電気掃除機
【課題】本発明は、塵埃の圧縮性向上や塵埃の舞い散り防止できる集塵室を備えた電気掃除機を提供するものである。
【解決手段】電動送風機10により吸引した塵埃を含む空気を塵埃分離し、塵埃を溜める集塵室15に開口した加湿口22と、吸放湿材29を担持し略ハニカム構造の吸放湿体30と、加湿口22に連通し吸放湿体30を有した加湿手段27を備え、加湿手段27を電動送風機10近傍に配置し、電動送風機10から発生する熱を吸放湿体30に伝えて湿度の高い空気を発生する構成としたものである。これにより、集塵室15に溜まった塵埃は湿り蒸気を吸湿するで、粗塵は柔らかく、かつ伸び絡み合い、細塵は重量を増加し、さらに互いに結合して大きくなる。この結果、集塵室15に溜まった塵埃の廃棄時に塵埃の舞い散りが抑えられるという効果がある。
【解決手段】電動送風機10により吸引した塵埃を含む空気を塵埃分離し、塵埃を溜める集塵室15に開口した加湿口22と、吸放湿材29を担持し略ハニカム構造の吸放湿体30と、加湿口22に連通し吸放湿体30を有した加湿手段27を備え、加湿手段27を電動送風機10近傍に配置し、電動送風機10から発生する熱を吸放湿体30に伝えて湿度の高い空気を発生する構成としたものである。これにより、集塵室15に溜まった塵埃は湿り蒸気を吸湿するで、粗塵は柔らかく、かつ伸び絡み合い、細塵は重量を増加し、さらに互いに結合して大きくなる。この結果、集塵室15に溜まった塵埃の廃棄時に塵埃の舞い散りが抑えられるという効果がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機の集塵室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、吸引した空気に旋回成分を持たせ、遠心力により気流から塵埃を分離除去するタイプの電気掃除機、いわゆるサイクロン式の電気掃除機が注目を浴びている。この種の電気掃除機において、塵埃を含む空気を外から内部に流入させるための吸気路と、吸気路に吸気を発生させる電動送風機と、吸気路を通過した塵埃を含む空気を旋回により塵埃と空気とに分離して底部に溜める集塵室と、水を霧状にして、吸気路に、平均粒子径が50μm以下の水粒子を供給する水粒子供給部とを備えているものがある(例えば、特許文献1、2参照)。さらに、集塵室に溜まった塵埃を圧縮する圧縮手段が設けられているものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
このようなサイクロン式の電気掃除機にあっては、吸気路を通過する吸引された空気と塵埃は水粒子供給部から水粒子を供給され、集塵室に流れ込むので、塵埃に水粒子を付加することができる。この分、細塵どうしが付着し易く、細塵の凝集効果が高くなり、塵埃と空気とり分離性能の向上が図れる。
【0004】
なお、平均粒子径が50μm以下の水粒子は、水粒子の重量に対する表面積が大きいので、蒸発しやすい。したがって、水粒子供給部から供給された水粒子が集塵室に付着した場合でも、付着した水粒子は旋回した空気により蒸発し除去されるので、集塵室の水処理は必要ない。また、圧縮手段が集塵室に溜まった塵埃を圧縮するので、集塵室の小型化が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−39253号公報
【特許文献2】特開2006−175043号公報
【特許文献3】特開2002−51950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の集塵室では、旋回した空気の速度が50〜100m/sと非常に高速なので、一瞬の内に供給された水粒子の大部分が蒸発しながら集塵室の外へ排気され、旋回した空気に流されにくい細塵(例えば砂、泥)は底に、旋回した空気に流されやすい粗塵(綿ごみ)は細塵の上に略分離して溜まる。そして、特許文献3の圧縮手段が集塵室に溜まった塵埃を圧縮するが、粗塵は空間が多く、特に綿ごみ等は反発力が強く、圧縮されにくいという課題があった。この結果、掃除を開始する時に圧縮手段を解除すると、溜まっていた塵埃の体積が2〜3倍程度増加する分、集塵室の小型化が十分にできないという課題があった。
【0007】
さらに、溜まった塵埃を集塵室の底蓋(図示せず)を開けて廃棄する時に塵埃、特に細塵が底蓋により引き起こされた空気の流れに巻き込まれ、舞い散るという課題があった。すなわち、供給された水粒子は、塵埃と空気の分離性能を向上するのに役立つが、溜まった塵埃を廃棄する時に、塵埃の舞い散り防止には寄与しない。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、塵埃の圧縮性向上や塵埃の舞い散り防止
できる集塵室を備えた電気掃除機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の電気掃除機は、吸引力を発生させる電動送風機の上流側に設置され、前記電動送風機により吸引した塵埃を含む空気を塵埃分離し塵埃を溜める集塵室と、前記集塵室に開口した加湿口と、吸放湿材を担持し略ハニカム構造の吸放湿体と、前記加湿口に連通し前記吸放湿体を有した加湿手段を備え、前記加湿手段を前記電動送風機近傍に配置し、前記電動送風機から発生する熱を前記吸放湿体に伝えて湿度の高い空気を発生する構成としたものである。
【0010】
このような発明によって、電動送風機が発生させた吸引力により塵埃を含む空気が塵埃を分離し、塵埃が集塵室に溜まり、きれいな空気が集塵室から排気される。そして、加湿手段が電動送風機の発生した熱に加熱され、加湿手段の内部空間が温度上昇して相対湿度は低下する。そして、吸放湿体に担持した吸放湿材は低下した相対湿度に応じて放湿するので、加湿手段が加湿口から湿度の高い空気を集塵室に供給する。次に、集塵室に溜まった塵埃は吸湿するで、粗塵は柔らかく、かつ伸び絡み合い、細塵は重量を増加し、さらに互いに結合して大きくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気掃除機は、溜まった塵埃の廃棄時に塵埃の舞い散りが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機の外観図
【図2】同、電気掃除機の運転中の要部構成を示した縦断面図
【図3】同、電気掃除機の掃除終了後の要部構成を示した縦断面図
【図4】同、電気掃除機の加湿手段の構成を示した断面図
【図5】同、電気掃除機の電動送風機の温度変化を示した時間と温度の相関図
【図6】同、電気掃除機の平衡時の吸湿材の相対湿度と吸湿率との関係図
【図7】実施の形態2における電気掃除機の掃除終了直後の要部構成を示した縦断面図
【図8】同、電気掃除機の掃除終了後にスタンド収納した状態での要部構成を示した縦断面図
【図9】同、電気掃除機の加湿手段の構成を示した断面図
【図10】実施の形態3における電気掃除機の加湿手段を側方から見た部分拡大図
【図11】実施の形態4における電気掃除機の加湿手段を側方から見た部分拡大図
【図12】同、電気掃除機の加湿手段の構成を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、吸引力を発生させる電動送風機の上流側に設置され、前記電動送風機により吸引した塵埃を含む空気を塵埃分離し塵埃を溜める集塵室と、前記集塵室に開口した加湿口と、吸放湿材を担持し略ハニカム構造の吸放湿体と、前記加湿口に連通し前記吸放湿体を有した加湿手段を備え、前記加湿手段を前記電動送風機近傍に配置し、前記電動送風機から発生する熱を前記吸放湿体に伝えて湿度の高い空気を発生する構成としたものである。
【0014】
このような発明によって、電動送風機が発生させた吸引力により塵埃を含む空気が塵埃を分離し、塵埃が集塵室に溜まり、きれいな空気が集塵室から排気される。そして、加湿手段が電動送風機の発生した熱に加熱され、次に加湿手段の内壁面からの熱伝導と内部空間の温度上昇とにより吸放湿体が温度上昇して略ハニカム構造の筒内の相対湿度が低下する。
【0015】
そして、吸放湿体に担持した吸放湿材は低下した相対湿度に応じて湿り蒸気を放湿し、吸放湿体の開放端から加湿手段の内部空間へ拡散するので、加湿手段の内部空間は湿度の高い空気を形成する。続いて、湿度の高い空気は、加湿手段と集塵室との温度差による自然対流と、湿度差による物質移動とにより、加湿口から集塵室に流入する。
【0016】
次に、集塵室に溜まった塵埃は湿り蒸気を吸湿するで、粗塵は柔らかく、かつ伸び絡み合い、細塵は重量を増加し、さらに互いに結合して大きくなる。この結果、集塵室に溜まった塵埃の廃棄時に塵埃の舞い散りが抑えられるという効果がある。掃除終了後2〜4時間以上経過すると、大気への放熱により電動送風機、加湿手段が室温付近まで温度低下する。その際に、吸放湿材は放湿作用から、集塵室、旋回室の空気及び集塵室に溜まった塵埃から水分を奪う吸湿作用へ切り替わり、時間をかけて元の吸湿状態に回復するので、放湿用水タンクは不要である。そして、集塵室に溜まった塵埃は乾燥するので、粗塵は絡み合ったまま固まり、細塵は互いに結合した状態で固まるという効果がある。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明の集塵室には、溜めた塵埃を圧縮する圧縮手段を設けたものである。そして、圧縮手段が集塵室に溜まっている塵埃を圧縮すると共に、その圧縮前後に加湿手段が加湿口から湿度の高い空気を集塵室に供給する。そして、集塵室に溜まり、圧縮された塵埃は湿度の高い空気から時間をかけて吸湿し、綿ごみ等の粗塵は柔らかく変形し易くなり圧縮性が向上し、かつ変形し伸びて絡み合う。
【0018】
他方、細塵は、重量が増加し、吸湿すると柔らかくなり互いに結合し、かつ変形した粗塵と絡み合うので、細塵が大きく重くなる。掃除終了後2〜4時間以上経過すると、大気への放熱により電動送風機、加湿手段が室温付近まで温度低下する。その際に、吸放湿材は放湿作用から、集塵室、旋回室の空気及び集塵室に溜まった塵埃から水分を奪う吸湿作用へ切り替わり、時間をかけて元の吸湿状態に回復する。
【0019】
そして、集塵室に溜まった塵埃は乾燥するので、粗塵は絡み合ったまま固まり、細塵は互いに結合し、かつ変形した粗塵と絡み合う状態で固まる。これらの結果、圧縮手段を解除してもほとんど元には戻らないので、集塵室に空間が維持される分、集塵室の大幅な小型化が図れる。また、集塵室に溜まった圧縮した塵埃を廃棄する時に、底に溜まった大きく、重くなった細塵が真直ぐに落下し、その上を圧縮された粗塵が落下するので、塵埃の舞い散りが抑えられるという効果がある。
【0020】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、略ハニカム構造の複数の吸放湿体を有し、前記略ハニカム構造の複数の吸放湿体は、互いに対面する各前記吸放湿体の開放端との間に空間を形成して上下方向に配置させたことにより、吸放湿体の略ハニカム構造の筒長さが短くなる分通路抵抗が減り、かつ吸放湿体の開放端が分割する分増加し、吸放湿材から放湿した湿り蒸気は直ちに吸放湿体の開放端から加湿手段の内部空間へ拡散するので、吸放湿体の略ハニカム構造の筒内の相対湿度上昇が抑えられる。
【0021】
また、吸放湿体の略ハニカム構造の筒長さが短いので、吸放湿体の略ハニカム構造の筒内の温度分布がほぼ一様なので、放湿した湿り蒸気が温度の低い位置の吸放湿材に再び吸湿されることがない。さらに、吸放湿体は分割した分、加湿手段の内壁面から加熱される受熱面が増加するので、吸放湿体の略ハニカム構造の筒内が温度上昇し、相対湿度がより低下する。これらの結果、湿り蒸気が吸放湿材から大量に、長期間放湿させることができ、吸放湿材が有効に湿り蒸気を放湿できる。
【0022】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明の吸放湿体は、開放端と加湿手段の内壁面との間に間隙を設けたことにより、この間隙を通り、開放端から吸放湿体の略
ハニカム構造の筒へ空気が流れやすくなるので、吸放湿材から放湿した湿り蒸気はもう一方の開放端から加湿手段の内部空間へ容易に拡散する。この結果、吸放湿体の略ハニカム構造の筒内の相対湿度上昇を抑えられるので、吸放湿体に担持した吸放湿材から長期間湿り蒸気を放湿させることができる。なお、吸放湿材から放湿した湿り蒸気は前述とは反対に流れ、開放端から間隙を通り、加湿手段の内部空間へ容易に拡散する場合もある。
【0023】
第5の発明は、特に、第3または第4の発明において、加湿手段の内壁面から突出した伝熱部を、吸放湿体に挿入したことにより、吸放湿体は電動送風機の発生した熱を伝熱部から効率よく受熱して温度上昇し、吸放湿体の略ハニカム構造の筒内の相対湿度が低くなる。この結果、吸放湿体に担持した吸放湿材は大量の湿り蒸気を放湿できる。
【0024】
第6の発明は、特に、第1または第2の発明の吸放湿体は、一方の開放端が電動送風機の外郭面に近接し、他方の開放端が加湿手段の内壁面との間に空間を設けて配置させたことにより、吸放湿体の開放端は加熱源である電動送風機に近接しているので、温度が高くなる分相対湿度が低くなる。この結果、全ての略ハニカム構造の筒から大量の湿り蒸気がもう一方の開放端から、開放端と加湿手段の内壁面との空間に拡散できる。
【0025】
(実施の形態1)
図1〜図6を用いて、本発明の実施の形態1における電気掃除機について説明する。
【0026】
図1は本発明の実施の形態1を示す電気掃除機の外観図、図2は同、電気掃除機の運転中の要部構成を示した縦断面図、図3は同、電気掃除機の掃除終了後の要部構成を示した縦断面図、図4は同、電気掃除機の加湿手段の平断面図、図5は同、電気掃除機の電動送風機の温度変化を示した時間と温度の相関図、図6は同、電気掃除機の平衡時の吸湿材の相対湿度と吸湿率との関係図を示すものである。
【0027】
図1に示すように、掃除機本体1の外部には、車輪2およびキャスター3が取り付けられており、掃除機本体1は床面を自在に移動できる。集塵ケース4設置部の下方に設けられた吸引口5には、吸引ホース6、ハンドル7を形成した延長管8が順次接続されており、延長管8の先端に吸込具9を取り付けられている。
【0028】
図2と図3に示すように、集塵ケース4が電動送風機10を内蔵した掃除機本体1に対して着脱自在に設置され、掃除機本体1に装着した状態で集塵ケース4入口側の吸気口11は吸引口5を開口した吸引路12に連通し、他方集塵ケース4出口側の通気口13は電動送風機10に連通している。集塵ケース4は塵埃を含む空気を取り入れ旋回気流を発生させる筒状の旋回室14、および塵埃を溜める略筒状の集塵室15から構成している。
【0029】
旋回室14には、略円筒形状の外郭内周面に対して接線方向となるように開口した吸気口11と、略中心には通気口13に連通する略円筒状の排気筒16を配している。この排気筒16の外周側面にはメッシュフィルターやエッチングフィルター等の濾過フィルターによる通気部17を構成しており、粗塵が排気筒16を通り抜けないようにしている。加えて、排気筒16と通気口13との間には、第2の塵埃分離手段18として不織布フィルターをプリーツ状に折ったものを配置している。
【0030】
集塵室15は、旋回室14とほぼ同等の内径とした略円筒形状の筒体であり、旋回室14の下方にそれぞれの中心軸を水平方向に平行にズラした位置で配置させており、かつ、高さ方向において、集塵室15の上端の一部を旋回室14の内部に入り込むように構成としている。つまり、旋回室14と集塵室15とが重なり合う部分には、略円筒形状となる隔壁19を設けている。この隔壁19には、旋回室14で旋回する空気と塵埃とが集塵室15へと流れ込む流入口20が開口している。集塵室15の底部分は開口しており、回転
自在に軸支した底蓋21でエアタイト性を確保しながら塞ぐ構成とし、また集塵室15の天上面は加湿口22を開口している。
【0031】
圧縮手段23は集塵室15内を上下に移動し、手動により下降し、バネ(図示せず)により上昇する平板状の圧縮板24を設けている。圧縮板24は、集塵室15に擦らず、他方圧縮の際に溜まった塵埃が逃げない集塵室15との間隙を設定(例えば1〜3mm)し、また上下を連通する穴(直径約1〜10mm)からなる連通部25を多数開口し、かつ上面には台形に突出した開閉手段26を形成している。
【0032】
連通部25は、穴が大きいと塵埃が圧縮できないので、直径1〜3mm程度がよい。圧縮板24が上昇して集塵室15の上部に収納された時に、開閉手段26が加湿口22を閉塞する。
【0033】
加湿手段27は、略リング状でハニカム構造の吸放湿体30と、この吸放湿体30を収納する略リング状の加湿容器28とから構成されている。そして、この吸放湿体30は、セラミック繊維など不燃性の無機繊維からなるペーパーを段ボール状(コルゲート状)に加工し、成巻もしくは積層して多数の筒孔を形成した略ハニカム構造であり、この略ハニカム構造の表層面に液状化した吸放湿材29を塗布し乾燥させて構成されている。
【0034】
加湿容器28は中空のリング形状で、電動送風機10の円筒部の周囲に接して囲むように配置し、かつ集塵室15上部とは略水平に配置している。吸放湿材29は粉状、例えば5gの平均粒子径1μmの日本エクスラン工業社製タフチックHU(図6に示すようにシリカゲルに比べて吸湿率が高い)が使われ、相対湿度と吸湿率とが略正比例した特性を有している。
【0035】
多数の筒孔を形成した略ハニカム構造の吸放湿体30は、多数の筒孔が露出する開放端を表裏に有しており、この一方の開放端を加湿容器28のリング状内壁面に設置し、もう一方開放端を加湿容器28の内部空間に臨ませている。
【0036】
また、吸放湿体30の内側外壁面を電動送風機10側の加湿容器28の内壁面に接触させている。他方、加湿通路31は加湿容器28の空間上部と加湿口22とを略水平に連通している。
【0037】
以上のように構成された電気掃除機の動作について説明する。
駆動した電動送風機10が発生させた吸引作用により、家屋の床面上の塵埃(標準家庭で3g/日、過負荷で7g/日)が吸込具9から吸引され、集塵ケース4は吸引ホース6、延長管8を通過した塵埃を含む空気を導入し、塵埃を遠心分離し、かつ微細な塵埃を濾過して溜める。そして、濾過した空気は電動送風機10下流の排気出口(図示せず)から排気するようにしている(サイクロン式の電気掃除機)。
【0038】
特に、集塵ケース4の動作を、実験結果をまじえながら詳しく説明する。先ずは、圧縮手段23のバネが圧縮板24を上昇させて集塵室15の上部に収納すると共に、開閉手段26が加湿口22に入り込み加湿通路31を閉塞する。電動送風機10の吸引作用により吸気口11から流入した塵埃を含む空気は、吸気口11より斜め下方に旋回室14を旋回しながら流入口20へと進入し、その後、旋回室14の略中央を通り通気部17へ流れる。すなわち、旋回室14と集塵室15とを平行にズラした状態であるが、一般的なサイクロンの気流と類似した楕円軌道を描く遠心旋回気流を形成することができる。
【0039】
その際、旋回により生じた遠心力により塵埃は流入口20から集塵室15へ飛び込み、集塵室15の底面に通常見かけの比重により下から細塵(土、砂など)、粗塵(綿ごみな
ど)の順に溜まる。他方、集塵室15へ飛び込まなかった塵埃は、通気部17に遮られ、再び遠心旋回気流に乗り、結局流入口20から集塵室15へ飛び込み、集塵室15の底面に溜まる。なお、リント等の細塵を含んだ空気は通気部17を通過するが、細塵は第2の塵埃分離手段18に濾過され、きれいになった空気が第2の塵埃分離手段18を通過して、電動送風機10へと導かれていく。
【0040】
同時に、図5に示すように電動送風機10は、通過する空気による冷却作用と、逆に内蔵したモータ(図示せず)の温度上昇による加熱作用とにより、室温から差し引き約18K温度上昇する。そして、加湿容器28は電動送風機10の外壁面から加熱され、温度上昇する。
【0041】
そして、掃除が終われば、電動送風機10が停止すると共に、図3に示すように、手動により圧縮手段23が圧縮板24を手動により降下させて集塵室15に溜まった塵埃を圧縮してコンパクトにすると同時に、開閉手段26が加湿口22を開放する。そして、図5に示すように電動送風機10は通過する空気による冷却作用がなくなり、かつ電動送風機10に内蔵したモータの余熱(熱容量)により、さらに約9K温度上昇する。
【0042】
すなわち、電動送風機10は掃除終了後から約1時間程度、約18K以上の温度上昇を継続する。同時に、加湿容器28の内側の外壁面は電動送風機10から加熱され、温度上昇して、加湿容器28の内部空間のさらに内壁面近傍が約24℃から約50℃へと温度上昇して、その相対湿度は60%から14%へと低下する。
【0043】
そして、図6に示すように吸放湿材29は低下した相対湿度に応じて吸湿率47%から7%までの差分40%の湿り蒸気2g(5g×40%)を放湿できる。(時間をかけ、大気開放の場合)実際には、吸放湿材29が放湿した湿り蒸気は、吸放湿体30の略ハニカム構造、すなわち狭い筒の通路抵抗のため、加湿容器28の内部空間への拡散が抑えられるので、吸放湿体30の略ハニカム構造内の相対湿度は約14%に維持できずに直ちに上昇する。
【0044】
他方、加湿容器28の内壁面から離れた位置にある温度が低い吸放湿体30の開放端では、吸放湿材29が再び湿り蒸気を吸湿してしまう。これらの結果、加湿手段27は0.2〜0.4g程度の湿り蒸気を放湿する。
【0045】
特に、吸放湿体30の内側外壁面は加熱源である電動送風機10に近接しているので、温度が比較的高くなる分相対湿度が低くなる。この結果、電動送風機10に近接している吸放湿体30に担持した吸放湿材29は大量の湿り蒸気を放湿できる。
【0046】
続いて、吸放湿体30から放湿された湿り蒸気を含む湿度の高い、温度上昇した空気(最高温度約50℃、最高湿度約90%前後)は、加湿容器28と集塵室15との湿度差(蒸気分子の物質移動)と温度差による自然の熱対流により加湿通路31を通過して加湿口22から集塵室15の上部へ流入する。
【0047】
特に、電動送風機10と集塵室15の間に加湿手段27を配置しているので、加湿通路31が短く配置できる分通路抵抗が小さく、かつ集塵室15の上部と加湿容器28とをほぼ水平に連結しているので、吸放湿材29から放湿した湿り蒸気は容易に移動でき、吸放湿体30の略ハニカム構造の筒内の相対湿度上昇を抑えられ、吸放湿材29から長期間湿り蒸気を放湿させることができる。
【0048】
この結果、集塵室15の温度は24℃から25〜30℃へ少し上昇し、相対湿度は60%から最高85〜95%へと上昇する。次に、湿度の高い空気は集塵室15と圧縮板24
とのリング状間隙と、連通部25とから、集塵室15に溜まり圧縮板24に圧縮された塵埃3g(標準家庭の一日の塵埃)を加湿する。
【0049】
この結果、塵埃は塵埃自身の間隙から浸透する湿度の高い空気から時間をかけて0.1g〜0.3g程度吸湿するので、粗塵(綿ごみ等)は柔らかく、変形し易くなり圧縮性が向上し、かつ変形し伸びた粗塵は互いに絡み合う。また、圧縮手段23を解除しても、圧縮した塵埃はほとんど体積が元には戻らない。他方、細塵(泥、砂等)は、重量が増加し、吸湿すると柔らかくなり互いに結合し、変形した粗塵と絡み合うので、結局細塵が大きく重くなる。
【0050】
また、湿度の高い空気が集塵室15に一旦入ってしまえば、一部分が流入口20から旋回室14へ抜けるが、抜ける湿り蒸気の量が少ないので、集塵室15に溜まり圧縮板24に圧縮された塵埃は十分に吸湿できる。
【0051】
そして、掃除終了後2〜4時間以上経過すると、大気への放熱により電動送風機10、加湿手段27が室温付近まで温度低下する。その際に、吸放湿材29は放湿作用から、集塵室15、旋回室14の空気から水分を奪う吸湿作用へ切り替わり、時間をかけて(ほぼ1日)元の吸湿状態に回復するので、放湿用水タンクは不要である。その際に、圧縮されている塵埃も水分を奪われ、乾燥するので、粗塵は一度変形するとアイロンがけのように元に戻り難く、細塵は泥だんごのように硬く締まっている。
【0052】
この結果、圧縮板24を集塵室15の上部に収納すると、集塵室15の上部に大きな空間が維持され、集塵室15に大量の塵埃を溜めること(集塵室15のコンパクト化が図れる)ができ、底蓋21を開けて集塵室15に溜まった圧縮した塵埃を廃棄する時に、ごみの舞い散りが抑えられるという効果がある。
【0053】
また、圧縮されている塵埃が掃除する毎に吸湿と放湿を繰り返すので、塵埃の水分量が著しく増加することがなく、菌、カビ等の増殖が抑えられ、臭気の発生が防止でき、かつ集塵室15に塵埃が固着しにくい。
【0054】
なお、粉状の吸放湿材29はシリカゲルのような粒子状に比べて表面積が非常に大きく、また熱容量が小さいので、吸湿量、放湿量が大きく、かつ吸湿と放湿の速度が速い。この結果、掃除頻度が多くても、短時間で放湿と吸湿が行えるので、粉状の吸放湿材29は元の吸湿状態に回復できる。
【0055】
他方、集塵室15に溜まった圧縮した塵埃にスプレーなどの霧化手段により水滴を供給する方法もあるが、霧化手段は一度に約1g以上の水滴を霧化するので、塵埃は局所的に濡れ、かつ集塵室15も濡れる。この結果、塵埃が集塵室15に固着してしまったり、また菌やカビが繁殖するという課題が発生する。つまり霧化手段では少量で、微細な水滴を供給できず、この様の課題を生まざるを得ない。さらに、霧化手段には、霧化用の水タンクやポンプが必要となり、掃除機本体を小型・コンパクトに収めたり、重量を抑え軽量化することに対し弊害となるものである。
【0056】
以上、このような構成によって、電動送風機10の熱により加湿手段27の内部空間が温度上昇して相対湿度が低下して、相対湿度に応じて吸放湿材29が湿り蒸気を放湿して加湿手段27の内部空間に温度、湿度の高い空気が形成される。続いて、湿度の高い空気は加湿手段27と集塵室15との温度差による自然の熱対流と、湿度差による水蒸気分子の物質移動により加湿口22から集塵室15に流入する。この結果、集塵室15に溜まった塵埃は吸湿し固まるので、塵埃の廃棄時に塵埃の舞い散りが抑えられる。
【0057】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における電気掃除機について説明する。
図7は本発明の実施の形態2における電気掃除機の運転中の要部構成を示した縦断面図、図8は同、電気掃除機の掃除終了後にスタンド収納した状態での要部構成を示した縦断面図、図9は同、電気掃除機の加湿手段の構成を示した平断面図を示すものである。
【0058】
以下、実施の形態1と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。実施の形態1と異なるところは、加湿手段32を一方の開放端を閉じる有天上の枠体33と、吸放湿材34が担持されかつ2分割された略ハニカム構造の吸放湿体35から構成した点である。
【0059】
枠体33は開放端を電動送風機10の外壁面に接触してシールしている。吸放湿材34は粉状、例えば5gの戸田工業株式会社製ハスクレイが使われ、相対湿度と吸湿率とが略正比例した特性を有している。吸放湿体35はそれぞれの開放端を枠体33の上下リング状内壁面に、かつ外壁面を電動送風機の外壁面に接触させて配置し、両吸放湿体35の間に空間を形成している。また、吸放湿体35は角筒孔を平行に沢山並べた略ハニカム構造である。
【0060】
以上のように構成された電気掃除機の動作について説明する。
電動送風機10が発生させた吸引力により塵埃を含む空気が塵埃を分離し、塵埃が集塵室15に溜まり、きれいな空気が集塵室15から排気される。そして、枠体33の内部空間が、枠体33に覆われた電動送風機10の外壁面から直接加熱され、枠体33の内部空間が温度上昇して相対湿度が低下するので、吸放湿体35に担持した吸放湿材34は湿り蒸気の放湿を開始する。
【0061】
その際に、吸放湿体35が2分割されることによって吸放湿体35の略ハニカム構造の筒孔長さが短くなったぶん、通路抵抗が減り、かつ吸放湿体35の開放端と加湿手段32の内部空間との連通面積が2倍になる分、吸放湿材29から放湿した湿り蒸気は直ちに加湿手段32の内部空間へ拡散するので、吸放湿体35の略ハニカム構造内の相対湿度上昇が抑えられる。
【0062】
また、吸放湿体35の略ハニカム構造の筒長さが短いので、吸放湿体35の略ハニカム構造の筒内の温度分布がほぼ一様なので、放湿した湿り蒸気が温度の低い位置の吸放湿材34に再び吸湿されることがない。さらに、吸放湿体35は2分割した分、枠体33の内壁面から加熱される受熱面が約2倍に増加するので、吸放湿体35の略ハニカム構造の筒内が温度上昇し、相対湿度がより低下する。
【0063】
これらの結果、湿り蒸気が吸放湿材34から大量に、長期間放湿させることができ、吸放湿材34が有効に湿り蒸気を放湿できる。実験結果によると、加湿手段32は0.6〜1.0g程度の湿り蒸気を放湿する。実施の形態1より0.2g以上の湿り蒸気が得られる。
【0064】
その後、図8に示すように、掃除終了後掃除機本体1は1/4回転させてスタンド収納の状態で保管されるので、枠体33の内部空間、加湿通路31、集塵室15が上下に並んでいる。このために、集塵室15との温度差による自然対流は実施の形態1に比べて強くなる。
【0065】
この結果、加湿手段32の湿度の高い空気は、集塵室15との温度差による自然対流と、湿度差による物質移動とにより、加湿口22から集塵室15へ大量に上昇する。言い換えると、吸放湿体35から放湿した湿り蒸気は素早く上方へ移動(拡散)するので、吸放
湿体35近傍の相対湿度上昇を十分に抑えられる。この結果、吸放湿体35が長期間湿り蒸気を放湿でき、集塵室15の相対湿度を90%に1〜2時間程度保持できる。
【0066】
次に、集塵室15に溜まった塵埃は湿り蒸気を吸湿するで、粗塵は柔らかく、かつ伸び絡み合い、細塵は重量を増加し、さらに互いに結合して大きくなる。この結果、集塵室15に溜まった塵埃の廃棄時に塵埃の舞い散りが抑えられるという効果がある。そして、掃除終了後2〜4時間以上経過すると、放熱により電動送風機10、加湿手段32が室温近傍まで大幅に温度低下する。その際に、吸放湿材34は放湿作用から、集塵室15、旋回室14の空気から水分を奪う吸湿作用へ切り替わり、時間をかけて(ほぼ1日)元の吸湿状態に回復するので、放湿用水タンクは不要である。
【0067】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における電気掃除機について説明する。
図10は本発明の実施の形態3を示す加湿手段を側方から見た部分拡大図を示すものである。以下、実施の形態2と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
実施の形態2と異なるところは、枠体36の上下リング状内壁面から突出し、先端を細く、元を太く形成した複数の伝熱部37を吸放湿体38A、38Bの略ハニカム構造の筒内に挿入し、吸放湿体38A、38Bの開放端と枠体36の上下リング状内壁面との間に間隙39A、39Bを設けた点である。また、吸放湿材34は吸放湿体38A、38Bにすき込んである。
【0069】
そして、吸放湿体38A、38Bは電動送風機10の発生した熱を枠体36の上下リング状内壁面から伝熱部37を介して効率よく受熱して、特に吸放湿体38A、38Bの内部が温度上昇し、吸放湿体38A、38Bの略ハニカム構造の筒の相対湿度が低くなる。この結果、吸放湿材34は大量の湿り蒸気を放湿できる。
【0070】
また、間隙39Aを通り、吸放湿体38Aの開放端から略ハニカム構造の筒へ空気が流れやすくなるので、吸放湿材34から放湿した湿り蒸気はもう一方の吸放湿体38Aの開放端から加湿手段32の内部空間へ容易に拡散する。他方、吸放湿体38Bの吸放湿材34から放湿した湿り蒸気は、自然対流の方向により前述とは反対に流れ、開放端から間隙39Bを通り、加湿手段32の内部空間へ容易に拡散する。この結果、吸放湿体38A、38Bの略ハニカム構造の筒内の相対湿度上昇を抑えられるので、吸放湿材34から長期間湿り蒸気を放湿させることができる。
【0071】
なお、実施の形態3の伝熱部を熱源である電動送風機10の外壁面から突出して形成すると、非常に効率よく電動送風機10の熱を利用できる。
【0072】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4における電気掃除機について説明する。
図10は本発明の実施の形態4を示す加湿手段を側方から見た部分拡大図を示すものである。以下、実施の形態1と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
実施の形態1と異なるところは、吸放湿体40は、開放端を電動送風機10側へ向け、もう一方の開放端と加湿容器41の内壁面との間に空間42を設けた点である。(幼児用シャンプーハットのような形状)
そして、吸放湿体40の開放端は加熱源である電動送風機10に近接しているので、温度が高くなる分相対湿度が非常に低くなる。この結果、吸放湿体40の全ての略ハニカム構造の筒から大量の湿り蒸気が空間42に拡散する。すなわち、吸放湿材29は大量の湿り蒸気を放湿できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかる電気掃除機は、集加湿手段の内壁面に吸放湿材を担持した吸放湿体を設けたので、塵埃の廃棄の際に塵埃の舞い散りを抑制できるので、ゴミ箱に捨て易く、清潔で使い勝手のよい電気掃除機を提供することができるため、家庭用のみならず業務用の集塵装置にも応用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 電動送風機
15 集塵室
22 加湿口
23 圧縮手段
27、32 加湿手段
29、34 吸放湿材
30、35、38A、38B、40 吸放湿体
33、36 枠体
37 伝熱部
39A、39B 間隙
42 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機の集塵室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、吸引した空気に旋回成分を持たせ、遠心力により気流から塵埃を分離除去するタイプの電気掃除機、いわゆるサイクロン式の電気掃除機が注目を浴びている。この種の電気掃除機において、塵埃を含む空気を外から内部に流入させるための吸気路と、吸気路に吸気を発生させる電動送風機と、吸気路を通過した塵埃を含む空気を旋回により塵埃と空気とに分離して底部に溜める集塵室と、水を霧状にして、吸気路に、平均粒子径が50μm以下の水粒子を供給する水粒子供給部とを備えているものがある(例えば、特許文献1、2参照)。さらに、集塵室に溜まった塵埃を圧縮する圧縮手段が設けられているものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
このようなサイクロン式の電気掃除機にあっては、吸気路を通過する吸引された空気と塵埃は水粒子供給部から水粒子を供給され、集塵室に流れ込むので、塵埃に水粒子を付加することができる。この分、細塵どうしが付着し易く、細塵の凝集効果が高くなり、塵埃と空気とり分離性能の向上が図れる。
【0004】
なお、平均粒子径が50μm以下の水粒子は、水粒子の重量に対する表面積が大きいので、蒸発しやすい。したがって、水粒子供給部から供給された水粒子が集塵室に付着した場合でも、付着した水粒子は旋回した空気により蒸発し除去されるので、集塵室の水処理は必要ない。また、圧縮手段が集塵室に溜まった塵埃を圧縮するので、集塵室の小型化が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−39253号公報
【特許文献2】特開2006−175043号公報
【特許文献3】特開2002−51950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の集塵室では、旋回した空気の速度が50〜100m/sと非常に高速なので、一瞬の内に供給された水粒子の大部分が蒸発しながら集塵室の外へ排気され、旋回した空気に流されにくい細塵(例えば砂、泥)は底に、旋回した空気に流されやすい粗塵(綿ごみ)は細塵の上に略分離して溜まる。そして、特許文献3の圧縮手段が集塵室に溜まった塵埃を圧縮するが、粗塵は空間が多く、特に綿ごみ等は反発力が強く、圧縮されにくいという課題があった。この結果、掃除を開始する時に圧縮手段を解除すると、溜まっていた塵埃の体積が2〜3倍程度増加する分、集塵室の小型化が十分にできないという課題があった。
【0007】
さらに、溜まった塵埃を集塵室の底蓋(図示せず)を開けて廃棄する時に塵埃、特に細塵が底蓋により引き起こされた空気の流れに巻き込まれ、舞い散るという課題があった。すなわち、供給された水粒子は、塵埃と空気の分離性能を向上するのに役立つが、溜まった塵埃を廃棄する時に、塵埃の舞い散り防止には寄与しない。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、塵埃の圧縮性向上や塵埃の舞い散り防止
できる集塵室を備えた電気掃除機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の電気掃除機は、吸引力を発生させる電動送風機の上流側に設置され、前記電動送風機により吸引した塵埃を含む空気を塵埃分離し塵埃を溜める集塵室と、前記集塵室に開口した加湿口と、吸放湿材を担持し略ハニカム構造の吸放湿体と、前記加湿口に連通し前記吸放湿体を有した加湿手段を備え、前記加湿手段を前記電動送風機近傍に配置し、前記電動送風機から発生する熱を前記吸放湿体に伝えて湿度の高い空気を発生する構成としたものである。
【0010】
このような発明によって、電動送風機が発生させた吸引力により塵埃を含む空気が塵埃を分離し、塵埃が集塵室に溜まり、きれいな空気が集塵室から排気される。そして、加湿手段が電動送風機の発生した熱に加熱され、加湿手段の内部空間が温度上昇して相対湿度は低下する。そして、吸放湿体に担持した吸放湿材は低下した相対湿度に応じて放湿するので、加湿手段が加湿口から湿度の高い空気を集塵室に供給する。次に、集塵室に溜まった塵埃は吸湿するで、粗塵は柔らかく、かつ伸び絡み合い、細塵は重量を増加し、さらに互いに結合して大きくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気掃除機は、溜まった塵埃の廃棄時に塵埃の舞い散りが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機の外観図
【図2】同、電気掃除機の運転中の要部構成を示した縦断面図
【図3】同、電気掃除機の掃除終了後の要部構成を示した縦断面図
【図4】同、電気掃除機の加湿手段の構成を示した断面図
【図5】同、電気掃除機の電動送風機の温度変化を示した時間と温度の相関図
【図6】同、電気掃除機の平衡時の吸湿材の相対湿度と吸湿率との関係図
【図7】実施の形態2における電気掃除機の掃除終了直後の要部構成を示した縦断面図
【図8】同、電気掃除機の掃除終了後にスタンド収納した状態での要部構成を示した縦断面図
【図9】同、電気掃除機の加湿手段の構成を示した断面図
【図10】実施の形態3における電気掃除機の加湿手段を側方から見た部分拡大図
【図11】実施の形態4における電気掃除機の加湿手段を側方から見た部分拡大図
【図12】同、電気掃除機の加湿手段の構成を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、吸引力を発生させる電動送風機の上流側に設置され、前記電動送風機により吸引した塵埃を含む空気を塵埃分離し塵埃を溜める集塵室と、前記集塵室に開口した加湿口と、吸放湿材を担持し略ハニカム構造の吸放湿体と、前記加湿口に連通し前記吸放湿体を有した加湿手段を備え、前記加湿手段を前記電動送風機近傍に配置し、前記電動送風機から発生する熱を前記吸放湿体に伝えて湿度の高い空気を発生する構成としたものである。
【0014】
このような発明によって、電動送風機が発生させた吸引力により塵埃を含む空気が塵埃を分離し、塵埃が集塵室に溜まり、きれいな空気が集塵室から排気される。そして、加湿手段が電動送風機の発生した熱に加熱され、次に加湿手段の内壁面からの熱伝導と内部空間の温度上昇とにより吸放湿体が温度上昇して略ハニカム構造の筒内の相対湿度が低下する。
【0015】
そして、吸放湿体に担持した吸放湿材は低下した相対湿度に応じて湿り蒸気を放湿し、吸放湿体の開放端から加湿手段の内部空間へ拡散するので、加湿手段の内部空間は湿度の高い空気を形成する。続いて、湿度の高い空気は、加湿手段と集塵室との温度差による自然対流と、湿度差による物質移動とにより、加湿口から集塵室に流入する。
【0016】
次に、集塵室に溜まった塵埃は湿り蒸気を吸湿するで、粗塵は柔らかく、かつ伸び絡み合い、細塵は重量を増加し、さらに互いに結合して大きくなる。この結果、集塵室に溜まった塵埃の廃棄時に塵埃の舞い散りが抑えられるという効果がある。掃除終了後2〜4時間以上経過すると、大気への放熱により電動送風機、加湿手段が室温付近まで温度低下する。その際に、吸放湿材は放湿作用から、集塵室、旋回室の空気及び集塵室に溜まった塵埃から水分を奪う吸湿作用へ切り替わり、時間をかけて元の吸湿状態に回復するので、放湿用水タンクは不要である。そして、集塵室に溜まった塵埃は乾燥するので、粗塵は絡み合ったまま固まり、細塵は互いに結合した状態で固まるという効果がある。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明の集塵室には、溜めた塵埃を圧縮する圧縮手段を設けたものである。そして、圧縮手段が集塵室に溜まっている塵埃を圧縮すると共に、その圧縮前後に加湿手段が加湿口から湿度の高い空気を集塵室に供給する。そして、集塵室に溜まり、圧縮された塵埃は湿度の高い空気から時間をかけて吸湿し、綿ごみ等の粗塵は柔らかく変形し易くなり圧縮性が向上し、かつ変形し伸びて絡み合う。
【0018】
他方、細塵は、重量が増加し、吸湿すると柔らかくなり互いに結合し、かつ変形した粗塵と絡み合うので、細塵が大きく重くなる。掃除終了後2〜4時間以上経過すると、大気への放熱により電動送風機、加湿手段が室温付近まで温度低下する。その際に、吸放湿材は放湿作用から、集塵室、旋回室の空気及び集塵室に溜まった塵埃から水分を奪う吸湿作用へ切り替わり、時間をかけて元の吸湿状態に回復する。
【0019】
そして、集塵室に溜まった塵埃は乾燥するので、粗塵は絡み合ったまま固まり、細塵は互いに結合し、かつ変形した粗塵と絡み合う状態で固まる。これらの結果、圧縮手段を解除してもほとんど元には戻らないので、集塵室に空間が維持される分、集塵室の大幅な小型化が図れる。また、集塵室に溜まった圧縮した塵埃を廃棄する時に、底に溜まった大きく、重くなった細塵が真直ぐに落下し、その上を圧縮された粗塵が落下するので、塵埃の舞い散りが抑えられるという効果がある。
【0020】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、略ハニカム構造の複数の吸放湿体を有し、前記略ハニカム構造の複数の吸放湿体は、互いに対面する各前記吸放湿体の開放端との間に空間を形成して上下方向に配置させたことにより、吸放湿体の略ハニカム構造の筒長さが短くなる分通路抵抗が減り、かつ吸放湿体の開放端が分割する分増加し、吸放湿材から放湿した湿り蒸気は直ちに吸放湿体の開放端から加湿手段の内部空間へ拡散するので、吸放湿体の略ハニカム構造の筒内の相対湿度上昇が抑えられる。
【0021】
また、吸放湿体の略ハニカム構造の筒長さが短いので、吸放湿体の略ハニカム構造の筒内の温度分布がほぼ一様なので、放湿した湿り蒸気が温度の低い位置の吸放湿材に再び吸湿されることがない。さらに、吸放湿体は分割した分、加湿手段の内壁面から加熱される受熱面が増加するので、吸放湿体の略ハニカム構造の筒内が温度上昇し、相対湿度がより低下する。これらの結果、湿り蒸気が吸放湿材から大量に、長期間放湿させることができ、吸放湿材が有効に湿り蒸気を放湿できる。
【0022】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明の吸放湿体は、開放端と加湿手段の内壁面との間に間隙を設けたことにより、この間隙を通り、開放端から吸放湿体の略
ハニカム構造の筒へ空気が流れやすくなるので、吸放湿材から放湿した湿り蒸気はもう一方の開放端から加湿手段の内部空間へ容易に拡散する。この結果、吸放湿体の略ハニカム構造の筒内の相対湿度上昇を抑えられるので、吸放湿体に担持した吸放湿材から長期間湿り蒸気を放湿させることができる。なお、吸放湿材から放湿した湿り蒸気は前述とは反対に流れ、開放端から間隙を通り、加湿手段の内部空間へ容易に拡散する場合もある。
【0023】
第5の発明は、特に、第3または第4の発明において、加湿手段の内壁面から突出した伝熱部を、吸放湿体に挿入したことにより、吸放湿体は電動送風機の発生した熱を伝熱部から効率よく受熱して温度上昇し、吸放湿体の略ハニカム構造の筒内の相対湿度が低くなる。この結果、吸放湿体に担持した吸放湿材は大量の湿り蒸気を放湿できる。
【0024】
第6の発明は、特に、第1または第2の発明の吸放湿体は、一方の開放端が電動送風機の外郭面に近接し、他方の開放端が加湿手段の内壁面との間に空間を設けて配置させたことにより、吸放湿体の開放端は加熱源である電動送風機に近接しているので、温度が高くなる分相対湿度が低くなる。この結果、全ての略ハニカム構造の筒から大量の湿り蒸気がもう一方の開放端から、開放端と加湿手段の内壁面との空間に拡散できる。
【0025】
(実施の形態1)
図1〜図6を用いて、本発明の実施の形態1における電気掃除機について説明する。
【0026】
図1は本発明の実施の形態1を示す電気掃除機の外観図、図2は同、電気掃除機の運転中の要部構成を示した縦断面図、図3は同、電気掃除機の掃除終了後の要部構成を示した縦断面図、図4は同、電気掃除機の加湿手段の平断面図、図5は同、電気掃除機の電動送風機の温度変化を示した時間と温度の相関図、図6は同、電気掃除機の平衡時の吸湿材の相対湿度と吸湿率との関係図を示すものである。
【0027】
図1に示すように、掃除機本体1の外部には、車輪2およびキャスター3が取り付けられており、掃除機本体1は床面を自在に移動できる。集塵ケース4設置部の下方に設けられた吸引口5には、吸引ホース6、ハンドル7を形成した延長管8が順次接続されており、延長管8の先端に吸込具9を取り付けられている。
【0028】
図2と図3に示すように、集塵ケース4が電動送風機10を内蔵した掃除機本体1に対して着脱自在に設置され、掃除機本体1に装着した状態で集塵ケース4入口側の吸気口11は吸引口5を開口した吸引路12に連通し、他方集塵ケース4出口側の通気口13は電動送風機10に連通している。集塵ケース4は塵埃を含む空気を取り入れ旋回気流を発生させる筒状の旋回室14、および塵埃を溜める略筒状の集塵室15から構成している。
【0029】
旋回室14には、略円筒形状の外郭内周面に対して接線方向となるように開口した吸気口11と、略中心には通気口13に連通する略円筒状の排気筒16を配している。この排気筒16の外周側面にはメッシュフィルターやエッチングフィルター等の濾過フィルターによる通気部17を構成しており、粗塵が排気筒16を通り抜けないようにしている。加えて、排気筒16と通気口13との間には、第2の塵埃分離手段18として不織布フィルターをプリーツ状に折ったものを配置している。
【0030】
集塵室15は、旋回室14とほぼ同等の内径とした略円筒形状の筒体であり、旋回室14の下方にそれぞれの中心軸を水平方向に平行にズラした位置で配置させており、かつ、高さ方向において、集塵室15の上端の一部を旋回室14の内部に入り込むように構成としている。つまり、旋回室14と集塵室15とが重なり合う部分には、略円筒形状となる隔壁19を設けている。この隔壁19には、旋回室14で旋回する空気と塵埃とが集塵室15へと流れ込む流入口20が開口している。集塵室15の底部分は開口しており、回転
自在に軸支した底蓋21でエアタイト性を確保しながら塞ぐ構成とし、また集塵室15の天上面は加湿口22を開口している。
【0031】
圧縮手段23は集塵室15内を上下に移動し、手動により下降し、バネ(図示せず)により上昇する平板状の圧縮板24を設けている。圧縮板24は、集塵室15に擦らず、他方圧縮の際に溜まった塵埃が逃げない集塵室15との間隙を設定(例えば1〜3mm)し、また上下を連通する穴(直径約1〜10mm)からなる連通部25を多数開口し、かつ上面には台形に突出した開閉手段26を形成している。
【0032】
連通部25は、穴が大きいと塵埃が圧縮できないので、直径1〜3mm程度がよい。圧縮板24が上昇して集塵室15の上部に収納された時に、開閉手段26が加湿口22を閉塞する。
【0033】
加湿手段27は、略リング状でハニカム構造の吸放湿体30と、この吸放湿体30を収納する略リング状の加湿容器28とから構成されている。そして、この吸放湿体30は、セラミック繊維など不燃性の無機繊維からなるペーパーを段ボール状(コルゲート状)に加工し、成巻もしくは積層して多数の筒孔を形成した略ハニカム構造であり、この略ハニカム構造の表層面に液状化した吸放湿材29を塗布し乾燥させて構成されている。
【0034】
加湿容器28は中空のリング形状で、電動送風機10の円筒部の周囲に接して囲むように配置し、かつ集塵室15上部とは略水平に配置している。吸放湿材29は粉状、例えば5gの平均粒子径1μmの日本エクスラン工業社製タフチックHU(図6に示すようにシリカゲルに比べて吸湿率が高い)が使われ、相対湿度と吸湿率とが略正比例した特性を有している。
【0035】
多数の筒孔を形成した略ハニカム構造の吸放湿体30は、多数の筒孔が露出する開放端を表裏に有しており、この一方の開放端を加湿容器28のリング状内壁面に設置し、もう一方開放端を加湿容器28の内部空間に臨ませている。
【0036】
また、吸放湿体30の内側外壁面を電動送風機10側の加湿容器28の内壁面に接触させている。他方、加湿通路31は加湿容器28の空間上部と加湿口22とを略水平に連通している。
【0037】
以上のように構成された電気掃除機の動作について説明する。
駆動した電動送風機10が発生させた吸引作用により、家屋の床面上の塵埃(標準家庭で3g/日、過負荷で7g/日)が吸込具9から吸引され、集塵ケース4は吸引ホース6、延長管8を通過した塵埃を含む空気を導入し、塵埃を遠心分離し、かつ微細な塵埃を濾過して溜める。そして、濾過した空気は電動送風機10下流の排気出口(図示せず)から排気するようにしている(サイクロン式の電気掃除機)。
【0038】
特に、集塵ケース4の動作を、実験結果をまじえながら詳しく説明する。先ずは、圧縮手段23のバネが圧縮板24を上昇させて集塵室15の上部に収納すると共に、開閉手段26が加湿口22に入り込み加湿通路31を閉塞する。電動送風機10の吸引作用により吸気口11から流入した塵埃を含む空気は、吸気口11より斜め下方に旋回室14を旋回しながら流入口20へと進入し、その後、旋回室14の略中央を通り通気部17へ流れる。すなわち、旋回室14と集塵室15とを平行にズラした状態であるが、一般的なサイクロンの気流と類似した楕円軌道を描く遠心旋回気流を形成することができる。
【0039】
その際、旋回により生じた遠心力により塵埃は流入口20から集塵室15へ飛び込み、集塵室15の底面に通常見かけの比重により下から細塵(土、砂など)、粗塵(綿ごみな
ど)の順に溜まる。他方、集塵室15へ飛び込まなかった塵埃は、通気部17に遮られ、再び遠心旋回気流に乗り、結局流入口20から集塵室15へ飛び込み、集塵室15の底面に溜まる。なお、リント等の細塵を含んだ空気は通気部17を通過するが、細塵は第2の塵埃分離手段18に濾過され、きれいになった空気が第2の塵埃分離手段18を通過して、電動送風機10へと導かれていく。
【0040】
同時に、図5に示すように電動送風機10は、通過する空気による冷却作用と、逆に内蔵したモータ(図示せず)の温度上昇による加熱作用とにより、室温から差し引き約18K温度上昇する。そして、加湿容器28は電動送風機10の外壁面から加熱され、温度上昇する。
【0041】
そして、掃除が終われば、電動送風機10が停止すると共に、図3に示すように、手動により圧縮手段23が圧縮板24を手動により降下させて集塵室15に溜まった塵埃を圧縮してコンパクトにすると同時に、開閉手段26が加湿口22を開放する。そして、図5に示すように電動送風機10は通過する空気による冷却作用がなくなり、かつ電動送風機10に内蔵したモータの余熱(熱容量)により、さらに約9K温度上昇する。
【0042】
すなわち、電動送風機10は掃除終了後から約1時間程度、約18K以上の温度上昇を継続する。同時に、加湿容器28の内側の外壁面は電動送風機10から加熱され、温度上昇して、加湿容器28の内部空間のさらに内壁面近傍が約24℃から約50℃へと温度上昇して、その相対湿度は60%から14%へと低下する。
【0043】
そして、図6に示すように吸放湿材29は低下した相対湿度に応じて吸湿率47%から7%までの差分40%の湿り蒸気2g(5g×40%)を放湿できる。(時間をかけ、大気開放の場合)実際には、吸放湿材29が放湿した湿り蒸気は、吸放湿体30の略ハニカム構造、すなわち狭い筒の通路抵抗のため、加湿容器28の内部空間への拡散が抑えられるので、吸放湿体30の略ハニカム構造内の相対湿度は約14%に維持できずに直ちに上昇する。
【0044】
他方、加湿容器28の内壁面から離れた位置にある温度が低い吸放湿体30の開放端では、吸放湿材29が再び湿り蒸気を吸湿してしまう。これらの結果、加湿手段27は0.2〜0.4g程度の湿り蒸気を放湿する。
【0045】
特に、吸放湿体30の内側外壁面は加熱源である電動送風機10に近接しているので、温度が比較的高くなる分相対湿度が低くなる。この結果、電動送風機10に近接している吸放湿体30に担持した吸放湿材29は大量の湿り蒸気を放湿できる。
【0046】
続いて、吸放湿体30から放湿された湿り蒸気を含む湿度の高い、温度上昇した空気(最高温度約50℃、最高湿度約90%前後)は、加湿容器28と集塵室15との湿度差(蒸気分子の物質移動)と温度差による自然の熱対流により加湿通路31を通過して加湿口22から集塵室15の上部へ流入する。
【0047】
特に、電動送風機10と集塵室15の間に加湿手段27を配置しているので、加湿通路31が短く配置できる分通路抵抗が小さく、かつ集塵室15の上部と加湿容器28とをほぼ水平に連結しているので、吸放湿材29から放湿した湿り蒸気は容易に移動でき、吸放湿体30の略ハニカム構造の筒内の相対湿度上昇を抑えられ、吸放湿材29から長期間湿り蒸気を放湿させることができる。
【0048】
この結果、集塵室15の温度は24℃から25〜30℃へ少し上昇し、相対湿度は60%から最高85〜95%へと上昇する。次に、湿度の高い空気は集塵室15と圧縮板24
とのリング状間隙と、連通部25とから、集塵室15に溜まり圧縮板24に圧縮された塵埃3g(標準家庭の一日の塵埃)を加湿する。
【0049】
この結果、塵埃は塵埃自身の間隙から浸透する湿度の高い空気から時間をかけて0.1g〜0.3g程度吸湿するので、粗塵(綿ごみ等)は柔らかく、変形し易くなり圧縮性が向上し、かつ変形し伸びた粗塵は互いに絡み合う。また、圧縮手段23を解除しても、圧縮した塵埃はほとんど体積が元には戻らない。他方、細塵(泥、砂等)は、重量が増加し、吸湿すると柔らかくなり互いに結合し、変形した粗塵と絡み合うので、結局細塵が大きく重くなる。
【0050】
また、湿度の高い空気が集塵室15に一旦入ってしまえば、一部分が流入口20から旋回室14へ抜けるが、抜ける湿り蒸気の量が少ないので、集塵室15に溜まり圧縮板24に圧縮された塵埃は十分に吸湿できる。
【0051】
そして、掃除終了後2〜4時間以上経過すると、大気への放熱により電動送風機10、加湿手段27が室温付近まで温度低下する。その際に、吸放湿材29は放湿作用から、集塵室15、旋回室14の空気から水分を奪う吸湿作用へ切り替わり、時間をかけて(ほぼ1日)元の吸湿状態に回復するので、放湿用水タンクは不要である。その際に、圧縮されている塵埃も水分を奪われ、乾燥するので、粗塵は一度変形するとアイロンがけのように元に戻り難く、細塵は泥だんごのように硬く締まっている。
【0052】
この結果、圧縮板24を集塵室15の上部に収納すると、集塵室15の上部に大きな空間が維持され、集塵室15に大量の塵埃を溜めること(集塵室15のコンパクト化が図れる)ができ、底蓋21を開けて集塵室15に溜まった圧縮した塵埃を廃棄する時に、ごみの舞い散りが抑えられるという効果がある。
【0053】
また、圧縮されている塵埃が掃除する毎に吸湿と放湿を繰り返すので、塵埃の水分量が著しく増加することがなく、菌、カビ等の増殖が抑えられ、臭気の発生が防止でき、かつ集塵室15に塵埃が固着しにくい。
【0054】
なお、粉状の吸放湿材29はシリカゲルのような粒子状に比べて表面積が非常に大きく、また熱容量が小さいので、吸湿量、放湿量が大きく、かつ吸湿と放湿の速度が速い。この結果、掃除頻度が多くても、短時間で放湿と吸湿が行えるので、粉状の吸放湿材29は元の吸湿状態に回復できる。
【0055】
他方、集塵室15に溜まった圧縮した塵埃にスプレーなどの霧化手段により水滴を供給する方法もあるが、霧化手段は一度に約1g以上の水滴を霧化するので、塵埃は局所的に濡れ、かつ集塵室15も濡れる。この結果、塵埃が集塵室15に固着してしまったり、また菌やカビが繁殖するという課題が発生する。つまり霧化手段では少量で、微細な水滴を供給できず、この様の課題を生まざるを得ない。さらに、霧化手段には、霧化用の水タンクやポンプが必要となり、掃除機本体を小型・コンパクトに収めたり、重量を抑え軽量化することに対し弊害となるものである。
【0056】
以上、このような構成によって、電動送風機10の熱により加湿手段27の内部空間が温度上昇して相対湿度が低下して、相対湿度に応じて吸放湿材29が湿り蒸気を放湿して加湿手段27の内部空間に温度、湿度の高い空気が形成される。続いて、湿度の高い空気は加湿手段27と集塵室15との温度差による自然の熱対流と、湿度差による水蒸気分子の物質移動により加湿口22から集塵室15に流入する。この結果、集塵室15に溜まった塵埃は吸湿し固まるので、塵埃の廃棄時に塵埃の舞い散りが抑えられる。
【0057】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における電気掃除機について説明する。
図7は本発明の実施の形態2における電気掃除機の運転中の要部構成を示した縦断面図、図8は同、電気掃除機の掃除終了後にスタンド収納した状態での要部構成を示した縦断面図、図9は同、電気掃除機の加湿手段の構成を示した平断面図を示すものである。
【0058】
以下、実施の形態1と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。実施の形態1と異なるところは、加湿手段32を一方の開放端を閉じる有天上の枠体33と、吸放湿材34が担持されかつ2分割された略ハニカム構造の吸放湿体35から構成した点である。
【0059】
枠体33は開放端を電動送風機10の外壁面に接触してシールしている。吸放湿材34は粉状、例えば5gの戸田工業株式会社製ハスクレイが使われ、相対湿度と吸湿率とが略正比例した特性を有している。吸放湿体35はそれぞれの開放端を枠体33の上下リング状内壁面に、かつ外壁面を電動送風機の外壁面に接触させて配置し、両吸放湿体35の間に空間を形成している。また、吸放湿体35は角筒孔を平行に沢山並べた略ハニカム構造である。
【0060】
以上のように構成された電気掃除機の動作について説明する。
電動送風機10が発生させた吸引力により塵埃を含む空気が塵埃を分離し、塵埃が集塵室15に溜まり、きれいな空気が集塵室15から排気される。そして、枠体33の内部空間が、枠体33に覆われた電動送風機10の外壁面から直接加熱され、枠体33の内部空間が温度上昇して相対湿度が低下するので、吸放湿体35に担持した吸放湿材34は湿り蒸気の放湿を開始する。
【0061】
その際に、吸放湿体35が2分割されることによって吸放湿体35の略ハニカム構造の筒孔長さが短くなったぶん、通路抵抗が減り、かつ吸放湿体35の開放端と加湿手段32の内部空間との連通面積が2倍になる分、吸放湿材29から放湿した湿り蒸気は直ちに加湿手段32の内部空間へ拡散するので、吸放湿体35の略ハニカム構造内の相対湿度上昇が抑えられる。
【0062】
また、吸放湿体35の略ハニカム構造の筒長さが短いので、吸放湿体35の略ハニカム構造の筒内の温度分布がほぼ一様なので、放湿した湿り蒸気が温度の低い位置の吸放湿材34に再び吸湿されることがない。さらに、吸放湿体35は2分割した分、枠体33の内壁面から加熱される受熱面が約2倍に増加するので、吸放湿体35の略ハニカム構造の筒内が温度上昇し、相対湿度がより低下する。
【0063】
これらの結果、湿り蒸気が吸放湿材34から大量に、長期間放湿させることができ、吸放湿材34が有効に湿り蒸気を放湿できる。実験結果によると、加湿手段32は0.6〜1.0g程度の湿り蒸気を放湿する。実施の形態1より0.2g以上の湿り蒸気が得られる。
【0064】
その後、図8に示すように、掃除終了後掃除機本体1は1/4回転させてスタンド収納の状態で保管されるので、枠体33の内部空間、加湿通路31、集塵室15が上下に並んでいる。このために、集塵室15との温度差による自然対流は実施の形態1に比べて強くなる。
【0065】
この結果、加湿手段32の湿度の高い空気は、集塵室15との温度差による自然対流と、湿度差による物質移動とにより、加湿口22から集塵室15へ大量に上昇する。言い換えると、吸放湿体35から放湿した湿り蒸気は素早く上方へ移動(拡散)するので、吸放
湿体35近傍の相対湿度上昇を十分に抑えられる。この結果、吸放湿体35が長期間湿り蒸気を放湿でき、集塵室15の相対湿度を90%に1〜2時間程度保持できる。
【0066】
次に、集塵室15に溜まった塵埃は湿り蒸気を吸湿するで、粗塵は柔らかく、かつ伸び絡み合い、細塵は重量を増加し、さらに互いに結合して大きくなる。この結果、集塵室15に溜まった塵埃の廃棄時に塵埃の舞い散りが抑えられるという効果がある。そして、掃除終了後2〜4時間以上経過すると、放熱により電動送風機10、加湿手段32が室温近傍まで大幅に温度低下する。その際に、吸放湿材34は放湿作用から、集塵室15、旋回室14の空気から水分を奪う吸湿作用へ切り替わり、時間をかけて(ほぼ1日)元の吸湿状態に回復するので、放湿用水タンクは不要である。
【0067】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における電気掃除機について説明する。
図10は本発明の実施の形態3を示す加湿手段を側方から見た部分拡大図を示すものである。以下、実施の形態2と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
実施の形態2と異なるところは、枠体36の上下リング状内壁面から突出し、先端を細く、元を太く形成した複数の伝熱部37を吸放湿体38A、38Bの略ハニカム構造の筒内に挿入し、吸放湿体38A、38Bの開放端と枠体36の上下リング状内壁面との間に間隙39A、39Bを設けた点である。また、吸放湿材34は吸放湿体38A、38Bにすき込んである。
【0069】
そして、吸放湿体38A、38Bは電動送風機10の発生した熱を枠体36の上下リング状内壁面から伝熱部37を介して効率よく受熱して、特に吸放湿体38A、38Bの内部が温度上昇し、吸放湿体38A、38Bの略ハニカム構造の筒の相対湿度が低くなる。この結果、吸放湿材34は大量の湿り蒸気を放湿できる。
【0070】
また、間隙39Aを通り、吸放湿体38Aの開放端から略ハニカム構造の筒へ空気が流れやすくなるので、吸放湿材34から放湿した湿り蒸気はもう一方の吸放湿体38Aの開放端から加湿手段32の内部空間へ容易に拡散する。他方、吸放湿体38Bの吸放湿材34から放湿した湿り蒸気は、自然対流の方向により前述とは反対に流れ、開放端から間隙39Bを通り、加湿手段32の内部空間へ容易に拡散する。この結果、吸放湿体38A、38Bの略ハニカム構造の筒内の相対湿度上昇を抑えられるので、吸放湿材34から長期間湿り蒸気を放湿させることができる。
【0071】
なお、実施の形態3の伝熱部を熱源である電動送風機10の外壁面から突出して形成すると、非常に効率よく電動送風機10の熱を利用できる。
【0072】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4における電気掃除機について説明する。
図10は本発明の実施の形態4を示す加湿手段を側方から見た部分拡大図を示すものである。以下、実施の形態1と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
実施の形態1と異なるところは、吸放湿体40は、開放端を電動送風機10側へ向け、もう一方の開放端と加湿容器41の内壁面との間に空間42を設けた点である。(幼児用シャンプーハットのような形状)
そして、吸放湿体40の開放端は加熱源である電動送風機10に近接しているので、温度が高くなる分相対湿度が非常に低くなる。この結果、吸放湿体40の全ての略ハニカム構造の筒から大量の湿り蒸気が空間42に拡散する。すなわち、吸放湿材29は大量の湿り蒸気を放湿できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかる電気掃除機は、集加湿手段の内壁面に吸放湿材を担持した吸放湿体を設けたので、塵埃の廃棄の際に塵埃の舞い散りを抑制できるので、ゴミ箱に捨て易く、清潔で使い勝手のよい電気掃除機を提供することができるため、家庭用のみならず業務用の集塵装置にも応用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 電動送風機
15 集塵室
22 加湿口
23 圧縮手段
27、32 加湿手段
29、34 吸放湿材
30、35、38A、38B、40 吸放湿体
33、36 枠体
37 伝熱部
39A、39B 間隙
42 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引力を発生させる電動送風機の上流側に設置され、前記電動送風機により吸引した塵埃を含む空気を塵埃分離し塵埃を溜める集塵室と、前記集塵室に開口した加湿口と、吸放湿材を担持し略ハニカム構造の吸放湿体と、前記加湿口に連通し前記吸放湿体を有した加湿手段を備え、前記加湿手段を前記電動送風機近傍に配置し、前記電動送風機から発生する熱を前記吸放湿体に伝えて湿度の高い空気を発生する構成とした電気掃除機。
【請求項2】
集塵室には、溜めた塵埃を圧縮する圧縮手段を設けた請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
略ハニカム構造の複数の吸放湿体を有し、前記略ハニカム構造の複数の吸放湿体は、互いに対面する各前記吸放湿体の開放端との間に空間を形成して上下方向に配置させた請求項1または2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
吸放湿体は、開放端と加湿手段の内壁面との間に間隙を設けた請求項1から3のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項5】
加湿手段の内壁面から突出した伝熱部を、吸放湿体に挿入した請求項3または4に記載の電気掃除機。
【請求項6】
吸放湿体は、一方の開放端が電動送風機の外郭面に近接し、他方の開放端が加湿手段の内壁面との間に空間を設けて配置させた請求項1または2に記載の電気掃除機。
【請求項1】
吸引力を発生させる電動送風機の上流側に設置され、前記電動送風機により吸引した塵埃を含む空気を塵埃分離し塵埃を溜める集塵室と、前記集塵室に開口した加湿口と、吸放湿材を担持し略ハニカム構造の吸放湿体と、前記加湿口に連通し前記吸放湿体を有した加湿手段を備え、前記加湿手段を前記電動送風機近傍に配置し、前記電動送風機から発生する熱を前記吸放湿体に伝えて湿度の高い空気を発生する構成とした電気掃除機。
【請求項2】
集塵室には、溜めた塵埃を圧縮する圧縮手段を設けた請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
略ハニカム構造の複数の吸放湿体を有し、前記略ハニカム構造の複数の吸放湿体は、互いに対面する各前記吸放湿体の開放端との間に空間を形成して上下方向に配置させた請求項1または2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
吸放湿体は、開放端と加湿手段の内壁面との間に間隙を設けた請求項1から3のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項5】
加湿手段の内壁面から突出した伝熱部を、吸放湿体に挿入した請求項3または4に記載の電気掃除機。
【請求項6】
吸放湿体は、一方の開放端が電動送風機の外郭面に近接し、他方の開放端が加湿手段の内壁面との間に空間を設けて配置させた請求項1または2に記載の電気掃除機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−85591(P2013−85591A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226425(P2011−226425)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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