説明

電気吸盤

【課題】汚染物質に曝されまたは汚染物質をかくまう虞のあるねじ山、裂け目、クラック、凹部、平面またはオリフィスが存在せずかつ気密シールされるため、無菌環境またはクリーン環境で使用できる吸盤組立体を提供することにある。
【解決手段】ハウジング内のアクチュエータを備えた吸盤組立体。ハウジングにはフレキシブル吸盤が連結されている。アクチュエータの移動により、フレキシブル吸盤は少なくとも2つの位置の間を移動される。第1位置では、フレキシブル吸盤は大容積位置に移動する。第2位置では、フレキシブル吸盤は少なくとも中立容積位置に移動する。フレキシブル吸盤は、大容積位置では表面をシールし、中立容積位置では表面から解放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸盤に関し、より詳しくは、電動による押しのけ容積型吸盤に関する。
【背景技術】
【0002】
吸盤は多くの用途に使用されている。通常、吸盤は空気圧開ループ型であり、吸盤を表面上に吸引させる真空が、ベンチュリを介して発生される。空気は、ベンチュリを通って周囲大気中に排出される。これらの形式の吸盤は、これらの意図する目的にとって満足できるものであるが、クリーンルーム環境、無菌環境等で使用される場合には欠点を有している。したがって、これらの形式のシステムは、排出空気からの汚染物質が、製造される製品に大きい衝撃を与える薬品製造、電子部品製造および食品製造での使用には適していない。したがって、開ループ空気圧を使用することなく真空を吸引できる吸盤を得ることが要望されている。また、吸盤は、汚染の危険無くして殺菌、洗浄および検査できるものでなくてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明によれば、吸盤の内部から空気を吸引しかつ該空気を排出ポートオリフィスを通して周囲大気中に排出する真空発生器が省略される。本発明は、部品と接触すべき吸盤を提供する。吸盤の内容積が増大されると、吸盤内の圧力レベルは大気圧に対して低下し、吸盤内に真空を発生させて部品を持上げる。吸盤の容積はアクチュエータにより制御される。通常、吸盤は、中心位置と、後退位置すなわち大容積位置と、吸盤から部品を放出する中立位置すなわち負容積位置とを有している。本発明の装置には、汚染物質に曝されまたは汚染物質をかくまう虞のあるねじ山、裂け目、クラック、凹部、平面またはオリフィスが存在しない。本発明の装置は気密シールされるため、無菌環境またはクリーン環境で使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、電気吸盤はハウジングを有し、該ハウジング内には電気アクチュエータが設けられている。ハウジングにはフレキシブル吸盤が連結されている。吸盤は、操作すべき部品の表面と係合できる。吸盤はアクチュエータに連結されており、該アクチュエータの移動により、フレキシブル吸盤は大容積位置と、中立容積位置すなわち負容積位置との間で変形される。大容積位置では、フレキシブル吸盤は、表面をシールして吸盤内に真空を発生し、部品を持上げすなわち操作する。中立容積位置すなわち負容積位置では、フレキシブル吸盤は部品の表面から解放される。フレキシブル吸盤はハウジングにシールされる。アクチュエータは、フレキシブル吸盤に連結された3位置ソレノイドで形成できる。アクチュエータは、フレキシブル吸盤に連結された磁気ラッチ型ソレノイドで形成できる。アクチュエータは、フレキシブル吸盤に連結されたリードスクリュウを備えたサーボモータで形成できる。フレキシブル吸盤は、フレキシブル壁を更に有している。フレキシブル壁は、吸盤の変形を可能にする。アクチュエータは、フレキシブル壁に連結される取付け部を有している。吸盤にはカムレバーが連結され、該カムレバーにはアクチュエータが連結される。
【0005】
本発明の第2態様によれば、空気圧配管をもたない吸盤は、ハウジングと、該ハウジング内の電気アクチュエータとを有している。吸盤はハウジングに固定されている。吸盤は電気アクチュエータに連結されており、該アクチュエータの移動によりフレキシブル吸盤が大容積位置と中立位置または負容積位置との間で移動できる。大容積位置ではフレキシブル吸盤は、操作すべき部品の表面に当接してシールする。中立位置または負容積位置では、フレキシブル吸盤は表面から解放される。アクチュエータは、フレキシブル吸盤に連結された3位置ソレノイドで形成できる。フレキシブル吸盤はフレキシブル壁を有している。アクチュエータは、フレキシブル吸盤に連結された磁気ラッチ型ソレノイドで形成できる。フレキシブル壁は、フレキシブル吸盤の変形を可能にする。電気アクチュエータはフレキシブル壁に連結される。吸盤はハウジングにシールされ、気密シールを形成する。
【0006】
本発明の第3態様によれば、吸盤はハウジングを有し、該ハウジング内にはアクチュエータが設けられている。フレキシブル吸盤はハウジングに気密シールされている。アクチュエータは吸盤に連結されており、アクチュエータの移動により、フレキシブル吸盤は大容積位置と、中立容積位置すなわち負容積位置との間で変形される。大容積位置では、フレキシブル吸盤は、部品の表面に当接してシールする。中立容積位置すなわち負容積位置では、フレキシブル吸盤は部品の表面から解放される。アクチュエータは、電気的ソレノイドまたはサーボモータで形成できる。アクチュエータは、閉空気圧アクチュエータで形成できる。フレキシブル吸盤はフレキシブル壁を有している。フレキシブル壁は吸盤の変形を可能にする。アクチュエータは、フレキシブル壁に連結される取付け部を有している。カムレバーは吸盤に連結され、アクチュエータはカムレバーに連結されている。
【0007】
本発明の他の適用領域は、以下の説明から明らかになるであろう。この要約での説明および特定例は例示のみを目的とし、本発明の範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付図面は例示のみを目的とし、いかなる意味においても本発明の範囲を制限するものではない。
【0009】
【図1】マテリアルハンドリング装置に配置された吸盤組立体を示す斜視図である。
【図2】図1の吸盤組立体を示す側面図である。
【図3】図2の吸盤組立体が中立位置にあるところを示す断面図である。
【図4】大容積位置にある吸盤組立体を示す、図3と同様な図面である。
【図5】負容積位置にある吸盤組立体を示す、図3と同様な図面である。
【図6】中立位置にある吸盤組立体を示す、図3と同様な図面である。
【図7】大容積位置にある吸盤組立体を示す断面図である。
【図8】中立位置にある本発明の吸盤組立体の他の実施形態を示す断面図である。
【図9】大容積位置にある吸盤組立体を示す、図8と同様な図面である。
【図10】他の実施形態の吸盤組立体が中立位置にあるところを示す断面図である。
【図11】大容積位置にある吸盤組立体を示す、図10と同様な図面である。
【図12】負容積位置にある吸盤組立体を示す、図10と同様な図面である。
【図13】他の実施形態の吸盤組立体が中立位置にあるところを示す断面図である。
【図14】大容積位置にある吸盤組立体を示す、図13と同様な図面である。
【図15】負容積位置にある吸盤組立体を示す、図13と同様な図面である。
【図16】他の実施形態の吸盤組立体が中立位置にあるところを示す断面図である。
【図17】大容積位置にある吸盤組立体を示す、図16と同様な図面である。
【図18】他の実施形態の吸盤組立体が中立位置にあるところを示す断面図である。
【図19】大容積位置にある吸盤組立体を示す、図18と同様な図面である。
【図20】他の実施形態の吸盤組立体が中立位置にあるところを示す斜視図である。
【図21】大容積位置にある吸盤組立体を示す、図20と同様な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照すると、図1には、マテリアルハンドリング装置20に固定された吸盤組立体10が示されている。マテリアルハンドリングシステム20は、全体的にロボットアームとして設計されている。アームは、ベース22およびスウィングアーム部分24を有している。スウィングアーム部分24は、アームをその経路に沿う種々の位置の回りでスウィングできるようにする1対の部材26、28を有している。部材28は回転軸30を有している。回転軸30は、回転中に上下にも移動する。回転軸30にはアーム端エフェクタ32が連結されている。アーム端エフェクタ32は、回転軸30に連結されるブロック34を有している。また、ブロック34を通って軸36が突出している。軸36には端部材38が連結されている。また、端部材38には吸盤組立体10が固定されている。かくして、マテリアルハンドリング装置20は、アーム24を介して、吸盤組立体10を、吸盤が部品に取付けられる位置から、吸盤が部品から取外される放出位置へと移動させるようにプログラムされている。
【0011】
図2〜図5を参照すると、吸盤組立体10が示されている。吸盤組立体10は、ハウジング50と、フレキシブル吸盤52と、取付けリング54とを有している。ハウジング50は全体として直円筒状の形状を有するが、例えば正方形、長方形、楕円形等の種々の筒状にすることができる。フレキシブル吸盤52は、ハウジング50に対して全体として気密シールされている。取付けリング54は、全体的にねじ山が形成された複数のボア56を有している。ハウジング50からは、電気接続部58が突出している。
【0012】
ハウジング50は、内部チャンバ64を形成する壁62を有している。内部チャンバ64は、貫通ボア68を備えた取付け面66を有している。ハウジングチャンバ64内には、ソレノイド70が収容されている。ソレノイド70は一般に3位置型ソレノイドであり、図3に示すようにソレノイド70内でソレノイドアーマチャ72を心出しする心出しスプリング71を有している。ソレノイド70は、ソレノイドアーマチャ72を受入れるボア74を有している。ソレノイドアーマチャ72は、フレキシブル吸盤52に連結する取付けアーマチャ部分75を有している。吸盤52は、アーマチャの取付け部分75に接着またはモールド成形されている。ソレノイド70には、ワイヤハーネスコネクタ58に接続されたワイヤを介して電力が供給される。ソレノイド70は、後述のように、一般にオン/オフ態様で作動する。
【0013】
フレキシブル吸盤52は、上方の円筒状部分76および下方の円錐状部分78を備えた全体として円錐状の形状を有している。上方の円筒状部分76はハウジング50を包囲しかつ該ハウジング50に対して気密シールされている。かくして、吸盤52およびハウジング50は、汚染物質および環境作用に対し外部からシールされる。吸盤チャンバ82とハウジングチャンバ64との間には、フレキシブル壁80が配置されている。吸盤リップ86は、吸盤10により操作される表面と接触する。フレキシブル壁80は、図4に示すようにハウジングチャンバ64内に変形可能である。ソレノイドアーマチャの取付け部分75は、フレキシブル壁80に固定されている。
【0014】
吸盤組立体10は、図3に示すように、作動時にソレノイド70内で中立位置にあるソレノイドアーマチャ72を有している。この状態では、フレキシブル吸盤52は、操作すべき部品の表面と接触するように位置決めされる。フレキシブル吸盤52が部品の表面上に配置される。吸盤リップ86が表面に接触される。ソレノイド70を付勢して、ソレノイドアーマチャ72をソレノイドボア74内に引き上げる。これにより、フレキシブル壁80が変形して、ハウジングチャンバ64内に移動される。吸盤チャンバ82の変形により、その容積は、図4に示すように2倍から3倍に増大する。これにより、吸盤チャンバ82内の圧力レベルは、大気圧に対して低下され、吸盤チャンバ82内に真空を発生させる。したがって、リップ86は、操作すべき部品の表面を固定しかつシールする。
【0015】
部品がその所望位置に移動された後、ソレノイド70の電力が反転される。これにより、ソレノイドアーマチャ72がその方向を反転し、アーマチャの取付け部分75をフレキシブル壁80に抗して押しやる。これにより、フレキシブル壁80は、図5に示すように吸盤チャンバ82を出る。これにより、吸盤チャンバ82内には負の容積が形成され、部品をフレキシブル吸盤52から押出す。したがって、ソレノイド70の電流を単に反転させるだけで、吸盤52が、第1位置(吸盤チャンバ82の容積位置の増大により吸盤チャンバ82内の真空が増大する位置)から、第2位置(吸盤チャンバ82が負の容積位置にある位置)へと移動し、フレキシブル吸盤52により操作すなわち保持されている部品が該吸盤52から解放される。
【0016】
吸盤組立体10は、ソレノイド70により高速で作動および制御される。吸盤組立体10には、汚染物質に曝されまたは汚染物質をかくまう虞のあるねじ山、裂け目、クラック、凹部、平面またはオリフィスが全く存在しない。したがって、吸盤組立体10は、容易に洗浄しかつクリーンにできる。ソレノイド70は電気により作動されるため、吸盤組立体10には空気圧配管は不要である。したがって、吸盤組立体10は、容易に殺菌し、クリーンにしかつ検査できる。かくして吸盤組立体10は、汚染物質が存在しないことを必要としかつ装置全体の洗浄を必要とする食品加工産業での使用に容易に供することができる。また、本発明の吸盤組立体10は、クリーンルーム環境並びに薬品および電子部品製造産業でも使用できる。
【0017】
図6および図7を参照すると、図2〜図5に示したものと同様な吸盤組立体が示されている。両者の吸盤組立体間の相違点はソレノイド70’にある。ここで、ソレノイド70’は、該ソレノイド70’のソレノイド孔を図6に示すように心出しする心出しスプリング71を備えた2位置ソレノイドである。ソレノイドの残部は、同じ参照番号で示しかつ前述したものと同じである。ソレノイドは次のように作動する。
【0018】
吸盤組立体は、図6に示すように、作動時にソレノイド70’内で中立位置にあるソレノイドアーマチャ72を有している。この状態では、フレキシブル吸盤52は、操作すべき部品の表面と接触するように位置決めされる。フレキシブル吸盤52が部品の表面上に配置される。吸盤リップ86が表面に接触される。フレキシブル吸盤は、スタート容積、ゼロ容積または中立容積を有している。ソレノイド70’を付勢して、ソレノイドアーマチャ72をソレノイドボア74内に引き上げる。これにより、フレキシブル壁80が変形して、図7に示すようにハウジングチャンバ64内に移動される。これにより、吸盤チャンバ82が変形される。吸盤チャンバ82の変形により、その容積は、図7に示すように2倍から3倍に増大する。これにより、吸盤チャンバ82内の圧力レベルは、大気圧に対して低下され、吸盤チャンバ82内に真空を発生させる。したがって、リップ86は、操作すべき部品の表面を固定しかつシールする。
【0019】
部品がその所望位置に移動された後、ソレノイドの電力が遮断される。これにより、ソレノイドアーマチャ72がスプリング71によりその方向を反転する。これにより、フレキシブル吸盤52が、スタート容積、ゼロ容積または中立容積を有するスタート位置に戻される。次に、フレキシブル吸盤52が部品から取外される。したがって、ソレノイドをオン/オフすることにより、吸盤が第1位置(吸盤チャンバの容積位置の増大により吸盤内の真空が増大する位置)から、第2位置(吸盤チャンバがそのスタート容積位置、ゼロ容積または中立容積位置にある位置)へと移動し、フレキシブル吸盤52により操作すなわち保持されている部品が該吸盤52から解放される。
【0020】
図8および図9を参照すると、他の実施形態が示されている。図8および図9の実施形態は、ソレノイドが異なっているが図3および図4の実施形態と同様である。したがって、実質的に同じ機能を有する同じ部品は同じ参照番号で示されている。
【0021】
この実施形態では、相違点は、ソレノイド170が磁気ラッチ型ソレノイドである点にある。したがって、大容積位置では、ソレノイドアーマチャ72は、後述のように所定位置に磁気的に保持される。ソレノイド170はマグネット172を有し、一方、ソレノイドアーマチャは環状マグネット174を有している。ここではマグネット172、174が環状すなわちリング状であるとして示されているが、任意形状のマグネットを使用できる。
【0022】
吸盤組立体10は、作動時に、図8に示すように付勢位置にあるソレノイドアーマチャ72を有している。この状態では、フレキシブル吸盤は、スタート容積、ゼロ容積または中立容積を有している。吸盤リップ86は、部品の表面と接触した状態にある。ソレノイド170への給電が除勢されると、ソレノイドマグネット172は、磁気吸引力により、ソレノイドアーマチャマグネット174をソレノイドボア74内に吸引する。これにより、フレキシブル壁80が変形して、ハウジングチャンバ64内に移動される。したがって、吸盤チャンバ82が変形される。吸盤チャンバ82の変形により、その容積は、図9に示すように2倍から3倍に増大する。これにより、吸盤チャンバ82内の圧力レベルは、大気圧に対して低下され、吸盤チャンバ82内に真空を発生させる。したがって、リップ86は、操作すべき部品の表面を固定しかつシールする。
【0023】
部品がその所望位置に移動された後、ソレノイド170の電力が再び付勢される。これにより、ソレノイドアーマチャ72がその方向を反転し、フレキシブル吸盤52をその中立容積位置すなわちスタート容積位置に戻す。したがって、ソレノイド170の付勢および除勢を行うことにより、吸盤52が、第1位置(吸盤チャンバ82の容積位置の増大により吸盤チャンバ内の真空が増大する位置)から、第2位置(吸盤チャンバがスタート容積位置、ゼロ容積位置または中立容積位置にある位置)へと移動し、フレキシブル吸盤により操作すなわち保持されている部品が該吸盤から解放される。
【0024】
図10〜図12を参照すると、他の実施形態が示されている。図10〜図12では、ソレノイドがサーボモータで置換されている。しかしながら、図2〜図5の実施形態における部品と同じ機能を有する部位は、図10〜図12においても同じ参照番号で示されている。
【0025】
図10〜図12を参照すると、ハウジング50内にサーボモータ200が配置されている。サーボモータは、これから延びているねじ軸202を有している。ねじ軸202は、フレキシブル吸盤52に連結された取付け部204を有している。サーボモータ200は、該サーボモータへの3つの簡単な入力信号により到達できる、予めプログラムされた3つの位置を有している。信号は、前述のように、スタート容積、ゼロ容積または中立容積位置(図10)、大容積位置(図11)および負容積位置(図12)に対応する。
【0026】
フレキシブル吸盤は、作動時に、操作すべき部品の表面に接触するように位置決めされる。吸盤リップ86が表面に接触する。ここで、フレキシブル吸盤52は、スタート容積、ゼロ容積または中立容積を有している。サーボモータ200が付勢される。これにより、ねじ軸202がサーボモータ200内に引き上げられる。これにより、フレキシブル壁80が変形して、ハウジングチャンバ64内に移動される。したがって、吸盤チャンバ82が変形される。吸盤チャンバ82の変形により、その容積は、図11に示すように2倍から3倍に増大する。これにより、吸盤チャンバ82内の圧力レベルは、大気圧に対して低下され、吸盤チャンバ82内に真空を発生させる。したがって、リップ86は、操作すべき部品の表面を固定しかつシールする。
【0027】
部品がその所望位置に移動された後、サーボモータ200には再び給電される。これにより、軸202がその方向を反転し、取付け部204をフレキシブル壁80に抗して押しやる。これにより、フレキシブル壁80は、図12に示すように吸盤チャンバ82を出る。これにより、吸盤チャンバ82内には負の容積が形成され、部品をフレキシブル吸盤52から押出す。したがって、サーボモータ200を単に反転させるだけで、吸盤52が、第1位置(吸盤チャンバの容積位置の増大により吸盤チャンバ内の真空が増大する位置)から、第2位置(吸盤チャンバが負の位置にある位置)へと移動し、フレキシブル吸盤により操作すなわち保持されている部品が該吸盤から解放される。
【0028】
また、サーボモータ200には、予めプログラムされた2つの位置をもたせることもできる。この場合、サーボモータは、図10および図11に示すように作動する。したがって、吸盤52は、前述のように、スタート容積、ゼロ容積または中立容積と、大容積との間で作動する。
【0029】
図13〜図15は本発明の他の実施形態を示し、ここには、閉ループ空気圧型のアクチュエータが示されている。
【0030】
アクチュエータ300はハウジング302を有している。ハウジング302は、入口306および出口308を備えたチャンバ304を有している。入口306および出口308には空気圧ホース310が連結されている。ハウジングチャンバ304内には、ピストン314および該ピストン314に取付けられた軸316を含むピストン組立体312が配置されている。軸316の他端部には、吸盤320に連結された取付け部318が設けられている。シール322、324が、チャンバ304内のピストン組立体312をシールしている。ピストン314の両側にはスプリング326、328が配置されている。これらのスプリング326、328は、アクチュエータ300内に圧力が存在しないときにピストン314を中立位置に維持する。また、スプリング326、328は、位置間でのピストン314の移動を補助する。
【0031】
吸盤320は、ハウジング302に対して接合またはモールド成形され、かつ気密シールされている。フレキシブル吸盤320は、上方部分330および下方部分332を備えた全体として円錐状の形状を有している。上方部分330はハウジング302を包囲しかつ該ハウジングに対して気密シールされている。吸盤チャンバ336とハウジングチャンバ338との間にはフレキシブル壁334が配置されている。吸盤リップ340が、吸盤組立体10により操作すべき表面に接触する。フレキシブル壁334は、図14に示すようにハウジングチャンバ338内に変形可能である。変形可能なフレキシブル壁は、吸盤チャンバ336内に吸引力を発生させることができる。フレキシブル壁334は、取付け部318に連結されている。
【0032】
吸盤組立体10は、作動時に、図13に示すように中立位置にあるアクチュエータ300を有している。ここで、フレキシブル吸盤320は、操作すべき部品の表面に接触するように配置される。フレキシブル吸盤320は表面上に位置決めされる。吸盤リップ340が表面に接触する。ここで、フレキシブル吸盤320は、スタート容積、ゼロ容積または中立容積を有している。空気が付勢されて、チャンバ304の下方部分内の流体圧力を増大させる。これにより、ピストン314が上方に移動し、フレキシブル壁334が変形して、ハウジングチャンバ338内に移動される。これにより、吸盤チャンバ336が変形される。吸盤チャンバ336の変形により、その容積は、図14に示すように2倍から3倍に増大する。これにより、吸盤チャンバ336内の圧力レベルは、大気圧に対して低下され、吸盤チャンバ336内に真空を発生させる。したがって、リップ340が、操作すべき部品の表面を固定しかつシールする。スプリング326がハウジング302内で収縮すると、スプリング328が伸長する。
【0033】
部品がその所望位置に移動された後、チャンバ304の上方部分内の流体圧力が増大される。これにより、ピストン組立体312がその方向を反転し、取付け部318をフレキシブル壁334に抗して押しやる。これにより、フレキシブル壁334は、図15に示すように吸盤チャンバ336を出る。これにより、吸盤チャンバ336内には負の容積が形成され、部品をフレキシブル吸盤320から押出す。したがって、単に流体圧力を増減させるだけで、吸盤320が、第1位置(吸盤チャンバの容積位置の増大により吸盤チャンバ336内の真空が増大する位置)から、第2位置(吸盤チャンバ336が負の容積位置にある位置)へと移動し、フレキシブル吸盤320により操作すなわち保持されている部品が該吸盤から解放される。
【0034】
また、吸盤320を、図13に示す第1位置から図14に示す第2位置に移動させ、かつ図13に示す第1位置に戻るように作動させて、前述のような位置間を移動させることができる。
【0035】
図16および図17を参照すると、ここにはパンケーキ型の流体アクチュエータが示されている。アクチュエータ400は、チャンバ404を備えたハウジング402を有している。入口406および出口408は、流体がホース410を介してチャンバ404内に流入することを可能にしている。チャンバ404にはピストン組立体412が示されている。ピストン組立体412は、ピストン414およびピストン軸416を有している。ピストン軸416は、吸盤320に固定される取付け部材418を有している。シール422、424が、チャンバ404内のピストン組立体412をシールしている。この場合には、アクチュエータを、図17に示す大容積位置および図16に示す中立位置すなわちゼロ位置に保持するのに流体圧力が必要とされる。吸盤320は、前述の吸盤と同様である。
【0036】
吸盤組立体10は、作動時に、図16に示すように中立位置にある。ここで、フレキシブル吸盤320は、操作すべき部品の表面に接触するように配置される。フレキシブル吸盤320は表面上に位置決めされる。吸盤リップ340が表面に接触する。ここで、フレキシブル吸盤320は、スタート容積、ゼロ容積または中立容積を有している。流体圧力は増大され、出口408を通ってチャンバ404の底部内に流入する。これにより、フレキシブル壁334が変形して、ハウジングチャンバ338内に移動される。これにより、吸盤チャンバ336が変形される。吸盤チャンバ336の変形により、その容積は、図17に示すように2倍から3倍に増大する。これにより、吸盤チャンバ336内の圧力レベルは、大気圧に対して低下され、吸盤チャンバ336内に真空を発生させる。したがって、リップ340が、操作すべき部品の表面を固定しかつシールする。
【0037】
部品がその所望位置に移動された後、空気圧力が反転される。これにより、チャンバ404の上方部分内の空気圧力が増大され、ピストン組立体412を中立位置に戻す。したがって、吸盤320は、第1位置(吸盤チャンバの容積位置の増大により吸盤チャンバ336内の真空が増大する位置)から、第2位置(吸盤チャンバ336が中立位置にある位置)へと移動し、フレキシブル吸盤320により操作すなわち保持されている部品が該吸盤から解放される。また、ピストン組立体は、フレキシブル壁334が吸盤チャンバ336から出るように操作される。この場合、前述のように、吸盤チャンバ336内には負の容積が形成される。
【0038】
図18および図19には他の実施形態が開示されており、ここには、パンケーキ型単動スプリング戻りシリンダが示されている。この実施形態と図16および図17の実施形態との相違は、戻りスプリング430が設けられかつ出口408が省略されていることである。戻りスプリング430は、入口406に流入する流体圧力を遮断させ、スプリング430が伸長できるようにする。これにより、吸盤320が、図19に示すようにその正圧位置に移動する。かくして、アクチュエータ400は図16および図17のアクチュエータと同様に機能し、スプリングはチャンバの下方部分内の流体圧力に取って代わり、ピストン組立体412を上方に移動させ、これにより、吸盤チャンバ336は図19に示すようにその容積が2倍から3倍に増大する。
【0039】
流体圧力は、再びチャンバ404の上方部分内に流入する。これにより、ピストン組立体412は、図18に示す中立位置に戻される。かくして吸盤チャンバ336は、フレキシブル吸盤320により操作すなわち保持された部品が該吸盤から解放される中立位置に移動される。
【0040】
図20および図21には他の実施形態が示されており、ここでは、吸盤組立体500がハウジング502を有し、該ハウジング502はこれに気密シールされた吸盤504を備えている。吸盤504は、前述のようにしてカムレバー506に連結されている。アクチュエータ510は、ソレノイド型電気アクチュエータまたは空気圧ロータリアクチュエータで形成できる。いずれの場合でも、アクチュエータ510から軸512が延びている。軸512は1対のストップ514、516を有し、これらのストップの間に軸512の一部が存在する。レバー506は、両ストップ514、516間に嵌合するヨーク518を有している。軸512はアクチュエータ510から出入りして、吸盤504を前述のように中立容積位置と正容積位置との間で移動させる。また、別のハウジング(図示せず)がアクチュエータ510およびレバー506をカバーし、このハウジングは、レバー506およびアクチュエータ510をシールしかつ保護すべくハウジング502に連結されている。
【0041】
本発明の上記説明は本質の単なる例示であり、したがって、本発明の本旨から逸脱しない種々の変更は本発明に包含されるものである。そのような変更は、本発明の精神および範囲から逸脱しないものと考えるべきである。
【符号の説明】
【0042】
10 吸盤組立体
52 フレキシブル吸盤
70 ソレノイド
72 ソレノイドアーマチャ
75 アーマチャの取付け部
80 フレキシブル壁
82 吸盤チャンバ
86 吸盤リップ
202 ねじ軸
314、414 ピストン
316、416 ピストン軸
510 アクチュエータ
506 カムレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
該ハウジング内のアクチュエータと、
ハウジングと気密シールされたフレキシブル吸盤とを有し、アクチュエータは該吸盤に連結し、少なくとも2つの位置の間を移動し、第1位置ではフレキシブル吸盤が大容積位置に移動して、表面をシールし、第2位置ではフレキシブル吸盤が少なくとも中立容積位置に移動して、表面から解放されることを特徴とする吸盤組立体。
【請求項2】
前記フレキシブル吸盤は表面と係合するリップを有していることを特徴とする請求項1記載の吸盤組立体。
【請求項3】
前記アクチュエータは電気または閉空気圧システムであることを特徴とする請求項1記載の吸盤組立体。
【請求項4】
前記アクチュエータはソレノイドまたはサーボモータであることを特徴とする請求項3記載の吸盤組立体。
【請求項5】
前記アクチュエータは磁気ラッチ型ソレノイドであることを特徴とする請求項4記載の吸盤組立体。
【請求項6】
前記アクチュエータは、吸盤に連結されたソレノイドアーマチャを備えた3位置ソレノイドまたは予めプログラムされた3位置を有するねじ軸を備えたサーボモータであることを特徴とする請求項3記載の吸盤組立体。
【請求項7】
前記アクチュエータは、複動空気圧シリンダ、パンケーキ複動空気圧シリンダ、スプリング戻りパンケーキ空気圧シリンダまたは空気圧ロータリアクチュエータであることを特徴とする請求項3記載の吸盤組立体。
【請求項8】
前記アクチュエータは、フレキシブル吸盤に直接引っ張り力を加えて、フレキシブル吸盤を位置間で移動させる機構を有していることを特徴とする請求項3記載の吸盤組立体。
【請求項9】
前記フレキシブル吸盤は、アクチュエータにより移動されるレバーを有していることを特徴とする請求項3記載の吸盤組立体。
【請求項10】
前記フレキシブル吸盤は、位置間での移動を可能にする変形可能なフレキシブル壁を有していることを特徴とする請求項1記載の吸盤組立体。
【請求項11】
ハウジングと、
該ハウジング内の電気アクチュエータと、
ハウジングに連結されたフレキシブル吸盤とを有し、該吸盤が表面と係合でき、吸盤はアクチュエータに連結されており、該アクチュエータの移動によりフレキシブル吸盤が少なくとも2つの位置の間で移動され、第1位置ではフレキシブル吸盤が大容積位置にあって表面をシールし、第2位置ではフレキシブル吸盤が少なくとも中立容積位置にあって表面から解放されることを特徴とする電気吸盤組立体。
【請求項12】
前記フレキシブル吸盤はハウジングにシールされていることを特徴とする請求項11記載の電気吸盤組立体。
【請求項13】
前記アクチュエータは、フレキシブル吸盤に連結されたソレノイドまたはサーボモータであることを特徴とする請求項11記載の電気吸盤組立体。
【請求項14】
前記吸盤からはレバーが延びており、該レバーにアクチュエータが連結されていることを特徴とする請求項11記載の電気吸盤組立体。
【請求項15】
前記フレキシブル吸盤は、位置間での吸盤の移動を可能にするフレキシブル壁を更に有していることを特徴とする請求項11記載の電気吸盤組立体。
【請求項16】
前記アクチュエータはフレキシブル壁に連結されていることを特徴とする請求項15記載の電気吸盤組立体。
【請求項17】
前記吸盤は第3位置に移動でき、該第3位置では、吸盤が負容積位置にあって表面から解放されることを特徴とする請求項11記載の電気吸盤組立体。
【請求項18】
前記アクチュエータは、吸盤に連結されたソレノイドアーマチャを備えた3位置ソレノイド、または予めプログラムされた3位置を有するねじ軸を備えたサーボモータであることを特徴とする請求項17記載の吸盤組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−159195(P2012−159195A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−19376(P2012−19376)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(501465366)デラウエア キャピタル フォーメイション、インコーポレイテッド (7)
【住所又は居所原語表記】501 Silverside Road, Suite 5, Wilmington, Delaware 19809, U.S.A.
【Fターム(参考)】