説明

電気光学ディスプレイ

電気泳動ディスプレイは、懸濁流体(112)に懸濁する複数の帯電粒子(110)を有する電気泳動媒体および電気泳動媒体の向かい合う側に配置された2個の電極(106、108)を備える。電極(108)の少なくとも1個は、光透過性で、視覚表面を形成する。ディスプレイは、閉鎖光学状態と開放光学状態を有し、閉鎖光学状態において、帯電粒子(110)は実質的に視覚表面全体に広がり、その結果、光は電気泳動媒体を通過し得なく、開放光学状態において、電気泳動粒子(110)は、電極間に延びる連鎖を形成し、その結果、光は電気泳動媒体を通過し得る。絶縁層(114、116)は、電極(106、108)と電気泳動媒体との間に配置される。同様に、電気泳動ディスプレイは、カラーフィルタアレイまたはリフレクタを備え、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学ディスプレイに関する。これらのディスプレイは、シャッタモードディスプレイ(その用語は下記に定義される)か、または光変調器、すなわち、可変透過窓、可変透過ミラー、および同様な装置でそこを通過する光量またはその他の電磁放射線を変調する装置であり得る。便宜上、用語「光」は、本明細書で通常の意味で使用されるが、不可視波長における電磁放射線を含む広い意味で、理解されるべきである。たとえば、下記に述べるように、本発明は、建物内の温度を制御するため赤外線を変調し得る窓を提供するように適用され得る。より具体的には、本発明は、電気光学ディスプレイ、および光変調を制御するために粒子ベースの電気泳動媒体を使用する光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の帯電粒子が、電界の影響によって懸濁流体の中を移動する粒子ベースの電気泳動媒体は、長年真剣な研究開発のテーマであった。そのようなディスプレイは、液晶ディスプレイに比較して、高輝度および高コントラスト、広視野角、状態双安定性、低消費電力の特性を有し得る。
【0003】
本明細書で使用される用語「双安定(bistable)」および「双安定性(bistability)」は、当業界の従来の意味で使用されており、少なくとも1個の光学特性において異なる第1と第2のディスプレイ状態を有する表示要素を含むディスプレイを言い、アドレッシングパルスが終了した後に、第1または第2のいずれかのディスプレイ状態とするために、有限持続時間のアドレッシングパルスによって任意の所定の要素が駆動された後に、その状態は、表示要素の状態を変更するために必要なアドレッシングパルスの最小持続時間を、少なくとも何回か、たとえば、少なくとも4回は持続させる。特許文献1には、いくつかのグレースケールの能力がある粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、極端な白黒状態においてのみならず、中間のグレー状態においても安定しており、同じことが、その他のいくつかの電気光学ディスプレイについても真実である。本明細書において便宜上、用語「双安定(bistable)は、双安定と多安定(multi−stable)ディスプレイの両方をカバーするために使用され得るが、この種のディスプレイは、双安定よりはむしろ、正しく多安定と呼ばれる。
【0004】
それでも、これらのディスプレイの長期間の映像品質に関する問題は、これらのディスプレイの広範囲の使用を妨げてきた。たとえば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、定着する傾向があり、これらのディスプレイの不適当な有効寿命の結果となる。
【0005】
上記に指摘されているように、電気泳動媒体は懸濁流体の存在を必要とする。電気泳動媒体のほとんどの従来技術において、懸濁流体は液体であるが、電気泳動媒体はガス状の懸濁流体を使用して生産し得る。たとえば、Kitamura,T.らの「Electrical toner movement for electronic paper−like display」、IDW Japan(2001年),Paper HCS1−1、および、Yamaguchi、Y.らの「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」、IDW Japan(2001年),Paper AMD4−4)。また欧州特許出願第1,429,178号、欧州特許出願第1,462,847号、欧州特許出願第1,482,354号、および欧州特許出願第1,484,625号、ならびに国際公開第2004/090626号、国際公開第2004/079442号、国際公開第2004/077140号、国際公開第2004/059379号、国際公開第2004/055586号、国際公開第2004/008239号、国際公開第2004/006006号、国際公開第03/091799号、国際公開第03/088495号を参照のこと。そのような、ガスベースの電気泳動媒介は、その媒介が、たとえば、垂直面に配置されているサインにおいて定着を可能にする方向において使用されるときに、粒子定着のために、液体ベースと同じ種類の問題を受けやすい。事実、粒子は、液体ベースの電気泳動媒体より気体ベースの電気泳動媒体においてより深刻な問題として現れる。理由は、液体の懸濁流体に比較し、ガス状の懸濁流体の低い粘性は、電気泳動のより速い定着を起こすためである。
【0006】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡されるかまたはそれらの名前でなされた、カプセル化した電気泳動媒体を記載した多数の特許および出願が、最近公開されている。そのようなカプセル化した媒体は、多数の小さなカプセルを含み、その小さなカプセルの各々は、液体の懸濁媒体に懸濁し電気泳動的に動く粒子を含む内部相と、その内部相とを囲むカプセル壁を含む。通常、カプセル自体は、ポリマーバインダ内に保持され、2個の電極間にあるコヒーレント層を形成する。この種のカプセル化した媒体は、たとえば、以下に記載されている。米国特許第5,930,026号、米国特許第5,961,804号、米国特許第6,017,584号、米国特許第6,067,185号、米国特許第6,118,426号、米国特許第6,120,588号、米国特許第6,120,839号、米国特許第6,124,851号、米国特許第6,130,773号、米国特許第6,130,774号、米国特許第6,172,798号、米国特許第6,177,921号、米国特許第6,232,950号、米国特許第6,249,271号、米国特許第6,252,564号、米国特許第6,262,706号、米国特許第6,262,833号、米国特許第6,300,932号、米国特許第6,312,304号、米国特許第6,312,971号、米国特許第6,323,989号、米国特許第6,327,072号、米国特許第6,376,828号、米国特許第6,377,387号、米国特許第6,392,785号、米国特許第6,392,786号、米国特許第6,413,790号、米国特許第6,422,687号、米国特許第6,445,374号、米国特許第6,445,489号、米国特許第6,459,418号、米国特許第6,473,072号、米国特許第6,480,182号、米国特許第6,498,114号、米国特許第6,504,524号、米国特許第6,506,438号、米国特許第6,512,354号、米国特許第6,515,649号、米国特許第6,518,949号、米国特許第6,521,489号、米国特許第6,531,997号、米国特許第6,535,197号、米国特許第6,538,801号、米国特許第6,545,291号、米国特許第6,580,545号、米国特許第6,639,578号、米国特許第6,652,075号、米国特許第6,657,772号、米国特許第6,664,944号、米国特許第6,680,725号、米国特許第6,683,333号、米国特許第6,704,133号、米国特許第6,710,540号、米国特許第6,721,083号、米国特許第6,724,519号、米国特許第6,727,881号、米国特許第6,738,050号、米国特許第6,750,473号、米国特許第6,753,999号、米国特許第6,816,147号、米国特許第6,819,471号、米国特許第6,822,782号、米国特許第6,825,068号、米国特許第6,825,829号、米国特許第6,825,970号、米国特許第6,831,769号、米国特許第6,839,158号、米国特許第6,842,167号、第6,842,279号、米国特許第6,842,657号、米国特許第6,864,875号、第6,865,010号、米国特許第6,866,760号、および米国特許第6,870,661号、ならびに米国特許出願公開第2002/0060321号、米国特許出願公開第2002/0063661号、米国特許出願公開第2002/0090980号、米国特許出願公開第2002/0113770号、米国特許出願公開第2002/0130832号、米国特許出願公開第2002/0180687号、米国特許出願公開第2003/0011560号、米国特許出願公開第2003/0020844号、米国特許出願公開第2003/0025855号、米国特許出願公開第2003/0102858号、米国特許出願公開第2003/0132908号、米国特許出願公開第2003/0137521号、米国特許出願公開第2003/0151702号、米国特許出願公開第2003/0214695号、米国特許出願公開第2003/0222315号、米国特許出願公開第2004/0012839号、米国特許出願公開第2004/0014265号、米国特許出願公開第2004/0027327号、米国特許出願公開第2004/0075634号、米国特許出願公開第2004/0094422号、米国特許出願公開第2004/0105036号、米国特許出願公開第2004/0112750号、米国特許出願公開第2004/0119681号、米国特許出願公開第2004/0136048号、米国特許出願公開第2004/0155857号、米国特許出願公開第2004/0180476号、米国特許出願公開第2004/0190114号、米国特許出願公開第2004/0196215号、米国特許出願公開第2004/0226820号、米国特許出願公開第2004/0233509号、米国特許出願公開第2004/0239614号、米国特許出願公開第2004/0252360号、米国特許出願公開第2004/0257635号、米国特許出願公開第2004/0263947号、米国特許出願公開第2005/0000813号、米国特許出願公開第2005/0001812号、米国特許出願公開第2005/0007336号、米国特許出願公開第2005/0007653号、米国特許出願公開第2005/0012980号、米国特許出願公開第2005/0017944号、米国特許出願公開第2005/0018273号、米国特許出願公開第2005/0024353号、米国特許出願公開第2005/0035941号、米国特許出願公開第2005/0041004号、米国特許出願公開第2005/0062714号、米国特許出願公開第2005/0067656号、および米国特許出願公開第2005/0078099号、ならびに国際公開第99/67678号、国際公開第00/05704号、国際公開第00/38000号、国際公開第00/36560号、国際公開第00/67110号、国際公開第00/67327号、国際公開第01/07961号、および国際公開第03/107,315号。
【0007】
公知の電気泳動媒体は、カプセル化および非カプセル化の両方の二つの主要なタイプに分けられ、便宜上、本明細書では以下それぞれ「単粒子(single particle」と「複粒子(dual particle)」という。単粒子媒体は、懸濁媒体に懸濁する一つのタイプの電気泳動粒子のみを有し、その媒体の少なくとも一つの光学特性は、粒子の光学特性と異なる。(一つのタイプの粒子というとき、そのタイプのすべての粒子は完全に同一であることを意味しない。たとえば、そのタイプのすべての粒子は実質的に同じ光学特性および同じ極性の電荷を有しているとすると、粒子の大きさおよび電気泳動の移動度などのパラメータのかなりの変動は、媒体の有用性に影響せずに、許容され得る。)そのような媒体が、2個の電極の相対電位に従い、少なくとも1個が透明である一対の電極間に置かれるとき、粒子の電気的特性を表示し得る(粒子が観測者により近い電極に隣接しているとき、(本明細書では以下「前(front)」電極という)、あるいは、懸濁媒体の光学特性を表示し得る(粒子が観測者から離れている電極に隣接していて、その結果粒子は懸濁媒体によって隠されるとき、以下「後(rear)」電極という)。
【0008】
複粒子媒体は、少なくとも1個の光学特性の異なる二つのタイプの粒子を有する。懸濁流体は、無色または有色であり得るが、通常は無色である。二つのタイプの粒子は、電気泳動の移動度において異なり、この移動度における相違は、極性(このタイプは以下、「異電荷複粒子媒体」と本明細書では称され得る)、および/または大きさにおいてである。そのような複粒子媒体が、2個の電極の相対電位に従い、上記の一対の電極間に置かれるとき、媒体は粒子のどちらかの一式の光学特性を表示し得る。ただし、この表示が達成される正確な方法は、移動度の相違が極性においてか、あるいは、大きさにおいてのみかにより異なる。例証を容易にするため、粒子の一方のタイプが黒で、他方のタイプが白の電気泳動媒体を考える。2つのタイプの粒子が極性において異なる場合(たとえば、黒の粒子はプラスに帯電され、白の粒子はマイナスに帯電される場合)、粒子は2個の異なる電極に引き付けられ、その結果、たとえば、前電極は、後電極に対してマイナスである場合、黒の粒子は、前電極に引き付けられ、白の粒子は、後電極に引き付けられ、その結果、媒体は、観測者にとって黒に見える。逆に、前電極が、後電極に対してプラスである場合、白の粒子は、前電極に引き付けられ、黒の粒子は、後電極に引き付けられ、その結果、媒体は、観測者にとって白に見える。
【0009】
異電荷の「複粒子」媒体は、二つのタイプを超える粒子を含み得ることに注意すべきである。たとえば、上記の米国特許第6,232,950号は、図6〜図9Cにて、同じカプセルに異なる3種の色を有する逆電荷カプセル化3粒子システムを示す。本特許は、また、カプセルを3種の粒子の色を表示可能にする駆動方法も記載する。粒子のさらに多くの種類が存在し得る。最大5種の異なる粒子が、そのようなディスプレイに有用に存在し得ることは経験的に判明している。
【0010】
二つのタイプの粒子が同じ極性の電荷を有するが、電気泳動移動度において異なる場合(この種類の媒体は、本明細書では以下「同極性複粒子」媒体という)、両タイプの粒子は、同じ電極に引き付けられるが、一方のタイプは他方のタイプの前に電極に到達し、その結果、観測者に向い合っているタイプは、粒子が引き付けられている電極によって異なる。たとえば、前の例証が修正され、黒と白の粒子の両方がプラスに帯電されるが、黒の粒子はより高い電気泳動移動度を有すると仮定する。ここで、前電極は、後電極に対しマイナスで、黒と白の両方の粒子は、前電極に引き付けられるが、黒粒子は、そのより高い移動度のために、電極に最初に到達し、その結果、黒の粒子の層は前電極を被覆し、媒体は、観測者にとって黒に見える。逆に、前電極は、後電極に対しプラスで、白と黒の両方の粒子は、後電極に引き付けられるが、黒粒子は、そのより高い移動度のために、電極に最初に到達し、その結果、黒の粒子の層は後電極を被覆し、白粒子の層を後電極から離し観測者に向い合うようにし、その結果、媒体は、観測者にとって白に見える。このタイプの複粒子媒体は、懸濁流体は後電極から離れた白粒子の層が観測者にとっていつでも見られるように十分透明であるべきことが必要であることに注意されたい。通常、そのようなディスプレイの懸濁流体は、全く無色であるが、ディスプレイを通して見える白粒子における不要な色調を補正する目的で、何らかの色が組み入れられ得る。
【0011】
単粒子及び複粒子の両方の電気泳動ディスプレイは、既に記載された二つの極端な光学状態の中間の光学特性を有する中間のグレー状態が可能であり得る。
【0012】
前述の特許及び特許出願公開された出願のいくつかは、各カプセル内に異なる3タイプ以上の粒子を有するカプセル化した電気泳動媒介を開示する。本出願の目的のために、そのような多粒子媒体は、複粒子媒体の亜種として見なされる。
【0013】
また、前述の特許及び特許出願の多くは、カプセル化した電気泳動媒体におけるディスクリート(discrete)なマイクロカプセルを囲む壁は、連続相によって置き換え得、従って、いわゆる「ポリマー分散電気泳動ディスプレイ」を生成し、そのディスプレイでは、電気泳動媒体は、電気泳動流体の複数のディスクリートな液滴およびポリマー材料の連続相を含むことを認め、また、そのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体のディスクリートな液滴は、どのディスクリートなカプセル膜も各個々の液滴と関連しないとしても、カプセルまたはマイクロカプセルとみなされ得ることを認める。たとえば、前述の米国特許出願公開第2002/0131147号を見られたい。従って、本出願の目的のため、そのようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化した電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0014】
電気泳動ディスプレイの関連タイプは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイにおいて、帯電粒子および懸濁流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されないで、その代わり、通常ポリマーフィルムであるキャリア媒体内に形成される複数の空洞内に保持される。たとえば、両方ともSipix Imaging,Inc.に譲渡された国際公開第02/01281号および公開された米国特許出願公開第2002/0075556号を見られたい。
【0015】
電気泳動道媒体は、しばしば不透明で(たとえば、多くの電気泳動媒体において、粒子は、ディスプレイを通した可視光線の透過を実質的にブロックするため)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「シャッタモード」で動作するように作られ、そのモードにおいて、一方のディスプレイ状態は実質的に不透明であり、他方の状態では、光透過である。たとえば、前述の米国特許第6,130,774号および第6,172,798号、および米国特許第5,872,552号、第6,144,361号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を見られたい。電気泳動ディスプレイと似ているが、電界強度の変動に依存する誘電泳動ディスプレイは、同様なモードで動作し得る。米国特許第4,418,346号を見られたい。
【0016】
シャッタモードディスプレイは、たとえば、1色を有し、観測者がディスプレイを見る視覚表面とは反対側の電気光学媒体に位置する異なる色の表面を提供する粒子を使用することによって、従来の反射ディスプレイとして使用され得る。たとえば、米国特許第6,177,921号を見られたい。代わりに、シャッタモードディスプレイは、光変調器、すなわち、一つの(開放または透明の)光学状態において光を通過させ、別の(閉鎖または不透明の)光学状態において光がブロックされるような装置として使用され得る。
【0017】
電気泳動媒体の一つの重要なマーケットは、可変の光透過を有する窓である。建物や乗り物のエネルギー性能は益々重要になっているので、光変調器は、窓の被膜剤として使用され得、変調器の光学状態を変動させることによって窓を通して入る入射光線の割合を電子的に制御し得る。そのような電子制御は、たとえば、窓ブラインドの使用による入射光線の「機械的な」制御にとって代わり得る。建物におけるそのような「可変透過率」(「VT」)技術の効率的な実施は、(1)暑い天候時の不要な熱影響を減少し、それにより、冷却に必要なエネルギー量、エアコン設備の規模、およびピーク電力需要を減少させ、(2)自然の昼光の利用を増加させ、それによって照明およびピーク電力需要に使用されるエネルギーを減少させ、および(3)熱と視覚の両方の快適性を増加することによって居住者の快適性を増加することを提供する。自動車においては、囲まれた容積に対する窓面の割合が通常の建物より大幅に大きく、さらに大きな利点が期待される。具体的には、自動車におけるVT技術の効率的な実施は、前述の利点のみならず、(1)運転の安全性の増加(2)グレア(glare)の減少(3)ミラー性能の向上(ミラー上に電気光学的被膜を使用することによって)、および(4)ヘッドアップディスプレイを使用する能力の増加をも提供する。その他の可能性ある用途は、プライバシーガラスおよびグレアよけを含むVT技術を含む。
【0018】
光変調器を含む電気泳動シャッタモードディスプレイが、その開放と閉鎖の光学状態間で動くとき、電気泳動粒子が動く正確な方法に関して、これまで比較的殆ど考慮がなされてこなかったようである。前述の同時係属中の特許出願第10/907,140号において検討されたように、開放状態は、電気泳動粒子の電界依存の凝集体(aggregation)によってなされる。そのような電界依存の凝集体は、カプセルまたはマイクロセルの横の壁への電気泳動粒子の誘電泳動移動の形態、または「連鎖(chaining)」すなわち、カプセルまたはマイクロセル内の電気泳動粒子のストランドの形成またはおそらく他の方法による形態をとり得る。達成された凝集体の正確なタイプに関わらず、電気泳動粒子のそのような電界依存の凝集体は、観測者が視覚表面を通して媒体を見る視覚表面に垂直の方向で見られるように、各カプセルまたはマイクロセルの視覚範囲のほんの一部分を粒子が占めるようにする。このように透明状態において、各カプセルまたはマイクロセルの視覚範囲の主要な部分は、電気泳動粒子がなく、光は視覚範囲を自由に通過する。対照的に、不透明の状態では、電気泳動粒子は、各カプセルまたはマイクロセルの視覚範囲の全体に分布され(粒子は、懸濁流体の容積全体に均一に分布、または電気泳動層の一つの主要な表面に隣接した層に集中し得る)、その結果、光は視覚範囲を通過し得ない。
【0019】
欧州特許出願第709,713号は、電気泳動粒子の連鎖に依存するいくつかの異なるタイプのシャッタモードの電気泳動ディスプレイを記載する。シャッタモードの電気泳動ディスプレイは、二つの主要なタイプがある。第1のタイプにおいて、この特許出願の図1〜6のサンプルに示されるように、連鎖は、通常シリコーンオイルの絶縁流体内の電気泳動粒子を含む電気泳動媒体の両側の二つのパターンなし電極間に発生する。電気泳動粒子自体は、電気的半導体材料、無機イオン交換体、シリカゲルまたは金属でドープされたこれらの材料の一つから形成された外部無機層を有する高分子コアを備える。そのような電気泳動粒子は、製造するのが難しく、高価となりがちであるが、粒子の連鎖は分極性粒子を必要とするので明らかに必要であるが、導体粒子は、連鎖が発生したとき電極をショ−トするので、使用できない。動作電圧は、多少高いように見える、電気泳動媒体の全体の推奨電界は、0.25kV/mm〜1.5kV/mm、すなわち100μm厚の電気泳動層について25〜150Vである。ディスプレイの閉鎖は、(すなわち、ディスプレイの光透過状態から不透明状態への遷移)は、電気泳動媒体全体の粒子の拡散によって影響され、従って遅い。さらに、そのようなディスプレイは、それが閉鎖状態においてのみ安定である。
【0020】
欧州特許出願第709,713号に記載されたシャッタモードディスプレイの第2のタイプにおいて(その出願の図31および図32Bを参照)、一方の電極は、パターンなしであるが、反対の電極は、連続した狭い平行ストリップで、二つのセットへ異なる電圧を印加する備えを有する二つの交流セットに分割された平行ストリップ(strip)として形成される。そのようなディスプレイの開放光学状態において、すべてのストリップは、パターンなし電極の電圧とは異なる、同じ電圧にセットされ、その結果、連鎖がパタンなし電極とストリップ各々との間に形成される。ディスプレイの閉鎖光学状態において、異なる電圧が二つのセットのストリップに印加され、その結果、隣接するストリップ間に連鎖が発生する。パターンなし電極に印加される電圧は、それが二つのセットのストリップ間に印加された電圧の中間であれば、本質的に無関係である。このタイプのディスプレイは、上記の第1のタイプのディスプレイと同じ複合(complex)電気泳動粒子を使用する。さらに、そのようなディスプレイの閉鎖状態は、完全に暗くなるということは不確かのようである。閉鎖状態における隣接する連鎖間に必然的にギャップが生じる傾向があり、そのようなギャップのわずかな部分でさえも閉鎖状態の暗さに不都合に影響するからである。第2のタイプのディスプレイは、拡散に依存するよりはむしろその閉鎖状態にアクティブに駆動され得るため、上記の第1のタイプより速く閉鎖するが、どちらの光学状態においても真に双安定ではない。最後に、特に高解像度のディスプレイにおいて、必要な狭いストリップ電極の形成は、製造上の問題を提起する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0180687号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記に検討された従来技術のディスプレイのデメリットを受けない、光変調器を含むシャッタモード電気泳動ディスプレイに関する。
【0022】
一つの局面において、本発明は、電気泳動ディスプレイを提供し、電気泳動ディスプレイは、懸濁流体に懸濁する複数の帯電粒子を有する電気泳動媒体と、電気泳動媒体の向かい合う側に配置された2個の電極とを備える。電極の少なくとも1個は、光透過性で、観測者が視覚表面を通してディスプレイを見得る視覚表面を形成する。ディスプレイは、閉鎖光学状態と開放光学状態を有し、閉鎖光学状態において、帯電粒子は実質的に視覚表面全体に広がり、その結果、光は電気泳動媒体を通過し得なく、開放光学状態において、電気泳動粒子は、電極間に延びる連鎖を形成し、その結果、光は電気泳動媒体を通過し得る。ディスプレイは、電極と電気泳動媒体との間に配置された絶縁層をさらに備える。
【0023】
ディスプレイは、便宜上以下、本発明の「絶縁層」または「IL」ディスプレイという。下記に説明された理由で、このタイプのディスプレイは、帯電粒子の少なくとも一部は導電性であるとき、特に有用である。たとえば、帯電粒子は、カーボンブラックを備え得る。絶縁層は、約10〜約1011Ωcmの体積抵抗率を有する。いくつかの場合においては、視覚表面から離れた絶縁層は、接着層によって形成され得る。
【0024】
本発明のIL電気泳動ディスプレイは、電気泳動媒体の任意の公知のタイプを使用し得る。たとえば、帯電粒子および懸濁流体が複数のカプセル内に閉じ込められた状態で、電気泳動媒体はカプセル化され得、カプセルはポリマーバインダー内に保持され得る。そのようなカプセル化したディスプレイにおいて、絶縁層の少なくとも1個は、カプセルのバインダーおよび/または壁から構成され得る。代わりに、電気泳動媒体は、帯電粒子および懸濁流体が、ポリマーバインダーを備える連続相内に保持される複数のディスクリートな液滴として存在するポリマー分散タイプかまたはマイクロセルであり得る。マイクロセル媒体の場合、連続相は、帯電粒子および懸濁流体が閉じ込められる複数のセルを分離する壁を形成する。
【0025】
本発明のIL電気泳動ディスプレイは、2個の電極に電圧を印加する電圧供給手段を備え、電圧供給手段は、ディスプレイを開放光学状態に駆動するのに有効な高周波数交流電圧と、ディスプレイを閉鎖光学状態に駆動するのに有効な低周波数交流または直流電圧との双方を供給するようにアレンジされる。高周波数交流電圧は、約200〜約1000Hzの範囲の周波数を有し、低周波数交流または直流電圧は、0〜約50Hzの範囲の周波数を有する。電圧供給手段はまた、少なくとも1個の中間周波数交流電圧を供給するようにアレンジされ、中間周波数交流電圧は、高周波数交流電圧と低周波数交流または直流電圧との中間の周波数電圧を有し、中間周波数交流電圧は、ディスプレイを開放光学状態と閉鎖光学状態との中間のグレー状態に駆動するに有効である。
【0026】
以下に説明される理由によって、本発明のIL電気泳動ディスプレイにおいて、懸濁流体は、懸濁流体中で、該懸濁流体において固有粘性ηを有するポリマーを溶解または分散し、ポリマーは、懸濁流体においてイオン性またはイオン化グループが実質的に無く、ポリマーは約0.5η−1〜約2.0η−1の濃度で懸濁流体において存在する。ポリマーは、ポリイソブチレンであり得る。
【0027】
別の局面において、本発明は、複数のピクセルを有する電気泳動ディスプレイを提供し、電気泳動ディスプレイは、懸濁流体中に懸濁する複数の帯電粒子を有する電気泳動媒体と、電気泳動媒体の向かい合う側に配置された電極であって、電極の少なくとも1個は光透過性で、観測者が視覚表面を通してディスプレイを見る視覚表面を形成する電極とを有する電気泳動媒体とを備え、ディスプレイの各ピクセルは、閉鎖光学状態と開放光学状態を有し、閉鎖光学状態において、帯電粒子が該ピクセルの該視覚表面の実質的に全体に広がり、その結果、光は電気泳動媒体を通過し得なく、開放光学状態では、電気泳動粒子がピクセルの電極間に延びる連鎖を形成し、その結果、光はピクセルを通過し得、ディスプレイは、観測者によって知覚されるディスプレイの色は、ディスプレイの種々のピクセルの開放および閉鎖状態を変化することによって変動され得るように、観測者に見えるように、ディスプレイに隣接して配置されるカラーアレイをさらに備える。
【0028】
「カラーアレイ」ディスプレイなどのいくつかの異なる変種がある。カラーアレイは、カラーフィルタアレイか(すなわち、カラーであるが光透過性のエレメントのアレイ)またはカラーリフレクタアレイ(すなわち、カラーの反射エレメント)のいずれかであり得る。カラーフィルタアレイは、ディスプレイの隣接する視覚表面かまたはディスプレイの反対側に配置される。どちらの場合でも、ディスプレイは、背面照明され得る(すなわち、光源は、視覚表面からディスプレイの反対側に備えられ、その結果、観測者は光源からディスプレイを通して通過する光を見得、または別のリフレクタが、観測者からディスプレイの反対側に備えられ得る。)カラーリフレクタアレイは、もちろん、視覚表面からアレイの反対側に配置されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(詳細な説明)
上記に指摘されているように、本発明は、下記に主として別々に説明される二つの主要な局面を有する。しかし、単体のディスプレイは、本発明の複数の局面を利用し得ること、たとえば、本発明のカラーアレイディスプレイもまた、本発明の絶縁層局面に一致した絶縁層を含み得ることを理解されるべきである。
【0030】
この第1の局面において既に述べられたように、本発明は、懸濁流体において懸濁した複数の帯電粒子を有する電気泳動媒体、および電気泳動媒体の反対側に配置された2個の電極とを備える電気泳動ディスプレイを提供する。その電極の少なくとも1個は光透過性で、観測者が視覚表面を通してディスプレイを見る視覚表面を形成する。ディスプレイは、閉鎖光学状態と開放光学状態とを有する。閉鎖光学状態では、帯電粒子が視覚表面の実質的に全体に広がり、その結果、光は電気泳動媒体を通過できなく、開放光学状態では、電気泳動粒子が電極間に延びる連鎖を形成し、その結果、光は電気泳動媒体を通過することができる。絶縁層は、電極と電気泳動媒体との間に配置される。
【0031】
そのような電気泳動ディスプレイにおいて絶縁層を備えることは、たとえば、前述の欧州特許出願第709,713号に記載されたディスプレイなどの、そのような層を欠いたディスプレイに使用され得る電気泳動粒子よりはるかに広い範囲で電気泳動粒子を使用することを可能にする。絶縁層は電気泳動粒子と電極との間を直接接触することを妨げるので、たとえばカーボンブラックなどの導体電気泳動粒子を、電気泳動粒子の連鎖が電極をショートさせるいかなる危険もなしに、使用し得る。
【0032】
電気泳動媒体の動作は、電気泳動媒体を通過する小電流の通路に依存するため、本発明のディスプレイで使用される「絶縁層」は、電気泳動媒体を通過する電流の通路を完全にブロックすべきでないことは理解されたい。しかし、電気泳動媒体の抵抗率は、通常、高い(約1010Ωcm)ので、通常、絶縁体と考えられる多くの材料は、本発明においてうまく使用し得る。米国特許第6,831,769号でより詳細に検討されたように、本発明で使用される絶縁層は、最適値はもちろん電気泳動媒体自身の体積抵抗率で変動するが、通常約10〜1011Ωcmの体積抵抗率を有するべきである。
【0033】
本発明の絶縁層局面に従う絶縁層を備えることは、ディスプレイの追加の製造工程を必要としない。前述の米国特許出願第2004/0027327号および上記の種々のその他のE InkおよびMITの特許および特許出願で検討したように、電気泳動ディスプレイを構築する一つの好ましい方法は、第一に、いわゆる「フロントプレーン積層板(front plane laminate)」を形成することである。フロントプレーン積層板は、光透過導電層、この導電層と電気的に接触した固体電気泳動媒体の層、および接着層を、この順序で備え、接着層は、保管時に、レリースシート(release sheet)によってカバーされ、レリースシートは、フロントプレーン積層板が下記のラミネーションがなされる前に取り外され得る。そのようなフロントプレーン積層板はまた、通常、導電層を支持し、最終ディスプレイの前面を形成する前面基板も備え、それで電気泳動媒体の機構的な保護を提供する。最終ディスプレイを形成するためには、フロントプレーン積層板は、通常、熱と圧力によって、少なくとも1個の電極を備えるバックプレーンにラミネーションされる。ディスプレイが、最終ディスプレイにおいてそのような工程によって形成されるとき、接着剤が、バックプレーン電極と電気泳動媒体との間の絶縁層として働き得る。絶縁層としてラミネーション接着剤を使用することは、もちろん、フロントプレーン積層板の一部として備えられたラミネーション接着剤に限定されない。たとえば、バックプレーンに接着剤を塗ることによって形成される接着層もまた、絶縁層として働く。事実、電気泳動ディスプレイが、前述の米国特許出願第2004/0155857号に記載された「ダブルレリースフィルム」を使用して形成される場合(そのようなダブルレリースフィルムは、電気泳動媒体の両側に備えられた接着層を有する電気泳動媒体の層を本質的に含み、ディスプレイは、ダブルレリースフィルムをバックプレーンと前面基板に別々にラミネートすることによって形成される。)、両方の絶縁層は接着層であり得る。
【0034】
同様に、前述のE InkおよびMITの特許および特許出願に記載されたように、電気泳動媒体はカプセル化した電気泳動媒体で、そこでは懸濁流体および粒子は複数のカプセル内に保持される場合、カプセル壁(およびオプションでカプセルを囲み、カプセルをコヒーレント層の中に形成するために通常使用されるバインダー)は、本発明によって必要とされる絶縁層として働く。また、電気泳動媒体がマイクロセルタイプの場合、マイクロセルの端壁は、本発明によって必要とされる絶縁層として働き得る。
【0035】
本発明の絶縁層ディスプレイにおいて、両方の電極は通常、ディスプレイの各ピクセル内で連続であり、上記に検討されるように欧州特許出願第709,713号に使用されているストライプの電極(striped electrode)のタイプは、一般的に必要ない。それで、そのようなストライプ電極に関連した費用および製造上の難しさは避けられる。実際的には、本発明に対して一般的に好ましい電極構成は、複数のピクセル全体に延びる連続前電極を有する従来の電極構成で、通常、全体ディスプレイ、およびバックプレーンに形成されたピクセル電極のマトリクスで、ディスプレイの各ピクセルに関係した1個のピクセル電極である。
【0036】
本発明のディスプレイの開閉は、(すなわち、ディスプレイの開放と閉鎖との光学状態間のディスプレイの移動)は、前述の同時係属中の特許出願第10/907,140号において記載されている方法である、電極間に印加される電界の周波数を変化させることによって好ましく達成される。この同時係属中の特許出願で検討されているように、電極間に高周波数AC電界(通常200〜1000Hzのオーダー)を印加すると、粒子の連鎖(ストランディング)が起こり、ディスプレイは開放する。一方、DCまたは低周波数AC電界(通常50Hz未満)を印加すると、ディスプレイは閉鎖する。DC電界は、1個の電極に隣接し、その全域をカバーする電気泳動粒子を急速に運ぶので、DC電界を使用することによるディスプレイを閉鎖する能力は重要である。このように、ディスプレイはアクティブにまた急速に閉鎖され得る。そのような閉鎖は、欧州特許出願第709,713号に記載されている第1のタイプのディスプレイのような拡散制御された粒子移動よりはるかに速く、この欧州特許出願に記載された第2のタイプのような隣接するストランド間の光もれの影響はより少ない。グレースケールは、交流電界の周波数を変更することによって、達成され得る。前述の国際公開第03/107315号および同時係属中の特許出願第10/907,140号を参照されたい。
【0037】
本発明のディスプレイの双安定性は、前述の米国特許出願公開第2002/0180687号に記載されている方法で、懸濁流体において固有粘性ηを有し、懸濁流体においてイオン性またはイオン化グループが実質的にないポリマーで、懸濁流体内に約0.5η−1〜約2.0η−1の濃度で存在するポリマーを懸濁流体において溶解しまた分散されることによって改善し得る。このポリマーは、たとえば、ポリイソブチレン(PIB)またはクラトン(Kraton)であり得る。優れた映像安定性は、この公開された出願に記載のとおり、空乏―凝集(flocculation)機構によって達成され得る。
【0038】
本発明のディスプレイにおいて使用される懸濁流体は、通常液体であるが、たとえば、前述の米国特許出願第2004/0112750号に記載されているように、気体でもあり得る。
【0039】
既に述べられたように、本発明の第2の局面は、カラーフィルタアレイまたは電気泳動ディスプレイに接続されたカラーレフレクタを使用したカラーディスプレイで、電気泳動粒子が連鎖を形成する開放状態を有するカラーディスプレイに関する。カラーディスプレイは、シャッタモードディスプレイをカラーフィルタ(ディスプレイの「前」(すなわち、観測者とシャッタモードディスプレイの間)に位置するか、またはディスプレイの「後」(すなわち、観測者からディスプレイの反対側に)に位置する)に結合することによって製作し得ることは公知である。ディスプレイのピクセルが開放状態にあるとき、観測者は、フィルタまたはピクセルに隣接したリフレクタの色を見る。見える色を向上させるためにディスプレイはバックライトで照らされ得、リフレクタは、ディスプレイの後ろに位置し得る。通常カラーアレイは、異なるピクセルに関係した各トライアド(triad)またはストライプの各3分の1付きの三原色の繰返しトライアドまたはストライプを有し、その結果、フルカラーディスプレイが提供される。そのようなカラーディスプレイは、前述の欧州特許出願第709,713号の図32Bおよび米国特許第6,864,875号に示される。
【0040】
多くのそのような従来技術のカラーディスプレイは電気泳動粒子の横の移動に依存する(すなわち、電気泳動層の平面に平行な電気泳動粒子の移動)。たとえば、前述の米国特許第6,864,875号、特に図2A〜2Dおよび3A〜3I、および米国特許出願公開第2004/0136048号を参照されたい。これら米国特許では、電気泳動粒子の横の移動は、誘電泳動によって達成される。通常そのようなディスプレイのピクセルの開放状態において、電気泳動粒子は、ピクセルの領域の小部分に集中し、その結果、ピクセル領域の大部分は、光がその領域を通過することを可能にし、フィルタまたはリフレクタの色が見える。一方ピクセルの閉鎖状態において、粒子はピクセルの領域の少なくとも主要部分をカバーし、その結果、ピクセルは暗く見える。電気泳動のそのような横の移動は、各種の問題を受けやすい。通常、各ピクセルは、ディスプレイと同じ側に2個以上の電極を必要とし(通常、バックプレーンに隣接した背面側)、それが、複雑な、非標準的なバックプレーンとなる。また、電極は、異なるサイズで、および/または重複するがお互い絶縁されることが要求され得る。たとえば、欧州特許出願公開第1,254,930号を参照されたい。電気泳動粒子を横にすばやく移動させること、および帯電粒子によってカバーされないピクセルの小部分であってもその閉鎖した暗い状態に対する不利な影響を避けるために電気泳動の粒子を十分均一に分布する方法は、難しいということが分かり得る。
【0041】
本発明の第2の局面に従って、電気泳動ディスプレイに関係したカラーアレイを使用したカラーシャッタモードディスプレイが提供される。そのディスプレイでは、ピクセルまたは各ピクセルは、電気泳動媒体を備え、電気泳動媒体は、懸濁流体に懸濁した複数の電気的帯電粒子、および電気泳動媒体の向かい合った側にある電極(通常、一対の電極)を備える。ピクセルは、閉鎖光学状態及び開放光学状態を有し、閉鎖光学状態において、帯電粒子は、ピクセルの視覚表面全体に実質的に広がっていて、その結果、光はピクセルを通過できなく、開放光学状態において、電気泳動粒子が電極間に延びた連鎖を形成し、その結果、光はピクセルを通過し得る。そのようなディスプレイの好ましい形態において、閉鎖状態において、帯電粒子は、DC電界によって、ディスプレイの隣接する電極を凝集するように移動される。
【0042】
このタイプのカラーディスプレイは、各ピクセルに対して2個の電極で、1個の電極が電気泳動媒体の各側にある電極を必要するのみというメリットを有する。このように、本ディスプレイは、ピクセル電極マトリクス構造を有する従来の連続前電極/バックプレーンと互換性がある。さらに、帯電粒子は、連鎖の一部を形成するに十分な距離を横に移動する必要があるのみで、通常1ピクセル当たりいくつかの連鎖があるので、本発明のカラーディスプレイの開放は、通常、帯電粒子がピクセルの幅の相当な部分を一つのピクセルから別のピクセルに横に移動することを必要とするディスプレイより実質的に速い。さらに、ディスプレイのピクセルは、DCまたは低周波数AC電界を印加し、1個の電極に隣接するすべての粒子を移動させることによる、従来の電気泳動ディスプレイと同様な方法で閉鎖され得るので、また、粒子は、小電極をカバーされない状態にする必要が一切なく、1個の電極の全体をカバーし得るので、閉鎖は、急速に達成され得、良好な暗い状態が生成され得る。
【0043】
本発明のカラーディスプレイは、上記に検討されたように、本発明の第1の局面のオプションの特徴のどれでも利用し得る。
【0044】
本発明の実施形態は、添付の図面に関して例示的な方法によってのみであるが、ここに記載される。
【0045】
図1は、本発明の絶縁層ディスプレイの概略断面(全体的に100で指定される)であり、ディスプレイ100は、光がディスプレイを通過し得ない閉鎖(不透明)光学状態が例示される。ディスプレイ100は、透明な後基板102および前基板104を含み、それらは、ディスプレイ100の外部層を形成する。図1(および下記のその他の図)において示される各種層の厚さは、原寸ではなく、通常基板102および104は、図1の例示より実質的に厚く、頑丈な、機構的に丈夫なディスプレイであり得る。事実、ディスプレイ100がVTウィンドウとして使用されるとき、基板102および104は、ウィンドーを形成する2枚のガラス板の形態であり得る。
【0046】
後基板102は、複数のディスクリートなピクセル電極106が備えられ、それらの1個のみが図1に示される。一方、前基板104は、ディスプレイ全体に延びる1個の連続電極108を備える。電極106と108との間には、懸濁流体112内で分散する電気的に帯電粒子110を備える電気泳動媒体が配置される。
【0047】
絶縁層114は、電極106と懸濁流体112との間に、および絶縁層116は、電極108と懸濁流体112との間に備えられる。絶縁層114および116は両方とも、ディスプレイ100の全体にわたり連続であり、絶縁層114は、帯電粒子110と電極106との直接の接触を防ぐ働きをし、絶縁層116は、帯電粒子110と電極108との直接の接触を防ぐ働きをし、それによって、導電粒子が帯電粒子110として使用されることを可能にし、帯電粒子上の電荷が、電極106および108の接触によって変更される傾向を減少させる。
【0048】
既に述べられたように、図1は、ディスプレイ100が閉鎖(不透明)光学状態にあるディスプレイ100を示し、そこでは、粒子110は電極108にわたり実質的に均一に広がり、その結果、電極106によって規定されるピクセルの全領域は光不透過のディスプレイとなる。ディスプレイ100のこの閉鎖状態は、電極106と108との間に定電界を印加することによって生成され得、その結果、すべての帯電粒子110は、前電極108に隣接するように引かれる。代わりに、もちろん、電界の方向を変更することによって、粒子110は、後電極106に隣接するように引かれ得る。
【0049】
図2は、ディスプレイ100が開放(透明)光学状態にあるディスプレイ100を示し、そこでは、帯電粒子110は、電極106と108間(または、より厳密には絶縁層114と116)に延びる「連鎖」で配置され、その結果、粒子は、ピクセルのほんの小部分のみ占め、光は、ピクセルを通過し得る。既に述べられたように、粒子のそのような連鎖は、電極106と108との間に高周波数交流電界を印加することによって、達成し得る。
【0050】
図3は、本発明のカラーフィルタアレイディスプレイの概略断面(全体的に300で指定される)である。ディスプレイ300もまた、図1の絶縁層に類似した絶縁層が備えられる。ディスプレイ300は、後基板302、前基板304、ピクセル電極306R、306G及び306B、連続前電極、帯電粒子310、懸濁流体312および絶縁層314および316を備え、それらのすべては、図1に示されたディスプレイ100の対応する構成要素に、大体類似している。しかし、ディスプレイ300においては、前基板304は、カラーの光透過の赤色部304R、緑色部304Gおよび青色部304Bを有するカラーフィルタアレイとして形成され、この赤色部はピクセル電極306Rに、緑色部はピクセル電極306Gに、および青色部はピクセル電極306Bにそれぞれ整列される。
【0051】
ディスプレイ300は、下から背面照明され、上から見るように設計される(図3に例示されているとおり)。代わりにリフレクタディスプレイの下に(すなわち、後基板に隣接し、その結果、上からディスプレイを通過する光は、ディスプレイを通して反射され、上から見える。図3に例示されているように、有効なピクセル電極306R、306Gおよび306Bは、開放または閉鎖光学状態に互いに無関係に置かれ得るサブピクセルを規定する。たとえば、図3は、開放状態において電極306Rおよび306Bによって規定される赤色および青色サブピクセル示す、その結果、ピクセルを見る観測者は、マジェンタ色を見る。
【0052】
図4は、本発明のカラーリフレクタディスプレイ(全体的に400で指定される)の概略断面であるディスプレイ400は再び、図1の絶縁層に類似した絶縁層が備えられる。ディスプレイ400は、図3に示されるディスプレイ300にきわめて類似しているが、ディスプレイ300の前基板304に備えられたカラーフィルタアレイを欠き、その代わり、ディスプレイ400は、基板402内に形成され、ピクセル電極306R内に配列される赤色リフレクタ402R、ピクセル電極306G内に配列される緑色リフレクタ402G、および306B内に配列される青色リフレクタ402Bを備えるカラーリフレクタのアレイが備えられる。
【0053】
ディスプレイ業界の当業者にとって容易に明らかなように、ディスプレイ400は、ディスプレイ300の動作方法にきわめて類似した方法で動作する。有効なピクセル電極306R、306Gおよび306Bは、開放または閉鎖光学状態に互いに無関係に置かれ得るサブピクセルを規定する。たとえば、図4において、電極306Rおよび306Bによって規定される赤色および青色サブピクセルは、開放状態であるが、電極306Gによって規定される緑色サブピクセルは、閉鎖状態である。したがって、上から見る観測者は(図4に例示されているように)、赤色リフレクタ402Rから反射された赤色光および青色リフレクタ402Bから反射された青色光を見るが、緑色リフレクタ402Gから反射されたどの光も見ない。従って、図4に示された3個のピクセル電極によって規定されるピクセルはマジェンタ色を表示する。
【0054】
上記の本発明の特定の実施形態において、本発明の範囲を逸脱することなしに、多くの変更および修正がなされ得ることは、当業者にとって明らかである。たとえば、図1〜図4に例示された電気泳動ディスプレイは、非カプセル化の電気泳動媒体であるが、本発明のディスプレイは、カプセル化、ポリマー分散、またはマイクロセル電気泳動媒体も使用し得る。図3に示されるカラーフィルタアレイディスプレイ300は、カラーフィルタアレイを、電気泳動媒体の「後」(観測者の観点から)に、たとえば後基板302内に、図4に示されるディプレイ400に使用される方法に類似した方法で、置くことによって、修正し得る。その他の変更および修正は、ディスプレイ業界の当業者にとって容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】添付図面の図1は、閉鎖光学状態におけるディスプレイを示す本発明の絶縁層ディスプレイの概略断面である。
【図2】図2は、図1と同じディスプレイの概略断面であるが、ディスプレイの開放光学状態におけるディスプレイを示す。
【図3】図3は、図1と同様であるが、本発明のカラーフィルタアレイディスプレイの概略横断面である。
【図4】図4は、図1と図3と同様であるが、本発明のカラーリフレクタディスプレイの概略断面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動ディスプレイ(100;300;400)であって、
懸濁流体(112、312)に懸濁する複数の帯電粒子(110;310)を有する電気泳動媒体と、
該電気泳動媒体の向かい合う側に配置された2個の電極(106、108;306R、306G、306B、308)であって、該電極(108;308)の少なくとも1個は、光透過性で、観測者が視覚表面を通して該ディスプレイ(100;300;400)を見得る該視覚表面を形成する、2個の電極と
を備え、
該ディスプレイ(100;300;400)は、閉鎖光学状態と開放光学状態を有し、該閉鎖光学状態において、該帯電粒子(110、310)は実質的に該視覚表面全体に広がり、その結果、光は該電気泳動媒体を通過し得なく、該開放光学状態において、該電気泳動粒子(110;310)は、該電極(106、108;306R、306G、308)間に延びる連鎖を形成し、その結果、光は該電気泳動媒体を通過し得、
該ディスプレイは、該電極(106、108;306R、306G、306B、308)と該電気泳動媒体との間に配置された絶縁層(114、116;314、316)、を特徴とする、電気泳動ディスプレイ。
【請求項2】
前記帯電粒子(110;310)の少なくとも一部は導電性である、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項3】
前記導電性粒子(110;310)はカーボンブラックを備える、請求項2に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項4】
前記絶縁層(114、116;314、316)の少なくとも1個は、10〜1011Ωcmの体積抵抗率を有する、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項5】
前記視覚表面から離れた前記絶縁層(114;314)は接着層で形成される、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項6】
前記帯電粒子および前記懸濁流体は複数のカプセル内に閉じ込められる、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項7】
前記カプセルは、ポリマーバインダー内に保持される、請求項6に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項8】
前記絶縁層の少なくとも1個は、前記カプセルのバインダーおよび/または壁から構成される、請求項7に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項9】
前記帯電粒子および前記懸濁流体は、ポリマーバインダーを備える前記連続相内に保持される複数のディスクリートな液滴として存在する、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項10】
前記連続相は、帯電粒子および懸濁流体が閉じ込められる複数のセルを分離する壁を形成する、請求項9に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項11】
前記2個の電極に電圧を印加する電圧供給手段であって、該電圧供給手段は、前記ディスプレイを開放光学状態に駆動するのに有効な高周波数交流電圧と、前記ディスプレイを閉鎖光学状態に駆動するのに有効な低周波数交流または直流電圧との双方を供給するようにアレンジされる、電圧供給手段をさらに備える、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項12】
前記高周波数交流電圧は、200〜1000Hzの範囲の周波数を有し、前記低周波数交流または直流電圧は、0〜50Hzの範囲の周波数を有する、請求項11に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項13】
前記電圧供給手段は、少なくとも1個の中間周波数交流電圧を供給するようにさらにアレンジされ、該中間周波数交流電圧は、該高周波数交流電圧と該低周波数交流または直流電圧との中間の周波数電圧を有し、該中間周波数交流電圧は、前記ディスプレイを前記開放光学状態と前記閉鎖光学状態との中間のグレー状態に駆動するに有効である、請求項11に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項14】
前記懸濁流体(112;312)は、該懸濁流体中で、該懸濁流体において固有粘性ηを有するポリマーを溶解または分散し、該ポリマーは、該懸濁流体においてイオン性またはイオン化グループが実質的に無く、該ポリマーは0.5η−1〜2.0η−1の濃度で該懸濁流体において存在する、請求項1に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項15】
前記ポリマーは、ポリイソブチレンである、請求項14に記載の電気泳動ディスプレイ。
【請求項16】
複数のピクセルを有する電気泳動ディスプレイ(300;400)であって、該ディスプレイは、
懸濁流体(312)中に懸濁する複数の帯電粒子(310)有する電気泳動媒体と、
該電気泳動媒体の向かい合う側に配置された電極(306R、306G、306B,308)であって、該電極(308)の少なくとも1個は光透過性で、該観測者が視覚表面を通して該ディスプレイを見る視覚表面を形成する電極と
を備え、
該ディスプレイの各ピクセルは、閉鎖光学状態と開放光学状態を有し、閉鎖光学状態において、該帯電粒子(310)が該ピクセルの該視覚表面の実質的に全体に広がり、その結果、光は該電気泳動媒体を通過し得なく、該開放光学状態では、該電気泳動粒子(310)が該ピクセルの該電極間(306R、306G、306B、308)に延びる連鎖を形成し、その結果、光は該ピクセルを通過し得、
観測者によって知覚される該ディスプレイの色は、ディスプレイの該種々のピクセルの該開放および閉鎖状態を変化することによって変動され得るように、該観測者に見えるように、該ディスプレイに隣接して配置されるカラーアレイ(304R、304G、304B;402R、402G、402B)をさらに備える、ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−500592(P2008−500592A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515708(P2007−515708)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/026639
【国際公開番号】WO2006/015044
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(500080214)イー インク コーポレイション (148)