説明

電気外科回転切開器具

組織を切開するための電気外科切開器具及び方法が開示されている。電気外科切開器具は、トルクケーブルの遠位端に取り付けられる非対称形切開エレメントを含んでいる。該切開エレメントは端部キャップ内に配置され、引き込まれた位置と伸長された位置の間で軸線方向に移動可能である。処置中のトルクケーブルの回転は、切開エレメントが回転して標的組織と一致し、標的組織を切開エレメントに引っ掛けることを可能にする。切開エレメントの細長い部材は周辺の組織及び構造から離れる方向に標的組織を選択的に持ち上げる。周辺の組織及び構造から離れる方向に組織を持ち上げると、切開が生じ得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
内臓及び脈管の壁の開口部又は穿穴は、自然に生じるか、又は意図的に若しくは無意図的に形成される可能性がある。これらの開口部は、身体の隣接臓器へのアクセスを得るために使用することができ、そのような技法は一般に経管腔的処置と呼ばれている。例えば、70年以上も前に骨盤腔鏡検査法が開発されており、同技法は盲嚢に開口部を形成することによって腹膜腔に経腔的にアクセスする。この腹膜腔へのアクセスは、医師が、数多くの解剖学的構造を目視で調べることができるようになると共に、バイオプシーや卵管結紮の様な他の手術などの各種処置も施すことができるようになる。他の体内管腔を使って様々な体腔へのアクセスを得るための数多くの経管腔的処置も開発されている。口、鼻、耳、肛門又は膣などの自然開口部はそのような体内管腔及び空洞へのアクセスを提供することができる。消化管の体内管腔は多くは内視鏡的に診察され、すべて低侵襲的なやり方で、腹膜腔及び他の体腔へのアクセスに利用できる。2007年2月28日出願の米国特許出願第60/872,023には、そのような処置が開示されており、同出願全体を参考文献として本明細書に援用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
従来の観血的手術又は腹腔鏡下手術と比べて、経腔的処置は、腹部切開(又は他の外部切開)及び合併症につながる切開を排除することにより、より低侵襲となり、また、術後回復時間を短縮し、痛みを減少させ、外見を改善する。その一方で、開口部及び体腔への適当な導管を提供すること、該導管を通じて操作でき且つ体腔内で操作できる堅牢な医療装置、導管の不稔性、体腔への通気の維持、開口部の適切な閉合、及び感染の防止などの経腔的処置への課題が残っている。例えば、開口部が胃又は腸の様な消化管の体壁に形成されるとき、胃の内容物、腸の内容物又は他の体液が隣接する体腔内へなだれ込む事態を引き起こす可能性がある。細菌を含んだ液が消化管の外へ移動すると、望まれない、また場合によっては致死的な感染を引き起こす可能性がある。
【0003】
また、切開される体内壁の向こうにすぐ位置する諸構造を穿孔する危険性もある。例えば、胃壁を切開するときに、知らずに血管に当たり出血性合併症に結びつく可能性がある。誤って小腸を穿刺することで、腹膜腔への細菌の流入を引き起こすこともある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、後段の態様の何れをも様々に組み合わせて含むことができ、また、以下、明細書又は添付図面中に記載されている何れの他の態様をも含むことができる。
【0005】
第1の態様では、電気外科切開器具が提供される。本器具は間に長手方向中央軸線を有する近位端及び遠位端を含む外側細長シースを備えている。該シースは、近位端から遠位端まで延在しているルーメンをさらに備えている。また、近位端と遠位端の間に延在するロープのような構造体を形成するために、外側細長シースの長手方向中央軸線の周りに螺旋状に捻じられた複数の金属ワイヤを備えるトルクケーブルが提供される。該トルクケーブルは外側細長シースのルーメン内に延在している。また、トルクケーブルの遠位端に取り付けられ、且つシースのルーメン内に延在するように構成された近位部を有する導電性切開エレメントが提供される。該切開エレメントは切開エレメントの長手方向軸線の周りに伸張する遠位部をさらに有し、切開のために切開エレメントの表面に標的組織を選択的に持ち上げるように、切開エレメントが、トルクケーブルの対応する回転方向及び軸線方向の動作によって、回転方向及び軸線方向に動作可能であるように構成されている。
【0006】
第2の態様では、電気外科切開器具が提供される。間に長手方向中央軸線を有する近位端及び遠位端を含む外側細長シースが提供される。該シースは、長手方向軸線に沿って延在するルーメンをさらに備えている。また、外側細長シースの遠位端に取り付けられた近位部と、溝を有する開口部を備える遠位部を有する端部キャップが提供される。該端部キャップは該シースのルーメン及び該キャップの遠位部の溝を有する開口部と連通している通路をさらに備えている。近位端と遠位端の間に延在するロープのような構造体を形成するために、外側細長シースの長手方向中央軸線の周りに螺旋状に捻じられた複数の金属ワイヤを備えるトルクケーブルが提供される。該トルクケーブルは外側細長シースのルーメンを通って延在している。近位直線部を有する導電性フックがトルクケーブルの遠位端に取り付けられる。該フックの近位直線部は端部キャップの通路内に延在するように構成され且つ外側細長シースの長手方向中央軸線に実質的に平行である。該フックは、長手方向中央軸線の周りに非対称形に配置された遠位部をさらに有し、切開エレメントの回転方向及び軸線方向の動作により、フック形状に、切開のためフック上に標的組織を選択的に持ち上げるようにさせるために、フックが、トルクケーブルの対応する回転方向及び軸線方向の動作によって、回転方向及び軸線方向に動作可能であるように構成されている。
【0007】
第3の態様では、標的組織を切開する方法が提供される。間に長手方向中央軸線を有する近位端及び遠位端を含む、外側細長シースを備えている電気外科切開器具が提供される。該シースは、近位端から遠位端まで延在しているルーメンをさらに備えている。トルクケーブルが複数の金属ワイヤを備え、外側細長シースのルーメン内に延在する。非対称形導電性切開エレメントがトルクケーブルの遠位端に取り付けられた近位部を有する。該切開エレメントは、切開エレメントの長手方向軸線の周りで非対称形である遠位部をさらに有している。該器具は、軸線方向に引き込まれた形態で配置された切開エレメントとともに、標的組織に向けて進められる。切開エレメントは軸線方向で遠位方向に伸張される。標的組織に向けて非対称形切開エレメントの遠位部を回転して一致させるために、非対称形切開エレメントの遠位部を相応して回転させるように、トルクケーブルを回転する。非対称形切開エレメントの遠位部に標的組織を係合させる。周辺の組織及び構造から離れる方向に標的組織を持ち上げる。トルクケーブルを通して切開エレメントの遠位部に電流を流す。
標的組織が切開される。
【0008】
本発明は、後段の説明を図面と関連付けて読むことで、なお一層深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】伸張形態で非対称形切開エレメントを有している電気外科切開器具の側面図を示す。
【0010】
【図1B】図1Aの電気外科切開器具の遠位部の拡大及び部分断面図を示す。遠位部は外側シース内に配置されたトルクケーブルと外側シースに取り付けられた端部キャップを含み、外側シースは非対称形切開エレメントが通過して延在する穴を有している。
【0011】
【図2A】図1Bの切開エレメントが時計回りに回転する切開器具遠位部の部分断面図を示す。
【0012】
【図2B】トルクケーブルに取り付けられた制御ハンドルアセンブリの近位部を示す。
【0013】
【図2C】切開エレメントの長方形横断面形状を示す。
【0014】
【図2D】切開エレメントの円形断面形状を示す。
【0015】
【図3A】トルクケーブルが外側細長シースのルーメン内に配置されている図1の切開器具の端部断面図である。
【0016】
【図3B】外側細長シース内に配置され、中空の隙間があるトルクケーブルの別の断面図を示す。
【0017】
【図4】端部キャップの、溝を有する開口部の遠位端面図を示す。
【0018】
【図5】補強材がトルクケーブルに外挿され、該ケーブルを屈曲中に安定させるように作られている、別の実施形態を示す。
【0019】
【図6A】切開器具が体内壁の標的組織部位に進められ、非対称形切開エレメントが端部キャップから伸張され、その後、切開エレメントが、回転して標的組織と合致させるために回転させられることを示している。
【0020】
【図6B】切開エレメントのフック部に標的組織を係合するように切開エレメントを回転させ、その後、標的組織を切開することを示している。
【0021】
【図6C】フックに引っ掛けられ紙面の面外に持ち上げられている組織ストランドを示す図6Bの拡大図である。
【0022】
【図6D】切開エレメントのフック部で、体内開口部を通してアクセス開口部を作るために組織が切開され、その後フック部の縦材を、端部キャップの溝を有する開口部と一致させるように回転させることを示している。
【0023】
【図6E】非対称形切開エレメントの近位部及びフック部が端部キャップ内に完全に配置され、フック部の縦材が溝を有する開口部内に着座していることを示している。また
【0024】
【図7】曲線状のフックを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に使用される用語「近位」及び「遠位」は、使用者に基準点を有することを意味している。特に、本明細書の全体を通して、用語「遠位」及び「遠位方向に」は概ね使用者から離れる位置、方向又は向きを意味し、用語「近位」及び「近位方向に」は概ね使用者に向かう位置、方向又は向きを意味する。
【0026】
図1Aに、典型的な電気外科回転切開器具を示す。図1Aは組織を切開するための電気外科切開器具100の外観側面図である。図1Aは、切開器具100の外観が、制御ハンドルアセンブリ148、外側細長シース110、端部キャップ120及び非対称形切開エレメント130を概ね有していることを示している。外側細長シース110は近位端191及び遠位端192を有する。外側細長シース110の近位端191はハンドルアセンブリ148に取り付けられ、遠位端192は端部キャップ120に取り付けられる。端部キャップ120は、非対称形の導電性切開エレメント130が該端部キャップを通って延在する穴420(図4)を有する。切開エレメント130は、格納された位置と伸張された位置の間で軸方向に移動可能である。切開エレメント130は端部キャップ120の穴420から軸方向に伸張された位置まで伸ばされており、切開エレメント130の非対称形の遠位部131は端部キャップ120の遠位端121を越えて延在することを図1A及び図1Bは示している。切開エレメント130は、軸方向に伸張された位置に置かれた時、組織を切開する。また、図6Dに示すように、切開エレメント130が組織の切開のために利用されない時、切開エレメント130は端部キャップ120に引き込むように構成される。
【0027】
さらに、これより説明するように、切開エレメント130は回転式に可動である。図1Bは図1Aの電気外科切開器具100の遠位部の拡大図及び部分断面図を示す。図1Bはトルクケーブル150が外側細長シース110のルーメン111内に配置されていることを示している。ケーブル150の遠位端156は切開エレメント130の近位部132に固定され、また、図2Bに示すように、トルクケーブル150の近位端155は制御ハンドルアセンブリ148に固定(例えば、半田付け)される。切開エレメント130は遠位部131を有しており、該遠位部は器具100の長手方向中央軸線L(図1A)の周りで非対称形である。図1Bは非対称形の遠位部131が破線で示す位置から実線で示す位置まで反時計回りに約90度回転することを示している。ハンドルアセンブリ148がケーブル150に固定されているので、図1Bの矢印によって示すように制御ハンドルアセンブリ148を回転させると、トルクケーブル150は相応して図1Aの矢印によって示すように回転する。ケーブル150が切開エレメント130に固定されているので、図1Bの切開エレメント130の周りに矢印によって示すように、ケーブル150の回転により切開エレメント130はケーブル150と同じ方角に相応して回転する。
【0028】
図2Aを参照すると、切開エレメント130の非対称形の遠位部131は、第1の縦材139と、第2の縦材137と、第1の縦材139を第2の縦材137に連結する横材140とを含んでいる。図2Aは、第2の縦材137が第1の縦材139より大きい高さを有していることを示している。特に図2Aは、第2の縦材137が器具100の長手方向中央軸線Lを横切る一方、第1の縦材139が単に長手方向中央軸線Lから離れる方向に突き出ることを示している。
【0029】
図2Aの配置によって画定されるように、軸線Lは下側領域142及び上側領域141を設ける。下側領域142は長手方向中央軸線Lの下方を占める領域として定義される。上側領域141は長手方向中央軸線Lの上方を占める領域として定義される。第1の縦材139は下側領域142に配置されるように示され、第2の縦材137は下側領域142及び上側領域141の両方に跨ぐように示されている。第2の縦材137は、端部キャップ120の溝を有する開口部410内に収納できるサイズである高さDを有するように示されている。図1Bの実施形態では、第1の縦材139は約0.025インチ(0.635mm)から0.080インチ(2.032mm)の範囲内で決めることができる高さを有しており、第2の縦材137は約.050インチ(1.27mm)から0.160インチ(4.064mm)の範囲内で決めることができる高さを有している。第1の縦材139及び第2の縦材137のための他の高さが考えられる。例えば、第1の縦材139は、上側領域141へ伸張するが、それでもなお第2の縦材137より短い高さを所有するように軸線Lと交差してもよい。図2Aは、横材140が、第1の縦材139の端部を、下側領域142内に配置されている第2の縦材137の端部に連結するように、完全に下側領域142内に配置することができることを示している。横材140は、切開処置中に組織を噛み合わすことができる窪んだ間隙138を作るための十分な長手方向の長さであることが好ましい。
【0030】
従って、図1A、1B、2A、及び6A−6Dに図示された遠位部131はフックのように形成されている。フックは長手方向中央軸線Lから間隔を空けて配置され、トルクケーブル150の対応する回転運動及び軸線方向運動によって回転方向及び軸線方向に動くように構成されている。図1Bに示すように、フックは長手方向中央軸線Lを横断する細長い縦材137を備えていることが好ましい。縦材137は、図1Bの「D」として示した切開される標的組織の厚さと少なくとも等しい長手方向の長さを有することが好ましい。概して言えば、「D」によって示すようなより大きな縦材137は、標的組織を切開するよりよい制御性及び選択性を実現するのに役立つことができる。さらに、そのような増大した長手方向の長さ「D」を備える縦材137を有することによって、より多くの組織を切開できるようにすることもできる。縦材137の長さ「D」は、補助チャネル内並びに器具100が利用される標的部位に、進めることができる器具100の横断面外径(長手軸線を横断する方向での外形)を維持する必要性も含めて、様々な要因により限定することができる。細長い縦材137のために適切な高さ「D」を設計する場合、そのような競合する要因を考慮することができる。そのような様々な要因に基づいて特定用途に適した長さの縦材137を決定することが当業者には明らかになるであろう。
【0031】
非対称形の遠位部131は多数の横断面形状を有することができる。図2Aの横材140の断面を図2Cに示す。図2Cは、横材140並びに縦材137及び139の両方が方形の横断面形状を有することを示す。他の横断面形状が考えられる。一例として、図2Dは、3つの部材137、139及び140の各々が丸形断面を有していてもよいことを示す。穴420は、部材137、139及び140の横断面形状に相当する開口部を有するように作られることが好ましい。
【0032】
非対称形の遠位部131の1つの特別な利点は、選択的に標的組織を噛み合わせ、該標的組織を周辺領域から離れる方向に持ち上げる能力である。具体的には、標的組織の切開中に遠位部131を動かすのに先立って、非対称形の遠位部131は標的組織を他の周囲の身体構造から離れる方向に持ち上げる。その結果、周囲の身体構造への不用意な損傷は回避される。
【0033】
少なくとも縦材137によって形成されるフック形状並びに好ましくは縦材139及び横材140に加えて、非対称形の遠位部131の他のタイプの形状が考えられる。非対称形の遠位部131は、J字形、U字形、S字形及び疑問符形を含めて、他のフック形状あるいは非対称形の形状であってもよい。遠位部131はさらに多角形又は曲線形であってもよい。一実施形態では、非対称形の遠位部131は鎌形状である。図7は鎌形状フック700の例を示す。フック700は組織を貫通できるS字湾曲フック部739を有している。遠位部は組織を容易に持ち上げることができるようにする湾曲したS字形部分を有している(図6C)。また、S字形フック739は、組織の切開中に組織がフック739から滑り落ちることを防止できる。特に湾曲部分710は外側へ丸くされ、S字湾曲フック739から後方に延在する。周辺の組織と構造から離れる方向に標的組織を選択的に持ち上げる又は引っ掛けるために、図示のように、湾曲部分710は十分に湾曲している。空間720は、柄750と湾曲部分710の間の距離として定義される。空間720はその間に組織を捕捉するのに十分な大きさである。S字湾曲フック739は柄750からずれないように示されている。しかしながら、S字湾曲フック739を柄750からずらすように作られてもよい。湾曲部分710は湾曲した柄750の中に伸張している。柄750は基部740まで延在し、ケーブル150の遠位端156に固定されている。
【0034】
トルクケーブル150は、幾つかの部材160の各々が螺旋状の軸に沿って捻じられているワイヤで撚られた管状構造として示されている。ケーブル150はロープのような構造を形成するように捻じられている複数のメタリック・ワイヤ160で形成されることが好ましい。図3Aに示すように、ケーブル150の断面は、ワイヤ160が中実の構造体を作るために互いに一点に集まってもよいことを示している。図3Aはロープのようなケーブル構造が6本のワイヤ部材160で成されていることを示している。また、6本未満又は6本を超えるワイヤ部材160がケーブル150を構成するために考えられる。図5は図3Aのケーブル150の斜視図を示している。図5から、6本のワイヤ部材160が長手方向中央軸線Lの周りで、該ワイヤ部材160のそれぞれが軸線Lの周りで異なる螺旋状のピッチを有して捻じられていることが分かる。当技術分野において知られているように、ロープ撚糸機はロープのような構造体を形成するために使用することができる。各ワイヤ160の間の隙間を無くすことにより、十分な堅さを生成することが好ましい。ロープ撚糸機は得られたロープのようなケーブル150が崩壊し得ないように、部材160の各々を互いに対して十分に圧縮してワイヤ160を一体化している。
【0035】
ケーブル150のための他の設計形状が可能である。例えば、図3Bは、複数のワイヤ部材160が円形の線に沿って中空の構成167に捻じられていることを示している。また、織り交ぜられた編み糸のような構成と同様に、複数のワイヤ160が相互に巻き付くようにケーブル150が編まれてもよい。さらに、中心ワイヤを設けることもでき、該中心ワイヤのまわりでワイヤ部材160は捻じられるか編まれる。使用するケーブル150の構造の正確な形式を決定することは、特定用途の器具100の許容できる側面外形、並びに特定用途に必要なトルク伝達率及び反応性の程度を含めて、多数の要因に依存し得る。
【0036】
好ましい実施形態では、器具100に利用されるケーブル150は朝日インテック株式会社(Asahi Intecc Co)から入手できる。ケーブル150は、約0.30mmから約1.30mmの範囲の外径を有し、且つ6本から18本の捻じられたワイヤ部材160を含むことができ、ワイヤ部材のそれぞれは円形の断面形状を有し、且つステンレス鋼医療グレードで形成される。ワイヤ部材160は円形に配列されてもよく、ロープのような構造体を作るために捻じられてもよい。
【0037】
もとの図1Bを参照すると、トルクケーブル150は外側細長シース110のルーメン111内に延在している。トルクケーブル150は柔軟性と押し込み性(pushability)を提供し、それにより器具100が蛇行した体腔内に進行できるようにしている。ケーブル150のロープのような構造はトルク伝達率及び反応性を増強する。具体的には、制御ハンドルアセンブリ148によりトルクケーブル150の近位端155を回転すると、トルクケーブル150の遠位端156を制御された方法で容易に回転させる。一実施形態では、例えば、制御ハンドルアセンブリ148の近位端155でケーブルを時計回り方向に15度回転すると、ケーブル150の遠位端156もまた約15度回転させるように、ケーブル150はほぼ1対1のトルク伝達で設計されている。他の実施形態では、ケーブル150のトルク伝達の比率はワイヤ160の螺旋状のピッチ(つまり巻線の緊さ)及びワイヤ160の数を修正することにより調節することができるので、例えば、制御ハンドルアセンブリ148の近位端155でケーブルを時計回り方向に15度回転させると、ケーブル150の遠位端156を約15度より大きく回転させる。トルク伝達の比率及び伝達率は電気外科切開器具100が導入される標的部位によって変えることができる。ケーブル150の回転の滑らかさを保証するために、トルクケーブル150の外径と細長シース110の内径の間に十分な隙間が存在している。隙間は、図1B、2B、3A、3B、及び6A−6Dに示されている。一例では、隙間は約0.005インチ(0.127mm)以下である。
【0038】
図4は、端部キャップ120の溝を有する開口部410の横断端面図を示す。端部キャップ120は切開エレメント130の非対称形の遠位部131を収容できるサイズである溝を有する開口部410(図4)を有している。また、端部キャップ120は、切開エレメント130の近位部132の伸張及び引込を許容できるサイズである穴420も含んでいる。図4に示すように、溝を有する開口部410は長方形の形状であるが、端部キャップ120は切開エレメント130の非対称形の遠位部131を収容するのに適したあらゆる形の溝を有する開口部を有してもよい。キャップ120の開口部410内に切開エレメント130の遠位部131を引き込ませることは、器具100の横断面外形を縮小し、それによって、標的部位への電気外科切開器具100の前進を促進し、且つ患者への外傷を減らす。縮小された横断面外形は、さらに胃腸管内の組織の切開を伴う処置中に、内視鏡の付属チャネルを通して電気外科切開器具100を進めるのに役立つが、そのことは以下により詳しく説明していく。
【0039】
端部キャップ120は通路122(図2A)を含んでおり、該通路を通って切開エレメント130の近位部132(つまりステム)が伸張することができる。通路122は端部キャップ120の長手方向の長さ部分を完全に通って伸張している。該通路は外側細長シース110のルーメン111及び端部キャップ120の溝を有する開口部410と連通している。
【0040】
端部キャップ120の近位端は、外側細長シース110の内径と摩擦係合をもたらす隆起部161を含むように、図1B及び6A−6Dに示されている。図1B及び2Aに示すように、隆起部161に沿った端部キャップ120の外径は、外側細長シース110の内径内に圧縮嵌合することができる。別法として、又は追加して、接着剤が端部キャップ120を外側細長シース110に固定するために利用されてもよい。端部キャップ120の近位端は任意の生体適合性材料、好ましくは電気絶縁材料で形成することができる。また、キャップ120の近位端は電気絶縁材料で覆われる導電性材料で形成されてもよい。端部キャップ120は、約3フレンチから約15フレンチの範囲で決めることができるフレンチサイズのカテーテルにふさわしいように設計された端部であってもよい。端部キャップ120は、外側細長シース110から端部キャップ120まで滑らかな遷移を生成するように外側細長シース110と同じ外径を有するサイズであることが好ましく、それにより器具100の非外傷性の端部を作り出している。
【0041】
外側細長シース110の遠位端に端部キャップ120を取り付ける他の手段が考えられる。一実施形態では、キャップ120及び細長シース110は継ぎ目のない部品として設計されてもよい。例えば、端部キャップ120は、オーバーモールディング(over molding)として既知のプロセスで、細長シース110に射出成型することができる。熱いポリマ溶融物が、細長シース110の遠位端192に向かって流れ、冷却して固まると、外側細長シース110の遠位端192に固着するように、細長シース110は成形型内に位置する。得られた成形物は端部キャップ120の外側細長シース110との融合を生成する。
【0042】
以上のように、切開エレメント130は導電性であり、近位部132及び遠位部131を含んでいる。近位部132は、遠位部131からケーブル150の遠位端156まで延在する。近位部132は、接着剤、半田、又は当技術分野において既知の他の手段によって遠位端156に結合することができる。図1B、2A、及び6A−6Dは、切開エレメント130の近位部132が端部キャップ120の通路122内に配置されていることを示す。端部キャップ120の通路122は、ケーブル150の外径未満の寸法の直径を有するように設計されることが好ましい。その結果、ケーブル150は通路122に延在しない。図1Bに示すように、切開エレメント130を端部キャップ120から軸線方向に伸張する時、ケーブル150の遠位端156は通路122に接することができる。通路122に接したケーブル150のそのような形態は、切開エレメント130の最も軸線方向に伸張した位置を示す。それによって、切開エレメント130は、シース110の遠位端192及び/又は端部キャップ120の遠位端から、約3mmから約15mmだけ伸張することができる。図6Dに示すように、ケーブル150の遠位端156はこの位置に比べて近位側に位置することができ、これは、切開エレメント130の遠位部131が端部キャップ120の溝を有する開口部410へ軸線方向に引き込まれる時を示している。
【0043】
前述のように、切開エレメント130の遠位部131は非対称形の切開部分を含んでおり、それは組織の切開に関与する。非対称形の切開部分は器具100の長手方向の軸線L(図1Aに示す)の周りに非対称形に配置されている。長手方向の軸線Lは制御ハンドルアセンブリ148、外側細長シース110、端部キャップ120、及び切開エレメント130の近位部132に沿って延在する。非対称形の遠位の切開部分131は標的組織を周辺組織及び構造(例えば動脈)から離れる方向に把持し持ち上げることを可能にし、それによって、周辺組織及び構造の不用意な切開を回避する。具体的には、遠位部の間隙138(図1B)を標的組織と一致させて、周辺組織及び構造から離れる方向に把持し持ち上げるために、非対称形の遠位部131を軸線の廻りで所要角度回動する。
【0044】
遠位部131は電気エネルギーを供給する電気焼灼器(図示せず)を用いて適宜の導電性の状態にする。単極電流を、電気焼灼器から器具100の近位端101(図1A)に配置された電気ピンを通し、ケーブル150を通し、その後遠位部131の表面まで送る。遠位部131が組織と接触するとき、遠位部131から組織に電流が流れ、それによって遠位部131と組織の接触面で電流集中を引き起こす。組織が電気抵抗器のようにふるまうので、熱は遠位部131の表面に沿って生じて、その後遠位部131が接している組織へ伝達される。熱は、組織細胞内に生来含まれている水を過熱し、それによって組織細胞を破裂させる。組織細胞のこの破裂は電気外科切開として当技術分野においては一般的に既知の現象である。次に、電流は患者の背中に置かれた接地パッドに流れる。その後、電流は電気焼灼器に戻る。
【0045】
遠位部131に沿って増加する電流密度が望まれる応用があってもよい。遠位部131及び組織の接触面での電流密度は、遠位部131の一部分を絶縁することによって増加させることができる。一例では、遠位部131の外側エッジに沿った部分は、例えばユニグローブ・キスコ社(Uniglobe Kisco,Inc)から市販されている、パリレン(Parylene)(登録商標)などの絶縁被覆で覆うことができる。そのような絶縁被覆は、組織の電気的切開が遠位部131の内側の間隙138(図1B)に沿ってのみ生じることを可能にする効果がある。
【0046】
遠位部131は、組織と臓器を切開するのに十分に硬いあらゆる生体適合性及び導電性金属或いは金属合金材料を含めて、様々な材料で形成することができる。好ましくは、遠位部131は医療グレードのステンレス鋼のような硬い金属合金で形成される。また、遠位部131はニッケル−チタン合金などの形状記憶合金で形成されてもよい。
【0047】
図1Aに示すように、制御ハンドルアセンブリ148はステム141及びスプール142を含んでいる。スプール141はステム142と摺動可能に係合している。スプール141はステム142に沿った一連の摺動可能な動作を提供する。従って、ステム142に対するスプール141の軸線方向の移動により、それに取り付けられているトルクケーブル150及び切開エレメント130が、外側細長シース110に対して軸線方向に相応して移動するようにさせる。そのような軸線方向の移動は、図1Aでスプール141及び切開エレメント130に沿って置かれた両端矢印直線によって示される。ステム142に対するスプール141の回転動作により、トルクケーブル150及び切開エレメント130が、外側細長シース110に対して回転方向に相応して動作するようにさせる。そのような回転動作は、図1Aでスプール141及び切開エレメント130に沿って置かれた両端矢印回転線によって示される。図1Aは、制御アセンブリ140がさらにストッパ143を含むことを示している。ストッパ143はステム142に沿って調整可能である。所定の軸線方向位置でステムに沿ったストッパ143を締めることにより、スプール141が特定の処置中に所定距離を越えて軸線方向に延在しないことを保証する。制御ハンドルアセンブリ148の他の形態がトルクケーブル150及び切開エレメント130を作動させるために使用できることを理解されたい。
【0048】
別の実施形態では、図5に示すように、トルクケーブル150は外側固定シース500を含んでいてもよい。シース500は外側細長シース110内でトルクケーブル150を覆って配置することができる。シース500はトルクケーブル150の全長に延在することが好ましい。ケーブル150を固定して、器具100の屈曲中にケーブル150の大幅な捻じれを防ぐように、シース500は外側細長シース110と比べてより硬い材料で形成される。好ましくは、該材料は、器具100の横断面外形全体を実質的に増加させないように、外側細長シース110より薄い肉厚を有する。そのようなシース500に適した材料の一例はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。また、当技術分野においては外側細長シース110と比べて比較的硬いことが分かっている他の材料が使用されてもよい。外側細長シース110は、蛇行した体腔を通して器具100を進行させるために十分な押し込み性(pushability)を有している柔軟な材料から形成されることが好ましい。
【0049】
器具100は様々な手技に使用することができる。これより、電気外科器具100を使用する典型的な一方法を図6A−6Eを参照して記述していく。図6A−6Eは、動脈などの意図しない標的676を不注意に切開することなく、標的器官620を覆っている組織の標的ストランド610を切り離すための技術を概括的に記述している。組織ストランド610は大網の癒着であり、該大綱の癒着は典型的には、器官620に関係する外科的処置の後に標的器官620の周りで成長する膠原性の線維状物質である。意図しない標的676が他の血管、組織又は器官をさらに含んでもよいことを理解されたい。
【0050】
内視鏡は胃壁内の位置に到着するまで食道を通して患者の胃腸管へ進められる。電気外科器具100は、端部キャップ120の溝を有する開口部410内に配置された切開エレメント130の非対称形の遠位部131と共に、内視鏡の付属チャネルを通して進められる。そのような構成の一例を図6Dに示す。端部キャップ120内の切開エレメント130の完全な引込は、内視鏡の付属チャネルを通して前進中の装置の横断面外形を縮小する。
【0051】
ハンドルアセンブリ148の近位端101は、図6Aに示す位置に到着するまで付属のチャネルの遠位端を越えて進められる。切開エレメント130は、組織の標的ストランド610の位置に到着すると、制御ハンドルアセンブリ148のステム142を引く一方、ステム142に沿って遠位方向にスプール141を押すことによって、軸線方向に引き込められた位置から軸線方向に伸張された位置に移動する。切開エレメント130が軸方向に伸張する範囲は、ステム142に沿った所望位置でストッパエレメント143(図1A)を固定することにより調整することができる。明確化のために、ストッパエレメント143は図6A−6Dから省略されたことに注意すること。図6Aは、切開エレメント130の非対称形遠位部131が標的組織ストランド610に向かって軸方向に伸張することを示している。切開エレメント130の近位部132の所定の部分は、端部キャップ120の穴420を通って出てくる。図6Aに示す例では、ケーブル150の遠位端156は端部キャップ120の近位端に対して接して示されており、それによって、非対称形の遠位部131の軸方向への最大伸張位置を示している。
【0052】
非対称形の遠位部131の間隙138がまだ標的組織610に面していないので、非対称形の遠位部131に組織610を引っ掛けることを可能にするために、非対称形の遠位部131の間隙138を組織610と回転して位置合わせすることが必要となる。従って、スプール141は外側細長シース110及び端部キャップ120に対して反時計方向に約180度回転させられ、それらの両方はスプール141の回転中に実質的に静止したままである。該回転はスプール141の周りに反時計方向の回転矢印によって図6Aに示されている。図6Aに示すように、スプール141の回転はトルクケーブル150を反時計回転方向に相応して回転させる。切開エレメント130の周りの反時計方向の回転矢印によって示されるように、ケーブル150は近位部132及び切開エレメント130の遠位のフック部131に十分なトルクを伝達し、それによって、切開エレメント130の対応する回転を引起す。
【0053】
ここで図6Bは、非対称形の遠位部131の間隙138が、第1及び第2の縦材139及び137を連結する横材140によって画定されるとともに、切開される標的組織610に回転して一致且つ面するように、切開エレメント130の非対称形の遠位部131が構成されていることを示す。この時点で、標的組織ストランド610が第1及び第2の縦材139及び137の間の非対称形の遠位部131の間隙138に固定されるように、非対称形の遠位部131は標的組織ストランド610(図6B)と係合する(即ち引っ掛ける)。
【0054】
非対称形の遠位部131に標的組織ストランド610を把持又は引っ掛けると、切開が開始できる。図6Cは図6Bの拡大図であり、間隙138内及び非対称形の遠位部131上に引っ掛けられた組織ストランド610を示す。使用者は、矢印698によって示すように、内視鏡の遠位端に向けて器具100を近位方向に引くようにさせる制御ハンドルアセンブリ148を把持する。器具100が引かれるとともに、非対称形の遠位部131は紙面の面外に組織610を持ち上げるように標的組織ストランド610に張力を掛ける。非対称形の遠位部131の間隙138内に組織610を維持するのに十分な角度で、器具100を近位方向に引き、それによって、非対称形の遠位部131から組織610の滑り及び遊離を防ぐことが好ましい。わずかな角度で引っ張ることにより、非対称形の遠位部131の内角部801及び802のうちの1つに組織610が留まることを保証できる(図6C)。標的器官620及び意図しない標的676から十分に間隔を置かれるまで、組織131は紙面の面外に持ち上げられ続ける。
【0055】
組織610を標的器官620及び意図しない標的676から十分に離して持ち上げると、非対称形の遠位部131はその後に生じる切開のためにエネルギーを与えられる。図6Cに示すように、電流は、電気焼灼器からハンドルアセンブリ148の近位端101にある電気ピンに送られ、ケーブル150を通して、組織610を切開するための非対称形の遠位部131の露出面に沿って送られる。前述のように、切開中に、近位方向斜めに器具100を引くことによって非対称形の遠位部131の間隙138へ組織610をさらに進めることができるように、器具100を操作することができる。組織ストランド610は最終的に、位置615(図6d)で2つのより小さなストランドへ切開される。ストランド610の切開はより小さなストランドを作り、それによって、標的器官620への次のアクセスをできるようにする。上記の処置は、標的器官620を覆っている他の組織ストランドを取り除くために何度も繰り返すことができる。
【0056】
従来の針尖刃装置は、それらが切開する標的組織へ押し進むので、標的器官620又は意図しない標的676に向けて突き進む、より高い重大な危険性があり得る。従来の電気外科針尖刃は、切開ワイヤの、遠位端とは対照的に典型的には側面で切開する。ワイヤの側面が切開するので、該ワイヤは弓のような方向に曲り、標的組織の方へ押し、それによって、その後ろの任意の組織又は構造の方へ標的組織を圧縮する。標的組織の切開が完了するとき、ワイヤはむちのような制御できない方法でまっすぐになり、標的組織の後ろのどのような組織あるいは構造にも当たり得る(即ち、針尖刃ワイヤが右から左に切開している場合、ワイヤは標的組織620に当たり、或いは、針尖刃が左から右へ切開している場合、ワイヤは意図しない標的676に当たる)。この危険性は非対称形の遠位部131で回避されるが、その理由は、組織610が周囲の器官620及び意図しない標的676から十分に離れて持ち上げられた後だけ切開されるからである。
【0057】
標的器官620へアクセスするために十分な数のストランドを切開すると、非対称形の遠位部131は端部キャップ120の溝を有する開口部420へ引き戻すことができる。スプール141は外側細長シース110及び端部キャップ120に対して反時計方向に約90度回転させられ、それらの両方はスプール141の回転中に実質的に静止したままであることを、図6Bは示す。該回転はスプール141の周りに反時計方向の回転矢印によって図6Bに示されている。図6Bに示すように、スプール141の回転はトルクケーブル150を反時計回転方向に相応して回転させる。切開エレメント130の周りの反時計方向の回転矢印によって示されるように、ケーブル150は近位部132及び切開エレメント130の非対称形の遠位部131に十分なトルクを伝達し、それによって、切開エレメント130の対応する回転を引起す。代わりに、ケーブル150及び非対称形の遠位部131を回転させるために、スプール141は、時計回り方向で約90度回転してもよい。どちらかの回転方向によって、非対称形の遠位部131の細長い縦材137を、端部キャップ120(図4)の溝を有する開口部410と縦に一致するようにすることができる。
【0058】
また図6Dは、端部キャップ120の溝を有する開口部410内の縦材137を垂直に一致させるために、約90度反時計方向に回転させた非対称形の遠位部131を示す。縦材137が溝を有する開口部410と一致したまま(図4)、非対称形の遠位部131は端部キャップ120へ引き戻されてもよい。図6Dはスプール141がステム142に沿って近位方向に引き戻されることを示している。これはステム142を押す一方、スプール141を引くことにより達成することができる。近位部132は、端部キャップ120の穴420に再び入る。図6Dに示すように、ケーブル150が外側細長シース122のルーメン111内で近位方向に引き戻るように、スプール141は引き戻り続ける。スプール141は、縦材137が溝を有する開口部410内に着座するとき、引き戻ることをやめる(図6D)。
【0059】
図6Eは、キャップ120の溝を有する開口部410内に、完全に配置された非対称形の遠位部131の引き戻された幾何学的配置を示している。近位部132は、端部キャップ120の通路122を通って、外側細長シース110のルーメン111に延在している。端部キャップ120に非対称形の遠位部131を引き戻すと、器具100は患者から回収することができる。その後、多数の医療器具が、処置を行うために標的器官620に向けて導入することができる。
【0060】
また上記手技は、肝臓から離した胆嚢など、他の器官から離して標的器官を調べるために使用することができる。コラーゲン膜の長いシートが胆嚢を肝臓に相互に連結させる。
器具100は、意図しない部分への不注意な切開をすることなく、膜シートを切開するために利用することができる。非対称形の遠位部131は、膜シートの遠位端に沿って最初に穴部を破断する。穴部を通って非対称形の遠位部131を固定させると、非対称形の遠位部131は、膜をカットして、後の処置用に肝臓から胆嚢の分離を可能にするために、前述のように引き戻される。器具100は、ナイフ・ワイヤが膜シートに遠位方向に押込まれるとき、うっかりと臓器のうちの1つを刺すかもしれない従来の針尖刃より有利である。針尖刃が膜シートの切開を完了したとき、ワイヤはむちのような制御できない方法でまっすぐになり、胆嚢又は肝臓に当たり得る。そのような危険性は、器具100で実質的に回避される。
【0061】
さらに、器具100はまた脈管内処置に使用することができる。一例では、器具100は、胃壁に沿って配置された組織のフラップからガン組織を取除くことに関わる内視鏡的粘膜切除術に使用することができる。
【0062】
電気外科器具100の様々な構成部品を記述したが、これより、構成部品を組立てる1つの典型的な方法を論じていく。ケーブル150の遠位端156は、切開エレメント130とケーブル150のアセンブリを作るために、切開エレメント130の近位部132に固定される。切開エレメント130をケーブル150に固定した後に、ケーブル150の近位端155は端部キャップ120の穴420を通して引き入れられる。次に、任意の固定シース500をケーブル150に摺動可能に配置することができる。外側細長シース110は切開エレメント130とケーブル150のアセンブリ及び任意の固定シース500に配置される。次に、端部キャップ120の隆起部161は外側細長シース110内の粘着剤の使用で圧縮嵌合される。その後、制御ハンドルアセンブリ148は外側細長シース110の近位端191に取り付けられる。図2Bに示すように、ハンドルアセンブリ148は半田188によってトルクケーブル150の近位端に固定することができる。電気ピン(図示せず)は、ハンドルアセンブリ148の近位端101(図1A)に位置し、電気ケーブルによって電気焼灼器発電機ユニット(図示せず)に接続するように構成されている。電気ピンをトルクケーブル150の近位端101に沿って位置させることにより、ハンドルアセンブリ148の回転中に使用者の手で電気ケーブルの好ましくないもつれを生じることなく、トルクケーブル150の長手方向の長さに沿って電気ケーブルが回転することを可能にする。
【0063】
本発明の好適な実施形態を説明してきたが、本発明は、その様に限定されているわけではなく、本発明から逸脱することなく、修正を加えることができるものと理解されたい。本発明の範囲は、特許請求の範囲により定義されており、字義通りにせよ又は等価物によるにせよ、特許請求の範囲の意味に入る全ての装置は、同範囲に包含されるものとする。更に、以上に述べられている利点は、必ずしも、本発明の唯一の利点というわけではなく、また、必ずしも、述べられている利点の全てが本発明の個々の実施形態で実現されることになると考えているわけではない。
【符号の説明】
【0064】
100 電気外科切開器具
111、155、191 近位端
110 外側細長シース
111 ルーメン
120 端部キャップ
121、156、192 遠位端
122 通路
130 非対称形の導電性切開エレメント
131 遠位部
132 近位部
137 第2の縦材
138 窪んだ間隙
139 第1の縦材
140 横材、制御アセンブリ
141 上側領域、ステム、スプール
142 下側領域、スプール、ステム
142 ストッパ
148 制御ハンドルアセンブリ
150 トルクケーブル
160 ワイヤ部材
161 隆起部
167 中空の構成
188 半田
410 溝を有する開口部
420 穴
500 外側固定シース
610 標的組織ストランド
615 位置
620 標的器官
676 意図しない標的
700 鎌形状フック
720 空間
739 S字湾曲フック部
740 基部
750 柄
L 長手方向中央軸線
D 高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間に長手方向中央軸線を有する近位端及び遠位端を有し、前記近位端から前記遠位端まで延在しているルーメンをさらに備えている外側細長シースと、
近位端と遠位端の間に延在するロープのような構造体を形成するために、前記外側細長シースの前記長手方向中央軸線の周りに螺旋状に巻かれた複数の金属ワイヤを備え、前記外側細長シースの前記ルーメン内に延在するトルクケーブルと、
前記トルクケーブルの前記遠位端に取り付けられ、且つ前記シースの前記ルーメン内に延在するように構成された近位部を有する導電性切開エレメントであって、前記切開エレメントの長手方向軸線の周りに伸張する遠位部をさらに有し、切開のために前記切開エレメントの表面に標的組織を選択的に持ち上げるように、前記トルクケーブルの対応する回転方向及び軸線方向の動作によって回転方向に及び軸線方向に動作可能であるように構成された切開エレメントと
を備える、電気外科切開器具。
【請求項2】
前記外側細長シースの前記遠位端に取り付けられた近位部と、溝を有する開口部を備える遠位部を有する端部キャップをさらに備え、前記溝を有する開口部は前記長手方向中央軸線に対して横断方向に伸張されており、前記端部キャップは前記シースの前記ルーメン及び前記キャップの前記遠位部の前記溝を有する開口部と連通している通路をさらに備えている、請求項1に記載の電気外科切開器具。
【請求項3】
前記切開エレメントの前記遠位部は第1の縦材と、第2の縦材と、前記第1及び前記第2の縦材を連結している横材とを更に備えており、前記第1、前記第2の縦材、及び前記横材は、前記遠位部が切開エレメントの長手方向軸線の周りで非対称形であるように構成されている、請求項1に記載の電気外科切開器具。
【請求項4】
前記第2の縦材が前記第1の縦材以上の高さを有する、請求項3に記載の電気外科切開器具。
【請求項5】
前記第1の縦材の高さは約0.635mmから約2.032mmまでの間にあり、前記第2の縦材の前記高さは約1.27mmから約4.064mmまでの間にある、請求項3に記載の電気外科切開器具。
【請求項6】
前記器具は軸線方向に引き込まれた位置と軸線方向に伸張された位置の間で軸線方向に可動であり、前記軸線方向に引き込まれた位置は前記端部キャップの前記溝を有する開口部内に配置された前記切開エレメントの前記遠位部によって画定され、前記軸線方向に伸張された位置は前記端部キャップの前記遠位部を越えて伸張している前記切開エレメントの前記遠位部によって画定しており、前記軸方向に伸張された位置で前記第2の縦材が前記切開エレメントに前記標的組織を選択的に持ち上げるように構成されている、請求項3に記載の電気外科切開器具。
【請求項7】
前記トルクケーブルの前記近位端に操作可能に連結され、ステムと前記ステムに摺動可能に取り付けられたスプールを有する制御ハンドルアセンブリをさらに備え、前記スプールは前記ステムに対して第1の軸線方向に摺動するように構成されて、前記トルクケーブルと前記切開エレメントを前記第1の軸線方向に動かす、請求項1に記載の電気外科切開器具。
【請求項8】
前記スプールは前記ステムに対して第1の回転方向に回転するように構成されて、前記トルクケーブルと前記切開エレメントを前記第1の回転方向に回転させる、請求項7に記載の電気外科切開器具。
【請求項9】
前記ケーブルが約0.127ミリメートルだけ前記外側細長シースから離されている、請求項1に記載の電気外科切開器具。
【請求項10】
間に長手方向中央軸線を有する近位端及び遠位端を有し、前記長手方向軸線に沿って延在しているルーメンをさらに備えている外側細長シースと、
前記外側細長シースの前記遠位端に取り付けられた近位部と、溝を有する開口部を備える遠位部を有する端部キャップであって、前記シースの前記ルーメン及び前記キャップの前記遠位部の前記溝を有する開口部と連通している通路をさらに備えている端部キャップと、
近位端と遠位端の間に延在するロープのような構造体を形成するために、前記外側細長シースの前記長手方向中央軸線の周りに螺旋状に捻じられた複数の金属ワイヤを備え、前記外側細長シースの前記ルーメンを通って延在するトルクケーブルと、
前記トルクケーブルの前記遠位端に取り付けられた近位直線部を有する導電性切開エレメントであって、前記切開エレメントの前記近位直線部は前記端部キャップの前記通路内に延在するように構成され且つ前記外側細長シースの長手方向中央軸線に実質的に平行であり、長手方向中央軸線の周りに非対称形に配置された遠位部をさらに有し、前記切開エレメントの前記回転方向及び軸線方向の動作が、前記非対称形遠位部形状を切開のために前記切開エレメントに標的組織を選択的に持ち上げさせるために、前記トルクケーブルの対応する回転方向及び軸線方向の動作によって回転方向及び軸線方向に動作可能であるように構成された切開エレメントと
を備える、電気外科切開器具。
【請求項11】
前記非対称形遠位部はフック形状である、請求項10に記載の電気外科切開器具。
【請求項12】
前記非対称形遠位部はS字形状である、請求項10に記載の電気外科切開器具。
【請求項13】
前記切開エレメントの前記非対称形遠位部は前記外側細長シースの前記長手方向中央軸線を横断する細長い縦材を備える、請求項10に記載の電気外科切開器具。
【請求項14】
前記切開エレメントの前記非対称形遠位部は前記切開エレメントの表面の少なくとも一部に沿って電気絶縁層材料をさらに備える、請求項10に記載の電気外科切開器具。
【請求項15】
前記トルクケーブルを屈曲中に安定させるため前記トルクケーブルに外挿され、前記外側細長シースに比べてより硬い材料を含む、シースをさらに備える、請求項10に記載の電気外科切開器具。
【請求項16】
前記切開エレメントは中に前記組織が持ち上げられる横方向に面する間隙を画定している、請求項10に記載の電気外科切開器具。
【請求項17】
(a)電気外科切開器具を提供するステップであって、
間に長手方向中央軸線を有する近位端及び遠位端を有し、前記近位端から前記遠位端まで延在しているルーメンをさらに備えている外側細長シースと、
複数の金属ワイヤを備え、前記外側細長シースの前記ルーメン内に延在するトルクケーブルと、
前記トルクケーブルの前記遠位端に取り付けられた近位部を有する非対称形導電性切開エレメントであって、前記切開エレメントの長手方向軸線の周りで非対称形である遠位部をさらに有する切開エレメントと
を備える、電気外科切開器具を提供するステップと、
(b)軸線方向に引き込まれた形態で配置された前記切開エレメントとともに、前記標的組織に向けて前記電気外科切開器具を進めるステップと、
(c)軸線方向で遠位方向に前記切開エレメントを伸張するステップと、
(d)前記標的組織に向けて前記非対称形切開エレメントの前記遠位部を回転して一致させるために、前記非対称形切開エレメントの前記遠位部を相応して回転させるように前記トルクケーブルを回転させるステップと、
(e)前記非対称形切開エレメントの前記遠位部に標的組織を係合させるステップと、
(f)周辺の組織及び構造から離れる方向に前記標的組織を持ち上げるステップと、
(g)前記トルクケーブルを通して前記切開エレメントの前記遠位部に電流を流すステップと、
(h)前記標的組織を切開するステップと
を含む、標的組織を切開する方法。
【請求項18】
ステップ(c)は、軸線方向で前記遠位方向に前記切開エレメントを伸張するために、ステムに対してスプールを摺動可能に伸張するステップをさらに含んでおり、前記ステムと前記スプールのうちの1つは前記トルクケーブルと操作可能に連結している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(d)は、ステムに対してスプールを回転させて前記外側細長シースに対して前記スプールを回転させるステップをさらに含んでおり、前記ステムと前記スプールのうちの1つは前記トルクケーブルと操作可能に連結している、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(f)は、前記非対称形切開エレメントに前記標的組織を前記周辺の組織及び構造から離れる方向に持ち上げさせるために、前記器具の近位端を引っ張るステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図6E】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−513291(P2012−513291A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543652(P2011−543652)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/069259
【国際公開番号】WO2010/075425
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】