説明

電気機器

【課題】活線の露出を回避する。
【解決手段】車両用の冷凍サイクル装置の室外機8は、回路容器12と電動圧縮機14とを備える。電動圧縮機14は、車両の走行用のモータに給電する高電圧バッテリから給電される。電動圧縮機14は、カバー43によって覆われている。回路容器12から延び出すケーブル29の先端には、コネクタ30が設けられている。コネクタ30の第2部材32は、カバー43に固定されている。コネクタ30の第1部材31と第2部材32とを結合したままでは、カバー43は取り外すことができない。保守作業のためにカバー43を取り外す場合、第1部材31を第2部材32から分離する。コネクタ30とケーブル29は、インバータ等の低電圧の電源ラインを提供している。コネクタ30の第1部材31と第2部材32とを分離すると、電源ラインが遮断され、電動圧縮機14への高電圧供給経路が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に関するものであり、より詳細には、カバーによって覆われた電気機器、例えば車両用冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気機器の高電圧部分に高電圧を供給したままでも保守作業を可能とするために、絶縁性の部材を設ける構成を提案している。すなわち、この構成は、漏電を回避するための構成を提案している。高電圧が供給されている状態の導体は、活線と呼ばれる。また、高電圧を供給したままの保守作業は活線作業とも呼ばれる。また、特許文献1は、活線作業を可能とするために、高電圧部分を覆うカバーを備える電気機器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−2050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の構成では、カバーを自由に取り外すことができる。特に、活線作業中であっても、カバーを取り外すことができる。このため、活線作業中に、漏電によって高電圧が充電されるおそれのある部位を含む活線が露出するおそれがあった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、活線の露出を回避することができる電気機器を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、活線の露出を安価な構成により回避することができる電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明は、高電圧バッテリから給電される高電圧部品(14)と、高電圧部品を覆うカバー(43)と、低電圧バッテリから電源ライン(28)を経由して給電され、高電圧部品への高電圧の給電を制御する低電圧部品(21、22、24、25)と、電源ラインの一部を構成するとともに、カバーに機械的に連結された配線部材(29、30、33)とを備え、配線部材は、電源ラインの一部を構成するケーブル(29、33)と、ケーブルの途中に設けられ接続および分離が可能なコネクタであって、接続状態では電源ラインを接続するとともに、配線部材による機械的な連結によりカバーの取り外しを制限し、分離状態では電源ラインを遮断するとともに、配線部材による機械的な連結を解除することによりカバーの取り外しを許容するコネクタ(30)とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、低電圧バッテリから低電圧部品への電源ラインを配線部材によって形成する。この配線部材は、カバーを機械的に連結している。さらに、配線部材は、ケーブルとコネクタとによって提供される。コネクタは、接続状態では、電源ラインを接続する。しかも、コネクタは、接続状態では、配線部材による機械的な連結によりカバーの取り外しを制限する。その一方で、分離状態では、コネクタは、電源ラインを遮断する。しかも、コネクタは、分離状態では、配線部材による機械的な連結を解除することによりカバーの取り外しを許容する。この結果、コネクタが分離状態にあるとき、コネクタは機械的な連結を解除するから、カバーを取り外し、高電圧部品を露出させることができる。このとき、コネクタは、低電圧の電源ラインを遮断するから、高電圧部品への高電圧の供給を遮断することができる。このため、コネクタが分離状態にあるときに、露出させることができる高電圧部品に高電圧が充電されることを回避することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、高電圧部品(14)、低電圧部品(21、22)、およびカバー(43)が固定されるシャーシ(11)と、配線部材(29、30、33)の第1部分(29)をシャーシに固定する固定部(16)と、配線部材の上において第1部分から所定の長さだけ離れた配線部材の第2部分(32、33)をカバーに固定する固定部(44)とを備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、配線部材の第1部分がシャーシに固定され、配線部材の第2部分がカバーに固定される。このため、シャーシとカバーとが配線部材によって機械的に連結される。配線部材の第1部分と第2部分との間の有限の所定の長さによって、シャーシからのカバーの取り外しが制限される。
【0012】
請求項3に記載の発明は、コネクタは、カバーの外側に配置されていることを特徴とする。この構成によると、コネクタの分離作業、接続作業が容易になる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、低電圧部品は、高電圧部品への高電圧の給電を制御するインバータ(22)を備えることを特徴とする。この構成によると、コネクタが分離状態のとき、インバータへの低電圧の供給が遮断されるから、インバータから高電圧部品への高電圧の給電を遮断することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、低電圧部品は、インバータを制御する制御装置(21)を備えることを特徴とする。この構成によると、コネクタが分離状態のとき、インバータを制御する制御装置への低電圧の供給が遮断されるから、インバータから高電圧部品への高電圧の給電を遮断することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、低電圧部品は、高電圧部品への高電圧の給電を制御するリレー(24、25)を備えることを特徴とする。この構成によると、コネクタが分離状態のとき、リレーへの低電圧の供給が遮断されるから、リレーから高電圧部品への高電圧の給電を遮断することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、低電圧部品は、リレーを制御する制御装置(21)を備えることを特徴とする。この構成によると、コネクタが分離状態のとき、リレーを制御する制御装置への低電圧の供給が遮断されるから、リレーから高電圧部品への高電圧の給電を遮断することができる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、コネクタ(30)は、ケーブル(29)に接続された第1部材(31)と、第1部材に対して接続および分離が可能な第2部材(32)とを備え、カバーは、第2部材を固定する固定部(44)を備えることを特徴とする。この構成によると、コネクタの第2部材をカバーに固定することによって、配線部材による機械的な連結が提供される。コネクタの第1部分を第2部分から分離させることにより、配線部材による機械的な連結は解除される。このため、カバーの取り外しが許容される。
【0018】
請求項9に記載の発明は、ケーブル(29、33)は、第1ケーブル(29)と第2ケーブル(33)とを備え、コネクタは、第1ケーブルと第2ケーブルとの間に設けられており、カバーは、第2ケーブルを固定する固定部(244)を備えることを特徴とする。この構成によると、第2ケーブルをカバーに固定することによって、配線部材による機械的な連結が提供される。コネクタを分離させることにより、配線部材による機械的な連結は解除される。このため、カバーの取り外しが許容される。
【0019】
請求項10に記載の発明は、高電圧部品は、電動圧縮機であることを特徴とする。この構成によると、電動圧縮機の保守作業において、カバーを取り外す場合には、コネクタが分離状態とされる。このため、カバーの取り外しによって露出した電動圧縮機に高電圧が充電されることを回避することができる。
【0020】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る電気機器を搭載した車両を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の回路を示す回路図である。
【図3】第1実施形態の電気機器を示す一部分解斜視図である。
【図4】第1実施形態の電気機器を示す一部分解斜視図である。
【図5】本発明を適用した第2実施形態に係る電気機器を示す一部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る電気機器を搭載した車両1を示す斜視図である。車両1は、高電圧バッテリ2と、車両1の走行用の駆動装置3と、低電圧バッテリ4とを備える。高電圧バッテリ2は、主として駆動装置3に給電する。駆動装置3は、モータのみを備える電動車両用の駆動装置、またはモータと内燃機関とを備えるいわゆるハイブリッド車両用の駆動装置である。よって、駆動装置3は、車両1の走行用動力源としてのモータを少なくとも含む。駆動装置3に給電する高電圧バッテリ2は、数百ボルトの直流電圧を供給する。高電圧バッテリ2は、走行用バッテリ、またはハイブリッド用バッテリとも呼ばれる。高電圧バッテリ2が供給する電圧は、低電圧バッテリ4が供給する電圧より十分に高い。低電圧バッテリ4は、通常の車載機器に給電する。低電圧バッテリ4は、例えば、12V、または24Vを供給する。
【0024】
車両1は、貨物車両である。車両1には、荷室5が設けられている。荷室5は、冷蔵庫、または冷凍室として構成されている。車両1は、荷室5内を低温に調節し、維持するための車両用の冷凍サイクル装置6を備える。冷凍サイクル装置6は、高電圧によって作動し、カバーを有する電気機器である。冷凍サイクル装置6は、室内機7と、室外機8とを備える。室内機7は、荷室5内に設置されている。室内機7は、冷凍サイクルの一部を構成する蒸発器と送風機とを備えることができる。室外機8は、荷室5の前方上部に設置されている。室外機8は、冷凍サイクルの一部を構成する電動圧縮機、凝縮器、膨張器、送風機、電磁弁、および制御装置などを備えることができる。冷凍サイクル装置6は、高電圧バッテリ2と低電圧バッテリ4との両方から給電されている。高電圧バッテリ2は、電動圧縮機に給電するように接続されている。低電圧バッテリ4は、冷凍サイクル装置6の電動圧縮機以外の電気部品に給電するように接続されている。冷凍サイクル装置6は、室内機7によって荷室5内の空気を冷却し、室外機8によって外気へ熱を放出する。
【0025】
図2は、第1実施形態の回路を示す回路図である。図中には、高電圧バッテリ2から給電される回路と、低電圧バッテリ4から給電される回路とが図示されている。
【0026】
高電圧バッテリ2は、車両1の走行用の駆動装置(DRT)3に給電する。駆動装置3は、車両1の駆動輪を駆動する走行用のモータを含むことができる。さらに、駆動装置3は、高電圧バッテリ2からモータへの通電を制御するインバータ回路と制御装置とを含むことができる。
【0027】
冷凍サイクル装置6は、制御装置(ECU)21、インバータ(INV)22、ヒューズ23、第1リレー(RL1)24、第2リレー(RL2)25、抵抗器26、およびコンデンサ27を備える。
【0028】
制御装置21は、マイクロコンピュータを備える。制御装置21は、低電圧バッテリ4から給電され、機能する。制御装置21は、冷凍サイクル装置6の送風機などの部品を制御する。インバータ22は、低電圧バッテリ4から給電される低電圧回路素子と、高電圧バッテリ2から給電される高電圧を制御する高電圧素子とを含む。インバータ22は、高電圧バッテリ2から供給される直流電力を三相交流電力に変換する。インバータ22は、冷凍サイクル装置6の電動圧縮機14のモータに、高電圧バッテリ2から供給され変換された電力を供給する。インバータ22は、制御装置21からの指令に応じて、電動圧縮機14に供給する電力を調節する。
【0029】
第1リレー24は、リレーコイル(RY)と常開型の接点とを有する。第1リレー24は、制御装置21からの指令に応答して、その接点を開閉する。第2リレー25は、リレーコイル(RY)と常開型の接点とを有する。第2リレー25は、制御装置21からの指令に応答して、その接点を開閉する。
【0030】
第1リレー24は、高電圧バッテリ2と、インバータ22と、ヒューズ23と、抵抗器26とに対して直列に接続されている。第1リレー24の接点が閉じるとき、高電圧バッテリ2と、インバータ22と、抵抗器26とを含む閉回路が形成される。インバータ22の高電圧端子間には、コンデンサ27が並列接続されている。第1リレー24の接点が閉じた直後は、コンデンサ27が徐々に充電される。これにより、インバータ22への供給電圧も徐々に上昇する。抵抗器26とコンデンサ27とは、突入電流を緩和するための電流抑制回路を形成する。
【0031】
第2リレー25は、高電圧バッテリ2と、インバータ22と、ヒューズ23とに対して直列に接続されている。第2リレー25の接点が閉じるとき、抵抗器26を経由することなく、高電圧バッテリ2と、インバータ22とを含む閉回路が形成されることにより、高電圧バッテリ2からインバータ22へ直接的に電力が供給される。
【0032】
制御装置21は、電動圧縮機14への通電開始時にのみ第1リレー24だけを閉じる。これにより、突入電流が抑制される。その後、制御装置21は、第2リレー25を閉じ、第1リレー24を開く。これにより、高電圧バッテリ2の電圧が抵抗器26を経由することなく、直接的に、インバータ22、および電動圧縮機14へ供給される。
【0033】
ヒューズ23、第1リレー24、および第2リレー25とは、室外機8とは別に、室外機8から離れて設置されている。第1リレー24と第2リレー25とは、車両1の下部に設置された継電器箱に収容されている。第1リレー24および第2リレー25とインバータ22とを接続する電線が、室外機8に導入され、インバータ22に接続されている。第1リレー24および第2リレー25は、高電圧バッテリ2とインバータ22との間の電流経路を遮断する遮断器を提供する。よって、第1リレー24および第2リレー25が開くと、インバータ22の周辺の回路部品には高電圧が供給されない。この実施形態では、第1リレー24および第2リレー25が開くと、室外機8に収容された回路部品に高電圧が充電されることはない。
【0034】
制御装置21、インバータ22の低電圧素子、第1リレー24、および第2リレー25は、冷凍サイクル装置6に含まれる低電圧部品である。低電圧バッテリ4の電力は、電源ライン28を経由して、上記低電圧部品へ給電される。これら低電圧部品21、22、24、25は、低電圧バッテリから電源ライン28を経由して給電され、高電圧部品である電動圧縮機14への高電圧の給電を制御する。電源ライン28の一部は、第1ケーブル29とコネクタ30と第2ケーブル33とを含む配線部材によって提供されている。
【0035】
第1ケーブル29は、平行な往復線路を提供している。第1ケーブル29は、少なくとも2線を含む。第1ケーブル29は、コネクタ30を後述するカバーの所定位置に装着するために、室外機8上に敷設され、固定されている。
【0036】
コネクタ30は、第1ケーブル29と第2ケーブル33との間を機械的に、かつ電気的に接続するように、第1ケーブル29と第2ケーブル33との間に設けられている。コネクタ30は、2端子型の手動操作可能な防水コネクタである。コネクタ30は、第1部材31と、第2部材32とを有する。第1部材31は、少なくとも2つの端子を有する。一方の端子は、低電圧バッテリ4に接続されている。他方の端子は、制御装置21を含む低電圧部品に接続されている。第2部材32は、第1部材31の上記2つの端子に対応する少なくとも2つの端子を有する。第2部材32の2つの端子は、第2ケーブル33によって短絡されている。第1部材31と第2部材32とは、接続、または分離が可能である。第1部材31と第2部材32とは、一方が雄コネクタであり、他方が雌コネクタである。第1部材31と第2部材32との間には、一般的なコネクタが備えるものと同様のロック機構34が設けられている。ロック機構34は、作業者が手で操作することができる構成を有している。作業者は、ロック機構34を手で操作することにより、第1部材31と第2部材32とを分離することができる。
【0037】
第2ケーブル33は、平行な往復線路を有する。第2ケーブル33の一端は、第2部材32が接続されている。第2ケーブル33の他端には、往復線路を電気的に短絡する短絡部分が設けられている。
【0038】
第1部材31と第2部材32とが接続されることにより、低電圧バッテリ4から低電圧部品への給電が許容される。このとき、第1リレー24および第2リレー25は、それらの接点を閉じることが可能な状態におかれる。また、制御装置21およびインバータ22も作動可能な状態におかれる。よって、コネクタ30が接続状態におかれているとき、インバータ22と電動圧縮機14との間に敷設された導体14aに高電圧が供給される可能性がある。つまり、導体14aが活線状態となる可能性がある。
【0039】
第1部材31と第2部材32とが分離されることにより、低電圧の電源ライン28が遮断される。この結果、低電圧バッテリ4から低電圧部品への給電が遮断される。このとき、制御装置21およびインバータ22への低電圧の供給が遮断されるから、インバータ22から電動圧縮機14への給電が遮断される。また、第1リレー24および第2リレー25への低電圧の供給が遮断され、それらの接点が開くから、高電圧バッテリ2からインバータ22および電動圧縮機14への給電が遮断される。この結果、導体14aへの給電が停止される。よって、コネクタ30が分離状態におかれているとき、導体14aに高電圧が供給される可能性はきわめて低い。つまり、導体14aが活線状態とならない。
【0040】
図3は、第1実施形態の電気機器としての室外機8を示す一部分解斜視図である。室外機8は、シャーシ11と、シャーシ11上に配置された部品とを備える。シャーシ11上には、回路容器12、凝縮器ユニット13、電動圧縮機14、および他の部品群15が搭載され、固定されている。回路容器12は、制御装置21、インバータ22、および周辺の電気部品を収容する容器である。凝縮器ユニット13は、凝縮器と送風機とを備えることができる。電動圧縮機14は、冷媒を圧縮し冷凍サイクル装置6内を循環させるための圧縮機構と、圧縮機構を駆動するモータとを一体的に構成したものである。電動圧縮機14の一部には、インバータ22とモータとを接続するための導体14aが接続された端子部分が設けられている。電動圧縮機14は、高電圧バッテリ2から給電される高電圧部品である。電動圧縮機14は、アルミダイカスト製のボディを有している。このため、正常時には導体14aが活線となる可能性がある。また、漏電等の異常時には、電動圧縮機14の全体が活線部分となる可能性がある。他の部品群15には、冷凍サイクル装置6を構成するための配管、アキュムレータ、および電磁弁などの部品が含まれている。
【0041】
シャーシ11には、カバー41、42,43が装着されている。これらカバー41、42、43は、電気絶縁性の樹脂製である。これらカバー41、42、43は、爪による連結構造、および/またはボルトによる締結構造によってシャーシ11に固定されている。これらカバー41、42、43は、回路容器12、凝縮器ユニット13、電動圧縮機14、および他の部品群15を覆うことができる大きさをもつ。右側のカバー41は、主として回路容器12の周辺を覆う。中央のカバー42は、主として凝縮器ユニット13の周辺を覆う。左側のカバー43は、少なくとも電動圧縮機14の導体14aを覆っている。この実施形態では、カバー43は、主として電動圧縮機14と他の部品群15との周辺を覆う。よって、カバー43は、高電圧部品を覆うカバーである。
【0042】
図示されるように、カバー41およびカバー42は、室外機8の保守作業のために、取り外すことができる。これらカバー41およびカバー42は、特別の操作を要することなく、連結構造、および/または締結構造を解放することによって取り外すことができる。
【0043】
シャーシ11には、第1ケーブル29が敷設されている。第1ケーブル29は、シャーシ11上に直接的に、または間接的に固定されている。第1ケーブル29は、シャーシ11上の右端に配置された回路容器12から延び出している。第1ケーブル29は、凝縮器ユニット13の下側を通って敷設されている。第1ケーブル29は、凝縮器ユニット13の左端部分において、シャーシ11に直接的に、または間接的に、容易に外すことができないように強固に固定されている。第1ケーブル29は、ナイロン製のケーブルタイ16などの固定部材によってシャーシ11上に強固に固定することができる。
【0044】
第1ケーブル29は、ケーブルタイ16による固定部分から、さらに延び出している。第1ケーブル29の端部は、カバー43の下側の壁の外面にまで到達している。第1ケーブル29の端部には、コネクタ30が設けられている。
【0045】
コネクタ30は、カバー43の下側の壁に支持されている。コネクタ30は、カバー43の外側に配置されている。カバー43の下側の壁には、コネクタ30を固定するための固定手段としての固定部44が設けられている。固定部44は、カバー43の下側の壁の外面に形成されている。よって、コネクタ30は、下側の壁の外面に固定されている。この実施形態では、コネクタ30の第2部材32が固定部44に嵌合している。固定部44は、第2部材32を容易に外すことができないように、強固に第2部材32を保持している。一方、第1部材31は、第2部材32に接続されている。よって、固定部44は、第1部材31を間接的に支持しているといえる。
【0046】
コネクタ30が接続状態にあるとき、シャーシ11とカバー43とは、第1ケーブル29とコネクタ30とによって接続されている。第1ケーブル29の長さは、カバー43をシャーシ11から引き離すことを阻害する程度の長さに設定されている。よって、コネクタ30が接続状態にあるときにカバー43をシャーシ11から外そうとしても、第1ケーブル29がカバー43の取り外しを阻害する。この結果、導体14aを含む高電圧に充電される可能性がある部分が露出することが回避される。
【0047】
図4は、第1実施形態の電気機器としての室外機8を示す一部分解斜視図である。図中には、カバー41、42が取り外され、さらにカバー43を取り外した状態が図示されている。上述のように、コネクタ30が接続状態にあると、カバー43はシャーシ11から引き離すことができない。そこで、保守作業のためにカバー43をシャーシ11から取り外すときには、まず、コネクタ30を分離状態とする。コネクタ30のロック機構34は、第2部材32を固定部44に嵌合させ固定したままで、操作することができる構成である。作業者は、コネクタ30のロック機構34を操作しながら、第1部材31を軸方向へ引くことにより、第1部材31を第2部材32から分離することができる。第2部材32は、分離状態においても、固定部44によって保持されている。この結果、第1ケーブル29によって阻害されることなく、カバー43をシャーシ11から取り外すことができる。
【0048】
コネクタ30は、低電圧バッテリ4から低電圧部品への電力供給経路に設置された遮断器を提供する。しかも、この遮断器は、カバー43をシャーシ11から取り外すためには、すなわち導体14aを含む電動圧縮機14を露出させるためには、機械的な構造に起因して遮断状態に切換えざるを得ない構造となっている。
【0049】
カバー43を取り外すことにより、電動圧縮機14が露出する。カバー43を取り外すことにより、導体14aを含む端子部が露出する。このとき、コネクタ30が分離状態におかれているから、電動圧縮機14への高電圧供給を制御する制御回路としての制御装置21、インバータ22、およびリレー24、25への電源供給が遮断される。よって、導体14aを含む端子部に高電圧が供給される可能性はきわめて低い。また、漏電を想定したとしても、電動圧縮機14およびその周辺部品に高電圧が供給され充電される可能性はきわめて低い。
【0050】
上述の構成によると、第1ケーブル29とコネクタ30と第2ケーブル33とによって構成される配線部材は、電源ライン28の一部を構成するとともに、カバー43に機械的に連結されている。接続および分離が可能なコネクタ30は、ケーブル29、30の途中に設けられているといえる。ケーブル29およびケーブル33は、全体として、U字型の往復線路を提供している。コネクタ30は、ケーブル29とケーブル33との間の電気的な接続を断続することができる。コネクタ30は、接続状態では、電源ライン28を接続するとともに、配線部材による機械的な連結によりカバー43の取り外しを制限する。また、コネクタ30は、分離状態では、電源ライン28を遮断するとともに、配線部材による機械的な連結を解除することによりカバー43の取り外しを許容する。配線部材の第1ケーブル29の一部は、ケーブルタイ16が提供する固定部によってシャーシ11に固定されている。この部分は、配線部材の第1部分と呼ぶことができる。さらに、配線部材の上において第1部分(ケーブルタイ16による固定部分)から所定の長さだけ離れたコネクタ30の第2部材32は、固定部44によってカバー43に固定されている。この第2部材32は、配線部材の第2部分と呼ぶことができる。
【0051】
この実施形態によると、電動圧縮機14の全体を露出させるためにカバー43を取り外す場合には、必ずコネクタ30を分離状態とする必要がある。このため、電動圧縮機14への高電圧供給を確実に遮断することができる。
【0052】
また、コネクタ30は、低電圧バッテリ4から低電圧部品への給電経路に配置されているから、低電圧のコネクタ30を操作するだけで、保守作業を実施することができる。つまり、高電圧バッテリ2から高電圧を供給される可能性のある電気部品を操作することなく保守作業を実施することができる。
【0053】
また、コネクタ30を使用して高電圧供給を遮断することができるから、安価な装置を提供することができる。
【0054】
(第2実施形態)
図5は、本発明を適用した第2実施形態に係る電気機器を示す一部分解斜視図である。上記実施形態では、第1ケーブル29とコネクタ30とによってシャーシ11とカバー43とを連結し、カバー43の取り外しを制限した。これに代えて、この実施形態では、第1ケーブル29とコネクタ30と第2ケーブル33とによってシャーシ11とカバー43とを連結し、カバー43の取り外しを制限する。カバー43は、第2ケーブル33の端部を固定する固定手段としての固定部244を備える。コネクタ30の第1部材31と第2部材32とを分離状態とすることにより、カバー43は、第1ケーブル29および第2ケーブル33によって制限されることなく、シャーシ11から取り外すことが可能となる。
【0055】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0056】
例えば、上記カバー41、42、43は、単一のカバーを構成するように一体化してもよい。この場合、単一のカバーにコネクタ30が固定される。また、コネクタ30を、直列接続された複数のコネクタに置き換え、カバー41、42、43のそれぞれにひとつのコネクタを設けてもよい。この場合、いずれかひとつのコネクタが分離状態となると、高電圧の供給が遮断される。
【0057】
また、上記実施形態では、高電圧バッテリ2の正極端子とインバータ22との間にのみ第1リレー24および第2リレー25を設けた。これに加えて、高電圧バッテリ2の負極端子とインバータ22との間にも、第1リレー24および第2リレー25に連動するリレーを設けてもよい。これにより、高電圧バッテリ2とインバータ22との間を完全に遮断することができる。このため、室外機8の保守作業において高電圧が充電された部位を含む活線が露出する可能性をきわめて低くすることができる。
【0058】
また、固定部44、244は、ケーブルタイ、ボルトなどの固定手段によって提供されてもよい。
【0059】
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
2 高電圧バッテリ
3 駆動装置
4 低電圧バッテリ
5 荷室
6 冷凍サイクル装置
7 室内機
8 室外機
11 シャーシ
12 回路容器
13 凝縮器ユニット
14 電動圧縮機
14a 導体
15 他の部品
16 ケーブルタイ
21 制御装置
22 インバータ
23 ヒューズ
24 第1リレー
25 第2リレー
26 抵抗器
27 コンデンサ
28 電源ライン
29 第1ケーブル
30 コネクタ
31 第1部材
32 第2部材
33 第2ケーブル
41 カバー
42 カバー
43 カバー
44 嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧バッテリから給電される高電圧部品(14)と、
前記高電圧部品を覆うカバー(43)と、
低電圧バッテリから電源ライン(28)を経由して給電され、前記高電圧部品への高電圧の給電を制御する低電圧部品(21、22、24、25)と、
前記電源ラインの一部を構成するとともに、前記カバーに機械的に連結された配線部材(29、30、33)とを備え、
前記配線部材は、
前記電源ラインの一部を構成するケーブル(29、33)と、
前記ケーブルの途中に設けられ接続および分離が可能なコネクタであって、
接続状態では前記電源ラインを接続するとともに、前記配線部材による前記機械的な連結により前記カバーの取り外しを制限し、
分離状態では前記電源ラインを遮断するとともに、前記配線部材による前記機械的な連結を解除することにより前記カバーの取り外しを許容するコネクタ(30)とを備えることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記高電圧部品(14)、前記低電圧部品(21、22)、および前記カバー(43)が固定されるシャーシ(11)と、
前記配線部材(29、30、33)の第1部分(29)を前記シャーシに固定する固定部(16)と、
前記配線部材の上において前記第1部分から所定の長さだけ離れた前記配線部材の第2部分(32、33)を前記カバーに固定する固定部(44)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記コネクタは、前記カバーの外側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記低電圧部品は、前記高電圧部品への高電圧の給電を制御するインバータ(22)を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電気機器。
【請求項5】
前記低電圧部品は、前記インバータを制御する制御装置(21)を備えることを特徴とする請求項4に記載の電気機器。
【請求項6】
前記低電圧部品は、前記高電圧部品への高電圧の給電を制御するリレー(24、25)を備えることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の電気機器。
【請求項7】
前記低電圧部品は、前記リレーを制御する制御装置(21)を備えることを特徴とする請求項6に記載の電気機器。
【請求項8】
前記コネクタ(30)は、前記ケーブル(29)に接続された第1部材(31)と、前記第1部材に対して接続および分離が可能な第2部材(32)とを備え、
前記カバーは、前記第2部材を固定する固定部(44)を備えることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の電気機器。
【請求項9】
前記ケーブル(29、33)は、第1ケーブル(29)と第2ケーブル(33)とを備え、
前記コネクタは、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとの間に設けられており、
前記カバーは、前記第2ケーブルを固定する固定部(244)を備えることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の電気機器。
【請求項10】
前記高電圧部品は、電動圧縮機であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−183872(P2012−183872A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46871(P2011−46871)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】