説明

電気化学表示素子

【課題】応答速度が高く、消費電荷量の少ない電気化学表示素子を提供する。
【解決手段】一対の対向する電極間に、銀塩化合物を含有する電解質層を有し、かつ、該を銀イオンの状態と析出銀の状態になるように該一対の対向する電極の駆動操作を行う表示素子であって、該電解質層中に、析出銀の上に自己組織化膜を形成しうる化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする電気化学表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学表示素子に関し、さらに詳しくは、電気化学的な表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は、必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション(以下、EDと略す)方式が知られている。ED方式は、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されて(例えば、特許文献1〜4参照)いる。
【0007】
本発明者は、上記各特許文献に開示されている技術を詳細に検討した結果、応答速度・消費電荷量に大きな課題があることが判明した。加えて、応答速度・消費電荷量の課題に対して、一切の言及がなされていない。上記課題に対して、電解質中に析出促進剤として、エチレンチオ尿素を含む電気化学表示素子が開示されて(例えば、特許文献5参照)いる。しかしながら、上記特許文献に開示されている技術を詳細に検討した結果、応答速度の向上・消費電荷量の低減が、いまだ不十分であることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,240,716号明細書
【特許文献2】特許第3428603号公報
【特許文献3】特開2003−241227号公報
【特許文献4】特開2005−266652号公報
【特許文献5】特開2005−338515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、応答速度が高く、消費電荷量の少ない電気化学表示素子(以後、単に表示素子ともいう)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0011】
1.一対の対向する電極間に、銀塩化合物を含有する電解質層を有し、かつ、該銀塩化合物を銀イオンの状態と析出銀の状態になるように該一対の対向する電極の駆動操作を行う表示素子であって、該電解質層中に、該析出銀の上に自己組織化膜を形成しうる化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする電気化学表示素子。
【0012】
2.前記自己組織化膜を形成しうる化合物が下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記1記載の電気化学表示素子。
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、Rは、炭素数13〜20の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、パーフルオロアルキル基のいずれかである。Lは、2価の連結基である。Zは含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表す。nは0〜5の整数を表す。Rは水素原子、もしくは置換基を表す。〕
3.前記一般式(1)のRが、直鎖アルキル基であることを特徴とする前記2記載の電気化学表示素子。
【0015】
4.前記一般式(1)のZが、トリアゾール環であることを特徴とする前記2又は3記載の電気化学表示素子。
【0016】
5.前記一般式(1)で表される化合物が、電解質層の総質量に対して5%以上、30%以下の質量比で、電解質層に含有されることを特徴とする前記2〜4のいずれか1項記載の電気化学表示素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、析出銀上に自己組織化膜を形成しうる化合物を少なくとも1種含むことで、銀塩化合物の溶解と析出がスムーズとなり、応答速度が向上し、消費電荷量が低減する電気化学表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を更に詳しく説明する。
【0019】
以下、本発明の表示素子について、具体的に説明する。但し、本発明は以下の例に限定されるものではなく、従来公知の構成も適宜付加することができ、本発明の要旨を何ら逸脱しないものとする。
【0020】
〔表示素子の基本構成〕
本発明の表示素子は、一対の対向する電極を有しており、表示部に近い表示側電極にはITO電極等の透明電極、他方の対向電極には銀電極等の金属電極が設けられている。両電極間には、銀塩化合物を含有する電解質層が設けられており、両電極間に正負両極性の電圧を印加することで、銀塩化合物の酸化還元反応が行われ、析出銀(黒化銀)の状態(還元状態)と、透明な銀イオンの状態(酸化状態)を可逆的に切り替えることができる。
【0021】
本発明の表示素子は、該電解質層中に、析出銀の上(以後、析出銀上とも言う)に自己組織化膜を形成しうる化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする。
【0022】
以下、構成要素について順次説明する。
【0023】
〔析出銀上に自己組織化膜を形成しうる化合物〕
本発明に係る自己組織化膜とは、自己組織化単分子膜(Self Assembled Monolayer)の略であり、析出銀上に高い配向性を有する化合物を配向形成させた膜のことをいう。本発明に係る析出銀上に自己組織化膜を形成しうる化合物は、析出銀と相互作用する部位と、析出銀と相互作用しない部位が連結された化合物である。自己組織化膜の膜圧は、析出銀と相互作用しない部位の大きさにより、容易に調節できる。また、自己組織化膜の形成は、特開2005−172982号記載の方法により、確認できる。
【0024】
析出銀上に自己組織化膜を形成しうる化合物の詳細な作用については、以下のように考えられるが、この原理に限定されるものではない。
【0025】
電圧を印加して表示側電極表面に銀塩化合物を析出させたとき、該化合物の析出銀と相互作用する部位が析出銀に吸着し、析出銀と相互作用しない部位が析出銀表面と垂直方向に配向することで、自己組織化膜を形成する。そのため、析出銀が電極表面と垂直方向に大きく成長することが抑制され、析出銀の電極表面と水平方向への成長が促される。これにより析出が一定濃度に達するまでに要する時間が短縮され、黒化速度が向上する。また、析出が一定濃度に達するまでに消費される電荷量は析出銀の析出量に比例するため、消費電荷量を低減させることができる。一方、逆電圧を印加して析出銀を溶解させたときは、必要な析出銀の溶解量が少ないため、白化速度も向上する。
【0026】
析出銀上に自己組織化膜を形成しうる化合物は、析出銀と相互作用する部位と、析出銀と相互作用しない部位が連結された化合物であれば特に限定されないが、硫黄原子又は窒素原子は銀と配位結合可能なので、析出銀と相互作用する部位は、硫黄原子又は窒素原子を含むことが好ましい。一方で、析出銀と相互作用しない部位は、硫黄原子又は窒素原子を含まないことが好ましい。以下に、析出銀上に自己組織化膜を形成しうる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
【化2】

【0028】
【化3】

【0029】
析出銀上に自己組織化膜を形成する化合物としては、析出銀と強く相互作用する前記一般式(1)で表される化合物が特に好ましい。
【0030】
前記一般式(1)で表される化合物は、硫黄原子と含窒素複素環が、析出銀と相互作用する部位であり、Rが析出銀と相互作用しない部位である。また、Lは両者の連結基である。前記一般式(1)で表される化合物の硫黄原子と含窒素複素環が析出銀と強く相互作用することは、特開2005−266652号に記載されている。
【0031】
一般式(1)において、Zを構成成分とする含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。析出銀上に自己組織化単分子膜を形成させるには、トリアゾール環が特に好ましい。
【0032】
一般式(1)において、Rは、炭素数13〜20の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、パーフルオロアルキル基のいずれかである。
【0033】
脂肪族炭化水素基としては、アルキル基(例えば、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等)、アルケニル基(例えば、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等)、アルキニル基(例えば、ヘキサデシニル基、オクタデシニル基等)等が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキサデカニル基等)等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、ピレニル基等が挙げられる。パーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロトリデシル基、パーフルオロヘキサデシル基、パーフルオロオクタデシル基等が挙げられる。
【0034】
析出銀上に自己組織化膜を形成させるには、炭素数が少なすぎると自己組織化膜を形成できないので、炭素数13以上が適している。一方で、炭素数が多すぎると溶媒への溶解度が低下してしまうので、炭素数20以下が適している。特に、炭素数13〜20の直鎖アルキル基が好ましい。
【0035】
一般式(1)において、Rは、水素原子もしくは置換基である。置換基としては、特に制限は無いが、例えば下記の様な置換基が挙げられる。
【0036】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0037】
一般式(1)において、Lは、2価の連結基である。特に制限はないが、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフチレン基等)である。またはそれらと−O−、−CO−、−COO−、−CONH−、−SO−、等との複合基でもよい。さらに、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基等の置換基を有していてもよい。
【0038】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

【0041】
電極上での銀塩化合物の析出・溶解がスムーズに行われるためには、析出銀上に自己組織化膜を形成する化合物の添加量は、電解質層の総質量に対して1%以上、50%以下の質量比であることが好ましい。さらに好ましくは電解質層の総質量に対して5%以上、30%以下の質量比である。
【0042】
〔銀塩溶剤〕
本発明に於いては銀塩の溶解析出を促進するために、銀塩溶剤を用いることができる。銀塩溶剤とは、電解質中で銀を可溶化できる化合物であればいかなる化合物であってもよい。例えば、銀イオンと配位結合を生じさせような、銀塩化合物と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀塩化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基を含有する化合物及びメルカプトアゾール類は、銀塩化合物を可溶化する効果が高く、共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴がある。
【0043】
本発明の銀塩溶剤は限定されないが、下記一般式(2)で表される化合物が特に好ましい。
【0044】
【化6】

【0045】
前記一般式(2)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表す。nは0〜5の整数を表す。Rは水素原子、または置換基を表す。nが2以上の場合、それぞれのRは同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0046】
一般式(2)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH、N(CH、N(C、N(CH1225、N(CH1633、N(CHCH等が挙げられる。
【0047】
一般式(2)のZを構成成分とする含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0048】
一般式(2)のRは、水素原子、もしくは置換基である。置換基としては、特に制限は無いが、例えば下記の様な置換基が挙げられる。
【0049】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0050】
次に、一般式(2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物2−12、2−20が好ましい。
【0054】
〔銀塩化合物〕
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または、銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0055】
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
【0056】
本発明に係る電解質に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質液の安定性が向上する。
【0057】
〔ハロゲンイオン、金属イオン濃度比〕
本発明の表示素子においては、電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Metal](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0058】
式(1):0≦[X]/[Metal]≦0.1
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Metal]が0.1よりも大きい場合は、金属の酸化還元反応時に、X→Xが生じ、Xは析出した金属と容易にクロス酸化して析出した金属を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属銀のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[Metal]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0059】
〔有機溶媒〕
溶媒としては、一般に電気化学セルや電池に用いられ、本発明で用いられるエレクトロクロミック化合物を初め、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩化合物、プロモーター等各種添加剤を溶解できる溶媒であればいずれも使用することができる。
【0060】
具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、アセチルアセトン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、プロピオニトリル、ブチロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、メチルピロリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、エチルジメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリス(トリフフロロメチル)ホスフェート、トリス(ペンタフロロエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、4−メチル−2−ペンタノン、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート、及びエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリエチレングリコール類などが使用可能である。
【0061】
さらに、常温溶融塩も溶媒として使用可能である。前記常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示す。常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
【0062】
本発明に用いる電解質溶媒としては、非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートが好ましい。溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
【0063】
本発明において、特に好ましく用いられる溶媒は下記一般式(S1)、(S2)で表される化合物である。
【0064】
〔一般式(S1)、(S2)で表される化合物〕
本発明の表示素子においては、電解質が、下記一般式(S1)または(S2)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0065】
【化9】

【0066】
式中、Lは酸素原子またはアルキレン基を表し、Rs11からRs14は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0067】
【化10】

【0068】
式中、Rs21、Rs22は各々アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0069】
はじめに、一般式(S1)で表される化合物の詳細について説明する。
【0070】
前記一般式(S1)において、Lは酸素原子またはCHを表し、Rs11からRs14は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表し、これらの置換基は更に任意の置換基で置換されていても良い。
【0071】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0072】
以下、一般式(S1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0073】
【化11】

【0074】
次いで、本発明に係る一般式(S2)で表される化合物の詳細について説明する。
【0075】
前記一般式(S2)において、Rs21、Rs22は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0076】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0077】
以下、一般式(S2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0078】
【化12】

【0079】
上記例示した一般式(S1)及び一般式(S2)で表される化合物の中でも、特に、例示化合物(S1−1)、(S1−2)、(S2−3)が好ましい。
【0080】
本発明に係る一般式(S1)、(S2)で表される化合物は電解質溶媒の1種であるが、本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲でさらに別の溶媒を併せて用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0081】
さらに本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electrolytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0082】
本発明において、電解質溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、全電解質溶媒質量の10質量%以上、90質量%以下が好ましい。特に好ましい電解質溶媒は、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒である。プロピレンカーボネート比が7/3より大きいとイオン伝導性が劣り応答速度が低下し、3/7より小さいと低温時に電解質が析出しやすくなる。
【0083】
〔白色散乱物〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0084】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0085】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0086】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0087】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0088】
本発明においては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン系化合物を好ましく用いることができる。
【0089】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0090】
本発明の水系高分子の平均分子量は、重量平均で10,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは30,000〜500,000の範囲である。
【0091】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0092】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタンが好ましく用いられ、特に無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えてトリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンがより好ましく用いられる。
【0093】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0094】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0095】
多孔質白色散乱層の膜厚は、5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0096】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高い化合物が好ましく用いられ、水/アルコール系溶剤との混合比は、質量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0097】
〔電解質〕
本発明の電解質組成物において用いることができる支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類が使用できる。
【0098】
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用できる。
【0099】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
【0100】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、(CHNSOCF、(CNSOCF、(n−CNSOCF
更には、
【0101】
【化13】

【0102】
等が挙げられる。
【0103】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等が挙げられる。また、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0104】
本発明の支持電解質としては、4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級スピロアンモニウム塩が好ましい。
【0105】
電解質塩の使用量は任意であるが、一般的には、電解質塩は溶媒中に上限としては20モル/L以下、好ましくは10モル/L以下、さらに好ましくは5モル/L以下存在していることが望ましく、下限としては通常0.01モル/L以上、好ましくは0.05モル/L以上、さらに好ましくは0.1モル/L以上存在していることが望ましい。
【0106】
〔固体電解質、ゲル電解質〕
本発明に係る電解質は、溶媒やイオン性液体から成る溶液状の電解質以外にも、実質的に溶媒を含まない固体電解質や高分子化合物を含有した高粘度な電解質やゲル状の電解質(以下、ゲル電解質)を用いることができる。
【0107】
本発明に適用可能な固体電解質、ゲル電解質としては、例えば、特開2002−341387号公報に記載の固体電解質、特開2002−341387号公報に記載のポリマー固体電解質、特開2004−20928号公報に記載の高分子固体電解質、特開2004−191945号公報に記載の高分子固体電解質、特開2005−338204号公報に記載の固体高分子電解質、特開2006−323022号公報に記載の高分子固体電解質、特開2007−141658号公報に記載の固体電解質、特開2007−163865号公報に記載の固体電解質、ゲル電解質等を挙げることができる。
【0108】
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0109】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0110】
本発明の表示素子において、増粘剤として好ましいのは、平均重合度100〜500のポリエチレングリコールであり、電解質層の有機溶媒に対して質量比で5〜20%の範囲で添加するのが好ましい。
【0111】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、透明基板であることが好ましく、このような透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板などが好ましく用いられる。本発明に用いられる透明な基板とは、可視光に対する透過率が少なくとも50%以上の基板をいう。
【0112】
また、対向基板としては、例えば、金属基板、セラミック基板等の無機基板など不透明な基板を用いることもできる。
【0113】
〔電極〕
本発明に用いられる一対の対向する電極は、表示側に位置する電極(以下、表示側電極と称す。)と電解質層を挟んで逆側に位置する電極(以下、対向電極と称す。)からなる。
【0114】
「表示側電極」
表示側電極には、少なくとも可視光を透過する透明電極が用いられる。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0115】
また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリセレノフェニレン等、およびそれらの修飾化合物を単独あるいは混合して用いることができる。
【0116】
表示側電極の導電性を示す表面抵抗値としては、100Ω/以下が好ましく、10Ω/以下がより好ましい。電極の厚みには特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0117】
「透明多孔質電極」(導電性のあるもの)
表示側電極の表面に、ナノ多孔質構造を有するナノ多孔質電極を設けることができる。このナノ多孔質電極は、表示素子を形成した際に実質的に透明で、エレクトロクロミック色素等の電気活性物質を担持することができる。
【0118】
本発明でいうナノ多孔質構造とは、層中にナノメートルサイズの孔が無数に存在し、ナノ多孔質構造内を電解質中に含まれるイオン種が移動可能な状態のことを言う。
【0119】
このようなナノ多孔質電極の形成方法としては、ナノ多孔質電極を構成する微粒子を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで層状に形成した後に、所定の温度で加熱、乾燥、焼成することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法などが挙げられる。また、ゾルゲル法や、Adv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、形成することができる。
【0120】
ナノ多孔質電極を構成する微粒子の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物やカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等の炭素電極から選択することができ、好ましくは、ITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物から選択されることである。
【0121】
ナノ多孔質電極が透明性を有するためには、平均粒子径が5nm〜10μm程度の微粒子を用いることが好ましい。微粒子の形状は不定形、針状、球形など任意の形状のものを用いることができる。
【0122】
ナノ多孔質電極の膜厚は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜5μmの範囲である。
【0123】
「対向電極」
対向電極は、表示色に関与することなく用いることができるため、電気を通じるものであれば、特に制限されず用いることができる。
【0124】
表示側電極に用いられる材料と同じ材料に加え、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金、カーボン等、透明性を有しない材料でも好ましく用いることができる。
【0125】
「多孔質カーボン電極」(特殊)
吸着担持可能な多孔質炭素電極としては、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体や、ホウ素、窒素、りん等を炭素にドープして焼成した炭素化合物、等が挙げられる。炭素粒子の形状としては、メソフェーズ小球体、繊維状黒鉛が挙げられる。メソフェーズ小球体はコールタールピッチなどを350〜500℃で焼成することで得られ、これら小球体をさらに分級して高温焼成で黒鉛化すると良好な多孔質炭素電極が得られる。また、ピッチ系、PAN系、および気相成長繊維から、繊維状黒鉛を得ることができる。
【0126】
「補助電極」
本発明に係る一対の対向する電極のうち少なくとも一方の電極に、補助電極を付帯させることができる。
【0127】
補助電極は、主となる電極部より電気抵抗が低い材料を用いることが好ましい。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金等を好ましく用いることができる。
【0128】
補助電極は、主となる電極部と基板との間と、主となる電極部の基板と反対側の表面とのいずれに設置することもできる。いずれにしても、補助電極が主となる電極部と電気的に接続していればよい。
【0129】
補助電極の配置パターンには、特に制限はない。直線状、メッシュ状、円形など、求められる性能に応じて適宜形成することが可能である。主となる電極部が複数の部分に分割されている場合には、分割された電極部同士を接続する形で設けてもよい。ただし、主となる電極部が表示側の基板に設けられた透明電極の場合、補助電極は、表示素子の視認性を阻害しない形状と頻度で設けることが求められる。
【0130】
補助電極を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フォトリソグラフィー法でパターニングしたり、印刷法やインクジェット法、電解メッキや無電解メッキ、銀塩感光材料を用いて露光、現像処理してパターン形成する方法でも良い。
【0131】
本発明の補助電極パターンのライン幅やライン間隔は、任意の値で構わないが、導電性を高くするためにはライン幅を太くする必要がある。一方、透明電極に補助電極を付帯させる場合には、視認性の観点から、表示素子観察側から見た補助電極の面積被覆率は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0132】
このように透過率と導電性の点から、補助電極のライン幅は1μm以上、100μm以下が好ましく、ライン間隔は50μmから1000μmが好ましい。
【0133】
(電極の製法)
表示側電極および対向電極を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基板上にスパッタリング法等でマスク蒸着するか、全面形成した後に、フォトリソグラフィー法でパターニングしてもよい。
【0134】
また、電解メッキや無電解メッキ、印刷法や、インクジェット法によっても電極形成が可能である。
【0135】
インクジェット方式を用いて基板上にモノマー重合能を有する触媒層を含む電極パターンを形成した後に、該触媒により重合されて重合後に導電性高分子層になりうるモノマー成分を付与して、モノマー成分を重合し、さらに、該導電性高分子層の上に銀等の金属メッキを行うことにより金属電極パターンを形成することもでき、フォトレジストやマスクパターンを使用することがないので、工程を大幅に簡略化できる。
【0136】
電極材料を塗布にて形成する場合は、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。
【0137】
インクジェット方式の中でも、下記の静電インクジェットは高粘度の液体を高精度に連続的に印字することが可能であり、本発明の透明電極や金属補助電極 の形成に好ましく用いられる。インクの粘度は、好ましくは30mPa・s以上であり、更に好ましくは100mPa・s以上である。
【0138】
(静電インクジェット)
本発明の表示素子においては、一対の対向する電極の少なくとも1方が、帯電した液体を吐出する内部直径が30μm以下のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル内に溶液を供給する供給手段と、前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段とを備えた液体吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
【0139】
さらに前記ノズル内の溶液が当該ノズル先端部から凸状に盛り上がった状態を形成する凸状メニスカス形成手段を設けた吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
【0140】
また、前記凸状メニスカス形成手段を駆動する駆動電圧の印加及び吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を行わせつつ液滴の吐出に際して前記凸状メニスカス形成手段の駆動電圧の印加を行わせる第一の吐出制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい。
【0141】
また、前記凸状メニスカス形成手段の駆動及び吐出電圧印加手段による電圧印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記凸状メニスカス形成手段による溶液の盛り上げ動作と前記吐出電圧の印加とを同期させて行う第二の吐出制御部を有することを特徴とする液体吐出装置を用いること、前記動作制御手段は、前記溶液の盛り上げ動作及び吐出電圧の印加の後に前記ノズル先端部の液面を内側に引き込ませる動作制御を行う液面安定化制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい形態である。
【0142】
この様な静電インクジェットを用いて電極パターンを作製することにより、オンデマンド性に優れ、廃棄材料が少なく、寸法精度に優れた電極を得ることができ有利である。
【0143】
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電子絶縁層を設けることができる。
【0144】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物の様な比誘電率が低い無機材料の多孔質体、等が挙げられる。
【0145】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気するなどして発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0146】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0147】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0148】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0149】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0150】
〔スクリーン印刷、表示素子作製方法〕
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解するなどしてペースト状にして用いることが望ましい。
【0151】
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。表示素子とするには、基板間に電解質組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、一方の基板に電解質組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
【0152】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0153】
〔商品適用〕
本発明の表示素子の製造方法で作製される表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、ワンタイムパスワード、電子ブック、携帯電話のカバー等各種機器の筐体装飾、キーボード表示、電子棚札、電子POP、電子広告等が挙げられる。特に大画面の表示が求められる電子ブック、電子広告、電子POP等の製造に有効である。
【実施例】
【0154】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0155】
実施例1
《電解液1の作製》
ジメチルスルホキシド(DMSO)5g中にp−トルエンスルホン酸銀を0.3g添加し、次いで化合物2−12を0.6g、析出銀上に自己組織化膜を形成しうる化合物1を1g、p−トルエンスルホン酸スピロ−(1,1′)−ビピロリジニウムを0.1g、をそれぞれ添加、溶解、混合した後、二酸化チタンを3g添加、分散して電解液1を得た。
【0156】
《電解液2〜26の作製》
析出銀上に自己組織化膜を形成しうる化合物1及びその添加量を表1のように、それぞれ変更した以外は電解液1と同様にして、電解液2〜26を作製した。
【0157】
《電極の作製》
非表示側(対極側画素)電極
4cm×5cmサイズの駆動回路基板の表面ITO開口部に、同パターンで厚み1000nmになるように、公知の方法で銀パラジウム薄膜を形成した。必要電極開口部以外の部分はアクリル樹脂系の絶縁膜を厚み500nmになるように形成して、非表示側電極を形成した。
【0158】
表示側電極
公知の方法で4cm×5cmサイズの無アルカリガラス(厚み1.5mm)表面にITOを厚み800nmとなるように形成した。
【0159】
《表示素子1〜26の作製》
上記非表示側電極の周辺部の上に、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系シール剤を印刷した後、上記電解液1〜26をそれぞれ非表示側電極の中央部に滴下した。その後、真空貼り合わせ装置内を真空状態にして、上記表示側電極ITOガラスと非表示側電極と重ねて、端部をシール材で貼り合わせた後、10mW/cmのUV光を1分間照射してシール材を硬化し、表示素子1〜26を作製した。
【0160】
《表示素子の評価》
〔応答速度・消費電荷量の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した各表示素子の両電極を接続し、まず電圧印加前の反射率(R)を計測した。
【0161】
その後、表示側の電極に−1.5Vの電圧を印加しながら、電圧印加後の反射率(R)をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。
【0162】
/R=10となる時間を、黒化時間と定義し、それまでの消費電荷量を測定した。
【0163】
その後、表示側の電極に1.5Vの電圧を印加し、反射率が当初のRとなるまでの時間を白化時間と定義し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0164】
【表1】

【0165】
表1に示したように、析出銀の上に自己組織化膜を形成しうる化合物を用いた表示素子1〜24は、該化合物を含まない表示素子25よりも白化・黒化速度が向上し、消費電荷量が低減した。このことから、該化合物を用いることにより、白化・黒化速度が向上し、消費電荷量を低減させる効果があることがわかった。また、特開2005−338515号に明記されているエチレンチオ尿素を用いた表示素子26は、黒化速度の向上、消費電荷量の低減は見られたものの、本発明の表示素子程の効果は得られなかった。
【0166】
中でも良好な結果を示したのは表示素子9〜23であり、該化合物として、一般式(1)で表される化合物が好ましいことがわかった。特に良好な結果を示したのは、表示素子12、13、14、16、17であり、白化・黒化速度が約2〜3倍向上し、消費電荷量が約3分の1程度に低減した。このことから、一般式(1)で表される化合物のZはトリアゾール環が好ましく、Rは直鎖アルキル基が好ましいことがわかった。また、表示素子12は表示素子24よりも良好な結果を示しており、該化合物の量は電解質の量に対して5%以上含有されていることが好ましいとわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の対向する電極間に、銀塩化合物を含有する電解質層を有し、かつ、該銀塩化合物を銀イオンの状態と析出銀の状態になるように該一対の対向する電極の駆動操作を行う表示素子であって、該電解質層中に、該析出銀の上に自己組織化膜を形成しうる化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする電気化学表示素子。
【請求項2】
前記自己組織化膜を形成しうる化合物が下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1記載の電気化学表示素子。
【化1】

〔式中、Rは、炭素数13〜20の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、パーフルオロアルキル基のいずれかである。Lは、2価の連結基である。Zは含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表す。nは0〜5の整数を表す。Rは水素原子、もしくは置換基を表す。〕
【請求項3】
前記一般式(1)のRが、直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項2記載の電気化学表示素子。
【請求項4】
前記一般式(1)のZが、トリアゾール環であることを特徴とする請求項2又は3記載の電気化学表示素子。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物が、電解質層の総質量に対して5%以上、30%以下の質量比で、電解質層に含有されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載の電気化学表示素子。

【公開番号】特開2010−256436(P2010−256436A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103642(P2009−103642)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】