説明

電気光学装置用基板の製造方法

【課題】例えば、プリズム等の光反射部の光反射面から曲面を取り除き、光利用効率を向上させる。
【解決手段】被転写用基板600から見て光反射部230が形成された側から光反射部230及び被転写用基板500をCMP法等の研磨法を用いて研磨することによって、光反射面232のうち被転写用基板600の表面に対して光反射面232が曲面をなして交わる部分を除去する。これにより、プリズムとして機能する光反射部230が有する光反射面232の曲面部分が除去されるため、対向基板20を透過する透過光のうち曲面部分で反射される光を低減でき、光利用効率を高めることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶装置等の電気光学装置を構成する複数の構成要素のうち画素電極が形成された素子基板に対向するように配置された対向基板等の電気光学装置用基板を製造するための電気光学装置用基板の製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の一例である液晶装置では、各画素に対応して対向基板にプリズムが作り込まれる場合がある。このようなプリズムによれば、対向基板を透過する透過光を画素に集光することができ、光の利用効率を向上させることによって明るい表示が実現可能になる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−215427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術によれば、プリズムの断面形状を素子基板に向かって幅が広がるV字型に形成することが困難であり、光利用効率を十分に高めることができない問題点がある。より具体的には、プリズムが型押し技術を応用して形成された場合、プリズムの表面のうち素子基板に臨み、且つ素子基板の基板面に沿った一の面と、プリズムの表面のうち当該一の面に斜めに交わる光反射面とが交わる部分が曲面をなし、対向基板を透過する透過光のうち当該曲面で反射された光が画素に集光されない場合がある。したがって、このような曲面は、液晶装置における光利用効率を低下させてしまう。特に、型押し成型技術を応用してプリズムを形成した場合、正確なV字型を有する成型体を形成することが困難であるため、光利用効率を低下させてしまう曲面をプリズムからなくすことは困難である。
【0005】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、プリズム等の光反射部の光反射面から曲面を取り除き、光利用効率を向上させることが可能な電気光学装置用基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気光学装置用基板の製造方法は上記課題を解決するために、変調すべき光が入射する側に斜面を向けて当該光を画素の開口領域に向けて導く断面楔形形状の偏向部が形成された電気光学装置用基板の製造方法であって、前記偏向部に対応して設けられた隙間を有するレジスト膜を第1基板の表面に形成する工程と、前記第1基板のうち前記隙間に臨む部分を部分的に除去することによって、前記第1基板の表面から前記第1基板の裏面に向かって幅が狭まる断面楔型形状を有する複数の第1凹部を形成する工程と、前記第1凹部から前記楔形形状を転写してなる複数の凸部を表面に有する転写用部材を形成する工程と、前記楔形形状の転写先であり、且つ前記電気光学装置用基板になるべき被転写用基板に透光性の被転写層を形成する工程と、前記被転写層の表面に前記転写用部材を押しつける工程と、前記転写用部材を前記被転写用基板から離すことによって、前記楔形形状を各々有する複数の第2凹部を前記被転写用基板に形成する工程と、前記被転写用基板より屈折率が低い低屈折率材料から構成されており、前記被転写用基板を透過する透過光を前記第2凹部の表面に沿った光反射面によって前記開口領域に反射する光反射部を前記第2凹部に形成する工程と、前記被転写用基板の前記光反射部が形成された側から前記光反射部及び前記被転写層を研磨することによって、前記光反射面のうち前記被転写用基板の表面に対して前記光反射面が曲面をなして交わる部分を除去する工程とを備える。
【0007】
本発明に係る電気光学装置用基板の製造方法によれば、例えば、第1基板の表面にレジスト膜を一様に形成した後、当該レジスト膜をパターニングすることによって、第1基板とは別の素子基板上の複数の画素の夫々の開口領域を囲む非開口領域に対応して設けられた隙間をレジスト膜に形成する。
【0008】
前記第1基板のうち前記隙間に臨む部分を部分的に除去することによって第1基板を部分的に堀込み、楔型形状を有する複数の第1凹部を形成する。「部分的に」とは、第1基板の表面から第1基板の裏面に貫通しないように当該第1凹部を形成することをいう。
【0009】
例えば、電気メッキ法(電鋳法)を用いてNi等の金属を第1凹部内に成膜し、前記第1凹部から前記楔形形状を転写してなる複数の凸部を表面に有する転写用部材を形成する。
【0010】
後述する光反射部が作り込まれた電気光学装置用基板となるべき被転写用基板の表面に前記転写用部材を押しつけ、前記転写用部材を前記被転写用基板から離すことによって、前記楔形形状を各々有する複数の第2凹部が前記被転写用基板に形成される。被転写用基板は、例えば、凸部が埋め込み可能なように、エポキシ樹脂、或いはアクリル樹脂等の樹脂材料、若しくは低融点ガラスの層が形成されたガラス基板である。
【0011】
上述のエポキシ樹脂等を含んで構成された前記被転写用基板より屈折率が低いSiO2等の低屈折率材料から第2凹部に充填、或るは、成膜することによって、電気光学装置を組み上げた後に前記被転写用基板を透過する透過光を前記第2凹部の表面に沿った光反射面によって前記開口領域に反射する光反射部を形成する。この段階では、光反射面に曲面部分が残っている。
【0012】
前記被転写用基板から見て前記光反射部が形成された側から前記光反射部及び前記被転写用基板をCMP法等の研磨法を用いて研磨することによって、前記光反射面のうち前記被転写用基板の表面に対して前記光反射面が曲面をなして交わる部分を除去する。
【0013】
したがって、本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、プリズム等の光反射部が有する光反射面における曲面部分が除去されるため、電気光学装置用基板を透過する透過光のうち曲面部分で反射される光を低減でき、光利用効率を高めることが可能である。
【0014】
本発明に係る電気光学装置用基板の製造方法の一の態様では、前記研磨された光反射部の研磨面に対向電極を形成する工程と、前記対向電極上に配向膜を形成する工程とを備えていてもよい。
【0015】
この態様によれば、研磨によって形成された平坦な面に直接対向電極及び配向膜を順次形成できるため、平坦な対向電極及び配向膜を形成するために別途平坦化膜を形成する必要がなく、電気光学装置用基板の製造プロセスを効率良く、且つ簡便に製造可能である。加えて、平坦化膜を形成することなく、対向電極及び配向膜を形成できるため、光反射部から見て素子基板の側に対向電極及び配向膜以外の層構造を形成する必要がない。したがって、光反射部から液晶層等の電気光学物質までの距離を短くすることができ、光反射面によって反射された光を拡散させることなく、効率良く開口領域に集光することが可能である。
【0016】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電気光学装置用基板の製造方法の一実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の電気光学装置用基板の製造方法を液晶装置の製造方法に適用した例を挙げる。
【0018】
<1;液晶装置>
先ず、図1及び図2を参照しながら、後述する電気光学装置用基板の製造方法を用いて製造される液晶装置1の構成を説明する。図1は、本発明の「素子基板」の一例であるTFTアレイ基板10をその上に形成された各構成要素と共に、本発明の「電気光学装置用基板」の一例である対向基板20の側から見た液晶装置1の平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。尚、液晶装置1は、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式を採用している。
【0019】
図1及び図2において、液晶装置1では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に、本発明の「電気光学物質」の一例である液晶からなる液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材(図示省略)が散布されている。即ち、本実施形態の液晶装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。
【0020】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0021】
シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0022】
対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子(図示せず)が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0023】
図2において、TFTアレイ基板10上では、ガラス基板等からなる基板本体に画素スイッチング用のTFT(Thin Film Transistor;以下適宜、“TFT”と称する)や走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に配向膜16が形成されている。対向基板20上には、対向電極の他、最上層部分に配向膜22が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。TFTアレイ基板10及び対向基板20の各々の対向面の背面側には配向方向に応じた偏光板(図示省略)が設けられる。
【0024】
次に、図3乃至図4を参照しながら、対向基板20の構成を詳細に説明する。図3は、対向基板20のコーナー部付近における4つの画素部に着目して、対向基板20の構成を示す部分拡大斜視図である。図4は、図3に示した4つの画素部の平面図である。図5は、図3及び図4の夫々のV−V´断面部分を拡大して示した拡大断面図である。
【0025】
図3及び図5に示すように、対向基板20は、透明基板210、光反射部230、埋め込み層240、対向電極21及び配向膜22を備えて構成されている。より具体的には、石英基板等からなる透明基板210上に光反射部230が形成されると共に、光反射部230の各開口を埋めて凸部220が透明基板210に形成されることにより構成される。尚、図3には、光反射部230に埋もれた凸部220の一部の形状を点線にて示してある。後述するように、凸部220は、本発明の「凸部」の一例ではないことに留意されたい。
【0026】
図3及び図4に示すように、光反射部230は、透明基板210上で平面的に見て、各画素部において非開口領域の少なくとも一部に重畳するパターンとして平面的に見て格子状に形成されている。光反射部230は、例えば、各画素部の非開口領域を規定するパターンとして形成され、図中点線にて示すように、光反射部230の開口における領域が開口領域700となる。
【0027】
尚、対向基板20上において、TFTアレイ基板10と対向する側に、光反射部230とは別途、非開口領域を規定する格子状又はストライプ状のブラックマトリクスを形成し、このブラックマトリクスと光反射部230、更には、これらに加えて、TFTアレイ基板10側に設けられる、後述するデータ線等の各種構成要素と共に、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0028】
光反射部230は、埋め込み層240を構成する透明材料の屈折率より低い低屈折率材料で構成されている。より具体的には、例えば、埋め込み層240がエポキシ樹脂、或いはアクリル樹脂等の樹脂材料、若しくは低融点ガラス等の透明材料から構成されている場合には、光反射部230は、これら透明材料より屈折率が低いSiO2等の透明材料から構成されている。
【0029】
尚、図4において、図中X方向及びY方向の夫々の方向は、本発明の「配列方向」の一例であり、TFTアレイ基板10に形成された複数の画素電極9aは、X方向及びY方向に夫々に沿って配列されている。
【0030】
図3及び図5に示すように、光反射部230の側面である光反射面232は、TFTアレイ基板10に対向するように配置される対向基板20の基板面、より具体的には、当該基板面に沿った透明基板210の基板面に対して斜めに延びており、凸部220の表面に対して斜めに交わる。加えて、光反射部230は、埋め込み層240の一部である凸部220より屈折率が低いため、液晶装置1の動作時に、画素領域において図5中下側から上側に向かって対向基板20を透過する透過光が光反射面232によって反射され、開口領域700に集光される。したがって、光反射部230によれば、隣接する画素部間で、非開口領域に向かう光を各々の開口領域700に反射により集光することが可能となり、バックライト等の光源から出射された光を画像表示に利用する際の光利用効率を高めることができる。加えて、対向基板20は、後述する電気光学装置用基板の製造方法によって製造されているため、光反射面232のうち埋め込み層240の表面に交わる部分(図5中、光反射面232のうち領域C1で示した領域に延びる部分)が曲面にならない。したがって、光反射部230によれば、光反射面232全体で光をより確実に開口領域700に反射でき、光利用効率をより一層高めることが可能である。
【0031】
次に、図6を参照しながら、液晶装置1の回路構成及び動作を説明する。図6は、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
【0032】
図4において、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0033】
TFT30は、そのゲートに走査線11aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線11aを介して当該ゲートにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加されるように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0034】
画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板20に形成された対向電極21との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学パネルからは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0035】
保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70は、走査線11aに並んで設けられ、固定電位側容量電極を含むとともに定電位に固定された容量電極300を含んでいる。
【0036】
図1又は図2において、走査線駆動回路104は、上述の如く走査信号G1、G2、…、Gmを所定タイミングで走査線11aに供給し(図4参照)、データ線駆動回路101は、上述の如く画像信号S1、S2、…、Snを所定タイミングでデータ線6aに供給する(図4参照)。
【0037】
次に、図7を参照しながら、液晶装置1における対向基板20の機能を説明する。図7は、図2に示す断面の構成をより詳細に示す断面図である。
【0038】
図7において、画素部では、既に説明したように、透明基板210上において、光反射部230によって非開口領域が規定されると共に、開口領域700に凸部220が配置されている。対向基板20上には、透明導電膜からなる対向電極21が形成され、更に、配向膜22が対向電極21上(図7中、対向電極21より下側)に形成されている。
【0039】
画素電極9aは、TFTアレイ基板10上の各開口領域700に対応する領域に形成されている。TFTアレイ基板10上において、画素スイッチング用のTFT30や、画素電極9aを駆動するための走査線11aやデータ線6a等の各種配線並びに蓄積容量70等の電子素子が、非開口領域に形成されている。このように構成すれば、液晶装置1の画素領域における開口率、即ち、画素領域のうち開口領域700が占める割合を比較的大きくすることが可能である。画素電極9a上には配向膜16が設けられている。
【0040】
図7において、一点鎖線によって、バックライト等の光源から対向基板20に入射される入射光Lの光路を模式的に示している。入射光Lのうち、各画素部において、非開口領域に向かう光は、光反射面232に入射され、開口領域700に集光される。入射光Lのうち、各画素部において、開口領域700に向かって進行する光は、集光されることなく凸部220を透過して、液晶層50に向かって対向基板20を透過する。したがって、各画素部には、開口領域700に、光反射面230によって集光された光が入射されると共に、当該開口領域700に進行する光が凸部220をそのまま透過して入射されることとなる。
【0041】
したがって、液晶装置1によれば、非開口領域に入射する光が光反射面232によって開口領域700に反射されるため、TFT30に光が照射されることがなく、TFT30における光リーク電流の発生を低減できる。特に、本実施形態に係る対向基板20によれば、図5を参照して説明したように、光反射面232のうち埋め込み層240の表面に交わる部分が曲面でないため、光反射面232全体で入射光Lを開口領域700に集光でき、光利用効率を高めることが可能である。
【0042】
加えて、対向基板20によれば、対向基板20に光反射部230や凸部220が作り込まれる構成であるため、対向基板20におけるTFTアレイ基板10に臨む側の面に別途光学シートを貼り付けるような構成と比較して、光の通過する異なる媒質の界面の数を減らすことが可能となり、このような界面を通過することによる光の損失を低減できると共に、部品点数を低減して、低コストで対向基板20を製造することができる。また、対向基板20によれば、光反射部230及び液晶層50までの距離tは、対向電極21及び配向膜22の膜厚のみで規定される。したがって、他の光学シートを対向基板20に貼り付けたり、光反射部230を対向基板20に作り込む際に必要となる各種層構造が対向基板20に残されたりしないため、光反射部230及びTFT30を距離を近づけることができ、光反射面232で反射された光がTFT30に照射される割合をより効果的に低減できる。
【0043】
<2;液晶装置の製造方法>
次に、本実施形態に係る電気光学装置用基板の製造方法を応用した液晶装置1の製造方法を説明する。以下では、液晶装置1の製造方法の製造工程のうち対向基板20を製造する製造工程を中心に説明する。図8乃至図10は、液晶装置1の製造工程のうち対向基板20を製造する工程を順に示した工程断面図である。
【0044】
図8(a)に示すように、複数の画素72g(図4参照。)の夫々の開口領域を囲む非開口領域に対応して設けられた隙間901を有するレジスト膜900を第1基板400の表面に形成する(第1工程)。より具体的には、第1基板400の表面にレジスト膜900を一様に形成した後、レジスト膜900をパターニングすることによって、第1基板400とは別のTFTアレイ基板上の複数の画素72gの夫々の開口領域を囲む非開口領域に対応して設けられた隙間901をレジスト膜900に形成する。
【0045】
次に、図8(b)に示すように、第1基板400のうち隙間901に臨む部分を部分的に除去することによって第1基板400を部分的に堀込む。これにより、TFTアレイ基板10上のX方向又はY方向に対応する一方向に沿った平面で第1基板400を切った断面において第1基板400の表面から第1基板400の裏面に向かって幅が狭まる楔型形状を有する複数の第1凹部410を形成する(第2工程)。尚、第1凹部410は、第1基板400の表面から第1基板400の裏面に貫通しないように形成される。
【0046】
次に、図8(c)に示すように、第1凹部410内から第1基板400の表面に渡って電気メッキ法(電鋳法)を用いてNi等の金属を成膜し、第1凹部410の楔形形状を転写してなる複数の凸部510を表面に有する転写用部材500を形成する(第3工程)。次に、図8(d)に示すように、転写用部材500を第1基板400から分離する。
【0047】
次に、図9(e)に示すように、楔形形状の転写先であり、且つ対向基板20になるべき被転写用基板600の表面から被転写用基板600に凸部510が埋め込まれるように被転写用基板600の表面に転写用部材500を押しつける(第4工程)。尚、被転写用基板600は、透明基板210及び埋め込み層240を含んで構成されている。
【0048】
次に、図9(f)に示すように、転写用部材500を被転写用基板600から離すことによって、楔形形状を各々有する複数の第2凹部610を被転写用基板600に形成する(第5工程)。
【0049】
次に、図9(g)に示すように、被転写用基板600、より具体的には埋め込み層240より屈折率が低いSiO2等の低屈折率材料をCVD法を用いて第2凹部610内に供給し、第2凹部610内に当該低屈折率材料を充填又は成膜する。これにより、次工程を経て対向基板20になる被転写用基板600を透過する透過光を第2凹部610の表面に沿った光反射面232によって開口領域700に反射する光反射部230を第2凹部610に形成する(第6工程)。但し、この段階では、光反射面232のうち埋め込み層240の表面に交わる部分(図中領域C1に延びる部分)に曲面部分が残っている。このような曲面部分は、第1凹部410を形成する際に生じた曲面形状がそのまま除去されることなく、埋め込み層240に転写されることに起因する。
【0050】
次に、図9(h)及び図10(i)に示すように、被転写用基板600から見て光反射部230が形成された側から光反射部230及び被転写用基板500をCMP法等の研磨法を用いて研磨することによって、光反射面232のうち被転写用基板600の表面に対して光反射面232が曲面をなして交わる部分を除去する(第7工程)。これにより、プリズムとして機能する光反射部230が有する光反射面232の曲面部分が除去されるため、対向基板20を透過する透過光のうち曲面部分で反射される光を低減でき、光利用効率を高めることが可能である。
【0051】
次に、図10(j)に示すように、研磨された光反射部230の研磨面に対向電極21を形成し(第8工程)、対向電極21上に配向膜22を形成する(第9工程)。これにより、対向基板20が形成される。その後、別途形成されたTFTアレイ基板10及び対向基板20間に液晶層50を封入することによって液晶装置1が製造される。
【0052】
したがって、本実施形態に係る液晶装置の製造方法の一部を構成する対向基板の製造方法によれば、研磨によって形成された平坦な面に直接対向電極21及び配向膜22を順次形成できるため、平坦な対向電極21及び配向膜22を形成するために別途平坦化膜を形成する必要がなく、対向基板20の製造プロセスを簡便にすることができる。加えて、平坦化膜を形成することなく対向電極21及び配向膜22を形成できるため、光反射部230から見てTFTアレイ基板10の側に対向電極21及び配向膜22以外の層構造を形成する必要がない。よって、光反射部230から液晶層50までの距離を短くすることができ、光反射面232によって反射された光を拡散させることなく、効率良く開口領域700に集光することが可能な対向基板20を製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る液晶装置の平面図である。
【図2】図1のII−II´断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶装置の一部を構成する対向基板を拡大して示した部分拡大斜視図である。
【図4】図3に示した4つの画素部の平面図である。
【図5】図3及び図4の夫々のV−V´断面部分を拡大して示した拡大断面図である。
【図6】本実施形態に係る液晶装置1の画像表示領域における等価回路である。
【図7】図2に示す断面の構成をより詳細に示す断面図である。
【図8】本実施形態に係る対向基板の製造方法の工程断面図(その1)である。
【図9】本実施形態に係る対向基板の製造方法の工程断面図(その2)である。
【図10】本実施形態に係る対向基板の製造方法の工程断面図(その3)である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・液晶装置、20・・・対向基板、30・・・TFT、240・・・埋め込み層、400・・・第1基板、410・・・第1凹部、500・・・転写用部材、510・・・凸部、600・・・被転写用部材、900・・・レジスト膜、901・・・隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調すべき光が入射する側に斜面を向けて当該光を画素の開口領域に向けて導く断面楔形形状の偏向部が形成された電気光学装置用基板の製造方法であって、
前記偏向部に対応して設けられた隙間を有するレジスト膜を第1基板の表面に形成する工程と、
前記第1基板のうち前記隙間に臨む部分を部分的に除去することによって、前記第1基板の表面から前記第1基板の裏面に向かって幅が狭まる断面楔型形状を有する複数の第1凹部を形成する工程と、
前記第1凹部から前記楔形形状を転写してなる複数の凸部を表面に有する転写用部材を形成する工程と、
前記楔形形状の転写先であり、且つ前記電気光学装置用基板になるべき被転写用基板に透光性の被転写層を形成する工程と、
前記被転写層の表面に前記転写用部材を押しつける工程と、
前記転写用部材を前記被転写用基板から離すことによって、前記楔形形状を各々有する複数の第2凹部を前記被転写用基板に形成する工程と、
前記被転写用基板より屈折率が低い低屈折率材料から構成されており、前記被転写用基板を透過する透過光を前記第2凹部の表面に沿った光反射面によって前記開口領域に反射する光反射部を前記第2凹部に形成する工程と、
前記被転写用基板の前記光反射部が形成された側から前記光反射部及び前記被転写層を研磨することによって、前記光反射面のうち前記被転写用基板の表面に対して前記光反射面が曲面をなして交わる部分を除去する工程と
を備えたことを特徴とする電気光学装置用基板の製造方法。
【請求項2】
前記研磨された光反射部の研磨面に対向電極を形成する工程と、
前記対向電極上に配向膜を形成する第9工程と
を更に備えたことを特徴とする電気光学装置用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−204649(P2009−204649A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43941(P2008−43941)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】