電気化学センサ装置
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、電気化学センサ装置に関するものであり、特に半導体センサやイオン選択性電極センサを利用して被検試料内に特定物質が含有されているか否かを検知する電気化学センサ装置に関するものである。
[従来の技術]
半導体の電界効果を利用した半導体イオンセンサ(以下ISFETという)は、1972年にPIET BERGVELDによって最初に提案され、その原理及び動作が確認されており、その後、例えば特開昭52−26292号公報等に開示されているように、東北大学の松尾教授等によって実用化された半導体イオンセンサが開発された。
さらに、米国特許第4020830号には、被検物質中のpHや無機イオンのみならずグルコース、尿素、酵素、免疫物質、O2,CO2等のガス成分等を検出できる半導体センサが提案されている。
このような半導体センサは、例えば特開昭53−25385号公報に示すとおり、針状構造のシリコン基板の先端に電界効果トランジスタのゲート部を形成し、このゲート部に特定物質に感応する感応膜を塗布し、この感応膜が被検試料に接触したときに生じるソース・ドレイン間の電圧の変化を測定して、被検試料内に該特定物質が含有されているか否かを検出するようにしたものである。このようにして構成した半導体センサを例えば参照電極と共にカテーテルに装着して生体計測に用いたり、ゲート部を形成した先端をそのままサンプルに浸漬してサンプル中に含有されたイオンや酵素などを検出するといった方法でセンサとして用いられていた。血液分析を行う場合等には、フローセル型の連続測定方式を採用することが多く、このような場合は、感応部をフローセル内を流れるサンプル中に露出させるように半導体センサをフローセルに装着して、サンプル中のイオン等を検出するようにしていた。
また、銀(Ag)、塩化銀(AgCl)、白金(Pt)等の導電性のワイヤの表面をポリビニルクロライド(PVC)や、あるいは溶解された感応物質を含む適当な重合体で被覆したイオン選択性電極を、被検物質中のイオンを検出するセンサとして利用できることが、“Coated−Wire Ion−Selective Electrode"(American Chemical Society 1986、pp256〜270)に開示されている。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、半導体センサのゲート部に設けた感応膜や、導電性ワイヤの周りに被覆した感応膜は、センサの先端部あるいは導電性ワイヤにそのまま塗布したり、あるいはディップにより形成しているため、膜厚が不均一になったり、感応膜内に気泡やピンホールが発生することがある。このため、測定精度が一定にならないという問題があった。また、針状構造のセンサをそのままの状態で使用するため、長期間使用すると、感応膜が剥がれてしまい耐久性に問題があった。更に、これらのセンサは非常に微小ではあるが、剛性が弱く、使用するに当たってセンサが折れたりしないように細心の注意を払う必要があるため、実用的でなかった。このような理由で、従来の電気化学センサは研究段階での利用に止まっていた。
本発明は、このような問題を解決して、堅牢で耐久性が高く実用的な電気化学センサ装置を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段及び作用]
上記課題を解決するために、本発明は、表面に凹部を有すると共に、この凹部の側面が一定の傾斜を有している保護構造体と、前記凹部の傾斜に接して収納されるように、この構造体の凹部内に収納される電気化学センサと、この電気化学センサの感応部に接触するように設けられ、特定物質に感応する感応膜とからなることを特徴とするものである。
本発明によれば、保護構造体の凹部内に電気化学センサを収納したことにより、センサが保護構造体によって保護されるため、センサを長期にわたって使用してもセンサの先端が折れたりすることや、センサの感応部に接触するように設けた感応膜が剥がれたりすることが少なく、耐久性が向上し、実用に適した電気化学センサ装置を提供することができると共に、凹部の側面が一定の傾斜を有しており、センサがこの凹部の傾斜に接して収納されることから、凹部にセンサを収納する際、安定した状態で収納でき、センサを精度良く位置決めできる。
[実施例]
第1図は、本発明の電気化学センサ装置の第1実施例をを示す図である。第1図(a)は電気化学センサを構成する保護構造体の平面図、(b)は第1図(a)のA−A線の断面図である。
保護構造体1はシリコンウエハからなり、第1図(b)に明らかなように、表面に凹部2が形成されている。保護構造体の周囲は、全面を酸化シリコン(SiO2)膜1aにて被覆し、凹部2内に収納する半導体センサを外部から電気的に絶縁するようにしている。保護構造体1には凹部2に収納する半導体センサのシリコン基板と同じ結晶面を有するシリコン単結晶を用いるようにする。これは、後に述べるように保護構造体1の凹部2はエッチング処理を施して形成するため、凹部2の側面は保護構造体1の結晶構造に応じた傾斜角をもってエッチング除去される。一方、凹部2内に収納する半導体センサも、1枚のシリコンウエハに複数の素子領域を形成したのち、これらの領域をレジスト膜で覆い、両面からエッチングを施してこれを切り離し、個々のFETを製造するようにしているため、第1図(b)に示すように、その側面はFET基板の結晶構造に応じて傾斜した形状となる。したがって、保護構造体1を構成するシリコンウエハと半導体センサの基板とを同じ結晶面を有するシリコン単結晶で作っておくことによって、凹部2に半導体センサを収納する際に、高精度に位置決めを行うことができる。
第1図(c)は、第1図(a)に示す保護構造体1の凹部2に半導体センサ3を収納した半導体センサ装置を示す断面図である。半導体センサ3は従来のものと同様の構成であり、保護構造体1の凹部2内にゲート面3aを上にして収納し、ゲート面3a表面に感応膜4塗布する。感応膜4は、例えばポリビニルクロライド(PVC)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した溶液に感応物質を混合したものを使用する。凹部2の深さは半導体センサ3の高さよりやや深くなるように構成し、ゲート面3aに塗布した感応膜4をも保護構造体1にて保護するようにする。これによってゲート面3a上の感応膜4が剥がれにくくなると共に、感応膜4の膜厚を均一に保つことができる。
第2図は、本発明の電気化学センサ装置の第2実施例を示す図であり、第2図(a)は保護構造体の平面図、第2図(b)は、第2図(a)のB−B線に沿った断面図、(c)は第2図(a)に示す保護構造体に半導体センサ3を収納した場合のB−B線に沿った断面図、(d)は、第2図(a)に示す保護構造体に半導体センサ3を収納したときのC−C線に沿った断面図である。
本実施例では、第2図(a)及び(b)に示すとおり、保護構造体5の表面に凹部2を設けると共に、保護構造体5に収納する半導体センサ3のゲート領域に対応する部分及びコンタクト領域に対応する部分に、凹部2に連通させて開口部6a,6bを設け、2段形状のクレータを形成している。第2図(c)に示すように、半導体センサ3はゲート面3aを下にして凹部2に収納し、開口部6aに感応膜4を充填して、感応膜4をゲート面3aに接触させるようにする。開口部6aは凹部2と同様にエッチングで形成するので、その側面はシリコンウエハの結晶構造に応じた一定の角度をもってテーパ状に形成される。したがって、第2図(c)に示すように、開口部6aは下方に向けて狭くなるため、開口部5に収納した感応膜4は剥がれにくなり、センサとしての耐久性が向上する。
第2図(d)は、本実施例の電気化学センサ装置のコンタクト領域の断面図である。第2図(a)及び(d)に示すように、半導体センサのコンタクト領域に対応する部分にも、凹部2に連通させて開口部6bを設けており、半導体センサ3の下部にはコンタクト部3b突出している。開口部6bにはシリコン樹脂7を充填して、コンタクト部3bを電気的に絶縁するようにする。尚、符号7aはコンタクト部3bから引き出したリード線を示す。
第3図及び第4図は、それぞれ第1図及び第2図に示した保護構造体1及び5の変形例を示す図であり、保護構造体1及び5の頭部を鋭角に加工して針状のセンサとして用いるようにしたものである。
第5図は、本発明の第3実施例を示す断面図である。この実施例は、第2図に示す電気化学センサ装置の保護構造体5の上面、すなわち凹部2が設けられている面を、周囲を酸化シリコン膜で覆ったシリコンウエハ8でシールするようにしたものである。このように構成することによって、凹部2内に収納した半導体センサ3をより完全に保護することができ、カテーテル等にこの電気化学センサ装置を装着して生体検査を行う場合などに半導体センサを有効に利用することができる。
以上の実施例では、半導体センサを保護構造体に収納した例を説明したが、Ag/AgCl、Pt,金属酸化物等の導電体をセンサとして用いるようにしてもよい。
第6図は、このような導電体をセンサとして利用した電気化学センサ装置を示す図である。第6図(a)は保護構造体の平面図、(b)は第6図(a)に示す保護構造体のD−D線に沿った断面図、(c)は第6図(a)に示す保護構造体9に導電体10を装着して電気化学センサ装置を構成した場合のD−D線に沿った断面図である。
第6図から明らかなとおり、本実施例では保護構造体9にV字形状の凹部10が形成されている。保護構造体9がシリコンウエハからなり、周囲をSiO2膜で覆って、凹部10に収納するセンサを電気的に絶縁するようにしたことは第1及び第2の実施例と同様である。凹部10に例えばAg/AgClの棒状の導電体11を収納し、凹部10の他のスペースには感応膜4を充填する。V字形状の凹部10は、他の実施例と同様にエッチングで形成するため、側面は一定の傾斜角を持って形成されており、したがって、導電体11を安定した状態で収納することができる。
第7図は、本発明の第4実施例を示す図であり、上述した第3実施例と同様に導電体をセンサとして使用したものである。本実施例の保護構造体12は、第7図(a)及び(b)に示すように、センサを収納する凹部10に連通した開口部13を設け、センサ収納部を2段形状にして、該開口部13に感応膜4を導電体センサ11に接触するように収納している。導電体11を収納した凹部10の残りのスペースにはシリコン樹脂などを充填し、導電体11を外部から電気的に絶縁する。
なお、導電体の形状は必ずしも棒状でなくとも良く、第7図(c)に示すように、プレート状に形成しても良い。
第8図は、本発明の第6実施例を示す図である。この実施例では、保護構造体14に2つの凹部15a,15bを設け、一方の凹部15aには、半導体センサ16を収納し、他方の凹部15bには参照電極18を収納している。凹部15a,15bのそれぞれに連通した開口部17a,17bを設け、半導体センサ16を収納した凹部15aに連通させて設けた開口部17aには、感応膜4を半導体センサ16のゲート面16aに接触するように収納し、参照電極18を収納した凹部15bに連通させて設けた開口部17bには、多孔質セラミック、多孔質ガラス、ファイバ等の親水性高分子や電解質ゲルを装填し、内部液として例えばKClゲルを充填する。(ただし、電解質ゲルを使用する場合は、内部液は不要である。)保護構造体14の開口部17a,17bが形成されている面は、やはりシリコンからなる枠19を装着により取り付け、この枠内にサンプル液20を満たして、サンプル液20を感応膜4及び開口部18bの液絡部に接触させるようにして、サンプル液20中に特定の物質が含まれているか否かを検出する。参照電極17にはAg/AgCl等を線状、プレート状に加工したものを使用することができる。
次に、第1実施例に用いた保護構造体を例にとって、保護構造体の製造過程を説明する。
シリコンウエハ21を洗浄した後、第9図(a)に示すようにウエット酸化を行ってシリコンウエハ21の表面及び裏面に酸化シリコン膜22を形成する。次いで、シリコンウエハ21の裏面にレジスト膜23を塗布し約140℃の温度で約30分間レジスト膜23を焼き付けた後、シリコンウエハ21の表面にレジスト間24を塗布し、約80℃の温度で約30分間ベークしてレジスト膜24を焼き付ける。
センサとして使用する電界効果トランジスタあるいは、Ag/AgCl等の導電体の大きさに応じたマスクパターンを用意して、シリコンウヘア21の表面に載せ、露光現像した後、約140℃の温度で、約30分間ベークした後、表面に露出した酸化シリコン膜層22をエッチングして除去する。
次いで、第9図(c)に示すように、シリコンウエハ21の両面に焼き付けたレジスト膜23、24を除去した後、EPW(Ethylenediamine,Pyrocatechol Water)エッチング液を用いて、毎分2μmの速度で表面に露出したシリコンウエハ21を除去し、凹部25を形成する。例えば(100)面の結晶構造を持つ単結晶シリコンを使用た場合、側面が約55゜の傾斜角を持つ凹部が形成される。更に、シリコンウエハ21周囲の酸化シリコン膜22を除去する。
最後に、シリコンウエハ21を再度RCA洗浄した後、ウエット酸化を行って、第9図(d)に示すように、エッチングした部分を含めてシリコンウエハ21全体に酸化シリコン膜を形成する。
第9図では、第1実施例に使用した保護構造体を例にとって保護構造体の製造工程を説明したが、第2実施例の保護構造体のように、凹部を2段構成にする場合は、同様のプロセスを繰り返し(但し、マスクのサイズは小さいものとする)、凹部25内に開口部を形成するようにすれば良い。
[発明の効果]
上述したように、本発明の電気化学センサ装置においては、保護構造体の凹部内に電気化学センサを収納したことにより、センサが保護構造体によって保護されるため、センサを長期にわたって使用してもセンサの先端が折れたりすることや、センサの感応部に接触するように設けた感応膜が剥がれたりすることが少なく、また、センサ自体が微小なものであっても、取り扱いが容易となり、耐久性が向上し実用に適した電気化学センサ装置を提供することができると共に、凹部の側面が一定の傾斜を有しており、センサがこの凹部の傾斜に接して収納されることから、凹部にセンサを収納する際、安定した状態で収納でき、センサを精度良く位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の第1実施例を示す図、
第2図は、本発明の第2実施例を示す図、
第3図及び第4図は、それぞれ本発明の第1実施例及び第2実施例の変形例を示す図、
第5図は、本発明の第3実施例を示す図、
第6図は、本発明の第4実施例を示す図、
第7図は、本発明の第5実施例を示す図、
第8図は、本発明の第6実施例を示す図、
第9図は、本発明の電気化学センサ装置を構成する保護構造体の製造工程を説明するための図である。
1,5,9,12,14……保護構造体
1a……酸化シリコン膜
2,10……凹部、3,16……半導体センサ
4……感応膜
6a,6b,13,15a,15b,17a,17b……開口部
11……導電体
21……シリコンウエハ
22……酸化シリコン膜
23,24……レジスト膜
25……凹部、26……酸化シリコン膜
[産業上の利用分野]
本発明は、電気化学センサ装置に関するものであり、特に半導体センサやイオン選択性電極センサを利用して被検試料内に特定物質が含有されているか否かを検知する電気化学センサ装置に関するものである。
[従来の技術]
半導体の電界効果を利用した半導体イオンセンサ(以下ISFETという)は、1972年にPIET BERGVELDによって最初に提案され、その原理及び動作が確認されており、その後、例えば特開昭52−26292号公報等に開示されているように、東北大学の松尾教授等によって実用化された半導体イオンセンサが開発された。
さらに、米国特許第4020830号には、被検物質中のpHや無機イオンのみならずグルコース、尿素、酵素、免疫物質、O2,CO2等のガス成分等を検出できる半導体センサが提案されている。
このような半導体センサは、例えば特開昭53−25385号公報に示すとおり、針状構造のシリコン基板の先端に電界効果トランジスタのゲート部を形成し、このゲート部に特定物質に感応する感応膜を塗布し、この感応膜が被検試料に接触したときに生じるソース・ドレイン間の電圧の変化を測定して、被検試料内に該特定物質が含有されているか否かを検出するようにしたものである。このようにして構成した半導体センサを例えば参照電極と共にカテーテルに装着して生体計測に用いたり、ゲート部を形成した先端をそのままサンプルに浸漬してサンプル中に含有されたイオンや酵素などを検出するといった方法でセンサとして用いられていた。血液分析を行う場合等には、フローセル型の連続測定方式を採用することが多く、このような場合は、感応部をフローセル内を流れるサンプル中に露出させるように半導体センサをフローセルに装着して、サンプル中のイオン等を検出するようにしていた。
また、銀(Ag)、塩化銀(AgCl)、白金(Pt)等の導電性のワイヤの表面をポリビニルクロライド(PVC)や、あるいは溶解された感応物質を含む適当な重合体で被覆したイオン選択性電極を、被検物質中のイオンを検出するセンサとして利用できることが、“Coated−Wire Ion−Selective Electrode"(American Chemical Society 1986、pp256〜270)に開示されている。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、半導体センサのゲート部に設けた感応膜や、導電性ワイヤの周りに被覆した感応膜は、センサの先端部あるいは導電性ワイヤにそのまま塗布したり、あるいはディップにより形成しているため、膜厚が不均一になったり、感応膜内に気泡やピンホールが発生することがある。このため、測定精度が一定にならないという問題があった。また、針状構造のセンサをそのままの状態で使用するため、長期間使用すると、感応膜が剥がれてしまい耐久性に問題があった。更に、これらのセンサは非常に微小ではあるが、剛性が弱く、使用するに当たってセンサが折れたりしないように細心の注意を払う必要があるため、実用的でなかった。このような理由で、従来の電気化学センサは研究段階での利用に止まっていた。
本発明は、このような問題を解決して、堅牢で耐久性が高く実用的な電気化学センサ装置を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段及び作用]
上記課題を解決するために、本発明は、表面に凹部を有すると共に、この凹部の側面が一定の傾斜を有している保護構造体と、前記凹部の傾斜に接して収納されるように、この構造体の凹部内に収納される電気化学センサと、この電気化学センサの感応部に接触するように設けられ、特定物質に感応する感応膜とからなることを特徴とするものである。
本発明によれば、保護構造体の凹部内に電気化学センサを収納したことにより、センサが保護構造体によって保護されるため、センサを長期にわたって使用してもセンサの先端が折れたりすることや、センサの感応部に接触するように設けた感応膜が剥がれたりすることが少なく、耐久性が向上し、実用に適した電気化学センサ装置を提供することができると共に、凹部の側面が一定の傾斜を有しており、センサがこの凹部の傾斜に接して収納されることから、凹部にセンサを収納する際、安定した状態で収納でき、センサを精度良く位置決めできる。
[実施例]
第1図は、本発明の電気化学センサ装置の第1実施例をを示す図である。第1図(a)は電気化学センサを構成する保護構造体の平面図、(b)は第1図(a)のA−A線の断面図である。
保護構造体1はシリコンウエハからなり、第1図(b)に明らかなように、表面に凹部2が形成されている。保護構造体の周囲は、全面を酸化シリコン(SiO2)膜1aにて被覆し、凹部2内に収納する半導体センサを外部から電気的に絶縁するようにしている。保護構造体1には凹部2に収納する半導体センサのシリコン基板と同じ結晶面を有するシリコン単結晶を用いるようにする。これは、後に述べるように保護構造体1の凹部2はエッチング処理を施して形成するため、凹部2の側面は保護構造体1の結晶構造に応じた傾斜角をもってエッチング除去される。一方、凹部2内に収納する半導体センサも、1枚のシリコンウエハに複数の素子領域を形成したのち、これらの領域をレジスト膜で覆い、両面からエッチングを施してこれを切り離し、個々のFETを製造するようにしているため、第1図(b)に示すように、その側面はFET基板の結晶構造に応じて傾斜した形状となる。したがって、保護構造体1を構成するシリコンウエハと半導体センサの基板とを同じ結晶面を有するシリコン単結晶で作っておくことによって、凹部2に半導体センサを収納する際に、高精度に位置決めを行うことができる。
第1図(c)は、第1図(a)に示す保護構造体1の凹部2に半導体センサ3を収納した半導体センサ装置を示す断面図である。半導体センサ3は従来のものと同様の構成であり、保護構造体1の凹部2内にゲート面3aを上にして収納し、ゲート面3a表面に感応膜4塗布する。感応膜4は、例えばポリビニルクロライド(PVC)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した溶液に感応物質を混合したものを使用する。凹部2の深さは半導体センサ3の高さよりやや深くなるように構成し、ゲート面3aに塗布した感応膜4をも保護構造体1にて保護するようにする。これによってゲート面3a上の感応膜4が剥がれにくくなると共に、感応膜4の膜厚を均一に保つことができる。
第2図は、本発明の電気化学センサ装置の第2実施例を示す図であり、第2図(a)は保護構造体の平面図、第2図(b)は、第2図(a)のB−B線に沿った断面図、(c)は第2図(a)に示す保護構造体に半導体センサ3を収納した場合のB−B線に沿った断面図、(d)は、第2図(a)に示す保護構造体に半導体センサ3を収納したときのC−C線に沿った断面図である。
本実施例では、第2図(a)及び(b)に示すとおり、保護構造体5の表面に凹部2を設けると共に、保護構造体5に収納する半導体センサ3のゲート領域に対応する部分及びコンタクト領域に対応する部分に、凹部2に連通させて開口部6a,6bを設け、2段形状のクレータを形成している。第2図(c)に示すように、半導体センサ3はゲート面3aを下にして凹部2に収納し、開口部6aに感応膜4を充填して、感応膜4をゲート面3aに接触させるようにする。開口部6aは凹部2と同様にエッチングで形成するので、その側面はシリコンウエハの結晶構造に応じた一定の角度をもってテーパ状に形成される。したがって、第2図(c)に示すように、開口部6aは下方に向けて狭くなるため、開口部5に収納した感応膜4は剥がれにくなり、センサとしての耐久性が向上する。
第2図(d)は、本実施例の電気化学センサ装置のコンタクト領域の断面図である。第2図(a)及び(d)に示すように、半導体センサのコンタクト領域に対応する部分にも、凹部2に連通させて開口部6bを設けており、半導体センサ3の下部にはコンタクト部3b突出している。開口部6bにはシリコン樹脂7を充填して、コンタクト部3bを電気的に絶縁するようにする。尚、符号7aはコンタクト部3bから引き出したリード線を示す。
第3図及び第4図は、それぞれ第1図及び第2図に示した保護構造体1及び5の変形例を示す図であり、保護構造体1及び5の頭部を鋭角に加工して針状のセンサとして用いるようにしたものである。
第5図は、本発明の第3実施例を示す断面図である。この実施例は、第2図に示す電気化学センサ装置の保護構造体5の上面、すなわち凹部2が設けられている面を、周囲を酸化シリコン膜で覆ったシリコンウエハ8でシールするようにしたものである。このように構成することによって、凹部2内に収納した半導体センサ3をより完全に保護することができ、カテーテル等にこの電気化学センサ装置を装着して生体検査を行う場合などに半導体センサを有効に利用することができる。
以上の実施例では、半導体センサを保護構造体に収納した例を説明したが、Ag/AgCl、Pt,金属酸化物等の導電体をセンサとして用いるようにしてもよい。
第6図は、このような導電体をセンサとして利用した電気化学センサ装置を示す図である。第6図(a)は保護構造体の平面図、(b)は第6図(a)に示す保護構造体のD−D線に沿った断面図、(c)は第6図(a)に示す保護構造体9に導電体10を装着して電気化学センサ装置を構成した場合のD−D線に沿った断面図である。
第6図から明らかなとおり、本実施例では保護構造体9にV字形状の凹部10が形成されている。保護構造体9がシリコンウエハからなり、周囲をSiO2膜で覆って、凹部10に収納するセンサを電気的に絶縁するようにしたことは第1及び第2の実施例と同様である。凹部10に例えばAg/AgClの棒状の導電体11を収納し、凹部10の他のスペースには感応膜4を充填する。V字形状の凹部10は、他の実施例と同様にエッチングで形成するため、側面は一定の傾斜角を持って形成されており、したがって、導電体11を安定した状態で収納することができる。
第7図は、本発明の第4実施例を示す図であり、上述した第3実施例と同様に導電体をセンサとして使用したものである。本実施例の保護構造体12は、第7図(a)及び(b)に示すように、センサを収納する凹部10に連通した開口部13を設け、センサ収納部を2段形状にして、該開口部13に感応膜4を導電体センサ11に接触するように収納している。導電体11を収納した凹部10の残りのスペースにはシリコン樹脂などを充填し、導電体11を外部から電気的に絶縁する。
なお、導電体の形状は必ずしも棒状でなくとも良く、第7図(c)に示すように、プレート状に形成しても良い。
第8図は、本発明の第6実施例を示す図である。この実施例では、保護構造体14に2つの凹部15a,15bを設け、一方の凹部15aには、半導体センサ16を収納し、他方の凹部15bには参照電極18を収納している。凹部15a,15bのそれぞれに連通した開口部17a,17bを設け、半導体センサ16を収納した凹部15aに連通させて設けた開口部17aには、感応膜4を半導体センサ16のゲート面16aに接触するように収納し、参照電極18を収納した凹部15bに連通させて設けた開口部17bには、多孔質セラミック、多孔質ガラス、ファイバ等の親水性高分子や電解質ゲルを装填し、内部液として例えばKClゲルを充填する。(ただし、電解質ゲルを使用する場合は、内部液は不要である。)保護構造体14の開口部17a,17bが形成されている面は、やはりシリコンからなる枠19を装着により取り付け、この枠内にサンプル液20を満たして、サンプル液20を感応膜4及び開口部18bの液絡部に接触させるようにして、サンプル液20中に特定の物質が含まれているか否かを検出する。参照電極17にはAg/AgCl等を線状、プレート状に加工したものを使用することができる。
次に、第1実施例に用いた保護構造体を例にとって、保護構造体の製造過程を説明する。
シリコンウエハ21を洗浄した後、第9図(a)に示すようにウエット酸化を行ってシリコンウエハ21の表面及び裏面に酸化シリコン膜22を形成する。次いで、シリコンウエハ21の裏面にレジスト膜23を塗布し約140℃の温度で約30分間レジスト膜23を焼き付けた後、シリコンウエハ21の表面にレジスト間24を塗布し、約80℃の温度で約30分間ベークしてレジスト膜24を焼き付ける。
センサとして使用する電界効果トランジスタあるいは、Ag/AgCl等の導電体の大きさに応じたマスクパターンを用意して、シリコンウヘア21の表面に載せ、露光現像した後、約140℃の温度で、約30分間ベークした後、表面に露出した酸化シリコン膜層22をエッチングして除去する。
次いで、第9図(c)に示すように、シリコンウエハ21の両面に焼き付けたレジスト膜23、24を除去した後、EPW(Ethylenediamine,Pyrocatechol Water)エッチング液を用いて、毎分2μmの速度で表面に露出したシリコンウエハ21を除去し、凹部25を形成する。例えば(100)面の結晶構造を持つ単結晶シリコンを使用た場合、側面が約55゜の傾斜角を持つ凹部が形成される。更に、シリコンウエハ21周囲の酸化シリコン膜22を除去する。
最後に、シリコンウエハ21を再度RCA洗浄した後、ウエット酸化を行って、第9図(d)に示すように、エッチングした部分を含めてシリコンウエハ21全体に酸化シリコン膜を形成する。
第9図では、第1実施例に使用した保護構造体を例にとって保護構造体の製造工程を説明したが、第2実施例の保護構造体のように、凹部を2段構成にする場合は、同様のプロセスを繰り返し(但し、マスクのサイズは小さいものとする)、凹部25内に開口部を形成するようにすれば良い。
[発明の効果]
上述したように、本発明の電気化学センサ装置においては、保護構造体の凹部内に電気化学センサを収納したことにより、センサが保護構造体によって保護されるため、センサを長期にわたって使用してもセンサの先端が折れたりすることや、センサの感応部に接触するように設けた感応膜が剥がれたりすることが少なく、また、センサ自体が微小なものであっても、取り扱いが容易となり、耐久性が向上し実用に適した電気化学センサ装置を提供することができると共に、凹部の側面が一定の傾斜を有しており、センサがこの凹部の傾斜に接して収納されることから、凹部にセンサを収納する際、安定した状態で収納でき、センサを精度良く位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の第1実施例を示す図、
第2図は、本発明の第2実施例を示す図、
第3図及び第4図は、それぞれ本発明の第1実施例及び第2実施例の変形例を示す図、
第5図は、本発明の第3実施例を示す図、
第6図は、本発明の第4実施例を示す図、
第7図は、本発明の第5実施例を示す図、
第8図は、本発明の第6実施例を示す図、
第9図は、本発明の電気化学センサ装置を構成する保護構造体の製造工程を説明するための図である。
1,5,9,12,14……保護構造体
1a……酸化シリコン膜
2,10……凹部、3,16……半導体センサ
4……感応膜
6a,6b,13,15a,15b,17a,17b……開口部
11……導電体
21……シリコンウエハ
22……酸化シリコン膜
23,24……レジスト膜
25……凹部、26……酸化シリコン膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】表面に凹部を有すると共に、この凹部の側面が一定の傾斜を有している保護構造体と、前記凹部の傾斜に接して収納されるように、この構造体の凹部内に収納される電気化学センサと、この電気化学センサの感応部に接触するように設けられ、特定物質に感応する感応膜とからなることを特徴とする電気化学センサ装置。
【請求項2】前記保護構造体の前記凹部に連通する開口部を設け、この開口部内に、前記感応膜が収納されるように、前記電気化学センサを前記凹部内に配置したことを特徴とする請求項1記載の電気化学センサ装置。
【請求項3】前記傾斜を有する凹部に収納されるべき電気化学センサの側面は、傾斜した形状を有することを特徴とする請求項1記載の電気化学センサ装置。
【請求項1】表面に凹部を有すると共に、この凹部の側面が一定の傾斜を有している保護構造体と、前記凹部の傾斜に接して収納されるように、この構造体の凹部内に収納される電気化学センサと、この電気化学センサの感応部に接触するように設けられ、特定物質に感応する感応膜とからなることを特徴とする電気化学センサ装置。
【請求項2】前記保護構造体の前記凹部に連通する開口部を設け、この開口部内に、前記感応膜が収納されるように、前記電気化学センサを前記凹部内に配置したことを特徴とする請求項1記載の電気化学センサ装置。
【請求項3】前記傾斜を有する凹部に収納されるべき電気化学センサの側面は、傾斜した形状を有することを特徴とする請求項1記載の電気化学センサ装置。
【第3図】
【第4図】
【第5図】
【第8図】
【第1図】
【第2図】
【第6図】
【第9図】
【第7図】
【第4図】
【第5図】
【第8図】
【第1図】
【第2図】
【第6図】
【第9図】
【第7図】
【特許番号】特許第3011964号(P3011964)
【登録日】平成11年12月10日(1999.12.10)
【発行日】平成12年2月21日(2000.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−130142
【出願日】平成2年5月22日(1990.5.22)
【公開番号】特開平4−25756
【公開日】平成4年1月29日(1992.1.29)
【審査請求日】平成9年5月15日(1997.5.15)
【出願人】(999999999)オリンパス光学工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭60−56247(JP,A)
【登録日】平成11年12月10日(1999.12.10)
【発行日】平成12年2月21日(2000.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成2年5月22日(1990.5.22)
【公開番号】特開平4−25756
【公開日】平成4年1月29日(1992.1.29)
【審査請求日】平成9年5月15日(1997.5.15)
【出願人】(999999999)オリンパス光学工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭60−56247(JP,A)
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