説明

電気二重層キャパシタ用電解液およびこれを用いた電気二重層キャパシタ

【課題】長期間の耐久性を高めることができ、ガス発生の少ない電気二重層キャパシタ用電解液を提供することを目的とする。
【解決手段】窒素原子に対してベータ位にある炭素原子(Cb)を1個以上有し、かつ炭素数5〜10であり、かつ環を形成していてもよく、かつ水素原子の代わりにハロゲン原子で置換されていてもよいテトラアルキルアンモニウムカチオン(A)とアニオン(B)からなるテトラアルキルアンモニウム塩(D)であって、該炭素原子(Cb)に共有結合した水素原子の合計数が0または1であるテトラアルキルアンモニウム塩(D)、および有機溶媒(S)を含有してなる電気二重層キャパシタ用電解液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ用電解液およびそれを用いた電気二重層キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気二重層キャパシタの電解質にはテトラエチルアンモニウム=テトラフルオロボラート(以下、TEA・BFと記載)塩、トリエチルメチルアンモニウム=テトラフルオロボラート(以下、TEMA・BFと記載)塩(例えば、特許文献1)が電解質として主に用いられており、エチルトリメチルアンモニウム=テトラフルオロボラート(以下、ETMA・BFと記載)塩(例えば、特許文献2)も検討されている。近年、長期間、低温から高温の範囲において、しかもメンテナンスの困難な箇所で使用される風力発電のピッチ制御等の新しい用途が広がっており、このような分野においては、キャパシタ内部でのガス発生が少なく、かつ長期の耐久性、信頼性の高い電気二重層キャパシタが要望されている。このためそれを構成する部材である電解液においても、化学的に安定で、長期使用が可能である電解液の開発が急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-23868
【特許文献2】特開2008-508736
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたTEA・BF塩やTEMA・BF塩を使用した場合、電解質塩の分解によるガス発生が多く、長期間の耐久性が低かった。また、特許文献2に記載されたETMA・BF塩は、イオン径が小さいため低温での抵抗を改善できるものの、長期間の耐久性は十分ではなく、実用化には至っていない。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するもので、長期間の耐久性を高めることができ、ガス発生の少ない電気二重層キャパシタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、窒素原子に対してベータ位にある炭素原子(Cb)を1個以上有し、かつ炭素数5〜10であり、かつ環を形成していてもよく、かつ水素原子の代わりにハロゲン原子で置換されていてもよいテトラアルキルアンモニウムカチオン(A)とアニオン(B)からなるテトラアルキルアンモニウム塩(D)であって、該炭素原子(Cb)に共有結合した水素原子の合計数が0または1であるテトラアルキルアンモニウム塩(D)、および有機溶媒(S)を含有してなる電気二重層キャパシタ用電解液;および該電気二重層キャパシタ用電解液を用いる電気二重層キャパシタである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電解液を使用することにより、電気二重層キャパシタの長期間の耐久性が高く、ガス発生の少ない、高信頼性の電気二重層キャパシタを構成できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、テトラアルキルアンモニウムカチオン(A)とアニオン(B)からなるテトラアルキルアンモニウム塩(D)および有機溶媒(S)を含有してなる。該カチオン(A)が窒素原子に対してベータ位にある炭素原子(Cb)を1個以上有し、かつ炭素数5〜10であり、かつ環を形成していてもよく、かつ水素原子の代わりにハロゲン原子で置換されていてもよいテトラアルキルアンモニウムカチオンであることを特徴とする。
ここで、窒素原子に対してベータ位にある炭素原子(Cb)とは、カチオン(A)において窒素原子が結合した炭素原子をアルファ位とし、その隣の炭素原子を言うものとする。
ベータ位の水素原子とは炭素原子(Cb)に結合した水素原子を言うものとする。
4級アンモニウム塩のベータ位の水素原子の数は、例えばTEA・BF塩においては、12である。同様にTEMA・BF塩ではベータ位の水素原子数8、ETMA・BF塩ではベータ位の水素原子数3である。また、本発明の電解液においては、例えばトリメチルネオペンチルアンモニウム=テトラフルオロボラート(以下、TMNPA・BFと記載)塩ではベータ位の水素原子数は0であり、トリメチルイソブチルアンモニウム(以下、TMIBA・BFと記載)塩ではベータ位の水素原子数は1である。なお、アジリジニウムカチオンの様な窒素原子を含む3員環においては、窒素原子に対して環を右回りで考えた場合のアルファ位に位置する炭素原子が、環を左回りで考えた場合のベータ位と一致することになるが、この場合はベータ位の炭素原子とは考えない。
一般に4級アンモニウム塩の分解反応は、ベータ位の水素に起因したホフマン分解反応により生じるとされており、エチル基を持つTEA・BF塩およびTEMA・BF塩においてはホフマン分解反応によりエチル基が脱離することにより、エチレンガスが発生する。本発明においては、ベータ位の水素数を0または1とすることにより、分解反応を抑制し、長期間の耐久性が高く、ガス発生の少ない、高信頼性の電気二重層キャパシタを構成できることを見出した。
【0009】
カチオン(A)の具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのうち2種類以上を併用することも可能である。
・炭素原子(Cb)1個、炭素数5のカチオン
(2,2,2−トリフルオロエチル)−トリメチルアンモニウム、(2,2−ジフルオロエチル)−トリメチルアンモニウム、(2,2,2−トリクロロエチル)−トリメチルアンモニウム、(2,2−ジクロロエチル)−トリメチルアンモニウム、(2,2,2−トリブロモエチル)−トリメチルアンモニウム、(2,2−ジブロモエチル)−トリメチルアンモニウム、(2,2,2−トリヨードエチル)−トリメチルアンモニウム、(2,2−ジヨードエチル)−トリメチルアンモニウム、(2,2,2−トリフルオロエチル)−メチルアジリジニウム、(2,2−ジフルオロエチル)−メチルアジリジニウム、(2,2,2−トリクロロエチル)−メチルアジリジニウム、(2,2−ジクロロエチル)−メチルアジリジニウム、(2,2,2−トリブロモエチル)−メチルアジリジニウム、(2,2−ジブロモエチル)−メチルアジリジニウム、(2,2,2−トリヨードエチル)−メチルアジリジニウム、(2,2−ジヨードエチル)−メチルアジリジニウムなど。
【0010】
・炭素原子(Cb)1個、炭素数6のカチオン
(2,2−ジフルオロ−n−プロピル)−トリメチルアンモニウム、(2−フルオロ−n−プロピル)−トリメチルアンモニウム、(2,2−ジクロロ−n−プロピル)−トリメチルアンモニウム、(2−クロロ−n−プロピル)−トリメチルアンモニウム、(2,2−ジブロモ−n−プロピル)−トリメチルアンモニウム、(2−ブロモ−n−プロピル)−トリメチルアンモニウム、(2,2−ジヨード−n−プロピル)−トリメチルアンモニウム、(2−ヨード−n−プロピル)−トリメチルアンモニウム、(2,2−ジフルオロ−n−プロピル)−メチルアジリジニウム、(2−フルオロ−n−プロピル)−メチルアジリジニウム、(2,2−ジクロロ−n−プロピル)−メチルアジリジニウム、(2−クロロ−n−プロピル)−メチルアジリジニウム、(2,2−ジブロモ−n−プロピル)−メチルアジリジニウム、(2−ブロモ−n−プロピル)−メチルアジリジニウム、(2,2−ジヨード−n−プロピル)−メチルアジリジニウム、(2−ヨード−n−プロピル)−メチルアジリジニウム、ジメチル−(2−フルオロ−2−メチル)アジチニウム、ジメチル−(2−クロロ−2−メチル)アジチニウム、ジメチル−(2−ブロモ−2−メチル)アジチニウム、ジメチル−(2−ヨード−2−メチル)アジチニウム、ジメチル−(2−メチル)アジチニウムなど。
【0011】
・炭素原子(Cb)1個、炭素数7のカチオン
トリメチルイソブチルアンモニウム、トリメチル−(2−フルオロ−2−メチル)−プロピルアンモニウム、トリメチル−(2−クロロ−2−メチル)−プロピルアンモニウム、トリメチル−(2−ブロモ−2−メチル)−プロピルアンモニウム、トリメチル−(2−ヨード−2−メチル)−プロピルアンモニウム、メチル−(2−フルオロ−2−メチル)−プロピルアジリジニウム、メチル−(2−クロロ−2−メチル)−プロピルアジリジニウム、メチル−(2−ブロモ−2−メチル)−プロピルアジリジニウム、メチル−(2−ヨード−2−メチル)−プロピルアジリジニウム、メチル−(2−メチル)−プロピルアジリジニウム、ジメチル−(2−フルオロ−2−エチル)アジチニウム、ジメチル−(2−クロロ−2−エチル)アジチニウム、ジメチル−(2−ブロモ−2−エチル)アジチニウム、ジメチル−(2−ヨード−2−エチル)アジチニウム、ジメチル−(2,2−ジメチル)アジチニウムなど
【0012】
・炭素原子(Cb)1個、炭素数8のカチオン
トリメチルネオペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−メチル)ブチルアンモニウム、ジメチル−(2−フルオロ−2−プロピル)アジチニウム、ジメチル−(2−クロロ−2−プロピル)アジチニウム、ジメチル−(2−ブロモ−2−プロピル)アジチニウム、ジメチル−(2−ヨード−2−プロピル)アジチニウム、ジメチル−(2−メチル−2−エチル)アジチニウム、トリメチル−(2−フルオロ)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジフルオロ)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−クロロ)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジクロロ)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−ブロモ)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジブロモ)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−ヨード)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジヨード)ペンチルアンモニウムなど。
【0013】
・炭素原子(Cb)1個、炭素数9のカチオン
トリメチル−(2−エチル−2−メチル)プロピルアンモニウム、トリメチル−(2−エチル)ブチルアンモニウム、トリメチル−(2−フルオロ−2−エチル)ブチルアンモニウム、トリメチル−(2−クロロ−2−エチル)ブチルアンモニウム、トリメチル−(2−ブロモ−2−エチル)ブチルアンモニウム、トリメチル−(2−ヨード−2−エチル)ブチルアンモニウム、トリメチル−(2−フルオロ−4−メチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジフルオロ−4−メチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−クロロ−4−メチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジクロロ−4−メチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−ブロモ−4−メチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジブロモ−4−メチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−ヨード−4−メチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジヨード−4−メチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−フルオロ)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジフルオロ)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2−クロロ)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジクロロ)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2−ブロモ)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジブロモ)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2−ヨード)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジヨード)ヘキシルアンモニウムなど。
【0014】
・炭素原子(Cb)1個、炭素数10のカチオン
トリメチル−(2−エチル−2−メチル)ブチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジメチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−メチル)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2−フルオロ−2−メチル)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2−クロロ−2−メチル)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2−ブロモ−2−メチル)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2−ヨード−2−メチル)ヘキシルアンモニウム、トリメチル−(2−エチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−フルオロ−2−エチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−クロロ−2−エチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−ブロモ−2−エチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−ヨード−2−エチル)ペンチルアンモニウム、トリメチル−(2−フルオロ)ヘプチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジフルオロ)ヘプチルアンモニウム、トリメチル−(2−クロロ)ヘプチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジクロロ)ヘプチルアンモニウム、トリメチル−(2−ブロモ)ヘプチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジブロモ)ヘプチルアンモニウム、トリメチル−(2−ヨード)ヘプチルアンモニウム、トリメチル−(2,2−ジヨード)ヘプチルアンモニウムなど。
【0015】
・炭素原子(Cb)2個、炭素数6のカチオン
ジメチル−(1,2−ジ−トリフルオロメチル)アジリジニウム、ジメチル−(1−トリフルオロメチル−2−フルオロメチル)アジリジニウム、ジメチル−(1,2−ジ−トリクロロメチル)アジリジニウム、ジメチル−(1−トリクロロメチル−2−ジクロロメチル)アジリジニウム、ジメチル−(1,2−ジ−トリブロモメチル)アジリジニウム、ジメチル−(1−トリブロモメチル−2−ジブロモメチル)アジリジニウム、ジメチル−(1,2−ジ−トリヨードメチル)アジリジニウム、ジメチル−(1−トリヨードメチル−2−ジヨードメチル)アジリジニウム、ジメチル−ジ−(2,2,2−トリフルオロエチル)アンモニウム、ジメチル−ジ−(2,2,2−トリクロロエチル)アンモニウム、ジメチル−ジ−(2,2,2−トリブロモエチル)アンモニウム、ジメチル−ジ−(2,2,2−トリヨードエチル)アンモニウムなど。
【0016】
・炭素原子(Cb)2個、炭素数7のカチオン
ジメチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)−(2−フルオロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)−(2,2−ジフルオロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリクロロエチル)−(2−クロロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリクロロエチル)−(2,2−ジクロロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリブロモエチル)−(2−ブロモ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリブロモエチル)−(2,2−ジブロモ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリヨードエチル)−(2−ヨード)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリヨードエチル)−(2,2−ジヨード)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,4,4−テトラフルオロ)ピペリジニウム、ジメチル−(2,2,4−トリフルオロ)ピペリジニウム、ジメチル−(2,2,4,4−テトラクロロ)ピペリジニウム、ジメチル−(2,2,4−トリクロロ)ピペリジニウム、ジメチル−(2,2,4,4−テトラブロモ)ピペリジニウム、ジメチル−(2,2,4−トリブロモ)ピペリジニウム、ジメチル−(2,2,4,4−テトラヨード)ピペリジニウム、ジメチル−(2,2,4−トリヨード)ピペリジニウム、ジメチル−(2−メチル−3,3−ジフルオロ)ピロリジニウム、ジメチル−(2−メチル−2,3,3−トリフルオロ)ピロリジニウム、ジメチル−(2−メチル−3,3−ジクロロ)ピロリジニウム、ジメチル−(2−メチル−2,3,3−トリクロロ)ピロリジニウム、ジメチル−(2−メチル−3,3−ジブロモ)ピロリジニウム、ジメチル−(2−メチル−2,3,3−トリブロモ)ピロリジニウム、ジメチル−(2−メチル−3,3−ジヨード)ピロリジニウム、ジメチル−(2−メチル−2,3,3−トリヨード)ピロリジニウムなど。
【0017】
・炭素原子(Cb)2個、炭素数8のカチオン
ジメチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)−(2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)−(2−フルオロ−2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリクロロエチル)−(2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリクロロエチル)−(2−クロロ−2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリブロモエチル)−(2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリブロモエチル)−(2−ブロモ−2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリヨードエチル)−(2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリヨードエチル)−(2−ヨード−2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−ジ(2,2−ジフルオロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−ジ(2,2−ジクロロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−ジ(2,2−ジブロモ)プロピルアンモニウム、ジメチル−ジ(2,2−ジヨード)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,5,5−テトラフルオロ)アゼピニウム、ジメチル−(2,2,5−トリフルオロ)アゼピニウム、ジメチル−(2,2,5,5−テトラクロロ)アゼピニウム、ジメチル−(2,2,5−トリクロロ)アゼピニウム、ジメチル−(2,2,5,5−テトラブロモ)アゼピニウム、ジメチル−(2,2,5−トリブロモ)アゼピニウム、ジメチル−(2,2,5,5−テトラヨード)アゼピニウム、ジメチル−(2,2,5−トリヨード)アゼピニウムなど。
【0018】
・炭素原子(Cb)2個、炭素数9のカチオン
ジメチル−(2,2,2−トリフルオロ)エチル−(2,2−ジメチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジフルオロ)エチル−(2,2−ジメチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリクロロ)エチル−(2,2−ジメチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジクロロ)エチル−(2,2−ジメチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリブロモ)エチル−(2,2−ジメチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジブロモ)エチル−(2,2−ジメチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,2−トリヨード)エチル−(2,2−ジメチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジヨード)エチル−(2,2−ジメチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2−メチル)プロピル−(2,2−ジフルオロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2−メチル)プロピル−(2,2−ジクロロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2−メチル)プロピル−(2,2−ジブロモ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2−メチル)プロピル−(2,2−ジヨード)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジフルオロ)ブチル−(2,2−ジフルオロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジクロロ)ブチル−(2,2−ジクロロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジブロモ)ブチル−(2,2−ジブロモ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジヨード)ブチル−(2,2−ジヨード)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2,3−トリメチル)ピロリジニウム、ジメチル−(2,2,3−トリメチル−3−フルオロ)ピロリジニウム、ジメチル−(2,2,3−トリメチル−3−クロロ)ピロリジニウム、ジメチル−(2,2,3−トリメチル−3−ブロモ)ピロリジニウム、ジメチル−(2,2,3−トリメチル−3−ヨード)ピロリジニウなど。
【0019】
・炭素原子(Cb)2個、炭素数10のカチオン
ジメチル−(2,2−ジメチル)プロピル−(2−フルオロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジメチル)プロピル−(2,2−ジフルオロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジメチル)プロピル−(2−クロロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジメチル)プロピル−(2,2−ジクロロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジメチル)プロピル−(2−ブロモ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジメチル)プロピル−(2,2−ジブロモ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジメチル)プロピル−(2−フルオロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジメチル)プロピル−(2,2−ジフルオロ)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジメチル)プロピル−(2−ヨード)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2,2−ジメチル)プロピル−(2,2−ジヨード)プロピルアンモニウム、ジメチル−ジ(2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2−メチル−2−フルオロ)プロピル−(2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2−メチル−2−クロロ)プロピル−(2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2−メチル−2−ブロモ)プロピル−(2−メチル)プロピルアンモニウム、ジメチル−(2−メチル−2−ヨード)プロピル−(2−メチル)プロピルアンモニウムなど。
【0020】
・炭素原子(Cb)3個以上のカチオン
メチル−トリ(2,2,2−トリフルオロ)エチルアンモニウム、メチル−トリ(2,2,2−トリクロロ)エチルアンモニウム、メチル−トリ(2,2,2−トリブロモ)エチルアンモニウム、メチル−トリ(2,2,2−トリヨード)エチルアンモニウム、メチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)−(2,2,3,3,−テトラフルオロ)ピロリジニウム、メチル−(2,2,2−トリクロロエチル)−(2,2,3,3,−テトラクロロ)ピロリジニウム、メチル−(2,2,2−トリブロモエチル)−(2,2,3,3,−テトラブロモ)ピロリジニウム、メチル−(2,2,2−トリヨードエチル)−(2,2,3,3,−テトラヨード)ピロリジニウム、メチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)−(2,2,4,4−テトラフルオロ)ピペリジニウム、メチル−(2,2,2−トリクロロエチル)−(2,2,4,4−テトラクロロ)ピペリジニウム、メチル−(2,2,2−トリブロモエチル)−(2,2,4,4−テトラブロモ)ピペリジニウム、メチル−(2,2,2−トリヨードエチル)−(2,2,4,4−テトラヨード)ピペリジニウム、メチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)−(2,2,3−トリメチル)ピロリジニウム、メチル−(2,2,2−トリクロロエチル)−(2,2,3−トリメチル)ピロリジニウム、メチル−(2,2,2−トリブロモエチル)−(2,2,3−トリメチル)ピロリジニウム、メチル−(2,2,2−トリブロモエチル)−(2,2,3−トリメチル)ピロリジニウム、メチル−(2,2,2−トリヨードエチル)−(2,2,3−トリメチル)ピロリジニウム、テトラ(2,2,2−トリフルオロエチル)アンモニウム、テトラ(2,2,2−トリクロロエチル)アンモニウム、テトラ(2,2,2−トリブロモエチル)アンモニウム、テトラ(2,2,2−トリヨードエチル)アンモニウムなど。
これらのうち、分子サイズの観点から好ましくは炭素数8以下のカチオンであり、より好ましくは、トリメチルネオペンチルアンモニウム、トリメチルイソブチルアンモニウム、トリメチル−(2−メチル)ブチルアンモニウムである。
【0021】
アニオン(B)の具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのうち2種類以上を併用することも可能である。
テトラフルオロボラート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、AsF、F、Cl、I、PCl、BCl、AsCl、SbCl、TaCl、NbCl、PBr、BBr、AsBr、AlBr、TaBr、NbBr、SbF、AlF、ClO、AlCl、TaF、NbF、CN、F(HF)(当該式中、nは1以上4以下の数値を表す)、N(RfSO、C(RfSO、RfSO、RfCO2などが挙げられる。
N(RfSO、C(RfSO、RfSO又はRfCO2で表されるアニオンに含まれるRfは、炭素数1〜12のフルオロアルキル基を表し、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル及びノナフルオロブチルなどが挙げられる。これらのうち、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル及びヘプタフルオロプロピルが好ましく、さらに好ましくはトリフルオロメチル及びペンタフルオロエチル、特に好ましくはトリフルオロメチルである。また、カルボン酸アニオン、より好ましくは芳香族カルボン酸アニオン、さらに好ましくはフタル酸アニオンなどが挙げられる。
以上のアニオンのうち、電気化学的安定性の観点等から、好ましくは、BF、PF、I又はN(RfSOで表されるアニオン、さらに好ましくはPF、I又はBFで表されるアニオン、特に好ましくはBFで表されるアニオンである。
【0022】
カチオン(A)およびアニオン(B)からなるテトラアルキルアンモニウム塩(D)としては、以下のものが挙げられる。これらのうち2種類以上を併用することも可能である。
TMNPA・BF、TMIBA・BF、トリメチル−(2−メチル)ブチルアンモニウム=テトラフルオロボラート(以後、TM2MBA・BFと記載)、(2,2,2−トリクロロエチル)−トリメチルアンモニウム=テトラフルオロボラート、トリメチル−(2−クロロ−2−メチル)−プロピルアンモニウム=テトラフルオロボラート、トリメチル−(2−クロロ)ペンチルアンモニウム=テトラフルオロボラート、トリメチルネオペンチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、トリメチルイソブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、トリメチル−(2−メチル)ブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、トリメチル−(2−クロロ−2−メチル)−プロピルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェート、トリメチル−(2−クロロ)ペンチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスフェートなど。
これらのうち、最も好ましくはTMNPA・BF、TMIBA・BF、TM2MBA・BFである。
【0023】
本発明の電解液は、有機溶媒(S)を必須成分として含む。テトラアルキルアンモニウム塩(D)は、(D)と(S)の合計重量に対して好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。
【0024】
有機溶媒(S)の具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのうち2種類以上を併用することも可能である。
・エーテル類:鎖状エーテル[炭素数2〜6(ジエチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなど);炭素数7〜12(ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなど)]、環状エーテル[炭素数2〜4(テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンなど);炭素数5〜18(4−ブチルジオキソラン、クラウンエーテルなど)]。
・アミド類:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ヘキサメチルホスホリルアミド、N−メチルピロリドンなど。
・鎖状エステル類:酢酸メチル、プロピオン酸メチルなど。
・ラクトン類:γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンなど。
・ニトリル類:アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、アクリロニトリル、ベンゾニトリルなど。
・環状炭酸エステル類:プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2、3−ブチレンカーボネートなど
・鎖状炭酸エステル類:ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど。
・スルホン類:ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホランなど。
・ニトロ類:ニトロメタン、ニトロエタンなど。
・ベンゼン類:トルエン、キシレン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼンなど。
・複素環式類:N−メチル−2−オキサゾリジノン、3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリジノンなど。
・ケトン類:アセトン、2,5ヘキサンジオン、シクロヘキサンなど。
・リン酸エステル類:トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリプロピルリン酸など。
【0025】
これらのうち好ましくは、環状炭酸エステル類、鎖状炭酸エステル類、ラクトン類、鎖状エステル類、ニトリル類、及びスルホン類であり、特に好ましくはプロピレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、アセトニトリル、及びγ−ブチロラクトンである。
【0026】
有機溶媒(S)は2種類以上を併用しても良い。好ましい組合せとしては、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートおよびジメチルカーボネート、エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートおよびスルホラン、2,3−ブチレンカーボネートおよびスルホラン、2,3−ブチレンカーボネートおよびエチルプロピルスルホン、スルホランおよびエチルイソプロピルスルホン、スルホランおよびエチルプロピルスルホンの組合せであり、特に好ましくは、プロピレンカーボネートおよびジメチルカーボネート、2,3−ブチレンカーボネートおよびスルホラン、スルホランおよびエチルイソプロピルスルホンの組合せである。
【0027】
本発明の電解液中の含水量は、電気化学的安定性の観点から、電解液の重量に基づいて300ppm以下が好ましく、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。この範囲であると、電気化学キャパシタの経時的な性能低下を抑制できる。
電解液中の含水量はカールフィッシャー法(JIS K0113−1997、電量滴定方
法)で測定することができる。
電解液中の水分を上記の範囲にする方法としては、テトラアルキルアンモニウム塩(D)をあらかじめ十分に乾燥する。もしくは、あらかじめ十分に脱水した有機溶媒(S)を併用する方法等が挙げられる。
乾燥方法としては、減圧下加熱乾燥(例えば20Torr減圧下、150℃で加熱)して、含有されている微量の水を蒸発させて除去する方法、再結晶等が挙げられる。
脱水方法としては、減圧下加熱脱水(例えば100Torrで加熱)して、含有されている微量の水を蒸発させて除去する方法、モレキュラーシーブ(ナカライテスク製、3A
1/16等)、活性アルミナ粉末などの脱水剤を使用する方法等が挙げられる。
【0028】
また、これらの他に、電解液を減圧下加熱脱水(例えば100Torr減圧下、100℃で加熱)して、含有されている微量の水を蒸発させて除去する方法、モレキュラーシーブ、活性アルミナ粉末などの除水剤を使用する方法等が挙げられる。これらの方法は、それぞれ単独で行ってもよいし、組み合わせて行ってもよい。
【0029】
電気二重層キャパシタの基本構造としては、2つの分極性電極の間にセパレーターを挟み、電解液を含浸させたものである。分極性電極の主成分は、電解液に対して電気化学的に不活性で、かつ、適度な電気伝導度を有することから活性炭、グラファイト、ポリアセン系有機半導体、カーボンナノチューブなどの炭素質物質が好ましく、上記のように、正極と負極の少なくとも一方は炭素質物質である。電荷が蓄積する電極界面が大きい点から、窒素吸着法によるBET法により求めた比表面積が10m2/g以上の多孔性炭素物質(例えば活性炭)がさらに好ましい。多孔性炭素物質の比表面積は、目的とする単位面積あたりの静電容量(F/m2)と、高比表面積化に伴う嵩密度の低下を勘案して選択されるが、窒素吸着法によるBET法により求めた比表面積が30〜2,500m2/gのものが好ましく、体積あたりの静電容量が大きいことから、比表面積が300〜2,300m2/gの活性炭が特に好ましい。
【0030】
本発明の電気二重層キャパシタの態様としては、コイン型、捲回型、角形のものがあげられる。本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、いずれの電気二重層キャパシタにも適用できる。
【実施例】
【0031】
次に本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に記載のないかぎり、「部」は「重量部」を意味する。
以下の実施例において、H−NMR、19F−NMR、及び13C−NMRの測定は、下記の方法で行った。
1H−NMRの測定条件 機器:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz。
19F−NMRの測定条件 機器:AL−300(日本電子製)、溶媒:重水素化ジメチル
スルホキシド、周波数:300MHz
13C−NMRの測定条件 機器:AL−300(日本電子製)、溶媒:重水素化ジメチル
スルホキシド、周波数:300MHz
また、銀イオン含量は、原子吸光分光光度計(株式会社島津製作所AA−6200)で、ヨウ素イオン含量は比濁法により定量した。
【0032】
<製造例1> <<TMNPA塩の製造>>
トリメチルアミン59部、アセトン300部を耐圧製容器に仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながら1−ヨード−2,2−ジメチルプロパン(東京化成工業(株)製)218部をゆっくり滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し80℃減圧にて乾燥を行い、トリメチルネオペンチルアンモニウムのヨウ化物塩を257部得た。
【0033】
・AgBF溶液の作成
酸化銀116部、42重量%のホウフッ化水素酸水溶液209部を混合した溶液を100℃減圧脱水して得られた固体に、メタノール550部を加えて溶解しAgBFメタノール溶液を得た。
【0034】
・BF塩の作成
上記のAgBF溶液745部をトリメチルネオペンチルアンモニウムのヨウ化物塩257部とメタノール232部の混合溶液に対して、ゆっくりと滴下、混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶を200部得た。結晶にメタノール300部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い、白色結晶を164部得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、この白色結晶(D−1)はTMNPA・BF塩であった。H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
【0035】
<製造例2> <<TMIBA塩の製造>>
トリメチルアミン59部、アセトン300部を耐圧製容器に仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながら1−ヨード−2−メチルプロパン(東京化成工業(株)製)202部をゆっくり滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し80℃減圧にて乾燥を行い、トリメチルイソブチルアンモニウムのヨウ化物塩を243部得た。
【0036】
・AgBF溶液の作成
酸化銀116部、42重量%のホウフッ化水素酸水溶液209部を混合した溶液を100℃減圧脱水して得られた固体に、メタノール550部を加えて溶解しAgBFメタノール溶液を得た。
【0037】
・BF塩の作成
上記のAgBF溶液745部をトリメチルイソブチルアンモニウムのヨウ化物塩243部とメタノール232部の混合溶液に対して、ゆっくりと滴下、混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶を187部得た。結晶にメタノール300部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い、白色結晶を153部得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、この白色結晶(D−2)はTMIBA・BF塩であった。H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
【0038】
<製造例3> <<TM2MBA塩の製造>>
トリメチルアミン59部、アセトン300部を耐圧製容器に仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながら1−ヨード−2−メチルブタン(東京化成工業(株)製)218部をゆっくり滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し80℃減圧にて乾燥を行い、トリメチル−(2−メチル)ブチルアンモニウムのヨウ化物塩を257部得た。
【0039】
・AgBF溶液の作成
酸化銀116部、42重量%のホウフッ化水素酸水溶液209部を混合した溶液を100℃減圧脱水して得られた固体に、メタノール550部を加えて溶解しAgBFメタノール溶液を得た。
【0040】
・BF塩の作成
上記のAgBF溶液745部をトリメチル−(2−メチル)ブチルアンモニウムのヨウ化物塩257部とメタノール232部の混合溶液に対して、ゆっくりと滴下、混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶を200部得た。結晶にメタノール300部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い、白色結晶を164部得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、この白色結晶(D−3)はTM2MBA・BF塩であった。H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
【0041】
<比較製造例1> <<TEA塩の精製>>
TEA・BF塩(キシダ化学製)194部にメタノール300部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い、白色結晶(比D−1)を148部得た。H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
【0042】
<比較製造例2> <<TEMA塩の製造>>
・ヨウ化物塩の合成
トリエチルアミン(東京化成工業(株)製)102部、アセトン300部をガラスビーカーに仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながらヨウ化メチル156部をゆっくり滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し80℃減圧にて乾燥を行い、トリエチルメチルアンモニウムのヨウ化物塩を243部得た。
【0043】
・AgBF溶液の作成
酸化銀116部、42重量%のホウフッ化水素酸水溶液209部を混合した溶液を100℃減圧脱水して得られた固体に、メタノール550部を加えて溶解しAgBFメタノール溶液を得た。
【0044】
・BF塩の作成
上記のAgBF溶液745部をトリエチルメチルアンモニウムのヨウ化物塩243部とメタノール232部の混合溶液に対して、ゆっくりと滴下、混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶を186部得た。結晶にメタノール300部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い、白色結晶を152部得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、この白色結晶(比D−2)はTEMA・BF塩であった。H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
【0045】
<比較製造例3> <<ETMA塩の製造>>
・ヨウ化物塩の合成
ジメチルエチルアミン(東京化成工業(株)製)73部、アセトン300部をガラスビーカーに仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながらヨウ化メチル156部をゆっくり滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し80℃減圧にて乾燥を行い、エチルトリメチルアンモニウムのヨウ化物塩を215部得た。
【0046】
・AgBF溶液の作成
酸化銀116部、42重量%のホウフッ化水素酸水溶液209部を混合した溶液を100℃減圧脱水して得られた固体に、メタノール550部を加えて溶解しAgBFメタノール溶液を得た。
【0047】
・BF塩の作成
上記のAgBF溶液745部をエチルトリメチルアンモニウムのヨウ化物塩215部とメタノール232部の混合溶液に対して、ゆっくりと滴下、混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶を161部得た。結晶にメタノール300部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い、白色結晶を132部得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、この白色結晶(比D−3)はETMA・BF塩であった。H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
【0048】
実施例1
製造例1で得られた(D−1)25部を脱水したスルホラン75部に溶解させ、電解液1を調整した。
【0049】
実施例2
製造例2で得られた(D−2)25部を脱水したスルホラン75部に溶解させ、電解液2を調整した。
【0050】
実施例3
製造例3で得られた(D−3)25部を脱水したスルホラン75部に溶解させ、電解液3を調整した。
【0051】
実施例4
製造例1で得られた(D−1)25部を脱水したアセトニトリル75部に溶解させ、電解液4を調整した。
【0052】
実施例5
製造例1で得られた(D−1)17部を脱水したプロピレンカーボネート83部に溶解させ、電解液5を調整した。
【0053】
実施例6
製造例2で得られた(D−2)17部を脱水したプロピレンカーボネート83部に溶解させ、電解液6を調整した。
【0054】
実施例7
製造例1で得られた(D−1)25部を脱水したスルホラン50部および脱水したエチルイソプロピルスルホン25部に溶解させ、電解液7を調整した。
【0055】
実施例8
製造例1で得られた(D−1)17部を脱水した2,3−ブチレンカーボネート83部に溶解させ、電解液8を調整した。
【0056】
実施例9
製造例1で得られた(D−1)17部を脱水したスルホラン50部および2,3−ブチレンカーボネート33部に溶解させ、電解液9を調整した。
【0057】
比較例1
比較製造例1で得られた(比D−1)25部を脱水したスルホラン75部に溶解させ、比較電解液1を調整した。
【0058】
比較例2
比較製造例2で得られた(比D−2)25部を脱水したスルホラン75部に溶解させ、比較電解液2を調整した。
【0059】
比較例3
比較製造例3で得られた(比D−3)25部を脱水したスルホラン75部に溶解させ、比較電解液3を調整した。
【0060】
比較例4
比較製造例1で得られた(比D−1)25部を脱水したアセトニトリル75部に溶解させ、比較電解液4を調整した。
【0061】
比較例5
比較製造例1で得られた(比D−1)17部を脱水したプロピレンカーボネート83部に溶解させ、比較電解液5を調整した。
【0062】
実施例1〜9、および比較例1〜5の電解液について、下記の方法で電気二重層キャパシタ用電解液の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0063】
【表1】

TMNPA・・・トリメチルネオペンチルアンモニウム
TMIBA・・・トリメチルイソブチルアンモニウム
TM2MBA・・・トリメチル−(2−メチル)ブチルアンモニウム
TEA・・・テトラエチルアンモニウム
TEMA・・・トリエチルメチルアンモニウム
ETMA・・・エチルトリメチルアンモニウム
SL・・・スルホラン
EIPS・・・エチルイソプロピルスルホン
AN・・・アセトニトリル
PC・・・プロピレンカーボネート
23BC・・・2,3−ブチレンカーボネート
【0064】
・電気二重層キャパシタの作成
粉状の活性炭(関西熱化学(株)製 「MSP−20」)をカーボンブラックおよびポリテトラフルオロエチレン粉(PTFE)と混合した。重量比は、10:1:1とした。
【0065】
得られた混合物を乳鉢にて5分程度練り、これをロールプレスで圧延して活性炭シートを得た。活性炭シートの厚さは、400μmとした。この活性炭シートを20mmΦのディスク状に打ち抜き、活性炭電極を得た。
【0066】
得られた活性炭電極(正極、負極及び参照極)を用いて、3電極式電気二重層キャパシタ(パワーシステム(株)社製)を組み立てた。これらセルを真空中170℃で7時間乾燥し、30℃まで冷却した。乾燥雰囲気中で<実施例1〜9>、<比較例1〜5>の電解液をセルに注入し、ついで真空含浸を行い、電気二重層キャパシタを作製した。
【0067】
・耐久試験および試験後の容量保持率
作成した電気二重層キャパシタに充放電試験装置(パワーシステム(株)製、「CDT−5R2−4」)を接続し、設定電圧まで25mAにて定電流充電を行い、充電開始から1800秒後に25mAにて定電流放電を行った。これを設定電圧3.0V、60℃で250サイクル実施し、初期の容量及び抵抗、250サイクル後の容量及び抵抗から、容量保持率(%)及び抵抗変化率(%)を以下の式で求め、耐電圧性の指標とした。
容量保持率(%)=((X250)×100/(X))
抵抗変化率(%)=((Y250)×100/(Y))
ただし、X:耐久試験前の初期容量値、X250:250サイクル後の容量値、
:耐久試験前の初期抵抗値、Y250:250サイクル後の抵抗値、である。
容量保持率が大きいほど、また、抵抗変化率が小さいほど、電解液の変化が小さく、電解液が電気化学的に安定で高耐電圧性を有することを示す。
【0068】
・ガス発生量の測定
サイクル試験後の3電極式電気二重層キャパシタから発生したガスを捕集し、その体積を測定した。
【0069】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜9の電解液を使用した電気二重層キャパシタは、比較例1〜5の電解液を使用した電気二重層キャパシタに比べてサイクル試験後の容量保持率が大きく、抵抗変化率が小さいことから、耐久性が高い。
また、同じ溶媒同士で比較すると、実施例5,6(プロピレンカーボネート)は比較例5(プロピレンカーボネート)に比べガス発生量が少なく、実施例1〜3(スルホラン
)は比較例1〜3(スルホラン)に比べガス発生量が少なく、実施例4(アセトニトリル
)は比較例4(アセトニトリル)に比べガス発生量が少ない。
よって本発明の電解液は電気二重層キャパシタの経時的な性能劣化を飛躍的に改善し、ガス発生が少なく長期間の耐久性が高い電気二重層キャパシタを構成できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、広い温度範囲で使用でき、耐久性が高いためメンテナンスの困難な箇所で使用される太陽光発電、太陽熱発電、風力発電等の自然エネルギーを利用した発電設備等において、例えば風力発電のピッチ制御等に適用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素原子に対してベータ位にある炭素原子(Cb)を1個以上有し、かつ炭素数5〜10であり、かつ環を形成していてもよく、かつ水素原子の代わりにハロゲン原子で置換されていてもよいテトラアルキルアンモニウムカチオン(A)とアニオン(B)からなるテトラアルキルアンモニウム塩(D)であって、該炭素原子(Cb)に共有結合した水素原子の合計数が0または1であるテトラアルキルアンモニウム塩(D)、および有機溶媒(S)を含有してなる電気二重層キャパシタ用電解液。
【請求項2】
カチオン(A)が、トリメチルネオペンチルアンモニウム、トリメチルイソブチルアンモニウム、トリメチル−(2−メチル)ブチルアンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
アニオン(B)がテトラフルオロボラートである請求項1または2に記載の電解液。
【請求項4】
有機溶媒(S)が、環状炭酸エステル類、鎖状炭酸エステル類、ラクトン類、鎖状エステル類、ニトリル類、及びスルホン類からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項5】
有機溶媒(S)が、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、アセトニトリル、及びγ−ブチロラクトンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用電解液を用いる電気二重層キャパシタ。