説明

電気制御盤の自動配線方法

【課題】両端端末未処理済みの電線をロボットの作動領域に供給することによって、電気制御盤の自動配線を実現することができる電気制御盤の自動配線方法を提供する。
【解決手段】電動ドライバと電線クランプとを有する第1ロボット10と、電線の送出し把持機能付きのローラユニットを有する第2のロボット20の共通の作動領域内にシャーシ板31をセットし、第1、第2のロボット10、20を駆動制御することにより、シャーシ板31上の電装部品32、32…の端子間に所定の電線を自動的に接続して配線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気制御盤用の電装部品の端子間を自動配線することができる電気制御盤の自動配線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気制御盤に組み込む電装部品は、配線用のダクトとともにシャーシ板に組み付け、ダクトを通して各電装部品の端子間に配線を施して必要な電気回路を作り、所定の機能動作を実現するのが普通である。
【0003】
このような電気配線作業は、従来専ら手作業によって実施されている。すなわち、電装部品は、多種多様であって、その端子間の配線は、電線の両端の圧着端子を介して各端子にねじ止めし、電線の途中経路をダクトに収納するのが普通であり、これらの一連の作業を自動化することは、技術的に必ずしも容易ではない。なお、電気制御盤の電気配線用の電線の両端に圧着端子などを取り付けて自動的に端末処理する技術は、出願人により先きに提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−140233号公報
【特許文献2】特開平9−282957号公報
【特許文献3】特開2003−31335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、電気制御盤の電気配線用の電線の両端端末処理を自動的に実行することができるものの、その電線により電気制御盤の自動配線を実現することは、全く未開発である。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の実情に鑑み、両端端末処理済みの電線を第1、第2のロボットの作動領域に供給することによって、電気制御盤用の自動配線を実現することができる電気制御盤の自動配線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、電気制御盤に収納するシャーシ板に電装部品と配線用のダクトとを取り付け、電動ドライバと電線クランプとを有する第1のロボットと、電線の送出し把持機能付きのローラユニットを有する第2のロボットとの共通の作動領域内にシャーシ板をセットし、電線の始端を第2のロボットにより把持して搬送し、始端の接続先に対応するダクト穴に始端を挿通し、ダクトの外側に待機している第1のロボットにより始端を接続先の電装部品の端子に接続し、第2のロボットにより電線をダクト内の配線経路に沿って引き回し、終端の接続先に対応するダクト穴に終端を挿通し、ダクトの外側に待機している第1のロボットにより終端を接続先の電装部品の端子に接続し、以下同様の手順を繰り返して必要な電線を自動配線することをその要旨とする。
【0008】
なお、第1、第2のロボットの作動領域内にシャーシ板をセットすると、カメラによる撮像画像に基づき、各電装部品の端子のねじ位置を特定することができ、各電装部品の端子のねじ位置を特定すると、カメラによる撮像画像に基づき、各電線の始端、終端の接続先に対応するダクト穴を特定することができる。
【発明の効果】
【0009】
かかる発明の構成によるときは、第1、第2のロボットを適切に駆動制御することにより、電装部品と配線用のダクトとを取り付けたシャーシ板上の所定の電装部品の端子間に電線を順次接続して自動配線して行くことができる。なお、第1のロボットは、電動ドライバと電線クランプとを有し、両端端末処理済みの電線の始端または終端を把持し、始端または終端の圧着端子を所定の電装部品の所定の端子に導入してねじ止めして接続する一方、第2のロボットは、電線の送出し把持機能付きのローラユニットを有し、電線の始端を把持して始端の接続先の近傍のダクト内にまで搬送し、始端の接続後、電線を送り出しながらダクト内を配線経路に沿って移動することにより、電線をダクト内に収納しながら終端の接続先の近傍のダクト内にまで終端を搬送し、始端または終端をダクト穴に挿通してダクト内から外部に送り出す。
【0010】
ただし、第1、第2のロボットは、それぞれ三次元の多軸のロボットアームの先端に電動ドライバと電線クランプとを装着し、ローラユニットを装着するものとする。また、各電装部品の種類、部品番号、シャーシ板上の取付位置、各端子位置、ねじ種類などのデータは、各電線の電線符号、始端、終端の各接続先、ダクト内の配線経路などのデータとともに、あらかじめデータベース化して各ロボットの駆動制御に反映させるものとする。
【0011】
シャーシ板上の各電装部品の端子のねじ位置を特定することにより、第1のロボットは、電線の始端または終端の圧着端子を正しく接続先の電装部品の端子に導入し、端子のねじを正確に回転駆動して始端または終端をねじ止めして電線を接続することができる。なお、シャーシ板上の電装部品の取付位置は、数10mm程度の誤差を含むのが普通であるから、カメラによる撮像画像を適切に画像処理することにより、各端子のねじ位置を目標精度0.1mm程度に特定する。ただし、撮像用のカメラは、専用のロボットアームに装着してもよいが、たとえば電線クランプと交換することにより、第1のロボットのロボットアームに装着してもよい。
【0012】
各電線の始端、終端は、それぞれの接続先に対応するダクト穴を正しく特定することにより、始端または終端をダクト穴に挿通する際に、電線の外被がダクト穴の周縁に接触したり、それにより電線の外被を傷付けたりするおそれがない。なお、ダクトは、長尺材を所定寸法に切り揃えて使用されるから、ダクトの側壁上のダクト穴は、接続先の端子のねじ位置に対し、ダクト穴のピッチ相当の15〜20mm程度の最大誤差を生じる。そこで、ロボットアーム上のカメラによる撮像画像を画像処理することにより、始端または終端の接続先に対応するダクト穴を特定し、その中心位置を目標精度1mm程度に特定し、電線の始端または終端をダクト穴に挿通する際の目標とする。
【0013】
なお、ダクト穴の特定の際には、高精度で求められている各接続先の端子のねじ位置のデータを利用することが好ましい。また、ダクト穴特定用のカメラは、ねじ位置特定用のカメラより広視野形のカメラを使用することが好ましく、専用のロボットアームに装着してもよいが、ねじ位置特定用のカメラと交換することにより、第1のロボットのロボットアームに装着してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】使用状態説明斜視図
【図2】図1の要部拡大斜視図
【図3】第1のロボット用のヘッド部分斜視図
【図4】第2のロボットのヘッド部分斜視説明図
【図5】全体ブロック系統図
【図6】データベースのデータ内容説明図
【図7】プログラムフローチャート(1)
【図8】プログラムフローチャート(2)
【図9】プログラムフローチャート(3)
【図10】プログラムフローチャート(4)
【図11】プログラムフローチャート(5)
【図12】シャーシ板の模式構成図
【図13】モデル画像、撮像画像の例示説明図
【図14】要部動作説明模式図(1)
【図15】要部動作説明模式図(2)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0016】
電気制御盤の自動配線方法は、第1のロボット10、第2のロボット20の共通の作動領域内にセットするシャーシ板31を対象として実施する(図1、図2)。ただし、シャーシ板31上には、各種の電装部品32、32…が配線用のダクト33、33…とともに所定位置に取り付けられている。なお、シャーシ板31は、第1、第2のロボット10、20を積載する架台フレーム40上に固定するものとする。
【0017】
架台フレーム40は、脚41a、41a…付きの横材41、41と、横材41、41を連結する複数の縦材42、42…とを枠状に組み立てて構成されている。ただし、図1には、1本の縦材42のみが図示されている。横材41、41の間には、シャーシ板31を固定する横方向の補助材43、43…が配設されている。各横材41上には、第1、第2のロボット10、20に共通の横方向のガイドレール44が搭載されており、ガイドレール44、44上には、第1のロボット10用、第2のロボット20用の縦方向のガイドレール45、45が組み合わされている。そこで、第1、第2のロボット10、20は、それぞれガイドレール44、44、45に沿って縦横に移動させることができる。なお、架台フレーム40は、脚41a、41a…を省略することにより、図1のように水平設置するに代えて、ガイドレール44、44を上下に配置し、またはガイドレール45、45を上下に配置するようにして垂直設置してもよい。
【0018】
シャーシ板31上の電装部品32、32…は、DINレールと呼ばれる取付レール34を介して横一列に配列して固定されている。取付レール34上の単独の電装部品32は、両側のストッパ34a、34aを介して固定され、互いに密接して配列する一群の電装部品32、32…は、両側のストッパ34a、34aを介して一括して固定されている。各電装部品32は、一方のストッパ34aを取り外すことにより取付レール34の一端から着脱可能であり、各ストッパ34aは、取付レール34の任意の位置にねじ止めすることができる。ストッパ34aは、各取付レール34ごとに偶数個が使用されている。
【0019】
配線用のダクト33は、取付用の底板の両側に側壁を立設して樋状に形成し、各側壁には、縦長のダクト穴33a、33a…が一定ピッチごとに形成されている。ダクト33、33…は、長尺材を切断するとともに、交差部分の側壁の一部を切除することにより、各電装部品32の端子に接続する電線を収納して配線経路を形成することができる。なお、各ダクト33には、図示しない着脱可能な蓋材が付属している。シャーシ板31は、各電装部品32の端子間に必要な電線を配線して完成すると、図示しない電気制御盤に収納して使用される。
【0020】
第1のロボット10は、三次元の多軸のロボットアーム11に対し、電動ドライバ12、電線クランプ13、カメラ14を装着して構成されている(図1、図3)。ただし、電動ドライバ12には、十字状のねじ回し用のビット12aが下向きに付設されており、電線クランプ13は、下向きの電線把持用の開閉爪13a、13a…を有し、カメラ14には、照明用のライトが内蔵されている。また、電線クランプ13、カメラ14は、互いに交換可能である。ただし、図1には、電動ドライバ12、カメラ14が図示されており、図3には、ロボットアーム11を除く電動ドライバ12、電線クランプ13が図示されている。そこで、第1のロボット10は、電動ドライバ12や、電線クランプ13またはカメラ14を作動領域内のシャーシ板31上の任意の位置の任意の高さに位置決めし、シャーシ板31に対して任意に傾け、任意に回転させることができる。
【0021】
第2のロボット20は、三次元の多軸のロボットアーム21に対し、電線Wの送出し把持機能を有するローラユニット22を装着して構成されている(図1、図4)。ローラユニット22は、電線Wを挟んで長さ方向に送り出すために、軸間距離を変更可能な一対の縦軸の平行ローラ(図示しない)を内蔵している他、先端の圧着端子W1 の向きを電線Wの周方向に回転させるために、回転機構を内蔵しているものとする。なお、図4は、両端端末処理済みの電線Wの始端が図示しない端末加工機械側から供給され、電線WのガイドブロックWa 、保持ブロックWb の間に張られているとき、ローラユニット22により電線Wの始端を把持した状態を図示している。第2のロボット20は、作動領域内のシャーシ板31上の任意の位置の任意の高さにローラユニット22を位置決めし、シャーシ板31に対して任意に傾け、任意に回転させることができる。
【0022】
第2のロボット20用の縦方向のガイドレール45の内側には、第2のロボット20によって電線Wをシャーシ板31上に引き込むための電線トレイWc が付設されている。また、電線トレイWc のガイドブロックWa 、保持ブロックWb 側の先端には、フォーク状の電線ガイドWd が電線Wの供給側に傾けて立設されており、電線トレイWc 上には、第2のロボット20のベース23から垂下する別の電線ガイドWe が配置されている。
【0023】
第1、第2のロボット10、20は、コンピュータ50によって駆動制御する(図5)。
【0024】
コンピュータ50には、ソフトウェアによるねじ位置特定手段51、ダクト穴特定手段52、自動配線手段53が搭載されている。ねじ位置特定手段51の出力は、ダクト穴特定手段52を介して自動配線手段53に接続されている。ねじ位置特定手段51、ダクト穴特定手段52の別の各出力は、自動配線手段53の出力とともに第1のロボット10に導かれており、自動配線手段53の別の出力は、第2のロボット20に導かれている。また、第1のロボット10のカメラ14の出力は、ねじ位置特定手段51、ダクト穴特定手段52にフィードバックされている。ただし、カメラ14は、前述のとおり、電線クランプ13と交換可能であり、また、カメラ14自体、ねじ位置特定手段51用の狭視野形、ダクト穴特定手段52用の広視野形の2台を交換して使い分けてもよい。
【0025】
コンピュータ50には、共通のデータベース54が準備されている(図5、図6)。データベース54は、シャーシ板31上の電装部品32、32…、取付レール34、34…、ダクト33、33…と、シャーシ板31上の電装部品32、32…の端子間に配線すべき電線W、W…とに関し、たとえば図6に列挙するデータを所定のモデル画像とともにシャーシ板31ごとに用意するものとする。なお、データベース54は、シャーシ板31の仕様ごとに、シャーシ板31と、その構成部材の設計データに基づいて作成することができる。また、各電装部品32ごとの各端子のねじ位置、ねじ種類は、電装部品32の外形図データに基づいて作ることができる。
【0026】
コンピュータ50内のソフトウェアは、たとえば図7〜図11のプログラムフローチャートのとおりである。ただし、図7は、全体統括プログラムであり、図8、図9は、それぞれねじ位置特定手段51、ダクト穴特定手段52に相当する制御プログラムであり、図10、図11は、いずれも自動配線手段53に相当する2本の制御プログラムである。
【0027】
架台フレーム40の所定位置にシャーシ板31を搬入してセットし、手動起動指令を与えると、コンピュータ50内において図7の全体統括プログラムが起動する。プログラムは、まず、第1のロボット10のロボットアーム11の先端に、ねじ位置特定用のカメラ14が装着されているか否かを確認する(図7のプログラムステップ(1)、以下、単に(1)のように記す)。カメラ14がロボットアーム11の先端に装着されておらず、またはカメラ14が適切でないときは、適切なカメラ14に交換した上で(2)、図8のねじ位置特定手段51相当のプログラムを起動させる(3)。
【0028】
図8のプログラムは、たとえば図12のようにシャーシ板31上に各種の電装部品32、32…、配線用のダクト33、33…が配列して取り付けられている場合、電装部品32、32…用の取付レール34、34…に対して上から順に番号を付け、上段の第1のレールを最初に選択する(図8のプログラムステップ(1)、以下、単に(1)のように記す)。つづいて、プログラムは、第1のロボット10を駆動制御して第1のレールの始端(たとえば左端)にカメラ14を移動し(2)、撮像する((3)、図12の一点鎖線のエリアA)。撮像画像内にストッパ34aが含まれているときは(4)、その位置を記録し(5)、引き続き、第1のレールの終端でない限り(6)、第1のレールに沿ってカメラ14を移動し(7)、以下同様の動作を繰り返す((7)、(3)〜(7))。
【0029】
なお、プログラムステップ(4)において、撮像画像中のストッパ34aを見出すには、データベース54内の取付レール34用のストッパ34aのモデル画像(図13(A))と照合する。ストッパ34aには、たとえばメーカの形番を示す固有の英数字が定位置に刻印されているから(同図(B))、モデル画像と同一の英数字のパターンを撮像画像中に探索することにより、ストッパ34aの有無を容易にチェックすることができる。ただし、図13(B)は、ストッパ34aの撮像画像の一例である。また、プログラムステップ(7)のカメラ14の移動距離は、撮像画像内にストッパ34aを確実に捕捉し得るように、撮像画像の約1/2の範囲をオーバラップさせながら移動させるとよい。
【0030】
第1のレールの終端(右端)にカメラ14が到達すると(6)、第1のレール、すなわち図12の上段の取付レール34上のストッパ34a、34a…の位置を全部記録することができる。そこで、最終レールでないことを確認して(8)、次の第2のレール(図12の中段の取付レール34)を選択し(9)、第2のレールの始端から同様の手順を繰り返し((9)、(2)〜(6)、(7)、(3)〜(7))、第2のレールの終端に至ると(6)、第2のレール上のストッパ34a、34aの位置を全部記録することができる。つづいて、第3のレール(図12の下段の取付レール34)を選択し((8)、(9))、同様の手順を繰り返して第3のレール上のストッパ34a、34a…の位置を全部記録した上、第3のレールが最終レールであることから(8)、各取付レール34上の全部のストッパ34a、34a…の位置の記録データに基づいて、各ストッパ34aの位置座標を計算する(10)。
【0031】
その後、プログラムは、各取付レール34上のストッパ34a、34a…の位置座標に基づいて、一対のストッパ34a、34aによって挟まれる1個または2個以上の各電装部品32の中心位置座標を計算し、さらに、各電装部品32の各端子のねじ位置の座標を計算する(11)。なお、これらの一連の計算に際し、プログラムは、データベース54内の電装部品32、取付レール34に関するデータを随時参照するものとする。
【0032】
つづいて、プログラムは、第1ねじ位置を選択し(12)、その計算上のねじ位置にカメラ14を移動して(13)、撮像する(14)。そこで、データベース54内の各端子のねじのモデル画像(たとえば図13(C))と撮像画像(図13(D))とを照合して同一の画像を見出すことにより、ねじ位置を正確に特定して記録することができる(15)。ただし、各端子のねじのモデル画像は、データベース54内の電装部品ごとの各端子のねじの位置、種類のデータに基づき、適切に使い分けるものとする。
【0033】
なお、プログラムステップ(12)にいう第1ねじとは、たとえば図12の上段の取付レール34上の左端の電装部品32の最も若い端子番号の端子のねじを指すものとし、以下、その電装部品32のすべての端子のねじに端子番号順に番号を付け、次の電装部品32について同様にすべての端子のねじにつづき番号を付け、以下同様にして、すべての取付レール34、34…上のすべての電装部品32、32…について、すべての端子のねじにつづき番号を付けることができる。そこで、最終ねじに至るまで同様の手順を繰り返すことにより((16)、(17)、(13)〜(16))、シャーシ板31上のすべての電装部品32、32…のすべての端子のねじ位置を特定することができる。
【0034】
図8のプログラムは、各電装部品32の各端子のねじ位置を特定するに際し、まず、カメラ14による撮像画像に基づいて、各取付レール34上の偶数個のストッパ34a、34a…の位置座標を求め(10)、2個のストッパ34a、34aに挟まれる各電装部品32の中心位置座標を求めて電装部品32の各端子のねじ位置を計算し(11)、計算上の各ねじ位置における撮像画像に基づいて真のねじ位置を特定している(15)。取付レール34上のストッパ34aは、形状が定形である上、偶数個が取付レール34上にあることがわかっているから、数10mm以上の取付誤差があっても撮像画像からの抽出が容易である。また、ストッパ34a、34aの座標位置を基準にして算出される計算上のねじ位置の精度は、たかだか数mm程度であるが、計算上のねじ位置における撮像画像からあらためてねじ位置を抽出して特定することにより、目標精度0.1mmを容易に実現することができる。
【0035】
以上のようにして図8のプログラムが終了すると(16)、図7のプログラムステップ(4)に戻る。そこで、図7のプログラムは、第1のロボット10上のカメラ14が次のダクト穴特定用であるか否かをチェックし(図7のプログラムステップ(4)、以下、単に(4)のように記す)、必要に応じてカメラ14を交換した上(5)、図9のダクト穴特定手段52相当のプログラムを起動させる(6)。
【0036】
図9のプログラムは、データベース54内の各電線Wに関するデータに基づき、各電線Wの始端、終端を所定の電装部品32の所定の端子に接続するために、配線用のダクト33、33…のいずれのダクト穴33aに始端、終端を挿通すべきかを探索して決定する。なお、電線Wの始端、終端の接続先の端子のねじ位置は、図8のプログラムによるねじ位置の特定結果データを使用する。
【0037】
図9のプログラムは、まず、データベース54内の電線W、W…の最初のものを第1の電線として選択する(図9のプログラムステップ(1)、以下、単に(1)のように記す)。つづいて、プログラムは、電線Wの始端の接続先のねじ位置に最も近いダクト33内の位置を算出し(2)、第1のロボット10を駆動制御することにより、その位置にカメラ14を移動して(3)、撮像する(4)。ただし、このときのカメラ14は、ダクト33の内側から、電線Wの始端の接続先に相当する電装部品32の端子32aのねじ32bに向けて撮像する(図14)。したがって、得られる撮像画像には、ダクト33の一方の側壁の複数のダクト穴33a、33a…が横一列に含まれるから、プログラムは、データベース54内のダクト33に関するデータを利用し、ダクト穴33a、33a…と側壁面との区分を認識しながら撮像画像を適切に画像処理することにより、電線Wの始端を挿通すべきダクト穴33a、すなわち始端の接続先に対応するダクト穴33aを特定し(5)、そのダクト穴33aの中心座標を記録する(6)。
【0038】
つづいて、プログラムは、電線Wの終端の処理が完了していないことを確認して(7)、終端の接続先のねじ位置に最も近いダクト33内の位置を算出し(8)、以下同様の手順により((8)、(3)〜(7))、終端の接続先に対応するダクト穴33aを特定し、記録する。プログラムは、以後、データベース54内のすべての電線W、W…について同様の手順を繰り返し((9)、(10)、(2)〜(9))、すべての電線W、W…の始端、終端の接続先に対応するダクト穴33a、33a…を特定し、記録する。なお、以上のようにして図9のプログラムが完了すると、図7のプログラムステップ(7)に戻る。
【0039】
図7のプログラムステップ(7)は、端末加工機械側から電線Wの始端がガイドブロックWa 、保持ブロックWb 上に供給されるのを待って待機している(図4)。そこで、電線Wの始端がガイドブロックWa 、保持ブロックWb の間に張られて供給されると、図7のプログラムは、プログラムステップ(7)、(8)により、図10、図11の自動配線手段53相当の2本のプログラムを同時に起動させる。なお、図10、図11のプログラムは、それぞれ第1、第2のロボット10、20の自動配線時における協調動作内容を規定している。
【0040】
図10のプログラムは、まず、第1のロボット10上に電線クランプ13が正しく装着されていることを確認する(図10のプログラムステップ(11)、以下、単に(11)のように記す)。電線クランプ13が装着されていないときは(11)、電線クランプ13を装着し(12)、第2のロボット20により、電線Wの始端が把持されるのを待つ(13)。
【0041】
一方、図11のプログラムは、まず、ローラユニット22を介して電線Wの始端を把持する(図11のプログラムステップ(21)、以下、単に(21)のように記す)。つづいて、プログラムは、第2のロボット20を駆動制御することにより、電線Wの始端を搬送し(22)、最終的に、始端の接続先に対応するダクト穴33aに対し、ダクト33の内側から外側に向けて始端を対向させる。なお、搬送途中の電線Wは、電線ガイドWd 、We に掛けるとともに、電線トレイWc を利用することにより、シャーシ板31上の目的外のダクト33内に落ち込むことを防止する。プログラムは、以後、第1のロボット10の準備完了を待って待機する(23)。
【0042】
図11のプログラムステップ(21)において電線Wの始端が把持されると、図10のプログラムは、それを検出して(13)、第1のロボット10の電動ドライバ12、電線クランプ13を始端の接続先に対応するダクト穴33aの外側に移動させ(14a)、そのダクト穴33aの内側の第2のロボット20と干渉しない適切な待機姿勢をとらせた上(15)、第2のロボット20により電線Wの始端がダクト33の内側から外側に向けてダクト穴33aに挿通されるのを待つ(16)。そこで、図11のプログラムは、図10のプログラムステップ(15)により第1のロボット10が所定の待機姿勢をとって準備完了となったことを検出すると(23)、ローラユニット22を介して電線Wの始端をダクト穴33aに向けて送り出し、ダクト穴33aに始端を挿通させ(24)、第1のロボット10による電線Wの自動接続の完了を待って待機する(25)。
【0043】
図10のプログラムは、ダクト穴33aに電線Wの始端が挿通されると(16)、電線Wの先端を電線クランプ13によって把持し(17a)、接続先の電装部品32の端子32aのねじ位置に搬送した上(17b)、電線Wの先端の圧着端子W1 を端子32aに導入してねじ止めし、接続を完成する((17c)〜(17e))。なお、この間の端子32aのねじ32bの緩め動作、締め動作は、電動ドライバ12のビット12aによる。以後、図10のプログラムは、電線Wを解放し(17f)、電線Wの終端側の処理に備えて(18)、終端の接続先に対応する別のダクト穴33aの外側に電動ドライバ12、電線クランプ13を移動させ(14b)、所定の待機姿勢をとらせた上(15)、電線Wの終端がダクト穴33aに挿通されるのを待って待機する(16)。
【0044】
一方、図11のプログラムは、たとえば図10のプログラムステップ(17f)の完了により、第1のロボット10による電線Wの接続作業の完了が検出されると(25)、終端側の処理が未完であるから(26)、以後、ダクト33内の電線Wの所定の配線経路に沿ってローラユニット22を移動させることにより、電線Wをダクト33、33…内に収納しながら引き回して行く(27)。なお、このようにしてローラユニット22を移動させるとき、ローラユニット22は、ローラユニット22の移動速度と同一速度で電線Wを終端側から始端側に向けて送り出すことにより、電線Wの始端から終端に至る全長において、電線Wを不用意に解放することがなく、電線Wに不要な張力を加えることもない。ローラユニット22が電線Wの配線経路に沿って移動し、電線Wの終端の接続先に対応するダクト穴33aの内側の位置に到達すると(28)、以後、第1のロボット10がダクト穴33aの外側に所定の待機姿勢をとって準備完了となるのを待って待機する(23)。
【0045】
その後、図10、図11のプログラムは、それぞれ電線Wの始端側に対すると同様の手順に従って、電線Wの終端側を所定の接続先の電装部品32の端子32aに接続することにより、電線Wの始端、終端の接続と、全長の引回しとによる配線動作を完了し(図10、図11の各プログラムステップ(18)、(26))、図7のプログラムステップ(9)に戻る。そこで、図7のプログラムは、データベース54によって指示されているすべての電線W、W…について同一の手順を繰り返し(図7のプログラムステップ(9)、(7)〜(9))、シャーシ板31上の全配線を自動的に完了させることができる。
【0046】
なお、図11のプログラムステップ(24)において、電線Wの始端または終端をダクト穴33aに挿通するに際し、電線Wの先端の圧着端子W1 は、データベース54のデータにより電線W側の圧着部を端子32a側の締付部の上下いずれの向きにするかが指定され、ローラユニット22は、圧着端子W1 を指定の向きに回転させた上で電線Wをダクト穴33aに向けて送り出す。そこで、ダクト穴33aの外側の第1のロボット10は、電線クランプ13の開閉爪13a、13a…の方向を圧着端子W1 の向きに適合させて待機するものとする。また、このときの電線Wの送出し方向は、ダクト33の内側から外側に向けてダクト穴33aの中心位置を指向させるものとする。
【0047】
第1のロボット10の電線クランプ13は、電動ドライバ12のビット12aの先端に向けて、下向きの開閉爪13a、13a…を前後一列に配列して構成されている(図3)。開閉爪13a、13a…は、個別に開閉可能であり、ビット12aに最も近い前の開閉爪13aと、その後方の中間の開閉爪13aは、ビット12aに向けて個別に前進させ、後退させることができるが、ビット12aから最も遠い後の開閉爪13aは、前後動不能に固定されている。また、開閉爪13a、13a…には、前の開閉爪13aと一体の仕切板13bが前後に貫通しており、仕切板13bは、前の開閉爪13aの開閉に連動して左右に開閉可能である。
【0048】
電線Wの先端の圧着端子W1 は、後の開閉爪13a、中間の開閉爪13aを開き、締付部を仕切板13bの上面または下面に沿って摺動させながら開閉爪13a、13a…内に挿入することにより、前の開閉爪13aの開閉に拘らず、前の開閉爪13aの前方にまで前進させることができる。また、後の開閉爪13a、中間の開閉爪13aは、それぞれ電線Wを把持するために閉じ、前の開閉爪13aは、後、中間の各開閉爪13a、13aとともに開くことにより、電装部品32の端子32aにねじ止めされた後の圧着端子W1 を下方に抜き取って電線Wを解放することができる。なお、中間の開閉爪13aは、電線Wを把持して前進させることにより、圧着端子W1 を電装部品32の端子32aに導入することができる。
【0049】
一方、図10のプログラムステップ(17c)〜(17e)において、圧着端子W1 が丸形端子である場合、端子32aのねじ32bは、端子32aから一旦完全に抜き取った上、圧着端子W1 を端子32aに導入し、ねじ32bを再度装着して締め付ける必要がある。そこで、電動ドライバ12は、抜き取ったねじ32bを保持するためのねじホルダをビット12aの先端近傍に有するとともに、ねじ32bの昇降に合わせてビット12aを回転させながら昇降させるものとする。
【0050】
また、図8のプログラムステップ(11)〜(16)のねじ位置の特定手順は、シャーシ板31上のすべての電装部品32、32…のすべての端子のねじについて必ずしも実行する必要がない。このような高精度のねじ位置の特定は、電線Wの接続のためにのみ必要であるから、データベース54の電線Wに関するデータに基づき、現に電線Wの始端または終端の接続先として指定されている電装部品32の端子32aについてのみ、その端子32aのねじ32bの位置を特定すれば十分である。なお、各電装部品32の複数の端子32a、32a…のうち、たとえば対角線位置にある2個についてのみプログラムステップ(11)〜(16)を適用し(図15の実線)、その他の端子32a(同図の点線)については、実線の端子32a、32aのねじ位置の特定データを基準にしてデータベース54内のデータから推定計算してもよい。
【0051】
また、図9のプログラムは、各電線Wの始端、終端にそれぞれ対応するダクト穴33a、33aを電線Wごとに特定しているが、これに代えて、現に電線W、W…の接続先に指定されている各電装部品32のすべての端子32a、32a…に対応するダクト穴33a、33a…を電装部品32ごとに特定してもよい。カメラ14の全体としての移動距離を小さくし、図9のプログラムの全体処理スピードを向上させることができる。
【0052】
以上の説明において、図8、図9の各プログラムは、図10、図11の自動配線用のプログラムを実行するための前処理工程である。よって、図8、図9のプログラムは、その双方を省略してもよく、図9のみを省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明は、電気制御盤に収納するシャーシ板上の各種の電装部品の端子間に必要な電線を自動配線し、手作業に代えて作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
W…電線
10…第1のロボット
11…ロボットアーム
12…電動ドライバ
13…電線クランプ
14…カメラ
20…第2のロボット
21…ロボットアーム
22…ローラユニット
31…シャーシ板
32…電装部品
32a…端子
32b…ねじ
33…ダクト
33a…ダクト穴

特許出願人 ライオンパワー株式会社
他5名
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気制御盤に収納するシャーシ板に電装部品と配線用のダクトとを取り付け、電動ドライバと電線クランプとを有する第1のロボットと、電線の送出し把持機能付きのローラユニットを有する第2のロボットとの共通の作動領域内にシャーシ板をセットし、電線の始端を第2のロボットにより把持して搬送し、始端の接続先に対応するダクト穴に始端を挿通し、ダクトの外側に待機している第1のロボットにより始端を接続先の電装部品の端子に接続し、第2のロボットにより電線をダクト内の配線経路に沿って引き回し、終端の接続先に対応するダクト穴に終端を挿通し、ダクトの外側に待機している第1のロボットにより終端を接続先の電装部品の端子に接続し、以下同様の手順を繰り返して必要な電線を自動配線することを特徴とする電気制御盤の自動配線方法。
【請求項2】
第1、第2のロボットの作動領域内にシャーシ板をセットすると、カメラによる撮像画像に基づき、各電装部品の端子のねじ位置を特定することを特徴とする請求項1記載の電気制御盤の自動配線方法。
【請求項3】
各電装部品の端子のねじ位置を特定すると、カメラによる撮像画像に基づき、各電線の始端、終端の接続先に対応するダクト穴を特定することを特徴とする請求項2記載の電気制御盤の自動配線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−172169(P2010−172169A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14624(P2009−14624)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000115430)ライオンパワー株式会社 (3)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)