説明

電気掃除機用吸込み具

【課題】ブラシ毛による塵の掻き出し性能の低下を招くことなく、ブラシ毛への毛絡みを抑制できるとともに吸塵性能も向上できる電気掃除機用吸込み具を提供する。
【解決手段】吸込み具11は吸込み具本体12と複数のブラシ毛21を具備する。吸込み具本体12は、吸込み管部13及びこの管部の一端側に設けられた環形のブラシ台部15を有する。ブラシ毛21の夫々は、複数本の毛材を束状に集合して形成され、かつ、ブラシ台部15にこの台部15に沿って環状に並べて植毛されている。これら複数のブラシ毛21の内の少なくとも一部のブラシ毛を、それらの並び方向に隣接したブラシ毛21の高さ方向中央部同士のブラシ毛間隔Xよりもブラシ毛21の毛先側同士のブラシ毛間隔Yの方が広くなるように形成したことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被掃除面の塵を掻き出す複数のブラシ毛を環状に並べてブラシ台部に植毛した電気掃除機用吸込み具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、延長管に接続される吸込み管部の先端に環形のブラシ台部を一体に設け、このブラシ台部に、複数本の毛材を集合させて束状に形成されたブラシ毛を環状に並べて植毛してなる掃除機用吸込具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この吸込具は、吸込み管部を電気掃除機の集塵部に連通させた状態で被掃除面に沿って移動させて使用される。それにより、被掃除面の塵を複数のブラシ毛で掻き出しながら、この塵を、ブラシ台部の内側で開口された吸込み管部に吸引して、被掃除面を掃除できる。
【特許文献1】特開平11−262412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブラシ台部に植毛されたブラシ毛を形成する複数本の毛材は、ブラシ毛の根元側で密集しているのに対して、ブラシ毛の毛先側程広がっている。これにより、ブラシ毛の並び方向に隣接したブラシ毛の相互間隔は、ブラシ毛の根元側ほど広く、ブラシ毛の毛先側ほど狭くなっていて、場合によっては隣接するブラシ毛の毛先部同士は互いに接触した状態にある。このような情況は特許文献1の掃除機用吸込具でも例外ではない。
【0005】
そのため、特許文献1の吸込具を用いての掃除では、環状に並べられたブラシ毛列の周囲から内側に吸込まれる被掃除面上の塵が、ブラシ毛の並び方向に隣接したブラシ毛の毛先部間を通りづらい。特に、吸込具を被掃除面に強く押付けながら移動させるに伴い、この移動方向と反対側にブラシ毛が曲がって、隣接したブラシ毛の毛先部が互いに接触して壁のように連続する場合には、なお更である。
【0006】
したがって、従来の吸込具は、吸塵性能に改善の余地があるとともに、ブラシ毛に塵が絡まり(この状態を毛絡みと称する。)易い。そのために、吸込具の使用後に、ブラシ毛に絡まった塵を除去する手間を使用者が要する頻度が高い、という点で不便である。
【0007】
なお、この点に対処するために、ブラシ毛の植毛間隔を広くすれば、それに応じて、ブラシ毛の並び方向に隣接したブラシ毛の毛先部の相互間隔を広くできる。しかし、このようにした場合には、ブラシ毛の数が減るので、被掃除面上の塵を掻き出す性能が低下することは免れない。これとともに、ブラシ毛の並び方向に隣接したブラシ毛の根元側の相互間隔も広くなったことで、この根元側相互間隔を通って空気が吸込まれ易くなる結果で、ブラシ毛の毛先部側からの空気の吸込みが減るに伴い、環状のブラシ毛列の周囲の塵を吸引する性能が低下するので好ましくない。更に、この点を改善するには、ブラシ毛の高さを低く(言い換えれば、ブラシ台部からの突出長さを短く)すればよいが、このようにした場合は、ブラシ毛が変形し難くなるに伴い、被掃除面上の塵をブラシ毛が掻き出す性能が低下するので好ましくない。
【0008】
本発明の目的は、ブラシ毛による塵の掻き出し性能の低下を招くことなく、ブラシ毛への毛絡みを抑制できるとともに吸塵性能も向上できる電気掃除機用吸込み具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、吸込み管部及びこの管部の一端側に設けられた環形のブラシ台部を有する吸込み具本体と、複数本の毛材を束状に集合して形成されるとともにブラシ台部に沿って環状に並べてブラシ台部に植毛された複数のブラシ毛を具備した電気掃除機用吸込み具を前提とする。
【0010】
そして、前記目的を達成するために、複数のブラシ毛の内の少なくとも一部のブラシ毛を、それらの並び方向に隣接したブラシ毛の高さ方向中央部同士のブラシ毛間隔よりもブラシ毛の毛先側同士のブラシ毛間隔の方が広くなるように形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気掃除機用吸込み具によれば、被掃除面に接するブラシ毛の数を減らすことなく、被掃除面上の塵が隣接したブラシ毛の毛先部側間を通り易い構成であるので、ブラシ毛による塵の掻き出し性能の低下を招くことなく、ブラシ毛への毛絡みを抑制できるとともに吸塵性能も向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図5を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
【0013】
図1中符号1は第1実施形態に係る吸込み具11を常備する例えばキャニスタ型の電気掃除機を示している。この電気掃除機1は、掃除機本体2と、吸塵風路体5と、吸込み具11を備えている。
【0014】
車輪2aが取付けられた掃除機本体2の後部に図示しない電動送風機が内蔵されている。掃除機本体2の前部は電動送風機の上流側となっており、この前部には図示しない塵分離手段及びこの手段で分離された塵を溜める集塵部等が設けられている。塵分離手段には、そこに吸引された塵の慣性エネルギーを利用して塵と空気を分離するサイクロン式等の慣性分離式の塵分離装置を好適に用いることができるが、紙パックを用いてもよく、或いは粗塵を空気から分離する紙パックと、粗塵以外の塵を慣性分離により空気と分離する塵分離装置を併用した塵分離手段とすることも可能である。
【0015】
吸塵風路体5は、可撓性の吸塵ホース6と、延長管7と、吸込み口体8とを備えている。吸塵ホース6の一端部6aは、例えば掃除機本体2の前部上面を開閉する蓋2bに設けた接続口2cに取外し可能に差込接続されていて、この接続により吸塵ホース6内と前記塵分離手段とが連通される。延長管7が着脱可能に嵌合して連結される吸塵ホース6の他端部(先端部)6bに、延長管7を介して吸込み口体8を移動操作するためのハンドル9が設けられている。このハンドル9に前記電動送風機の運転等を指令する手元スイッチ10が取付けられている。
【0016】
延長管7は外管7aと内管7bとを例えば伸縮可能に組み合わせて形成されている。外管7aは吸塵ホース6の他端部6bに着脱可能に嵌合されている。この外管7aの他端(先端)から突出された内管7bの先端部7cに、吸込み具11が着脱可能に嵌合されている。吸込み具11にはその先端側から吸込み口体8が有した接続管8a(図2参照)が着脱可能に嵌合されている。吸込み口体8は、掃除対象である部屋の床面等の被掃除面を掃除するのに好適なものであり、通常床ブラシとも称されている。
【0017】
吸込み具11を使用しない状態での掃除では、電動送風機の運転に伴い、吸込み口体8の下面に開口している吸塵口を通って吸込まれた含塵空気が、吸込み具11、延長管7、吸塵ホース6を、この記載順に通過して掃除機本体2内に導かれる。それにより、掃除機本体2内で空気と塵が分離されて、塵が集塵部に溜められる一方で、電動送風機から排出された空気が掃除機本体2の外部に放出される。
【0018】
次に、吸込み具11について説明する。図3〜図5に示すように吸込み具11は、吸込み具本体12及び複数のブラシ毛21を具備している。
【0019】
図4に示すように吸込み具本体12は、吸込み管部13とブラシ台部15を備えている。吸込み管部13の軸方向両端は夫々開口されている。この吸込み管部13の上流側部位13aの内径は、下流側部位13bの内径より大きい。吸込み管部13の下流側部位13bは、延長管7が有した内管7bの先端部に着脱可能に嵌合される。吸込み管部13の上流側部位13aの内側に、吸込み口体8の接続管8aが着脱可能に嵌合される。
【0020】
ブラシ台部15は、本実施形態では吸込み管部13と別体であって環形に形成されていて、上流側部位13aの先端部に一対の枢軸16(図5参照)を介して回動可能に取付けられている。すなわち、枢軸16は、ブラシ台部15の内面から一体に突出されているとともに、上流側部位13aの先端部に形成された軸受孔17(図4参照)に嵌合して吸込み管部13に支持されている。したがって、ブラシ台部15は軸受孔17を支点として回動できる。
【0021】
このブラシ台部15の回動により、ブラシ台部15は、図3及び図4に示すように吸込み管部13の中心軸線に対して斜めに交差する姿勢を採る使用位置と、吸込み管部13の中心軸線に略直交する姿勢を採る待避位置とのいずれかに配置される。使用位置に配置されたブラシ台部15に対して、上流側部位13aの先端開口、つまり、吸込み管部13の上流側開口13cは、ブラシ台部15の後部内側に対向して配置されるようになっている。なお、吸込み具11を使用しての掃除では、図4に示すように使用者が吸込み具11を押し動かす方向が前側で、この逆に吸込み具11を引き戻す方向が後側であるから、ブラシ台部15の後部とは引き戻し側に位置する後側略半分を指している。
【0022】
図4中符号18は軸状の係合部を示し、符号19は弾性変形が可能な係合部受けを示している。ブラシ台部15が使用位置に配置された際に、係合部18は、係合部受け19に係合して使用位置のブラシ台部15が不用意に回動してふらつかないように保持する。ブラシ台部15が使用位置から待避位置に回動される伴いその初期に係合部18は係合部受け19を弾性変形させながらこの係合部受け19から外れるので、待避位置へのブラシ台部15の回動が妨げられることはない。
【0023】
ブラシ台部15はその上部にカバー部15aを有している。このカバー部15aは、ブラシ台部15が使用位置に配置されたときに、吸込み管部13の内部から上側に外れた逃げ部12a側の部位と、使用位置のブラシ台部15の上部との間にできる隙間を、極力小さくするために設けられている。これとともに、カバー部15aは、ブラシ台部15が待避位置に配置された際に、吸込み具本体12に設けられている逃げ部12aに挿入される。
【0024】
環形のブラシ台部15は、図5に示すように前壁部15bと、一対の側壁部15cと、後壁部15dとから形成されている。前壁部15bは、使用者が吸込み具11を押し動かす場合に進行方向前側に位置される壁部であって、例えばブラシ台部15の前後方向と直交する幅方向に延びている。両側壁部15cは、前壁部15bの両端から後方に向けて略直角に折れ曲がって形成されていて、互いに略平行に設けられている。後壁部15dは、使用者が吸込み具11を押し動かす場合に進行方向後側に位置される壁部、言い換えれば、使用者が吸込み具11を引き戻す場合に進行方向前側に位置される壁部であって、例えば後向きに突出するU字状をなしていて、両側壁部15cを一体に連続して設けられている。
【0025】
図3及び図5に示すように複数のブラシ毛21は、ブラシ台部15に、このブラシ台部15の周方向に沿って一定間隔で植毛されて環状に並べられていて、ブラシ台部15の下面から突出されている。各ブラシ毛21は、複数本の毛材を束状に集合して形成されている。
【0026】
前壁部15bに植毛されたブラシ毛21の内で図5中寸法A内に配設されたブラシ毛21と、両側壁部15cに植毛されたブラシ毛21の内で図5中寸法B内に配設されたブラシ毛21は、次のように形成されている。即ち、図4に示す側壁部15cに植毛されたブラシ毛21同士の関係で代表して説明すれば、並び方向に隣接したブラシ毛21の高さ方向中央部同士のブラシ毛間隔Xよりも、同じく並び方向に隣接したブラシ毛21の毛先側同士のブラシ毛間隔Yの方が広くなるように、各ブラシ毛21の形状が加工されている。
【0027】
具体的には、寸法A,B内に配設されたブラシ毛21は、短い毛材群(これを符号21aで示す。)と長い毛材群(これを符号21bで示す。)とで形成されているとともに、これら長短の毛材群21a,21bは、ブラシ毛21の高さ方向中央部に段差21cを形成して束状に集合されている。そのため、前記並び方向に隣接したブラシ毛21の相互間隔は、段差21cを境にこれより根元側が狭く、段差21cより毛先側が広く形成されている。言い換えれば、同じ長さの毛材を束状に集合させたブラシ毛を植毛した場合と比較して、隣接したブラシ毛21の毛先側同士の間隔が広くなっていて、同毛先側はいわば梳かれた状態になっている。
【0028】
これに対して、図5中寸法C内に配設されたブラシ毛21(つまり、前壁部15bと側壁部15cとが作る角部に植毛されたブラシ毛21)と、図5中寸法D内に配設されたブラシ毛21(つまり、後壁部15dに植毛されたブラシ毛21)は、同じ長さの毛材を束状に集合させて形成されている。なお、これら毛材の長さは、寸法A,B内に配設されたブラシ毛21の長い毛材群21bの長さと同じである。これにより、図5中寸法C,D内に配設されたブラシ毛21はその根元から毛先に向けて次第に広がっていて、これらブラシ毛の毛先側は既述のように梳かれた状態ではなく、互いに略接する状態になっている。
【0029】
こうした構成の吸込み具11を使用して掃除をするには、まず、この吸込み具11の吸込み管部13の上流側部位13aから吸込み口体8の接続管8aを抜き取った上で、吸込み具11を回動させて使用位置に配置する。この後、掃除機本体2内の電動送風機を運転させた状態下で、棚の上面等のような被掃除面に吸込み具11のブラシ毛21を接触させて、この吸込み具11を前後又は左右方向等に動かすことによって、ブラシ毛21で塵を掻き出しながら吸塵ができる。
【0030】
ところで、各ブラシ毛21はその根元から毛先に向けて次第に広がっている。それにも拘らず、ブラシ台部15の前壁部15b及び両側壁部15cに夫々植毛されたブラシ毛21同士のブラシ毛間隔、つまり、それらが植毛された壁部に沿って並ぶ方向に隣接したブラシ毛21同士のブラシ毛間隔は、既述のようにY>Xの関係にある。
【0031】
この関係により、吸込み具11を、被掃除面に軽く接触させて移動させながら掃除をする場合は言うまでもなく、仮に、被掃除面に強く押付けながら移動させて掃除をする場合でも、隣接したブラシ毛21の毛先側間に隙間が確保され易い。そのため、被掃除面上の塵が、環状をなしたブラシ毛列の周囲からブラシ毛列の内側に向けて、隣接したブラシ毛21の毛先側間を円滑に通って吸引され易い。これに伴い、ブラシ毛21への毛絡みが抑制されるとともに吸塵性能を向上できる。そして、以上のように毛絡みが抑制されることにより、ブラシ毛21に絡んだ塵を除去するための頻度が低下するので、吸込み具11の使い勝手を向上できる。
【0032】
既述のようにブラシ毛21の高さ方向中央部に段差21cを設けるという形状的工夫によって、環状の並び方向に隣接するブラシ毛21の毛先側でのブラシ毛間隔Yを広くしたので、この実現のためにブラシ毛21を例えば1本置きに間引かないで済む。このため、被掃除面に接するブラシ毛21の数が減らないことに伴い、ブラシ毛21による被掃除面上の塵の掻き出し性能の低下を招くことがない。それだけではなく、前記ブラシ毛間隔Yが確保されたことで、被掃除面に接する長い方の毛材群21bの毛先部が、被掃除面に押されて弾性変形した後に復元する場合に、この復元が、隣接した毛材群21bの毛先部に邪魔され難く、毛材群21bは容易に復元できる。そのため、ブラシ毛21による被掃除面上の塵を掻き出す上で好ましい。
【0033】
したがって、前記構成の吸込み具11によれば、ブラシ毛21による塵の掻き出し性能の低下を招くことなく、ブラシ毛21への毛絡みを抑制できるとともに吸塵性能も向上できる。
【0034】
更に、本実施形態の吸込み具11のブラシ台部15の後壁部15dはU字状に形成され、この後壁部15dに植毛された複数のブラシ毛21は、長い毛材群21bのみを束状に集合させて形成されている。そのため、後壁部15dに植毛された複数のブラシ毛21の毛先側のブラシ毛間隔は、根元側よりも狭くなっている。
【0035】
これにより、吸込み具11を前進させて使用する際、環状のブラシ毛列の内側に吸込まれた塵が、後壁部15dに植毛された複数のブラシ毛21を通り抜けることが抑制される。これとともに、後壁部15dに植毛された複数のブラシ毛21で塞き止められた塵が、後壁部15dにこれに沿ってU字状に植毛された複数のブラシ毛21で導かれて、U字状をなした後壁部15dの内側中央部に集められるようになる。
【0036】
そして、後壁部15dの内側中央部には、その上方から吸込み管部13の上流側開口13cが対向されているので、既述のように集められる塵を、その傍らか吸上げて掃除機本体2側に導くことができる点で好ましい。
【0037】
又、本実施形態の吸込み具11のブラシ毛21の内で、ブラシ台部15の前壁部15bと側壁部15cとが作る角部に植毛された複数のブラシ毛21は、前記角部の形状に沿って設けられているとともに、長い毛材群21bのみを束状に集合させて形成されている。そのため、前記角部に植毛された複数のブラシ毛21を、例えば部屋の角に合わせて吸込み具11を使用できるので、前記部屋の角等の塵を掻き出すのに好適である。
【0038】
なお、図5に示すように本実施形態では、一対の側壁部15cに夫々植毛されたブラシ毛21の前部(図5において上側の部位)が長い方の毛材群21bで作られ、同ブラシ毛21の後部(図5において下側の部位)が短い方の毛材群21aで作られているとともに、これらのブラシ毛が左右対称に設けられている。しかし、これに代えて、一方の側壁部15cに植毛されたブラシ毛21と他方の側壁部15cに植毛されたブラシ毛21との位置を、上下方向(側壁部15cが延びる方向)にずらすことにより、両側壁部15cに植毛されたブラシ毛21を左右非対称に設けることができる。或いは、両側壁部15cに植毛されたブラシ毛21は左右対称に設けられているが、一方の側壁部15cに植毛されたブラシ毛21の前部が長い方の毛材群21bで作られ、同ブラシ毛21の後部が短い方の毛材群21aで作られているのに対して、他方の側壁部15cに植毛されたブラシ毛21の前部が短い方の毛材群21aで作られ、同ブラシ毛21の後部が長い方の毛材群21bで作られた構成とすることもできる。これらの構成では、被掃除面に沿って吸込み具11を左右方向に移動させて掃除をする場合に、一方の側壁部15cに植毛されたブラシ毛21による塵の掻き出しと、他方の側壁部15cに植毛されたブラシ毛21による塵の掻き出しがずれるので、被掃除面上の塵の掻き出し漏れ、つまり、塵が筋状となって残る恐れを抑制する上で好ましい。
【0039】
図6に示す本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態で、第1実施形態と同じ構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、ブラシ毛間隔Xに対してこれより広いブラシ毛間隔Xをブラシ毛21の形状で得るための工夫である。
【0040】
即ち、第2実施形態では、ブラシ台部15の前壁部15b及び両側壁部15cに夫々植毛された複数のブラシ毛21は、いずれも複数の毛材を束状に集合させてなるが、その高さ方向中央部から毛先に至るに従い次第に細く形成されている。それにより、環形のブラシ台部15に沿うブラシ毛21の並び方向に隣接したブラシ毛21の高さ方向中央部同士のブラシ毛間隔Xよりも、同じく並び方向に隣接したブラシ毛21の毛先側同士のブラシ毛間隔Yの方を広くしている。そのため、前記並び方向に隣接したブラシ毛21の相互間隔は、ブラシ毛21の高さ方向中央部より根元側が狭く、同中央部より毛先側が広く形成されている。言い換えれば、同じ長さの毛材を束状に集合させたブラシ毛を植毛した場合と比較して、隣接したブラシ毛21の毛先側同士の間隔が広くなっていて、同毛先側がいわば梳かれた状態になっている。この点以外の構成は、図6に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。
【0041】
したがって、第2実施形態の吸込み具11においても、ブラシ毛21同士のブラシ毛間隔が、既述のようにブラシ毛間隔X,YがY>Xの関係にあるので、第1実施形態で既に説明した理由によって、本発明の課題を解決することができる。
【0042】
しかも、先細り状に形成されたブラシ毛21をなす複数の毛材の長さが様々であるので、被掃除面に対する吸込み具11の押付け具合に拘らず、いずれかの毛材の毛先を略真っ直ぐに被掃除面に接触させて、塵を掻き出すことができる。言い換えれば、被掃除面に強く吸込み具11が押付けられても、それに伴いブラシ毛21をなした毛材の先部側が塵の掻き出しに適さない状態、即ち、被掃除面に接した毛材の全てが被掃除面に沿って寝るような状態となることがない。したがって、先細り状に形成されたブラシ毛21は、被掃除面の塵を掻き出す上で好ましい。
【0043】
図7に示す本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態で、第1実施形態と同じ構成については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を説明する。
【0044】
第3実施形態では、環形のブラシ台部15に沿って植毛された全てのブラシ毛21を、短い方の毛材群21aと長い方の毛材群21bとで形成して、環形のブラシ台部15に沿うブラシ毛21の並び方向に隣接したブラシ毛21同士のブラシ毛間隔X(図4参照)に対してこれより広いブラシ毛間隔Y(図4参照)を得ている。この点以外の構成は、図7に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。
【0045】
したがって、第3実施形態の吸込み具11においても、ブラシ毛21同士のブラシ毛間隔が、既述のようにブラシ毛間隔X,YがY>Xの関係にあることにより、第1実施形態で既に説明した理由によって、本発明の課題を解決することができる。
【0046】
なお、本発明は前記各実施形態に制約されない。例えば、第3実施形態のように全てのブラシ毛21間で、ブラシ毛間隔X,YがY>Xの関係を満たすことは、第2実施形態にも適用できる。又、第1、第2の実施形態において、前記Y>Xの関係を満たすブラシ毛21は、ブラシ台部15の前壁部15bと両側壁部15cに夫々植毛されたブラシ毛21の内で、少なくとも両側壁部15cに植毛されたブラシ毛21だけであってもよい。又、前記各実施形態では、ブラシ台部15がこれと別に作られた吸込み管部13に回動可能に取付けられているが、本発明は、吸込み管部13の上流側部位にブラシ台部15が一体に形成されている吸込み具にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る吸込み具を備えた電気掃除機を示す斜視図。
【図2】図1の電気掃除機が備えた吸込み口体と吸込み具と延長管との関係を示す分解斜視図。
【図3】第1実施形態に係る吸込み具を示す斜視図。
【図4】図3の係る吸込み具を一部切欠いて示す側面図。
【図5】図4中矢印F5方向からみて示す吸込み具の正面図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る吸込み具を一部切欠いて示す側面図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る図5相当の正面図。
【符号の説明】
【0048】
11…吸込み具、12…吸込み具本体、13…吸込み管部、13c…吸込み管部の上流側開口、15…ブラシ台部、15b…ブラシ台部の前壁部、15c…ブラシ台部の側壁部、15d…ブラシ台部の後壁部、21…ブラシ毛、21a…短い方の毛材群、21b…長い方の毛材群、21c…段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込み管部及びこの管部の一端側に設けられた環形のブラシ台部を有した吸込み具本体と、複数本の毛材を束状に集合して形成されるとともに前記ブラシ台部に沿って環状に並べて前記ブラシ台部に植毛された複数のブラシ毛とを具備した電気掃除機用吸込み具において、
複数の前記ブラシ毛の内の少なくとも一部のブラシ毛を、それらの並び方向に隣接した前記ブラシ毛の高さ方向中央部同士のブラシ毛間隔よりも前記ブラシ毛の毛先側同士のブラシ毛間隔の方が広くなるように形成したことを特徴とする電気掃除機用吸込み具。
【請求項2】
吸込み管部及びこの管部の一端側に設けられた環形のブラシ台部を有した吸込み具本体と、複数本の毛材を束状に集合して形成されるとともに前記ブラシ台部に沿って環状に並べて前記ブラシ台部に植毛された複数のブラシ毛とを具備した電気掃除機用吸込み具において、
環形の前記ブラシ台部が、前壁部と、この前壁部が延びる方向の両端から後方に向けて略直角に折れ曲がった側壁部と、これら側壁部を一体に連続してU字状をなした後壁部とから形成されていて、前記前壁部と前記側壁部の内の少なくとも前記側壁部に植毛されたブラシ毛を、それらの並び方向に隣接した前記ブラシ毛の高さ方向中央部同士のブラシ毛間隔よりも前記ブラシ毛の毛先側同士のブラシ毛間隔の方が広くなるように形成し、前記吸込み管部の上流側開口を前記ブラシ台部の後部内側に対向させたことを特徴とする電気掃除機用吸込み具。
【請求項3】
前記少なくとも一部のブラシ毛が短い毛材群と長い毛材群とで形成されているとともに、これら長短の毛材群が前記ブラシ毛の高さ方向中央部に段差を形成して束状に集合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気掃除機用吸込み具。
【請求項4】
前記少なくとも一部のブラシ毛が、その高さ方向中央部から毛先に至るに従い次第に細く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気掃除機用吸込み具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−35847(P2010−35847A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202976(P2008−202976)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】