説明

電気機器収納用箱のハンドル用カバー

【課題】耐久性および耐候性に優れた合成ゴム等の軟質材を嵌め合せて電気機器収納用箱のハンドルを被覆する際に、1度目の嵌め合わせ作業で、簡単に、かつ、正確な位置に嵌め合わせをすることができる防水カバーを提供すること。
【解決手段】電気機器収納用箱1の扉8を開閉するハンドル3の嵌め込み孔を有するベース部4と、該ベース部4の全面を被覆するカバー部5を有し、ベース部4に重ねたカバー部5をスライドさせて両部を嵌合するスライド式嵌合構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器収納用箱のハンドル用カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置される電気機器収納用箱のハンドルを、塩害や風雨による錆や汚れ等から保護するハンドル用カバーの構造として、例えば特許文献1には、ハンドル全体を覆うキャップ部材と該キャップ部材を固定するベース部材を使用し、ベース部材をハンドル上部に両面テープで固定し、キャップ部材の上部に設けた結合軸部をベース部材に設けた孔部に枢着させた上で、キャップ部材の下部をハンドル下部に設けた溝部に係合させる構造が開示されている。ここで、キャップ部材とベース部材は、耐久性および耐候性の観点から、合成ゴムによって作成されることが一般的である。
【0003】
しかし、合成ゴム等の軟質材を嵌め合せる際には、反発や抵抗が生じ、1度目の嵌め合わせでは全周をうまく嵌合させることが出来ず、浮いた部分を何度も押し付けながら調整を行う等の手間が煩雑である問題があった。また、密閉が不十分な嵌合状態で放置した場合には隙間から埃や水滴が侵入してしまう問題や、振動や強風によってキャップ部材が外れてしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2901970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は前記を解決し、耐久性および耐候性に優れた合成ゴム等の軟質材を嵌め合せて電気機器収納用箱のハンドルを被覆する際に、1度目の嵌め合わせ作業で、簡単に、かつ、正確な位置に嵌め合わせをすることができるハンドル用カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の電気機器収納用箱のハンドル用カバーは、電気機器収納用箱の扉を開閉するハンドルの嵌め込み孔を有するベース部と、該ベース部の全面を被覆するカバー部を有し、ベース部に重ねたカバー部をスライドさせて両部を嵌合するスライド式嵌合構造を有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバーにおいて、スライド式嵌合構造が、ベース部の外周を立ち上げた立壁部又はカバー部の外周を立ち上げた立壁部の一方に形成した係合凹部、および、ベース部の外周を立ち上げた立壁部又はカバー部の外周を立ち上げた立壁部の他方に形成した突起部から構成され、該突起部は、該係合凹部に挿入後、ベース部およびカバー部が嵌合する位置までスライドして係止されることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバーにおいて、ベース部およびカバー部が嵌合状態において、該係合凹部が該突起部の直上部に位置し、該突起部は、該係合凹部に挿入後、下向きにスライドして係止されることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバーにおいて、該係合凹部の下端部に凸部が形成され、該凸部を垂直方向に乗り越えて、突起部をスライドさせることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項2から請求項4記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバーにおいて、ベース部の立壁部は、ハンドルの嵌め込み孔の外縁から距離をもって立ち上げられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバーにおいて、ベース部の上側立壁部の先端には、突起部を備え、カバー部には、ベース部およびカバー部が嵌合する位置で該突起部を係止する係止部を備えることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバーにおいて、ベース部には、下側立壁部を切り欠いて形成した開口部と、該開口部に隣接する段部を備え、カバー部には、ベース部およびカバー部が嵌合する位置で該開口部および段部と係止して開口部を塞ぐ下壁部を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電気機器収納用箱のハンドル用カバーは、電気機器収納用箱の扉を開閉するハンドルの嵌め込み孔を有するベース部と、該ベース部の全面を被覆するカバー部を有し、ベース部に重ねたカバー部をスライドさせて両部を嵌合するスライド式嵌合構造を有することにより、カバー部とベース部の両方または少なくとも一方が合成ゴム等の軟質材の場合であっても、1度目の嵌め合わせ作業で、簡単に、かつ、正確な位置に嵌め合わせをすることができる。スライド式嵌合構造は、ベース部の外周を立ち上げた立壁部又はカバー部の外周を立ち上げた立壁部の一方に形成した係合凹部、および、ベース部の外周を立ち上げた立壁部又はカバー部の外周を立ち上げた立壁部の他方に形成した突起部から構成し、該突起部を、該係合凹部に挿入後、ベース部およびカバー部が隙間なく嵌合する位置までスライドして係止する構造とすることが好ましい。
【0014】
ベース部およびカバー部が嵌合状態において、該係合凹部が該突起部の直上部に位置し、該突起部を、該係合凹部に挿入後、下向きにスライドして係止する構成からなる請求項3記載の発明によれば、ベース部およびカバー部が嵌合状態においては、カバー部の立壁部の上端部がベース部の立壁部の上端部よりわずかに突出されており、カバー部のスライド距離を最小限に抑えつつの嵌合作業が可能となり、電気機器収納用箱のハンドルの上部に十分な空間が確保できない場合でも、スムーズにカバーの取り付け作業を行うことができる。
【0015】
係合凹部の下端部に凸部が形成され、該凸部を垂直方向に乗り越えて、突起部をスライドさせる構成からなる請求項4記載の発明によれば、嵌合後に、突起部の上方へのずれを効果的に防止することができる。また、凸部を垂直方向に乗り越える感触により、作業者に嵌合状態を認識させ嵌合作業をより確実に行うことができる。また、凸部を乗り越える際にカバー部もしくはベース部の立壁部がハンドル方向に撓んで嵌合されるものである。
【0016】
ベース部の立壁部を、ハンドルの嵌め込み孔の外縁から距離をもって立ち上げる構成からなる請求項5記載の発明によれば、嵌合作業時に、立壁部がハンドル方向に撓む距離を確保することができ、嵌合作業の作業性の向上を図ることができる。
【0017】
ベース部の上側立壁部の先端には、突起部を備え、カバー部には、ベース部およびカバー部が嵌合する位置で該突起部を係止する係止部を備える構成からなる請求項6記載の発明によれば、嵌合後に、カバー部の前面方向へのずれを効果的に防止することができる。
【0018】
ベース部には、下側立壁部を切り欠いて形成した開口部と、該開口部に隣接する段部を備え、カバー部には、ベース部およびカバー部が嵌合する位置で該開口部および段部と係止して開口部を塞ぐ下壁部を備える構成からなる請求項7記載の発明によれば、開口部を下壁部で塞ぐ構成によりスライド式嵌合構造における防水・防塵機能を確保するとともに、開口部に隣接する段部を備える構成により水分等が外部から侵入する際の侵入距離を長く確保し、内部への侵入を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ハンドル用カバーのベース部とカバー部が嵌合され、ハンドルが覆われた電気機器収納用箱の全体説明図である。
【図2】図1において、ベース部とカバー部が嵌合しておらず、ハンドルを露出した電気機器収納用箱の全体説明図である。
【図3】ハンドル用カバーの全体説明図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】ハンドル用カバーの嵌合作業説明図である。
【図6】ハンドル用カバー下部の嵌合構造説明図である。
【図7】ハンドル用カバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
本発明のハンドル用カバー2は、図1、2に示すように、電気機器収納用箱1のハンドル3を覆うように取り付けて使用される。図2に示すハンドル3は、使用時にハンドル取手を操作位置に突出させる平面ハンドル3であり、ハンドル用カバー2は、該平面ハンドル3を嵌め込むハンドル嵌め込み孔6を有するベース部4と、該ベース部4の全面を被覆するようにベース部より一回り大きく形成されたカバー部5を有している。本実施形態のハンドル用カバー2は、図2〜4に示すように、ベース部4とカバー部5とを連結する連結部7を有しているが、連結部7を有さない構造とすることもできる。
【0021】
本実施形態のハンドル用カバー2は、ベース部4のハンドル嵌め込み孔6に平面ハンドル3を嵌め込んだ後、電気機器収納用箱1の扉8に取り付け、扉8の内側から取付具で固定させたものである。ただし、ハンドルは、平面ハンドルに限定するものではなく、シリンダ錠など、取外し可能ハンドルであってもよい。
【0022】
本実施形態のハンドル用カバー2は、塩害や風雨または塵などにより錆や汚れ等から保護するため耐久性および耐候性に優れた合成ゴムから構成しているが、ハンドル用カバー2の構成部材は合成ゴムに限定されず、他の軟質材から構成してもよいし、ベース部4とカバー部5とを異なる軟質材から構成したり、硬質材と軟質材を組み合わせた構成とすることもできる。
【0023】
(ベース部)
ベース部4には、外周を立ち上げて立壁部9が形成されており、立壁部9の周縁には外側に突出させた突起部10が形成されている。立壁部9は、ハンドル嵌め込み孔6の外縁から距離をもって立ち上げられている。当該構造によって、嵌合作業時に、立壁部がハンドル方向に撓む距離を確保し、嵌合作業の作業性の向上を図っている。
【0024】
ベース部4の左右両端にある立壁部9の上下方向中心部分には、ベース部4とカバー部5との嵌合作業時に、カバー部5に形成した突起部12を挿入する係合凹部11が形成されている。係合凹部11の下部には、嵌合部14が形成されている。カバー部5の突起部12は、図5に示すように、ベース部4の係合凹部11に挿入後、ベース部4およびカバー部5が嵌合する位置までスライドして係止されるが、該嵌合位置において、カバー部5の突起部12は、ベース部4の嵌合部14に係止されている。
【0025】
係合凹部11と嵌合部14との間には、図5に示すように、凸部13が形成されており、カバー部5の突起部12は、ベース部4の係合凹部11に挿入後、該凸部13を垂直方向に乗り越えて下方向にスライドされる。当該構造により、嵌合後に、突起部の上方へのずれを効果的に防止するとともに、凸部13を垂直方向に乗り越える感触により、作業者に嵌合状態を認識させ嵌合作業が、より確実に行えるようになっている。また、凸部を乗り越える際にベース部4もしくはカバー部5の立壁部がハンドル嵌め込み孔6方向に撓んで嵌合されるものである。
【0026】
ベース部4の下側には、立壁部9の一部を切り欠いて形成した開口部15と、該開口部15に隣接する段部16が形成されている。立壁部9の強度を確保し、嵌合作業時の変形を防止する観点から、開口部15は、ベース部4の下側の中央部に形成し、ベース部4の下側両端部には立壁部9が連なる構造とすることが好ましい。
【0027】
嵌合部14の下方には、ハンドル用カバー2の内部からの水の逃げ道を確保するために、水抜用切欠部17が形成されている。
【0028】
(カバー部)
カバー部5も、前記ベース部4と同様に、外周を立ち上げて立壁部18が形成されている。カバー部5の左右両端にある該立壁部18の上下方向中心部分より下方にずらした位置に、前記の突起部12が形成されている。突起部12は、ベース部4およびカバー部5が嵌合する位置において、ベース部4の係合凹部11が該突起部12の直上部に位置にくるように形成されている。当該構造により、該突起部12を、該係合凹部11に挿入時に、カバー部5の立壁部18の上端部がベース部4の立壁部9の上端部より突起部12を上下方向中心部分よりずらした分だけ突出された状態となり、下向きにスライドして係止する際、カバー部5のスライド距離を最小限に抑えることができ、電気機器収納用箱1のハンドル3の上部に十分な空間が確保できない場合でも、スムーズにカバーの取り付け作業を行うことができる。なお、本実施例においてはカバー部5に突起部12、ベース部4に係合凹部11を形成するような構造として説明したが、突起部12をベース部4に、係合凹部11をカバー部5に形成するようなものでも良いことは勿論である。
【0029】
カバー部5には、ベース部4およびカバー部5が嵌合する位置で、前記ベース部4の突起部10を係止する係止部19が形成されている。ベース部4の突起部10をカバー部5の係止部19で係止する構造により、ベース部4とカバー部5との嵌合後に、カバー部5の前面方向へズレたり、倒れたりすることを効果的に防止することができる。係止部19の形状を特に限定されず、円弧状の突起部10の全部を係止するものであってもよいし、一部を係止するものであってもよい。
【0030】
カバー部5には、図6に示すように、ベース部4およびカバー部5が嵌合する位置で、前記ベース部4の開口部15を塞ぐ下壁部20が形成されている。カバー部5の立壁部18と下壁部20の間にスリット22が形成してあり、スリット22に、ベース部4の立壁部9が侵入しスライド可能になるものである。ベース部4とカバー部5を嵌合させたときカバー部5のスリット部22を防ぐ閉塞部23をベース部4の立壁部9の下端部から形成している。閉塞部23はスリット部22を防ぐだけではなく、立壁部9自体の変形を防止する補強の役目をも持つものである。なお、ベース部4の閉塞部23には段部16を形成しており、また、段部16に対応する部分であるカバー部5のスリット22周縁や下壁部20周縁も同様に段部形状とし、ベース部4とカバー部5が嵌合したとき互いの段部が重なりあうように形成している。このように段部形状とすることにより、経路を長くし水の浸入を防ぎ、防水性能を高めるものである。
【0031】
その他、カバー部5には、図7に示すように、カバー部5の補強を目的として、開口方向に突出したリブ21が形成されている。リブ21は、バー部を閉じた時、ハンドル3の上面に当接し、カバー部5に強い水流が当たった際にも、カバー部5が変形することを防ぐ作用を奏する。
【符号の説明】
【0032】
1 電気機器収納用箱
2 ハンドル用カバー
3 ハンドル
4 ベース部
5 カバー部
6 ハンドル嵌め込み孔
7 連結部
8 扉
9 立壁部
10 突起部
11 係合凹部
12 突起部
13 凸部
14 嵌合部
15 開口部
16 段部
17 水抜用切欠部
18 立壁部
19 係止部
20 下壁部
21 リブ
22 スリット
23 閉塞部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器収納用箱の扉を開閉するハンドルの嵌め込み孔を有するベース部と、該ベース部の全面を被覆するカバー部を有し、
ベース部に重ねたカバー部をスライドさせて両部を嵌合するスライド式嵌合構造を有することを特徴とする電気機器収納用箱のハンドル用カバー。
【請求項2】
スライド式嵌合構造が、ベース部の外周を立ち上げた立壁部又はカバー部の外周を立ち上げた立壁部の一方に形成した係合凹部、および、ベース部の外周を立ち上げた立壁部又はカバー部の外周を立ち上げた立壁部の他方に形成した突起部から構成され、
該突起部は、該係合凹部に挿入後、ベース部およびカバー部が嵌合する位置までスライドして係止されることを特徴とする請求項1記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバー。
【請求項3】
ベース部およびカバー部が嵌合状態において、該係合凹部が該突起部の直上部に位置し、
該突起部は、該係合凹部に挿入後、下向きにスライドして係止されることを特徴とする請求項2記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバー。
【請求項4】
該係合凹部の下端部に凸部が形成され、該凸部を垂直方向に乗り越えて、突起部をスライドさせることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバー。
【請求項5】
ベース部の立壁部は、ハンドルの嵌め込み孔の外縁から距離をもって立ち上げられていることを特徴とする請求項2から請求項4記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバー。
【請求項6】
ベース部の上側立壁部の先端には、突起部を備え、カバー部には、ベース部およびカバー部が嵌合する位置で該突起部を係止する係止部を備えることを特徴とする請求項1から請求項5記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバー。
【請求項7】
ベース部には、下側立壁部を切り欠いて形成した開口部と、該開口部に隣接する段部を備え、カバー部には、ベース部およびカバー部が嵌合する位置で該開口部および段部と係止して開口部を塞ぐ下壁部を備えることを特徴とする請求項1から請求項6記載の電気機器収納用箱のハンドル用カバー。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−144893(P2012−144893A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3703(P2011−3703)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)