ニューロン、の活性化を引き起こすことができる。タイプCの線維を活性化させる信号は、タイプAおよびBの線維を活性化させる信号より大きい、例えば、パルス幅が長く、電流振幅が高くてよい。BAT貯蔵所を神経支配する節後線維は、タイプCの線維を含む可能性があるので、BAT貯蔵所は、低周波信号、例えば約300μsより大きなパルス幅を有する約10Hz未満の信号によって、活性化される。小径の無髄のタイプCの線維および小径で有髄のタイプBの線維といった節前神経も、BATを神経支配することができるので、やはり、BAT貯蔵所は、低周波信号、例えば約200μs未満のパルス幅を有する約10〜40Hzの信号によって活性化される。
【0055】
BAT貯蔵所に送られる電気信号は、所定の間隔で、散発的もしくはランダムな間隔で、1つもしくは複数の所定の引き金事象に応答して、または、それらの任意の組み合わせで、継続的に適用されることができる。信号が患者に継続的に送られる場合、患者に送られる信号が、標的神経もしくは組織を損傷しないことを確実にするように、特に注意を払わなければならない。非限定的な一例では、神経または組織の損傷は、複数の神経間に電気信号のエネルギーを分配するのを助けるため、比較的大きな表面積を有する電極を介して電気信号を継続的に送ることによって、完全に防ぐことはできないとしても低減することができる。間欠的に送られる電気信号では、神経の損傷は、信号が「オン」である時間より長い時間にわたり「オフ」となるオン/オフ比率を選択することによって、完全に防ぐことはできないとしても低減することができる。非限定的な実施例では、約1:19のオン/オフ比率で間欠的にBATに電気信号を送る、例えば電気信号を10分ごとに30秒間送る(30秒間オン/9.5分間オフ)ことは、神経の損傷を低減するかもしくは完全に防ぐのに役立ち得る。電気信号を送る装置は、1つまたは複数の所定の引き金事象、例えば装置により感知されるかまたは別様に装置に信号伝達される事象、に応答するように構成され得る。引き金事象の非限定的な例は、患者の摂食、患者の休息(例えば睡眠)、患者の閾値温度(例えば、刺激されたBAT貯蔵所の温度もしくは核心温度)、患者の向き(例えば、睡眠中によく見られる横になった状態)、患者の体重の変化、患者の組織インピーダンスの変化、患者もしくは他の人間による(例えば、内蔵コントローラーによる、有線もしくは無線接続されたコントローラーによる、または皮膚接触時の)手動での活性化、患者の血液化学の変化(例えば、ホルモンの変化)、低エネルギー消費、女性の月経周期、薬剤摂取(例えば、トピラマート、フェンフルラミン等の食欲抑制剤)、患者の超日周期もしくは他の日周期、ならびに有線および/または無線で装置と電気通信しているコントローラーからの、手動もしくは自動で発生した信号、を含む。一実施形態では、患者の摂食は、この非仮出願と同日出願で「Obesity Therapy And Heart Rate Variability」という名称の米国特許出願第12/980,695号(代理人整理番号100873−430(END6832USNP))、およびこの非仮出願と同日出願で「Obesity Therapy And Heart Rate Variability」という名称の米国特許出願第12/980,710号(代理人整理番号100873−436(END6832USNP1))でより詳細に論じられているように、心拍数の変動性を検出することにより判断することができる。コントローラーは、装置の内側にあるか、装置の外側で近く(locally)に位置するか、または、装置の外側で離れて位置することができる。当業者は認識するであろうが、コントローラーは、任意の方法で装置に連結されてよく、例えば、装置に配線で接続されたり、装置と無線通信したりしてよい。いくつかの実施形態では、複数の装置を患者に適用することができ、それらの装置のうち少なくとも2つが、異なる個々の引き金事象または引き金事象の組み合わせに基づいて電気信号を送るように構成されてよい。
【0056】
概して、BATの経皮刺激は、BAT貯蔵所の近くの患者の外皮表面に装置を取り付けることと、BAT貯蔵所に電気信号を送るよう、装置を活性化させることと、を含み得る。このように、電気信号は、BATを神経支配する神経を刺激することによって、かつ/または褐色脂肪細胞を直接刺激することによって、装置近くのBATを活性化させることができる。前述の通り、互いに同じかまたは異なる、2つまたは3つ以上の経皮的装置を、患者に対して、同じBAT貯蔵所の近くで、または異なるBAT貯蔵所に、同時に取り付けることができる。患者は、2つまたは3つ以上の経皮的に取り付けられた装置を有してよいが、そして、装置は、電気信号をBATに同時に送るように構成されてよいが、装置は、1回に1つの装置のみが電気信号を送るように構成されることができる。これも前述したように、経皮的装置は、患者の異なるBAT貯蔵所まで回転され、電気信号をBAT貯蔵所それぞれに送ることができる。患者の身体上の2つもしくは3つ以上の異なる場所の間で装置を回転させること、および/または使用されていないときに装置を患者から取り外すことは、神経または組織の脱感作および/または機能障害を妨げるのに役立つことができ、装置を身体に取り付けることの悪影響、例えば装置を皮膚に取り付ける接着剤による炎症を軽減するのに役立つことができ、かつ/あるいは、患者の身体上の複数の場所で新しいBATの生成または複製を刺激するのに役立つことができる。非限定的な実施例では、装置は、身体上の様々な位置に置かれて、BATの異なる領域の活性を調節することができる。一実施形態では、装置は、首の片側、例えば左側に、しばらくの間装着されて、その後、首の反対側、例えば右側に、その次の期間にわたり装着されることなどができる。別の実施形態では、装置は、BAT貯蔵所の前側、例えば患者の冠状面の片側上における左肩の前部に、しばらくの間装着されて、その後、BAT貯蔵所の、反対側である後ろ側、例えば患者の冠状面の反対側における左肩の後部に、その次の期間にわたり装着されることができる。図12に示す、さらに別の実施形態では、装置10は、身体12の鎖骨上領域内で矢状面Pの左側および右側のうち一方においてBAT貯蔵所の近くにしばらくの間装着されてよく、その後、装置10は、鎖骨上領域内で矢状面Pの左側および右側のうちもう一方において、別のBAT貯蔵所の近くに、その次の期間にわたり装着されてよい。図12では、同じ装置10が、身体12上の異なる組織表面または皮膚位置に連続して再配置されるものとして示されているが、本明細書で論じるように、装置のうち一方もしくは両方が植え込まれてよく、かつ/または、第1の装置が1つの場所に位置付けられ、第2の装置が第2の異なる場所に位置付けられるように2つの別個の装置が患者に使用されてもよい。
【0057】
一実施形態では、経皮的装置は、患者の第1の場所、例えば左鎖骨上領域に、第1の所定の期間、例えば1週間にわたり位置付けられてよく、その後、患者の第2の場所、例えば右鎖骨上領域に、第2の所定の期間、例えば1週間にわたり再配置されてよい。第1および第2の所定の期間は、互いに同じでも、異なっていてもよい。第1および第2の場所は、互いを鏡のように映すもの(mirror each other)であってもよく、例えば患者の矢状面の左および右であってよく、あるいは、それらの場所は、互いの鏡像でなくてもよい。第1の所定の期間中、装置は、患者を電気刺激する「オン」、例えば本明細書で論じるパラメータのうちいずれかを有する電気刺激の30分間の投与(30 minute dose)と、患者に電気刺激を送らない「オフ」、例えば刺激のない1時間との間の、起きている時間中の日周パターンで循環するように構成され得る。装置が「オン」であるときに送られる電気信号、例えば変調信号および搬送波信号を含む電気信号は、継続していてよく、「オン」時間の開始時に、所定の最大レベル、例えば患者の最初の診察中に医師が設定したレベルまで増加してよく、「オン」時間の終了時に減少してよく、そして、増加時間と減少時間との間で実質的に一定であってよい。この信号は、いかなる時間に増加および減少してもよく、例えば、約5分未満で増加および減少してよい。このような周期は、第1および第2の所定の期間それぞれの間、ならびに、その後のいかなる期間中も、1日当たり約12回繰り返されてよく、例えば、第1の場所と第2の場所との間で1週間おきに装置が繰り返し切り替えられる。
【0058】
別の実施形態では、経皮的装置は、患者の外皮表面上に位置付けられてよく、また、少なくとも1週間という期間にわたり自然な模倣パターン(natural mimicking pattern)で患者を電気刺激するように構成され得る。この装置は、患者の皮膚上の別の場所に置きなおされて、少なくとも1週間という別の期間にわたり、自然な模倣パターンで患者を、その別の場所で刺激することができる。この装置は、任意の数の週にわたり、配置および再配置され続けることができる。電気刺激は、固定搬送波周波数と、栄養、および患者の摂食を示す機械受容器に基づいて変化するように構成される可変変調周波数と、を含むことができる。言い換えれば、変調周波数は、患者の胃の膨張を模倣することができる。
【0059】
さらに別の実施形態では、経皮的装置が、患者の外皮表面上に位置付けられてよく、また、一定の強度で患者を間欠的に電気刺激するように、例えば、電気信号を一定の強度で患者に送る「オン」構成と、電気信号を患者に送らない「オフ」構成との間を循環するように構成されることができる。送られた電気信号は、「オン」時間の開始時に一定の強度まで増加することができ、また、「オン」時間の終了時にその一定の強度から減少することができる。この信号は、任意の時間に増加および減少することができ、例えば、「オン」時間合計の約4分の1にわたり増加し、「オン」時間合計の約2分の1にわたり一定の強度で信号を送り、「オン」時間合計の約4分の1にわたり減少することができる。一実施形態では、装置は、約50分の「オン」時間合計の間、約15分で約0Hzから約20Hzに増加し、約35分間約20Hzで刺激し、約10分で約20Hzから約0Hzまで減少することができる。
【0060】
BATを経皮的に活性化させるのに使用される経皮的装置は、様々なサイズ、形状、および構成を有することができる。概して、この装置は、患者もしくは他の人間による手動の引き金(manual trigger)に応答して、所定の引き金事象に応答して、または、それらの任意の組み合わせで、電気信号を発生させ、かつ/または、その電気信号を所定の間隔で組織に送るように構成されることができる。当業者には認識されるように、また、前記、および「Implantable Pulse Generators And Methods For Selective Nerve Stimulation」という名称で2007年10月3日に出願された米国特許出願公開第2009/0093858号でさらに詳細に論じられるように、身体は、低周波信号を減衰させ、経皮的通過のため高周波信号を必要とする。この高周波もしくは搬送波信号は、変調低周波と共に、経皮的装置により適用されて、体脂肪および体重の減少をもたらすFFAもしくは他の脂質の消費のため、BATを神経支配する神経を刺激することができる。
【0061】
図13は、電気信号を発生させ、その電気信号をBATなどの組織に送るように構成された選択的神経刺激パッチハウジングの形態の経皮的装置200の例示的な一実施形態を示す。装置200は、BATなどの組織を刺激するための電気信号を生成するように構成された、回路化基板(circuitized substrate)202を含む。装置200は、適切な電源もしくは電池208、例えばリチウム電池と、第1の波形発生器264と、第2の波形発生器266と、を含むことができる。第1の波形発生器264および第2の波形発生器266は、電池208に電気的に連結され、電池208により電力供給されることができる。波形発生器264、266は、型番NE555でテキサス州ダラスのTexas Instrumentsが販売するものなど、任意の適切なタイプのものであってよい。第1の波形発生器264は、第1の波形もしくは低周波変調信号268を発生させるように構成されてよく、第2の波形発生器266は、第1の波形268より高い周波数を有する第2の波形もしくは搬送波信号270を発生させるように構成されてよい。本明細書で論じるように、このような低周波変調信号は、標的神経を効率よく刺激するために、それ自体で身体組織を通過することができない。しかしながら、第2の波形270は、この問題を克服し、身体組織を貫通することができる。第2の波形270は、第1の波形268と共に、振幅変調器272、例えばTexas Instrumentsが販売するOn-Semi MC1496という名称を有する変調器に、適用され得る。
【0062】
変調器272は、変調波形274を発生させるように構成されてよく、この変調波形は、回路化基板202の底面でアクセス可能な1つまたは複数の電極232に送信される。図13は、1つの電極232のみ示しているが、装置200は、2つまたは3つ以上の電極を含んでよい。電極232は、今度は、変調波形274を標的神経に適用して、その標的神経を刺激するように構成され得る。図13および図14に示されるように、第1の波形268は方形波であってよく、第2の波形270は正弦波信号であってよい。当業者には認識されるであろうが、第2の波形270で第1の波形268を変調することにより、図14に示す構成を有する変調波形もしくは信号274が生じ得る。図14の信号は、二相性のものとして示されているが、この信号は、単相であってもよい。
【0063】
電気信号もしくは他の刺激手段を適用して神経を刺激するように構成された経皮的装置の様々な例示的実施形態が、「Nerve Stimulation Patches And Methods For Stimulating Selected Nerves」という名称で2007年11月16日に出願された米国特許出願公開第2009/0132018号、「Electrode Patch And Method For Neurostimulation」という名称で2006年12月19日に出願された米国特許出願公開第2008/0147146号、「System And Method For Nerve Stimulation」という名称で2005年6月7日に出願された米国特許出願公開第2005/0277998号、「System And Method For Selectively Stimulating Different Body Parts」という名称で2006年1月31日に出願された米国特許出願公開第2006/0195153号、「Conductive Mesh For Neurostimulation」という名称で2006年8月2日に出願された米国特許出願公開第2007/0185541号、「System And Method For Selectively Stimulating Different Body Parts」という名称で2006年1月31日に出願された米国特許出願公開第2006/0195146号、「System And Method For Affecting Gastric Functions」という名称で2006年12月1日に出願された米国特許出願公開第2008/0132962号、「Electrode Patch And Method For Neurostimulation」という名称で2006年12月19日に出願された米国特許出願公開第2008/0147146号、「Dermatome Stimulation Devices And Methods」という名称で2007年12月14日に出願された米国特許出願公開第2009/0157149号、「Implantable Antenna」という名称で2007年12月6日に出願された米国特許出願公開第2009/0149918号、「Nerve Stimulation Patches And Methods For Stimulating Selected Nerves」という名称で2007年11月16日に出願された米国特許出願公開第2009/0132018号、「Optimizing The Stimulus Current In A Surface Based Stimulation Device」という名称で2008年12月19日に出願された米国特許出願第12/317,193号、「Optimizing Stimulation Therapy Of An External Stimulating Device Based On Firing Of Action Potential In Target Nerve」という名称で2008年12月19日に出願された米国特許出願第12/317,194号、「Self-Locating, Multiple Application, And Multiple Location Medical Patch Systems And Methods Therefor」という名称で2009年3月20日に出願された米国特許出願第12/407,840号、「Offset Electrodes」という名称で2009年10月26日に出願された米国特許出願第12/605,409号に、さらに詳細に記載されている。
【0064】
例示的な実施形態では、経皮的装置は、外皮表面に適用され、かつその皮膚表面の下の組織に、例えば下にあるBATに、電気信号を送るように構成された、電気刺激パッチを含み得る。このパッチは、信号発生器でそれ自体の電気信号を発生させるように、かつ/または、パッチと電子通信している供給源からパッチが受信した電気信号を送るように、構成されてよい。この装置は、無線であってよく、また、内蔵供給源および/または外部供給源、例えば誘導送電により、電力を供給されてもよい。パッチは、当業者が認識するように、あらゆる方法で皮膚に貼り付けられることができる。パッチを貼り付ける非限定的な例には、局所的に(例えば、パッチの縁上に)皮膚用接着剤を使用すること、全体的に(例えば、パッチの皮膚接触表面上に)皮膚用接着剤を使用すること、上部を覆う支持体(overlying support)(例えば、テープ付きエッジ(taped edges)を有するガーゼ)を使用すること、交換性を可能にする粘着フレーム(例えば、ブレースもしくは衣料品)を使用すること、無線接続性(例えば、ブルートゥース)もしくは経皮的電極と共に皮下的に設置されること、および、これらの任意の組み合わせを使用すること、が含まれる。電極は、電極と電子通信しているコントローラーと相互作用するように構成された受信機回路を含んでよく、コントローラーは、電極の少なくともいくつかの機能、例えば電極のオン/オフ状態、および振幅、周波数、列(train)の長さなどのパラメータの調節、を制御することができる。
【0065】
使用中は、前述したように、電気刺激パッチは、必要に応じて、継続的にもしくは間欠的に装着されてよい。経皮的適用では、先に言及した米国特許出願公開第2009/0132018号に記載されるもののようなパッチは、高周波搬送波形と連結された神経を刺激するように設計された第1の波形を用いる二重波形アプローチ(dual waveform approach)を使用して、皮膚を通じて伝わるように設計され得る。パッチは、患者の背中の左鎖骨上領域上などのBAT貯蔵所に近接して、所定の期間、例えば12時間、1日、1週間未満、7日(1週間)、1ヶ月(4週間)など、にわたり設置されてよく、BATに継続的に電気信号を送ることができる。前述したように、BAT貯蔵所は、BAT貯蔵所に近接してパッチを貼り付ける前に患者を撮像することにより、識別され得る。接着剤が変化(modification)せずに患者の皮膚にくっついていられる最も長い期間は、恐らく7日間であるので、7日間が、接着剤でパッチが皮膚に貼り付けられる好適な所定の期間となり得る。この所定の期間経過後、パッチは、医療専門家または患者により除去されてよく、同じパッチ、または、さらに好ましくは新しいパッチが、例えば患者の背中の右鎖骨上領域上に、さらなる所定の期間にわたり設置されてよく、このさらなる所定の期間は、第1のパッチが患者に貼り付けられる際の所定の期間と同じであっても異なっていてもよい。このプロセスが、治療期間中、繰り返されてよく、この治療期間は、数日、数週間、数ヶ月、または数年であってよい。いくつかの実施形態では、このプロセスは、少なくとも1つの閾値事象、例えば、所定の期間、患者による所定量の体重減少等の所定の生理学的作用などが生じるまで、繰り返されることができる。同じパッチが、第1の領域、例えば左鎖骨上領域から、第2の領域である右鎖骨上領域へと移されたら、そのパッチは、第1の領域から除去された後であって、かつ第2の領域に設置される前に、再調整されることができる。再調整は、当業者が認識するような、任意の1つまたは複数の動作、例えば1つまたは複数のパッチ構成要素、例えば、電池、接着剤などを取り替えること、パッチを掃除することなどを含み得る。
【0066】
長期間にわたり患者に対し継続的または慢性的作用を有する体重減少手術をより正確にシミュレートするため、パッチは、患者上に置かれ、長期間、好ましくは所定の期間にわたり、継続的もしくは慢性的に患者に電気信号を送ることができる。例示的な実施形態では、この所定の期間は、少なくとも4週間であってよい。電気信号は、その所定の期間にわたり、同じBAT貯蔵所に送られてよく、あるいは、2つまたは3つ以上の異なるBAT貯蔵所が、この所定の期間中刺激されてよく、例えば、左および右鎖骨上領域が、7日間ずつ交互に、合計で1ヶ月の所定期間になるまで、刺激される。BATを活性化する、継続的もしくは慢性的な神経刺激は、経時的にBATのエネルギー消費を増大させ、潜在的には、周期的もしくは間欠的神経刺激より多いかまたは速い体重減少を誘発することができる。電気信号は、同じであってよく、または、その期間中変化してよく、電気信号は、手術の毎日24時間7日間の結果(24/7 consequences of surgery)を模倣する毎日24時間7日間の処置(24/7 treatment)を提供するため、患者に継続的かつ慢性的に適用される。患者が電気刺激される継続的期間は、任意の1つのBAT貯蔵所の継続的な活性化(例えば、単一のBAT貯蔵所の活性化)、2つもしくは3つ以上のBAT貯蔵所の連続的な活性化、2つもしくは3つ以上のBAT貯蔵所の同時活性化、またはこれらの任意の組み合わせの総量であってよい。異なるBAT貯蔵所の連続的な活性化の合計時間は、1つのBAT貯蔵所の活性化により、脳が他のBAT貯蔵所におけるBAT活性化の信号を送ることができるので、異なるBAT活性化エリアにもかかわらず、1つの長期の期間として考えられることができる。
【0067】
一般的に、BATの直接的な活性化は、皮膚表面の下でBAT貯蔵所に近接して、例えばBAT貯蔵所内部に、装置を植え込むことと、BAT貯蔵所を神経支配する神経および/または褐色脂肪細胞に直接電気信号を送るために装置を活性化させることと、を含み得る。BAT自体は、密に神経支配されており、各褐色脂肪細胞は、それ自体の神経終末と関連しており、このことは、BATを直接刺激することは、すべてではないとしても多くの褐色脂肪細胞を標的とし、神経を脱分極させることができ、BATの活性化をもたらすことを示唆している。BATを神経支配する交感神経は、当業者が理解するように、標準的な外科技術を通じて直接アクセスされ得る。装置は、神経上に植え込まれるか、あるいは、神経細胞の本体(nerve cell's body)もしくは核周部、樹状突起、終末分枝(telodendria)、シナプス、ミエリン鞘(myelin shelth)上、ランヴィエ絞輪、シュワン核(nucleus of Schwann)、もしくは他のグリア細胞に、またはその近くに設置されて、神経を刺激することができる。そのような装置を植え込むのには、外科的処置が必要となり得るが、そのような植え込みは、典型的には比較的短時間で、外来であり、胃バイパスなどの、時間がより長く、より複雑な外科的処置よりも大きくリスクが減少する。例示的な実施形態では、少なくとも2つの電極を備えた刺激装置は、患者に少なくとも部分的に、さらに好ましくは患者の体内に完全に、植え込まれてよい。当業者は、任意の数の電極、例えば1つまたは複数の電極が、患者に少なくとも部分的に植え込まれてよいことを、理解するであろう。少なくとも1つの電極のリード線が、BATを神経支配する神経に十分近接した場所に植え込まれてよく、活性化された際に、この少なくとも1つの電極を通じて送信された信号は、隣接する神経に十分に伝達され、これらの神経が脱分極される。前述したように、電極は、その電極と電子通信しているコントローラーと相互作用するように構成された受信機回路を含んでよく、コントローラーは、電極の少なくともいくつかの機能、例えば、電極のオン/オフ状態、および振幅、周波数、列の長さなどのパラメータの調節、を制御することができる。
【0068】
図15は、電気信号を発生させ、その電気信号をBATなどの組織に送るように構成された、植え込み可能な装置100の例示的な一実施形態を示している。植え込み可能な装置100は、適切な電源もしくは電池104、例えばリチウム電池、に連結されたハウジング102と、第1の波形発生器106と、第2の波形発生器108と、を含むことができる。例示された実施形態に見られるように、電池104ならびに、第1および第2の波形発生器は、ハウジング102内に位置してよい。別の実施形態では、電池は、ハウジングの外部にあってよく、ハウジングに有線または無線で連結されることができる。ハウジング102は、生体適合性材料で作られるのが好ましい。第1の波形発生器106および第2の波形発生器108は、電池104に電気的に連結され、電池104により電力供給されることができる。波形発生器106、108は、型番NE555でテキサス州ダラスのTexas Instrumentsが販売しているものなど、任意の適切なタイプのものであってよい。第1の波形発生器106は、第1の波形または低周波変調信号108を発生させるように構成されてよく、第2の波形発生器110は、第1の波形108より高い周波数を有する第2の波形または搬送波信号112を発生させるように構成されてよい。本明細書で論じるように、このような低周波変調信号は、標的神経を効率よく刺激するために、それ自体で身体組織を通過することはできない。しかしながら、第2の波形108は、この問題を克服し、身体組織を貫通することができる。第2の波形112は、第1の波形108と共に、Texas Instrumentsが販売するOn-Semi MC1496という名称を有する変調器などの振幅変調器114に適用され得る。
【0069】
変調器114は、変調波形116を発生させるように構成されてよく、変調波形116は、リード線118を通って1つまたは複数の電極120に伝達される。4つの電極が示されているが、装置100は、任意のサイズおよび形状を有する任意の数の電極を含むことができる。リード線118は、示された実施形態のように、可撓性であってよい。電極120は、次に、標的神経122を刺激するため、変調波形116を標的神経122に適用するように構成されることができる。図15および図16に示すように、第1の波形108は方形波であってよく、第2の波形112は正弦波信号であってよい。当業者は認識するであろうが、第2の波形112による第1の波形108の変調により、図11に示す構成を有する変調波形または信号116が生じ得る。
【0070】
電極が患者の皮下に植え込まれた場合、植え込まれた電極に送信される波形は、変調信号を含み得るが、搬送波信号を含まない。これは、植え込まれた電極がBAT貯蔵所に十分接近している場合、標的を刺激するのには、変調信号だけで十分となり得るためである。しかしながら、植え込まれた電極に送信される波形は、変調信号および搬送波信号の双方を含むことができる。
【0071】
神経を刺激するため電気信号を直接適用するように構成された装置の様々な例示的な実施形態が、「System And Method For Urodynamic Evaluation Utilizing Micro-Electronic Mechanical System」という名称で2005年1月26日に出願された米国特許出願公開第2005/0177067号、「System And Method For Urodynamic Evaluation Utilizing Micro Electro-Mechanical System Technology」という名称で2006年12月7日に出願された米国特許出願公開第2008/0139875号、「Implantable Pulse Generators And Methods For Selective Nerve Stimulation」という名称で2007年10月3日に出願された米国特許出願公開第2009/0093858号、「Piezoelectric Stimulation Device」という名称で2010年3月26日に出願された米国特許出願公開第2010/0249677号、「Low Frequency Transcutaneous Telemetry To Implanted Medical Device」という名称で2004年6月24日に出願された米国特許出願公開第2005/0288740号、「Low Frequency Transcutaneous Energy Transfer To Implanted Medical Device」という名称で2004年6月24日に出願された米国特許第7,599,743号、「Transcutaneous Energy Transfer Primary Coil With A High Aspect Ferrite Core」という名称で2004年6月24日に出願された米国特許第7,599,744号、「Spatially Decoupled Twin Secondary Coils For Optimizing Transcutaneous Energy Transfer (TET) Power Transfer Characteristics」という名称で2004年6月24日に出願された米国特許第7,191,007号、および「Interrogation And Remote Control Device」という名称で2004年11月30日に国際公開WO1989011701として公開された、欧州特許出願公開第377695号に、さらに詳細に記載されている。
【0072】
使用中、植え込み可能な電気刺激装置の少なくとも1つの電極は、BAT貯蔵所のエリアに置かれ、信号発生器に連結されることができる。当業者は理解されるであろうが、信号発生器は、様々なサイズ、形状、および構成を有してよく、患者の外側にあるか、または心臓ペースメーカーと同じように患者に植え込まれることができる。信号発生器は、BATに送られるべき電気信号を生成でき、例えば手動、自動などでいったん活性化されると継続的にオンであってよい。信号発生器は、患者の皮膚の外部にある装置と電子通信していて、その装置をオンおよびオフにし、信号の特徴を調節することなどができる。この外部の装置は、例えばベルト、ネックレス、シャツもしくは他の衣類、椅子もしくは枕などの家具もしくは設備、を用いて、患者の皮膚の近くに位置付けられることができ、あるいは、患者と同じ部屋または同じ建物内の他のどこかに位置する供給源など、患者の皮膚から距離をおいていてもよい。電気刺激装置は、活性化距離、例えば、電気刺激装置に電源を入れ、かつ/または電気刺激装置が電気信号を送り始めるには、電源にどのくらい近接すればよいのか、を制御するように構成された回路を含むことができる。これに対応して、外部の装置は、電気刺激装置の回路に信号を送信するように構成された送信機を含むことができる。信号発生器は、植え込まれると、内部電源、例えば電池、コンデンサー、刺激電極、運動エネルギー源、例えば、ワイヤーコイル(wired coils)内に位置付けられ、振動したり別様に動かされたりするとそのコイル内で電気信号を発生させるように構成された磁石など、を含むことができる。一実施形態では、電池は、フロリダ州レイクランドのSolicore, Inc.から入手可能なFlexion電池などの可撓性電池(flexible battery)を含むことができる。別の実施形態では、電池は、注入可能なナノ材料電池を含み得る。電源は、経皮的手段により、例えば経皮的エネルギー伝達(TET)もしくは誘導結合コイルを通じて、再充電されるように構成されてよく、かつ/または、電源がどれくらいの間装置に電力を供給することを目的としているかにかかわらず、長期間、例えば数ヶ月もしくは数年にわたり、電力を供給するように構成されてよい。いくつかの実施形態では、電源は、電池が取り替え可能もしくは再充電可能な場合、および/または装置の物的財産(device real estate)が、より小さく低電力の電池を使用して保存され得る場合などに、長期間より短い間、例えば約7日間、電力を供給するように構成されてよい。いくつかの実施形態では、信号発生器は、パルスを発生させるように構成された内蔵の電極パッチを含んでよく、それにより、電池の必要性がなくなる。
【0073】
信号発生器および/または装置もしくは外部の装置の任意の他の部分は、当業者には理解されるように、BATの活性化に関連する1つまたは複数の物理的信号を測定および記録するように構成され得る。非限定的な実施例では、物理的信号は、電圧、電流、インピーダンス、温度、時間、湿気、塩分、pH、ホルモンもしくは他の化学物質の濃度などを含み得る。記録された物理的信号は、システム性能および褐色脂肪活性化の効力の評価のため、患者の医師に対して提示され得る。また、記録された物理的信号は、閉ループフィードバック構成で使用されて、装置、例えばコントローラーが、治療に使用される電気信号の設定を動的に調節することを可能にし得る。
【0074】
本明細書に開示した装置は、1回使用した後で廃棄されるように設計されてよく、あるいは、複数回使用されるように設計されてもよい。しかしながら、いずれの場合も、装置は、少なくとも1回使用した後で、再利用のため再調整されることができる。再調整には、装置の分解工程、それに続く、特定の部品の洗浄もしくは取り替え工程、およびその後の再組立工程の任意の組み合わせを含んでよい。具体的には、装置は分解されてよく、任意の数の装置の特定の部品もしくは部分が、任意の組み合わせで選択的に取り替えられるか、または取り外されてよい。特定の部分の洗浄および/または取替えの際、装置は、再調整施設で、または外科的処置の直前に外科チームによって、次に使用するため再組立されることができる。当業者は、装置の再調整が、分解、洗浄/取替え、および再組立のための様々な技術を利用できることを、理解するであろう。そのような技術の使用、および結果として得られる再調整済みの装置はすべて、本出願の範囲内である。
【0075】
好適には、本明細書に記載する発明は、使用前に処理される。まず、新しい器具もしくは使用済みの器具を入手し、必要であれば洗浄する。この器具を次に滅菌することができる。1つの滅菌技術では、器具をプラスチックもしくはTYVEK袋などの閉鎖密封容器に入れる。この容器および器具を次に、γ放射線、x線、もしくは高エネルギー電子など、容器を貫通できる放射線場の中に置く。放射線が、器具上および容器内の細菌を死滅させる。滅菌された器具を次に、無菌容器内で保管することができる。密封容器は、その容器が医療施設で開封されるまで、器具を無菌に保つ。
【0076】
装置は滅菌されるのが好ましい。これは、βもしくはγ放射線、エチレンオキシド、蒸気および液浴(例えば、寒冷浸透)を含む、当業者に知られるいくつかの方法によって行われてよい。内部回路を含む装置を滅菌する例示的な実施形態が、「System And Method Of Sterilizing An Implantable Medical Device」という名称で2008年2月8日に出願された米国特許出願公開第2009/0202387号に、さらに詳細に記載されている。
【0077】
当業者は、前述した実施形態に基づいて、本発明のさらなる特徴および利点を理解するであろう。したがって、本発明は、請求項により示すものを除いて、具体的に図示および説明してきたものによって限定されるものではない。本明細書で引用したすべての刊行物および参考文献は、参照により全体として本明細書に明白に組み込まれるものである。
【0078】
〔実施の態様〕
(1) 医療方法において、
褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて装置を位置付けることと、
前記褐色脂肪組織を活性化させ、前記褐色脂肪組織のエネルギー消費を増加させるために前記患者に電気信号を送るよう、前記装置を活性化させることと、
を含み、
前記電気信号は、変調信号および搬送波信号を有する、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記搬送波信号は、約10〜400kHzの範囲の搬送波周波数を有する、方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記変調信号は、約0.1〜100Hzの範囲の活性化周波数を有する、方法。
(4) 実施態様1に記載の方法において、
前記変調信号は、約0.1〜100Hzの範囲の活性化周波数を有し、前記搬送波信号は、約10〜400kHzの範囲の搬送波周波数を有する、方法。
(5) 実施態様4に記載の方法において、
前記変調信号は、約10Hz未満の活性化周波数を有し、前記搬送波信号は、約200〜250kHzの範囲の搬送波周波数を有する、方法。
【0079】
(6) 実施態様1に記載の方法において、
前記電気信号は、約10μs〜10msの範囲のパルス幅を有する、方法。
(7) 実施態様1に記載の方法において、
前記電気信号は、約1〜20Vの範囲の振幅を有する電圧を有する、方法。
(8) 実施態様1に記載の方法において、
前記電気信号は、約2〜6mAの範囲の振幅を有する電流を有する、方法。
(9) 実施態様1に記載の方法において、
前記褐色脂肪組織の貯蔵所は、前記患者の鎖骨上領域内にある、方法。
(10) 実施態様1に記載の方法において、
患者の組織と接触させて装置を位置付けることは、前記患者の外皮表面に前記装置を経皮的に貼り付けることを含む、方法。
【0080】
(11) 実施態様1に記載の方法において、
患者の組織と接触させて装置を位置付けることは、前記患者の体内に前記装置の少なくとも一部を皮下的に位置付けることを含む、方法。
(12) 実施態様11に記載の方法において、
患者の組織と接触させて装置を位置付けることは、前記患者の体内に前記装置を完全に植え込むことを含む、方法。
(13) 実施態様1に記載の方法において、
前記電気信号は、所定の期間にわたり、前記患者に継続的に送られる、方法。
(14) 実施態様13に記載の方法において、
前記装置は、少なくとも1日間、前記患者の前記組織と継続的に直接接触するように構成され、前記装置は、前記電気信号を発生させ、少なくとも1日間、前記電気信号を前記患者に継続的に送る、方法。
(15) 実施態様13に記載の方法において、
前記所定の期間は、少なくとも4週間である、方法。
【0081】
(16) 実施態様1に記載の方法において、
前記装置を前記患者から取り外すことと、
褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触させて前記装置を再び位置付けることと、
褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所を活性化させ、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所のエネルギー消費を増加させるために、前記患者に別の電気信号を送るよう、前記装置を活性化することと、
をさらに含む、方法。
(17) 実施態様16に記載の方法において、
前記褐色脂肪組織の貯蔵所は、前記患者の矢状面の左側および右側のうち一方の鎖骨上領域内にあり、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所は、前記患者の前記矢状面の左側および右側のうちもう一方の鎖骨上領域内にある、方法。
(18) 実施態様16に記載の方法において、
前記装置は、前記電気信号が閾値期間にわたり前記褐色脂肪組織の貯蔵所に送られた後で、取り外され、再び位置付けられる、方法。
(19) 実施態様18に記載の方法において、
前記閾値期間は、少なくとも7日である、方法。
(20) 実施態様19に記載の方法において、
前記装置は、前記閾値期間の間、前記患者に前記電気信号を継続的に送る、方法。
【0082】
(21) 実施態様16に記載の方法において、
引き金事象に応答して、前記装置は、前記患者の組織と接触した状態から外され、褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した、前記患者の組織の別のエリアと接触するように再び位置付けられ、
前記引き金事象は、前記患者の摂食、前記患者の休息、前記患者の閾値温度、前記患者の向き、前記患者の体重の変化、前記患者の組織インピーダンスの変化、前記患者もしくは他の人間による手動での活性化、前記患者の血液化学の変化、および前記装置と電子通信しているコントローラーからの信号、のうちの少なくとも1つを含む、方法。
(22) 実施態様1に記載の方法において、
第1の所定の閾値事象が起こるまで前記電気信号の電力を減少させることと、
その後、第2の所定の閾値事象が起こるまで前記電気信号の前記電力を増大させることと、
をさらに含む、方法。
(23) 実施態様1に記載の方法において、
前記装置は、前記患者の摂食、前記患者の休息、前記患者の閾値温度、前記患者の向き、前記患者の体重の変化、前記患者の組織インピーダンスの変化、前記患者もしくは他の人間による手動での活性化、前記患者の血液化学の変化、および前記装置と電子通信しているコントローラーからの信号、のうち少なくとも1つを含む引き金事象に応答して活性化される、方法。
(24) 実施態様1に記載の方法において、
前記電気信号の適用を停止することと、
所定の期間待機することと、
前記褐色脂肪組織の貯蔵所を活性化させ、前記褐色脂肪組織のエネルギー消費を増大させるために、前記患者に別の電気信号を送るよう、前記装置を活性化させることと、
をさらに含む、方法。
(25) 実施態様24に記載の方法において、
閾値事象が起こるまで、前記停止すること、前記待機すること、および前記活性化させることを繰り返すことをさらに含む、方法。
【0083】
(26) 実施態様25に記載の方法において、
前記閾値事象は、所定の期間、および所定の生理学的作用のうち少なくとも一方を含む、方法。
(27) 実施態様1に記載の方法において、
前記装置は、前記患者または前記褐色脂肪組織を冷却せずに、前記褐色脂肪組織を活性化させるため、前記患者に電気信号を送るよう活性化される、方法。
(28) 実施態様1に記載の方法において、
前記褐色脂肪組織を活性させるいかなる医薬品も前記患者に投与することなく、前記褐色脂肪組織は、活性化され、前記褐色脂肪組織のエネルギー消費は、増大される、方法。
(29) 実施態様1に記載の方法において、
褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて装置を位置付けることは、鎖骨上領域、うなじ、肩甲骨、脊髄、BAT貯蔵所で終わる交感神経系の近位枝、および腎臓のうち少なくとも1つに近接して前記装置を位置付けることを含む、方法。
(30) 実施態様1に記載の方法において、
褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触させて第2の装置を位置付けることと、
褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所を活性化させ、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所のエネルギー消費を増大させるため、前記患者に第2の電気信号を送るよう前記第2の装置を活性化させることと、
をさらに含む、方法。
【0084】
(31) 実施態様30に記載の方法において、
前記第2の装置は、前記装置が前記電気信号を前記患者に送るのと同時に、前記第2の電気信号を前記患者に送る、方法。
(32) 実施態様1に記載の方法において、
前記褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触させて前記装置を位置付ける前に、前記褐色脂肪組織の貯蔵所を突き止めるために前記患者を撮像すること、
をさらに含む、方法。
(33) 実施態様1に記載の方法において、
前記装置は、
前記褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した前記患者の前記組織と直接接触して配されるように構成されたハウジングと、
前記ハウジングに連結され、前記電気信号を発生させ、前記電気信号を前記患者に送るように構成された、信号発生器と、
を含む、方法。
(34) 実施態様33に記載の方法において、
前記信号発生器は、前記ハウジング内部に位置する、方法。
(35) 実施態様33に記載の方法において、
前記ハウジングは、前記患者に貼り付けられたパッチのハウジングを含む、方法。
【0085】
(36) 実施態様33に記載の方法において、
前記装置は、コントローラーをさらに含み、前記コントローラーは、前記信号発生器をオンにして前記信号発生器に前記電気信号の発生を開始させるか、前記信号発生器をオフにして前記信号発生器が前記電気信号を発生させるのを停止するか、またはその両方を行うように構成される、方法。
(37) 実施態様36に記載の方法において、
前記コントローラーは、前記患者から離れて位置し、かつ前記信号発生器と電子通信するように、構成される、方法。
(38) 実施態様36に記載の方法において、
前記コントローラーは、前記患者の体内に完全に植え込まれるように構成される、方法。
(39) 医療方法において、
褐色脂肪組織の第1の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて装置を位置付けることと、
前記第1の貯蔵所を活性化し、前記第1の貯蔵所のエネルギー消費を増大させるため、前記患者に第1の電気信号を送るよう、前記装置を活性化させることと、
第1の閾値事象が起こるまで前記患者に前記第1の電気信号を送ることと、
前記第1の閾値事象が起こったとき、前記患者に前記第1の電気信号を送るのを停止することと、
褐色脂肪組織の第2の貯蔵所を活性化し、前記第2の貯蔵所のエネルギー消費を増大させるため、前記患者に第2の電気信号を送ることと、
第2の閾値事象が起こるまで、前記患者に前記第2の電気信号を送ることと、
前記第2の閾値事象が起こったとき、前記第2の電気信号を送るのを停止することと、
を含む、方法。
(40) 実施態様39に記載の方法において、
前記第1および第2の電気信号それぞれが、変調信号および搬送波信号を有する、方法。
【0086】
(41) 実施態様40に記載の方法において、
前記変調信号は、約0.1〜100Hzの範囲の活性化周波数を有し、前記搬送波信号は、約10〜400kHzの範囲の搬送波周波数を有する、方法。
(42) 実施態様39に記載の方法において、
前記第1の閾値事象は、第1の所定の期間の経過を含み、前記第2の閾値事象は、第2の所定の期間の経過を含む、方法。
(43) 実施態様42に記載の方法において、
前記第1および第2の所定の期間はそれぞれ、少なくとも約24時間である、方法。
(44) 実施態様42に記載の方法において、
前記第1および第2の所定の期間はそれぞれ、少なくとも約7日である、方法。
(45) 実施態様39に記載の方法において、
前記第1および第2の電気信号は、前記患者に同時に送られる、方法。
【0087】
(46) 実施態様39に記載の方法において、
前記第1および第2の電気信号は、前記患者に続けて送られ、前記患者は、前記第1および第2の電気信号のうち一方のみを一度に受信する、方法。
(47) 実施態様46に記載の方法において、
前記第2の閾値事象が起こったとき、前記第1の貯蔵所を活性化させ、前記第1の貯蔵所のエネルギー消費を増大させるため、前記患者に第3の電気信号を送るよう、前記第1の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触している前記装置を活性化させること、
をさらに含む、方法。
(48) 実施態様39に記載の方法において、
前記第1の貯蔵所は、前記患者の矢状面の左側および右側のうち一方に位置し、前記第2の貯蔵所は、前記患者の前記矢状面の左側および右側のうちもう一方に位置する、方法。
(49) 実施態様39に記載の方法において、
前記患者に前記第2の電気信号を送る前に、前記第2の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触するように前記装置を再び位置付け、前記患者に前記第2の電気信号を送るため前記装置を使用すること、
をさらに含む、方法。
(50) 実施態様39に記載の方法において、
前記第2の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触させて第2の装置を位置付け、前記患者に前記第2の電気信号を送るため前記第2の装置を使用すること、
をさらに含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】BAT細胞内部のミトコンドリアで起こる酸化的リン酸化サイクルの概略図である。
【図2】ミトコンドリアで起こる酸化的リン酸化サイクルを示すBATミトコンドリアの概略図である。
【図3】寒い環境にさらされた患者、および通常の暖かい環境にいる患者における、BAT貯蔵所の場所を示すPET−CT画像の概略図である。
【図4】ヒトの首の一部、胸、および網掛けにした鎖骨上領域のある肩エリアの透視図である。
【図5】一般的な電気信号の電圧 対 時間を示すグラフである。
【図6】被験者集団のBAT貯蔵所に送られた実験的な継続的直接電気信号について総エネルギー消費 対 時間を示し、かつ、刺激を受けない対照被験者集団について総エネルギー消費 対 時間を示す、グラフである。
【図7】図6の被験者集団のBAT貯蔵所に送られた実験的な継続的直接電気信号について酸素消費量 対 時間、および図6の刺激を受けない対照被験者集団について酸素消費量 対 時間の、第1のプロットを示し、図6の被験者集団においてBAT貯蔵所に送られた実験的な継続的直接電気信号について累積食物摂取量 対 時間、および図6の刺激を受けない対照被験者集団について累積食物摂取量 対 時間の、第2のプロットを示す、グラフである。
【図8】図6の被験者集団のBAT貯蔵所に送られた実験的な継続的直接電気信号について体重 対 時間を示し、かつ図6の刺激を受けない対照被験者集団について体重 対 時間を示す、グラフである。
【図9】一人の被験者においてBAT貯蔵所に送られた実験的な間欠的直接電気信号についてBAT温度 対 時間を示すグラフである。
【図10】一人の被験者においてBAT貯蔵所に送られた実験的な間欠的直接電気信号についてBATおよびコア温度 対 時間を示すグラフである。
【図11】低周波変調信号および高周波搬送波信号を含む一般的な電気信号について電圧 対 時間を示すグラフである。
【図12】身体の矢状面の両側に位置付けられた電気刺激装置の一実施形態を示す、身体の正面図である。
【図13】BATを刺激する経皮的装置の一実施形態の概略図である。
【図14】図13の経皮的装置により発生した例示的な波形を示す複数のグラフである。
【図15】BATを刺激する植え込み可能な装置の一実施形態の概略図である。
【図16】図15の植え込み可能な装置により発生した例示的な波形を示す複数のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療方法において、
褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて装置を位置付けることと、
前記褐色脂肪組織を活性化させ、前記褐色脂肪組織のエネルギー消費を増加させるために前記患者に電気信号を送るよう、前記装置を活性化させることと、
を含み、
前記電気信号は、変調信号および搬送波信号を有する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記搬送波信号は、約10〜400kHzの範囲の搬送波周波数を有する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記変調信号は、約0.1〜100Hzの範囲の活性化周波数を有する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記変調信号は、約0.1〜100Hzの範囲の活性化周波数を有し、前記搬送波信号は、約10〜400kHzの範囲の搬送波周波数を有する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記変調信号は、約10Hz未満の活性化周波数を有し、前記搬送波信号は、約200〜250kHzの範囲の搬送波周波数を有する、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記電気信号は、約10μs〜10msの範囲のパルス幅を有する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記電気信号は、約1〜20Vの範囲の振幅を有する電圧を有する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記電気信号は、約2〜6mAの範囲の振幅を有する電流を有する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記褐色脂肪組織の貯蔵所は、前記患者の鎖骨上領域内にある、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
患者の組織と接触させて装置を位置付けることは、前記患者の外皮表面に前記装置を経皮的に貼り付けることを含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
患者の組織と接触させて装置を位置付けることは、前記患者の体内に前記装置の少なくとも一部を皮下的に位置付けることを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
患者の組織と接触させて装置を位置付けることは、前記患者の体内に前記装置を完全に植え込むことを含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
前記電気信号は、所定の期間にわたり、前記患者に継続的に送られる、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記装置は、少なくとも1日間、前記患者の前記組織と継続的に直接接触するように構成され、前記装置は、前記電気信号を発生させ、少なくとも1日間、前記電気信号を前記患者に継続的に送る、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、
前記所定の期間は、少なくとも4週間である、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、
前記装置を前記患者から取り外すことと、
褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触させて前記装置を再び位置付けることと、
褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所を活性化させ、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所のエネルギー消費を増加させるために、前記患者に別の電気信号を送るよう、前記装置を活性化することと、
をさらに含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記褐色脂肪組織の貯蔵所は、前記患者の矢状面の左側および右側のうち一方の鎖骨上領域内にあり、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所は、前記患者の前記矢状面の左側および右側のうちもう一方の鎖骨上領域内にある、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法において、
前記装置は、前記電気信号が閾値期間にわたり前記褐色脂肪組織の貯蔵所に送られた後で、取り外され、再び位置付けられる、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、
前記閾値期間は、少なくとも7日である、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記装置は、前記閾値期間の間、前記患者に前記電気信号を継続的に送る、方法。
【請求項21】
請求項16に記載の方法において、
引き金事象に応答して、前記装置は、前記患者の組織と接触した状態から外され、褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した、前記患者の組織の別のエリアと接触するように再び位置付けられ、
前記引き金事象は、前記患者の摂食、前記患者の休息、前記患者の閾値温度、前記患者の向き、前記患者の体重の変化、前記患者の組織インピーダンスの変化、前記患者もしくは他の人間による手動での活性化、前記患者の血液化学の変化、および前記装置と電子通信しているコントローラーからの信号、のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法において、
第1の所定の閾値事象が起こるまで前記電気信号の電力を減少させることと、
その後、第2の所定の閾値事象が起こるまで前記電気信号の前記電力を増大させることと、
をさらに含む、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法において、
前記装置は、前記患者の摂食、前記患者の休息、前記患者の閾値温度、前記患者の向き、前記患者の体重の変化、前記患者の組織インピーダンスの変化、前記患者もしくは他の人間による手動での活性化、前記患者の血液化学の変化、および前記装置と電子通信しているコントローラーからの信号、のうち少なくとも1つを含む引き金事象に応答して活性化される、方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法において、
前記電気信号の適用を停止することと、
所定の期間待機することと、
前記褐色脂肪組織の貯蔵所を活性化させ、前記褐色脂肪組織のエネルギー消費を増大させるために、前記患者に別の電気信号を送るよう、前記装置を活性化させることと、
をさらに含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
閾値事象が起こるまで、前記停止すること、前記待機すること、および前記活性化させることを繰り返すことをさらに含む、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、
前記閾値事象は、所定の期間、および所定の生理学的作用のうち少なくとも一方を含む、方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法において、
前記装置は、前記患者または前記褐色脂肪組織を冷却せずに、前記褐色脂肪組織を活性化させるため、前記患者に電気信号を送るよう活性化される、方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法において、
前記褐色脂肪組織を活性させるいかなる医薬品も前記患者に投与することなく、前記褐色脂肪組織は、活性化され、前記褐色脂肪組織のエネルギー消費は、増大される、方法。
【請求項29】
請求項1に記載の方法において、
褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて装置を位置付けることは、鎖骨上領域、うなじ、肩甲骨、脊髄、BAT貯蔵所で終わる交感神経系の近位枝、および腎臓のうち少なくとも1つに近接して前記装置を位置付けることを含む、方法。
【請求項30】
請求項1に記載の方法において、
褐色脂肪組織の別の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触させて第2の装置を位置付けることと、
褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所を活性化させ、褐色脂肪組織のもう一方の貯蔵所のエネルギー消費を増大させるため、前記患者に第2の電気信号を送るよう前記第2の装置を活性化させることと、
をさらに含む、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、
前記第2の装置は、前記装置が前記電気信号を前記患者に送るのと同時に、前記第2の電気信号を前記患者に送る、方法。
【請求項32】
請求項1に記載の方法において、
前記褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触させて前記装置を位置付ける前に、前記褐色脂肪組織の貯蔵所を突き止めるために前記患者を撮像すること、
をさらに含む、方法。
【請求項33】
請求項1に記載の方法において、
前記装置は、
前記褐色脂肪組織の貯蔵所に近接した前記患者の前記組織と直接接触して配されるように構成されたハウジングと、
前記ハウジングに連結され、前記電気信号を発生させ、前記電気信号を前記患者に送るように構成された、信号発生器と、
を含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、
前記信号発生器は、前記ハウジング内部に位置する、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法において、
前記ハウジングは、前記患者に貼り付けられたパッチのハウジングを含む、方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法において、
前記装置は、コントローラーをさらに含み、前記コントローラーは、前記信号発生器をオンにして前記信号発生器に前記電気信号の発生を開始させるか、前記信号発生器をオフにして前記信号発生器が前記電気信号を発生させるのを停止するか、またはその両方を行うように構成される、方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、
前記コントローラーは、前記患者から離れて位置し、かつ前記信号発生器と電子通信するように、構成される、方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法において、
前記コントローラーは、前記患者の体内に完全に植え込まれるように構成される、方法。
【請求項39】
医療方法において、
褐色脂肪組織の第1の貯蔵所に近接した患者の組織と接触させて装置を位置付けることと、
前記第1の貯蔵所を活性化し、前記第1の貯蔵所のエネルギー消費を増大させるため、前記患者に第1の電気信号を送るよう、前記装置を活性化させることと、
第1の閾値事象が起こるまで前記患者に前記第1の電気信号を送ることと、
前記第1の閾値事象が起こったとき、前記患者に前記第1の電気信号を送るのを停止することと、
褐色脂肪組織の第2の貯蔵所を活性化し、前記第2の貯蔵所のエネルギー消費を増大させるため、前記患者に第2の電気信号を送ることと、
第2の閾値事象が起こるまで、前記患者に前記第2の電気信号を送ることと、
前記第2の閾値事象が起こったとき、前記第2の電気信号を送るのを停止することと、
を含む、方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、
前記第1および第2の電気信号それぞれが、変調信号および搬送波信号を有する、方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法において、
前記変調信号は、約0.1〜100Hzの範囲の活性化周波数を有し、前記搬送波信号は、約10〜400kHzの範囲の搬送波周波数を有する、方法。
【請求項42】
請求項39に記載の方法において、
前記第1の閾値事象は、第1の所定の期間の経過を含み、前記第2の閾値事象は、第2の所定の期間の経過を含む、方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法において、
前記第1および第2の所定の期間はそれぞれ、少なくとも約24時間である、方法。
【請求項44】
請求項42に記載の方法において、
前記第1および第2の所定の期間はそれぞれ、少なくとも約7日である、方法。
【請求項45】
請求項39に記載の方法において、
前記第1および第2の電気信号は、前記患者に同時に送られる、方法。
【請求項46】
請求項39に記載の方法において、
前記第1および第2の電気信号は、前記患者に続けて送られ、前記患者は、前記第1および第2の電気信号のうち一方のみを一度に受信する、方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法において、
前記第2の閾値事象が起こったとき、前記第1の貯蔵所を活性化させ、前記第1の貯蔵所のエネルギー消費を増大させるため、前記患者に第3の電気信号を送るよう、前記第1の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触している前記装置を活性化させること、
をさらに含む、方法。
【請求項48】
請求項39に記載の方法において、
前記第1の貯蔵所は、前記患者の矢状面の左側および右側のうち一方に位置し、前記第2の貯蔵所は、前記患者の前記矢状面の左側および右側のうちもう一方に位置する、方法。
【請求項49】
請求項39に記載の方法において、
前記患者に前記第2の電気信号を送る前に、前記第2の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触するように前記装置を再び位置付け、前記患者に前記第2の電気信号を送るため前記装置を使用すること、
をさらに含む、方法。
【請求項50】
請求項39に記載の方法において、
前記第2の貯蔵所に近接した前記患者の組織と接触させて第2の装置を位置付け、前記患者に前記第2の電気信号を送るため前記第2の装置を使用すること、
をさらに含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−517835(P2013−517835A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550003(P2012−550003)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/062464
【国際公開番号】WO2011/090764
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(595057890)エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド (743)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
【出願人】(593030244)ザ、ジェネラル、ホスピタル、コーポレイション (8)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITAL CORPORATION
【Fターム(参考)】