説明

電気掃除機用吸込具およびそれを用いた電気掃除機

【課題】サッシの溝など、隙間用ノズル等の吸込具の先が入らず、吸塵できないような箇所でも吸塵できる電気掃除機用吸込具を提供することを目的とする。
【解決手段】吸込具1の吸込口2の周囲に隣接して吹出し風3を吹出す射出ノズル4を複数本配置し、前記射出ノズル4は、前記吸込口2の前方中央付近に焦点を合わせて射出するように互いに傾斜させて形成しており、かつ、前記射出ノズル4は、前記吸込口2の周囲を均等に分割した位置に配置構成したことにより、サッシの溝など、隙間用ノズル等の吸込具の先端が入らず、吸塵することができないような複雑な箇所において、被掃除面に吹出し風3を吹き当てても、従来のように被掃除面上をその周辺方向に飛び散らさず、被掃除面に当たった吹出し風3は吸込口2に向かって集中して舞い戻る流れとなり、効率良く塵埃を舞い上げて吸塵することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭等で使用される電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、サッシの溝や壁の隅などに溜まった塵埃を吸塵する吸込具として、吸込み先を略長方形に細くした隙間用ノズルと言われるものが用いられている。しかし、サッシの溝等においては、この隙間用ノズルの先端でも入りきらない凹部もあり、そう言った箇所では吸塵できないというものであった。そういった問題を解決すべく、吸込口に併設して送風機等からの吹出し風を射出する吹出口を設けたものがあり、これは、吹出口より射出した吹出し風によって、被掃除面上の塵埃を一旦、舞上らせて吸引するという効果を狙ったものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−321305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先述した吹出し風を利用する従来例の構成では、吹出口は1箇所で、かつ吸込口と吹出口はほぼ平行に配置した構成となっており、吹出口から射出した吹出し風が被掃除面に衝突すると、被掃除面に沿って横方向へと流れ出すため、被掃除面上にある塵埃は舞上らずに横へ飛び散らす方が多く、結果、舞い上げた塵埃を吸引できるのは少ない状態となってしまう。
【0005】
そのため、特許文献1でも記載されているように、吸込口の周囲には、吹出口を囲うようして毛ブラシ等を構成したものが示されている。この場合、吹出口から射出した吹出し風が被掃除面に衝突して横方に流れても、毛ブラシに当たり、そのまま吸込口へ向かって舞上る流れとなるが、結局、毛ブラシが入ることのできる凹部でしかその効果を発揮することができなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、サッシの溝など、隙間用ノズル等の吸込具の先が入らず、吸塵できないような箇所でも吸塵できるようにした電気掃除機用吸込具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の電気掃除機用の吸込具は、吸込具の先端に開口する吸込口と、前記吸込口の周囲に隣接して吹出し風を吹出す射出ノズルを複数本配置し、前記射出ノズルは吹出し風を発生する送風機、もしくは圧縮空気を発生するポンプと配管部を介して連結したもので、前記射出ノズルは、前記吸込口の前方中央付近に焦点を合わせて射出するように互いに傾斜させて形成しており、前記射出ノズルは、前記吸込口の周囲を均等に分割した位置に配置構成したものである。
【0008】
このような発明によって、サッシの溝など、隙間用ノズル等の吸込具の先端が入らず、吸塵することができないような複雑な箇所において、被掃除面に吹出し風を吹き当てても、従来のように被掃除面上をその周りの方向へ飛び散らさず、被掃除面に当たった吹出し風は吸込口に向かって集中して舞い戻る流れとなり、効率良く塵埃を舞い上げて吸塵することができるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気掃除機用の吸込具は、サッシの溝など、隙間用ノズル等の吸込具の先が入らず、吸塵できないような箇所でも、吸込具を被掃除面から浮かした状態で効率良く吸塵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における吸込具の外観図
【図2】同実施の形態における正面図
【図3】同実施の形態における中央断面図
【図4】同実施の形態におけるごみ吹き飛ばし作用を示す模式図
【図5】本発明の実施の形態2の構成を示す中央断面図
【図6】同実施の形態において吸込具を傾けた状態図
【図7】同実施の形態において吸込具を被掃除面からさらに離した状態図
【図8】本発明の実施の形態3の構成を示す中央断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、吸込具の先端に開口する吸込口と、前記吸込口の周囲に隣接して吹出し風を吹出す射出ノズルを複数本配置し、前記射出ノズルは吹出し風を発生する送風機、もしくは圧縮空気を発生するポンプと配管部を介して連結したもので、前記射出ノズルは、前記吸込口の前方中央付近に焦点を合わせて射出するように互いに傾斜させて形成しており、前記射出ノズルは、前記吸込口の周囲を均等に分割した位置に配置構成したことにより、サッシの溝など、隙間用ノズル等の吸込具の先端が入らず、吸塵することができないような複雑な箇所において、被掃除面に吹出し風を吹き当てても、従来のように被掃除面上をその周りの方向へ飛び散らさず、被掃除面に当たった吹出し風は吸込口に向かって集中して舞い戻る流れとなり、効率良く塵埃を舞い上げて吸塵することができるようになる。
【0012】
第2の発明は、射出ノズルを、4本以上で構成したことにより、1対の射出ノズルからの吹出し風が衝突して被掃除面上を略垂直方向に流れようとするところを、もう1対の90度反転した位置に配置した射出ノズルによって、その周囲方向への流れを止めることができ、射出ノズルからの吹出し風を効率良く吸込口側へと舞い上げることができるようになる。
【0013】
第3の発明は、射出ノズルからの射出先を照らすように、前記射出ノズルに平行に照射ライトを設け、前記照射ライトの各々の照射光が被掃除面上で焦点が合って円状となった位置が吸塵の最適位置であることを知らせるようにしたことで、吸塵できるポイントを可視化することができる。
【0014】
第4の発明は、各々の射出ノズルの先に、被掃除面に垂直方向の距離を計測する距離センサーを設け、各々の前記距離センサーがある値範囲で揃った時点、射出ノズルより吹出し風を吹き出すように構成したことで、最適な射出角度から外れた状態では、被掃除面の塵埃をその周りに飛び散らしてしまうため、その防止を図り、使用性を向上させることができる。
【0015】
第5の発明は、射出ノズルから吹出す吹出し風を間欠的に吹き出すようにしたことで、周囲への吹出し風の流れをより抑えることができ、塵埃の撒き散らしはさらに防止することができる。
【0016】
第6の発明は、吸引力を発生する電動送風機を具備した掃除機本体と、前記掃除機本体
の吸引通路側に接続される上述の第1から5のいずれか1発明の吸込具を備えた電気掃除機に備えたことで、一つの電気掃除機で、通常の掃除範囲をさらに拡げることができるようになる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1〜3を用いて、本発明の実施の形態における電気掃除機用吸込具について説明する。図1〜3に示すように、吸込具1の先端には、中央に吸込口2を設け、その周囲には吹出し風3を吹き出す射出ノズル4を4方向に均等に配している。そして、吸込具1の後端は、ホースの先端パイプ(図示せず)、および延長管(図示せず)の先端部分と勘合させるための接合部5を設けており、先端の吸込口2と後端の接合部5とは、吸引通路6として連通させている。
【0019】
吸込具1先端の周囲に設けた射出ノズル4は、吸込具1の外郭部分に配した送風機7に配管8を介して連通させており、送風機7によって空気導入口9より取り入れた空気を、配管8を通して射出ノズル4先端より吹出す構成としたものである。ここで、吹出し風3の発生源として、圧縮空気を発生させるポンプを用いてもよい。
【0020】
各々の射出ノズル4の吹出し口10は、吸込口2の延長方向に対し約30〜50度の範囲で、吸込口2の前方中心に向けて傾けている。そして、吹出し風3の射出力を上げるために、吹出し口10の口径は、Φ1.5〜3mmの範囲で設定している。また、吹出し口の形状はテーパー状にしており、図3の二点鎖線で示すように、吹出した気流の射出角が急激に拡がらないようにしている。
【0021】
次に、射出ノズル4の吹出し風による作用について説明する。一方の対称位置にある射出ノズル4、4´から吹き出す吹出し風3は、吸込口2前方、約20〜40mm離れた箇所で互いに衝突するように、吹出し口10の吹出し角度を設定しており、この吹出し風3a、3a´同士の衝突位置に被掃除面を合わせると、吹出し風3a、3a´は、被掃除面に反射して、吸込口2方向へ向きを変える気流と、吹出し方向とは直角方向に、被掃除面に沿って流れようとする気流が生じる。
【0022】
ここで、先述した一対の射出ノズルに対して90°反転した位置に配置しているもう一対の射出ノズルからも同時に吹出し風3b、3b´を射出しており、この時、それぞれの一対の射出ノズル4から出る吹出し風3a、3a´、3b、3b´は、反射して被掃除面に沿って流れようとする気流をお互いに打ち消し合う向きに配置しているため、被掃除面で反射する気流はすべて吸込口へと戻る気流となる(図4)。
【0023】
この気流の流れにより、吸込具1の吸込口2を被掃除面に接地させず、吸込口2を被掃除面から離した状態で、対称に射出した吹出し風3が被掃除面のごみが吸込口2に向かって吹き上げ、ごみを周辺に吹き飛ばすことなく吸込むことができるようになる。
【0024】
また、射出ノズル4からの吹出し風3を、間欠的に吹出すようにすれば、被掃除面での吹出し風3の反射で、周囲方向に流れてごみを撒き散らす気流の発生頻度がさらに下がることになる。
【0025】
ここで、射出ノズル4からの吹出しは、手元操作部分に配したON/OFFスイッチで切り変えるようにしておけば、吹出しの誤操作を抑えることができる。
【0026】
また、本発明の実施の形態では、射出ノズル4から吹出し風3の発生源である送風機7を、吸込具1外郭に設けた構成としているが、送風機7を、ホースの先端パイプ部分、もしくは延長管に構成し、連結管を介して吸込具に設けた射出ノズルに連結させて、吹出し風を射出する構成としてもよい。この場合、吸込具1を取り付けずに、ホース先端パイプ部分(もしくは延長管先端)から吹出し風のみ射出させた、“拭き出し掃除”もできるようになる。
【0027】
(実施の形態2)
図は、実施の形態2における射出ノズルの構成を示している。なお、上述した実施の形態1と重複する構成については、同一符号を記載し説明を省略する。
【0028】
図5に示すように、射出ノズル4からの吹出し風3と略平行に集束させた光を照らすように、集光LEDを光源とした照射ライト11を各射出ノズル4に設け、電源は、吸込具1とホース先端部(もしくは延長管先端部)のコネクター接合部12を介して、掃除機本体から供給する構成としている。
【0029】
各々の一対の光は、一対の吹出し風3が衝突し合う付近で同様に干渉し合う。この干渉する照射光を被掃除面に当てると、吸込具が傾いた状態となった場合(図6)では、図のように、干渉光は楕円状となり、その輪郭も幾分ぼやけた状態になる。そして、被掃除面に対して吸込具が垂直になっている状態では、被掃除面を照らす光は丸くなり、図5に示すように、光の干渉点、すなわち吹出し風が衝突する位置に、吸込具1と被掃除面との距離が一致すると、被掃除面を照らす光は、輪郭がはっきりとした状態となる。
【0030】
また、この状態から吸込具1を離していくと(図7)、被掃除面を照らす光は、その輪郭がぼやけた状態となり、また、合流した吹出し風が被掃除面に略垂直方向となる気流となるため、被掃除面で反射した吹出し風3は、被掃除面に沿って周囲方向に流れてしまうため、ごみを撒き散らしてしまうことになる。つまり、この被掃除面を照らす光が、はっきりとした輪郭で丸く照らす状態が、射出ノズル4からの吹出し風3によりごみを確実に吹き上げる最適の状態であり、もし、この状態からズレた距離、角度にあると、射出ノズル4からの吹出し風3が、ごみを撒き散らす方向に流れてしまうことになる。
【0031】
よって、この光のサインを確認した上で、吹出し風3を射出するようにすれば、ごみを撒き散らすことなく、確実に吹き上げて吸込口2より吸込むことができるようになる。
【0032】
(実施の形態3)
図は、実施の形態3における射出ノズルの構成を示している。なお、上述した実施の形態1と重複する構成については、同一符号を記載し説明を省略する。
【0033】
図8に示すように、各射出ノズル4の先端に、赤外線により空間距離をセンシングする距離センサー13を配置している。
【0034】
各射出ノズル4と被掃除面との距離の応答値が、予め設定した設定範囲値内にすべて入った状態になると、射出ノズル4から吹出し風3が射出され続け、応答値の一つでも設定範囲から外れていると、射出ノズル4から吹出し風3を射出しないように設定したものである。
【0035】
これにより、吹出し風3の最適位置に対して、距離センサー13で確実にセンシングするため、人為的動作の誤差により、ごみを撒き散らす位置に吹出し風の位置を持ってくることがなくなるため、吸込具の操作性をさらに向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる電気掃除機用吸込具は、対称に配置した射出ノズルを複数均等配置し、その射出ノズルから射出される吹出し風を、吸込口前方の中心に向かって射出させることによって、被掃除面で反射する吹出し風は、被掃除面の周囲方向への反射をお互いに抑え合いながら、吸込口へ向かって折り返す流れとなるため、サッシの溝など、今まで吸込具の先が入らないために吸い取るのが困難であった箇所でも、吸込口を離した状態で、周辺にごみを撒き散らすことなく、ごみを確実に吹き上げて吸引することができるようになり、家庭用電気掃除機だけでなく、業務用電気掃除機などさまざま種類の掃除機に使用することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 吸込具
2 吸込口
3,3a,3a´,3b,3b´ 吹出し風
4 射出ノズル
7 送風機
8 配管
10 吹出し口
11 照射ライト
13 距離センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込具の先端に開口する吸込口と、前記吸込口の周囲に隣接して吹出し風を吹出す射出ノズルを複数本配置し、前記射出ノズルは吹出し風を発生する送風機、もしくは圧縮空気を発生するポンプと配管部を介して連結したもので、前記射出ノズルは、前記吸込口の前方中央付近に焦点を合わせて射出するように互いに傾斜させて形成しており、前記射出ノズルは、前記吸込口の周囲を均等に分割した位置に配置したことを特徴とする電気掃除機用吸込具。
【請求項2】
射出ノズルは、4本以上で構成した請求項1に記載の電気掃除機用吸込具。
【請求項3】
射出ノズルからの射出先を照らすように、前記射出ノズルに平行に照射ライトを設け、前記照射ライトの各々の照射光が被掃除面上で焦点が合って円状となった位置が吸塵の最適位置であることを知らせる請求項1または2に記載の電気掃除機用吸込具。
【請求項4】
各々の射出ノズルの先に、被掃除面に垂直方向の距離を計測する距離センサーを設け、各々の前記距離センサーからの応答値が予め設定した設定範囲値内に揃った時点で、射出ノズルより吹出し風を吹き出すように構成した請求項1または2に記載の電気掃除機用吸込具。
【請求項5】
射出ノズルから吹出す吹出し風を間欠的に吹き出すようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気掃除機用吸込具。
【請求項6】
吸引力を発生する電動送風機を具備した掃除機本体と、前記掃除機本体の吸引通路側に接続される請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気掃除機用吸込具とを備えた電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9811(P2013−9811A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144040(P2011−144040)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】