説明

電気掃除機

【課題】集塵室内の塵埃舞い上がりを抑え集塵効率を向上させた電気掃除機を提供する。
【解決手段】電動送風機16により吸引した塵埃を含む空気を旋回させ塵埃分離する1次旋回室5と、その下方に連通する2次旋回室3と、2次旋回室3の側方に塵埃を収納する集塵室21を配置し、2次旋回室3の内周壁に形成した流入口22とで集塵室21とが連通するサイクロン式電気掃除機において、2次旋回室3の内周壁は、円筒形状部19と非円筒形状部20とから成る略D形状で構成し、流入口22は、旋回気流方向に対して、円筒形状部19から非円筒形状部20に変化する交点付近に形成したことにより、2次旋回室3での旋回流速を減速させて、集塵室21へ進入する含塵空気の流速を抑え、集塵室21内での塵埃の浮遊を抑えて、2次旋回室3へと再び舞い戻ることを効果的に抑えて集塵性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン式の電気掃除機の旋回室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、吸引した含塵空気に旋回成分を与え、遠心力により気流から塵埃を分離するタイプの電気掃除機、いわゆるサイクロン式の電気掃除機が注目を浴びている。サイクロン式電気掃除機の多くは、その構成が、一つの略円筒状の筒体において、上方に、吸込み口を設け、吸引した含塵空気を旋回させる旋回部を配し、その下方には、遠心分離した塵埃を溜める集塵部を配したものであり、旋回部を集塵部との間には、集塵部から塵埃が旋回部側へ舞い上がるのを抑えるために、返りを設けたフランジを構成しているのが一般的である。
【0003】
しかし、この旋回部と集塵部とを一体の筒体の中で形成する構成では、集塵部から旋回部側への舞い上がりを充分には抑えられないため、旋回部と集塵部とを別々の空間で区画形成し、旋回部から集塵部へは流入口を介して連通させることで、集塵部に溜めた塵埃を旋回部に舞い戻りにくくさせた構成のものも開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。特に、特許文献2は、特許文献1に比べて、旋回部と集塵部とを連通させる排出口において、流入口の集塵室側に整流部を設けることで、集塵部から旋回部への舞い戻りをさらに抑えるように工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−157463号公報
【特許文献2】特開2006−205168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2ともに、円筒形状の旋回部の周壁の一部に流入口を形成しているものであり、吸引された含塵空気は、旋回部の円筒壁面に沿って旋回し、遠心力を受けながら流入口に向かうため、排出口から集塵部へ流入する含塵空気は、その旋回気流の接線成分の勢いのまま、集塵部へと進入してしまい、進入気流の流速が高いことで、集塵部内で塵埃を旋回させる運動量が作用するため、集塵室内で塵埃を旋回浮遊させ、塵埃が旋回部へと舞い戻るチャンスを充分には抑えることができず、結果、旋回部に塵埃を含んで舞い戻ってしまうと、最終的には、空気排出口からその塵埃を排出してしまうこととなっていた。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、一旦、集塵部に集塵した塵埃を舞い戻すことなく、さらなる集塵効率の向上を図ったサイクロン式電気掃除機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の電気掃除機は、吸引力を発生させる電動送風機と、略円筒形状の旋回部と、前記電動送風機により吸引した含塵空気を前記旋回部で旋回させるため前記旋回部の外郭周方向に設けた吸気口と、塵埃分離した空気を排出するため通気部を備え前記旋回部の中心付近に設けた排気筒とを有した1次旋回室と、前記1次旋回室の下方に位置し、前記1次旋回室と連通する2次旋回室と、前記2次旋回室の側方に配置され塵埃を収納する集塵室と、前記2次旋回室の側壁の一部に形成した流入口と、を備え
、前記2次旋回室と前記集塵室とを前記流入口を介して連通させたサイクロン式電気掃除機において、
前記2次旋回室は、その周壁の一部が、前記1次旋回室の略円筒形状の旋回部と一致、もしくは、幾分、大きい内径で形成した円筒形状部と、他の周壁部分は、前記円筒形状部の内径に対して内側に位置させた、直線状、もしくは湾曲状に形成した非円筒形状部とで構成し、前記流入口は、旋回気流の流れ方向に対して、前記2次旋回室の周壁が、前記円筒形状部から前記非円筒形状部に変化する交点付近に形成したものである。
【0008】
従来の構成のように、2次旋回室を円筒形状で形成した場合、吸気口より吸い込まれた含塵空気は、1次旋回室の円筒周壁を高速で旋回し、そのままの速度で旋回下降しながら2次旋回室に至るが、本発明では、2次旋回室の周壁を円筒形状部から非円筒形状部に変わる箇所で屈曲させているため、流れの抵抗となり、2次旋回室の周壁付近の旋回速度は全周が円筒形状の場合に比べて減少する。一方、流入口の直前では、円筒形状部の周壁接線方向に向かう流れと空間中央に向かう旋回渦軌道の流れとに二分されるが、非円筒形状部の周壁付近は、円筒形状部の周壁よりも内側に位置させ、中心からの半径距離を減少させたことで、旋回通路幅が円筒形状部より減るため、非円筒形状部付近の旋回流速が高まり、流入口を通過する接線気流はさらに減少することになる。塵埃は、遠心方向の慣性力を受け、周壁に押し付けられて旋回下降するので、流入口直前では、接線方向の気流に乗って集塵室へと進入することになる。上記の3つの作用により、流入口を通過する気流の流速が大幅に減少するため、集塵室内の塵埃を舞い上げたり、旋回させたりするほどの運動量が発生せず、集塵室内の気流に塵埃はほとんど乗ることがなく、よって、集塵室から2次旋回室への舞い戻りを効果的に抑えることができるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気掃除機は、集塵室の塵埃が戻ることが無いため集塵性能が向上し、排気筒の詰まり防止によるメンテナンスの軽減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機の外観図
【図2】同、電気掃除機の掃除中の側方断面図
【図3】同、電気掃除機の掃除中の要部構成を示す斜視断面図
【図4】同、電気掃除機の掃除中での2次旋回室と集塵室の平面断面図
【図5】同、電気掃除機の掃除終了後の側方断面図
【図6】実施の形態2における電気掃除機の掃除中での2次旋回室と集塵室の平面断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、吸引力を発生させる電動送風機と、略円筒形状の旋回部と、前記電動送風機により吸引した含塵空気を前記旋回部で旋回させるため前記旋回部の外郭周方向に設けた吸気口と、塵埃分離した空気を排出するため通気部を備え前記旋回部の中心付近に設けた排気筒とを有した1次旋回室と、前記1次旋回室の下方に位置し、前記1次旋回室と連通する2次旋回室と、前記2次旋回室の側方に配置され塵埃を収納する集塵室と、前記2次旋回室の側壁の一部に形成した流入口と、を備え、前記2次旋回室と前記集塵室とを前記流入口を介して連通させたサイクロン式電気掃除機において、
前記2次旋回室は、その周壁の一部が、前記1次旋回室の略円筒形状の旋回部と一致、もしくは、幾分、大きい内径で形成した円筒形状部と、他の周壁部分は、前記円筒形状部の内径に対して内側に位置させた、直線状、もしくは湾曲状に形成した非円筒形状部とで構成し、前記流入口は、旋回気流の流れ方向に対して、前記2次旋回室の周壁が、前記円筒形状部から前記非円筒形状部に変化する交点付近に形成したものである。
【0012】
これにより、2次旋回室の周壁を円筒形状部から非円筒形状部に変わる箇所で屈曲させているため、流れの抵抗となり、2次旋回室の周壁付近の旋回速度は全周が円筒形状の場合に比べて減少する。一方、流入口の直前では、円筒形状部の周壁接線方向に向かう流れと空間中央に向かう旋回渦軌道の流れとに二分されるが、非円筒形状部の周壁付近は、円筒形状部の周壁よりも内側に位置させ、中心からの半径距離を減少させたことで、旋回通路幅が円筒形状部より減るため、非円筒形状部付近の旋回流速が高まり、流入口を通過する接線気流はさらに減少することになる。塵埃は、遠心方向の慣性力を受け、周壁に押し付けられて旋回下降するので、流入口直前では、接線方向の気流に乗って集塵室へと進入することになる。上記の3つの作用により、流入口を通過する気流の流速が大幅に減少するため、集塵室内の塵埃を舞い上げたり、旋回させたりするほどの運動量が発生せず、集塵室内の気流に塵埃はほとんど乗ることがなく、よって、集塵室から2次旋回室への舞い戻りを効果的に抑えることができるようになる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記2次旋回室の非円筒形状部の壁面は、前記集塵室の壁面の一部を兼ねた構成としたものである。
【0014】
これにより、集塵室の一部が2次旋回室内に食い込んだ構成となるため、前記1次旋回室から前記集塵室までを含む全体のサイズを小さくさせることができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第2の発明において、前記2次旋回室の非円筒形状部の周壁先端は、前記1次旋回室の旋回部の円弧中心を超えない範囲に設けたものである。
【0016】
これにより、2次旋回室での旋回気流の流れを乱さずに、前記1次旋回室から前記集塵室までを含む全体のサイズを小さくさせることができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1から第3のいずれか1項記載の発明において、前記2次旋回室の非円筒形状部の周壁先端は、前記排気筒の外周端部の鉛直下方近傍に配置したものである。
【0018】
これにより、2次旋回室の非円筒形状部の周壁付近での上昇気流成分は、排気筒側面付近の旋回気流と衝突するような合流はしないため、旋回軌道を乱さずに、前記1次旋回室から前記集塵室までを含む全体のサイズを小さくすることができる。
【0019】
第5の発明は、特に、第1から第4のいずれか1つの発明において、前記1次旋回室の旋回部の円弧周壁と前記2次旋回室の非円筒形状部の周壁とをつなぐ上壁部は、前記2次旋回室に向かって傾斜する斜面で形成したものである。
【0020】
これにより、1次旋回室からの傾斜の誘いに沿って、2次旋回室へと下降するため、1次旋回室の周壁に対して2次旋回室の周壁の一部が内側に位置していても、旋回軌道を乱さずに遠心分離を図ることができる。
【0021】
第6の発明は、特に、第1から第5のいずれか1つの発明において、前記2次旋回室から前記集塵室への連通部分に、前記2次旋回室の円筒形状部より前記集塵室の側壁面に向かって接線方向に伸長した導入側壁部を形成し、前記導入側壁部と前記2次旋回室の非円筒形状部の周壁との交点から、前記非円筒形状部の周壁に前記流入口を設け、かつ、前記導入側壁部には、上壁面と下壁面とを設けて、コの字状となる流入経路を形成したものである。
【0022】
これにより、流入口へ向かう気流は、2次旋回室空間の内側による流れに対して、さらに外向きの角度となるため、流入口を通過する気流の速度がさらに減し、より集塵室から
2次旋回室への舞い戻りを抑えることができるようになる。
【0023】
(実施の形態1)
図1〜6を用いて、本発明の実施の形態1における電気掃除機について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1を示す電気掃除機全体の外観図であり、図2は、同、電気掃除機の掃除中の側方断面図、図3は、同、電気掃除機の集塵ケース2の要部構成を示す斜視断面図、図4は、同、電気掃除機の2次旋回室3と集塵室21との配置関係を示す平面断面図、図5は、同、電気掃除機の掃除終了後の側方断面図を示すものである。
【0024】
図1に示すように、掃除機本体1の外部には、車輪6、およびキャスター7が取り付けられており、掃除機本体1は床面を自在に移動できる。吸い込んだ塵埃を溜める集塵ケース2取り付け部の下方前方に設けた接続口8には、吸引ホース9、手元操作ハンドル10、延長管11が順次接続されており、延長管11の先端には吸込具12が取り付けられている。
【0025】
図2に示すように、集塵ケース2は、掃除機本体1に対して着脱自在に取り付け可能で、かつ、水平に対して約45°の角度に傾斜した状態で設置している。これは、掃除機本体1の高さ方向のサイズを小さくするためであり、90°まで起こした状態で集塵ケース2を設置する構成としても本発明による効果は同じである。そして、集塵ケース2を掃除機本体1に取り付けた状態では、集塵ケース2内に塵埃を取り込む入口となる吸気口13を、接続口8に連結した吸引路14に連通し、集塵ケース2から洗浄空気を排出する出口となる排出口15は、電動送風機16と連通する接続構成としている。
【0026】
次に、集塵ケース2について説明する。
図3に示すように、まず塵埃を吸い込む部分には、略円筒形状の旋回部の外周に、内周面に対して接線方向となるように開口した吸気口13と、略円筒状の中心付近には、排出口15に連通する円筒状の排気筒17を配した1次旋回室5を設けている。この排気筒17の外周側壁面には、メッシュフィルターやエッチングフィルター等の濾過フィルターによる通気部18を構成しており、粗塵がこの排気筒17を通過して、排出口15側へと抜け出ないようにしている。ここで、本実施例では、排気筒17の通気部18を濾過フィルターで形成しているが、排気筒17の周側壁面にφ1〜2mm径の小さな通気孔を多数個設けるようにした樹脂の一体成型品による構成でもよい。
【0027】
1次旋回室5の下方には、内周壁が連続するように2次旋回室3を配し、2次旋回室3の内周壁は、1次旋回室5の略円筒径よりも幾分大きい内径で設定した円筒形状部19と、この円筒形状部19の内径よりも内側に位置させた直線状の非円筒形状部20とで囲うようにしたもので、図4に示すように、概ね、略D形状となる内壁構成としている。
【0028】
ここで、1次旋回室5の底位置は、1次旋回室5と2次旋回室3との境界、もしくは、幾分、1次旋回室5側に位置するように配しており、2次旋回室3の非円筒形状部20の内周壁は、排気筒17中心と1次旋回室5内周壁との間にあって、排気筒17外周端部の鉛直下方近傍に位置させている。
【0029】
2次旋回室3の側方には、塵埃を溜めるための集塵室21を配しており、2次旋回室3と集塵室21とは流入口22を介して連通するものであり、この流入口22以外は、互いに区画形成した構成としている。
【0030】
ここで、2次旋回室3の非円筒形状部20の周壁は、集塵室21の区画壁の一部を兼ねた構成としている。すなわち、図2に示すように、集塵室21の上方が、1次旋回室5と2次旋回室3の内側に水平方向に食い込んだ構成としている。また、1次旋回室5の内周
壁と2次旋回室3の非円筒形状部20とをつなぐ非円筒形状部上方の上壁部23は、2次旋回室3に向かって傾斜する斜面となるように形成している。
【0031】
2次旋回室3から集塵室21へと連通する流入口22は、2次旋回室3の円筒形状部19の内周壁より集塵室21の側壁面に向かって接線方向に伸長した導入側壁部24と、その上下の上壁面25と下壁面26とでコの字状に囲われた流入経路27の先に配しており、円筒形状部19の内周壁から連なった導入側壁部24と非円筒形状部20とが交わる位置を端部として、非円筒形状部20の周壁に流入口22を形成している。
【0032】
集塵室21には、1次旋回室5ならびに2次旋回室3を旋回する気流に対して鉛直方向に摺動する圧縮手段28を設けており、吸引運転時は、集塵室21の上方に圧縮部29が収納された状態にあって、集塵室21の上壁の役割を果たし、吸引運転を止めると、モーター等の駆動源、もしくは手動によって、圧縮部29を下降し、集塵室21に溜まった塵埃を押し固めて減容可能となるようにしている。
【0033】
1次旋回室5の上方で、かつ、排気筒17と排出口15との間には、第2の塵埃分離手段30として不織布フィルターをプリーツ状に折ったものを配している。これは、排気筒17を通過してしまった細塵を濾過するために設けたものである。
【0034】
次に、集塵ケース2内の塵埃分離作用について説明する。
【0035】
まず、電動送風機16を運転させると、その吸引圧によって吸気口13より塵埃を含んだ含塵空気が進入する。このとき、1次旋回室5の吸気口13を内周壁面の接線方向に開口し、1次旋回室5内の空気を排出する排気筒17を上方中心に配しているため、室内の空気の流れは、周壁から中心に向かう渦流となる。そして、1次旋回室5、およびその下方に配した2次旋回室3の連続した空間において、排気筒17付近の負圧が最も高く、集塵ケース2の上方に位置した吸気口13から進入した空気は、1次旋回室5の内周壁面に沿って旋回しながら2次旋回室3に向かって下降する。
【0036】
2次旋回室3に至ると、ここでも2次旋回室3の内周壁面を沿って旋回し、2次旋回室3の中心に向かって流れが寄ると、そのまま空間の中心付近を旋回しながら上昇し、排気筒17より排出されるという旋回気流の軌道が形成される。吸い込まれた空気に含まれた塵埃は、空気より重量があるため、吸気口13から内周壁面を沿って旋回する際に受ける遠心力によって内周壁面に押し付けられながら旋回しつづけることになる。
【0037】
通常、サイクロン式集塵ケースは、この遠心力を受ける塵埃と中心に向かう空気とに分離する効果を狙ったものであるが、砂・粉・綿・髪の毛といった様々な塵埃が集塵ケースの底部分に溜り始めると、その集塵空間では、塵埃が乗った気流に乱れが生じてしまい、上昇する気流に乗って排気筒まで至り、そのまま排気筒を通過してしまうといった状況が起こり得ていた。
【0038】
そこで、従来例(図示せず)では、旋回室と塵埃を溜める集塵室とをそれぞれ区画形成し、旋回室と集塵室とは流入口を介して連通し、旋回気流に乗って遠心力を受ける塵埃を集塵室内に向かって排出させ、旋回室内における排気筒に向かう上昇気流に塵埃を乗せないようにする狙いで構成されたものであった。
【0039】
しかし、この従来例の構成では、旋回室と集塵室とを連通する流入口を旋回室の円筒内周壁面上に設けており、内周壁を沿って流れる旋回気流の周速度は、吸気口から進入した時の速度とほぼ同等の高い状態であるため、旋回室内周壁の流入口端部から集塵室内に向かって流れる旋回室内周壁接線方向の流速は高い状態で進入する。
【0040】
この流入口から進入した気流の速度では、進入した空気自体に集塵室内の塵埃を旋回浮遊させることが可能な運動量を持った状態であるため、集塵室内で塵埃が旋回し、舞い上がり生じ、再び、流入口から旋回室側に浮遊した塵埃が逆流して、そのまま、旋回室内の上昇気流に乗って排気筒より抜け出てしまうという状況を、充分には抑え切れてはいなかった。
【0041】
そこで、本発明の実施の形態1では、1次旋回室5下方の連続した空間となる2次旋回室3の内周壁の形状を、一様な略円筒形状はなく、円筒形状部19と非円筒形状部20とから成る略D形状の内周壁面という構成にした。
【0042】
吸い込まれた空気は、吸気口13より1次旋回室5の内周壁面に沿って旋回しながら2次旋回室3に向かって下降し、2次旋回室3に至ると、初めに、円筒形状部19の内周壁面に沿って旋回し、続いて、非円筒形状部20の内周壁面に到達すると流れが屈曲させられる抵抗を受ける。この流れの抵抗により、2次旋回室3空間を旋回する旋回気流の速度は、従来例のような、2次旋回室3の周壁全体を円筒形状とした場合と比べて大幅に減少する。
【0043】
また一方で、流入口22の直前では、流入口22に向かう円筒形状部19の内周壁接線方向の流れと、非円筒形状部20の内周壁面に沿って屈曲させられる流れとに二分されるが、非円筒形状部20の内周壁は、円筒形状部19の内周壁よりも排気筒の中心寄りに位置させているため、流入口22直前の二分する流れのうち、非円筒形状部20に沿って屈曲する流れの流速成分の割合が高くなり、流入口22に向かう円筒形状部19の内周壁接線方向の流速成分の割合が低くなる。
【0044】
さらに、実施の形態1では、図に示すように、流入口22の位置を、旋回軌道からは外側に膨らむ方向に流入経路27を設けて構成したため、流入口22に向かう円筒形状部19の内周壁接線方向の流速成分の割合がより低くなる。
【0045】
ここで、塵埃は、1次旋回室5より内周壁面方向に遠心力を受けながら2次旋回室3まで旋回下降しており、この塵埃が乗っている気流は、1次旋回室5、および2次旋回室3の内周壁面のすぐ近傍を流れる気流に分布しており、そのため、上述の流入口22直前で二分する流れに対しては、流入口22に向かう円筒形状部19の内周壁接線方向の流れに乗って流入口に向かう。
【0046】
この上述した3つの作用により、流入口22を通過する含塵空気の流速は大幅に減少し、進入した空気には、集塵室21内の塵埃を舞い上げたり、旋回させるほどまでの運動量がないため、集塵室21内を動く塵埃がほとんどなく、よって、集塵室21から2次旋回室3への舞い戻りを効果的に抑えることができるようになる。
【0047】
また、上述したように、2次旋回室3を旋回した空気は、2次旋回室3の中心付近を通る上昇気流よって排気筒17に至るが、2次旋回室3の非円筒形状部20を排気筒17中心を超えて2次旋回室3の円筒形状部19側に位置させると、非円筒形状部20の内周壁付近を流れる旋回気流は、排気筒17の高い負圧に引き寄せられ、上昇気流となってしまうが、本実施の形態1では、非円筒形状部20を、図のように、排気筒17の外周端部の鉛直下方の近傍に配置した構成としているため、2次旋回室3の円筒形状部19と非円筒形状部20の内周壁付近を流れる旋回気流は、ほぼ水平方向の気流となっており、例えば、キャンディーの包みといった大きな塵埃を吸い込んだ場合でも、1次旋回室5より2次旋回室3へと旋回下降し、集塵室21へ向かう流入口22に直ちに通過できなかったとしても、排気筒17に向かう上昇気流には乗らずに、2次旋回室3底部の内周壁面を旋回し
、次回旋回して戻ってきた機会に、流入口22を通過するといった状態を得ることができる。
【0048】
また、本実施の形態1では、2次旋回室3の円筒形状部19の半径を、1次旋回室5の円筒形状の半径よりも幾分大きく設定していることで、内周壁付近を流れる旋回気流は、1次旋回室5から2次旋回室3に至った際、その周速が減少する方向になるため、先に述べた流入口22から集塵室21へと進入する気流の減速効果にもつながる。
【0049】
さらには1次旋回室5と2次旋回室3との段差が、2次旋回室3の内周壁付近の旋回気流に水平成分を与えることとなるため、流入口22から集塵室21内へ向かう進入気流の水平成分も強くなり、集塵室21底付近に溜まった塵埃に、この進入気流の衝突を極力抑えることができ、集塵室21内の塵埃の舞い上げを抑える効果にもつながる。
【0050】
また、集塵ケース2を水平に対して約45°前後の角度で傾斜させた配置としたことで、流入口22から集塵室21へ飛び込んだ塵埃は、集塵室21の底部の奥(集塵室後壁側)から溜まり、そこから集塵室21前方に向かって順次堆積することになるため、集塵室21底一面に効果的に溜めることができる。また、2次旋回室3の非円筒形状部20と1次旋回室5の内周壁とを結ぶ、2次旋回室上方の上壁部23を、2次旋回室3に向かって傾斜を持たせているため、1次旋回室5から2次旋回室3へと下降する旋回気流の妨げになることはない。
【0051】
以上、このような構成によって、1次旋回室5ならびに2次旋回室3から空気と分離させた塵埃を、区画形成した集塵室21へと進入・堆積させ、かつ、集塵室21に溜まった塵埃を旋回させる空気流量を充分に減少させることで、2次旋回室3への舞い戻りを効果的に抑え、集塵効率を向上させることができる。
【0052】
さらに、集塵室21内に設けた圧縮手段28によって、集塵した塵埃を圧縮減容し、次の掃除開始までの間、圧縮放置しておくことで、減容した塵埃は、その形状(高さ)を維持すると同時に、塵埃が同士が絡み合って塵埃表面が平滑となり、集塵室内で浮き上がる、舞い上がるといったことは発生しないため、さらに集塵効率を効果的に向上させることができる。
【0053】
なお、排気筒17の通気部18は、本実施の形態1において、排気筒17の周壁面に配して例を説明したが、これに限られることではなく、排気筒17の底面に通気部18を形成した構成とした場合でも、同様の効果が得られる。
【0054】
また、1次旋回室5と2次旋回室3の位置関係を、1次旋回室5の下方に2次旋回室3を配置する構成について説明したが、これに限られることではなく、1次旋回室5の上方に2次旋回室3を配し、そして、その側方に集塵室21を配した構成としてもよい。
【0055】
また一方で、2次旋回室3と集塵室21との位置関係において、2次旋回室3の側方に集塵室21を配した構成について説明したが、これに限られることではなく、2次旋回室の下方に集塵室21を配した構成としてもよい。ただし、この場合、2次旋回室3の非円筒形状部20にある流入口22から集塵室21の連通口との間をつなぐ流入通路を設けることにより、同様の効果を得ることができる。
【0056】
本実施の形態1では、キャニスタータイプの掃除機において説明したが、同じ集塵ケースをアップライトタイプの掃除機に用いた場合でも、作用効果は同じである。
【0057】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における電気掃除機について説明する。以下、実施の形態1と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図6は、本発明の実施の形態2における集塵ケースの2次旋回室3と集塵室21との配置関係を示す平面断面図である。実施の形態1と異なるところは、2次旋回室3の非円筒形状部20の周壁が、集塵室21側に向かって湾曲させたものであり、この湾曲状とした周壁の頂点位置Aが、排気筒17中心と1次旋回室5周壁との間にあって、排気筒17外周端部の鉛直下方近傍に位置するように構成したものである。
【0059】
これにより、2次旋回室3の内周壁付近を旋回する旋回気流に乗った塵埃の水平成分の流れを乱さず、つまり、排気筒17に向かう上昇気流には乗せない状態を維持しながら、集塵室21を2次旋回室3側へとさらに平行にずらすことができ、集塵ケース2の幅方向の小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる電気掃除機は、旋回部を形成する1次旋回室と、その下方に配した2次旋回室と、2次旋回室の側方に配し、2次旋回室とは区画形成した集塵室を設け、2次旋回室と集塵室とは流入口により連通させた構成において、2次旋回室の内周壁を、円筒形状部と非円筒形状部とから成る略D形状とし、流入口は、旋回気流の流れ方向に対して、円筒形状部から非円筒形状部に変化する交点付近に形成したことにより、1次旋回室での旋回流速に対して2次旋回室での旋回流速を減速させて、集塵室へと進入する含塵空気の流速を抑え、それにより、集塵室内の塵埃が浮遊旋回するのを抑えて、2次旋回室へと再び舞い戻ることを効果的に抑え集塵性能が向上することができるため、吸引した空気に旋回成分を持たせ、遠心力により気流から塵埃を分離除去するタイプの集塵部を有した電気掃除機に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 掃除機本体
2 集塵ケース
3 2次旋回室
5 1次旋回室
13 吸気口
16 電動送風機
17 排気筒
18 通気部
19 円筒形状部
20 非円筒形状部
21 集塵室
22 流入口
23 上壁部
24 導入側壁部
25 上壁面
26 下壁面
27 流入経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引力を発生させる電動送風機と、
略円筒形状の旋回部と、前記電動送風機により吸引した含塵空気を前記旋回部で旋回させるため前記旋回部の外郭周方向に設けた吸気口と、塵埃分離した空気を排出するため通気部を備え前記旋回部の中心付近に設けた排気筒とを有した1次旋回室と、
前記1次旋回室の下方に位置し、前記1次旋回室と連通する2次旋回室と、
前記2次旋回室の側方に配置され塵埃を収納する集塵室と、
前記2次旋回室の側壁の一部に形成した流入口と、を備え、
前記2次旋回室と前記集塵室とを前記流入口を介して連通させたサイクロン式電気掃除機において、
前記2次旋回室は、その周壁の一部が、前記1次旋回室の略円筒形状の旋回部と一致、もしくは、幾分、大きい内径で形成した円筒形状部と、他の周壁部分を、前記円筒形状部の内径に対して内側に位置させた、直線状、もしくは湾曲状に形成した非円筒形状部とで構成し、前記流入口は、旋回気流の流れ方向に対して、前記2次旋回室の周壁が、前記円筒形状部から前記非円筒形状部に変化する交点付近に形成したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記2次旋回室の非円筒形状部の壁面は、前記集塵室の壁面の一部を兼ねた構成とした請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記2次旋回室の非円筒形状部の周壁先端は、前記1次旋回室の旋回部の円弧中心を超えない範囲に設けた請求項1または2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記2次旋回室の非円筒形状部の周壁先端は、前記排気筒の外周端部の鉛直下方近傍に配置した請求項1から3のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記1次旋回室の旋回部の円弧周壁と前記2次旋回室の非円筒形状部の周壁とをつなぐ上壁部は、前記2次旋回室に向かって傾斜する斜面で形成した請求項1から4のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記2次旋回室から前記集塵室への連通部分において、前記2次旋回室の円筒形状部より前記集塵室の側壁面に向かって接線方向に伸長した導入側壁部を形成し、前記導入側壁部と前記2次旋回室の非円筒形状部の周壁との交点から、前記非円筒形状部の周壁に前記流入口を設け、かつ、前記導入側壁部には、上壁面と下壁面とを設けて、コの字状となる流入経路を形成した請求項1から5のいずれか1項に記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−85588(P2013−85588A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226420(P2011−226420)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】