説明

電気化学電池用のガス拡散層の製造方法

【課題】電気化学電池用のガス拡散層を製造する方法を提供する。
【解決手段】a)典型的には水性ビヒクル中のカーボン粒子および1種もしくはそれ以上の界面活性剤を混合して、典型的には高剪断混合により予備的組成物を製造するステップと、b)低剪断力混合により、1種もしくはそれ以上の高度フッ素化ポリマーを前記予備的組成物に加え、被覆組成物を製造するステップと、c)典型的には低剪断力被覆法により、被覆組成物を導電性多孔性の基板に塗布するステップと、を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共同番号DE−FC02−99EE50582の下でDOEから授与された政府の助成を受けてなされたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、電気化学電池用のガス拡散層を製造する3ステップ方法に関し、該方法は、典型的には水性ビヒクル中で、典型的には高度剪断力混合により、炭素粒子および界面活性剤を混合するステップと、低剪断力混合により、フルオロポリマーを加えるステップと、典型的には低剪断力被覆法により、被覆組成物を導電性多孔性の基板に塗布するステップによる。
【背景技術】
【0003】
米国特許第6,127,059号には、電気化学電池に使用するためのガス拡散層を、水中でフッ素樹脂およびカーボンブラックを同時に混合することにより製造される組成物で被覆する方法が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
簡潔に述べると、本発明は、電気化学電池用のガス拡散層を製造する方法を提供し、該製造方法は、a)典型的には高度剪断力混合により、ビヒクルを炭素粒子および1種もしくはそれ以上の界面活性剤と混合して、予備的組成物を製造するステップと、b)低剪断力混合により、前記予備的組成物に1種もしくはそれ以上の高度フッ素化ポリマーを加えて、被覆組成物を製造するステップと、c)典型的には低剪断力被覆法により、導電性多孔性の基板に該被覆組成物を塗布するステップと、を含んでなる。
【0005】
当技術分野では説明されたことがなく、かつ本発明により提供されるものは、炭素/フッ素樹脂組成物を混合し、かつ被覆する3ステップ方法であって、該3ステップ方法は、炭素粒子の高剪断力処理を提供するが、フッ素樹脂の高度剪断力処理を回避する。
【0006】
本明細書では、用語の意味は次の通りである。
「ビヒクル(vehicle)」は、分散液中の微粒子を運ぶ流体を意味し、これには、典型的には水またはアルコールが含まれる。
「高度フッ素化」は、40重量%以上の、典型的には50重量%以上の、より典型的には60重量%以上の量のフッ素を含むことを意味する。
「高度剪断力混合」は、混合される流体が、200sec-1を超える、より典型的には1,000sec-1を超える剪断速度を有する剪断力ゾーンに遭遇する、混合プロセスを意味する。これは、高速度ディスクディスパーサーまたはコールズブレード(Cowles blade)を用いて十分なrpmで混合されることにより代表される。
「超高度剪断力混合」は、混合される流体が、10,000sec-1を超える、より典型的には20,000sec-1を超える剪断速度を有する剪断力ゾーンに遭遇する、混合プロセスを意味する。これは、十分なrpmで粒子摩砕または砂摩砕することにより代表される。
「低剪断力混合」は、混合される流体が、200sec-1を超える、より典型的には100 sec-1以下の、より典型的には50sec-1以下の、より典型的には10sec-1以下の剪断速度を有する剪断力ゾーンに実質的に遭遇しない、混合プロセスを意味する。これは、パドル混合、手動撹拌または高速度ディスクディスパーサーを用いた低rpm混合により代表される。
「低剪断力被覆」は、被覆される流体が、2000sec-1を超える、より典型的には1000 sec-1以下の、より典型的には500 sec-1以下の、より典型的には100 sec-1以下の剪断速度を有する剪断力ゾーンに実質的に遭遇しない、被覆プロセスを意味する。これは、3回ロール被覆により代表される。
「炭素ブリードスルー(bleed−through)」は、導電性多孔性基板の被覆されてない面上の炭素粒子の存在を指し、この炭素粒子は、典型的には肉眼で見えるような十分な量が、被覆された面から基板を通って移動したものである。
「置換」は、化学種が、所望の生成物またはプロセスを干渉しない慣用の置換基により置換されることを意味する。例えば、この置換基としては、アルキル、アルコキシ、アリール、フェニル、ハロ(F、Cl、Br、I)、シアノ、ニトロなどを挙げることができる。
【0007】
本発明の利点は、高度に分散された炭素および高度に分散されたフッ素樹脂の両方を実現する、電気化学電池に使用するためのガス拡散層に被覆する被覆組成物を製造する方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、電気化学電池用のガス拡散層を製造する方法を提供し、該製造方法は、a)典型的には高度剪断力混合により、ビヒクルを炭素粒子および1種もしくはそれ以上の界面活性剤と混合して、予備的組成物を製造するステップと、b)低剪断力混合により、前記予備的組成物に1種もしくはそれ以上の高度フッ素化ポリマーを加えて、被覆組成物を製造するステップと、c)典型的には低剪断力被覆法により、導電性多孔性の基板に該被覆組成物を塗布するステップと、を含んでなる。
【0009】
燃料電池は、水素などの燃料および酸素などのオキシダントの触媒的化合により有用な電気を発生させる電気化学電池である。典型的な燃料電池は、触媒作用のある反応部位に隣接する、ガス拡散層状または拡散/集電板層として知られている層を含む。こうした層は、導電性でなければならないが、反応物流体および生成物流体の通過を可能にすることができなければならない。典型的なガス拡散層は、触媒に隣接した表面上に炭素粒子およびフルオロポリマーの層で被覆される。本発明は、炭素/フルオロポリマー層を被覆する際の改良に関する。具体的には、本発明による方法は、ウェットアウト(wetting−out)および分散の向上をもたらす、炭素粒子の高度剪断力処理を提供するが、集塊化を引き起こす可能性がある、フッ素樹脂の高度剪断力処理を回避する。
【0010】
被覆組成物は、任意の好適な水溶性ビヒクルを使用してもよい。ビヒクルは水を含んでなり、アルコールをさらに含んでなるものでもよく、より典型的には水だけまたはアルコールだけを含んでなる。最も典型的にはビヒクルは水を単独で含んでなる。
【0011】
被覆組成物は、本明細書と同日付で出願され、同時係属中の特許出願第10/028,173号に記載されているアミンオキシド界面活性剤を含めて、任意の好適な界面活性剤または分散剤を含んでなるものでよい。好適なアミンオキシド類は、式II:R3N→O で表されるものに属していてもよい。ここで、各Rは、独立して1〜20個の炭素を含むアルキル基から選択され、該アルキル基は、場合によりエーテルおよびアルコール基を含み、さらに置換されていてもよい。上記引用文献で開示された、典型的なアミンオキシド界面活性剤は、式(I):
【化1】

で表されるアルキルジメチルアミン酸化物である。
式中、nは、9〜19またはより典型的には11〜15である。最も典型的にはnは、11または13である。式(I)で表されるアミンオキシドは、場合により置換されていてもよい。好適なアミンオキシド界面活性剤には、商品名ゲナミノックス(Genaminox)(登録商標)、アドモックス(Admox)(登録商標)、アムモニックス(Ammonyx)(登録商標)およびニノックス(Ninox)(登録商標)などの市販のものが含まれ得る。
【0012】
他の好適な界面活性剤には、トリトン(Triton)TM X100などのアルコールアルコキシラート類が含まれ得る。
【0013】
被覆組成物は、典型的には0.1〜15重量%の、より典型的には0.1〜10重量%の、最も典型的には1〜5重量%の界面活性剤を含んでなる。
【0014】
任意の好適な炭素粒子を使用することができる。用語「炭素粒子」は、本明細書で使用されるように、典型的には1〜100nmの平均サイズを有する1次粒子、典型的には0.01〜1ミクロンの平均サイズを有する、1次粒子の1次凝集体、典型的には0.1〜10ミクロンの平均サイズを有する、1次凝集体の2次凝集体、および、典型的には10ミクロンを超える平均サイズを有する、凝集体の集塊、を指すことが理解されよう。最も典型的には、用語「炭素粒子」は、1次粒子または1次凝集体を指す。典型的には、カーボンブラック、例えば、バルカン(Vulcan)XC−72(キャボット社(Cabot Corp.)、スペシャルブラック(Special Blacks)部門、ビラリカ(Billerica)、マサチューセッツ州)、シャウィニガンブラック(Shawinigan Black)、グレードC55(シェブロン・フィリップスケミカル社(Chevron Phillips Chemical Company)、LP、アセチレンブラックユニット(Acetylene Black Unit)、ベイタウン(Baytown)、テキサス州)、または、ケジェンブラック(Ketjenblack) EC300J(アクゾ・ノーベル・ケミカル社(Akzo Nobel Chemicals Inc.)、シカゴ、イリノイ州)が使用される。水溶性被覆組成物は、典型的には1〜50質量%の、より典型的には1〜20質量%の、最も典型的には5〜15質量%の炭素粒子を含んでなる。典型的には水溶性被覆組成物は、より小さい粒子が使用されている、より低質量パーセント含量の炭素粒子を含んでなる。
【0015】
炭素粒子は、予備的組成物を形成するために、典型的には高度剪断力混合によりビヒクル中に懸濁される。高度剪断力混合により、ビヒクルで改良された炭素粒子のウェットアウト(wetting−out)、並びに、改良された分散液および非集塊化が都合よく得られる。加えて、予備的組成物は、静置することを含む任意の好適な方法により、脱ガスまたは消泡してもよい。予備的組成物は、典型的には脱ガスまたは消泡した後に、超高度剪断力混合によりさらに混合することができる。
【0016】
増粘剤を予備的組成物に加えてもよい。ポリアクリレート、例えば、カーボポール(Carbopol)(登録商標)EZ−2(B.F.グッドリッチスペシャリィティケミカルズ(Goodrich Specialty Chemicals)、クリーブランド、オハイオ州)を含めて、任意の好適な増粘剤が使用できる。
【0017】
消泡剤を予備的組成物に加えてもよい。マーズ(Mazu)(登録商標)DF 210 SX(BASF社、マウントオリーブ(Mount Olive)、ニュージャージー州)などの任意の好適な消泡剤が使用できる。
【0018】
理論により拘束されることを望まずに、本発明による方法の利点は、微粒炭素の非集塊化を実現する高度剪断力混合または超高度剪断力混合が、分散液中でフルオロポリマーの集塊化を引き起こす可能性があるという事実から導かれると考えられる。本発明方法は、フッ素樹脂含有組成物の2ステップ混合および低剪断力処理を提供し、したがって、炭素粒子およびフルオロポリマー粒子の集塊化を防ぐまたは後退させる。
【0019】
任意の好適な高度フッ素化ポリマーが使用することができる。高度フッ素化ポリマーとしては、典型的にはペルフルオロ化ポリマーがあり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルキルアクリラート、ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオリド三元重合体などがある。水溶性被覆組成物は、典型的には0.1〜15質量%の、より典型的には0.1〜10質量%の、最も典型的には1〜5質量%の高度フッ素化ポリマーを含んでなる。高度フッ素化ポリマーは、典型的には水性またはアルコール性分散液として、最も典型的には水性として提供されるが、粉末として提供されてもよい。
【0020】
パドル混合などを含む任意の好適な低剪断力方法を使用して、フッ素樹脂および予備的組成物を混合し、被覆組成物を形成することができる。典型的には低剪断力混合プロセスは、100sec-1以下の、より典型的には50 sec-1以下の、より典型的には10 sec-1以下の剪断速度に、被覆組成物をさらす。
【0021】
被覆組成物を、任意の好適な導電性多孔性の基板の上に被覆することができる。典型的には、導電性多孔性の基板は、炭素繊維構造である。典型的には、炭素繊維構造は、織成されたおよび織成されてない炭素繊維構造から選択される。本発明の実施に有用な炭素繊維構造には、東レ(登録商標)炭素ペーパー、スペクトラカーブTM炭素ペーパー、AFN(登録商標)織成されてない炭素布、ゾルテックパネックス(Zoltek Panex)(登録商標)炭素布などが含まれ得る。多孔性の基板を、被覆の前に処理してもよい。典型的な処理には、PTFEなどのフルオロポリマーで処理するなどの、疎水性を増すまたは与える処理が含まれる。他の典型的な処理では、親水性を増すまたは与えてもよい。
【0022】
任意の好適な被覆方法が使用できるが、典型的には低剪断力被覆法が使用される。典型的には低剪断力混合プロセスは、100sec-1以下の、より典型的には50sec-1以下の、より典型的には10sec-1以下の剪断速度に、被覆組成物をさらす。典型的な方法には手動およびマシン方法が含まれ、手動ブラッシング、ノッチ棒被覆、流体担持ダイ被覆、巻線ロッド(wire−wound rod)被覆、流体担持被覆、スロットフェッド(slot−fed)へら被覆および3回ロール被覆がある。最も典型的には3回ロール被覆が使用される。有利には、基板の被覆された面から被覆されてない面までの炭素ブリードスルー(bleed−through)なしで、被覆が実施される。被覆は、ワンパスでまたは複数パスで実施してもよい。対応するマッドクラック(mud cracking)の増加なしで被覆量を増加させるためには、複数パスでの被覆が有用であろう。
【0023】
次いで、被覆された基板は、ビヒクルおよび界面活性剤を除去するのに十分な温度に加熱することができる。被覆された基板は、高度フッ素化ポリマーを焼結させるのに十分な温度に加熱することができる。
【0024】
得られたガス拡散層は、通常電気化学電池、例えば水素燃料電池に使用するために、任意の好適な方法により膜電極組立体に組み込まれる。このうちの多くは当技術分野で周知である。
【0025】
本発明は、水素燃料電池などの電気化学電池に使用するためのガス拡散層の製造に有用である。
【0026】
本発明の目的および利点が次の実施例によりさらに例示されるが、これらの実施例において詳述される特定の材料およびその量並びに他の条件および詳細を、本発明を不当に制限するように解釈するべきではない。
【実施例】
【0027】
特に明記しない限り、すべての試薬は、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から入手した、または市販されている。あるいは既知の方法により合成してもよい。
【0028】
実施例1
直径22.9cmの高速度ディスクディスパーサー(HSDD)で混合しながら、19.20kgのカーボンブラック・バルカンXC−72(キャボット社、スペシャルブラック部門、ビラリカ、マサチューセッツ州)を、プラスチックで裏張りした208Lドラム中の脱イオン水123.6kgに速やかに加えた。見掛け粘度の増加に伴い、HSDD rpmを徐々に増加させた。混合物が、HSDDがもはや混合物を流動させることが不可能になった点に到達したとき、および/または、隆起部が表面に確認されたとき、ゲナミノックスCST(クラリアント社(Clariant Corporation)、ファンクショナル・ケミカルズ(Functional Chemicals)、マウントホリー(Mt. Holly)、ノースカロライナ州)(水中の30重量%界面活性剤)を、HSDDにより混合物を再び流動させることができるまで1L刻みで加え、次に、ゲナミノックス CSTの残りの追加合計16.9kgを、インクリメンタルに加えた。気泡が圧潰できるように一晩静置した後、直径15.2cmの3枚ブレード・プロペラミキサを、混合物をわずかに流動させるのに十分なだけの低rpmで使用して、沈降したすべての炭素を再懸濁し、次いで、超高度剪断力混合のために、0.8〜1.9mmのSEPR型セラミック媒体50容量%の仕込量を有する13L水平媒体ミルを介して、0.95L/分およびシャフト回転1200rpmで、混合物をポンプによりくみ出した。排出された分散液には、有意ないかなる量の気泡も含まれていなかった。この分散液を、19Lプラスチック容器に保存した。
【0029】
ホリバ(Horiba)LA−910粒径分析器(ホリバインスツルメント社(Horiba Instruments Inc.)、アーヴィン、カリフォルニア州)を使用して、得られた予備的組成物の粒度分析を行った。数ベースでは、平均粒径は0.354ミクロンであり、10%が0.548ミクロンより大きく、90%が0.183ミクロンより大きかった。0.20%だけが1.000ミクロンより大きかった。
【0030】
少なくとも10ヵ月間粒径の増加が皆無であったことにより示されるように、この分散液は安定だった。へらを用いた簡単な撹拌で、最初の均質な状態に戻るのに十分であった。
【0031】
上記分散液16.229kgに、ダイネオン(Dyneon)TF 5235 PTFE分散液(60質量%PTFE)(ダイネオン LLC、アストン(Aston)、ペンシルバニア州)813.5gを加えることにより、炭素のPTFEに対する比80/20 w/wの被覆組成物を調製した。へらを用いた簡単な低剪断力手動混合で、混合するのに十分であった。
【0032】
次いで、ヒラノテクシード(Hirano Tecseed)M200LCコーターを使用して、3回ロール被覆方法により、ブリードスルーなしで、該分散液を耐湿性アブカーブ(Avcarb)1071 HCB布の上に被覆した。この3回ロール被覆方法は、普通3回ロール・ニップ供給・リバースロール・コーター(three roll nip−fed reverse roll coater)と呼ばれる。(コイル(Coyle)、D.J.、「液体フィルム被覆(Liquid Film Coating)における「ナイフおよびロール被覆(Knife and roll coating)」」第12章、シュテファンF.キスラー(Stephan F. Kistler)およびピーターM.シュバイツァー(Peter M. Schweizer)編集、チャップマン・アンド・ホール(Chapman & Hall)、大学出版局(The University Press)、ケンブリッジ、1997年、を参照されたい。)
【0033】
実施例2
直径8.9cmの高速度ディスクディスパーサー(HSDD)(直径11.4cm(4.5インチ)コールズブレード(Cowles Blade)(INDCO社)を備えたモデルHAS40A 4hp空気攪拌機)を用いて、1000rpmで混合しながら、13.2gのカーボポールEZ−2(B.F.グッドリッチ)を、実施例1の予備的組成物13.000kgの中にふるい分けた。
【0034】
攪拌機が、分散液を増粘させて、1000rpmで混合物をもはや流動させることが不可能になるまで混合を継続しながら、601.5gのダイネオン5235 PTFEに9.25gの水酸化アンモニウムを加え、炭素分散液を含有するカーボポールEZ−2にこの混合物を加えることにより、被覆組成物を調製した。使用した水酸化アンモニウムの量が、EZ−2の酸性官能基を完全に中和するのに十分だったことに留意されたい。次いで、消泡を促進するために、0.20gのマーズ(登録商標)DF 210 SX(BASF社、マウントオリーブ、ニュージャージー州)を加えた。
【0035】
次いで、ヒラノテクシードM200LCコーターを使用して、3回ロール被覆方法により、ブリードスルーなしで、該分散液を耐湿性アブカーブ1071 HCB布の上に被覆した。
【0036】
実施例3
直径7.6cmの高速度ディスクディスパーサー(HSDD)ブレード(直径7.6cm(3インチ)デザインA・コールズ・ブレード(Design A Cowles Blade)、INDCO社)を備えたモデルAS5AM 0.5hp空気攪拌機)と、直径約2.5cm(1インチ)のローターを有する空気駆動ローター−固定子(RS)攪拌機とを共に用いて混合しながら、7.6Lステンレス鋼金属ビーカー(直径23cm)中の5482gの脱イオン水に、389gのシャウィニガンブラック、グレードC55(シェブロン・フィリップスケミカル社、LP、アセチレンブラックユニット、ベイタウン、テキサス州)、並びに、687gのゲナミノックスCSTを、カーボンブラックおよび界面活性剤の全量を交互にインクリメント添加する方法を使用して、加えた。初期のHSDD rpmは約1000であり、添加の間、RS攪拌機をその速度範囲の下方端で使用した。添加の間、HSDD rpmを徐々に約1800rpmまで増加させた。添加が完了した後、RS攪拌機のrpmを最高値近くまで増加させ、両方の攪拌機を用いた混合を、これらの高剪断力の条件で2時間続けた。この時間をかけて、見掛け粘度が減少するのに伴い、HSDD rpmを約1600rpmまで減少させた。一晩静置すると大部分の気泡が壊れ、へらで撹拌すると残留していた粗い気泡が即座に壊れた。
【0037】
得られた分散液の粒径分析では、粒子数ベースで、平均粒径が0.317ミクロンであり、10%が0.555ミクロンより大きく、90%が0.138ミクロンより大きく、1.4%だけが1.000ミクロンより大きかった。
【0038】
上記分散液の追加のバッチを同じ方法により調製した。2つのバッチを混合した質量は11,449gであった。次いで、幅45cmのブレードを有するへらを用いて手動で混合することにより、305.3gのダイネオン5235 PTFE分散液を加えた。次いで、ヒラノテクシードM200LCコーターを使用して、3回ロール被覆方法により、ブリードスルーなしで、該分散液を耐湿性アブカーブ1071 HCB布の上に被覆した。
【0039】
実施例4
0.090質量%のカーボポールEZ−2を含有する一連の分散液を、次のように調製した原料分散液から調製した。4700gの脱イオン水に、7.6Lステンレス鋼ビーカー中の686gのゲナミノックスCSTを加えた。直径7.6cmの高速度ディスクディスパーサー(HSDD)(直径7.6cm(3インチ)デザインA・コールズ・ブレード(Design A Cowles Blade)、INDCO社)を備えたモデルAS5AM 0.5hp空気攪拌機)を1000rpmで、および、直径約2.5cm(1インチ)のローターを有する空気駆動ローター−固定子(RS)攪拌機を低rpmでスタートして、389gのC55アセチレンブラック(Acetylene Black)(シェブロン(Chevron))を速やかに加えた。HSDD rpmを、カーボンブラックを添加する過程で約1800rpmまで徐々に増加させた。すべての炭素を加えた後、RS rpmを、そのrpmレンジの中間まで増加させた。20分後、見掛け粘度が低減したため、HSDD rpmを1500rpmまで低下させ、RS rpmを最高値まで増加させた。これらの高剪断力の条件で2時間混合を続けた。一晩静置すると大部分の気泡が壊れ、へらで撹拌すると残留していた粗い気泡が即座に壊れた。
【0040】
30%に中和された0.09質量%のカーボポールEZ−2を含有する分散液を、次の手順を使用して調製した。直径5.08cmのHSDDを500rpmで使用して、1.00gのEZ−2および75の脱イオン水のスラリーを上記C55分散液1115gの中に混合した。次いで、0.21gの水酸化アンモニウムおよび29.7gのTFE 30グレードのPTFEフルオロポリマー樹脂(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.DuPont de Nemours & Company)、ウィルミントン、デラウェア州)の混合物を速やかに加え、500rpmのHSSDを使用して、混合物が増粘するまで混合を続けた。混合物の増粘は極めて速やかに起きた。他の分散液を、他の中和レベルで対応するやり方で調製した。
【0041】
実施例5
この分散液は、実施例4と同じ攪拌機を使用して、調製した。7.6Lステンレス鋼金属ビーカー(直径23cm)中の5000gの脱イオン水に、352gのケジェンブラックEC300J(アクゾ・ノーベル・ケミカル社、シカゴ、イリノイ州)を加えた。すべてのEC300Jを水に加え、HSDDを100rpmでおよびRSを低rpmで始めた。次いで、見掛け粘度が、HSDDが混合物をもはや流動させることができない近傍点まで増加するため、1049gのゲナミノックスCSTを、添加の間十分な時間をかけてインクリメンタルに加えた。初期のHSDD rpmは約1000であり、添加の間、空気駆動RS攪拌機をその速度範囲の下方端で使用した。EC300Jの添加の間、HSDD rpmを1500rpmまで徐々に増加させた。添加が完了した後、HSDD rpmを約1700まで増加させ、RS攪拌機のrpmを最高値近くにまで増加させた。両方の攪拌機を用いた混合を、これらの高剪断力の条件で2時間続けた。一晩静置すると大部分の気泡が壊れ、へらで撹拌すると残留していた粗い気泡が即座に壊れた。
【0042】
得られた分散液の粒径分析では、粒子数ベースで、平均粒径が0.317ミクロンであり、10%が0.555ミクロンより大きく、90%が0.138ミクロンより大きく、1.4%だけが1.000ミクロンより大きく、1.9%が1.000ミクロンより大きかった。
【0043】
上記分散液の追加のバッチを同じ方法により調製した。2つのバッチを混合した質量は10,759gであった。次いで、幅45cmのブレードを有するへらを用いて手動で混合することにより、269.5gのダイネオン5235 PTFE分散液を加えた。次いで、ヒラノテクシードM200LCコーターを使用して、3回ロール被覆方法により、ブリードスルーなしで、該分散液を耐湿性アブカーブ1071 HCB布の上に被覆した。
【0044】
当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な変更形態および改変形態が明らかであろう。本発明は、上記本明細書に記載された例示的な実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電池用のガス拡散層を製造する方法であって、
a)ビヒクル、炭素粒子および1種もしくはそれ以上の界面活性剤を混合して、予備的組成物を製造するステップと、
b)低剪断力混合により、1種もしくはそれ以上の高度フッ素化ポリマーを前記予備的組成物に加えて、被覆組成物を製造するステップと、
c)前記被覆組成物を導電性多孔性の基板に塗布するステップと、
を含んでなる、方法。
【請求項2】
1種もしくはそれ以上の高度フッ素化ポリマーを前記予備的組成物に加える前記ステップが、前記予備的組成物が、50sec-1を超える剪断速度を有する剪断力ゾーンに実質的に遭遇しない、低剪断力混合により達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1種もしくはそれ以上の高度フッ素化ポリマーを前記予備的組成物に加える前記ステップが、前記予備的組成物が、10sec-1を超える剪断速度を有する剪断力ゾーンに実質的に遭遇しない、低剪断力混合により達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ビヒクル、炭素粒子および1種もしくはそれ以上の界面活性剤を混合する前記ステップが、高度剪断力混合により達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被覆組成物を導電性多孔性の基板に塗布する前記ステップが、低剪断力被覆により達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被覆組成物を導電性多孔性の基板に塗布する前記ステップが、該被覆組成物が、50sec-1を超える剪断速度を有する剪断力ゾーンに実質的に遭遇しない、低剪断力被覆により達成される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記被覆組成物を塗布する前記ステップが、3回ロール被覆、巻線ロッド被覆、ノッチ棒被覆、および流体担持ダイ被覆よりなる群から選択される被覆法を用いて達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記被覆組成物を塗布する前記ステップが、3回ロール被覆方法により達成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記被覆組成物を塗布する前記ステップが、3回ロール被覆方法により達成される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
1種もしくはそれ以上の高度フッ素化ポリマーを加える前記ステップの前に、
d)前記予備的組成物を脱ガスする、または消泡するステップと、
e)超高度剪断力混合により前記予備的組成物をさらに混合するステップとをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
f)前記被覆組成物を塗布する前記ステップの次に、前記高度フッ素化ポリマーを焼結させるのに十分な温度まで前記導電性多孔性の基板を加熱するステップをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
g)前記被覆組成物を塗布するステップの前に、前記導電性多孔性の基板を疎水化剤で被覆するステップをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1種もしくはそれ以上の界面活性剤が、アミンオキシド界面活性剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アミンオキシド界面活性剤が、式II:
3N→O
(式中、各Rは、独立して1〜20個の炭素を含むアルキル基から選択され、前記アルキル基は、エーテル状酸素を含んでもよく、アルコール基で置換されてもよく、およびさらに置換されてもよい)で表されるアルキルジメチルアミン酸化物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アミンオキシド界面活性剤が、式(I):
【化1】

(式中、nは9〜19である)で表されるアルキルジメチルアミン酸化物である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ビヒクルが、水を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記1種もしくはそれ以上の高度フッ素化ポリマーが、水性分散液中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記予備的組成物が、増粘剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法を使用して製造される、電気化学電池用のガス拡散層。
【請求項20】
前記導電性多孔性の基板の被覆された面から前記導電性多孔性の基板の被覆されてない面まで炭素ブリードスルーを実質的に示さない、請求項1に記載の方法を使用して製造される、電気化学電池用のガス拡散層。

【公開番号】特開2011−129535(P2011−129535A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−42966(P2011−42966)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2003−555608(P2003−555608)の分割
【原出願日】平成14年9月26日(2002.9.26)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】