説明

電気掃除機

【課題】回転ブラシのアンバランス調整の作業性と精度の向上実現出来るノズル及びこれを搭載した電気掃除機を提供する。
【解決手段】ブラシ12が植毛された略中空円筒状のブラシ体8を有し、モーターにより駆動される回転ブラシ4と、ブラシ体8の表面に着脱でき、ブラシ体8と回転自在で、ブラシ体8の円周方向の任意の位置に固定可能な、カウンターウエイトとブラシ10を有するアンバランス調整体9とを備え、アンバランス調整体9により回転ブラシ4のアンバランスを調整するノズルとした。そして、アンバランス調整体9にブラシ10が設けられているため、ブラシ体8のブラシ12とアンバランス調整体9のブラシ10が掃除面の塵埃を掻き上げることが出来ると共に、周方向の任意の位置にカウンターウエイトを配することが可能となり、回転ブラシ4のアンバランスを精度よく低減することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルおよびこれを搭載した電気掃除機に関するもので、特にモーターにて高速に駆動される回転ブラシのアンバランス調整手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電気掃除機では、比較的外径の大きい中空のブラシ体を有する回転ブラシの少なくとも一側端面の同心円周上に、深さ方向が回転ブラシの回動軸線と平行となるように複数の穴を配設し、穴形状と同形状か圧入可能な形状のカウンターウエイトをアンバランス位置に圧入とすることで回転ブラシのアンバランス調整を可能としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、比較的外径の小さいブラシ体を採用する場合には、中実のブラシ体を使用することも一般的であり、このような回転ブラシでは、ブラシ体にカウンターウエイトとしてビスを締結する手段も一般的である。
【特許文献1】実開昭59−117464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の電気掃除機の回転ブラシのアンバランス調整構成では、中空のブラシ体を採用する場合には、ブラシ体の内部をかなり厚肉にする必要があり、熱可塑性樹脂で成型する場合などは、通常その成型性が困難であり、ブラシ体の質量が増加するという課題があった。
【0005】
また、アンバランス調整を行う場合、通常はアンバランスマシンによるアンバランス箇所の特定後、カウンターウエイトを取り付けるが、従来例のように、ブラシ体の側方外側にカバー体を取り付ける場合、アンバランスマシンによる測定後にカバー体を取り外す必要があり、カバー体がブラシ体と圧入等で確実に固定する必要がある場合などは、カウンターウエイトの取り付けに時間を要するという課題があった。
【0006】
一方、中実のブラシ体を採用する場合は、カウンターウエイトとして、ブラシ体の外周より内側に向かってビスを締結するのが一般的であるが、中実のブラシ体を成型するためには、ソリ等の成型不具合を防止するため、ブラシ体の外径を比較的小さくすることで、厚肉成型を実現する必要があり、この場合床面の塵埃を掻き上げるようにするため、ブラシを長くする必要があり、このことがブラシのコシをなくし、集塵性能を低下させるという課題があった。
【0007】
また、アンバランスマシンにより、アンバランス箇所がブラシの植毛位置であった場合には、その近傍にビスを締結することしか出来ず、この場合には、アンバランス調整を有る程度不完全なまま妥協せざるを得ないという課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、回転ブラシのアンバランス調整の作業性を向上しつつ、アンバランス調整精度も向上したノズル等を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明のノズルは、モーターと、ブラシが植毛された略中空円筒状のブラシ体を有し前記モーターにより駆動される回転ブラシと、前記ブラシ体の表面に着脱でき、前記ブラシ体と回転自在で、前記ブラシ体の円周方向の任意の位置に固定可能な、カウンターウエイトとブラシを有するアンバランス調整体とを備え、前記アンバランス調整体により前記回転ブラシのアンバランスを調整するもので、アンバランス調整体はブラシを有するため、ブラシ体、アンバランス調整体の両方のブラシが掃除面の塵埃を掻き上げることが出来ると共に、周方向の任意の位置にカウンターウエイトを配することが可能となり、回転ブラシのアンバランスを精度よく低減することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明のノズルは、回転ブラシのアンバランス調整の業性を向上しつつ、アンバランス調整精度も向上出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、モーターと、ブラシが植毛された略中空円筒状のブラシ体を有し前記モーターにより駆動される回転ブラシと、前記ブラシ体の表面に着脱でき、前記ブラシ体と回転自在で、前記ブラシ体の円周方向の任意の位置に固定可能な、カウンターウエイトとブラシを有するアンバランス調整体とを備え、前記アンバランス調整体により前記回転ブラシのアンバランスを調整するもので、アンバランス調整体はブラシを有するため、ブラシ体、アンバランス調整体の両方のブラシが掃除面の塵埃を掻き上げることが出来ると共に、周方向の任意の位置にカウンターウエイトを配することが可能となり、回転ブラシのアンバランスを精度よく低減することが出来る。
【0012】
第2の発明は、第1の発明のアンバランス調整体を、ブラシ体の略両端に設けたもので、2つを配することにより、より精密にバランスを取ることが可能となり、また回転ブラシをその両端で支持するような場合には、アンバランス調整体が支持部に近くなり、さらにバランスを取り易くなるものである。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明のアンバランス調整体に植毛されたブラシの硬度を、ブラシ体に植毛されたブラシの硬度よりも下げるもので、アンバランス調整体へのブラシの植毛代を確保する場合などのために、アンバランス調整体からのブラシの出代を短くせざるを得ない場合等に、ブラシの硬度を低下させることで、ブラシのコシを最適に設定出来る。
【0014】
第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明のノズルを搭載した電気掃除機とするもので、アンバランスの調整作業を向上した電気掃除機が得られるものである。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における電気掃除機の全体構成を示す要部断面図で、図2は、同電気掃除機のノズル部の下面図、図3は、図2のA−A断面図である。
【0017】
図1において、1は、電気掃除機本体で、下方にモーター(図示せず)を内蔵する本体部2と本体部2の下方に傾動自在に取り付けられたノズル部3とで構成されている。また、ノズル部3は、中空の回転ブラシ4を有し、モーターシャフト5と回転ブラシ4との間にはベルト6が架けられている。
【0018】
図2〜図3において、ノズル部3の底面には主吸込口7が設けられており、主吸込口7の両端近傍内側には、回転ブラシ4のブラシ体8外周に嵌るようにアンバランス調整体9が固定されている。また、アンバランス調整体9にはブラシ10が植毛されており、アンバランス調整体9の固定にはビス11を用いており、アンバランス調整体9をブラシ体8に固定する前は、ブラシ体8に対して回転としている。
【0019】
ここで、アンバランス調整体9固定用のビス11はカウンターウエイトとしての役割も兼ねており、ビス11は、事前にアンバランス測定機にてアンバランス箇所を特定し、このアンバランス箇所とは対称位置もしくはその近傍に締結されている。
【0020】
また、ブラシ体8に植毛されたブラシ12の線径は通常φ0.3mm程度を使用するが、アンバランス調整体9に植毛されたブラシ10の出代は少ないため、ブラシ10の線径はφ0.2もしくはφ0.1と、ブラシ体8のブラシ12の線径よりも小さくすることで、ブラシ10のコシをブラシ12のコシよりも軟らかくして、ブラシのコシを調整している。
【0021】
上記構成を備えた電気掃除機の動作、作用は以下の通りである。
【0022】
モーターの回転の回転力は、モーターシャフト5からベルト6を介して回転ブラシ4に伝達され、回転ブラシ4が回転することで塵埃を掻き上げると同時にモーターの吸引力により塵埃を吸引することで掃除面の塵埃を除去する。
【0023】
ここで、通常モーターの回転数は数万回転であり、モーターシャフト5の外径と回転ブラシ4のベルト懸架部の外径とで決まる減速比により減速するものの、通常回転ブラシは数千回転という高速回転するが、カウンターウエイトとしてのビス10が締結されているため、回転ブラシ4は、高速回転した場合にも回転ブラシ4の振動が低減されているので、振動と振動音が少なく安定して回転する。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、ブラシ10とカウンターウエイトと固定兼用のビス11を有したアンバランス調整体9を周方向の任意の位置に取り付け可能なため、ブラシ10及びブラシ12でブラシ体8の全幅で掃除面の塵埃を掻き上げることが出来ると共に、回転ブラシ4のアンバランスを精度よく低減することが出来る。
【0025】
また、アンバランス調整体9に植毛されたブラシ硬度をブラシ体8に植毛されたブラシ硬度よりも下げることで、アンバランス調整体9へのブラシ10の植毛代を確保すると共に、ブラシ10のコシを最適に設定出来る。
【0026】
また、ブラシ体8とアンバランス調整体9をビス11で固定するもので、安価かつ安易にアンバランス調整体9の着脱と固定を実現出来る。
【0027】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における電気掃除機の回転ブラシの平面図で、図5は、図4のB−B断面図である。
【0028】
なお、上記実施の形態1と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0029】
本実施の形態は、上記第1の実施の形態におけるアンバランス調整体9を圧入固定したものであり、アンバランス調整体9には、ブラシ10とカウンターウエイトとしてのビス11を有しており、回転ブラシ4の軸受け部13が回転ブラシ4の両端部にあり、軸受け部13が容易に着脱可能な回転ブラシ4などは、アンバランス測定機でのアンバランス位置の特定後に、軸受け部13とアンバランス調整体9を離脱し、カウンターウエイト位置を調整することで、容易にアンバランス調整が可能と出来る。
【0030】
なお、図6に示すように、カウンターウエイト質量がある程度決まっているような場合は、カウンターウエイトとしてアンバランス調整体9に突起14を設けることなどにより安価に構成出来ることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかるノズルは、回転ブラシのアンバランス調整の作業性と精度を確保出来るものであり、各種回転ブラシのアンバランス調整に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機の全体構成を示す要部断面図
【図2】同電気掃除機のノズルの下面図
【図3】同電気掃除機のノズルの要部断面図(図2のA−A断面)
【図4】本発明の実施の形態2における電気掃除機の回転ブラシの正面図
【図5】同電気掃除機の回転ブラシの要部断面図(図4のB−B断面)
【図6】同電気掃除機の回転ブラシの他の要部断面図
【符号の説明】
【0033】
3 ノズル部
4 回転ブラシ
8 ブラシ体
9 アンバランス調整体
10、12 ブラシ
11 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターと、ブラシが植毛された略中空円筒状のブラシ体を有し前記モーターにより駆動される回転ブラシと、前記ブラシ体の表面に着脱でき、前記ブラシ体と回転自在で、前記ブラシ体の円周方向の任意の位置に固定可能な、カウンターウエイトとブラシを有するアンバランス調整体とを備え、前記アンバランス調整体により前記回転ブラシのアンバランスを調整するノズル。
【請求項2】
アンバランス調整体は、ブラシ体の略両端に設けられた請求項1記載のノズル。
【請求項3】
アンバランス調整体に植毛されたブラシの硬度を、ブラシ体に植毛されたブラシの硬度よりも下げた請求項1または2記載のノズル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のノズルを搭載した電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−167486(P2007−167486A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371451(P2005−371451)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】