説明

電気化学センサにおける内部較正のための手段を提供するためのデバイス

酸化還元剤をベースとした内部較正pHおよび他の分析対象物のセンサは、酸化還元活性基準剤が、サンプルとの電気的接触を維持するように、分析される溶液から隔離された一定の化学的環境に存在するとより正確な結果を提供する。室温イオン液体(RTIL)を、基準材料と分析されるサンプルとの間の塩橋として使用すると、これらの結果を達成することができる。室温イオン液体(RTIL)は、酸化還元活性材料(RAM)のために一定の化学的環境およびイオン強度を提供し、サンプルとの直接的な化学的相互作用を制限または排除する電解質層を提供する。広範な酸化還元活性材料(RAM)を当該「分析対象物非感応性電極」デバイスに多種多様な構成で採用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中の分析対象物の濃度を測定するための方法およびデバイスを提供し、化学分野に関する。
【背景技術】
【0002】
今日市販されている殆どの従来のpHセンサは、pHに対して感応性であるイオン感応性ガラス球および内部基準電極を利用している。基準電極は、通常、図1の概略図に示されるように、塩化カリウム(KCl)ゲルまたは液に浸漬され、多孔質フリットを介して、分析中のサンプルから隔離された塩素化銀(Ag|AgCl)ワイヤである。内部基準電極の使用、および多孔質フリットを含める必要性の双方が、基準電極電位の変化によって引き起こされるドリフトおよびフリットの汚染または目詰まりの問題により、これらの従来のガラスpHプローブの動作を損なうことになっている。したがって、これらの従来のpHプローブは、一定の再較正を必要とし、フリットを乾燥させないために電極をKCl溶液中に保存しなければならず、脆弱なガラス膜により、これらのプローブは、高い温度または圧力の条件下でpH測定を必要とする多くの用途に適さなくなっている。
【0003】
例えば、電極−分析対象物界面を改質すること(特許文献1参照)、または一般に不均質な酸化還元対(例えばカロメルまたは銀/塩化銀)の代わりに均質な酸化還元対(ヨウ化物/三ヨウ化物)を使用すること(特許文献2参照)によって基準電極の機能を向上させるための努力がなされてきた。これらの変化は、従来の基準電極(CRE)が、一般に、一定のイオン組成およびイオン強度の電解質と接触する酸化還元対の2つの半体を含む電位差基準電極の概念の延長に基づく。酸化還元対の両方の半体が存在し、含まれるすべての種の組成が一定であるため、系が平衡に維持され、次いで従来の基準電極の電極−電解質界面にわたる電位降下(すなわち実測電圧)が熱力学的に固定され一定になる。そこで、基準電極の機能は、pHなどの他の測定値と比較することができる一定の電位を提供することである。
【0004】
これらの従来の基準電極は、安定した電位を提供するが、多くの欠点がある。1つの欠点は、イオン組成または強度の変化が酸化還元対の平衡のシフトをもたらすことによって、電極の一定の電位の安定性を損なうため、一定かつ既知のイオン組成およびイオン強度の電解質が必要であることである。電解質組成の変化を防止するために、一般に、酸化還元系および電解質が、多孔質フリットまたは小さな開口を介して調査対象サンプルから隔離される。この隔離は、従来の基準電極にさらなる欠点、すなわちフリットまたは開口を目詰まりさせて、電極を使い物にならないようにする傾向を持ち込む。これらの欠点は、電解質が、一般に高塩濃度の水溶液であるため、塩の沈殿による目詰まりを避けるために電極フリットまたは開口を湿潤させておかなければならないことによって悪化する。
【0005】
pHセンサ技術の著しい進歩は、2つの酸化還元活性pH感応剤(アントラキノン(AQ)および9,10−フェナントレンキノン(PAQ))および1つのpH非感応性酸化還元剤(例えばフェロセン(Fc))で構成された固体状態内部較正pHセンサである(特許文献3、特許文献4、および特許文献5参照)。当該センサにおいて、すべての3つの酸化還元剤を多層炭素ナノチューブ(MWCNT)、グラファイト粉末およびエポキシと混ぜ合わせ、得られた混合物を硬化させ、固体センサに成形することができる。電圧掃引センサに印加し、(例えば方形波ボルタメトリを使用して)生じた電流を測定すると、3つの酸化還元剤のそれぞれに対して1つずつの3つのピークが観察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,276,142号明細書
【特許文献2】米国特許第4,495,050号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/066618号
【特許文献4】国際公開第2007/034131号
【特許文献5】英国特許公報第2409902号明細書
【特許文献6】米国特許仮出願第61/161,139号明細書
【特許文献7】米国特許仮出願第61/225,855号明細書
【特許文献8】米国特許仮出願第61/289,318号明細書
【特許文献9】国際公開第2005/066618号
【特許文献10】国際公開第2005/085825号
【特許文献11】米国特許第5,223,117号明細書
【特許文献12】米国特許仮出願第61/308,244号明細書
【特許文献13】米国特許仮出願第61/309,182号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chem. Comm. 2000, 2051-2052
【非特許文献2】Chem. Mater., 2006, 18(17), pp3931-3936
【非特許文献3】Bard and Faulkner, "Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications" (Wiley 2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの固体状態内部較正pHセンサにおいて、(Feによる)pH非感応性ピークは、理想的には一定であり、pHまたは溶液中のイオン種と無関係であり、経時的にドリフトしない。AQおよびPAQピークは、理想的には、測定される溶液のpHに応じて予測可能に電圧掃引上のそれらの位置を変化させる。最後に、pH感応性ピークの位置は、pH非感応性ピークの位置と比較すると、溶液pHを、それらの値を較正表と比較することによって推定することを可能にする。この系が最大の正確性を有することで最大の応用範囲を有するために、pH非感応性ピークは、経時的に安定しなければならず、そのピーク位置が溶液組成の変化に影響されてはならない。そうでなければ、系の正確性が低下する。残念なことに、すべてでなくてもたいていのpH非感応性酸化還元剤は、異なるイオンによって不適切に影響され、ピーク位置の有意なドリフトまたはシフトを示すようである。この問題は、pH以外の分析対象物に応答する他のセンサにも存在する。
【0009】
したがって、当該技術分野において、酸化還元剤に基づく内部較正pHおよび他の分析対象物センサを製造するための材料および方法の必要性が依然として存在する。本発明は、この必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一部に、(i)pH非感応性材料、またはより一般的には分析対象物非感応性材料(AIM)を、分析されるサンプルとの電気接触を維持するように、分析される液体から隔離された一定の化学的環境に維持しなければならず、(ii)分析対象物非感応性材料(AIM)と分析されるサンプルとの間の塩橋として使用する場合に、例えば、限定することなく、室温イオン液体(RTIL)もしくは他のイオン液体、または十分なイオン強度を有する液体で構成され得る電解質層を使用して所望の結果を達成することができ、(iii)好適な電解質層が採用されると、分析対象物感応性材料(ASM)が分析対象物非感応性材料(AIM)に機能的に変換されるため、当該電解質層を用いると、分析対象物感応性材料(ASM)を分析対象物非感応性材料(AIM)の代わりに、または分析対象物非感応性材料(AIM)に加えて使用することができるという発見から導かれる。(例えば、室温イオン液体(RTIL)または本明細書に記載の他の好適な材料で構成された)電解質層は、分析対象物非感応性材料(AIM)(または分析対象物感応性材料(ASM))に一定の化学的環境およびイオン強度を提供し、分析されるサンプルとの直接的な化学的相互作用を制限または排除する層を提供する。広範な酸化還元活性材料を、本発明の方法による様々な構成、ならびに本発明の「分析対象物非感応性電極」(AIE)およびそれらを含むデバイスに採用することができる。
【0011】
本発明は、本発明によって提供される酸化還元剤に基づく内部較正pHおよび他の分析対象物センサに使用するための様々な分析対象物非感応性電極(AIE)を提供する。図2に示される概略図は、本発明のこの態様の例示的な実施形態を示す。その図において、楕円形の点は、酸化還元活性材料を表す。さらなる実施形態も示されており、それらは、この開示を考察することにより当業者に明らかになるであろう。例えば、いくつかの実施形態において、電解質層(例えば室温イオン液体(RTIL)または他の材料)は、直接的な化学的相互作用を制限し、サンプル試験溶液と酸化還元活性材料との電子連通を増強するように作用する多孔質構造または「導電性物理的バリア」である。
【0012】
様々な酸化還元活性材料(例えば分析対象物非感応性材料(AIM)または分析対象物感応性材料(ASM))を使用することができ、デバイスが目的とする用途、ならびに酸化還元活性材料の溶解度および/または他の特性に応じて本発明のセンサの様々な実施形態の異なる構成で配置することができる。例えば、試験され、本発明の方法およびデバイスに有用であることが証明された酸化還元活性材料を図3に示す。
【0013】
したがって、本発明は、サンプル中の分析対象物の存在を検出するか、または分析対象物濃度を測定するのに有用な組成物、デバイス、電極、センサ、システムおよび方法に関する。一態様において、本発明は、当該測定のための連続的内部自己較正の手段を提供する。一態様において、本発明は、実質的に分析対象物非感応性電極(AIE)を提供し、一実施形態において、この電極は、予測可能な分析対象物非感応性信号を生成するための実質的に分析対象物非感応性酸化還元活性材料(分析対象物非感応性材料(AIM))を採用し、別の実施形態において、この電極は、予測可能分析対象物非感応性信号を生成するための実質的に分析対象物非感応性酸化還元活性材料(分析対象物感応性材料(ASM))を採用する。別の態様において、本発明は、本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)が、分析対象物感応性電極(ASE)からの分析対象物感応性信号と比較される信号を生成して、連続的内部自己較正のための手段を提供するボルタンメトリーまたはアンペロメトリー分析対象物センサシステムを提供する。
【0014】
したがって、本発明は、サンプル中の分析対象物濃度のボルタンメトリーまたはアンペロメトリー測定を行う過程で、分析されるサンプルに加えられる電気的刺激の印加に応答して実質的に分析対象物非感応性信号を生成することが可能な分析対象物非感応性電極(AIE)の必要性を満たす。本発明の電極は、それと分析対象物感応性信号を連続的に比較できる内部標準(換言すれば、系に対して内部の標準)として有用な予測可能信号を提供するため、分析対象物濃度を測定する際のより高い正確性および再現性を可能にする。
【0015】
したがって、本発明は、分析対象物濃度のボルタンメトリーおよび/またはアンペロメトリー測定を行う過程で分析対象物サンプルに電気的刺激が加えられると、実質的に分析対象物非感応性の電気的応答を生成することが可能である電気化学的分析対象物検出デバイスに使用することができる分析対象物非感応性電極(AIE)を提供する。
【0016】
本発明は、また、当該電極を含む自己較正電気化学的分析対象物センサシステムを提供する。本発明は、また、例えば、ボルタンメトリーおよび/またはアンペロメトリー測定を行って、サンプル中の分析対象物の存在および/または濃度を測定する目的で、当該電極を分析対象物センサシステムにおける内部自己較正標準として使用する方法を提供する。本発明は、また、当該分析対象物非感応性電極(AIE)を製造するための方法を提供する。
【0017】
本発明は、また、サンプル中の分析対象物を測定するための電気化学的検出デバイスに使用するための多相分析対象物非感応性電極(AIE)であって、(a)(例えば、限定することなく、一実施形態において、イオンのみで構成された液体であり、IL相がサンプルに合わせて調整され、サンプルと実質的に不混和性であるイオン液体(IL)であり得る)電解質層を含む第1の相と、(b)電解質相に電気的に接続された導電性構成要素と、(c)電気化学的に酸化され、かつ/または電気化学的に還元されることが可能な酸化還元活性材料(RAM)とを含み、酸化還元活性材料の酸化還元活性が分析対象物に対して実質的に非感応性であり、さらに酸化還元活性材料を電解質層または導電性構成要素に分散させることができる多相分析対象物非感応性電極(AIE)を提供する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、電解質層は、室温IL(RTIL)などのIL、すなわち摂氏100度未満の温度で液体である、全体がイオンで構成された液体である。いくつかの実施形態において、室温イオン液体(RTIL)は、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(C4mpyrrNTf2)である。
【0019】
本発明の様々な実施形態において、分析対象物は、液体サンプルに分散され、かつ/または液体サンプルに分散されたイオンであり、かつ/または水素イオンである。いくつかの実施形態において、分析対象物は、液体種に分散された非イオン種である。本発明の一態様において、分析対象物非感応性電極(AIE)における酸化還元活性材料は、酸化還元活性有機分子、酸化還元活性ポリマー、金属錯体、有機金属種、金属、金属塩または半導体からなる群から選択され、目標分析対象物との反応または化学的相互作用を伴わない1つまたは複数の電子移動プロセスを経る。いくつかの実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)における酸化還元活性材料はn−ブチル−フェロセンである。他の実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)における酸化還元活性材料はK4Fe(CN)6である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、導電性構成要素は、炭素同素体およびその誘導体、遷移金属およびその誘導体、ポスト遷移金属およびその誘導体、導電性金属合金およびその誘導体、シリコンおよびその誘導体、導電性ポリマー化合物およびその誘導体、ならびに半導体材料およびその誘導体からなる群から選択される導電性材料を含む。本発明の他の実施形態において、導電性構成要素は、結合剤および導電性材料を含む複合材料をさらに含む。本発明のいくつかの実施形態において、複合材料に存在する導電性材料は、グラファイトおよび/またはガラス質炭素、および/または多層炭素ナノチューブ(MWCNT)および/または単層炭素ナノチューブ(SWCNT)、および/またはそれらの任意の組合せを含む。本発明の他の実施形態において、複合材料は、酸化還元活性材料をさらに含む。一態様において、酸化還元活性材料はn−ブチル−フェロセンである。本発明の他の実施形態において、複合材料は、分析対象物非感応性電極(AIE)構造の結果として分析対象物非感応性が付与された酸化還元活性分析対象物感応性材料(ASM)を含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)は、電解質層(例えばIL相)をサンプルから物理的に隔離するための、サンプルに隣接する導電性物理的バリアをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態において、導電性物理的バリアは、分析対象物に対して選択的に不透過性である。本発明のいくつかの実施形態において、導電性物理的バリアは、サンプル中の分析対象物以外の種に対して選択的に透過性または選択的に不透過性である。本発明の他の実施形態において、導電性物理的バリアは多孔質フリットである。本発明のいくつかの実施形態において、導電性物理的バリアは膜である。本発明の他の実施形態において、導電性物理的バリアはフィルムである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)は、導電性構成要素と第1の電解質層との間に挿入され、導電性構成要素および第1の電解質層と電気接続した、第1の電解質層に隣接する第2の電解質層と、電解質層を互いに物理的に隔離するために第1の電解質層と第2の電解質層との間に挿入された導電性物理的バリア層とをさらに含み、場合により、第1の電解質層は、第2の電解質層と実質的に不混和性であり、さらに酸化還元活性材料を第2の電解質層に分散させることができる。本発明の他の実施形態において、第2の電解質層は、電解質水溶液、ゲル化電解質水溶液、電解質ゾルゲルおよび有機電解質溶液からなる群から選択される。
【0023】
本発明は、さらに、サンプル中の分析対象物を測定するための電気化学的検出デバイスであって、(a)様々な実施形態のいずれかにおける上記の分析対象物非感応性電極(AIE)と、(b)分析対象物非感応性電極(AIE)と電気接続され、電気的に酸化されることおよび/または電気的に還元されることが可能な酸化還元活性分析対象物感応性材料(ASM)を含み、分析対象物感応性材料(ASM)の酸化還元活性が、分析対象物に対して実質的に感応性である作用電極とを含む電気化学的検出デバイスを提供する。本発明の検出デバイスにおける使用に好適な作用電極としては、例えば、限定することなく、それぞれ参照により本明細書に組み込まれている、2009年3月25日に出願された特許文献6、2009年7月15日に出願された特許文献7および2009年12月22日に出願された特許文献8に記載されているものが挙げられる。
【0024】
いくつかの実施態様において、分析対象物非感応性電極(AIE)と作用電極は、並列電気接続されている。他の実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)と作用電極は、立体配置的に接合され、共通の導電構成要素によって電気的に接続されている。別の実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)と作用電極は、単一チャネル電子制御デバイス内で電気的に接続されている。いくつかの実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)と作用電極は、多重チャネル電子制御デバイス内の個別のデータチャネルで接続されている。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明の電気化学的検出デバイスは、分析信号を生成および/または測定するための電子デバイスをさらに含む。別の実施形態において、本発明の電気化学的検出デバイスは、従来の基準電極または擬似基準電極をさらに含む。
【0026】
本発明は、さらに、サンプル中の分析対象物を測定するために本発明の検出デバイスを使用する方法であって、電気信号を分析対象物非感応性電極(AIE)に加える工程と、分析対象物非感応性電極(AIE)の電気的応答を測定する工程とを含み、分析対象物非感応性電極(AIE)の電気的応答がサンプル中の分析対象物濃度と無関係である方法を提供する。いくつかの実施態様において、分析対象物非感応性電極(AIE)の実測電気的応答は、経時的および反復使用に対して実質的に一定である。いくつかの実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)の実測電気的応答は、経時的および反復使用に対して実質的に予測可能に変化する。いくつかの実施態様において、分析対象物非感応性電極(AIE)の実測電気的応答は、電気信号を分析対象物非感応性電極(AIE)に加えると、分析対象物と無関係に基準電位に対して実質的に一定である。別の実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)の実測電気的応答は、電気信号を分析対象物非感応性電極(AIE)に加えると、分析対象物と無関係に基準電位に対して実質的に予測可能に変化する。いくつかの実施態様において、分析対象物非感応性電極(AIE)の実測電気的応答は、既知の電気的応答に対して実質的に一定である。別の実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)の実測電気的応答は、既知の電気的応答に対して実質的に予測可能に変化する。
【0027】
これらならびに本発明の他の態様および実施形態は、以下、およびそれに続く本発明の詳細な説明において簡単に説明される添付の図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】基準電極として塩素化銀ワイヤ(Ag|AgCl)を含む従来のガラスpH電極を示す図である。
【図2】図3に示される様々な分析対象物非感応性材料を試験するのに用いられた分析対象物非感応性電極(AIE)構成を示す図である。
【図3】図2に示される様々な分析対象物非感応性電極(AIE)構成を用いて試験された様々な分析対象物非感応性材料(AIM)化合物を示す表である。図の中で、n−BuFcはブチルフェロセンであり、AG−np−CGは、銀ナノ粒子コーティングされたガラス炭素であり、PVFcはポリビニルフェロセンであり、NiHCFはヘキサシアノ鉄酸ニッケルである。
【図4A】4A部において、本発明の例示的な実施形態を概略的な形で示す図である。1つまたは複数の酸化還元活性材料が、複合プラグまたは電解質層(例えば室温イオン液体(RTIL)相)のいずれかまたは両方に存在してもよい。
【図4B】4B部において、本発明の例示的な実施形態を概略的な形で示す図である。1つまたは複数の酸化還元活性材料が、複合プラグまたは電解質層(例えば室温イオン液体(RTIL)相)のいずれかまたは両方に存在してもよい。
【図5A】5A部において、本発明の第3の例示的な実施形態により実施されたボルタンメトリー測定の結果を示す図である。図5Aは、pH7で7000の酸化的スキャン(1000スキャン=430分)の過程にわたって測定されたピーク電流対スキャン数のプロットを示す。対照実験は、電解質層および導電性物理的バリアが構造体に存在しないことを除いて、図5Aのデータを生成するのに使用された実験と同一である。
【図5B】5B部において、本発明の第3の例示的な実施形態により実施されたボルタンメトリー測定の結果を示す図である。図5Bは、同じ実験についてのスキャン数対ピーク電位のプロットを示す。対照実験は、電解質層および導電性物理的バリアが構造体に存在しないことを除いて、図5Aおよび図5Bのデータを生成するのに使用された実験と同一である。
【図5C】5C部において、本発明の第3の例示的な実施形態により実施されたボルタンメトリー測定の結果を示す図である。図5Cは、図5Bの最初の2000スキャンと重複する対照実験により実施されたボルタンメトリー測定の結果を示す。対照実験は、電解質層および導電性物理的バリアが構造体に存在しないことを除いて、図5Aおよび図5Bのデータを生成するのに使用された実験と同一である。
【図6A】6A部において、本発明の第5の例示的な実施形態により実施されたボルタンメトリー測定の結果を示す図である。図6Aは、いくつかの標準pH緩衝液ならびに10mMのKCl水溶液および100mMのKCl水溶液での20の酸化的スキャンの過程にわたって測定されたpH緩衝液/KCl濃度対ピーク高さを示す。
【図6B】6B部において、本発明の第5の例示的な実施形態により実施されたボルタンメトリー測定の結果を示す図である。図6Bは、同じ実験についてのpH緩衝液/KCl濃度対ピーク電位のプロットを示す。
【図6C】6C部において、本発明の第5の例示的な実施形態により実施されたボルタンメトリー測定の結果を示す図である。図6Cは、図6Bと同じデータを示すが、図6Dのデータとの直接的な比較を行えるようにy軸上にリスケールされている。図6Cおよび図6Dのピーク電位スケールは同じである。
【図6D】6D部において、本発明の第5の例示的な実施形態により実施されたボルタンメトリー測定の結果を示す図である。図6Dは、分析対象物非感応性電極(AIE)構造を用いない(すなわち構造に室温イオン液体(RTIL)が存在しない)対応する対照実験についてのpH緩衝液/KCl濃度対ピーク電位のプロットを示す。図6Cおよび図6Dのピーク電位スケールは同じである。
【図7】中間層を含まず、プラグに酸化還元活性材料(RAM)を有する本発明の例示的な実施形態6を概略的な形で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の以下の説明において、例えば、本発明の実施形態に含められる材料を調製するための記載の具体的な条件は、勿論、当業者が本開示を検討して実際に変更することができる。概して、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を説明することを目的としているにすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に使用されているように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に指示している場合を除いては複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの結合剤(a binder)」なる表記は、結合剤の混合物を含み、「1つの導電性材料(a conductive material)」なる表記は、2つ以上の当該材料を含むことができる。以下のパラグラフは、読者の便利のために定義を示す。
【0030】
「分析対象物」は、分析対象物検出中に実質的に一定であるか、または予測可能な応答を与える自己較正内部標準として本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)を含む分析対象物センサシステムを使用することによって、その存在が検出可能であるか、またはその濃度が測定されるサンプル中の対象の化学種である。「実質的に一定である」は、エンドユーザによって定められる範囲内で一定であることを指すように使用される。
【0031】
「酸化還元活性材料」(RAM)は、酸化および/または還元され得る材料である。「酸化還元活性」は、それらのプロセスのいずれかまたは両方を指す。
【0032】
「化学的に非感応性の酸化還元活性材料」としても知られる「分析対象物非感応性材料」(AIM)は、サンプル中の分析対象物の存在または濃度に対して非感応性または実質的に非感応性である酸化還元活性材料である。分析対象物に対して「実質的に非感応性」は、エンドユーザによって定められる、所定の用途に必要とされる許容範囲内の非感応性を指す。逆に、「分析対象物感応性材料」(ASM)は、(本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)に存在しない場合に)ユーザが定めた用途特異的許容範囲内でサンプル中の分析対象物の存在または濃度に対して感応性または実質的に感応性である酸化還元活性材料である。以上に記載されているように、分析対象物感応性材料(ASM)は、本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)に利用されるときは分析対象物非感応性材料(AIM)と機能的に同等である。したがって、分析対象物非感応性材料(AIM)(または分析対象物感応性材料(ASM))の言及は、本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)に使用するための酸化還元活性剤量の記載に関連して分析対象物感応性材料(ASM)(または分析対象物非感応性材料(AIM))の言及であると見なされるべきでない。したがって、酸化還元活性材料が本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)の一部である場合は、酸化還元活性材料(すなわち分析対象物非感応性電極(AIE)または分析対象物感応性材料(ASM))を採用できることを示すために酸化還元活性材料(RAM)という用語を使用することができる。
【0033】
酸化還元活性材料(RAM)を「分散させる」とは、それを溶液に溶解させるか、または気体、液体もしくは固体にコロイド分散させることを指す。その用語は、酸化還元活性材料(RAM)を固体の表面または固体の構成要素に研磨固定、吸着、静電結合または共有結合させる実施形態を包含することをも意図する。その用語は、酸化還元活性材料(RAM)を結晶格子にドープ剤として含める実施形態を包含することをも意図する。その用語は、固体内への酸化還元活性材料(RAM)の挿入を包含することをも意図する。本発明のいくつかの実施形態において、酸化還元活性材料(RAM)は、導電性物理的バリアとして作用する膜に分散される。
【0034】
「電気化学的検出システム」は、サンプル中の分析対象物の存在および/または濃度を測定することを可能にする電極のシステムである。当該システムは、一般に、作用電極、基準電極(従来の基準電極または擬似基準電極)および対向電極を含む。場合により、例えば、作用電極が微小電極である場合は、システムが、基準電極および作用電極のみを含んでいてもよい。場合により、システムは、コントローラ/プロセッサデバイスを含んでいてもよい。
【0035】
「作用電極」(WE)は、対象の電気化学プロセスが生じる電極である。センサにおいて、作用電極は、試験溶液中の1つまたは複数の分析対象物に対して感応性であってもよく、または分析対象物感応性種/材料で化学的に改質されてもよい。摂動が調査対象に加えられた後で作用電極の電気化学的応答が測定される。例えば、摂動は、電子移動を生じさせるWEに対する電位差の印加であってもよく、次いで、作用電極における発生電流が、印加電位(ボルタンメトリー方式)または時間(クロノアンペロメトリー方式)の関数として記録される。動作方式のこれらの2つの例は、例示的であり、網羅的でない。多くの他の方式が当該技術分野で既知である。
【0036】
「分析対象物非感応性電極」(AIE)は、電流の流れが、一部に、分析対象物を含むが、それに限定されないサンプル組成物中の(支持電極の最小閾値を除いて)種の存在または濃度と無関係である酸化還元プロセスに左右される。本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)を以下により詳細に説明する。
【0037】
WEに印加される電位差を監視するために、基準点が必要である。これは、「基準電極」(RE)を使用することによって確保される。従来の基準電極(CRE)は、ある一定の化学組成と、したがって一定の電気化学的電位を有するため、公知の制御された方法でWEに印加される電位差の測定が可能になる。CREは、一般に、一定のイオン組成およびイオン強度の電解質と接触した酸化還元対の2つの半体を含む。酸化還元対の両半体が存在し、含まれるすべての種の組成が一定であるため、系が平衡に維持され、次いで、CREの電極−電解質界面の電位降下(すなわち実測電圧)が熱力学的に固定されて一定になる。例えば、広く使用されるCRE系は、規定の一定濃度のKClを含むAg|AgCl|KCl系である。したがって、2つの半電池反応は、Ag++e-→Ag、およびAgCl+e-→Ag+Cl-である。したがって、全電池反応は、ネルンスト平衡電位がE=E0−(RT/F)*In「Cl-」(Eは実測RE電位であり、E0は、すべての種が単位活性である標準水素電極に対するAg|AgCl対の標準電位(規則により、これは、0.0Vの電位を有するものと定められる)であり、R、TおよびFは、それぞれ適切な単位の普遍気体定数、温度およびファラデー定数である)で与えられるAgCl→Ag++Cl-である。したがって、この系の電位は、これが一定であれば、安定な一定の電位を与える、存在するCl-イオンの濃度(より厳密には活性)にのみ左右される。多くの他のCRE系が当該技術分野で既知である。CREの組成が一定であることが必須であるため、CREにほとんど電流を流すべきでなく(そうでなければ電解が生じ、CREの組成が変化することになる)、それには回路を完成するための第3の電極、すなわち対向電極(CE)の使用が必要である。しかし、二電極構成を、WEが一般に100ミクロンより小さい少なくとも1つの寸法を有する微小電極である特殊な場合に使用することができる。この場合は、WEに流される電流が小さいため、二電極電池をCREに使用することができるが、CEを必要としない。
【0038】
「擬似基準電極」(PRE)という用語は、特に非水性電解質に使用されることがある基準電極のタイプを指す。これらの電極は、一般に、明確な酸化還元電位の両半体を含まないため、一定の組成および電位の熱力学的基準電極でない。しかし、それらは、(分のオーダの)電気化学的実験の時間スケールにわたって合理的に一定の電位を与え、次いで必要であれば、PREの絶対電位をCREに合わせて再較正することができる。PREの1つの例は、(非水性電気化学に広く使用される)銀ワイヤである。
【0039】
電池に電流を流すためには、回路を完成するために、「対向電極」(CE)またはときには「補助電極」として知られるさらなる電極が必要とされる。この電極は、電極のソースまたはシンクとして単純に機能し、電流が電池を流れることを可能にする。WEにおいて測定される信号に干渉し得る望ましくない電気化学的酸化還元プロセスがCEに生じるのを避けるために、CEは、一般に、比較的化学的に不活性な材料、一般にはPtを使用して作製されるが、炭素(グラファイト)も広く採用されている。
【0040】
「導電性物理的バリア」は、分析されるサンプルに隣接しているか、または分析対象物非感応性電極(AIE)の2つの隣接相の間に挿入された層である。導電性物理的バリアは、サンプル中のある種がそれを通過することを防止するが、サンプルの電解質構成要素における電荷担体などのサンプルの他の構成要素を自由に通過させる場合にその種に対して「選択的に不透過性」である。逆に、導電性物理的バリアは、サンプル中の種をその全体を通じて自由に移動させる場合にその種に対して「選択的に透過性」である。いくつかの実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)は、分析対象物非感応性電極(AIE)の様々な構成要素を互いに、かつ分析されるサンプルから物理的に隔離する手段として2つ以上の導電性物理的バリアを含むことができる。
【0041】
「立体配置的に接合された」は、2つまたはいくつかの要素の間の直接的な物理的接続を指す。
【0042】
「イオン液体」(IL)は、主としてカチオンおよびアニオンの両方で構成された液体である。一実施形態において、「イオン液体」(IL)は、全体的にカチオンおよびアニオンの両方で構成された液体である。「室温イオン液体」(RTIL)は、摂氏100度未満の温度で液体であるILである。
【0043】
別の相、すなわち導電性構成要素またはサンプルに「隣接する」相は、界面相によって場合により物理的に隔離されていてもよい。
【0044】
これらの定義を念頭におくと、当業者は、本発明の以下の説明の構成および内容をより深く理解することができる。本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)およびその用途の説明の後に、分析対象物非感応性電極(AIE)の個々の構成要素を説明し、最後に分析対象物非感応性電極(AIE)のいくつかの例示的な実施形態を説明する。分析対象物非感応性電極(AIE)そのものの説明が終了すると、次に本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)を使用する電気化学的検出システムを、前記システムの様々な構成要素の説明を含めて説明する。
【0045】
本発明に先立って、典型的なボルタンメトリー検出システムまたはアンペロメトリー検出システムは、一般に3つの電極、すなわち作用電極、基準電極および対向電極を含んでいた。検出システムにほとんど電流が流れない条件下において、基準電極機能と対向電極機能を単一の電極に統合して、二電極システム(作用および基準/対向)を得ることができる。手短に述べると、検出システムは、WEの電流の流れを印加電位の関数として監視することによって機能する。印加電位はREによって監視され、電位および電流は、CEによってサンプルに印加される。REによって検出された電位は、コントローラ/プロセッサデバイスによって所望の波形出力と連続的に比較される。REによって記録された電位が所望の電位を反映しない場合は、RE電位と所望の電位が一致するまで対向電極を調整する。したがって、システムの電流対電圧応答の正確性は、WEにおける電位を正確に測定するREの能力に左右される。したがって、高い正確性は、サンプルまたは測定の持続時間によって影響されることなく電位を効果的に測定する高度に安定したREを必要とする。銀/塩化銀電極および飽和カロメル電極は、当該従来の基準電極(CRE)の例である。
【0046】
以上に記載されているように、銀/塩化銀電極および飽和カロメル電極などのCREにはいくつかの欠点がある。これらの欠点を回避するシステムの必要性が依然として存在する。本発明は、第4の電極、すなわち分析対象物非感応性電極(AIE)の導入によりREの安定性要件を緩和することによってこれに対処する。この安定性の緩和により、銀ワイヤなどの単純な擬似基準電極(PRE)をREとして使用することができる。機能的には、分析対象物非感応性電極(AIE)は、分析対象物と無関係である分析対象物非感応性電極(AIE)応答が、標準水素電極(SHE)のように既知の応答に対して常に一定であることを除いて、追加的なWEとして作用する。したがって、所定のREにおける不安定性を分析対象物非感応性電極(AIE)の既知の一定の応答との比較によって補正することができる。
【0047】
pH非感応性酸化還元材料または他の分析対象物非感応性材料(AIM)を含む先行技術の例(特許文献9または特許文献10)と比較すると、本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)の有用性は、少なくとも一部に、時間および分析対象物組成の両方に対して分析対象物非感応性材料(AIM)の安定性および耐用寿命を向上させる能力に起因する。これらの向上は、先行技術と比較して分析対象物非感応性材料(AIM)の性能を向上させ、その応用範囲を拡大するように作用する。また、分析対象物非感応性電極(AIE)構造は、採用される酸化還元活性材料(RAM)がpHまたは対象の他の分析対象物に対して非感応性であるという要件を緩和するため、分析対象物非感応性材料(AIM)だけでなく分析対象物感応性材料(ASM)も含められるように使用できる酸化還元活性材料(RAM)の範囲が広げられる。
【0048】
したがって、第1の態様において、本発明は、それに含まれる酸化還元材料を非電気的な外的影響(例えば分析対象物濃度)に対して非感応性にしながら、検出システムの構成要素の残りとの電気的接触を維持する電極を提供する。したがって、本発明の電極は、分析対象物非感応性電極(AIE)である。この分析対象物非感応性により、分析対象物非感応性電極(AIE)の信号応答は、検出システムが配置される環境と無関係であるため、内部較正点として使用され得る。分析対象物非感応性電極(AIE)は、構造と無関係にそれ自体が分析対象物に対して非感応性である酸化還元活性材料(すなわち分析対象物非感応性材料またはAIM)を含むことができる。しかし、構造の性質により、酸化還元材料が構造と無関係に分析対象物に対して非感応性である必要がない。この場合は、例えば、分析対象物非感応性電極(AIE)は、構造に無関係にそれ自体が分析対象物に対して感応性である(すなわち分析対象物非感応性材料または分析対象物感応性材料(ASM)である)が、分析対象物非感応性電極(AIE)の酸化還元構成要素として使用される場合は分析対象物に対して非感応性になる酸化還元材料を含むことができる。
【0049】
分析対象物非感応性電極(AIE)
本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)は、実測分析対象物非感応性電極(AIE)応答が、組成の変化および/または試験溶液中の分析対象物の存在に対して実質的に非感応性であることを除いて、上記のWEとほぼ同様に動作する点において、特殊なクラスのWEと見なされ得る。しかし、それは、酸化還元活性種を含むため、電気化学的応答を提供するが、その応答は、(支持電極の最小閾値を除く)試験溶液組成の変化、または分析対象物の存在と無関係である。したがって、分析対象物非感応性電極(AIE)は、その性質が動作方式に左右される一定の固定された電気化学的応答を提供する。例えば、ボルタンメトリー動作方式において、本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)は、標準水素電極(SHE)に対して一定のピーク電流または代替的に一定のピーク電位を有する信号を生成することができ、あるいはそれは、(SHEに対して)一定のピーク電流および一定のピーク電位の両方を有することができる。次いで、この信号を、何らかの目標分析対象物の存在により生成されたWEにおける信号をそれにより較正することができる内部標準として使用することができる。この信号は、SHEなどの既知の一定量に対して一定であるため、それを実際にPREなどのより不安定な基準電極に使用することで、従来の基準電極を使用することなく内部較正のための安定な信号を提供することができる。
【0050】
一態様において、本発明は、サンプル中の分析対象物の存在および/または濃度を測定するためのボルタンメトリーおよび/またはアンペロメトリー電気化学的センサシステムに使用される多相分析対象物非感応性電極(AIE)を提供する。分析対象物非感応性電極(AIE)は、作用電極において分析対象物感応性材料(ASM)を使用して生成される信号に対する比較の標準として使用される予測可能分析対象物非感応性信号を提供することによって、エンドユーザが、分析対象物の存在および/または濃度を測定することを可能にする。本発明のこの態様の実施形態の利点は、自己較正手段を提供することによって、エンドユーザによる繰返し較正の必要性を回避することである。
【0051】
本発明によって提供される分析対象物非感応性電極(AIE)は、電解質層、酸化還元活性材料(RAM)、導電性構成要素、および場合により導電性物理的バリアの構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態において、これらの構成要素の1つまたは複数の構成要素を互いに組み合わせることができる。例えば、酸化還元活性材料(RAM)を電解質層に分散させることができ、かつ/または電解質層が導電性物理的バリアの孔を飽和させることができる。他の実施形態において、分析対象物非感応性電極(AIE)は、上記構成要素の任意の1つまたは複数の構成要素のうちの2つ以上を場合により含むことができる。
【0052】
導電性物理的バリア
導電性物理的バリアは、存在すれば、分析対象物非感応性電極(AIE)の他の構成要素を分析対象物から物理的に隔離するように作用する。この物理的な隔離は、分析対象物非感応性電極(AIE)の残りの構成要素と分析対象物との直接的な化学的相互作用を弱めることによって、分析対象物と電解質層との対流混合などの効果を最小限に抑える。これは、次に、分析対象物との相互作用による電解質層の組成の変化を最小限に抑える。導電性物理的バリアの要件は、酸化還元活性材料に関連する電気信号を生成するのに必要な電流を効果的に導通させることである。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態は、電解質層と分析対象物との間に単一の導電性物理的バリアを有し、他の実施形態は、分析対象物非感応性電極(AIE)内の複数の電解質層を物理的に隔離するが、それらの間の電気的接触を維持するように作用する追加的な導電性物理的バリアを含む。本発明の他の実施形態において、導電性物理的バリアは、サンプルと分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティの内容物との間に挿入されて分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティ内の内容物を収容する分析対象物非感応性電極(AIE)筐体の開口端に存在する。別の実施形態において、1つまたは複数の内部の導電性物理的バリアが、分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティ内において、分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティ内の構成要素相のいずれか2つの相の間の界面に、それらの2つの相を互いに物理的に隔離するために存在する。
【0054】
導電性物理的バリアに対する選択基準としては、引張強度、湿潤性および多孔性が挙げられるが、それらに限定されない。好適な材料としては、膜、多孔質フリットおよびフィルムが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、導電性物理的バリアは、酸化還元活性材料(RAM)を含む。例えば、酸化還元活性材料(RAM)を導電性物理的バリアに分散させることができる。いくつかの実施形態において、導電性物理的バリアは、酸化還元活性材料(RAM)を含むILを含む膜である。他の実施形態において、導電性バリアはポリエーテルスルホン膜である。別の実施形態において、導電性物理的バリアはPVDF(ポリ二フッ化ビニリデン)膜である。さらなる実施形態は、導電性物理的バリアと電解質層とを1つの構成要素に統合することができる。
【0055】
電解質層
(例えば、室温イオン液体(RTIL)、または本明細書に記載の他の好適な材料で構成された)電解質層は、酸化還元活性材料(RAM)に一定の化学的環境およびイオン強度を提供し、酸化還元活性材料(RAM)と分析されるサンプルとの直接的な化学的相互作用を制限または排除する層を提供する。電解質層に対する選択基準としては、(a)その構成要素の組成が分析対象物非感応性電極(AIE)の寿命にわたって実質的に変化しないこと、(b)酸化還元活性材料に関連する電気的信号を生成するのに必要な電流を効果的に導通させること、および場合により(c)分析されるサンプルと実質的に不混和性であることが挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態において、電解質層は、分散電解質を含むフルオラス層で構成される。ペルフルオロ芳香族化合物(例えばヘキサフルオロベンゼン)、ペルフルオロアルカン(例えばテトラデカフルオロヘキサン、オクタデカフルオロオクタン、エイコサフルオロノナンおよびデカフルオロペンタン)ならびにアルキルペルフルオロアルキルエーテル(例えばノナフルオロブチルメチルエーテル)が挙げられるが、それらに限定されない。フルオラス層の分散電解質は、フルオラスイオン液体であり得るが、それに限定されない(例えば、参照により本明細書に組み込まれている非特許文献1参照)。
【0057】
いくつかの実施形態において、電解質層は、フルオラス有機液体と、サンプルに隣接するが、サンプルと実質的に不混和性である分散電解質とを含むフルオラス相である。様々な実施形態において、フルオラス相は、少なくとも50重量%または少なくとも90重量%の1つまたは複数のフルオラス有機化合物であり、相の残りは、ゲル化剤、電解質、有機溶媒、水、塩を含む無機化合物、有機化合物、炭素同素体および酸化還元活性材料を含むが、それらに限定されない1つまたは複数の希釈剤で構成される。本発明のいくつかの実施形態において、2つ以上のフルオラス相が存在してもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、電解質層は、分散電解質を含む有機層で構成される。例えば、一般的な有機溶媒に溶解された相間移動剤(例えばトルエン中臭化テトラブチルアンモニウム)は好適な電解質層である。
【0059】
いくつかの実施形態において、電解質層は、サンプルに隣接するが、サンプルと実質的に不混和性である有機液体を含む有機相である。様々な実施形態において、有機相の組成は、少なくとも50重量%または少なくとも90重量%の1つまたは複数の有機化合物であり、相の残りは、ゲル化剤、電解質、水、塩を含む無機化合物、有機化合物、炭素同素体および酸化還元活性材料を含むが、それらに限定されない1つまたは複数の希釈剤で構成される。本発明のいくつかの実施形態において、2つ以上のフルオラス相が存在してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、電解質層は、分散電解質を含む水層で構成される。水相は、実質的に水で構成されるが、ゲル化剤、有機溶媒、塩を含む無機化合物、有機化合物、炭素同素体および酸化還元活性材料を含むが、それらに限定されない1つまたは複数の希釈剤を含んでいてもよい。分散電解質は、無機イオン、有機イオンおよび/またはポリマーイオンを含むが、それらに限定されない群から選択されるアニオンおよびカチオンの塩を含む。一実施形態において、分散電解質は、塩化カリウムである。
【0061】
イオン液体(IL)が本質的に低揮発性であり、イオン性を有するために導電性を有するため、ILは、電解質層に対する上記基準を満たすため、本発明の様々な実施形態に採用される。本発明のいくつかの実施形態において、電解質層の相は、一般に、サンプル、または中間電解質層、もしくは相が存在する場合の当該相と実質的に不混和性である少なくとも1つのILを含む。この実質的に不混和性の品質は、ILそのものの固有の特性の結果として達成されてもよく、または相を隔離する構造内に存在する導電性物理的バリア(例えば多孔質フリット)、または相を隔離する膜などの構成要素の結果であってもよい。IL相の特定の構成要素を、サンプル不混和性、温度安定性、粘度、比誘電率、具体的なイオン化学組成、および特定の用途に特有の温度における相の状態を含むことができるが、それらに限定されない所望の特性を達成するように選択することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、IL構成要素は、その範囲内でサンプルが測定される温度を含む温度または温度範囲内で液体になるように選択される。好適な温度範囲としては、摂氏10度から50度、あるいは摂氏約16度から約45度、あるいは摂氏約20度から約40度の温度が挙げられるが、それらに限定されない。
【0063】
一実施態様において、電解質層は、アニオン性化学種およびカチオン性化学種で構成され、サンプルに隣接するが、サンプルと実質的に不混和性であるイオン液体(IL)である。様々な実施形態において、IL相の組成は、少なくとも50重量%または少なくとも90重量%の1つまたは複数のイオン液体であり、相の残りは、ゲル化剤、電解質、有機溶媒、水、塩を含む無機化合物、有機化合物、炭素同素体および酸化還元活性材料を含むが、それらに限定されない1つまたは複数の希釈剤で構成される。いくつかの実施形態において、IL相の組成は、100%の1つまたは複数のイオン液体である。例示的なILカチオンとしては、第4級ピロリジンおよびN,N’二置換イミダゾールが挙げられるが、それらに限定されない。例示的なILアニオンとしては、イミド、ならびに適宜置換して対象のアニオンを形成することができるホウ酸塩、リン酸塩および硫酸塩が挙げられるが、それらに限定されない。
【0064】
様々な実施形態において、ILカチオンは、イミダゾリウム(例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、C4mim)、ピリジニウム(例えばN−ブチルピリジニウム(C4py))、ピロリジニウム(例えばN−ブチル−N−メチルピロリジニウム(C4mpyrr)、テトラアルキルアンモニウムおよびテトラアルキルホスホニウムを含むが、それらに限定されない群から選択される。様々な態様において、テトラフルオロボレート(BF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(N(Tf)2)、チオシアネート(SCN)、ジシアナミド(N(CN)2)、硫酸エチル(EtSO4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6)およびトリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスフェート(FAP)を含むが、それらに限定されない群から選択される。一実施態様において、ILは室温イオン液体(RTIL)である。いくつかの実施形態において、室温イオン液体(RTIL)相は、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド([C4mpyrr][N(Tf)2])である。
【0065】
いくつかの実施形態において、電解質層は、ILまたは室温イオン液体(RTIL)がその相互接続微細孔内に固定された微孔質材料を含む。例えば、シリカ系ゾルゲルをILの存在下で形成して、それに含まれるILの結果として導電性になるイオノゲルを得ることができる(例えば、参照として本明細書に組み込まれている非特許文献2参照)。
【0066】
本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)における使用に好適な代替的な微孔質材料としては、合成膜の分野で周知のものが挙げられる。選択的分離に使用される膜は、マイクロメートルからナノメートルの範囲の広範な孔径をカバーし、有機材料、特にポリマーから誘導され得る。例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、およびそれらのポリマーをベースとした特定の誘導体をベースとした多孔質膜は、一般に、典型的な分析対象物溶液および室温イオン液体(RTIL)の両方に対して良好な化学的安定性を示すため、室温イオン液体(RTIL)を固定するための好適な媒体である。この場合、室温イオン液体(RTIL)は、電解質層の電荷移動の主たる導管である。
【0067】
電解質層のさらに別の実施形態は、室温イオン液体(RTIL)がある程度の溶解性を示す非多孔質の固体材料、例えばポリマーフィルムの薄層である。溶解した室温イオン液体(RTIL)を含むポリマーフィルムを、それが室温イオン液体(RTIL)に特有のイオン伝導性を示すが、固体の寸法安定性を保持するという点において固体溶液と見なすことができる。液体を効果的に保持するための最小限の厚さを有さなければならない微孔質構造と比較して、非孔質の固体溶液フィルムは、欠陥またはピンホールを生じさせることなく極めて薄く作製することができる。好適な非孔質ポリマーフィルムの例としては、ポリイミダゾール、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレンオキシド)およびそれらのコポリマーまたはブレンドの架橋誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。固体溶液フィルムの導電性を異なるポリマーにおける室温イオン液体(RTIL)の異なる装填量、または濃度で確定することができる。導電性を得るために比較的低充填量の室温イオン液体(RTIL)で十分である場合は、非架橋ポリマーを使用することができる。比較的高充填量の室温イオン液体(RTIL)においては、過度の膨潤または溶解を防止するために架橋ポリマーが好適である。この場合、室温イオン液体(RTIL)の固体溶液は、電荷の実質的に均一な導管である。固体溶液フィルムを表面改質して、水素イオンに対するその選択性を操作することができる。
【0068】
分析対象物非感応性電極(AIE)は、追加的な電解質層を場合により含む。一実施形態において、電解質層はサンプルに隣接し、追加的な電解質層は、電極の他の相のいずれかの間に挿入される。場合により、2つの電解質層が互いに隣接してもよい。追加的な電解質層に対する選択基準としては、電解質層に対する上記の基準が挙げられる。追加的な電解質層組成物に対する選択基準としては、粘度および比誘電率が挙げられるが、それらに限定されない。例示的な材料としては、第1の電解質層のための上記の材料、イオン液体、電解質水溶液、ゲル化電解質水溶液、ゾルゲルを含む電解質、導電性ゾルゲル、有機溶媒および有機電解質溶液が挙げられるが、それらに限定されない。
【0069】
場合により、電解質層は、1つまたは複数の酸化還元活性材料(RAM)を含む。電解質層に使用するのに好適な酸化還元活性材料(RAM)としては、以下に記載される酸化還元活性材料(RAM)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0070】
酸化還元活性材料(RAM)
本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)の構成要素である好適な酸化還元活性材料(RAM)に対する選択基準としては、明確であり、実質的に一定であるか、または限定可能に変化する、ボルタンメトリー測定および/またはアンペロメトリー測定を通じて得られる酸化ピークおよび/または還元ピークが挙げられるが、それらに限定されない。以上に記載したように、分析対象物非感応性材料(AIM)または分析対象物感応性材料(ASM)を本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)として使用することができる。分析対象物非感応性電極(AIE)において、分析対象物感応性材料(ASM)は、電解質層によってサンプルから隔離されるため、効率的に分析対象物非感応性材料(AIM)に変換される。例えば、AQおよびPAQは分析対象物感応性材料(ASM)であるが、それらが、電解質層に分散されるか、または電解質層の背後の一定pHの水相と接触することによって試験溶液から隔離され、電解質層(例えば室温イオン液体(RTIL))がプロトンの移動を防止する場合は、水相に1つの固定信号(電解質層におけるAQまたはPAQの非水性ボルタメトリ)または通常の(ただし一定の)信号が存在する。したがって、分析対象物感応性材料(ASM)は、本発明の本実施形態の文脈中では分析対象物非感応性材料(AIM)と見なされることになる。したがって、分析対象物非感応性電極(AIE)構造は、分析対象物非感応性を分析対象物感応性材料(ASM)に付与する。
【0071】
本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)に使用するための好適な酸化還元活性材料は、目標分析対象物との反応を含まない1つまたは複数の電子移動プロセスを経るため、その酸化還元挙動が目標分析対象物の存在に対して非感応性である、液体、またはバルク材料、微小粒子もしくはナノ粒子として形成された固体として存在する酸化還元活性有機分子、酸化還元活性ポリマー、金属錯体、有機金属種、金属、金属塩または半導体を含むが、それらに限定されない可逆的酸化還元活性化合物、準可逆的酸化還元活性化合物および不可逆的酸化還元活性化合物である。上記のように、分析対象物感応性材料(ASM)が電解質層によってサンプルから隔離されるのであれば分析対象物感応性材料(ASM)を使用して本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)を形成することもできる。
【0072】
本発明の様々な実施形態において、酸化還元活性材料(RAM)は、フェロセン、またはアルキル、アリールおよびヘテロ原子置換基を一方もしくは双方のシクロペンタジエニル環上に含むフェロセン誘導体を含むが、それらに限定されないフェロセン誘導体、フェロセンならびにスチレンおよびアクリレートなどの他の非酸化還元活性モノマーを含む可変性架橋のポリマー、ガラス炭素、グラファイトおよび炭素ナノチューブ(CNT)などの炭素基質上の銀ナノ粒子、主族金属カチオンおよび遷移金属カチオンを含むが、それらに限定されない可変性対イオンを有するヘキサシアノ鉄化合物、ならびに他の酸化還元活性遷移金属化合物を含むが、それらに限定されない化合物から選択される。
【0073】
様々な実施形態において、酸化還元活性材料(RAM)は、n−ブチル−フェロセン、銀ナノ粒子変性ガラス炭素粉末(AG−np−GC)、フェロセン、ポリビニルフェロセン、ヘキサシアノ鉄酸ニッケル、フェロセンスチレンコポリマー、フェロセンスチレン架橋コポリマー、NiシクラムまたはK4Fe(CN)6である。いくつかの実施形態において、分析対象物非感応性材料(AIM)はn−ブチル−フェロセンである。別の実施形態において、分析対象物非感応性材料(AIM)はK4Fe(CN)6である。このリストは、網羅的でなく、限定することを意図しない。当業者は、以上に列挙されたものに加えて、またはそれらの代わりに他の多くの酸化還元活性材料(RAM)を特定し、使用することが可能である。
【0074】
以上に記載したように、分析対象物感応性材料(ASM)は、分析対象物非感応性電極(AIE)構造において分析対象物非感応性材料(AIM)と同じ機能を果たすことができる。分析対象物非感応性電極(AIE)に使用するための好適な分析対象物感応性材料(ASM)としては、アントラキノン(AQ)、アントラセン、9,10−フェナントレンキノン(PAQ)、1,4−ベンゾキノン、1,2−ベンゾキノン、1,4−ナフタキノン、1,2−ナフタキノン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、アゾベンゼンおよびその誘導体などのアゾ含有化合物、ポルフィリンおよびオクタエチルポルフィリンまたはテトラフェニルポルフィリンなどのその誘導体、ヘミン、鉄オクタエチルプロフィリン、鉄テトラフェニルポルフィリンなどのその誘導体、ビオロゲンおよびメチルビオロゲンなどのその誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。このリストは、網羅的でなく、限定することを意図しない。当業者は、以上に列挙されたものに加えて、またはそれらの代わりに他の多くの分析対象物感応性材料(ASM)を特定し、使用することが可能である。
【0075】
1つまたは複数の酸化還元活性材料(RAM)を電解質層(例えばIL)のうちのいずれかの1つまたは複数の電解質層、または外部の導電性物理的バリアまたは導電性構成要素に分散させることができ、あるいは内部の導電性物理的バリアに分散させることができる。他の実施形態において、単一の酸化還元活性材料(RAM)が、1つまたは複数の電解質層(例えばIL)あるいは導電性構成要素に分散される。別の実施形態において、異なる酸化還元活性材料(RAM)が1つまたは複数の電解質層あるいは導電性構成要素に分散される。
【0076】
導電性構成要素
本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)は導電性構成要素を含む。いくつかの実施形態において、導電性構成要素は、分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティの後部に位置し、キャビティの後面を形成する導電性バッキングである。(本明細書では伝達要素と称することもある)導電性リード線が、(バッキングへのはんだ付けによって)バッキングに電気的に接続され、置換シリコーンポリマーおよびエポキシ組成物を含むシリコーンポリマーを含むが、それに限定されない1つまたは複数の材料で場合によりシールされていてもよい後部穴から突出する。リード線は、電気信号を電極へ、かつ電極から伝達する手段を提供する。
【0077】
炭素同素体およびその誘導体、遷移金属(例えば、プラチナ、金および水銀)、導電性金属合金、導電性ポリマー化合物およびその誘導体、シリコンおよびその誘導体を含む半導体材料およびその誘導体、ならびに具体的に記載されていないさらなる好適な材料を含むが、それらに限定されない多種多様な導電性材料を導電性バッキングに使用することができる。
【0078】
場合により、バッキング表面への研磨固定、吸着、静電結合または共有結合を含むが、それらに限定されない方法によって酸化還元活性材料(RAM)を導電性バッキングに結合させる。導電性バッキングに結合させるための好適な酸化還元活性材料(RAM)としては、前のセクションに示したものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0079】
場合により、導電性構成要素は、導電性バッキングに加えて、またはその代わりに導電性材料のプラグを含むことができる。後者の場合は、伝達要素がプラグに電気的に接続される。一態様において、プラグは、結合剤および少なくとも1つの導電性材料を含む。好適な結合剤としては、エポキシ、鉱油およびポリマー結合剤が挙げられるが、それらに限定されない。好適な導電性材料としては、グラファイト、MWCNT、SWCNT、ガラス炭素、ならびに導電性バッキングに有用な材料として以上に記載されているものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0080】
他の実施形態において、プラグは、エポキシとグラファイトとの混合物である。別の実施形態において、プラグは、エポキシとグラファイトとMWCNTとの混合物である。別の実施形態において、プラグは、エポキシとグラファイトとSWCNTとの混合物である。別の実施形態において、プラグは、エポキシとグラファイトとガラス炭素との混合物である。別の実施形態において、プラグは、エポキシおよびMWCNTを使用して形成される。別の実施形態において、プラグは、エポキシおよびSWCNTを使用して形成される。別の実施形態において、プラグは、エポキシおよびガラス炭素を使用して形成される。場合により、結合剤および導電性材料に加えて、1つまたは複数の酸化還元活性材料(RAM)が複合プラグに存在する。導電性プラグに結合させるか、または含めるのに好適な酸化還元活性材料(RAM)としては、前のセクションで示したものが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、酸化還元活性材料(RAM)と結合剤および導電性材料とを混合する。別の態様において、研磨固定、吸着、静電結合または共有結合を含むが、それらに限定されない方法によって酸化還元活性材料(RAM)を複合材料の構成要素の1つに結合させる。他の実施形態において、構成要素を、乳鉢および乳棒を使用する機械的混合を介して混合する。別の実施形態において、構成要素を有機溶媒で混合する。
【0081】
分析対象物非感応性電極(AIE)の例示的構成
主張されている分析対象物非感応性電極(AIE)の構成要素の多くの構成が可能である。例示的な実施形態を図4Aおよび4Bに概略的に示す。図4Aおよび4Bの標示部で示されるように、分析対象物非感応性電極(AIE)の態様は、サンプル端(12)を有する分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティ(3)を画定する導電性構成要素(4)の導電性バッキング(5)を有する円筒状筐体(1)を含む。導電性リード線(2)が取りつけられ、導電性板と電気接続し、後部穴から突出して、電気信号を分析対象物非感応性電極(AIE)へ、かつ分析対象物非感応性電極(AIE)から伝達する手段を提供する。導電性構成要素は、導電性バッキングと電気接続および隣接する導電性複合材料(6)のプラグを分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティに場合により含む。第1の電解質層(例えばIL相)(7)が、導電性構成要素に隣接し、第1の外部の導電性物理的バリア(8)によって分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティ内に収容されている。場合により、追加的な電解質層(例えばIL相)が存在してもよい。場合により、追加的な電解質層(10)が、導電性構成要素と第1の電解質層(例えばIL相)との間に配置され、導電性物理的バリア(9)によって第1の電解質層(例えばIL相)から隔離される。場合により、追加的な電解質層が存在してもよい。
【0082】
酸化還元活性材料(RAM)を導電性構成要素、場合により導電性バッキングおよび/または複合プラグ、あるいは電解質層(例えばIL層)のいずれかに分散させることができる。実際に、分析対象物は、電解質層(例えばIL層)によって酸化還元活性材料(RAM)から化学的に隔離される。酸化還元活性材料(RAM)を追加的な電解質層によって分析対象物からさらに化学的に隔離するか、または物理的に隔離することができる。
【0083】
以上に記載したように、本発明のいくつかの実施形態が図4Aに例示されている。導電性構成要素(4)は、外部の導電性物理的バリア(8)によって収容された導電性複合プラグ(6)および電解質層(例えばIL相)(7)を含む。酸化還元活性材料(RAM)がプラグまたは電解質層(例えばIL相)に分散されていてもよい。場合により、同一の、または異なる酸化還元活性材料(RAM)がプラグおよび電解質層(例えばIL相)内に分散されている。
【0084】
本発明の別の実施形態(図4B)において、第2の電解質層(10)が、導電性材料プラグと第1の電解質層(例えばIL相)との間に追加される。第2の電解質層は、第1の電解質層(例えばIL相)と直に接触していてもよい。あるいは、第1の内部の導電性物理的バリア(9)は、第2の電解質層を第1の電解質層(例えばIL相)から隔離することができる。1つまたは複数の酸化還元活性材料(RAM)を導電性構成要素または電解質層(例えばIL相)に分散させることができる。
【0085】
一実施形態において、本発明は、サンプル中の分析対象物を測定するための電気化学的検出デバイスに使用するための多相分析対象物非感応性電極(AIE)であって、(a)電解質層と、(b)電解質層に電気的に接続された導電性構成要素と、(c)電気的に酸化されることおよび/または電気的に還元されることが可能な酸化還元活性材料(RAM)とを含み、材料の酸化還元活性が、分析対象物に対して実質的に非感応性であり、さらに酸化還元活性材料(RAM)を電解質層または導電性構成要素に分散させることができる多相分析対象物非感応性電極(AIE)を提供する。
【0086】
電気化学的検出システム
別の態様において、本発明は、サンプル中の分析対象物の存在および/または濃度を測定するための電気化学的センサシステムを提供する。本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)の実施形態を共有する本発明の様々な実施形態、すなわち作用電極、場合により対向電極、基準電極または擬似基準電極、および一連の電気信号をインジケータおよび作用電極に供給し、一連の供給信号に対する作用電極および分析対象物非感応性電極(AIE)の電気的応答を測定するためのコントローラデバイスが可能である。これらの構成要素を以下にさらに詳細に説明する。
【0087】
システム構成要素:分析対象物非感応性電極
本発明の分析対象物センサシステムは、上記の分析対象物非感応性電極(AIE)を含む。
【0088】
システム構成要素:作用電極
本発明の分析対象物検出システムは、作用電極をさらに含む。本発明のセンサシステムにおける使用に好適な作用電極は当該技術分野で既知である。特許文献11、特許文献3および特許文献4ならびに特許文献5を参照されたい。本発明の検出デバイスにおける使用に好適な作用電極としては、例えば、限定することなく、それぞれ参照により本明細書に組み込まれている、2009年3月25日に出願された特許文献6、2009年7月15日に出願された特許文献7および2009年12月22日に出願された特許文献8に記載されているものが挙げられる。
【0089】
本発明の作用電極構成要素の特徴は、サンプルの電気的摂動に応答して電流を流すことを可能にし、システム中の1つまたは複数の分析対象物に対して感応性である電気化学的応答を実証することである。場合により、WEを、分析対象物感応性種または材料で化学的に改質することができる。一態様において、WEは、明確な酸化および/または還元ピークを有する少なくとも1つの分析対象物感応性酸化還元活性材料で改質される。
【0090】
電気化学センサシステムにおける作用電極の一般的な動作方式が当該技術分野で既知である。電気信号(場合により、何らかの熱力学的に一定の基準電極電位と相対的な印加電位)が加えられると、作用電極の電気的応答が測定され、例えば、WEが最小の電流を通す(電位差デバイスである)場合は外部較正プロットによって提供された基準点と比較され、本発明の実施形態では分析対象物非感応性電極(AIE)によって提供された基準点と比較される。ボルタンメトリー方式において、WE応答は、WEと何らかの好適なCRE/PREとの間に加えられる電位差の関数として測定される。
【0091】
システム構成要素:基準電極
本発明のセンサシステムは、従来の基準電極または擬似基準電極を含む。従来の基準電極および擬似基準電極の例は当該技術分野で既知である。非特許文献3を参照されたい。実際に、CREは、一定の基準点を提供することによって既知の制御電位差をWEに印加することを可能にする。
【0092】
いくつかの実施形態において、「擬似基準電極」(PRE)を使用することができる。これらは、一般に、明確な酸化還元電位の両半体を含まないため、一定の組成および電位の熱力学的基準電極でない。しかし、それらは、従来のREより機能的に単純であり、電気化学的実験の時間スケールにわたって合理的に一定の電位を提供する。PREと本発明の分析対象物非感応性電極(AIE)とを併用すると、従来の基準電極の必要性が排除されるため、CREの欠点が克服される。PREの1つの(ただし網羅的でない)例は、銀ワイヤの使用である。
【0093】
システム構成要素:対向電極
本発明のセンサシステムにおける使用に好適な対向電極は当該技術分野で既知である。例えば、非特許文献3を参照されたい。場合により、WEにおいて測定される信号に干渉し得る望ましくない電気化学的酸化還元プロセスがCEで生じることを避けるために、CEは、一般に比較的化学的に不活性な材料、一般にはPtまたは炭素(グラファイト)で作製される。実際に、CEは、電子ソースまたはシンクとして作用することによって、サンプルに電流を送達し、それがセンサシステムを流れることを可能にする。
【0094】
システム構成要素:コントローラ/プロセッサデバイス
本発明の分析対象物センサシステムは、コントローラ/プロセッサデバイスをさらに含む。本発明の分析対象物センサシステムにおける使用に好適なコントローラ/プロセッサデバイスとしては、例えば、限定することなく、2009年3月25日に出願された特許文献6、2009年7月15日に出願された特許文献7、2009年12月22日に出願された特許文献8、2010年2月25日に出願された特許文献12および2010年3月1日に出願された特許文献13に記載されているものが挙げられる。他の実施形態において、コントローラ/プロセッサデバイスは、それを介して作用電極と分析対象物非感応性電極(AIE)が電気的に接続されて制御される単一チャネルデバイスであり、それらの信号が同一のチャネルで記録される。単一チャネルコントローラの例としては、ポテンショスタットおよびガルバノスタットが挙げられる。本発明の別の実施形態において、作用電極と分析対象物非感応性電極(AIE)は、物理的に隔たり、作用電極および分析対象物非感応性電極(AIE)からの信号を独立して制御および/または記録することが可能な多重チャネルデバイスによって接続される。いくつかの実施形態において、コントローラ/プロセッサデバイスは、多重チャネルポテンショスタットである。さらに別の実施形態において、作用電極および分析対象物非感応性電極(AIE)からの信号が組み合わされ、次いでプロセッサが組合せ信号からのデータを解析する。別の実施形態において、作用電極および分析対象物非感応性電極(AIE)からの信号は、個別に記録され、続いて組み合わされて、プロセッサによって解析される。
【0095】
ボルタンメトリー測定
本発明のセンサシステムの実施形態に含められる分析対象物非感応性電極(AIE)の電気的応答は、以下の実施例の「材料および方法」のセクションに記載される周期または方形波ボルタメトリを含むが、それに限定されない方法を使用して測定される。実際に、周期または方形波ボルタメトリが施されると、本発明の実施形態は、実質的に一定であるか、または実質的に予測可能に変化する電気的応答を与える。
【0096】
本発明の1つの重要な用途はpHの測定であるが、本発明は、金属イオン、金属錯体および誘導体(例えば、As(III)、Pb(II)、Fe(II/III)、Cu(II/I)、Hg(II)およびその他多数)の検出、汚染物(例えば、塩素化フェノール/有機肥料、農薬、除草剤および亜硝酸塩/硝酸塩等)の検出、空気中での直接的なガス検出および水性媒体中の溶存ガスのガス検出(例えば、中でも石油化学工業および自動車工業において重要な特にCO2、CO、SO2およびH2S)、環境モニタリング(WHO、US EPAおよびEU管理機関)、薬物検出(例えばOxTox薬物試験ユニット)、食品工業Q&A(例えば、スパイス食品におけるカプサイシンおよび柑橘類果実ジュースにおけるヘスペリジン等)、医薬および(生物)薬剤Q&A、診断/認定ならびにグルコース検出(糖尿病、在宅モニタリング)を含むが、それらに限定されない、ボルタンメトリー検出およびアンペロメトリー検出を必要とするあらゆる分野に用途がある。したがって、本発明のデバイスおよび方法が、以下に記載される実施例によって例示されるが、限定されないことを当業者なら認識するであろう。
【実施例】
【0097】
材料および方法:導電性構成要素
グラファイト/エポキシ複合体
乳鉢および乳棒を使用して、300mgのグラファイトと1.15グラムのエポキシAおよび150mgのエポキシB(Epoxy Technology、ミズーリ州Bellerica)とを混合することによってグラファイト/エポキシ複合体を調製した。
【0098】
n−ブチル−フェロセンを含む多層炭素ナノチューブ(MWCNT)/グラファイト/エポキシ複合体
ジクロロメタン中にて、17mgの多層竹型MWCNT(長さが5から20μmで、30±15nmの外層直径を有する竹型)(Nanolab、マサチューセッツ州Brighton)と17mgのグラファイト、20mgのn−ブチル−フェロセン、200mgのエポキシAおよび30mgのエポキシBとを混合することによって、n−ブチル−フェロセンを含むMWCNT/グラファイト/エポキシ複合体を調製した。次いで、溶媒を室温で蒸発させた。
【0099】
室温イオン液体RTIL相[C4mpyrr][N(Tf)2
以下に記載されるように、例示的な実施形態のいくつかにおいて[C4mpyrr][N(Tf)2]を室温イオン液体(RTIL)相として使用した。
【0100】
N−ブチル,N−メチル−ピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([C4mpyrr][N(Tf)2])中1%n−ブチル−フェロセン
10uLのn−ブチル−フェロセンを1.0mLの[C4mpyrr][N(Tf)2]に混入することによって1%容量:容量のn−ブチル−フェロセンの溶液を調製した。
【0101】
材料および方法:電解質層
1MのKClを含む2%の高分子量(HMW)ヒドロキシエチルセルロースゲル
100mgの高分子量ヒドロキシエチルセルロースを、ヒドロキシエチルセルロースが完全に溶解するまで、溶液を(約80℃で)加熱しながら撹拌することによって5mLの1MのKClに溶解させた。
1MのKCL中K4Fe(CN)6 0.755gのKClを10mLの脱イオン水中0.042gのK4Fe(CN)6に添加し、撹拌によって混合した。
【0102】
材料および方法:分析対象物非感応性電極(AIE)構造
長さが3インチであり、内径が0.140インチであり、内径が0.188インチで深さが0.275インチの皿穴を有する中空円筒状筐体を鋳造PEEKポリマーロッドから機械加工した。それによって径の変化点に内縁が形成された。次いで、筐体の大きい方の内径と同じ径を有する円形真鍮ディスクにはんだ付けされた20ゲージの銅線を筐体内に配置し、内縁の上部にシールした。それによって分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティおよび径がより小さい後部筐体キャビティが形成され、分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティの後面を形成する真鍮ディスクと共に、リード線が後部穴を貫通し、外部に突出した。
【0103】
次いで、分析対象物非感応性電極(AIE)の内部構成要素を組み立てた。上記未硬化導電性複合体材料の1つを分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティに充填することによって、場合によりその中に酸化還元活性材料(RAM)が分散された導電性プラグを、分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティ内の真鍮リード線に対向する真鍮板の上部であり、筐体のサンプル端と同じ高さの位置に最初に形成した。(摂氏150度で1時間にわたって焼成することによって)硬化した後、プラグの露出端を洗浄および研磨した。次いで、筐体の外径と同一の内径を有するポリマー枠を筐体のサンプル端に装着することによって、分析対象物非感応性電極(AIE)相の層が配置される分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティを伸長した。
【0104】
次いで、3/16インチの内径および分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティの内径と同一の外径を有する第1のPEEK座金を分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティ内に配置し、プラグと同じ高さになるまでタンピングしてウェルを形成した。次いで、一滴の室温イオン液体(RTIL)相をウェル内に堆積させた後、座金と同じ径を有するポリエーテルスルホン膜(すなわち導電性物理的バリア)を堆積させ、第2のPEEK座金を膜の上部に配置した。
【0105】
場合により、プラグを窪ませ、プラグに隣接するPEEK座金を省く。室温イオン液体(RTIL)相をプラグ表面上に直接積層する。次いで、ポリエーテルスルホン膜を分析対象物非感応性電極(AIE)キャビティの端部に配置する。
【0106】
場合により、複合プラグに隣接する座金によって形成されたウェル内に第2の電解質層溶液の一滴を配置した後、ポリエーテルスルホン膜および別のPEEK座金を配置することによって、その中に分散された酸化還元活性材料(RAM)を場合により含んでいてもよい追加的な電解質層を室温イオン液体(RTIL)(すなわち第1の電解質層)相とサンプルとの間に挿入する。
【0107】
他の実施形態において、複合プラグに隣接する座金によって形成されたウェル内に第2の室温イオン液体(RTIL)相の一滴を配置した後、ポリエーテルスルホン膜およびPEEK座金を配置することによって、その中に分散された酸化還元活性材料(RAM)を場合により含んでいてもよい第2の室温イオン液体(RTIL)相の層(すなわち第2の電解質層)を第1の電解質層と複合プラグとの間に挿入する。
【0108】
組み立て後、プローブをC−クランプ内に長さ方向に配置し、電極枠の端部および筐体の内容物を筐体のサンプルの縁と同じ高さにするのに十分な圧力を加えることによって層を圧縮した。
【0109】
試験手順
分析対象物非感応性電極(AIE)が作用電極として作用し、飽和カロメル電極が基準として機能し、グラファイトロッドが対向電極として作用する、ECHOCHEMIE AUTOLABポテンショスタット/ガルバノメータ(型式PGSTAT12)を使用する標準三電極構成を用いて方形波または周期ボルタンメトリー測定を行った。分析対象物非感応性電極(AIE)のサンプル端、カロメル基準のセンサ端および対向電極を所定のpHの緩衝液と接触させて配置した。次いで、システムを一連の電位について方形波ボルタメトリの酸化または還元サイクルに供し、分析対象物非感応性電極(AIE)を流れる発生電流を印加電位の関数として測定した。
【0110】
例示的な実施形態
第1の例示的な分析対象物非感応性電極(AIE)の実施形態
酸化還元活性材料(RAM)を室温イオン液体(RTIL)相(すなわち第1の電解質相)に含む、第2の電解質層を有する第1の例示的な分析対象物非感応性電極(AIE)を、グラファイト/エポキシプラグ、第2の電解質相のための1MのKClの一滴および室温イオン液体(RTIL)相のための[C4mpyrr][N(Tf)2]中1%容量:容量のn−ブチル−フェロセンの溶液の一滴を使用して、以上の材料および方法のセクションに記載されているように構成した。
【0111】
第2の例示的な分析対象物非感応性電極(AIE)の実施形態
水性電解質相を有し、酸化還元活性材料(RAM)を室温イオン液体(RTIL)相に含む第2の例示的な分析対象物非感応性電極(AIE)を、2%HMWヒドロキシエチルセルロースゲル中1MのKClの一滴を第2の電解質相に使用したことを除いて第1の実施形態と同様にして構成した。
【0112】
第3の例示的な分析対象物非感応性電極(AIE)の実施形態
水性電解質相を有し、酸化還元活性材料(RAM)を室温イオン液体(RTIL)相に含む第3の例示的な実施形態を、17mgのMWCNT、17mgのグラファイト、200mgのエポキシA、30mgのエポキシBおよび20mgのn−ブチル−フェロセンで調製されたMWCNT/グラファイト/エポキシ/n−ブチル−フェロセンプラグを使用して、全般的に以上の材料および方法のセクションに記載されているように構成した。試薬を、塩化メチレン中で撹拌し、次いで溶媒を室温で蒸発させることによって混合した。1MのKCl水溶液の一滴を第2の電解質層に使用し、[C4mpyrr][N(Tf)2]中1%容量:容量のn−ブチル−フェロセンの一滴を室温イオン液体(RTIL)相(すなわち第1の電解質層)に使用した。本実施例は、酸化還元活性材料(RAM)が炭素プラグおよび室温イオン液体(RTIL)の両方に存在する構成4として図2に示される。
【0113】
次いで、マイナス0.8ボルトからプラス0.8ボルトの電位範囲について、方形波ボルタメトリの全部で7000の連続的酸化サイクルにわたって、以上の試験手順のセクションに記載されている第3の例示的な実施形態による方形波ボルタンメトリー測定を実施し、分析対象物非感応性電極(AIE)を流れる発生電流を印加電位の関数として測定した。それらの結果を図5Aおよび5Bに示す。この実験において、1000スキャン=430分である。
【0114】
電解質層が構造に存在しないことを除いて、第3の例示的な実施形態について記載されている構造および材料および平方波測定を使用して、対照の実験も実施した。図5Cは、前のパラグラフに記載されている実験の最初の2000スキャンからのデータと重複するプロットにおけるこの対照の実験の結果を示すプロットである。
【0115】
電解質層を構造に含まない電極から誘導された信号は、最初の258分(600スキャン)で28mVドリフトするが(図5C参照)、電解質層を採用する電極から誘導された対応する信号は、同じ時間にわたってはるかに安定していた(5mV未満のドリフト)(図5C参照)ことが図5Cに示されるデータからわかる。
【0116】
第4の例示的な分析対象物非感応性電極(AIE)の実施形態
1つの酸化還元活性材料(RAM)を水性電解質層に存在し、別の異なる酸化還元活性材料(RAM)が室温イオン液体(RTIL)相に存在する、水性電解質層を有する第4の例示的な分析対象物非感応性電極(AIE)を、第1の実施形態に使用されたのと同じ筐体およびグラファイト/エポキシプラグを使用して構成した。1MのKClおよび10mMのK4Fe(CN)6の溶液の一滴を第2の電解質層に使用し、[C4mpyrr][N(Tf)2]中1%容量:容量n−ブチル−フェロセンの一滴を室温イオン液体(RTIL)相に使用した。
【0117】
第5の例示的な分析対象物非感応性電極(AIE)の実施形態
第2の電解質層を含まないが、複合プラグに酸化還元活性材料(RAM)を含む第5の例示的な実施形態を、全般的に、30mgのn−ブチル−フェロセンと、49mgのMWCNTと、49mgのグラファイトと、575mgのエポキシAと、56mgのエポキシBとを塩化メチレン中で混合し、撹拌し、次いで溶媒を室温で蒸発させることによって調製されたMWCNT/グラファイト/エポキシ/n−ブチル−フェロセンプラグを使用して、以上の材料および方法のセクションに記載されているように構成した。プラグを筐体にてわずかに窪ませた。プラグに隣接する座金を使用せず、代わりに、窪んだプラグ上に直接堆積した一滴の[C4mpyrr][N(Tf)2]を室温イオン液体(RTIL)電解質層の相として使用した。次いで、ポリエーテルスルホン膜を導電性物理的バリアとして使用し、室温イオン液体(RTIL)相上に直接積み重ねた後、PEEK座金を積み重ねた。これは、図2に構成1として示されている。
【0118】
次いで、−0.8Vから+0.8Vの電位範囲について、方形波ボルタメトリの全体で20回の連続的酸化サイクルにわたって、以上の試験手順のセクションに記載されている第5の例示的な実施形態の方形波ボルタンメトリー測定を行い、分析対象物非感応性電極(AIE)を流れる発生電流を印加電位の関数として測定した。表1に示される組成を有する緩衝液、ならびに10mMのHClおよび1000mMのKClの溶液を使用して、測定をpH2、4、7、8、9.18および10で行った。それらの結果を図6Aおよび6Bに示す。
【0119】
室温イオン液体(RTIL)電解質層の相およびポリエーテルスルホン膜が構造内に存在しないことを除いて、第5の例示的な実施形態について記載されている構造および材料および方形波測定を使用して対照実験をも実施した。この対照実験の結果を図6Cに示す。
【0120】
図6Cと図6Dの結果を比較することによって、電解質層(この場合は室温イオン液体(RTIL))は、様々な組成を有する一連の溶液間の分析対象物非感応性電極(AIE)信号の安定性を向上させるのに有効であることがわかる。電解質層がなければ、信号は、サンプル間で84mV変動した。分析対象物非感応性電極(AIE)構造を使用すると、信号は、16mVしか変動しなかった。
【0121】
【表1】

【0122】
第6の例示的な分析対象物非感応性電極(AIE)の実施形態
第2の電解質層を含まず、プラグに酸化還元活性材料(RAM)を有する第6の例示的な実施形態をMWCNT/グラファイト/エポキシ/プラグで構成した。プラグに隣接するPEEK座金を省き、代わりに[C4mpyrr][N(Tf)2]中n−ブチル−フェロセンの1%容量:容量溶液で湿らせたポリエーテルスルホン膜をプラグの上部に配置した後、PEEK座金を配置し、次いで電極を上記のように圧縮した。この実施形態を図7に示す。
【0123】
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の様々な態様および実施形態を例示するために示されており、限定するために示されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の分析対象物を測定するための電気化学的検出デバイスに使用するための多相分析対象物非感応性電極(AIE)であって、
(a)電解質層と、
(b)前記電解質層に電気的に接続された導電性構成要素と、
(c)電気的に酸化されることおよび電気的に還元されることの少なくとも1つが可能である酸化還元材料であって、前記電解質層および前記導電性構成要素の少なくとも1つに分散された酸化還元活性材料(RAM)と、
を含む、ことを特徴とする多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項2】
前記電解質層は、
(i)アニオン性化学種およびカチオン性化学種を含むイオン液体(IL)と、
(ii)フルオラス有機液体および分散電解質を含むフルオラス相と、
(iii)有機液体および分散電解質を含む有機相と、
(iv)水および分散電解質を含む水相と、
からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項3】
前記電解質層は、イオン液体(IL)である、ことを特徴とする請求項2に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項4】
前記ILは、室温イオン液体(RTIL)である、ことを特徴とする請求項3に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項5】
前記酸化還元活性材料(RAM)は、酸化還元活性有機分子、酸化還元活性ポリマー、金属錯体、有機金属種、金属、金属塩または半導体からなる群から選択され、
前記酸化還元活性材料(RAM)は、1つまたは複数の電子移動プロセスを経る、
ことを特徴とする請求項1に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項6】
前記酸化還元活性材料(RAM)は、n−ブチル−フェロセン、銀ナノ粒子コーティングされたガラス炭素、フェロセン、ポリビニルフェロセン、NiHCF、フェロセンスチレンコポリマー、フェロセンスチレン架橋コポリマー、NiシクラムおよびK4Fe(CN)6、アントラキノン(AQ)、アントラセン、9,10−フェナントレンキノン(PAQ)、1,4−ベンゾキノン、1,2−ベンゾキノン、1,4−ナフタキノン、1,2−ナフタキノン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、アゾ含有化合物、アゾベンゼンおよびその誘導体、ポルフィリンおよびその誘導体、オクタエチルポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、メタロポルフィリンおよびその誘導体、ヘミン、鉄オクタエチルプロフィリン、鉄テトラフェニルポルフィリン、ならびにビオロゲンおよびその誘導体、ならびにメチルビオロゲンからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項7】
前記酸化還元活性材料(RAM)は、n−ブチル−フェロセンである、ことを特徴とする請求項6に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項8】
前記導電性構成要素は、炭素同素体およびその誘導体、遷移金属およびその誘導体、ポスト遷移金属およびその誘導体、導電性金属合金およびその誘導体、シリコンおよびその誘導体、導電性ポリマー化合物およびその誘導体、ならびに半導体材料およびその誘導体からなる群から選択される導電性材料を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項9】
前記導電性構成要素は、結合剤および導電性材料を含む複合材料をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項10】
前記導電性材料は、グラファイト、ガラス炭素、多層炭素ナノチューブ(MWCNT)、単層ナノチューブ(SWNT)、ホウ素ドープダイヤモンドおよびそれらの任意の組合せの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項9に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項11】
前記複合材料は、前記酸化還元材料をさらに含む、ことを特徴とする請求項10に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項12】
前記酸化還元活性材料(RAM)は、n−ブチル−フェロセンである、ことを特徴とする請求項11に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項13】
前記導電性構成要素は、プラチナ、金および水銀を含む金属の群から選択される、ことを特徴とする請求項8に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項14】
(d)前記電解質層をサンプルから物理的に隔離する、前記電極が前記サンプルと接触するときに前記電解質層と前記サンプルとの間に挿入されるように配置された導電性物理的バリアをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項15】
前記導電性物理的バリアは、前記サンプル中の分析対象物もしくは非分析対象物に対して、またはその両方に対して選択的に不透過性である、ことを特徴とする請求項14に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項16】
前記導電性物理的バリアは、多孔質フリット、フィルム、微孔質膜、およびILの固体溶液をポリマー材料または無機材料に含む非孔質膜からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項14に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項17】
前記電解質層は室温イオン液体(RTIL)N−ブチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド([C4mpyrr][N(Tf)2])であり、前記導電性構成要素は、多層炭素ナノチューブ、グラファイトおよびエポキシで構成され、前記酸化還元活性材料(RAM)はn−ブチルフェロセンであり、前記導電性バリア層は、室温イオン液体(RTIL)と直に接触しているため、室温イオン液体(RTIL)によって飽和されたポリエーテルスルホン膜である、ことを特徴とする請求項14に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項18】
(e)第1の電解質層に隣接し、第1の電解質層と実質的に不混和性である第2の電解質相であって、前記導電性構成要素と前記第1の電解質層との間に挿入され、前記第1の電解質層および前記導電性構成要素と電気接続した第2の電解質相をさらに含む、ことを特徴とする請求項14に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項19】
(f)前記第2の電解質層と前記第1の電解質層との間に挿入された導電性物理的バリアを含む第2の電解質相であって、前記酸化還元活性材料(RAM)は、第2の電解質層に場合により分散され、第2の電解質相は、前記導電性構成要素と前記第1の電解質層との間に挿入され、前記第1の電解質層および前記導電性構成要素と電気接続した第2の電解質相をさらに含む、ことを特徴とする請求項14に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項20】
前記第2の電解質層は、電解質水溶液、ゲル化電解質水溶液、電解質ゾルゲル、イオン液体、電解質含有フルオラス層および有機電解質溶液からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項18に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)。
【請求項21】
サンプル中の分析対象物を測定するための電気化学的検出デバイスであって、
(a)請求項1に記載の多相分析対象物非感応性電極(AIE)と、
(b)多相分析対象物非感応性電極(AIE)と電気接続した作用電極であって、前記分析対象物に対して実質的に感応性である作用電極と、
(c)前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)および前記作用電極に電気信号を送達し、前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)および前記作用電極の電気的応答を受けるために前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)および前記作用電極に電気接続した電子コントローラデバイスと、
を含む、ことを特徴とする電気化学的検出デバイス。
【請求項22】
前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)および前記作用電極は、前記電子コントローラデバイス内で並列電気接続している、ことを特徴とする請求項21に記載の電気化学的検出デバイス。
【請求項23】
前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)と前記作用電極は、立体配置的に接合され、共通の導電構成要素によって電気的に接続されている、ことを特徴とする請求項21に記載の電気化学的検出デバイス。
【請求項24】
前記電子コントローラデバイスは、単一チャネルコントローラデバイスであり、さらに前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)と前記作用電極は、単一チャネル電子制御デバイスによって電子的に接続されている、ことを特徴とする請求項21に記載の電気化学的検出デバイス。
【請求項25】
前記電子コントローラデバイスは、多重チャネルコントローラデバイスであり、さらに前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)と前記作用電極は、多重チャネル電子制御デバイス内の個別のデータチャネル上で接続されている、ことを特徴とする請求項21に記載の電気化学的検出デバイス。
【請求項26】
従来の基準電極または擬似基準電極をさらに含み、前記従来の基準電極または擬似基準電極は、前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)、前記作用電極および前記電子コントローラ/プロセッサデバイスに電気的に接続されている、ことを特徴とする請求項21に記載の電気化学的検出デバイス。
【請求項27】
対向電極をさらに含み、前記対向電極は、前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)、前記作用電極、前記従来の基準電極または擬似基準電極、および前記電子コントローラ/プロセッサデバイスに電気的に接続されている、ことを特徴とする請求項21に記載の電気化学的検出デバイス。
【請求項28】
請求項21に記載の電気化学的検出デバイスを使用してサンプル中の分析対象物を測定する方法であって、
(a)前記電気化学的検出デバイスを前記サンプルと接触させて配置するステップと、
(b)電気信号を前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)に送達するステップと、
(c)前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)の電気的応答を測定するステップと、
を含み、
前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)の電気的応答は、前記サンプルにおける分析対象物濃度と無関係である、ことを特徴とする方法。
【請求項29】
前記電気的信号が前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)に送達されると、前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)の実測電気的応答は、分析対象物に無関係に、基準電位に対して実質的に一定である、ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記電気的信号が前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)に送達されると、前記多相分析対象物非感応性電極(AIE)の実測電気的応答は、分析対象物に無関係に、基準電位に対して実質的に予測可能に変化する、ことを特徴とする請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−520462(P2012−520462A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554157(P2011−554157)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/026842
【国際公開番号】WO2010/104962
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511222397)セノバ システムズ インコーポレイテッド (2)