説明

電気化学的プローブ及び組織の処理をその場で行うための方法

本発明は、標的組織を脱水、電気酸化または電気還元するための方法および装置似関する。本発明の装置は、標的組織に1つ以上の有効薬剤を送出するための電気化学的プローブ(512)又は他の装置を利用する。組織からの水を前駆体として電解により分解して有効薬剤を発生させる。また、水は外部供給源から供給されて有効薬剤を発生させることもできる。有効薬剤は、組織中のその場での物質の酸化および/または還元を容易にする。有効薬剤の1つはオゾンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年8月1日出願の米国出願第11/193,339号の一部継続出願および、2006年12月26日出願の米国出願第11/616,041号の一部継続出願であり、参照により本願に包含される。
【0002】
本発明は、組織を処理するための装置に関し、特に、組織の物質の脱水、電気酸化または電気還元のための装置に関する。本発明は、更に、液体治療薬の組織における作成および投与にも関する。
【背景技術】
【0003】
腰関節椎間板や腱の痛みは、共通で衰弱させる可能性のある慢性病であり、世界の人口の80%の人が一生に少なくとも1度は経験すると推計される。多くの事例において、痛みの原因は変形した椎間板によるもので、更に悪化すれば椎間板ヘルニアとして知られている状態になる。これは椎間板外膜の裂傷や亀裂を通じて椎間板髄核が押出され、それにより脊髄神経に圧力が加わる時に起こる。この神経圧迫により、髄核ヘルニアが炎症を引起し、痛みを感じるという直接的な刺激になり、ある場合には、それは下肢に広がっていく(坐骨神経痛ともして参照される)。この種の背痛の可能な治療は、ヘルニアの重症度によって変る。軽度であれば、長時間の休息と非活動によって患者の状態を処置する。しかしながら、重度のヘルニアで苦しむ患者または非侵略的治療(薬理学および/または理学療法)では効果が無い患者の場合、外科的介入がしばしば推奨される。このような侵略的治療は、以下のようないくつかの短所がある:(1)不可逆的治療である、(2)瘢痕組織が形成される、(3)回復時間が遅い、(4)入院期間が長い、(5)感染症のリスクがある。
【0004】
1950年頃から、外科手術を避けた最小限の侵略的経皮治療で椎間板の容積を減少させることによる坐骨神経痛の治療および背痛の軽減のための多くの試みがなされた。良く知られた治療法としては、例えば、経皮的椎間板切除術、経皮的プラズマ椎間板減圧術(高周波椎間板減圧術)、椎間板内高周波熱凝固法(IDET)及び経皮的椎間板内ラジオ波熱焼却(PIRT)等が挙げられる。しかしながら、これらの治療は高額であり、研究者は他の代替法を探し続けてきた。残念ながら、これらの公知の治療法は、標的組織の体積を減少させようとしながら、しばしば標的組織およびその周囲の組織に対して比較的激しく切除、焼却、切断などを行う治療である。
【0005】
間接リウマチ、変形性関節症、テニス肘、四十肩、家事膝などのスポーツや作業を通じた反復性損傷などの他の状況に関しては、腱、腱が動くための鞘または潤滑管などの間接機能を含む組織の2つの界面の間を炎症が広がっていく。炎症は、膝、肩、股などの滑液包炎などの炎症、または解剖学的滑液包は、酸素−オゾン混合物または励起酸素、エネルギー酸素、純粋酸素などの治療薬の投与から効果が得られる。そのような炎症は、手首、手および手や手首の腱鞘を含む上顆炎および他の腱炎および滑液包炎を含む。炎症は、外傷、応力、酷使、疾患などにより、腱や靭帯が骨を挿入する場所または鞘を介して通る場所で生じる。
【0006】
炎症は、間接の病理を介して広まり、これらは、間接リウマチ、乾癬性関節炎など、又は変形性関節症の間接炎状態を含む。これらの病気にかかっている間接、および、酸素−オゾン混合物、励起酸素、エネルギー酸素、純粋酸素などの治療薬の投与による影響を受けやすい間接は、顎関節、股関節、膝関節、足首間接、肘関節、仙腸間接などの滑膜間接を含む。脊椎間接および仙腸間接も有効である。リウマチ間接、変形性間接症または毛根管症候群などの損傷により生じるスポーツや作業を通じた反復性損傷を有する手、手首、足の間接の炎症もまた、この処理による効果があるかもしれない。
【0007】
上述した炎症、関節炎または変性性疾患は、通常、イブプロフェン又はより強力なステロイド系薬剤あるいはメトトレキサート等の化学療法剤などの抗炎症薬を組合せて治療する。ステロイド系薬剤またはリドカインを炎症組織や間接に直接投与するのが一般的な医療行為である。これは、しばしば繰返して行われる。これらの薬剤は感染症などの副作用を伴い、出血性胃潰瘍または免疫抑制および感染症から死に至ることさえある。本分野に精通した当業者は、ガスとして又は液体中に溶解している酸素−オゾン混合物または励起酸素、エネルギー酸素、純粋酸素などのオゾン治療薬は現在実施する治療において有利であると考えている。
【0008】
人工股関節、義足、ペースメーカーなどを永続的な外科的移植手術で設置する際または
感染間接の治療の際の前に外科手術スペースの洗浄を行う際、酸素−オゾン混合物または励起酸素、エネルギー酸素、純粋酸素などの殺菌剤を使用すると容易に行うことが出来るであろう。同様に人工肛門造設した開口部は、ガス又は液体中に溶解させた酸素−オゾン混合物または励起酸素、エネルギー酸素、純粋酸素などを粘着性円板に注入することにより、治療の助けとなり感染防止することができるであろう。心臓手術における胸骨切開の術後の回復はしばしば傷口感染により面倒となることがある。ガス又は液体中に溶解させた酸素−オゾン混合物または励起酸素、エネルギー酸素、純粋酸素などを傷口に注入して再吸収可能なカテーテルの設置することにより、治療の助けとなるであろう。傷口には、酸素−オゾン混合物または励起酸素、エネルギー酸素、純粋酸素を投与できる複数の孔を有する再吸収可能なカテーテルを有することが出来るであろう。耐感染、鎮痛性、傷を治癒する性質を有し、それにより回復時間や術後の面倒な問題も減るであろう。
【0009】
オゾンの内視鏡的注入および経カテーテル的注入は、内視鏡的医療介入または例えば膵管内視鏡的評価におけるような画像誘導または非画像誘導カテーテル医療介入などからの複雑さを防ぐために使用できる。
【0010】
ガスとして又は液体中に溶解している酸素−オゾン混合物または励起酸素、エネルギー酸素、純粋酸素などの歯科的注入は、歯腔の形成や再生を増長させ、歯根管炎または歯周病の減少に有効かもしれない。
【0011】
椎間板疾患や変性疾患の動物に、ガスとして又は液体中に溶解している酸素−オゾン混合物または励起酸素、エネルギー酸素、純粋酸素の低侵襲注入する獣医学への応用もある。競技場などにおいての他の応用もある。ある種の動物は、椎間板疾患や関節炎からの痛みで衰弱することにより殺処分される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、組織を処理するための装置、特に、組織の物質の脱水、電気酸化または電気還元のための装置を提供する。本発明は、更に、液体治療薬の組織における作成および投与を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、特に、肉体に影響を及ぼす椎間板ヘルニア及び他の病状(内科的疾患)の治療のために設計された装置の実施態様を開示する。そのような装置は、酸素−オゾン混合物または励起酸素、エネルギー酸素、純粋酸素を使用して、治療が効率的に殺菌手法において行われる。ある実施態様において、携帯型、使い捨て又は再使用可能な装置のセットが記載され、炎症や変性疾患の治療介入のために、殺菌性で、安定で、必要に応じてオゾンを急速に供給できる。装置の実施態様において、従来の治療法と比較して苛酷さが少なく標的組織の治療を容易にし、組織や付随する膜のヘルニア及び/又は炎症による体積を減少させる能力を有する。
【0014】
本方法の実施態様も記載される。ある実施態様において、本方法は、組織の治療方法である。本方法の実施態様は、体内の組織に一対の電極を挿入することを含む。本方法は、更に、一対の電極に低周波電位を印加し、体内の組織内のその場で電解を生じさせる工程を含む。ある実施態様において、電解を生じさせる工程は、水素および水素イオンの少なくとも1つを形成すること、及び、酸素、オゾン及び酸素イオンの少なくとも1つを形成することによる脱水を含む。また、その場での電解は、組織の物質の電気還元を生じる。ある実施態様において、本方法は、一対の電極間に吸収膜が配置され、吸収膜の少なくとも一部が流体を含み、吸収膜中でその流体の電解を行う工程を含む。流体は、組織内または組織外の供給源からの水であってもよい。本方法の他の実施態様も更に記載する。
【0015】
装置の実施態様もまた記載される。ある実施態様において、そのような装置は、体内の組織を治療する電気化学的プローブである。電気化学的プローブの実施態様は、ニードル、物質処理モジュール及び電源を含む。ニードルは、体内の組織を貫通するチップを有する。物質処理モジュールは、ニードルのチップ内に配置される。物質処理モジュールは、第1及び第2電極を有し、第1及び第2電極の間の電解質を電解する。電解質は、組織内または組織外からの水、あるいは他の有機溶媒などの流体を含む。電源は低周波電位を第1及び第2電極に供給する。ある実施態様において、吸収膜が第1及び第2電極の間に配置される。吸収膜の少なくとも一部が電解質を含む構成を有する。装置の他の実施態様も記載される。
【0016】
本発明の他の実施態様の要旨および効果は、本発明の種々の原理や実施態様の例を示した添付の図面を伴って、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、組織を処理するための装置、特に、組織の物質の脱水、電気酸化または電気還元のための装置を提供できる。本発明は、更に、液体治療薬の組織における作成および投与を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施態様に従った治療薬の投薬のための装置の部分切り取り斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す装置の拡大斜視図である。
【図3】図3は、図1の物質処理モジュールの横断面図である。
【図4】図4は、図1の物質処理モジュールの他の実施態様の横断面図である。
【図5】図5(a)は、図1に示す装置の充填位置での平面図であり、図5(b)は、図5aに示す装置の投薬位置での平面図である。
【図6】図6(a)は、本発明の他の実施態様の断面平面図であり、図6(b)は、図6(a)の全A−Aに沿った切り取り平面図であり、図6(c)は、図6(a)の断面Bの平面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の他の実施態様の切り取り平面図であり、図7(b)は、図7(a)の線A−Aに沿った横断面図であり、図7(c)は図7(a)の断面Bの詳細な平面図である。
【図8】図8(a)は、電気化学的プローブの一実施態様の断面線図であり、図8(b)は、図8(a)の断面A−Aに沿った電気化学的プローブの横断面線図である。
【図9】図9(a)は、電気化学的プローブの他の実施態様の断面線図であり、図9(b)は、図9(a)の断面A−Aに沿った電気化学的プローブの横断面線図である。
【図10】図10(a)は、電気化学的プローブの他の実施態様の断面線図であり、図10(b)は、図10(a)の断面A−Aに沿った電気化学的プローブの横断面線図である。
【図11】図11(a)は、図10(a)の破線領域Bに対応する電気化学的プローブの他の実施態様の部分断面線図であり、図11(b)は、図11(a)の断面A−Aに沿った電気化学的プローブの横断面線図(または端面図)である。
【図12】図12(a)〜(c)は、図8(a)〜11(b)に示される実施態様の何れかに置換してもよい代替実施態様の横断面線図(または端面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を併用して、本実施態様を以下の記載および添付の請求の範囲からより明らかにする。添付の図面は代表的な実施態様を描いているにすぎず、本発明の要旨を限定するものではないことを理解すべきである。実施態様は、図を伴って参照して、以下に特異性や詳細について説明される。
【0020】
明細書を通じて、類似の符号は類似の構成部材を扱うために使用される。
【0021】
以下に、種々の実施態様の具体的詳細の説明を行う。しかしながら、ある実施態様において、これらの具体的詳細説明の少なくとも幾つかが無くて実施してもよい。他の事例において、ある方法、手順、構成部材および回路は簡潔および明瞭な記載目的からその詳細を記載してない。
【0022】
電気化学的プローブまたは他の組織処理装置またはシステムにおける記載された構成部材それぞれに関して、ここではある機能が記載されているが、他の装置や方法の実施態様において、より少ない又はより多い構成部材を使用して類似の機能が実施されてもよい。更に、ここに記載される装置やシステムのある実施態様が、ここに記載されるよりも多い又は少ない機能で実施されてもよい。
【0023】
本発明の要旨または基本性質から逸脱しない範囲で、他の特定形態で本発明を実施してもよい。記載された実施態様は、あらゆる点において例示であってこれに限定するものではないと考えるべきである。実施態様の種々の要旨が図中に存在するが、図面は特に言及しない限りスケールを表示する必要はない。本発明の要旨は、それ故、上述の記載によってよりも、添付の請求の範囲によって示される。請求の範囲の均等な意味および範囲内での全ての変更も、本発明の範囲内に含まれるべきである。
【0024】
本明細書を通じて参照される要旨、技術効果および類似の語は、本発明により実現される要旨および技術効果のすべてが本発明の単一実施態様においてであるべきと言うことを暗示するわけではない。むしろ、要旨および技術効果に関する語は、実施態様に関連して記載される特定の要旨、技術効果および性質は本発明の実施態様の少なくとも1つを含むことを意味すると理解される。それ故、本明細書を通じた要旨、技術効果および類似の語の議論は、必ずしも同じ実施態様を参照する必要はない。
【0025】
本発明の記載された要旨、技術効果および性質は、1つ以上の実施態様において適切な手法で組合されてもよい。本発明は、特定の実施態様の1つ以上の特定の要旨および技術効果無しで実施することが出来ることは当業者に理解できるであろう。他の事例において、付加的な要旨および技術効果が、本発明の全ての実施態様において存在しないようなある実施態様において理解されるかもしれない。
【0026】
本明細書を通じて、「1つの実施態様」、「ある実施態様」または類似の語は、本発明の少なくとも1つの実施態様に、実施態様と関連して記載された特定の要旨、構造または性質が含まれていることを意味する。それ故、本明細書を通じて、「1つの実施態様において」、「ある実施態様において」または類似の語は、必ずしも同じ実施態様として参照される必要はない。
【0027】
以下の記載において、本発明の実施態様の理解を与えるために、ハウジング、隔壁、室の例などの多くの具体的詳細が与えられる。しかしながら、これらの具体的詳細、他の1つ以上無しで、または他の方法、構成部材、材料などを有して実施できることは当業者に理解できるであろう。他の事例において、公知の構造、材料または真空源などの操作は本発明の要旨を不明瞭にするのを避けるためにその詳細を記載せず示してない。
【0028】
図1は、本発明に従った携帯型投薬装置10を示す。装置10は、室14を規定するハウジング12を有する。ある実施態様において、装置10またはハウジング12は、室を規定するプランジャー16及びバレル18を有する。プランジャーは第1の端部20及び第2の端部22を有する。バレル18は第1の端部24を有し、バレル18がプランジャー16と可動係合できるようにプランジャー16の第1の端部20を受け入れるための開口部となっている。バレル18は、更に第2の端部26を有する。図示された実施態様において、プランジャー16の第1の端部20及びバレル18の第2の端部26は室14を形成する。ハウジング12は、約150cm未満の容積を有する。ある実施態様において、室14は約150cm未満の容積の物質を保持できる。ある実施態様において、室14は約0.1cm以上の容積の物質を保持できる。容積の範囲はバレル18内のプランジャー16の位置と一致することが好ましい。例えば、プランジャー16はバレル18内を、プランジャー16の第1の端部20がバレル18の第1の端部24以内でバレル18から完全に出ない範囲である充填位置と、プランジャー16の第1の端部20が、プランジャー16の第1の端部20がバレル18の第2の端部26に近接しているような実質的にバレル18内にある投薬位置との間で可動してもよい。
【0029】
室14は物質を保持するように構成される。本明細書を通じて使用される「物質」とは、気体、液体、ゲル、固体またはこれらの組合せを意味する。物質は、更に、液体、気体またはゲル中に懸濁または分散する固体であってもよい。前駆体物質または出発物質は、有効薬剤または治療薬を生成する装置の作動によって処理されるべき装置内に充填されてもよい。従って、装置10は、有効薬剤としての効果を有する処理された物質を生成するために使用できる。本開示を通じて使用される「前駆体」、「前駆体物質」および「出発物質」は同意語として使用される。更に、「処理された物質」、「有効薬剤」および「治療薬」も同意語として使用される。装置は、前駆体物質を有効薬剤にし、そして有効薬剤を、通常体内などの所望の場所に送出するために使用される。
【0030】
ある実施態様において、プランジャーの第1の端部20は、室14内に物質の滞留を容易にするシール28で構成されていてもよい。シールはガスケット又は可撓性フランジ或いは他の本技術分野における公知の機械的手段であってもよい。室14内に物質を滞留させる方法には種々あり、それぞれが本発明の範囲内であることは当業者には自明であろう。バレル18の外面20には、室14内の物質量を計測するための目盛り32を有していてもよい。装置10は、プランジャー16が充填位置と分注位置の間を容易に移動できるような構成を有する。例えば、バレル18はハンドルや指取っ手34を有していてもよく、プランジャー16はハンドル36を伴って形成されていてもよい。
【0031】
ある実施態様において、装置10は物質処理モジュール40を有する。詳細について図3及び4を用いて以下に説明する。物質処理モジュール40は種々の構成を取り得る。物質処理モジュール40は、ハウジング12またはバレル18の中に配置する。ある実施態様において、物質処理モジュール40はプランジャー16の中に配置する。他の実施態様において、物質処理モジュール40はバレル18の中に配置する。そして、他の実施態様において、物質処理モジュール40はハウジング12の中に配置する。
【0032】
物質処理モジュール40は、室14内の前駆体物質が物質処理モジュール40と接触して処理できるように室14に連結している。本明細書を通じて使用される「物質の処理」の語は、物質の全部または一部の組成または性質を変えることを意味する。同様に、「処理された物質」は、その化学組成または他の性質を変更または改質された物質を意味する。例えば、ある実施態様において、前駆体物質が酸素の場合、物質処理モジュール40はオゾンを製造するオゾン発生器であり、結果物質または処理された物質が酸素とオゾンとの混合物であってもよい。同様に、前駆体物質が水の場合、物質処理モジュール40は水を酸化して酸素とオゾンを含む処理された物質を製造してもよい。前駆体物質が塩水溶液の場合、物質処理モジュール40は溶液中のイオンを酸化して溶液中に溶ける又はガスとして発生する有効薬剤を製造してもよい。例えば、前駆体物質中の塩素イオンは、物質処理モジュール40との相互反応の後、以下の反応式に示すように塩素ガスを発生する。
【0033】
2Cl→Cl+2e (1)
【0034】
塩素ガスは装置から所望の場所に放出され、有益な効果をもたらす。同様に、臭素イオンの場合は、以下の反応式に示すように臭素を発生する。
【0035】
2Br→Br+2e (2)
【0036】
反対に、物質処理モジュール40は前駆体物質を還元して有効または薬効処理物質を形成する。
【0037】
原料または前駆体物質は、物質処理モジュール40によって処理され、前駆体物質の種々の性質を改質するが、それに際して酸素などの特定元素の濃度、物質のpH、物質の温度、物質の粘度などに制限がないことは自明である。物質処理モジュール40は、貯蔵が容易で薬効のある反応物質を産み出せる良性物質を取り入れる。更に物質処理は種々の方法で達成でき、例えば、これに限定されないが、物質の還元、物質の酸化、電気化学的な物質の変換、化学的な物質の変換、熱的な物質の変換、光を利用した物質の変換などが挙げられる。処理された物質は、種々の性質を有する又は使用者の治療に寄与する有効薬剤である。装置10は輸送可能であり、単点または複数点の有効薬剤投与が可能である。
【0038】
以下に図2を用いて詳細に説明するが、装置10は液体物質処理モジュール40を制御する手段を有していてもよい。例えば、装置20はオン/オフスイッチ42又は他のレギュレータを有してもよい。更に、装置10は、使用者が液体物質処理モジュール40の状態を把握するために可視的および/または音響的なディスプレー又はインジケーター44を有していてもよい。例えば、装置10は、装置が物質を処理している時または物質処理を止めた時を表示してもよい。更に、室14内に処理物質が存在するかを表示してもよい。
【0039】
ハウジング12は、ハウジング12から処理された物質を放出するための、室14と物質が連結するように排出口46を有していてもよい。ある実施態様において、排出口46は、バレル18の第2の端部26にポートとして構成される。排出口46はニードル48
を受け入れるように構成される。例えば、排出口46は、排出口46にニードル48を圧着するように構成されていてもよい。排出口46は、ニードル48にネジを受け入れるようなネジ構造を有していてもよい。ニードル48は、排出口46にルアー又は他の機械的接続手段により接続されてもよい。排出口46とニードル48はお互いに連結できるように種々の構成が取り得ることは当業者に自明であろう。ニードルは排出口と物質の連結手段であり、室は処理物質を体内および使用者にとって最も薬剤効果の高い特定部位に導入させる。
【0040】
装置10は室14とニードル48との間の物質の移動を制御するためのバルブ50を有していてもよい。ある実施態様において、バルブは活栓バルブである。物質の漏れを防いで処理される際はバルブを「閉じる」の状態とする。一度所定量の物質が処理されたらバルブを「開く」の状態にして、処理された物質を装置10から排出させる。
【0041】
図2は、図1に示す本発明の実施態様の分解斜視図を示す。装置10は、更に、物質処理モジュール40によって処理される物質の量を制御するコントローラー52を有してもよい。ある実施態様におけるコントローラー52は、物質処理モジュール40の処理時間を制御するためのタイミング回路54を有していてもよい。物質処理モジュール40がオゾン発生器であり、前駆体物質が酸素または空気である場合の実施態様において、コントローラー52は、オゾンの発生を制御するオゾン回路56を有していてもよい。コントローラー52は物質処理モジュール40と電気的に連通している。ある実施態様において、コントローラー52はプランジャーハウジング53の中に配置され、オゾン発生器であってもよい物質処理モジュール40によって発生させるオゾンの量を制御するために使用される。コントローラー52は、更に、コントローラー52が物質処理モジュール40の機能を適切に制御できるためにリレー回路(図示せず)を有していてもよい。
【0042】
電源80は物質処理モジュール40及びコントローラー52と電気的に連通している。電源80は直流であっても交流であってもよい。ある実施態様において、電源80は、プランジャー16内の同軸上に位置する電池または直列電池である。コントローラー52は、高圧、高周波電気信号の発生および物質処理モジュール40に供給することが出来るような電子機器を有していてもよい。信号の周波数は約1/10kHzから約1000kHzの間である。ある実施態様において、周波数は約20kHzから約60kHzの間である。電気信号の電圧は、約1kVから約20kVの間である。ある実施態様において、電気信号は約3kVから約6kVの間である。他の実施態様において、電源80は、電圧約1Vから約30Vの間で電流を供給することも出来る。
【0043】
スイッチ42は、電源80からの電力供給を制御するために使用されてもよい。スイッチ及び他の電子機器は電線またはケーブル60を介して電気的に連通する。スイッチ42がオンの場合、電流が物質処理モジュール40に供給され、スイッチ42がオフの場合、電流は供給されない。スイッチ42は、本技術分野で知られている多くの電気スイッチが使用できる。例えば、スイッチは、使用者が複数回電気回路の連通および遮断を行うためのトグルスイッチであってもよい。ある実施態様において、スイッチは、装置10からプルタブを外すと回路が連通して電流が物質処理モジュール40に供給されるようなプルタブ型スイッチでもよい。タイミング回路54は、所定時間において自動的に電流の発生や供給を停止してもよい。コントローラー52又はコントローラー52の個々の部材54及び56は、装置10がオン状態かオフ状態か或いは物質処理モジュール40の状態を表示するための音響的または視覚的な信号または表示をするために、ブザーや光源を有していてもよい。装置10はディスプレイを有していてもよい。装置10の電子機器は、図示されている回路基板62に配線で接続されていてもよく、又、プログラミング可能なマイクロプロセッサー(図示せず)によって制御されていてもよいことは当業者にとって自明のことであろう。
【0044】
制御素子および他の電子機器は、ハンドル36及びプランジャー16の本体に含まれていてもよい。プランジャー16は、第1の端部64と第2の端部66を有するプランジャーハウジング62を含んでいてもよい。ハウジング62の部分64及び66は、コントローラー52及び電源80が配置される中空の内部を形成する。端部キャップ65は、内部の部材を所定の位置に保持するようにプランジャー16の第1の端部20で構成される。端部キャップ65は、バレル18の内部シール28と密閉係合するためのシール28を伴って構成されていてもよい。端部キャップ65は、バレル18とプランジャー16とが順にはめ込まれるような係合を制御するように構成されていてもよい。プランジャーハウジング部材64及び66は、ナット、ボルト、ワッシャ、位置決めネジ等の本技術分野で知られている金属製品(ハードウエア)68を締めつけることによって固定される。プランジャー16の半分の部材およびバレル18のような装置10の他の部品はプラスチックの成形品から作られていてもよく、動作状態で互いに接続されてもよい。接続は種々の方法で達成でき、例えば、これに限定されないが、接着またはほかの結合材、溶着、圧着、超音波による結合、熱による結合などが挙げられる。ハウジングの半体は、圧着、スナップ止め等の係合構造を有していてもよい。締め付け部材68は公知のあらゆる種類の部材が使用できる。個々の構成部材は、本発明の教示を実施するための種々の方法、組合せで作られていてもよいことは、当業者には自明であろう。ある実施態様において、電子部品および制御部品はバレル18内に配置してもよい。更に他の実施態様において、電子部品および制御部品は、プランジャー16又はバレル18とは別のハウジング又はモジュールないに配置してもよい。
【0045】
プランジャー16及びバレル18は、ガラス、ステンレススチール、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン塩素化ポリ塩化ビニル、シリコン、エチレン−プロピレンターポリマー、フッ素化ポリマー材料(ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレン)等のような実質的に剛性な適当な材料から成る。装置10を形成する材料は、物質処理モジュール40によって行われる物質処理の種類に対して、適切な機能を有するべきである。例えば、物質処理モジュール40がオゾン発生器の場合、物質と接触するプランジャー16、バレル18及び他の部材は、オゾンに曝された祭に上記の不活性材料で作られるべきものである。物質が熱によって処理される場合、使用する熱の温度範囲で耐えられる材料とすべきである。同様に、前駆体物質が紫外線によって処理される場合、ハウジングは紫外線に対する適応が必要である。
【0046】
物質処理モジュール40はプランジャー16の端部20内に配置してもよい。ある実施態様において、物質処理モジュール40は、カソード70、アノード72及び電解質を有する電気化学的セル40である(図3参照)。チップ40は、プランジャー16内に構成される空洞(キャビティー)69内に配置される。物質処理モジュール40はプランジャーに同軸上にあり、プランジャー16の第1の端部20及びバレル18の第2の端部26によって規定される室14に連通し開放している。更に、物質処理モジュール40は装置10のハウジング12に関連して、いかなる適当な場所に配置してもよいことは理解できるであろう。ハウジング12がプランジャー16/バレル18の組合せで形成される場合、物質処理モジュール40は、プランジャー16の第1の端部20と第2の端部22の間、またはバレル18の第1の端部24と第2の端部26の間のいかなる適当な場所に配置してもよい。更に、物質処理モジュール40は、装置10の外側面のいかなる適当な場所に配置してもよく、また、物質処理モジュール40は、装置に非接続で連通するように装置の外部に配置してもよい。
【0047】
物質処理モジュール40はコロナ放電装置であってもよい。また、物質処理モジュール40は紫外線(UV)光源であってもよい。これらの実施態様において、電源80、電子回路54及び56、回路基板62、ケーブル60及びコントローラー52は、コロナ放電装置やUV光源の適切な機能を発揮する様に変更されるであろう。例えば、UV光源装置用の場合、電子機器は、波長約200nmから約700nm又は約140nmから約200nmの光線を供給する必要がある。
【0048】
本発明の他の要旨として、物質処理モジュール40は、オゾン化されたゲル及び加熱素子を貯蔵する開放容器であり、加熱素子の活性により、ゲルの温度が上昇し、ゲルからオゾン−酸素混合物が脱着するような構成であってもよい。オリーブオイルを介してオゾン散布し、そしてオリーブオイルを冷却することによってゲルが構成される。オリーブオイルは約−15℃から約10℃の温度に冷却される。物質処理モジュール40の種類は、本発明の教示を実施するために、単独でも、必要であれば組合せて使用されてもよいことは、当業者にとって自明であろう。
【0049】
排出口46に接続しているニードル48は、処理された物質の送出に応じて如何なる所望の材料、長さ又はゲージであってもよい。ある実施態様において、処理された物質は、治療効果のある酸素−オゾン混合物であり、以下にその詳細を説明する。酸素−オゾン混合物が椎間板脱離部分に送出される場合、ニードル48はChiba社ニードル又はFranceenニードル或いはこの分野での他の適切なニードルである。
【0050】
図3は、本発明の物質処理モジュール40の詳細図を示す。物質処理モジュール40は、カソード70、アノード72及び電解質74から成る電気化学的セルである。電解質74の少なくとも一部は、カソード70とアノード72との間に配置される。電源(図示せず)は、電線76の手段により、カソード70及びアノード72の間に電圧を付与する。この実施態様において、物質処理モジュール40は電気化学的オゾン発生器である。酸素または空気前駆体物質は、酸素−オゾン混合物が生成するように物質処理モジュール40で相互反応する。アノード72において、水の電解および酸素とオゾンの生成により、混合物が物質処理モジュール40の構成である電気化学的せるから放出される。ある実施態様において、電流が約3Vから約12Vの間の印加電圧と供に使用される。他の実施態様において、約2Vから約10Vの間の印加電圧が使用される。
【0051】
図4は、物質処理モジュール40の他の実施態様を示す。物質処理モジュール40はコロナ表面放電器である。この実施態様において、誘電体174は対電極170及び172の間に配置される。電線176を使用して放電電極170と誘導電極172とを接続する。電極が高純度アルミナ又はシリカの誘電体174内に入れられる。ある実施態様において、電極170及び172は、特にこれに制限されないが、タングステン、白金、ニクロム、ステンレススチール又はこれらの組合せを含む。高周波高電圧電源から2つの電極170及び172に印加する場合、安定な高周波表面コロナ放電が電極170上に行われる。
【0052】
別の実施態様において、より従来的な方法である間隙からの放電を使用し、ガラス誘電体および低周波高電圧電源を使用したコロナ物質処理モジュール40を使用する。この構成において、装置10は酸化ガスの形状でガスを生成するために使用される。例えば、室14(図1を参照)は、原料ガスを純粋な酸素ガスの形状で含んでいてもよい。約1/10kHzから約1000kHzの周波数で、装置40から電場発生部を介して酸素含有ガスを透過させることによって、酸素−オゾン混合物がコロナ放電装置40から放出される。ある実施態様において、周波数約20kHzから約60kHzを使用する。電流は約1kVから約20kVの間の印加電圧と供に使用され、より好ましくは、約3kVから約6kVの間の印加電圧が使用される。
【0053】
図5(a)及び図5(b)は、本発明の装置10を図示したものである。図5(a)において、バレル18を満たすためにプランジャー16の第1の端部が後寄りに配置される、装置10の充填状態を示す図である。一方、図5(b)は、プランジャー16の第1の端部20が、バレル18の第2の端部の近傍に位置するように実質的にバレル18内に配置される装置10の投薬状態を示す図である。バレル18内のプランジャー16の可動範囲は、上記の充填状態から投薬状態までであり、プランジャー16に形成されている溝17によって規定される。ストップ(止め)19がバレル18に形成され、溝17内に配置されてバレル18の最大充填容量を制御する。他の実施態様において、バレル18の充填および送出容積の両方を制御するために、複数の止め19を導入することも出来る。バレル18内のプランジャー16の可動は、本分野で公知の種々の方法によって達成できることは当業者に自明であろう。図1に関連して上述したように、プランジャー16の第1の端部およびバレル18の第2の端部は、室14または貯蔵室を形成する。室14の容積は、プランジャーが充填状態から投薬状態に移動するにつれて減少する。
【0054】
使用時において、装置10は、室(図1が最も見やすい)が所定量の物質を保持できるように設定する。本明細書を通じて参照される前駆体物質は、装置によって処理される如何なる容積の物質であってもよい。ほとんどの実施態様において、前駆体物質は、有効薬剤を発生させるために装置で処理される液体、気体、ゲル又はこれらの組合せである。排出口46又は排出口に装着されるニードル等を前駆体物質供給源につけ、プランジャー16を充填位置の方に引くことにより、前駆体物質を室14内に導入する。前駆体物質は、装置10に接続されている又は装置10から離れている外部供給源から室14に充填されてもよい。前駆体物質は包装前に室14に充填されても、使用者が装置10を得た後に充填されてもよい。前駆体物質を装置10又は室14に充填する方法が種々あることは、当業者には自明であろう。
【0055】
前駆体物質としては、特に制限されないが、空気、酸素、水、窒素、二酸化炭素、塩素、臭素およびこれらの組合せが挙げられる。更に、以下の塩溶液を単独または組合せて含んでもよい。塩溶液としては、例えば、NaI、NaF、NaCl、NaBr等が挙げられる。ある実施態様において、前駆体物質は、特に制限されないが、少なくともH、Li、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+又はこれらの組合せの1種または2種の1価または2価のカチオンを含む。他の実施態様において、前駆体物質は、特に制限されないが、F、Cl、Br、I、SO2−、NO2−、CO2−、O2−、S2−、CHCOO(酢酸イオン)又はこれらの組合せの1種または2種の1価または2価のアニオンを含む。
【0056】
前駆体物質は、気体、液体、ゲル、固体またはこれらの組合せの形状であってもよい。例えば、前駆体物質が塩、氷または他の固体形状であってもよい。ある実施態様において、前駆体物質は液体またはゲル中に懸濁分散する粒子形状の固体である。処理された物質は、更なる処理、更なる有効薬剤の生成のため、或いはある種の有効薬剤において濃度を高くして生成させる前駆体物質が処理された物質を含んでいてもよい様な場合、リサイクルされてもよいことは当業者に自明であろう。それ故、プローブ及び組織を処理する方法はモジュールを含み、有効薬剤を生成するための工程を含んでいてもよく、又は後続反応の一部として有効薬剤となるような有効薬剤の構成要素を含んでいてもよい。
【0057】
スイッチ42(図1及び図2参照)を接続状態として電源80(図2参照)を起動させることによって装置10を起動し、室14内で物質処理モジュール40と前駆体物質との相互搬送を開始する。物質処理モジュール40の種類にもよるが、装置10の作動により、出発の処理によって処理された物質が生成し、有効薬剤を生成する。例えば、物質処理モジュール40がコロナ発生器の形状のオゾン発生器であり、前駆体物質が酸素であれば、装置10の作動により、物質処理モジュール40は室14中に酸素を相互反応する場を発し、それにより有効薬剤としてのオゾン/酸素混合物が生成する。一度オゾン発生サイクルが完成されれば、プランジャー16は押下げられて排出口46からオゾンを送出する。注目すべき点は、ある実施態様において、プランジャー16の1工程が、完全に押下げられた時に、物質処理モジュール40が、実質的に接触することなくバレル18の第2の端部26に近接してもよい。
【0058】
本明細書を通じて使用されるが、処理された物質は、装置10の作動による何らかの方法において変化または改変されている物質であってもよい。それ故、前駆体物質および処理された物質という語は、装置10の単一の動作の異なる場面における物質を参照する。上記の例を使用し、前駆体物質が酸素であり、物質処理モジュール40がオゾン発生器である場合、装置10の作動により、オゾンと酸素との混合物から成る処理された物質を生成する。この混合物が貯えられ、そして後に第2の処理のために装置に充填される場合は、この処理された物質は装置10の第2の処理のための前駆体物質となる。
【0059】
処理された物質は、患者に投与されるべき所望の治療薬である。処理された物質は、特に制限が無いが、オゾン、酸素、一酸化窒素(窒素酸化物)、塩素、フッ素、二酸化塩素、ヨウ素、二酸化炭素、臭素、二酸化臭素、酸素ラジカル、水酸基、イオン化酸素、エネルギー処理された酸素およびこれらの組合せが例示される。処理された物質の少なくとも一部は前駆体物質を含んでいてもよい。処理された物質は、更に、不活性ガスを含んでいてもよく、その例としてはこれらに制限されないが、窒素、ヘリウム、二酸化炭素および/またはこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
図6(a)は装置310の他の実施態様を示す。装置310は、プランジャー(ピストン)316と、前駆体物質を保持する室314を規定するバレル(シリンダー)318とから成る。プランジャー316は、第1の端部320と第2の端部322とを有する。バレル318は第1の端部324を有し、当該第1の端部324は、プランジャー316がバレル318を可動出来るように係合してプランジャー316の第1の端部320を受け入れるための開口部である。バレル318は、第2の端部326を有する。バレル318の第2の端部326は、室314のための排出口346として機能する排出口346の構成を有する。ニードル(針)348は、第1の端部382と第2の端部384とを有する。ニードル348の第2の端部384は、ルアー(Luer)接続または他の機械的接続法を使用して接続されてもよい。
【0061】
この実施態様において、物質処理モジュール40はニードル348内に位置するか、ニードル348それ自身でもよい。図6(b)は、線A−Aに沿った図6(a)の断面図を更に見やすくしたものであり、図6(c)は領域Bの拡大図であり、ニードル348は、治療剤との形として処理材料を作るための電気化学的セルを介する流体に使用されるものである。電気化学的セルニードル348はアノード370及びカソード372を有する。電源380に接続された電線376によって電流をアノード370及びカソード372に流す。室314は前駆体物質または前駆体あるいは電解質374が充填される。ここに示される他の実施態様としては、物質処理もモジュール340と前駆体物質との間の電気化学的反応は電極また電解液を選択することによって調節することが出来る。電極370及び372は、電極370及び372の間の電気酸化/電気還元反応の電気化学的反応速度に影響を及ぼす。
【0062】
電源は、アノード370及びカソード372の分極化を開始し、室314から落ちてニードル348の内部に入る前駆体それ自身を電気酸化または電気還元して治療剤を発生させる。他の実施態様において、アノード370はニードルの金属壁である。アノード370及びカソード372は全ての実施態様において逆に設定してもよい。上述のように、印加される電源電圧および/または電流のタイミング及びコントロールは、物質処理モジュール40によって作られる有効薬剤の量をコントロールし、これは手動制御であっても自動制御(例えば、プログラミング可能なマイクロプロセッサーによる制御)であってもよい。
【0063】
それぞれの操作に関し電線を室314の内部に印刷された導電体とすることが出来ることは当業者に自明であろう。ある実施態様において、電線376は絶縁され、電極370及び電極372は導電体であり、所望の有効薬剤を選択できる。ガス状前駆体に関しては、電極370及び電極372は、ニードル348内にタングステン、白金、ステンレススチール、ニクロム又はアルミニウムで形成されてもよい。ニードル348内の物質処理モジュール40は、通常の間隙間の放電を行うに類似のコロナ放電装置として、組立てられていてもよいことは当業者に自明であろう。このような構成において、ニードルは、高電圧電極上のガラス誘電を使用し、低周波高電圧による電源付与されるガス処理モジュールであってもよい。液体前駆体においては、類似の電極を使用してもよいが、低電圧による電力供給でよく、誘電体のような高圧電極は必要としない。
【0064】
図7(a)は本発明に従った他の実施態様による装置410を示す。装置410は、前駆体物質を保持する室414を規定するプランジャー416及びバレル418を有する。プランジャー416は第1の端部420及び第2の端部422を有する。バレル418は第1の端部424を有し、当該第1の端部424は、プランジャー416がバレル418を可動出来るように係合してプランジャー416の第1の端部420を受け入れるための開口部である。バレル418は、第2の端部426を有する。バレル418の第2の端部426は、室414のための排出口446として機能する排出口446の構成を有する。ニードル(針)448は、第1の端部482と第2の端部484とを有する。ニードル448の第2の端部484は、ルアー(Luer)接続または他の機械的接続法を使用して接続されてもよい。
【0065】
この実施態様において、物質処理モジュール40はニードル348である。図7(b)は、線A−Aに沿った図7(a)の断面図を更に見やすくしたものであり、図7(c)は領域Bの拡大図であり、ニードル448は、治療剤としての形として処理材料を作るための電気化学的セルを介する流体に使用されるものである。電気化学的セルニードル448はアノード470及びカソード472を有する。電源480に接続された電線476によって電流をアノード470及びカソード472に流す。室414は前駆体物質または前駆体あるいは電解質374が充填される。
【0066】
この実施態様において、ニードル448は電極470及び電極472を収納し、有効薬剤をその場で、換言すれば体内で作るために使用される。この実施態様において、追加の電解質が室414に供給されていてもされていなくてもよい。この実施態様において、有効薬剤と成り得る処理物質をその場で発生させ、体液流により接近させるために、電極470及び電極472は開口部486を超えて伸びていてもよい。処理物質がニードル448の端部486を超えて発生させられるので、プランジャー416/バレル418の構成は特に規定されないことは自明であろう。しかしながら、プランジャー416をバレル418に押し込むことによって追加の食塩水や他の液体前駆体を、乾燥した部分または多くの物質を有さない患者の体内に部分に供給するために、シリンジ型の形状を有することが望ましい。ニードルの第1の端部482は、電極470及び電極472の挿入時の損傷から保護するために、保護シールド又は覆い(図示せず)を有してもよい。
【0067】
図8(a)は本発明の実施態様に従った電気化学的プローブ512の断面概略図を示す。電気化学的プローブ512は、ハンドル518中に支持されるニードル515を有する。ハンドル518は、取扱を容易にするために反対位置の指と接触する1対のグリップ524、525を伴う指板521のシリーズと同じである。図8(a)には図示しないが、ハンドル518は、上述の前駆体物質および/または有効薬剤を追加供給するためのシリンジを有していてもよい。また、ハンドル518は、図1〜7(c)に記載の実施態様に関連して記載される装置10、310、410の何れかと置換えることも出来る。例えば、ニードル515は、排出口46、346、446の何れかと流通して支持されることが出来る。電源528は、電池または他のDC出力を含んでいてもよく、ハンドル518内に支持されるように示される。ハンドル518は、更に、図1〜7(c)の装置に記載される電子部品と同様に、プローブ512の機能制御のための電子部品を有していてもよい。
【0068】
ニードル515は、ハンドル518をルアー又は他の機械的接続手段により接続するための頭部534を有する第1の端部531を有する。ハンドル518は、摩擦による嵌め込み、ネジ止め又は他の接続手段によりニードルを受け入れるソケット529を有していてもよい。更に、頭部534は、ハンドル518無しでプローブを操作される場合のハンドルとしての機能を有してもよい。いかなる場合でも、第1及び第2の線または電線537、538は、電源528に伸びている又はニードルとは別の電源に伸びている絶縁された電線であってもよい。第1の電線527は、1対の電極の第1電極を供給するためのニードルへの電源の1つの端子に接続される。第2の電源538は、第2電極541のための他の電源端子に接続される。第2電極541は、1つ以上の絶縁体544で第1の電極(ニードル515)から絶縁される。図示されるように、第2の電極541は、ニードル515の中空内部に配置され、絶縁体544は、ニードル515の内壁から第2電極を受け入れ、配置する貫通開口部547を有する。
【0069】
ニードル515はチップ553を有する第2の端部を有する。図8(a)に示す実施態様において物質処理モジュール556はチップ553の中に配置される。物質処理モジュール556は、電解質を第1の電極(ニードル515)と第2の電極541との間に配置するのを容易にするように適応する。物質処理モジュールは種々の気候の何れかによって前駆体物質を充填する。例えば、ニードル515はチップ553に毛細管現象によって流体を引き込むように流体中につけてもよい。その代わりに又は付加的に、吸収膜または吸収材559を第1及び第2電極515、541間に配置し、前駆体物質を物質処理モジュール556に引き込む助けとしてもよい。他の機構として前駆体物質をチップ553を介して引き込むために、プランジャーによって付与される吸引を含んでもよい。また、前駆体物質は上記の実施態様に関連して記載された前駆体物質と同様に第1の端部531を介して圧力または重力によって供給されてもよい。
【0070】
図8(b)は、図8(a)のA−Aに沿った断面概略図を示す。吸収材559は、種々の形状を取り得る。しかしながら、図8(b)において、吸収材は曲がって示され、第1及び第2電極515、541の間に関連して取付けられ、摩擦または曲げ弾性によって支持される。他の構成も制限無く取り得る。例えば、第2電極はニードル515内の中心に位置し、吸収材はチューブ状の芯に形成できる。
【0071】
ある実施態様において、電解質は流体である。流体は組織内からの又は組織外の外部供給源からの水であってもよい。水は分かれて水素ガス及び酸素ガスを生じる。第1電極515がカソードである場合、吸収材559の界面および第1電極515に水素が形成される。酸素およびオゾンガスは、アノードおよび吸収材559と第2電極541との間の界面において形成される。また、第1電極515がアノードの場合、酸素およびオゾンガスは、ニードル515の側壁を介して主開口部562及び補助開口部565から標的とする組織に排出できるようにする。この構成において、カソードとしての第2電極を有し、水素ガスは、絶縁体544中の開口部568を介してニードル515の第1の端部531の軸方向に向けて排出できる。水素ガスの放出を容易にするため、補助開口部565と類似の追加の開口部を、ニードル515の長さ方向に沿って設けてもよい。電解質は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又は他のアルコール、グリコール等の有機溶媒であってもよい。
【0072】
図9(a)は、本発明の実施態様に従った電気化学的プローブ571の横断面線図を示す。プローブ571はニードル574とハンドル518とを有していてもよい。また、ニードル574は、上記の図8(a)に関する記載のように、他のハンドルを利用しても、また、ハンドル無しとすることも出来る。ハンドル518は、指板528及び指取っ手52、525を有する。ハンドル518は、電源528及び電子部品を格納してもよい。ハンドル518は、ニードル574の頭部534を受け入れるためのソケット529を形成してもよい。ハンドルはプランジャーとバレルを有するシリンジを有していてもよく、又、使用中にプローブ571の操作を容易にするためのハンドルとしての主機能を有していてもよい。
【0073】
図9(a)のニードル574は、図8(a)及び8(b)のニードル515に対して、ニードル574が電極の1つで無い点が異なる。むしろ、図9(a)のニードル574は、ニードル574の内部に両方とも配置される第1の電極577及び第2の電極578を有する。電線537、538は、それぞれ、第1及び第2電極577、578と電源528の端子を結ぶ。1つ以上の絶縁体581は、第1及び第2電極577、578を受用し、両電極同士およびニードル574の内壁と接触しないようにする。構造的に、ニードル574は実質的に上述のニードル515と同じである。その代わりに、ニードル574は、第1及び第2電極577、578のための場所を提供していることが構造的な違いである。絶縁体581は図8(a)に関連して示され記載される絶縁体と類似である。図示されるように、絶縁体581は、ニードル574の長さ方向の軸に沿ってガスを放出できる通路584を有する。
【0074】
図9(a)に示すように、ニードル574は、第1の端部531及び第2の端部550を有し、これらは、図8(a)に関連する同じ語で記載されているものと機能的にも構造的にも類似している。第2の端部550は、第1及び第2電極577、578の配置の理由により、構造的に異なるチップ587を有していてもよい。しかしながら、図9(a)のチップ587は、図8(a)に示すのと類似の軸端部を貫通する主開口部562と補助開口部590とを有していてもよい。
【0075】
図8(a)のニードル515において、図9(a)のニードルチップ587が、種々の方法の何れかにおいて電解質を充填できるような物質処理モジュール593を格納している。吸収膜または吸収材596は、第1及び第2電極577、578の間に配置してもよく、電解質の保持および、吸収材596と第1及び第2電極577、578との間の電解質の反応が起こる界面において反応場表面積を増加させる働きがある。それ故、吸収膜または吸収材596は、少なくともある種の電解質およびある種の電解反応を容易にし及び/又は高める界面を形成する。
【0076】
図9(b)は、図9(b)のA−A断面に沿った横断面線図を示す。図に示すように、吸収材596は、摩擦または、吸収膜または吸収材596の曲げ弾性によって支持されてもよく、第1及び第2電極577、578の間に、物質処理モジュール593から吸収材が不意に落ちないように保持してもよい。更に、第1及び第2電極577、578は、平面形状を有し、吸収材596及び/又は電解質に棒電極よりも広い界面を供給出来るような形状であってもよい。
【0077】
電極577、578はニードル574の内部に別々のヨウ素として配置されているように示されているが、ニードルの外側に1つまたは両方の電極を配置してもよく、及び/又は、ニードルの構造と一体化していてもよい。例えば、ニードル574の内側および/または外側の表面上に電極を印刷することが出来る。この場合の電極は、絶縁層によりお互いを絶縁するか、それ自身が絶縁体であるニードルを使用することが出来るが、どちらの実施態様においても、絶縁体はニードルから導電体を絶縁する。電気化学的プローブは絶縁体中に通路を有してもよい。通路はニードル中に配置してもよい。通路は、ニードル及び/又は絶縁体を介して電気化学的プローブの外への電解生成物の通り道としての機能を有する。ニードルはまた、流体が組織とニードルとを連通する開口部を複数有していてもよい。
【0078】
図10(a)は、上記と類似の符号を付した構成要素を有する本発明の実施態様に従った電気化学的プローブ602の横断面線図を示す。例えば、指板521および指グリップ524、525を有するハンドル518は、図8(a)及び図9(a)に示すそれと同じである。電源528は、ハンドル518の中に同様に格納される。しかしながら、線または電線537、538は、ニードル605の長さとほぼ同じくらいに長く広げられている。ニードル605は、図8(a)及び図9(a)に示す実施態様のニードルとは異なった形状をとる。図10(a)のある実施態様において、第1及び第2電極608、609は、ニードル605と一体化してもよい支持体612上に配置され、支持される。また、支持体612は別に形成され、ニードル605の第2の端部618におけるチップ615内に設置されてもよい。この場合、支持体612は、物質処理モジュール618を形成する補助として機能してもよい。上述の絶縁体に設ける開口部と類似の1つ以上の開口部(図示せず)を、電解中の気体および/または液体の排出を容易にするために、支持体を介して設けてもよい。これらの開口部は、物質処理モジュール618において、選択的に一つの電気化学的生成物の排出を促進し、一方で他の電気化学的生成物を蓄積させるために設けられてもよい。瓦斯などの処理された物質は、主開口部562又は補助開口部621を介して標的組織に送出されてもよい。上述の実施態様と同様に、電極608、609の間に吸収膜または吸収材624を配置してもよい。
【0079】
図10(b)は、図10(a)のA−A断面に沿った横断面線図を示す。吸収材624は、電極608、609の間に、摩擦または、吸収膜または吸収材624の材料の曲げ弾性によって支持されてもよい。電解は、上述と同様に容易である。
【0080】
図11(a)は、電気化学的プローブの他の実施態様の部分断面線図(図10(a)の破線領域Bの他の実施態様に対応)を示す。図11(a)の実施態様において、ニードル627は、ニードル627の末端633において又はその近傍で支持体630を支持する。それ故、この実施態様において、物質処理モジュールは非常に小さく出来るか又は存在しなくてもよい。むしろ、図11(a)の実施態様において、第1及び第2電極636、637は、支持体630中に支持される。支持体630は、末端633において又はその近傍に面を有し、電極636、637はその面およびニードル627から若干突出している。この構成において、電解は標的組織それ自身の中で実質的に起こる。そうでない場合、図11(a)の実施態様は図10(a)の実施態様と類似になる。
【0081】
図11(b)は、図11(a)の断面A−Aに沿った横断面線図である。それ故、電極636、637は、電極間に吸収材を配置せず離れて配置されているように示される。
【0082】
図12(a)〜(c)は、図8(a)〜11(b)に示される実施態様の何れかに置換してもよい代替実施態様の横断面線図である。電極に関して種々の構成が実施し得る。例えば、図12(a)は第1のチューブ状電極640及び第2の棒状電極641を示し、棒状電極641はチューブ状電極640の内側に同心円状に配置されていることを示す。吸収材644は、電極640、641の間の電解質の保留を容易にするためにチューブ状に形成される。図12(b)は、外側の弓形第1電極647及び内側の棒状第2電極648の構成を示す。図12(c)は、U字通路型第1電極654及び平板第2電極655を有する長方形ニードル651を示す。これらの如何なる構成であっても吸収膜や吸収材が適合する。図12(a)〜(c)に示される構成は、図8(a)〜11(b)に示される実施態様のいかなる組合せにおいて、その全て又は一部を制限なく応用してもよい。
【0083】
有効薬剤を組織に送出する方法の操作のそれぞれに関し、その機能を以下に説明するが、本方法の他の実施態様においても、より多くの又はより少ない操作を使用して同様な機能として実施されてもよい。更に、本方法のある実施態様が、ここに記載される機能よりも多くて又は少なくて実施されてもよい。本方法が、ここに記載されるものと異なる構成要素を有してもよい様な他の装置において実施されてもよい。それ故、以下の方法の実施態様の記載は例示であって、記載されている構成要素は、上記の装置や器具に関して記載されている構成要素と一致させる必要は無い。
【0084】
図1〜7(c)に示す装置および類似の装置を使用するに関し、携帯型投薬装置を使用した物質の投与方法を記載する。上述の投与装置または器具10、310、410は、物質投与に使用される。本方法は、室14、314、414内に前駆体物質を供給する工程を有する。物質処理モジュール40、340、440を作動させる。室14、314、414内に供給された前駆体物質は物質処理モジュールにより処理され、処理された部室を生成する。ニードル48、348、448は体内に挿入される。処理された物質は、装置10、310、410又は室からニードルを介して体内に投与される。図8(a)〜12(c)の実施態様のプローブ512、571、602を使用した方法は、前駆体物質を供給する工程を省略してもよいことを除いては実質的に同じである。
【0085】
ある実施態様において、前駆体物質としては、特に制限されないが、空気、酸素、水、窒素、二酸化炭素、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、およびこれらの組合せが挙げられる。更に、以下の塩溶液を単独または組合せて含んでもよい。塩溶液としては、例えば、NaI、NaF、NaCl、NaBr等が挙げられる。塩は、特に制限されないが、少なくともH、Li、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+又はこれらの組合せの1種または2種の1価または2価のカチオンを含む。他の実施態様において、前駆体物質は、特に制限されないが、F、Cl、Br、I、SO2−、NO2−、CO2−、O2−、S2−、CHCOO(酢酸イオン)又はこれらの組合せの1種または2種の1価または2価のアニオンを含む。
【0086】
塩溶液は、酸の水素を金属に置換して形成されることについては当業者には自明であろう。
【0087】
ある実施態様において、本方法は、一対の電極に低周波電圧を印加する工程を有する。本発明において、低周波は0〜200kHzの範囲の周波数範囲を意味する。低周波はDC電圧も含む。最適周波数は電気化学的プローブの抵抗−電気容量(R−C)時間定数や波形の種類によって導かれる。波形は単純な単極正方、三角、サイン波形またはより複雑な2極波形である。本方法は、更に、その一対の電極に低周波電圧を印加することによって体内の組織内でその場で電解を行う工程を含む。その方法のある実施態様においては、電解質を電極内に留保するために吸収膜559、596、624を配置する工程を含む。
【0088】
本方法のある実施態様において、有効薬剤は、酸素、オゾン及び酸素イオンの少なくとも1つを形成することにより組織に付与させる。その代りに又は付加的に、本方法の実施態様において、電気酸化および電気還元の少なくとも1つの工程を含む。また、酸化または還元は、電解の生成物によって非直接的に生じてもよい。ある実施態様に従えば、組織の材料のその場での電解は、プロテオグリカン又は他の組織の構成要素の電気酸化および電気還元の少なくとも1つを生じさせる工程を有する。標的組織の化合物の酸化および/または還元は、標的組織からより簡単に消失または除去できる気体や他の生成物を生成する効果を有する。これは、標的組織の炎症を起こした領域における容積や圧力を減少させる効果を有することが出来る。
【0089】
本方法のある実施態様において、吸収膜または吸収材559、596、624は少なくとの一部が、水などの標的組織からの流体で満たされている。ある組織は他の組織に比べてより容易に水分が抜けやすい傾向がある。それ故、ある応用において、吸収膜559、596、624が満たされる前に、その組織を小さくする必要がある。水の抽出を容易にする目的で、組織を小さくするために、より高い上記の電圧および/または高周波電圧を実施してもよい。また、吸収膜559、596、624は、少なくとも一部が組織の外部の供給源からの流体に満たされていてもよい。すなわち、体外または体の別の部分からの水が、吸収膜559、596、624内および/または標的組織それ自身で分解するために供給されてもよい。吸収膜559、596、624はまた、少なくとも一部がメタノール、エタノール、イソプロパノール、又は他のアルコール、グリコール等の有機溶媒で満たされていてもよい。
【0090】
ある実施態様において、低周波電圧を印加する工程は、1〜30Vの範囲の電圧を印加することを含む。他の実施態様において、本方法は、1〜6Vの範囲の電圧を印加する。更に、別の実施態様において、本方法は6〜12Vの低周波電圧を印加する。脱水および酸化/還元反応を生じるための電圧は0kHz〜200kHzの範囲の周波数を有する電圧を印加する工程を含む。ある実施態様において、低周波電圧は約0kHz〜約50kHzの間の範囲で印加する。ある実施態様において、周波数範囲は約0.05kHz〜約5kHzの間の範囲である。他の実施態様において、周波数範囲は約0.1kHz〜約1kHzの間の範囲である。
【0091】
図1〜7(c)の実施態様に関し、物質処理モジュール40を作動させる工程は、スイッチを接続させる工程は、スイッチを接続にして電源から電力を物質処理モジュールに供給する。本方法は、物質処理モジュールを手動または自動で停止させる工程を含む。本方法は、更に、モジュール40又は装置10をいつ停止させるかを決定するための物質処モジュールによって処理された物質の量を検知する工程を含む。これは、ディスプレイによって監視することによって達成される。同様の操作は、図8(a)〜12(c)のプローブ512、571、602のためのスイッチ(図示せず)を接続にすることによっても達成できる。類似の監視は、プローブ512、571、602でもじっしされる。更に、処理された物質の量を検知するために、1つ以上のセンサー658、659を電極と電解質との間の界面に配置してもよい。例えば、プローブの電子装置で重量%の分析を行うため、オゾン及び/又は酸素センサーを使用して検知し、信号を送ってもよい。センサーは、他の場所に配置してもよく、特に制限はない。
【0092】
水の分解を含む態様において、酸素、オゾン及び/又は酸素イオンの発生を制御するために、これらのパラメーターは変更してもよい。上述のように、オゾンの場合は、例えば、アノードにおいて又はその近傍に1つ以上のセンサー658、659によって監視することが出来る。センサー658、659は、重量%を決定する分析機器と連結または含んでいてもよい。圧力は圧力センサー又は圧力計によって測定してもよい。1つ以上の温度測定装置は、熱電対線、薄膜または厚膜熱電対、抵抗器、抵抗温度検知器(RTD)、又は他の温度測定装置の形であってもよい。センサー又は測定装置からの信号は、回路またはコンピューター読取り可能媒体における所定のロジックを使用した電子制御器に接続し、オゾン発生レベルを制御する電圧またはその他のパラメーターを調節してもよい。
【0093】
ある実施態様において、ハウジングが、バレル18、318、418内に可動係合するプランジャー16、316、416の構成を有するシリンジの場合、薬剤の投与は、処理された物質がニードルを介して体内に送出されるようにプランジャーをバレルと関連して動かす工程を含んでもよい。
【0094】
多数の記載された実施態様により、組織内でその場で電解反応を生じさせることが出来るが、異なる実施態様の間で電解による効果は異なってもよく、またその効果を使用中に調節してもよい。更に、装置や器具のある実施態様においては、ここに記載された器具の全て又は一部を含んでいてもよく、更に他の構成要素を含んでいてもよい。同様に、本方法の実施態様、は記載した装置およびプローブ中の構成要素を組合せて使用してもよい。例えば、所定の実施態様で、自動化および携帯性によっては、コントローラー、コンピューター読取り可能媒体および/または別電源を有していても有していなくてもよい。
【0095】
本明細書を通じて、「1つの実施態様」、「ある実施態様」または類似の語は、記載された要旨、操作、構造、性質が少なくとも1つの実施態様において実施されることを意味する。それ故、本明細書を通じて、「1つの実施態様において」、「ある実施態様において」または類似の語は、必ずしも同じ実施態様として参照される必要はない。
【0096】
更に、記載された実施態様の要旨、操作、構造または性質は、種々の適切な方法によって組合わされてもよい。それ故、電極形態、ハウジング形態、支持体形態、通路形態、触媒形態など数多くの詳細な記載は、本発明の数多くの実施態様の理解を与えるであろう。例えば、図10(a)〜11(b)の支持体612、630は、シリカ、アルミナ又は他の公知のチップ形成材料から成る群から選択される1つ以上の材料を有する電子チップとして形成されてもよい。しかしながら、ある実施態様では、特定の詳細部分または他の要旨、操作、部品、材料などの1つ以上を有さずに実施してもよい。他の事例において、公知の構造、材料または操作は、簡潔性および明瞭性の目的で少なくともいくつかの図において記載または示されていない。
【0097】
以上、本発明の具体例を図解し記載したが、本発明は、記載し図示されている部材の特定の形状や配列に限定されない。本発明の権利範囲は請求の範囲およびその均等範囲によって規定されるべきである。
【0098】
更なる詳述無しでも、当業者は、上述の記載を利用して、本開示を最大限まで拡張できると信ずる。ここに記載されている実施例および実施態様は単なる例示であって、本発明の開示の要旨を限定するものでは内と理解されるべきである。ここに記載されている本発明の基本理念を大きく逸脱することなく上述の実施態様の詳細を変更できることは当業者には自明であろう。換言すれば、本明細書に記載される実施態様の種々の変更および改良も本発明の請求の範囲内である。本発明の範囲は、添付の請求の範囲によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を処理する方法であって、身体中の組織に1組の電極を挿入する工程と、当該1組の電極に低周波電圧を印加する工程と、1組の電極に低周波電圧を印加することにより身体中の組織内に、その場で電気分解を生じさせる工程とから成ることを特徴とする組織の処理方法。
【請求項2】
その場で電気分解を生じさせる工程が、水素および水素イオンの少なくとも1つを形成すること及び酸素、オゾン及び酸素イオンの少なくとも1つを形成することにより組織を脱水する工程から成る請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
その場で電気分解を生じさせる工程が、組織の物質の電気酸化を生じさせる工程から成る請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
その場で電気分解を生じさせる工程が、組織の物質の電気還元を生じさせる工程から成る請求項1に記載の処理方法。
【請求項5】
その場で組織の物質の電気分解を生じさせる工程が、プロテオグリカンの電気酸化および電気還元の少なくとも1つを生じさせる工程から成る請求項1に記載の処理方法。
【請求項6】
更に、上記1組の電極間に吸収性膜を配置する工程と、吸収性膜の少なくとも一部を液体で満たす工程と、吸収性膜に吸収された液体を電解する工程とを含む請求項1に記載の処理方法。
【請求項7】
吸収性膜の少なくとも一部を液体で満たす工程が、吸収性膜の少なくとも一部を組織からの水で満たす工程である請求項6に記載の処理方法。
【請求項8】
吸収性膜の少なくとも一部を液体で満たす工程が、吸収性膜の少なくとも一部を組織の外部供給源からの水で満たす工程である請求項6に記載の処理方法。
【請求項9】
吸収性膜の少なくとも一部を液体で満たす工程が、吸収性膜の少なくとも一部を有機溶媒で満たす工程である請求項6に記載の処理方法。
【請求項10】
更に、上記1組の電極間に前駆体物質を配置する工程と、当該前駆体物質を電解して有効薬剤または有効薬剤構成成分を形成する工程を含む請求項1に記載の処理方法。
【請求項11】
前駆体物質が、空気、酸素、水、窒素、二酸化炭素、塩素、臭素およびこれらの組合せから選択される請求項10に記載の処理方法。
【請求項12】
前駆体物質が、NaI、NaF、NaCl、NaBrおよびこれらの組合せから選択されるから選択される塩溶液から成る請求項10に記載の処理方法。
【請求項13】
前駆体物質が、H、Li、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つのカチオンを有する塩から成る請求項10に記載の処理方法。
【請求項14】
前駆体物質が、F、Cl、Br、I、SO2−、NO2−、CO2−、O2−、S2−、CHCOO、及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つのカチオンを有する塩から成る請求項10に記載の処理方法。
【請求項15】
前駆体物質が、気体、液体、ゲル、固体およびこれらの組合せの形状を有する請求項10に記載の処理方法。
【請求項16】
印加される低周波電圧が1〜30Vの範囲である請求項1に記載の処理方法。
【請求項17】
印加される低周波電圧が1〜6Vの範囲である請求項1に記載の処理方法。
【請求項18】
印加される低周波電圧が6〜12Vの範囲である請求項1に記載の処理方法。
【請求項19】
印加される低周波電圧の周波数が約200kHz未満である請求項1に記載の処理方法。
【請求項20】
印加される低周波電圧の周波数が約0kHz〜約50kHzの範囲である請求項1に記載の処理方法。
【請求項21】
印加される低周波電圧の周波数が約0.1kHz〜約1kHzの範囲である請求項1に記載の処理方法。
【請求項22】
身体中の組織を貫通するための先端部を有するニードルと;当該ニードルと連結し、当該ニードルの先端部内に配置され、第1電極および第2電極から成り、当該第1電極および第2電極間の電解質を電解する物質処理モジュールと;上記第1電極および第2電極に連結し、上記第1電極および第2電極に低周波電圧を供給する電源とから成る組織を処理するための電気化学的プローブ。
【請求項23】
更に、上記第1電極および第2電極の間に吸収性膜が配置され、当該吸収性膜の少なくとも一部が電解質を含むことが出来るように構成されている請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項24】
上記吸収性膜が芯から成り、電解質が液体から成る請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項25】
上記液体が組織からの水から成る請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項26】
上記液体が組織の外部供給源からの水である請請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項27】
上記液体が有機溶媒である請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項28】
物質処理モジュールが、組織の物質の電気酸化および電気還元の1つを生じさせる電気化学的セルである請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項29】
低周波電圧の操作周波数が約200kHz未満である請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項30】
上記第1の電極が少なくともニードルの部分を有する請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項31】
更に、電源と第1電極および第2電極の1つとの間に配置される電導体と、ニードル内に配置され、上記電導体とニードルとを絶縁する絶縁体とを有する請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項32】
更に、絶縁体内に通路を有する請求項31に記載の電気化学的プローブ。
【請求項33】
更に、ニードルを通じて電気化学的プローブの外に電解生成物の通過を行えるような、ニードル内に少なくとも1つの通路を有する請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項34】
更に、組織とニードルとの間を液体が流通するためのニードル内に複数の開口部を有する請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項35】
更に、ニードルの先端部内に支持される基板を有し、当該基板の上に第1電極および第2電極が配置される請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項36】
電解質が、空気、酸素、水、窒素、二酸化炭素、塩素、臭素およびこれらの組合せから選択される請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項37】
電解質が、NaI、NaF、NaCl、NaBrおよびこれらの組合せから選択されるから選択される塩溶液から成る請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項38】
電解質が、H、Li、Na、K、NH、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つのカチオンを有する塩から成る請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項39】
電解質が、F、Cl、Br、I、SO2−、NO2−、CO2−、O2−、S2−、CHCOO、及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つのカチオンを有する塩から成る請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項40】
電解質が、気体、液体、ゲル、固体およびこれらの組合せの形状を有する請求項22に記載の電気化学的プローブ。
【請求項41】
当該ニードルと連結し、当該ニードルの先端部と第1電極から成る身体中の組織を貫通するためのニードルと、当該ニードルの先端部またはその近くに配置される第2電極と、上記第1電極および第2電極に連結し、上記第1電極および第2電極間に低周波電圧を印加する電源とから成る組織を処理するための電気化学的プローブ。
【請求項42】
更に、電解プロセス中に電解質を保持するための上記ニードル内に配置される芯を有する請求項41に記載の電気化学的プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−515154(P2011−515154A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500900(P2011−500900)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/037413
【国際公開番号】WO2009/117425
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(508011511)セラマテック・インク (29)
【Fターム(参考)】