説明

電気掃除機の吸口体

【課題】駆動輪はゴム等の弾性体や、ブレードで構成しているので、駆動輪における掻き上げ効果、及び拭き効果が、回転清掃体の他の部位に比べ悪化し、塵埃の取り残し等が発生するといった欠点があった。
【解決手段】回転清掃体には、当回転清掃体の筒状基体に左右方向の一端側から他端側にかけて配置された複数の清掃部材と、当回転清掃体の両端に配置され当該回転清掃体を吸口本体に保持する保持部材と、を設け、下ケース底面、かつ回転清掃体収納室の後方に固定刷毛を備え、下ケース底面における固定刷毛の後方向には固定刷毛逃げ部が設けられており、吸口体が被清掃面に設置されていない場合に、固定刷毛は下ケースの最下面より突出しており、固定刷毛の突出した部分の長さは、固定刷毛逃げ部の前後方向の長さよりも短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気掃除機の吸口体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気掃除機の吸口体として、例えば特許文献1(特開平5−176869号公報),特許文献2(特開平5−192277号公報)がある。
【0003】
これらの特許文献には、吸口体の吸込室に回転ブラシを配置し、この回転ブラシを電動機で回転駆動するようにしている。回転ブラシの左右両側には一対の駆動輪を設け、電動機を駆動することにより回転ブラシと共に駆動輪を回転させ、じゅうたん上での操作力を低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−176869号公報
【特許文献2】特開平5−192277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2では駆動輪を用いることで操作力を軽くすることはできるが、駆動輪はゴム等の弾性体や、ブレードで構成しているので、駆動輪における掻き上げ効果、及び拭き効果が、回転清掃体の他の部位に比べ悪化し、塵埃の取り残し等が発生するといった欠点があった。
【0006】
特に近年の住宅は木床が多くなり、木床を掃除した場合、弾性体やブレードといった部材で駆動輪を構成した場合、駆動輪で木床を拭くことができず、塵埃の取り残しが発生するものである。
【0007】
本発明は上記課題を解決し、操作力を低減すると共に、被掃除面上の塵埃の取り残しを抑制した電気掃除機の吸口体及びこれを備えた電気掃除機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の特徴とするところは、下面に開口部を有する下ケースに上ケースを装着して形成された吸口本体と、前記吸口本体内部に形成される回転清掃体収納室と、前記回転清掃体収納室に回転可能に配置される回転清掃体と、前記回転清掃体を駆動させる電動機を備えた電気掃除機の吸口体において、前記回転清掃体には、当該回転清掃体の筒状基体に左右方向の一端側から他端側にかけて配置された複数の清掃部材と、当該回転清掃体の両端に配置され当該回転清掃体を前記吸口本体に保持する保持部材と、を設け、前記下ケース底面、かつ回転清掃体収納室の後方に固定刷毛を備え、前記下ケース底面における前記固定刷毛の後方向には固定刷毛逃げ部が設けられており、該吸口体が被清掃面に設置されていない場合に、前記固定刷毛は該下ケースの最下面より突出しており、該固定刷毛の突出した部分の長さは、前記固定刷毛逃げ部の前後方向の長さよりも短いことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作力が重くなることを、防ぐことが可能となる電気掃除機の吸口体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例に係る回転清掃体204を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係る吸口体305の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る電気掃除機の全体外観図である。
【図4】本発明の一実施例に係る吸口体306の下面図である。
【図5】本発明の一実施例に係る吸口体306の中央断面図及び要部拡大図である。
【図6】本発明の一実施例に係る刷毛108の取り付け方法を説明する図である。
【図7】本発明の一実施例に係る回転清掃体の底面斜視図及び要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施例を添付の図面を用いて説明する。図3は本発明の一実施例に係る電気掃除機の全体外観図である。
【0012】
301は集塵部及び電動送風機を収容する掃除機本体、305は掃除機本体301の前部に接続され集塵部と連通するホース継手、302はホース継手305に回動可能に接続されたホースである。ホース302の一端はホース継手305を介して掃除機本体301に接続され、集塵部と連通している。303は一端がホース302の他端に回動可能に接続され、掃除機の運転の入切を行うスイッチ手段を有する手元操作部、305は一端が手元操作部303の他端に接続された伸縮可能な延長管、306は延長管305の他端に接続され掃除面の塵埃を吸込む吸口体である。
【0013】
掃除機は掃除機本体301に収容された電動送風機で発生した吸引力により、延長管305,ホース302を介して吸口体305の下面から吸込んだ被清掃面の塵埃を集塵部内に搬送するようにしている。
【0014】
図2は本発明の一実施例に係る吸口体305の分解斜視図を示す図である。図2において、201は下面に開口部を有する下ケース、200は下ケースの上方に配置された上ケースである。下ケース201に上ケース200を被着させることにより、吸口本体250を構成している。212は上ケース200及び下ケース201で構成された回転清掃体収納室、204は回転清掃体収納室212に配置された回転清掃体、205は回転清掃体204を駆動するための電動機、207は吸口体を持ち上げたときに自動的に回転停止するための安全スイッチ、208は電動機側プーリー、209は減速プーリーを構成する大プーリー、210は減速プーリーを構成する小プーリー、211は大プーリー209と小プーリー210を連結するシャフトである。本実施例ではシャフト211に設けた大プーリー209及び小プーリー210により、回転清掃体204の回転軸端部に伝達する伝達機構を構成している。
【0015】
202は吸口体本体内部と外部(掃除機本体)とを連通する空気通路が形成された自在継手のうち吸口体本体に対して上下方向に回動可能な第1の接続管、203は自在継手のうち前記第1の接続管に対して左右方向に回動可能な第2の接続管である。
【0016】
図2において、回転清掃体204の回転軸に沿う方向を吸口体の左右方向と呼び、この左右方向は通常吸口体の左右方向と一致する。回転清掃体204の外周を周方向と呼ぶ。また、吸口体の上下方向に関しては、吸口体を水平な床面上に置いた状態で、開口部403が形成された側を下面側,反対側を上面側と呼ぶ。また、吸口の進行方向側を正面側,後退方向側を背面側として説明する。
【0017】
図4は本発明の一実施例に係る吸口体306の下面図、図5は本発明の一実施例に係る吸口体306の中央断面図及び要部拡大図を示す。403は下ケース201に設けられた開口部で、被清掃面に面する。401は吸口本体250の外周に設けられたバンパー、400は固定刷毛、403は後方車輪である。405は固定刷毛前方に設けた刷毛逃げ部A、406は固定刷毛後方に設けた刷毛逃げ部Bである。207は吸口体を持ち上げたときに自動的に停止するための安全スイッチであり、207aは被清掃面に設置されているかを検出するための床面検出車輪である。218は開口部403と第1の接続管とを連通する吸込開口である。
【0018】
220は下ケース201の下面側に位置する軸受押さえ部材407を開閉するための係止部材であり、上ケース200と下ケース201から張り出した支持部を回動軸とし、組み付けにより上下方向で支持し、係止部材220の抜け外れを規制している。
【0019】
図1は本発明の一実施例に係る回転清掃体204を示す図である。回転清掃体204の清掃部材107は、繊維等による刷毛105の他、軟質のブレード104を用いて構成することができ、刷毛105やブレード104をそれぞれ単独で、或いは刷毛105とブレード104とを混在させて構成することができる。また、筒状基体を形成する部材に一体に成形した突出部で清掃部材を構成してもよい。いずれにしても、清掃部材107は筒状基体の外周面から外方に突出するように構成される。
【0020】
回転清掃体204の両端には、前記回転清掃体204を前記吸口本体250へ保持する保持部材A110,保持部材B111が設けられている。また、回転清掃体204の外周には刷毛台109に斜めに接着固定された円筒状の刷毛108が設けられる。刷毛108は密度が清掃部材107よりも高く、また、径方向に対する刷毛長さを清掃部材107よりも短く設定されている。
【0021】
保持部材A110は、下ケース201内部に設けられた主動軸継手部408(図4,図7)の凹凸噛合部A701と噛合う凹凸からなる噛合部B112を有し、保持部材A110と主動軸継手部408で回動力を伝える役割を果たす。
【0022】
次に図6を用いて、刷毛108の取り付け方法を説明する。図6は本発明の一実施例に係る刷毛108の取り付け方法を説明する図であり、図6(a)は保持部材B408への刷毛108の取り付け方法を説明する図であり、図6(b)は保持部材A409への刷毛108の取り付け方法を説明する図である。
【0023】
刷毛台109を保持部材A409,保持部材B408へ押し込むと、保持部材A409,保持部材B408の切欠き601a,601bにより爪部602が撓み、刷毛台109の内部へ入り込む。刷毛台109が爪部602を越えたところで、爪部602の撓みが元に戻り、左右方向が固定される。また、保持部材A409,保持部材B408のリブ603と、刷毛台109の溝をはめ込むことで回転方向が固定される。このように単純な構成で円筒状の刷毛108を設けることができることから小型化が可能となる。また、刷毛台109は押し出し型で製作しても良いことから、大量生産時において、コストを抑えることも可能である。
【0024】
次に本実施例の動作を説明する。掃除機使用者がハンドルグリップ303に設置された手元スイッチ304を操作すると、操作されたスイッチに従った動作モードで掃除機本体301内の電動送風機が運転する。電動送風機によって発生した吸引力は、ホース302,延長管305を通って吸口体306に到達する。それと同時に、ホース302および延長管305に設けられた電源線から供給された電源が、吸口体306内の回路基板206(図2)を介して電動機205を駆動する。電動機205とプーリー411,ベルト410で連結している回転清掃体204が回転することにより、回転清掃体204の清掃部材107である刷毛105やブレード104によって被掃除面からごみや塵埃を掻き上げて吸い込んでいる。
【0025】
また、回転清掃体204が回転中、常に刷毛108が被清掃面へ接触しているので、吸口体306へは前進する力が働き、操作力が軽くなる。ここで、刷毛108の密度や、硬さ,高さ等を変更することで操作力の調整が可能となる。
【0026】
また、刷毛108を斜めに貼り付け、刷毛の目を斜めにすることで、回転清掃体が回転した際、その目に沿い塵埃を回転清掃体室中心方向へと移動させることも可能である。
【0027】
更に、吸口体306を前方へ操作した際、吸口体306底面の固定刷毛400は刷毛逃げ部B406へと倒れ、また、後方へ動作した場合は刷毛逃げ部A405へと倒れることにより床面との間に挟まることはない。これにより、固定刷毛400が吸口体306底面との間に挟まり、操作力が重くなることを、防ぐことが可能となる。
【0028】
また、刷毛逃げ部A405,刷毛逃げ部B406を固定刷毛400の前後のみとすることで、刷毛逃げ部A405,刷毛逃げ部B406を設けても、回転清掃体収納室212内の静圧は、刷毛逃げ部A405,刷毛逃げ部B406が無いときと変わらない。これにより、刷毛逃げ部A405,刷毛逃げ部B406を設けても、吸込み性能は変わることはない。
【0029】
図7に回転清掃体204の取り外し方を示す。図7は本発明の一実施例に係る回転清掃体の底面斜視図及び要部拡大図である。回転清掃体204の取り外しにあたっては、まず吸口体の下面側を上面側に向ける。係止部材220に操作者の指を添え、吸口体中央側から外側に回動させ、軸受押さえ部材407(図4)と係止部材220の係合を解除する。そして、下ケース201から軸受押さえ部材407を開け、軸受押さえ部材407を取り外す。
【0030】
次に、回転清掃体204を、上方に引き上げるとことにより、回転清掃体204の保持部材A110の噛合い部112(図1)と主動軸継手部408の噛合い部701が外れ、吸口体206から離脱できる。
【0031】
これにより、回転清掃体204の刷毛108に糸くず等が付着した際も容易に回転清掃体204を取り外し、簡単に為糸くずなどの繊維状のものや、髪の毛等を取り除くことが可能となる。
【0032】
本発明の各実施例は床移動型の掃除機だけでなく、アップライト式やスティック式の掃除機にも適用できる。モータ駆動方式の吸口だけでなく、エアー駆動方式にも適用できる。
【0033】
以上説明したように本実施例によれば、回転清掃体へ回転清掃体の外周に沿った円筒状の刷毛を、回転清掃体収納室の左右方向の中心を対称軸として左右対象に複数又は、回転清掃体収納室の左右方向の中心に設けたことにより、この円筒状の刷毛が回転清掃体の回転中、常に何処かが被清掃面へ接触するため、吸口体の推進力を発生し、吸口体の操作力を改善すると共に、回転清掃体に設けられた他の刷毛同様に塵埃を掻き上げ、拭き効果を得ることができる。
【0034】
また、本実施例によれば、円筒状の刷毛の密度を回転清掃体の他の刷毛よりも高くしたり、あるいは刷毛の高さを回転清掃体の他の刷毛よりも低くして腰を持たせることでより強い操作力を得ることができる。
【0035】
また、本実施例によれば、回転清掃体の保持部材A,Bに爪部及び切欠きを設けることで、刷毛台に貼り付けられた円筒状の刷毛を回転清掃体保持部材A,Bへワンタッチで取り付けることが可能となるため、構成部品を少なくすることが可能となり、コストを抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
104 ブレード(清掃部材の一部)
105 刷毛(清掃部材の一部)
107 清掃部材
108 刷毛
109 刷毛台
204 回転清掃体
212 回転清掃体収納室
306 吸口体
407 軸受押さえ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に開口部を有する下ケースに上ケースを装着して形成された吸口本体と、前記吸口本体内部に形成される回転清掃体収納室と、前記回転清掃体収納室に回転可能に配置される回転清掃体と、前記回転清掃体を駆動させる電動機を備えた電気掃除機の吸口体において、
前記回転清掃体には、当該回転清掃体の筒状基体に左右方向の一端側から他端側にかけて配置された複数の清掃部材と、当該回転清掃体の両端に配置され当該回転清掃体を前記吸口本体に保持する保持部材と、を設け、
前記下ケース底面、かつ回転清掃体収納室の後方に固定刷毛を備え、
前記下ケース底面における前記固定刷毛の後方向には固定刷毛逃げ部が設けられており、
該吸口体が被清掃面に設置されていない場合に、前記固定刷毛は該下ケースの最下面より突出しており、
該固定刷毛の突出した部分の長さは、前記固定刷毛逃げ部の前後方向の長さよりも短いことを特徴とする電気掃除機の吸口体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−46852(P2013−46852A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−265913(P2012−265913)
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2010−241614(P2010−241614)の分割
【原出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】