説明

電気接続箱

【目的】 電気接続箱内部の複数枚の絶縁板の、各絶縁板上に配設された複数本のバスバ同士が、電気接続箱内部に水分が存在する場合にも、絶縁抵抗の低下を招くことなく、確実にバスバ同士を絶縁することができる電気接続箱を提供する。
【構成】 自動車等の車輌に設けられ、複数枚の絶縁板が層状に重ねて配設され、各絶縁板上には複数本のバスバが配設され、各絶縁板上の各バスバ同士が絶縁板上に形成された仕切壁で絶縁され、上層の絶縁板上の各バスバと下層の絶縁板上の各バスバとが接続されるとともに、接続されたバスバによって各電気部品が配線されてなる電気接続箱において、隣接するバスバ6a、6b間方向に一定間隔を隔てて形成された二つの仕切壁10a、10bが形成された絶縁板3bの上層の絶縁板3aには二つの仕切壁10a、10bの間に挿入配置される突条12が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等に搭載される電気接続箱に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のように、自動車等の電気系統には、ヒューズ、リレー等の電気部品が実装された電気接続箱が設けられている。この電気接続箱は、図5に示すように、上部ケース1と下部ケース2との箱体の内部に、複数枚の絶縁板3が層状に重ねて配設される。上部ケース1にはヒューズ、リレー等の電気部品4が実装される実装部5が形成されている。箱内部の各絶縁板3上には複数本のバスバ6が配設され、各バスバ6は端部が折り曲げられて端子部7が形成されている。そして、下層の絶縁板3のバスバ6はその端子部7を上層の絶縁板3上に突出させて上層のバスバ6の端子部7と接続する。このようにしてバスバ6同士が接続されることにより、電気接続箱内部においてバスバ6が層状に配線される。下部ケース2の下部からはコネクタ8を介してワイヤハーネス9が接続され、自動車の各装置(図示略)に接続される。
【0003】電気接続箱内部に層状に配線されるバスバ6は、それぞれ金属板を打ち抜いて形成される。そして、これら複数本のバスバ6が狭い電気接続箱内部の空間に配置されており、上下の絶縁板3にそれぞれ配設された上層のバスバ6と下層のバスバ6とは絶縁板3を挟むことにより絶縁される。また、一枚の絶縁板3上に配設された複数本のバスバ6については、図6に示すように、バスバ6同士が狭い間隔を隔てて配設されるが、これらバスバ6同士が絶縁板3上に形成された仕切壁10で絶縁される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように仕切壁10のみでバスバ6同士を絶縁する方法は、電気接続箱の内部に水分が存在すると、上層の絶縁板3aと、下層の絶縁板3bに形成された仕切壁10との間の隙間11に水が付着したり、水分が存在する場合がある。そのため、隣接するバスバ6同士は付着した水、または水分の存在により絶縁抵抗の低下を招き、最悪の場合にはショートする。なお、この隙間11の寸法は、電気接続箱を小型化した場合、設計上の制約により、場所によっては0.1〜0.3mm程度となる場合があるが、絶縁板3の樹脂材料のヒケ等の問題があり、この隙間11は製造上、なくすことは不可能である。本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、電気接続箱内部の複数枚の絶縁板の、それぞれ一枚の絶縁板上に配設された複数本のバスバ同士を絶縁するに当たり、水分が存在する場合にも絶縁抵抗の低下を招くことなく、確実にバスバ同士を絶縁することができる電気接続箱を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するための本発明の電気接続箱は、自動車等の車輌に設けられ、複数枚の絶縁板が層状に重ねて配設され、前記各絶縁板上には複数本のバスバが配設され、前記各絶縁板上の各バスバ同士が該絶縁板上に形成された仕切壁で絶縁され、前記上層の絶縁板上の各バスバと下層の絶縁板上の各バスバとが接続されるとともに、前記接続されたバスバによって各電気部品が配線されてなる電気接続箱において、前記仕切壁は、隣接するバスバ間方向に一定間隔を隔てて形成された二つの仕切壁から成り、この二つの仕切壁が形成された絶縁板の上層の絶縁板には前記二つの仕切壁の間に挿入配置される突条が形成されてなる。また、本発明の電気接続箱で、前記二つの仕切壁は、上層の絶縁板に形成された突条が挿入される方向に対して直交する方向に弾性を有し、前記上層の絶縁板の突条が下層の絶縁板の二つの仕切壁に密に嵌合して挟持されている。
【0006】
【作用】前記の電気接続箱では、各絶縁板上の隣接するバスバ同士の間に形成された二つの仕切壁の間に、上層の絶縁板に形成された突条が挿入配置されるため、上層の絶縁板と、下層の絶縁板の仕切壁との間に隙間が生じない。従って、電気接続箱内部に水分が存在する場合にも、隣接するバスバ同士において、水分による絶縁抵抗の低下が生じない。また、下層の絶縁板の二つの仕切壁は、上層の絶縁板の突条が挿入される方向に対して直交する方向に弾性を有し、上層の突条を下層の二つの仕切壁の間に挿入すると密に嵌合して挟持されるため、バスバ間の距離を実際上、長くすることができる。そのため、絶縁抵抗の低下を招く虞れがなく、絶縁抵抗の低下による回路ショートや機器の誤動作を防止できる。
【0007】
【実施例】以下、本発明を適用する電気接続箱の実施例を図面により説明する。電気接続箱の全体の構造については、前記の図5に従って説明する。同図で、電気接続箱は、上部ケース1と下部ケース2との箱体の内部に、複数枚の絶縁板3が層状に重ねて配設される。上部ケース1にはヒューズ、リレー等の電気部品4が実装される実装部5が形成されている。箱内部の各絶縁板3上には複数本のバスバ6が配設され、各バスバ6は端部が折り曲げられて端子部7が形成されている。そして、下層の絶縁板3のバスバ6はその端子部7を上層の絶縁板3上に突出させて上層のバスバ6の端子部7と接続する。このようにしてバスバ6同士が接続されることにより、電気接続箱内部においてバスバ6が層状に配線される。下部ケース2の下部からはコネクタ8を介してワイヤハーネス9が接続され、自動車の各装置(図示略)に接続される。
【0008】図1は本発明の電気接続箱の一実施例における、複数本のバスバが配設された各絶縁板を複数段に重ねて配設した部分を表したものである。図1に示すように、各絶縁板3には複数本のバスバ6が僅かの間隔を隔てて配設されている。下層の絶縁板3bには仕切壁が形成されており、この仕切壁は隣接するバスバ6a、6b間方向に一定間隔を隔てて形成された二つの仕切壁10a、10bから成る。この二つの仕切壁10a、10bが形成された絶縁板3bの上層の絶縁板3aには、二つの仕切壁10a、10bの間に挿入配置される突条12が形成されている。そして、この二つの仕切壁10a、10bは、上層の絶縁板3aに形成された突条12が挿入される方向に対して直交する方向に弾性を有しており、上層の絶縁板3aの突条12が下層の絶縁板3bの二つの仕切壁10a、10bに密に嵌合して挟持される構成である。
【0009】なお、下層の絶縁板3bの二つの仕切壁10a、10bは、主壁13とその上端に形成された係合部14とから成る。二つの仕切壁10a、10bの各係合部14は互いに向き合っており、突条12が挿入されるときには、その方向に直交する方向に弾性を有するために、この係合部14が左右へ押し開けられて突条12が挿入配置される構成である。係合部14の形状は、角度を持ったカット面に形成してもよいし、または円形状に形成してもよい。上層の絶縁板3aの突条12は主壁のみから成り、その長さを二つの仕切壁10a、10bの間に充分に挿入配置できる程度の長さに形成することが好ましい。突条12の先端形状は、角度を持ったカット面でも円形状でもよい。
【0010】この電気接続箱においては、下層の絶縁板3b上の隣接するバスバ6a、6bの間に形成された二つの仕切壁10a、10bの間に、上層の絶縁板3aに形成された突条12が挿入配置されることにより、上層の絶縁板3aと、下層の絶縁板3bの仕切壁10a、10bとの間に隙間が生じない。従って、電気接続箱内部に水分が存在しても、絶縁抵抗の低下を招かない。さらに、下層の絶縁板3bの二つの仕切壁10a、10bは、上層の絶縁板3aの突条12が挿入される方向に対して直交する方向に弾性を有しており、上層の突条12を下層の二つの仕切壁10a、10bの間に挿入配置すると密に嵌合して挟持される。従って、隣接するバスバ6a、6b間の距離が実際上、長くなるために、電気接続箱内部に存在する水分により、隣接するバスバ6a、バスバ6bにおいて絶縁抵抗が低下する虞れがない。
【0011】なお、下層の絶縁板3bの仕切壁10a、10bおよび上層の絶縁板3aの突条12は実施例の形状の他に、図2〜図4に示すような形状に形成してもよい。図2では、突条12の先端にロック部15を形成し、突条12を仕切壁10a、10bの間に挿入配置したときに、このロック部15が仕切壁10a、10bの係合部14に係合する。このように突条12を形成すると、絶縁板3がずれた場合でも簡単に仕切壁10a、10bと突条12との嵌合がはずれない。図3では、突条12の内部に中空部16を設けている。そのため、突条12を仕切壁10a、10bの間に挿入配置したときに、突条12が仕切壁10a、10bで押圧される部分が凹むことにより、図2のように、突条12が仕切壁10a、10bの係合部14に係合する。図4では、仕切壁10a、10bの間隔を大きく取り、突条12の幅もその間隔に見合うように大きく形成する。この場合は、仕切壁10a、10bの間に突条12が密に嵌合して挟持されることはないが、隣接するバスバ6a、6b間の距離が長くなるため、電気接続箱内部に存在する水分や付着した水による絶縁抵抗の低下が生じにくい。
【0012】
【発明の効果】本発明においては、請求項1に記載の電気接続箱によれば、各絶縁板上の隣接するバスバ同士の間に形成された二つの仕切壁の間に、上層の絶縁板に形成された突条が挿入配置されることにより、上層の絶縁板と、下層の絶縁板の仕切壁との間の隙間が塞がれる。従って、電気接続箱内部に存在する水分によって、隣接するバスバ同士の絶縁抵抗が低下する虞れはない。また、請求項2に記載の電気接続箱によれば、各絶縁板上の二つの仕切壁は、上層の絶縁板の突条が挿入される方向に対して直交する方向に弾性を有し、上層の突条を下層の二つの仕切壁の間に挿入すると密に嵌合して挟持される。従って、隣接するバスバ間の距離を実際上、長くすることができるため、電気接続箱内部に水分が存在しても絶縁抵抗の低下を招く虞れがなく、絶縁抵抗の低下による回路ショートや機器の誤動作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る電気接続箱内部のバスバが配設された複数枚の絶縁板の断面図である。
【図2】 図1の絶縁板に形成された突起と異なる形状の突起の断面図である。
【図3】 図1の絶縁板に形成された突起と異なる形状の突起の断面図である。
【図4】 図1の絶縁板に形成された突起と異なる形状の突起の断面図である。
【図5】 電気接続箱の全体構造を表す斜視図である。
【図6】 従来の電気接続箱内部のバスバが配設された複数枚の絶縁板の断面図である。
【符号の説明】
1…上部ケース、2…下部ケース、3…絶縁板、4…電気部品、6…バスバ、10、10a、10b…仕切壁、11…隙間、12…突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動車等の車輌に設けられ、複数枚の絶縁板(3)が層状に重ねて配設され、前記各絶縁板(3)上には複数本のバスバ(6)が配設され、前記各絶縁板(3)上の各バスバ(6)同士が該絶縁板(3)上に形成された仕切壁で絶縁され、前記上層の絶縁板(3)上の各バスバ(6)と下層の絶縁板(3)上の各バスバ(6)とが接続されるとともに、前記接続されたバスバ(6)によって各電気部品が配線されてなる電気接続箱において、前記仕切壁は、隣接するバスバ(6a、6b)間方向に一定間隔を隔てて形成された二つの仕切壁(10a、10b)から成り、この二つの仕切壁(10a、10b)が形成された絶縁板(3b)の上層の絶縁板(3a)には前記二つの仕切壁(10a、10b)の間に挿入配置される突条(12)が形成されてなることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】 前記二つの仕切壁(10a、10b)は、上層の絶縁板(3a)に形成された突条(12)が挿入される方向に対して直交する方向に弾性を有し、前記上層の絶縁板(3a)の突条(12)が下層の絶縁板(3b)の二つの仕切壁(10a、10b)に密に嵌合して挟持されていることを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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