説明

電気接続箱

【課題】 製造工程の簡略化と低背化とを図る。
【解決手段】 回路構成体10を構成するバスバー基板15は、後縁から接続片17が面一に突設される。回路構成体10のケース30は、フレーム31の下面に放熱板40が張られる構造であり、フレーム31の後枠33の下面に、接続片17の基端部を嵌めて逃がす逃がし溝35が形成される。放熱板40の上面に絶縁性の接着剤28が全面に塗布され、その上にバスバー基板15の本体部から接続片17の基端側の下面が貼着される。フレーム31の下面にはシール剤29が全周にわたって塗布され、フレーム31の下面がシール剤29を圧縮しつつ放熱板40の周縁部に当てられ、ねじ止めされて固定される。接続片17は、ケース30の周壁であるフレーム31を貫通して真直に突出した状態となる。接続片17の曲げ工程が不要であり、ヒューズボックス60の装着位置も低くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に装備される電気接続箱の一例として、特許文献1に記載されたものが知られている。これは、各種電気部品が実装された回路基板の裏面側に、絶縁層を介してバスバー基板が接着されてなる回路構成体が、浅皿状をなすケース内に収容されている。また、バスバー基板の周縁から接続片が回路基板側に向けて直角に曲げ形成され、この接続片を導入しつつ、コネクタ、ヒューズ等の相手部材と嵌合接続される嵌合接続部が、回路基板上において表面側に開口して設けられた構造となっている。
【特許文献1】特開2003−164039公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のものでは、嵌合接続部が回路基板の表面から言わば立ち上がって設けられた形状であるため、相手部材の嵌合スペースを考慮すると、電気接続箱の厚さ方向(表裏方向)に大きな設置スペースが必要となり、使用制限を受ける場合があった。
そこで本願出願人は、バスバー基板の接続片を、回路基板側に直角曲げしたのち、さらにケースの周壁を越えて外部に直角曲げした形状とすることを提案した。これにより嵌合接続部を、回路基板の板面に沿った方向に開口した姿勢で設けることが可能となり、電気接続箱の厚さ方向について大幅な省スペース化を図ることができる。
【0004】
しかるに上記提案のものは、バスバー基板の接続片の曲げ工程が複数段階必要であって、製造工程が煩雑となる嫌いがあり、また電気接続箱そのものの低背化の要求もあって、さらなる改良が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、製造工程の簡略化と低背化とを図るところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る電気接続箱は、バスバー基板を有する回路構成体と、この回路構成体を収容したケースとが備えられた電気接続箱において、前記バスバー基板の周縁から金属片がこのバスバー基板と面一に突設され、この金属片が前記ケースの周壁に差し入れられているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記ケースは、フレームの一方の開口面に閉塞部材が張られて形成されており、前記バスバー基板の前記金属片は、前記フレームと、このフレームと対向した前記閉塞部材の周縁部との間に挟まれているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2記載のものにおいて、前記フレームと前記閉塞部材の周縁部との互いに対向した面の少なくとも一方には、前記金属片を嵌めて逃がす逃がし部が形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記金属片には、位置決め用の位置決め孔が貫通して設けられているところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明に係る電気接続箱は、バスバー基板を有する回路構成体と、この回路構成体を収容したケースと、前記バスバー基板から突設された接続片を導入してコネクタ、ヒューズ等の相手部材と嵌合接続される嵌合接続部とが備えられた電気接続箱において、前記接続片が、前記バスバー基板の周縁からこのバスバー基板と面一に突設され、この接続片が前記ケースの周壁を貫通して外部に突出しているところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項5記載のものにおいて、前記ケースは、フレームの一方の開口面に放熱部材が張られて形成されており、前記バスバー基板の前記接続片は、前記フレームと、このフレームと対向した前記放熱部材の周縁部との間に挟まれた状態で外部に突出しているところに特徴を有する。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6記載のものにおいて、前記フレームと前記放熱部材の周縁部との互いに対向した面の少なくとも一方には、前記接続片を嵌めて逃がす逃がし溝が形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
バスバー基板の金属片がバスバー基板の板面に沿って突出し、ケースの周壁に差し入れられていることで、金属片の曲げ工程が不要となるから、製造工程が簡略化される。また、金属片がケースの周壁を乗り越えた場合と比較すると、金属片をさらに低い位置に形成することができ、より低背化を図ることができる。
【0013】
<請求項2の発明>
ケースが、フレームの一方の開口面に閉塞部材が張られた形状である場合、バスバー基板の金属片は、フレームと閉塞部材の周縁部との間に挟まれた状態で嵌合される。
【0014】
<請求項3の発明>
金属片を逃がし部に嵌めることで、フレームと閉塞部材の周縁部との互いに対向した面の間隔が狭められ、さらに低背化が図られる。また、対向面間にシール剤を充填する場合には、シール剤がよく埋まってシールについて信頼性を高めることができる。
【0015】
<請求項4の発明>
金属片に位置決め孔が設けられているため、製造時等にバスバー基板を他部材に対して正確に位置決めすることができる。
【0016】
<請求項5の発明>
バスバー基板の接続片がケースの周壁を貫通して突出していることで、この接続片が導入される嵌合接続部を、バスバー基板の板面に沿った方向に開口した向きで設けることが可能となる。特に、接続片の曲げ工程が不要となるから、製造工程が簡略化される。また、接続片がケースの周壁を乗り越えた場合と比較すると、嵌合接続部をさらに低い位置に形成することができ、より低背化を図ることができる。
【0017】
<請求項6の発明>
ケースが、フレームの一方の開口面に放熱部材が張られた形状である場合、バスバー基板の接続片は、フレームと放熱部材の周縁部との間に挟まれた状態で外部に突出される。
【0018】
<請求項7の発明>
接続片を逃がし溝に嵌めることで、フレームと放熱部材の周縁部との互いに対向した面の間隔が狭められ、さらに低背化が図られる。また、対向面間にシール剤を充填する場合には、シール剤がよく埋まってシールについて信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1を図1ないし図13によって説明する。
本実施形態の電気接続箱は、図1に示すように、回路構成体10と、この回路構成体10を収容すべくフレーム31と放熱板40とからなるケース30と、カバー45とから構成されており、さらにPCBコネクタ50とヒューズボックス60とが装着されるようになっている。なお、ヒューズボックス60には別の中継コネクタ70が嵌合される。
以下各構成部材において、図1の左奥側を前方、右手前側を後方として説明する。
【0020】
個々の構造は以下のようである。回路構成体10は、プリント回路基板11(以下、単に回路基板11という)と、回路基板11の裏面側に配されるバスバー基板15とから構成され、回路基板11の表面側にリレー等の電気部品20が実装されるようになっている。
回路基板11は、図3に示すように、長方形における一つの角を落としたような外形形状に形成されており、その表裏両面には所定のパターンで導電路が形成されている。また、後部側の領域には、電気部品20を装着するための開口部12が形成されているとともに、前部側には、PCBコネクタ50の雄端子52と接続される接点13が設けられている。
【0021】
バスバー基板15は、導電性に優れた金属板を打ち抜いて形成され、所定の導電路を形成しつつ回路基板11とほぼ整合した外形形状をなす本体部16の後縁から、複数本の接続片17(本発明の金属片に相当)を並べて突設した形状である。特筆すべきは、これらの接続片17は、用途に応じて突出長さ、幅、形状等に相違はあるものの、いずれも曲げ加工が施されることなく、本体部16と面一に突設されている。
回路基板11とバスバー基板15とは、絶縁性を有する薄い粘着シート25を介して一体的に貼り付けられている。粘着シート25には、回路基板11の開口部12と対応して貫通孔26が形成されている。
【0022】
ケース30は全体としては、回路構成体10を収容するべく浅皿状に形成されており、周壁に相当するフレーム31の底面側に、放熱板40が張られた構造である。
フレーム31は合成樹脂製であって、上記した回路基板11並びにバスバー基板15の本体部16を内側にほぼ緊密に嵌めることができる形状に形成されている。フレーム31のコーナ部等には、カバー45やPCBコネクタ50を載置して固定する支持部32が形成されている。
【0023】
放熱板40は、電気部品20から発生する熱を放熱するためのものであって、熱伝導率の高いアルミニウム等の金属板により、フレーム31の外形とほぼ同じ形状に形成されている。放熱板40の周縁部には、ねじ(タッピンねじ)の挿通孔41が適宜間隔を開けて形成されており、放熱板40の周縁部がシール剤29を挟んでフレーム31の下面に当てられ、タッピンねじをねじ込むことで固定されるようになっている。一方、放熱板40の上面には、回路構成体10のバスバー基板15が、絶縁性の接着剤28によって貼着されるようになっている。
なお、放熱板40の後縁からは、取付片42が斜め下方に逃げた姿勢で形成されている。
【0024】
さて、上記したフレーム31における後縁の枠部33(以下、後枠33という)の下面には、図2に示すように、バスバー基板15の本体部16から突設された各接続片17の基端部を嵌めて逃がす逃がし溝35が形成されている。各逃がし溝35は、図7に詳細に示すように、対応する接続片17の基端部の幅(複数本がまとまったものも含む)よりも若干広い溝幅と、バスバー基板15の板厚にほぼ等しい深さとを有する。
ただし、後枠33の下面における幅方向の中央部には、図2に示すように、逃がし溝35の溝底も含めて突条36が形成されており、この突条36は、このフレーム31の他の周縁部の下面にわたる全周に形成されている。
【0025】
カバー45は合成樹脂製であって、図9に示すように、概ねケース30の上面開口を覆うように装着可能であり、前端側には、PCBコネクタ50の後面側を覆う高位部46が、また後端側には、ヒューズボックス60の一部を嵌めて逃がす逃がし凹部47が形成されている。カバー45の左右の側面には撓み変形可能なロック片48が設けられている一方、フレーム31の左右の側面には、ロック片48に係止して仮止めするロック突部38が設けられている。また、カバー45の後端側の両端部には、フレーム31の支持部32上に載置される取付部49が形成されている。
【0026】
PCBコネクタ50は、図13にも示すように、横長で前面に開口した合成樹脂製のハウジング51を備え、このハウジング51には、L形に曲げ形成された雄端子52が、一端を開口内に突出させ、他端を奥壁を貫通して下向きに突出させた姿勢で、二段に並んで装着されている。雄端子52の下向きの突出端には、さらに後方に直角曲げされた接続部53が形成され、回路基板11の表面上に配設された接点13に対して半田付けされて接続されるようになっている。PCBコネクタ50の両端部には、フレーム31に対する取付部54が側方へ張り出して形成されている。
【0027】
ヒューズボックス60は、合成樹脂材により、フレーム31の後枠33の後面側を全長にわたって覆うような横長形状に形成され、長さ方向の両端部に、前面に開口したコネクタ部61が設けられているとともに、その間の一側にヒューズ装着部62が、他側に端子収容部63が設けられている。
ヒューズ装着部62には、図13に示すように、ヒューズ64が装着される複数の装着孔65が後面側に開口して設けられ、各装着孔65では、その下部側に上記したバスバー基板15に突設された接続片17が圧入により装着可能とされるとともに、上部側には、この接続片17と対をなすタブ状の接続片67が同じく圧入により装着され、タブ状の接続片67の前端は、クランク状に曲げ形成されて前方に突出している。
【0028】
一方、端子収容部63には、コ字形をなす接続端子68(図10に一部のみが図示)が装着されており、後記するように、ヒューズボックス60がフレーム31の後面に装着された際には、バスバー基板15に突設された接続片17が端子収容部63内に突入し、対応する接続端子68の下辺と接続されるようになっている。また、コネクタ部61にも同様にコ字形をなす接続端子(図示せず)が装着され、バスバー基板15に突設された接続片17がコネクタ部61内の下部側に突入し、対応する接続端子の下辺と接続されるようになっている。
ヒューズボックス60におけるヒューズ装着部62と端子収容部63とにわたる領域の前面には、中継コネクタ70が結合可能とされており、ヒューズ装着部62及び端子収容部63から前面に突出した接続片67や接続端子68の上辺が、中継コネクタ70における前面に開口した嵌合部71内に進入するようになっている。
【0029】
続いて、電気接続箱の製造工程の一例を説明する。まず、図3に示すように、金属板素材をプレス加工することによって、外枠18の内側にバスバー基板15が形成される。バスバー基板15は、所定パターンで導電路が形成された本体部16の後縁から、複数本の接続片17が並べて突設されており、ここでは、本体部16と外枠18、あるいは接続片17同士が連結部19で繋がれている。このバスバー基板15の本体部16の上面に、絶縁性の粘着シート25を介して回路基板11が一体的に貼着される。
それとともに、連結部19が切断されて、バスバー基板15から外枠18が分離され、また接続片17同士も分離される(図4)。
【0030】
次に、同図に示すように、放熱板40の上面に絶縁性の接着剤28(図7参照)が全面に塗布され、その上に、回路構成体10におけるバスバー基板15の本体部16から接続片17の基端側の下面が押し付けられて貼着される。
続いて、フレーム31の下面において、突条36に沿うようにして、シール剤29(図7参照)が全周にわたって塗布され、図5に示すように、フレーム31の下面が、シール剤29を圧縮しつつ放熱板40の周縁部に当てられ、下面側からねじが締め付けられて固定される(図6)。
【0031】
特に、フレーム31の後枠33が、放熱板40の対応する周縁部に当てられる部分では、図7に示すように、バスバー基板15の本体部16から突設された各接続片17の基端部が、後枠33の下面に形成された逃がし溝35内に若干嵌って逃がされた状態において、放熱板40の周縁部との間で挟まれている。ここで、接続片17の基端部の平坦な上面が、フレーム31の後枠33の下面にべた当たりするのではなく、逃がし溝35内に若干嵌まり、溝底に形成された突条36との間にもなお隙間が空いた構造であることから、接続片17の基端部の上面側にできた空間内にシール剤29が良く回り込む。これにより、接続片17の基端部の上面と、フレーム31の後枠33の下面との間、特に突条36との間では、確実にシール剤29が埋まった状態とされる。
【0032】
このように回路構成体10がケース30に対して組み付けられたら、回路基板11の開口部12や接点13等にスクリーン印刷等により半田が塗布される。そうしたら、図8に示すように、電気部品20の搭載領域の半田上に電気部品20のリード線21が載せられるとともに、回路基板11の前端側にPCBコネクタ50が取り付けられて、雄端子52の接続部53が対応する半田上に載せられる。そののち高温炉に通して半田を溶解させることで、電気部品20のリード線21が回路基板11やバスバー基板15の導電路と電気的に接続され、またPCBコネクタ50の雄端子52が接点13と電気的に接続される。
【0033】
次に、図8の状態からフレーム31内にゲル等のポッティング剤(図示せず)が投入され、回路基板11の表面がポッティング剤で被覆されることによって防水性が確保される。ここで、フレーム31の下面と放熱板40の周縁部との間には、全周にわたってシール剤29が圧縮されて充填されている。フレーム31の後枠33と放熱板40の周縁部との間には、バスバー基板15の後縁から突設された接続片17の基端部が挟まれた状態にあるが、既述したように、接続片17の基端部がフレーム31の下面に形成された逃がし溝35内に若干嵌まる構造となっているから、図7に示すように、接続片17の基端部の上面側にもシール剤29が良く回り込んで確実に埋まった状態とされる。もって、全周にわたってシール剤29で確実に埋められ、ポッティング剤の洩れが確実に阻止される。
【0034】
そののち、図9に示すように、ケース30の上にカバー45が被せられて組み付けられる。カバー45は、ロック片48がフレーム31のロック突部38に弾性的に係止されるとともに、取付部49から支持部32にわたってビスがねじ込まれることで固定される。そして、図10に示すように、予め接続片67や接続端子68が装着されたヒューズボックス60が、ケース30の後端縁に組み付けられる。
【0035】
ヒューズボックス60の組み付けに伴い、ヒューズ装着部62では、図13に示すように、バスバー基板15に突設された接続片17が、対応する装着孔65における下部側に進入して装着される。また、端子収容部63やコネクタ部61では、詳しくは図示しないが、同じくバスバー基板15に突設された接続片17が、予め装着された対応する接続端子68の下辺と接続される。続いて、ヒューズボックス60の前面に中継コネクタ70が嵌合され、図12に示すように、電気接続箱が完成される。
【0036】
この電気接続箱に対しては、ヒューズ装着部62の各装着孔65に後面からヒューズ64が装着される。また、PCBコネクタ50と中継コネクタ70に対しては、前面から相手側のコネクタ(図示せず)が嵌合される。そして、この電気接続箱は、PCBコネクタ50を下方に向けた縦向きの姿勢で、ECU(電気制御ユニット)のケーシング内に収容され、その状態で放熱板40の取付片42を介してエンジンルームのフェンダー側の車両パネルに取り付けられて使用される。
【0037】
以上説明したように本実施形態の電気接続箱によれば、バスバー基板15の接続片17が、フレーム31の後枠33と放熱板40の対応する周縁部との間に挟まれた状態で外部に真直に突出しているから、これらの接続片17が導入されて形成されるヒューズボックス60について、例えばヒューズ装着部62をバスバー基板15の板面に沿った方向に開口した向きで設ける場合の対応が簡単となる。特に、接続片17の曲げ工程が不要となるから、製造工程が簡略化される。また、接続片17がケース30の周壁となるフレーム31を乗り越えた場合と比較すると、接続片17の突出する位置が低い分、ヒューズボックス60をさらに低い位置に配することができ、全体として低背化を図ることができる。
【0038】
バスバー基板15の接続片17を、フレーム31の後枠33と放熱板40の対応する周縁部との間に挟んで突出させる部分において、後枠33の下面に逃がし溝35を設けて、接続片17の基端部を逃がし溝35に嵌めて逃がしつつ突出させる構造としたから、後枠33と放熱板40の周縁部との互いに対向した面の間隔が狭められ、さらに低背化が図られる。また、フレーム31内にポッティング剤を充填するに当たって対向面間にシール剤29を充填する場合には、逃がし溝35を利用してシール剤29が良く埋まり、シールについての信頼性をさらに高めることができる。
【0039】
<実施形態2>
以下、本発明の実施形態2を図14ないし図20によって説明する。
本実施形態2は、主として、バスバー基板15に位置決め用の位置決め片80(本発明の金属片に相当)を設けた点を上記実施形態1と異ならせたものである。その他の構成については概ね上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0040】
本実施形態のバスバー基板15には、図14に示すように、本体部16の4隅から位置決め片80が突設されている。これらの位置決め片80は、突出長さ、幅、形状等に相違はあるものの、いずれも曲げ加工が施されることなく、本体部16と面一に突設されている。また、各位置決め片80は、その先端部に円形の位置決め孔81が貫通して形成されている。
【0041】
フレーム31の下面には、図15に示すように、リブ82が後縁の一部(後枠33に対応する領域)を除く外周部に突設されている。このリブ82は、放熱板40の外周形状に対応した形状をなしており、内側に放熱板40を嵌め込むことができる。フレーム31に設けられた支持部32のうち4つの支持部32の下面には、位置決め片80を取り付けるための位置決め片取付部83(本発明の逃がし部に相当)が形成されている。フレーム31の下面においては、リブ82の内側に既述の突条36が設けられており、位置決め片取付部83は、リブ82と突条36との間の領域に配置され、リブ82及び突条36に対して凹んだ形状をなしている。このため、突条36には各位置決め片取付部83の近傍に位置決め片80を挿通させるための切欠部84が設けられている。さらに各位置決め片取付部83には、位置決め孔81に嵌合可能な円柱状の位置決めピン85が突設されている。また、一部の支持部32には、既述した放熱板40の挿通孔41に対応する位置に、タッピンネジがねじ込まれるねじ締め孔87が貫通して設けられている。また、放熱板40の周縁部には、ねじの挿通孔41に加えて、位置決めピン85が嵌合されるピン嵌合孔86が貫通して設けられている。
【0042】
次に本実施形態の電気接続箱の製造工程の一例を説明する。まず実施形態1と同様にバスバー基板15と回路基板11とが一体的に貼着され、回路構成体10が形成される。続いて、図16に示す治具90を用いて、回路構成体10と放熱板40との接着作業が行われる。この治具90は、平坦な載置面91を有し、その載置面91上における各位置決め孔81に対応した位置にピン92が突設されてなる。まずこの治具90の載置面91上に、放熱板40が各ピン嵌合孔86にピン92を挿通させるようにして載置される。そして、放熱板40の上面に絶縁性接着剤からなる接着シート93が載置され、さらにその上面に回路構成体10におけるバスバー基板15の本体部16が重ねられる(図17参照)。この過程では、バスバー基板15の各位置決め片80が有する位置決め孔81に治具90のピン92を挿通させることで、回路構成体10が放熱板40に対して正確に位置決めされる。こうして、回路構成体10が下方に押し付けられることで、回路構成体10と放熱板40とが一体的に貼着される。このように、回路構成体10と放熱板40とを貼着する作業は、放熱板40及び回路構成体10がともに凹凸のない平板状に形成されているために、簡易に行うことができる。なお、上記の作業では、放熱板40に対し、接着シート93の代わりに接着剤を塗布するようにしても良い。
【0043】
次に、フレーム31の下面において、突条36に沿うようにして、シール剤29が全周にわたって塗布される。そして、図18に示すように、フレーム31の下面が、シール剤29を圧縮しつつ放熱板40の周縁部に当てられるとともに、フレーム31の各位置決めピン85が位置決め片80の位置決め孔81に挿通され、続いて放熱板40のピン嵌合孔86に嵌合され、この状態で下面側からねじが締め付けられてフレーム31と放熱板40とが固定される。すると、図19及び図20に示すように、突条36と放熱板40との間や、位置決め片80の基端部と切欠部84の縁部との間に、シール剤29が入り込んで埋められる。これにより、位置決め片80はフレーム31により構成されるケース30の周壁に対し、貫通することなく差し入れられた状態となる。また、フレーム31の内側がシール空間となり、位置決め片80の先端はそのシール空間よりも外側に延出した状態となる。
【0044】
以上説明したように本実施形態の電気接続箱によれば、バスバー基板15の位置決め片80が、フレーム31の支持部32と放熱板40の対応する周縁部との間に真っ直ぐに差し入れられた状態となっているから、位置決め片80の曲げ工程が不要となり、製造工程が簡略化される。また、位置決め片80がケース30の周壁となるフレーム31を乗り越えた場合と比較すると、位置決め片80が差し入れられた位置が低い分、位置決め片取付部83をさらに低い位置に形成することができ、より低背化を図ることができる。
【0045】
バスバー基板15の位置決め片80を、フレーム31の支持部32と放熱板40の対応する周縁部との間に挟んで突出させる部分において、支持部32の下面に凹状の位置決め片取付部83を設けて、位置決め片80を位置決め片取付部83に嵌めて逃がす構造としたから、さらに低背化が図られる。また、フレーム31内にポッティング剤を充填するに当たって対向面間にシール剤29を充填する場合には、位置決め片取付部83を利用してシール剤29が良く埋まり、シールについての信頼性を高めることができる。特に本実施形態では、位置決め片取付部83が外部に連通せず、位置決め片80が外部に露出しないため、シールについての信頼性をさらに高めることができる。
【0046】
位置決め片80に位置決め孔81が設けられているため、製造時や製造後において、この位置決め孔81を利用してバスバー基板15を他部材に対して正確に位置決めすることができる。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)バスバー基板の金属片を嵌めて逃がす逃がし部、あるいは逃がし溝は、放熱板の周縁部側に設けても良く、またフレーム側との両方に設けてもよい。
(2)またバスバー基板の金属片は、フレームと放熱板の周縁部との間で単に挟まれた構造であってもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(3)さらにバスバー基板の金属片は、フレームの周壁に差し入れられた形態であれば、実施形態1のように周壁を貫通して外部に突出していてもよく、実施形態2のように周壁を貫通せず外部に露出しない形態としても良い。
(4)バスバー基板の接続片は、本体部の後縁といった一縁に限らず、複数の縁辺から突出形成してもよい。
(5)上記各実施形態に例示した製造工程はあくまでも一例であって、適宜に変更可能である。
【0048】
(6)バスバー基板の位置決め片は、例えば図21に示すように構成しても良い。この位置決め片95は、バスバー基板15の後縁から接続片17に並んでバスバー基板15と面一に突設され、後枠33の逃がし溝35に嵌めて逃がされるとともに、後枠33を貫通して外部に突出している。位置決め片95の先端には、位置決め孔96が設けられ、放熱板40にも位置決め孔96に対応する位置に貫通孔97が設けられている。製造過程においてこの位置決め片95を利用することで、実施形態2と同様に、バスバー基板15を正確に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態1に係る電気接続箱の分解斜視図
【図2】フレームの裏面から見た斜視図
【図3】バスバー基板に回路基板を貼着する状態を示す斜視図
【図4】回路構成体を放熱板に貼着する状態を示す斜視図
【図5】ケースを組み付ける状態を示す斜視図
【図6】ケースが組み付けられた状態を示す斜視図
【図7】その部分拡大背面図
【図8】電気部品とPCBコネクタとを実装した状態の斜視図
【図9】カバーを被着する状態を示す斜視図
【図10】ヒューズボックスを装着する状態を示す斜視図
【図11】中継コネクタを嵌合する状態を示す斜視図
【図12】組み付けが完了した電気接続箱の斜視図
【図13】ヒューズ装着部における側断面図
【図14】本発明の実施形態2に係る電気接続箱においてバスバー基板に回路基板を貼着する状態を示す斜視図
【図15】フレームの裏面から見た斜視図
【図16】回路構成体に放熱板を貼着する前の状態を示す側断面図
【図17】回路構成体に放熱板を貼着した状態を示す側断面図
【図18】ケースを組み付ける状態を示す斜視図
【図19】位置決め片近傍の部分拡大断面図
【図20】図19のA−A線断面図
【図21】位置決め片の変形例を示す部分拡大斜視図
【符号の説明】
【0050】
10…回路構成体
11…回路基板
15…バスバー基板
16…本体部
17…接続片(金属片)
28…接着剤
29…シール剤
30…ケース
31…フレーム(周壁)
33…後枠
35…逃がし溝(逃がし部)
40…放熱板(放熱部材、閉塞部材)
60…ヒューズボックス
62…ヒューズ装着部
64…ヒューズ(相手部材)
65…装着孔(嵌合接続部)
80,95…位置決め片(金属片)
81,96…位置決め孔
83…位置決め片取付部(逃がし部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバー基板を有する回路構成体と、この回路構成体を収容したケースとが備えられた電気接続箱において、
前記バスバー基板の周縁から金属片がこのバスバー基板と面一に突設され、この金属片が前記ケースの周壁に差し入れられていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記ケースは、フレームの一方の開口面に閉塞部材が張られて形成されており、前記バスバー基板の前記金属片は、前記フレームと、このフレームと対向した前記閉塞部材の周縁部との間に挟まれていることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記フレームと前記閉塞部材の周縁部との互いに対向した面の少なくとも一方には、前記金属片を嵌めて逃がす逃がし部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記金属片には、位置決め用の位置決め孔が貫通して設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気接続箱。
【請求項5】
バスバー基板を有する回路構成体と、この回路構成体を収容したケースと、前記バスバー基板から突設された接続片を導入してコネクタ、ヒューズ等の相手部材と嵌合接続される嵌合接続部とが備えられた電気接続箱において、
前記接続片が、前記バスバー基板の周縁からこのバスバー基板と面一に突設され、この接続片が前記ケースの周壁を貫通して外部に突出していることを特徴とする電気接続箱。
【請求項6】
前記ケースは、フレームの一方の開口面に放熱部材が張られて形成されており、前記バスバー基板の前記接続片は、前記フレームと、このフレームと対向した前記放熱部材の周縁部との間に挟まれた状態で外部に突出していることを特徴とする請求項5記載の電気接続箱。
【請求項7】
前記フレームと前記放熱部材の周縁部との互いに対向した面の少なくとも一方には、前記接続片を嵌めて逃がす逃がし溝が形成されていることを特徴とする請求項6記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−74986(P2006−74986A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137560(P2005−137560)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】