説明

電気掃除機およびその吸口体

【課題】吸口体を大きくすることなく、必要な駆動トルクを伝達でき、歯飛びや騒音増大が発生しにくい吸口体及びこの吸口体を用いた電気掃除機を提供する。
【解決手段】吸口体106内に、回転ブラシ302と回転ブラシを駆動するブラシ駆動用電動機501を有し、ブラシ駆動用電動機から回転ブラシに駆動力を伝達する手段として、回転ブラシ側に大径プーリー604、ブラシ駆動用電動機側に小径プーリー602を設け、その間を歯付きベルト605で連結する電気掃除機およびその吸口体において、吸口体内部の、小径プーリーと大径プーリーの間に、歯付きベルトの背面で、かつ吸口体の上方側にテンションプーリー606を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部によって駆動される回転清掃体を有する吸口体(例えば、パワーブラシ)およびその吸口体を備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在一般的な電気掃除機は、集塵装置を備えた掃除機本体と、床面の塵埃を吸引する床用吸口体とを延長管や吸引ホースで連結したキャニスタータイプと呼ばれる構造のものである。この掃除機本体は、その内部に集塵装置と電動送風機を備え、車輪を介して自在に移動可能な構造となっている。一方、床用吸口体は、床面を清掃するために、その内部に回転ブラシとその駆動部を備え、この回転ブラシを回転させることで、床面の塵埃を掻きあげて、これを吸引する構造となっている。
【0003】
この駆動部から回転ブラシに駆動力を伝達する手段として、回転ブラシに大径プーリー、駆動部側に小径プーリーを設け、その間を歯付きベルトで連結し、駆動部から回転ブラシに駆動力を伝達している。
【0004】
また、特許文献1では、テンションプーリーにより、伝動プーリーに所定の張力を維持できる吸口体が提案されている。具体的には、ベルトの内周にテンションプーリーを当接している。
【0005】
特許文献2でも、伝達ベルトの内周にテンションロータを当接している。
【0006】
特許文献3では、水平状態においてテンションロータによりベルトのプーリー間を押圧してそのベルトに駆動力伝達のための張力を発生させ、保護板の内方への回動時にテンションロータによるベルトの押圧を解除している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−93282号公報
【特許文献2】特開平7−39495号公報
【特許文献3】特公昭61−52686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
吸口体の回転ブラシには、毛足の長いじゅうたんを清掃したり、また楽な操作性を実現するためにじゅうたん上での清掃時にブラシの回転力で吸口体が自ら前進する機能を付加するため、大きな駆動トルクが必要になる。
【0009】
そのため、大径プーリーの歯数を多く、小径プーリーの歯数を小さくして、減速比を大きくする事により、大きな駆動トルクを得ている。
【0010】
この駆動トルクを大きくするためには、大径プーリーの歯数を多くするか、小径プーリーの歯数を小さくする必要がある。
【0011】
しかし、大径プーリーの歯数を多くするためには、大径プーリーの直径を大きくする必要があり、その結果、回転ブラシの直径も大きくなる。そうすると吸口体の床面からの高さが増大し、狭い所に吸口体が入らなくなる等の不具合点が生じるという問題点があった。
【0012】
そこで、小径プーリーの歯数を小さくしていくと、ベルト巻付角が小さくなり歯飛び(ベルト歯がプーリー歯に乗り上げ、一瞬のうちに次の歯溝に移動する現象)が生じ、騒音やベルト歯のせん断の原因になる。
【0013】
また、この歯飛びを防止するために、ベルト幅を大きくすると、吸口体の横幅に対してゴミを取らない範囲が大きくなってしまう。
【0014】
また、この歯飛びを防止するために、小径プーリーと大径プーリーの軸間距離を広げて、歯付きベルトの張力を上げることも有効であるが、この場合はベルトとプーリーの噛み合い振動が増大し、騒音が増大してしまう。また、ベルトの寿命が短くなったり、軸受けの損失が増加したりする。
【0015】
そこで、この発明の目的は、吸口体を大きくすることなく、必要な駆動トルクを伝達でき、歯飛びや騒音増大が発生しにくい吸口体及びこの吸口体を用いた電気掃除機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本発明は、小径プーリーと大径プーリーの間に、歯付きベルトの背面で、かつ吸口体の上方側にテンションプーリーを設ける。
【0017】
または、本発明は、第1のプーリーと第2のプーリーとの間の第3のプーリーを、ベルトの外周のうち部屋の開口が形成された側とは反対側の外周に当接させる。
【0018】
または、本発明は、第1のプーリーと第2のプーリーとの間の第3のプーリーを、ベルトの外周のうち回転清掃体の取り外し方向とは反対側の外周に当接させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小径プーリー(第1のプーリー)のベルト巻付角と大径プーリー(第2プーリー)のベルト巻付角を大きくでき、歯飛びを防止することができる。
【0020】
また、本発明によれば、歯飛びを防止するために、小径プーリーと大径プーリーの軸間距離を広げる必要がなくなり、適正な軸間距離に設定できるので、プーリーの噛み合い振動による騒音が低下し、歯付きバルト(ベルト)の寿命が短くなったり、軸受けの損失が増加したりするのも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本形態例による電気掃除機の外観図。
【図2】本形態例による電気掃除機の吸口体の上面図。
【図3】本発明による電気掃除機の吸口体の底面図。
【図4】本形態例による電気掃除機の吸口体の中央断面図。
【図5】本形態例による電気掃除機の吸口体の上面図。
【図6】本形態例による電気掃除機の吸口体の上面拡大図。
【図7】本形態例による電気掃除機の吸口体の底面拡大図。
【図8】本形態例による電気掃除機の吸口体のA−A′断面図。
【図9】本形態例による電気掃除機の吸口体の回転ブラシ取り外し分解図。
【図10】本形態例による電気掃除機の吸口体のB−B′断面図。
【図11】本形態例による電気掃除機の吸口体の回転ブラシ取り外し分解図。
【図12】本形態例による電気掃除機の吸口体の小径プーリーと大径プーリーとテンションプーリーとの位置関係の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
吸口体は、被清掃面を摺擦する摺擦部材(例えば、毛)を有する回転清掃体(例えば、回転ブラシ)と、前記回転清掃体を駆動する駆動部(例えば、ブラシ駆動用電動機)と、前記駆動部から前記回転清掃体に駆動力を伝達するための前記回転清掃体側の大径プーリー及び前記駆動部側に小径プーリーと、前記大径プーリーと前記小径プーリーとの間を連結する歯付きベルトとを有し、前記吸口体は、前記小径プーリーと前記大径プーリーの間に、前記歯付きベルトの背面で、かつ前記吸口体の上方側にテンションプーリーを有することを特徴とする。
【0023】
吸口体は、被清掃面に対して開口する部屋(例えば、ブラシ室)と、前記部屋に回転可能に配置される回転清掃体(例えば、回転ブラシ)と、駆動部(例えば、ブラシ駆動用電動機)と、前記駆動部に連結された第1のプーリー(例えば、小径プーリー)と、前記回転清掃体に連結された第2プーリー(例えば、大径プーリー)と、前記第1のプーリーと前記第2プーリーとを連結するベルト(例えば、歯付きベルト)と、前記ベルトの外周に当接する第3のプーリー(例えば、テンションプーリー)とを備え、前記第3のプーリーは、前記ベルトの外周のうち前記部屋の前記開口が形成された側とは反対側の外周に当接することを特徴とする。
【0024】
吸口体は、被清掃面に対して開口する部屋(例えば、ブラシ室)と、前記部屋に回転可能に配置される回転清掃体(例えば、回転ブラシ)と、駆動部(例えば、ブラシ駆動用電動機)と、前記駆動部に連結された第1のプーリー(例えば、小径プーリー)と、前記回転清掃体に連結された第2プーリー(例えば、大径プーリー)と、前記第1のプーリーと前記第2プーリーとを連結するベルト(例えば、歯付きベルト)と、前記ベルトの外周に当接する第3のプーリー(例えば、テンションプーリー)とを備え、前記回転清掃体は、前記部屋から着脱可能であり、前記第3のプーリーは、前記ベルトの外周のうち前記回転清掃体の取り外し方向とは反対側の外周に当接することを特徴とする。
【0025】
そして、本発明によれば、小径プーリー(第1のプーリー)のベルト巻付角と大径プーリー(第2のプーリー)のベルト巻付角を大きくでき、歯飛びを防止することができる。また、歯飛びを防止するために、小径プーリーと大径プーリーの軸間距離を広げる必要がなくなり、適正な軸間距離に設定できるので、プーリーの噛み合い振動による騒音が低下し、ベルトの寿命が短くなったり、軸受けの損失が増加したりするのも抑制できる。
【0026】
また、テンションプーリーを歯付きベルトの緩み側に設けることにより、歯付きベルトの共振等による不要な振動を抑え、低騒音化が図れる。
【0027】
また、テンションプーリーを取り付けるシャフトを、上ケースと下ケースで挟んで固定することにより、別部材を用いることなく、小型で、安価にテンションプーリーの取り付けを行うことができる。
【0028】
また、量産時に、歯付きベルトの張力の微調整を行う場合も、上ケースと下ケースの合わせ面を調整する(たとえば、上ケースを伸ばし、下ケースを削ることにより、テンションプーリーの取り付け位置を下げる)ことにより、簡単に行うことができる。
【0029】
以下、本発明の実施例について、図面を引用して説明する。
【0030】
図1に本発明による電気掃除機の外観図を示す。図1において、101は吸引力を発生すると共に塵埃を補足・収容する掃除機本体、102は一端が電気掃除機本体の吸引側に接続される中空の吸引ホース、103は一端が吸引ホース102の他端に接続される中空の手元ハンドル、104は手元ハンドル103に配置され掃除機本体101のON/OFFなどの操作を受け付け可能な操作部、105は一端が手元ハンドルの他端に接続される伸縮自在で中空の延長管、106は根元端が延長管の他端に接続される主に床を清掃するための吸口体を示している。掃除機本体101の外郭を形成する本体ケーシングの内側には、吸引力を発生する電動送風機と、この電動送風機の吸引側に集塵室が設けられている。吸口体106は、略T字形状を有する。吸引ホース102は、掃除機本体101に対して着脱自在であり、延長管105は、手元ハンドル103に対して着脱自在であり、吸口体106は、延長管105に対して着脱自在である。なお、図示してはいないが、吸引ホース102および延長管105には、掃除機本体101から吸口体106に供給する電力を伝送する電源線を設けてある。
【0031】
図2に本形態例による電気掃除機の吸口体の上面図を示す。図2において、201は吸口体106の上ケース、202は内部に塵埃を含む空気の通気路を有し前後左右に回動可能な自在継手管、203〜204は吸口体内のブラシ駆動用電動機501に電力を供給するための接触ピンである。吸口体106が延長管105に接続された状態では、接触ピン203,204が、延長管105の電源線に接続される。
【0032】
図3に本形態例による電気掃除機の吸口体の底面図を示す。図3において、301は吸口体106の下ケース、302は回転ブラシ(回転清掃体)、303は吸口体106の底面が被清掃面に接触しているか否かを検知するブラシ駆動スイッチ、304は回転ブラシ302を取り外すためのブラシカバー、305はベルト側のブラシカバー、306は車輪である。また、ブラシ駆動スイッチ303は車輪を備え、この車輪が常に吸口体106の底面から飛び出すようにバネ(図示せず)を介して取り付けられる。そして、このブラシ駆動スイッチ303は、車輪が飛び出しているときはブラシ駆動用電動機の駆動を停止して、回転ブラシ302の回転をOFF状態とし、一方、車輪が床面などに触れて吸口体106内に収納されるとブラシ駆動用電動機を駆動して回転ブラシ302の回転をON状態とすることにより安全性を高めている。また、吸口体106の後端部には大車輪306が設けられており、この大車輪306を介して、手元ハンドル103で操作される前後動や回転操作の応力を受けて、吸口体106の底面を床面に密着させて、吸口体の操作性能を向上させている。吸口体106の外郭は、上ケース201と下ケース301とによって形成される。回転ブラシ302は、円筒形状の基体の外周面に螺旋状に、半径方向に向かって伸びる毛が植毛されている。
【0033】
図4に本形態例による電気掃除機の吸口体の中央断面図を示す。図4において、302は回転ブラシ、401は回転ブラシ302を収納するブラシ室である。下ケース301には、略半円筒形状のブラシ室401(部屋)が形成されている。ブラシ室401は、被清掃面に向かって開口する。つまり、ブラシ室401の開口は、吸口体106の底面に形成される。そして、回転ブラシ302は、このブラシ室401に回動自在に収容される。例えば、回転ブラシ302の軸方向の両端には軸が設けられ、ブラシ室の軸方向の内側両端には軸受けが設けられ、回転ブラシ302の軸が、ブラシ室401の軸受けに支持されることによって、ブラシ室401内に回転ブラシ302を回動自在に支持することができる。
【0034】
ブラシ室401と延長管105は、内部に塵埃を含む空気の通気路を有す自在継手管202を介して連通している。回転ブラシ302により巻き上げられた塵埃は、矢印402で示す流路を通って、延長管105へ運ばれ、さらに吸引ホース体102を通って掃除機本体101の集塵室に運ばれる。
【0035】
図5に本形態例による電気掃除機の吸口体の上ケース201を取り外した状態での上面図を示す。図5において、501はブラシ駆動用電動機(モータ)、502はブラシ駆動用電動機501を制御する回路基板である。ブラシ駆動用電動機501が、回転ブラシ302を駆動する駆動部を形成する。ブラシ駆動用電動機501および制御回路基板502は、ブラシ室401に対して後側に形成される。ブラシ駆動用電動機501と制御回路基板502とは、吸口体106の左右方向の中央を基準として、反対側に形成される。吸口体106の左右方向の中央部分には、図4で説明した流路が形成される。ブラシ駆動用電動機501は、吸口体106の左右方向の中央部分に配置されてもよい。つまり、ブラシ駆動用電動機501は、流路の下側に形成されてもよい。
【0036】
なお、図示してはいないが、接触ピン203〜204とブラシ駆動用電動機501および制御回路基板502は電源コードにて接続されている。接触ピン203,204から供給された電力が、ブラシ駆動用電動機501および制御回路基板502に供給される。
【0037】
図6に本形態例による電気掃除機の吸口体の上ケース201を取り外した状態での上面拡大図を示す。特に、図5の右側の上面拡大図を示している。図6において、601はブラシ駆動用電動機501の回転シャフト(軸)、602は回転シャフト601に取り付けられた小径プーリー、603は回転シャフト601を支持するための軸受け、604は回転ブラシ302の回転シャフト(軸)に取り付けられた大径プーリー、605は小径プーリー602から大径プーリー604へ動力を伝達するための歯付きベルト、606はテンションプーリー、607はテンションプーリー606を固定するためのシャフトである。小径プーリー602の外周と大径プーリー604の外周とに跨るように、歯付きベルト605が嵌められる。小径プーリー602と大径プーリー604と歯付きベルト605とによって、ブラシ駆動用電動機501の駆動力を、回転ブラシ302に伝達する伝達手段が構成される。
【0038】
テンションプーリー606は、図6に示すように、前後方向では、歯付きベルト605に対して、上ケース201側に配置される。テンションプーリー606は、前後方向では、小径プーリー602と大径プーリー604との間に配置される。前後方向では、テンションプーリー606(シャフト607)の回転中心は、小径プーリー602(回転シャフト601)の回転中心と大径プーリー604(回転シャフト)の回転中心との中間よりも、小径プーリー602(回転シャフト601)の回転中心側に形成されるのが好ましい。つまり、前後方向では、テンションプーリー606は、大径プーリー604よりも小径プーリー602に近い側に形成されるのが好ましい。テンションプーリー606のシャフト607の軸方向は、ブラシ駆動用電動機501の回転シャフト601の軸方向および回転ブラシ302の回転シャフトの軸方向と略同一である。よって、テンションプーリー606の回転方向は、ブラシ駆動用電動機501の回転方向および回転ブラシ302の回転方向と略同一である。テンションプーリー606の回転中心には、シャフト607が通され、シャフト607の軸方向両端が、上ケース201と下ケース301との間に挟みこまれて支持される。つまり、テンションプーリー606は、シャフト607によって吸口体106内に回転自在に支持される。テンションプーリー606の外周面は、平滑面であるのが好ましい。ただし、テンションプーリー606の外周面には、歯が形成されていてもよい。テンションプーリー606の外周面が平滑面であれば、テンションプーリー606は、吸口体106に対して回転しないものであってもよい。テンションプーリー606の外周面の断面は、図6に示すように、平面形状である。ただし、テンションプーリー606の外周面の断面は、凹形状やU字形状,V字形状であってもよい。
【0039】
小径プーリー602は、ブラシ駆動用電動機501の回転シャフト601と共に回転し、大径プーリー604も、回転ブラシ302の回転シャフトと共に回転する。小径プーリー602の外径は、大径プーリー604の外径よりも小さい。よって、ブラシ駆動用電動機501に対して回転ブラシ302の回転速度は遅くなるが、その分トルクは増す。小径プーリー602の外周および大径プーリー604の外周は、歯を有する。つまり、小径プーリー602の外周および大径プーリー604の外周は、凹凸を有する。小径プーリー602および大径プーリー604は、歯車である。小径プーリー602の外周の歯のピッチ(歯間距離)と、大径プーリー604の外周の歯のピッチ(歯間距離)とは略同一であるのが好ましい。よって、小径プーリー602の歯数は、大径プーリー604の歯数よりも少ない。歯付きベルト605の内周には、小径プーリー602および大径プーリー604の歯のピッチに対応するピッチで歯を有する。つまり、歯付きベルト605の内周も、凹凸を有する。ただし、小径プーリー602の歯,大径プーリー604の歯,歯付きベルト605の歯は、なくてもよい。歯付きベルト605の内周面の断面は、平面形状である。
【0040】
テンションプーリー606がない場合は、大径プーリー604での歯付きベルト605の巻付角は、180度よりも大きくなるが、小径プーリー602での歯付きベルト605の巻付角は、180度よりも小さくなる。よって、大径プーリー604よりも小径プーリー602のほうが、歯付きベルト605の歯飛びが発生しやすい。また、小径プーリー602の歯ピッチと大径プーリー604の歯ピッチが同程度の場合、小径プーリー602の歯と歯付きベルト605の歯とが噛み合う歯の数が、大径プーリー604の歯と歯付きベルト605の歯とが噛み合う歯の数よりも少なくなるため、大径プーリー604よりも小径プーリー602のほうが、歯付きベルト605の歯飛びが発生しやすい。
【0041】
図7に本形態例による電気掃除機の吸口体の底面拡大図を示す。図7において、分かりやすくするため、ブラシカバー305を取り外した状態を示している。図7において、701は大径プーリー604から回転ブラシ302を取り外すためのクラッチ、702は歯付きベルト605のベルト幅である。クラッチ701は、2つのクラッチ(1組のクラッチ)からなり、一方のクラッチは回転ブラシ302の基体に固定され、他方のクラッチは大径プーリー604の回転シャフトに固定される。一方のクラッチが他方のクラッチに噛み合うことによって、クラッチ同士が連結され、よって、回転ブラシ302と大径プーリー604とが連結される。ただし、クラッチ701は、必須の構成ではない。テンションプーリー606は、上ケース201側に配置されるため、図7のように吸口体106を底面から見た図では、テンションプーリー606は見えない。
【0042】
図8は、図2におけるA−A′断面図を示す。図12は、図8の小径プーリー602と大径プーリー604とテンションプーリー606との位置関係の模式図である。図8において、801は小径プーリー602のベルト巻付角(ベルトとプーリーが接触している角度)、802は大径プーリー604のベルト巻付角、803は大径プーリー604の回転方向(図8では反時計回り)を示す矢印、1201は大径プーリー604の回転シャフトである。図8および図12に示すように、小径プーリー602の回転中心1202は、大径プーリー604の回転中心1204よりも上側に位置する。つまり、小径プーリー602は、大径プーリー604よりも上側に配置される。
【0043】
テンションプーリー606は、小径プーリー602と大径プーリー604との間の歯付きベルト605の外周に当接する位置に配置される。つまり、図12に示すように、前後方向では、テンションプーリー606の回転中心1203は、小径プーリー602の回転中心1202と大径プーリー604の回転中心1204との間に配置される。図12に示すように、上下方向では、テンションプーリー606の回転中心1203は、小径プーリー602の外周と大径プーリー604の外周とを結ぶ2つの接線(点線)1205,1206の間に配置される。よって、吸口体106の底面が被清掃面に接しているか接していないかに関わらず、つまりブラシ駆動スイッチ303によるブラシ駆動用電動機501の駆動/停止に関わらず、テンションプーリー606は、常に歯付きベルト605の外周に当接している。さらに、前後方向では、テンションプーリー606の回転中心1203は、小径プーリー602の回転中心1202と大径プーリー604の回転中心1204とを結ぶ線分(一点破線)1207の中間にある中間線(一点破線)1208よりも小径プーリー602に近いのが好ましい。さらに、前後方向では、テンションプーリー606の回転中心1203は、小径プーリー602の回転中心1202と大径プーリー604の回転中心1204とを結ぶ線分1207上で小径プーリー602の外周と大径プーリー604の外周との間の中間にある中間線(一点破線)1209よりも小径プーリー602に近くてもよい。さらに、上下方向では、テンションプーリー606の外周の下端は、小径プーリー602の外周を通り線分1207に平行な線(一点破線)1210よりも下側(接線1206側)であるのが好ましい。これによって、小径プーリー602のベルト巻付角801を180度よりも大きくすることができる。よって、小径プーリー602および大径プーリー604の両方のベルト巻付角を180度よりも大きくすることができる。尚、接線1205,1206は、テンションプーリー606がない場合の歯付きベルト605の形成位置となる。
【0044】
駆動源側である小径プーリー602は反時計回りに回転するため、歯付きベルト605の上側部分(接線1205に相当)よりも下側部分(接線1206に相当)に張力がかかることになる。そこで、テンションプーリー606は、張力がかからない側、つまり歯付きベルト605の上側部分の外周に当接する位置に配置する。これによってテンションプーリー606にかかる張力も小さくなり、テンションプーリー606に負荷がかかるのを低減することができる。
【0045】
テンションプーリー606の外径は、大径プーリー604および小径プーリー602の外径よりも小さいのが好ましい。ただし、テンションプーリー606の外径は、大径プーリー604および小径プーリー602の外径よりも大きくてもよいし、大径プーリー604の外径と小径プーリー602の外径との間であってもよい。上下方向では、テンションプーリー606の外周の上端の位置は、小径プーリー602の外周の上端の位置と略同一であるのが好ましい。つまり、上下方向では、テンションプーリー606の外周の上端は、小径プーリー602の外周の上端を通る水平線(2点破線)1211上にあるのが好ましい。これによって、テンションプーリー606の追加によって伝達手段の高さ(上下方向の長さ)が高くなるのを抑制できる。また、上下方向では、テンションプーリー606の回転中心1203は、小径プーリー602の回転中心1202より上側に位置するのが好ましい。つまり、上下方向では、テンションプーリー606の回転中心1203は、小径プーリー602の回転中心1202を通る水平線(2点破線)1212よりも上側に位置するのが好ましい。
【0046】
図9に本形態例による電気掃除機の吸口体の回転ブラシ302の取り外し分解図を示す。図9において、901はブラシカバー304を取り外すためのレバーである。レバー901の代わりに、ネジであってもよい。回転ブラシ302を取り外すときは、まずレバー901を開いてブラシカバー304の係合を解除し、ブラシカバー304を取り外す。これにより回転ブラシ302はブラシカバー304側から持ち上げ取り外すことができる。逆に回転ブラシ302を取り付ける場合は、回転ブラシ302とブラシカバー304とは反対側のクラッチ701を噛みあわせ、回転ブラシ302をブラシ室401内に収納し、ブラシカバー304を取りつけ、レバー901を閉じる。歯付きベルト605はクラッチ701側に存在し、クラッチ701によって回転ブラシ302と大径プーリー604とを分離可能なため、回転ブラシの取り外しにあたり、歯付きベルト605を大径プーリー604から取り外したり、取り付けたりする必要がないため、回転ブラシの取り外しが容易である。ただし、大径プーリー604,小径プーリー602は、ブラシカバー304側に存在してもよい。
【0047】
図10に図2におけるB−B′断面図を示す。1001は、上ケース201と下ケース301との相対的な着脱方向である。図10からわかるように、テンションプーリー606を固定するためのシャフト607は、吸口体106の上ケース201と下ケース301に挿むことで固定されている。
【0048】
図11に回転ブラシに大径プーリーが固定されている場合の回転ブラシ取り外し分解図を示す。回転ブラシ1101に大径プーリー604が固定されている場合とは、クラッチ701がない場合である。図11において1101は大径プーリー604が固定されている回転ブラシ、1102はブラシ室401に対する回転ブラシ1101の着脱方向である。大径プーリー604が固定されている場合は、歯付きベルト605を大径プーリー604から取り外したり、取り付ける必要がある。回転ブラシ1101は、ブラシ室401に対して略上下方向に着脱される。回転ブラシ1101は、ブラシ室401に対してブラシ室401の開口側つまり吸口体106の底面側に取り外され、ブラシ室401の開口側つまり吸口体106の底面側から取り付けられる。テンションプーリー606が歯付きベルト605の外周側で、かつ、回転ブラシ1101や大径プーリー604の取り外し方向とは反対側(上側)に配置されているため、テンションプーリー606が歯付きベルト605の内周側や、外周側でも取り外し方向側(下側)に配置される場合に比較して、ブラシ室401から回転ブラシ1101や大径プーリー604を取り外したり、取り付けたりする際に、テンションプーリー606に阻害されることがないため、回転ブラシ1101や大径プーリー604が容易である。
【0049】
以下、図を用いて、この発明に係る実施の形態の動作を詳細に説明する。
【0050】
掃除機使用者が手元ハンドル103付近に配置された手元スイッチなどの操作部104を操作すると、操作されたスイッチに従った動作モードで掃除機本体101内の電動送風機が運転する。電動送風機によって発生した吸引力は、吸引ホース102,延長管105を通って吸口体106に到達する。それと同時に、吸引ホース102および延長管105に設けられた電源線から供給された電源が、接触ピン203〜204を介してブラシ駆動用電動機501を駆動する。これにより回転シャフト601に取り付けられた小径プーリー602が回転し、この動力は歯付きベルト605により大径プーリー604に伝達される。大径プーリー604の回転は、クラッチ701を介して回転ブラシ302に伝達され、回転ブラシ302が回転する。
【0051】
回転ブラシ302には、毛足の長いじゅうたんを清掃したり、また楽な操作性を実現するためにじゅうたん上での清掃時にブラシの回転力で吸口体106が自ら前進する機能を付加するため、大きな駆動トルクが必要になる。そのため、大径プーリー604の歯数を多く、小径プーリー602の歯数を小さくして、減速比を高くする事により、大きな駆動トルクを得ている。
【0052】
しかし、大径プーリー604の歯数を多くするためには、大径プーリーの直径を大きくする必要があり、その結果、回転ブラシ302の直径も大きくなる。そうすると吸口体106の床面からの高さが増大し、狭い所に吸口体が入らなくなる等の不具合点が生じる。
【0053】
そこで、小径プーリー602の歯数を小さくしていくと、ベルト巻付角801が小さくなり歯飛び(ベルト歯がプーリー歯に乗り上げ、一瞬のうちに次の歯溝に移動する現象)が生じ、騒音やベルト歯のせん断の原因になる。
【0054】
また、この歯飛びを防止するために、ベルト幅702を大きくすることも有効であるが、吸口体の場合、ベルト幅702を大きくすると、吸口体106の横幅に対してゴミを取らない範囲が大きくなってしまう。
【0055】
また、この歯飛びを防止するために、小径プーリー602と大径プーリー604の軸間距離を広げて、歯付きベルト605の張力を上げることも有効であるが、この場合はベルトとプーリーの噛み合い振動が増大し、騒音が増大してしまう。また、ベルトの寿命が短くなったり、軸受けの損失が増加したりする。
【0056】
そこで本形態例では、小径プーリー602と大径プーリー604の間に、テンションプーリー606を設けている。テンションプーリー606を歯付きベルト605の背面(外周面)から使用することにより、小径プーリー602のベルト巻付角801と大径プーリー604のベルト巻付角802を大きくでき、歯飛びを防止することができる。
【0057】
このとき、テンションプーリー606の取り付けを、大径プーリー604より小径プーリー602に近い位置に設置することにより、歯飛びし易い小径プーリー602のベルト巻付角801がより大きくできる。
【0058】
また、歯飛びを防止するために、小径プーリー602と大径プーリー604の軸間距離を広げる必要がなくなり、適正な軸間距離に設定できるので、歯付きベルト605とプーリーの噛み合い振動による騒音が低下し、ベルトの寿命が短くなったり、軸受けの損失が増加したりすることもない。歯付きベルト605の張力を大きくすると、歯付きベルト605とプーリーの噛み合い振動による騒音が発生しやすくなるが、小径プーリー602のベルト巻付角801と大径プーリー604のベルト巻付角802を大きくすることによって、歯付きベルト605の張力も小さくできるため、騒音の発生を抑制することができる。
【0059】
また、テンションプーリー606を歯付きベルト605の緩み側(張力の小さい側)に設けることにより、歯付きベルト605の共振等による不要な振動を抑え、低騒音化が図れる。
【0060】
また、テンションプーリー606を取り付けるシャフト607を、上ケース201と下ケース301で挟んで固定することにより、別部材を用いることなく、小型で、安価にテンションプーリー606の取り付けを行うことができる。
【0061】
また、量産時に、歯付きベルト605の張力の微調整を行う場合も、上ケース201と下ケース301の合わせ面を調整する(たとえば、上ケース201を伸ばし、下ケース301を削ることにより、テンションプーリー606の取り付け位置を下げる)ことにより、簡単に行うことができる。
【0062】
また、図11に示すように、回転ブラシ1101に大径プーリーが固定されている場合では、テンションプーリー606が回転ブラシ取り外し方向と反対側(上側)に設けているため、回転ブラシ取り外しの支障にならない。また、歯付きベルト605の周長は、テンションプーリー606がない場合と比較して、長くなるので、回転ブラシへの歯付きベルト605の取り外しと取り付けが容易になる。
【0063】
また、歯付きベルト605は、油成分が触れると特性が劣化するため、テンションプーリー606の材質は、ポリオキシメチレン(POM)等の樹脂が望ましい。
【符号の説明】
【0064】
101 掃除機本体
102 吸引ホース
103 手元ハンドル
104 操作部
105 延長管
106 吸口体
302,1101 回転ブラシ(回転清掃体)
501 ブラシ駆動用電動機
502 制御回路基板
601 ブラシ駆動用電動機の回転シャフト
602 小径プーリー
603 軸受け
604 大径プーリー
605 歯付きベルト
606 テンションプーリー
607 シャフト
701 クラッチ
801,802 ベルト巻付角
803 矢印
901 レバー
1001,1102 着脱方向
1201 回転シャフト
1202,1203,1204 回転中心
1205,1206 接線
1207 線分
1208,1209 中間線
1210 線
1211,1212 水平線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引力を発生する電動送風機と、ゴミを貯蔵する集塵部と、吸口体とを備えた電気掃除機において、
前記吸口体は、被清掃面を摺擦する摺擦部材を有する回転清掃体と、前記回転清掃体を駆動する駆動部と、前記駆動部から前記回転清掃体に駆動力を伝達するための前記回転清掃体側の大径プーリー及び前記駆動部側に小径プーリーと、前記大径プーリーと前記小径プーリーとの間を連結する歯付きベルトとを有し、
前記吸口体は、前記小径プーリーと前記大径プーリーの間に、前記歯付きベルトの背面で、かつ前記吸口体の上方側にテンションプーリーを有することを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
請求項1記載の電気掃除機において、
前記テンションプーリーは、前記大径プーリーより前記小径プーリーに近い側に位置することを特徴とする電気掃除機。
【請求項3】
請求項1記載の電気掃除機において、
前記テンションプーリーを取り付けるシャフトを、前記吸口体の上ケースと前記吸口体の下ケースで挟んで固定することを特徴とする電気掃除機。
【請求項4】
請求項1記載の電気掃除機において、
前記テンションプーリーの材質は、ポリオキシメチレン(POM)を含有する樹脂であることを特徴とする電気掃除機。
【請求項5】
電気掃除機の吸口体において、
被清掃面を摺擦する摺擦部材を有する回転清掃体と、前記回転清掃体を駆動する駆動部と、前記駆動部から前記回転清掃体に駆動力を伝達するための前記回転清掃体側の大径プーリー及び前記駆動部側に小径プーリーと、前記大径プーリーと前記小径プーリーとの間を連結する歯付きベルトとを有し、
前記小径プーリーと前記大径プーリーの間に、前記歯付きベルトの背面で、かつ前記吸口体の上方側にテンションプーリーを有することを特徴とする吸口体。
【請求項6】
電動送風機と集塵室とを有する掃除機本体と、ホースおよび管を介して前記掃除機本体に連通する吸口体とを備えた電気掃除機において、
前記吸口体は、被清掃面に対して開口する部屋と、前記部屋に回転可能に配置される回転清掃体と、駆動部と、前記駆動部に連結された第1のプーリーと、前記回転清掃体に連結された第2プーリーと、前記第1のプーリーと前記第2プーリーとを連結するベルトと、前記ベルトの外周に当接する第3のプーリーとを備え、
前記第3のプーリーは、前記ベルトの外周のうち前記部屋の前記開口が形成された側とは反対側の外周に当接することを特徴とする電気掃除機。
【請求項7】
電気掃除機の吸口体において、
被清掃面に対して開口する部屋と、前記部屋に回転可能に配置される回転清掃体と、駆動部と、前記駆動部に連結された第1のプーリーと、前記回転清掃体に連結された第2プーリーと、前記第1のプーリーと前記第2プーリーとを連結するベルトと、前記ベルトの外周に当接する第3のプーリーとを備え、
前記第3のプーリーは、前記ベルトの外周のうち前記部屋の前記開口が形成された側とは反対側の外周に当接することを特徴とする吸口体。
【請求項8】
電動送風機と集塵室とを有する掃除機本体と、ホースおよび管を介して前記掃除機本体に連通する吸口体とを備えた電気掃除機において、
前記吸口体は、被清掃面に対して開口する部屋と、前記部屋に回転可能に配置される回転清掃体と、駆動部と、前記駆動部に連結された第1のプーリーと、前記回転清掃体に連結された第2プーリーと、前記第1のプーリーと前記第2プーリーとを連結するベルトと、前記ベルトの外周に当接する第3のプーリーとを備え、
前記回転清掃体は、前記部屋から着脱可能であり、
前記第3のプーリーは、前記ベルトの外周のうち前記回転清掃体の取り外し方向とは反対側の外周に当接することを特徴とする電気掃除機。
【請求項9】
電気掃除機の吸口体において、
被清掃面に対して開口する部屋と、前記部屋に回転可能に配置される回転清掃体と、駆動部と、前記駆動部に連結された第1のプーリーと、前記回転清掃体に連結された第2プーリーと、前記第1のプーリーと前記第2プーリーとを連結するベルトと、前記ベルトの外周に当接する第3のプーリーとを備え、
前記回転清掃体は、前記部屋から着脱可能であり、
前記第3のプーリーは、前記ベルトの外周のうち前記回転清掃体の取り外し方向とは反対側の外周に当接することを特徴とする吸口体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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