説明

電気機器の検査方法およびその装置

【課題】 検査時間の短縮、生産効率および検査精度を向上できる電気機器の検査方法およびその装置を得る。
【解決手段】 擬似リモコン信号を生成し検査する製品1に送信して、製品をリモコン操作するリモコン信号ボード9と、製品1からの画像の判定を行い、その画像判定の結果に基づいて製品に関連する意図したメニューが選択されるまでリモコン信号ボード9を制御する画像処理ボード10とを備え、検査する製品に対するリモコン操作時間を予め設定し、製品検査時そのリモコン操作時間が所定の時間内か否かを判定し、リモコン操作時間が所定の時間内の場合は、検査する製品に関連した画像認識を行い、その検査する製品のメニュー遷移状態を確認し、意図したメニューが選択されたか否かを判定し、意図したメニューが選択されなければ、選択されるまでリモコン操作を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気機器の検査方法およびその装置に関し、特に、リモコン操作を必要とする電気機器におけるリモコン操作毎のメニューのスクロール位置を変化させて誤り無くテスト画面を選択できる電気機器の検査方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リモコン操作を必要とする電気機器の検査を行なう場合は、その送信するリモコン信号の回数を決めてリモコン操作を行う、いわゆる決め打ちという検査方法を行なっており、その場合には、例えば3回リモコン操作するとメニューの位置がテスト画面の選択になるときに同じく3回リモコン操作をしてテスト画面の選択を行なうようにしている。
そして、この検査を行なう際に、そのテスト画面を目視で確認するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
また、この検査を行なう際に、リモコン操作の代わりにロボットアームを用いて行なっているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−238063号公報
【特許文献2】特開平3−107721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の検査方法の場合は、電源投入直後等、製品である電気機器の状態によってはリモコン信号を受付けない期間があり、従って、リモコン操作を決められた回数行っても、意図したメニュー遷移を行えない場合があるという問題点があった。
また、繰り返しリモコン操作を行なわない場合、一度メニュー遷移を誤るとそれ以降の検査に進むことができず、検査を途中で止めて、再度始めから検査を行なう必要があり、従って、この従来の検査方法では検査時間が大幅に伸び、生産効率が悪くなってしまう等の問題点があった。
【0005】
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、意図したメニューを選択するまで自動的にリモコン操作を繰り返し行うことで、検査時間の短縮、生産効率の向上を図ることができると共に、検査精度を向上できる電気機器の検査方法およびその装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電気機器の検査方法は、検査する製品に対するリモコン操作時間を予め設定する第1のステップと、製品検査時にリモコン操作時間が所定の時間内か否かを判定する第2のステップと、リモコン操作時間が所定の時間内の場合は、検査する製品に関連した画像認識を行い、この検査する製品のメニュー遷移状態を確認する第3のステップと、製品のメニュー遷移状態確認中に意図したメニューが選択されたか否かを判定し、この意図したメニューが選択されなければ、選択されるまでリモコン操作を繰り返す第4のステップとを備えたものである。
【0007】
この発明に係る電気機器の検査装置は、擬似リモコン信号を生成し、信号変換手段を介して製品に送信して、製品をリモコン操作するリモコン操作手段と、製品からの画像を信号変換手段を介して受けて画像判定を行い、その画像判定の結果に基づいて製品に関連する意図したメニューが選択されるまでリモコン操作手段を制御してリモコン操作を繰り返すリモコン操作制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、製品のメニュー遷移状態を確認しながらリモコン操作を行うので、誤ったメニューを選択することが無くなり、検査時間の短縮、生産効率の向上を図ることができると共に検査精度を向上できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の一形態を、図1〜図3を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による電気機器の検査装置の構成を示すブロック図である。
図1において、検査対象の電気機器の1つである製品(例えばナビ)1、周辺機器2、TVチューナ3および専用モニタ4が検査装置の一部を構成するI/F−BOX5の外側に設けられ、I/F−BOX5の内側に、信号変換手段としての信号変換基板6およびリレー7が設けられる。製品1はI/F−BOX5内の信号変換基板6と双方向に接続されると共に、信号変換基板6を介してTVチューナ3に接続され、このTVチューナ3に専用モニタ4が接続される。また、I/F−BOX5内のリレー7は製品1と双方向に接続されると共に、その出力側が周辺機器2に接続され、この周辺機器2が製品1と双方向に接続される。
【0010】
I/F−BOX5に対して検査装置を構成するパソコン8が設けられ、パソコン8は、擬似リモコン信号送信用のリモコン操作手段としてのリモコン信号ボード9、画像判定に基づきリモコン操作を制御するリモコン操作制御手段としての画像処理ボード10、音判定用のA/Dボード11、信号切換用のI/Oボード12、電源・測定器制御用のGPIBボード13、およびファイル等がパターン化されて記憶されているメモリ14を備える。リモコン信号ボード9の出力側はI/F−BOX5内の信号変換基板6に接続され、画像処理ボード10、A/Dボード11は共に信号変換基板6の出力側に接続され、I/Oボード12は、その出力が切換信号として信号変換基板6とリレー7に供給されリレー7と信号変換基板6の切り換えを制御する。
【0011】
検査対象である製品1は、周辺機器2と通信を行い、その通信結果や地図の画像を検査装置内のI/F−BOX5を通ってTVチューナ3を介し専用モニタ4に表示させると共に、信号変換基板6を介してパソコン8に内蔵されている画像処理ボード10に入力してリモコン操作の際の画像判定を受ける。また、リモコン信号ボード9は、擬似リモコン信号を生成し、信号変換基板6を介して製品1に送信し、その製品1を自動でリモコン操作する。A/Dボード11は信号変換基板6を介して製品1から出力される音声信号を入力し、その出力レベルを測定する。なお、製品1からI/F−BOX5内の信号変換基板6を介してA/Dボード11に入力される音声信号は、そのRチャンネル信号とLチャンネル信号が、信号変換基板6に設けられたスイッチ6aをI/Oボード12からの切換信号によりその接点a側と接点b側に切り換えることでA/Dボード11に入力される。
【0012】
また、I/Oボード12に対して操作信号を供給する操作SW−BOX15が設けられ、また、電源・測定器制御用のGPIBボード13とリレー7の間にDC電源(製品用電源)16、DC電源(周辺機器用電源)17および電圧電流測定器18が設けられる。DC電源16、17および電圧電流測定器18はGPIBボード13と共通接続され、DC電源16、17の出力側がリレー7の一方の入力側に接続され、電圧・電流測定器18はリレー7の出力側にも接続されている。
【0013】
なお、リレー7は、その内部に設けられたスイッチ7aがI/Oボード12からの切換信号によりその接点をa側とb側に切り換えられることで、接点a側に切り換えられているときには、DC電源16、17がそれぞれ製品1と周辺機器2に印加され、接点b側に切り換えられているときには、製品1の電圧および電流値が電圧電流測定器18に供給されて測定される。また、GPIBボード13は、例えば製品用電源であるDC電源16の電圧が12Vとときはパソコン8の電源を12Vに制御し、或いは電圧・電流測定器18の測定する電圧に応じてパソコン8側の測定器用電圧を変えるように働くものである。
【0014】
図2は、この発明の実施の形態1による電気機器の検査装置の要部を拡大して示すもので、本実施の形態では、実質的に製品1とパソコン8側の擬似リモコン信号送信用のリモコン信号ボード9、画像判定用の画像処理ボード10の信号のやりとりに着目したものであり、その際に画像処理ボード10で行なわれる画像認識は、画像認識パターンとして検査対象となる特定の部分のデータをパターン化してメモリ14に準備しておき、そのデータと検査チエック時のメニューとの一致割合により、一致、不一致の画像判定を行ない、意図したメニューを選択するまで、リモコン操作を制御するように機能するものである。
【0015】
図3は、画面認識を用いて検査する製品が正常にメニュー遷移したかを確認しながらリモコン操作を行なう場合の一例を示したものである。
図3において、図3(a)〜(c)は、リモコン操作前後での製品1のメニュー遷移を示した画像表示例であり、本実施の形態では、図3(a)に示すメニューから、図3(c)に示す意図するメニューにメニュー遷移する場合のリモコン操作を、後述する図4で示す処理動作にて行うものである。
【0016】
図3では、一例として、画像認識パターンとして四角で囲んだ部分のメニューのデータに対応したテーブルA〜Dの内、検査対象となる特定の部分のデータのメニュー、即ち意図するメニューに対応するテーブルとして、例えばテーブルCをパソコン8のメモリ14内に設定している。なお、図3(a)〜(c)に示すテーブルA〜Dの内斜線で示すテーブルは、現在画像認識の対象になっているメニューを表している。
【0017】
いま、リモコン操作によりメニュー遷移する場合は、まず、テーブルCが図3(a)の画面上にあるかを見て、図3(a)の画面には、テーブルCでなく、テーブルAがあるので、画像処理ボード10における画像判定は不一致で、意図したメニューが選択されていないと判定し、リモコン信号ボード9からの擬似リモコン信号によるリモコン操作によりカーソル位置を変更して、図3(b)の画面にメニュー遷移し、ここでも、テーブルCが図3(b)の画面上にあるかを見て、図3(b)の画面には、テーブルCでなく、テーブルBがあるので、画像処理ボード10における画像判定は不一致で、意図したメニューが選択されていないと判定し、リモコン信号ボード9からの擬似リモコン信号によるリモコン操作によりカーソル位置を更に変更して、図3(c)の画面にメニュー遷移し、上記と同様にして、テーブルCが図3(c)の画面上にあるかを見て、図3(c)の画面には、意図したメニューのテーブルCがあるので、画像処理ボード10における画像判定は一致で、意図したメニューが選択されたと判定し、リモコン操作の動作を終了する。
【0018】
図3(d)は、上記のようにして画像認識によるリモコン操作の繰り返しにより意図したメニューが選択されたと判定された後の専用モニタ4上に表示されるテスト画面(サービス画面)で、ここでは、一例として図示せずも車速センサやナビユニット等の「結線チェック」を選択して実行ボタン(図示せず)を押した場合の確認のための図面を概略的に表している。
【0019】
次に、図4を参照して、上記の図3におけるリモコン操作の動作を説明する。
まず、リモコン信号ボード9から製品1に送信される擬似リモコン信号によるリモコン操作時間、つまり、リモコン操作のタイムアウト時間(例えば、30秒)を予め設定し(ステップST1)、次いで、製品検査時のリモコン操作が設定したリモコン操作のタイムアウト時間を越えていないか、つまり、リモコン操作時間が30秒以内かどうかを判定し(ステップST2)30秒を越えている場合、製品検査は無効としてNG処理を行う(ステップST3)。
【0020】
一方、ステップST2でリモコン操作時間が30秒を越えていない場合は、画像処理ボード10において画像認識を行い、製品1のメニュー遷移状態を確認し(ステップST4)、図3(c)のテーブルCに対応する意図したメニューが選択されたか否かを判定する(ステップST5)。このステップST5で意図したメニュー選択されていないと判定した場合、即ち、図3(a)のテーブルAに対応するメニューの場合、予めリモコン信号ボード9からの擬似リモコン信号により設定しているリモコン操作(例えば、リモコン“下”操作)を行い(ステップST6)、次いで、中断をチェック、つまり、操作SW−BOX15の中断ボタンが押されたか否かを判定し(ステップST7)、操作SW−BOX15の中断ボタン(図示せず)が押されたことが確認されなければ、ステップST2に戻って、上述のステップST2〜ST4の動作を繰り返す。
【0021】
そして、再度ステップST5で意図したメニューが選択されたか否かを判定し、その判定結果が意図したメニューの選択されていない判定の場合、即ち、図3(b)のテーブルBに対応するメニューの場合、再度ステップST6において、リモコン信号ボード9からの擬似リモコン信号により設定しているリモコン操作(リモコン“下”操作)を行い、次いで、ステップST7で中断をチェックし、ステップST2に戻って、上述のステップST2〜ST4の動作を繰り返し、再度ステップST5で意図したメニューが選択されたか否かを判定する。
【0022】
そして、ステップST5における画像処理ボード10による画像判定の結果、意図したメニューが選択されたと判定された場合、つまり、図3(c)のテーブルCに対応するメニューが得られた場合はリモコン操作を終了する。なお、ステップST7で操作SW−BOX15の中断ボタンが押されと判定された場合もリモコン操作は終了とする。
【0023】
以上のように、本実施の形態によれば、リモコン操作時間が例えば30秒という所定時間内の画像認識により、製品のメニュー遷移状態を確認しながらリモコン操作を行うことができるため、誤ったメニューを選択することが無くなり、検査時間の短縮、生産効率の向上を図ることができると共に、検査精度を向上できる。
また、タイムアウト時間内であれば、上記の方法で繰り返しリモコン操作を行うため、確実に意図したメニューを選択することができ、検査時間の短縮、生産効率の向上に寄与できる。
【0024】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1では、実質的に画像処理によりリモコン操作の制御を行う場合について説明したが、リモコン操作時に製品から出力される“ピッ”というリモコン操作音を用いてもリモコン操作の制御は可能であり、このリモコン操作音を聞いてメニュー遷移を確認できる。即ち、リモコン操作時に製品から出力される“ピッ”というリモコン操作音がすると、カーソルが1つ下がり、リモコン操作がなされたと判断でき、リモコン操作が済んでなければ何も音はしないので、リモコン操作が出来なかったと判断し、メニュー遷移を確認できる。なお、この場合には、上記実施の形態1の如くパソコンのメモリ内に各メニューに対応したテーブル等の設定は不要である。また、リモコン操作時に、そのとき返って来るリモコン操作音の音量レベルがある一定レベルの音で例えば3回鳴ったかというのを聞きながら判断してもよい。
【0025】
これにより、本実施の形態でも、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、更に、本実施の形態はパソコンのメモリ内に各メニューに対応したテーブル等を設定する必要がなくなり、それだけ構成の簡略化、コストの低廉化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1による電気機器の検査装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電気機器の検査装置の要部を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1による電気機器の検査装置における動作説明に供するための図である。
【図4】この発明の実施の形態1による電気機器の検査装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
1 製品、2 周辺機器、3 TVチューナ、4 専用モニタ、5 I/F−BOX、6 信号変換基板、7 リレー、8 パソコン、9 擬似リモコン信号出力用のリモコン信号ボード、10 画像判定用の画像処理ボード、11 音判定用のA/Dボード、12 信号切換用のI/Oボード、13 電源・測定器制御用のGPIBボード、14 メモリ、15 操作SW−BOX、16 DC電源(製品用電源)、17 DC電源(周辺機器用電源)、18 電圧電流測定器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査する製品に対するリモコン操作時間を予め設定する第1のステップと、
製品検査時に上記リモコン操作時間が所定の時間内か否かを判定する第2のステップと、
上記リモコン操作時間が所定の時間内の場合は、上記検査する製品に関連した画像認識を行い、該検査する製品のメニュー遷移状態を確認する第3のステップと、
上記製品のメニュー遷移状態確認中に意図したメニューが選択されたか否かを判定し、該意図したメニューが選択されなければ、選択されるまでリモコン操作を繰り返す第4のステップと
を備えた電気機器の検査方法。
【請求項2】
リモコン操作時間は、予めリモコン操作手段からの検査する製品に送信される擬似リモコン信号により設定されることを特徴とする請求項1記載の電気機器の検査方法。
【請求項3】
第4のステップにおけるリモコン操作の繰り返しは、中断チェックを通して行なわれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電気機器の検査方法。
【請求項4】
検査する製品に関連した画像認識を用いてリモコン操作を行う代わりに、リモコン操作時に上記製品から出力されるリモコン操作音を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の電気機器の検査方法。
【請求項5】
擬似リモコン信号を生成し、信号変換手段を介して製品に送信して、上記製品をリモコン操作するリモコン操作手段と、
上記製品からの画像を上記信号変換手段を介して受けて画像判定を行い、その画像判定の結果に基づいて上記製品に関連する意図したメニューが選択されるまで上記リモコン操作手段を制御してリモコン操作を繰り返すリモコン操作制御手段と
を備えた電気機器の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−128804(P2006−128804A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311153(P2004−311153)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】