説明

電気機械

【課題】固定子のMMF高調波が存在すると、力が不均衡になってトルクリップルが生じる。トルクリップルによる機械の損失を低減すること。
【解決手段】永久磁石機10は、固定子コア18と、複数の固定子歯20と、この固定子コアに結合された複数の固定子巻線24とから成る固定子12を含む。固定子は、固定子巻線が電流で励磁されると固定子の回転磁場が発生するように構成される。固定子の回転磁場は、同期分調波成分と超調波成分の両方を含む。永久磁石機は更に、固定子内に配置された回転子14も含む。回転子は、回転子コア26と、この回転子コアに結合された複数の回転子磁石32から成る。更に、この回転子磁石は、固定子巻線が電流で励磁されると、分調波及び超調波回転磁場が回転子磁場内に発生するような、所定の配向プロファイルを有するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に提示する実施形態は、概して電気機械に関し、特に、各コイルが単一の固定子歯に巻回された複数の分数スロット集中巻線を有する永久磁石機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば分数スロット集中巻線を有する永久磁石等の電気機械は一般に、複数のスロットを設けたコアを有する固定子を含む。固定子のスロットには、複数の巻線が巻回されている。固定子内には回転子が配置され、この回転子は複数の永久磁石を含む。機械の動作は大抵、実質的に回転子にトルクを発生する、固定子巻線への電流の注入を含む。
【0003】
このような機械の利点のひとつが、平滑なトルクが発生することである。電気機械の別の利点は、障害許容力がより高く、障害がある状態であっても機械が動作可能なことにある。固定子巻線が励磁すると、固定子の周囲に磁場が誘導される。この磁場は、高い起磁力(MMF)の長波を生じる。機械の動作時に、高いMMF調波を伴った固定子の周囲に誘導される磁場は、回転子の周囲の磁場と相互に作用する。固定子のMMF高調波が存在すると、力が不均衡になってトルクリップルが生じるため、機械に損失が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7564158号明細書
【発明の概要】
【0005】
改良型の電気機械が必要である。
【0006】
本発明の一実施形態により、永久磁石機を提供する。この永久磁石機は、固定子コアと、複数の固定子歯と、固定子コアに結合された複数の固定子巻線とから成る固定子を備える。この固定子は、同期調波成分及び分調波成分を含む電流で固定子巻線が励磁されると、固定子の回転磁場を発生するように構成される。固定子の回転磁場は、同期分調波成分と超調波成分の両方を含む。永久磁石機は更に、固定子内に配置された回転子も含む。回転子は、回転子コアと、回転子コアに結合された複数の回転子磁石を含む。回転子磁石は更に、固定子巻線が同期調波成分及び分調波成分を含む電流で励磁されると、分調波及び超調波回転磁場が回転子磁場内に発生するような所定の配向プロファイルを有するように構成される。固定子の分調波及び超調波回転磁場は、回転子の分調波及び超調波回転磁場と相互作用して、永久磁石機内に補助トルクを生成する。
【0007】
本発明の別の実施形態により、永久磁石機の動作方法を提供する。本方法は、電力を所定の位相シーケンスで永久磁石機の複数の固定子巻線に供給して、固定子を用いて固定子の分調波及び超調波回転磁場を発生するステップを含む。また、所定の位相シーケンスの電流を用いて、回転子を介して回転子の分調波及び超調波回転磁場を発生する。固定子の分調波及び超調波回転磁場と、回転子の分調波及び超調波回転磁場は、相互に作用して、回転子に補助トルクを誘導する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例による、例示的回転子磁石配置を有する永久磁石機の断面図である。
【図2】本発明の一実施例による永久磁石機内の固定子の三次元図である。
【図3】本発明の一実施例による、例示的回転子磁石配置を有する回転子の断面図である。
【図4】従来の10極回転子磁石配置の模式図である。
【図5】本発明の一実施例による2極回転子磁石配置の模式図である。
【図6】本発明の一実施例による10極及び2極回転子磁石配置の模式図である。
【図7】本発明の一実施例による、固定子の磁場内にある高調波の次数と、複数の固定子の巻線関数とを対比したグラフである。
【図8】本発明の一実施例による、例示的回転子磁石の模式図である。
【図9】本発明の一実施例による、例示的回転子磁石配置を有する永久磁石機の断面図である。
【図10】図9の実施形態による例示的回転子磁石配置の模式図である。
【図11】本発明の一実施例による例示的回転子磁石配置の模式図である。
【図12】本発明の一実施例による、固定子巻線に沿った時間に対する三相電流の流れを表すグラフである。
【図13】本発明の一実施例による、固定子巻線に沿った時間に対する三相電流の流れを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
全図面を通して同一の符号で同一の部分を表す添付図面を参照して以下の詳細な説明を読めば、本発明の上記及びその他の特徴、態様、及び利点が、より明解になるであろう。
【0010】
以下に詳細に記載するように、本発明の実施形態は、永久磁石機及びその動作方法に関する。本発明の一実施形態により、永久磁石機を提供する。この永久磁石機は固定子を備え、固定子は、固定子コアと、複数の固定子歯と、固定子コアに結合された複数の固定子巻線とから成る。固定子は、固定子巻線が多相電流で励磁されると固定子の磁場を発生するように構成される。永久磁石機は更に、固定子内の空洞に配置された回転子を含む。この回転子は、回転子コアと、回転子コアに結合された複数の回転子磁石とを含む。回転子磁石は、固定子の磁場と相互作用してトルクを生成する回転磁場を発生するように構成される。回転子磁石は、固定子巻線が多相電流で励磁されると固定子及び回転子磁場内に分調波及び超調波回転磁場が発生するような所定の配向プロファイルを有する。多相電流は、同期調波成分と超調波成分を含む。固定子の分調波及び超調波回転磁場と、回転子の分調波及び超調波回転磁場は、相互に作用して回転子内に補助トルクを生成する。補助トルクは更に、固定子の磁場の分調波及び超調波回転磁場のトルク遅延作用を打ち消すように作用する。
【0011】
図1は、固定子12と、固定子12内の空洞16内部に配置された回転子14とを有する、永久磁石機10の断面図である。図示の実施形態では、永久磁石機10が、分数スロット集中永久磁石機を含む。固定子12は更に、固定子歯20と複数の固定子スロット22とを有する固定子コア18を含む。固定子コア18は更に、固定子歯20に巻回された複数の固定子巻線24を含む。一実施形態では、複数の固定子巻線24が銅線コイルから成る。
【0012】
図示の本実施形態では、回転子14が、回転子コア26と、軸30を中心に回転する回転子シャフト28とを含む。回転子コア26は更に、回転子コア26の外周34に沿って配置された複数の回転子磁石32を含む。更なる実施形態では、回転子磁石32が、所定の配向プロファイルを有し、回転子コア26の外周34に沿って配置される。回転子磁石32の配向プロファイルについては、添付図面を参照して更に詳説する。回転子磁石32は、固定子12と回転子14との間の空隙に磁場を生成するように構成される。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、固定子コア18に結合された複数の固定子巻線24に多相電流を供給することによって、永久磁石機10が作動する。当業者に周知のように、分数スロット集中巻線機では、固定子スロット22の数は回転子磁石32の数と同じではない。
【0014】
一実施形態では、複数の固定子巻線24が多相電流によって励磁されると、固定子12の周囲に磁場が発生する。固定子12の周囲の磁場は、回転子14内に同期トルクを誘導する。永久磁石機10の定常動作時、回転子磁石32は同期トルクによって生ずる回転磁場とロックインし、永久磁石機は同期化されると言える。
【0015】
本発明の一実施形態によると、複数の固定子巻線24は、同期調波成分と分調波成分の両方を含む多相電流によって励磁される。この励磁の結果、固定子12の周囲に発生する磁場は、分調波成分と超調波成分の回転磁場を含む。これら分調波と超調波の回転磁場が固定子の磁場内に存在するため、回転子の通常の回転磁場と同期しない、或る一定の回転磁場が生成される。固定子の磁場内のこれら分調波と超調波の回転磁場は、永久磁石機10の動作中に振動損失及び電磁損失を引き起こす。本発明の実施形態によると、回転子コア26の周囲34に沿って配置された所定の配向プロファイルを有する回転子磁石32が存在することにより、固定子12と回転子14との間の空隙に、磁場が発生する。回転子磁石32のこの所定の配向プロファイルにより、回転子の磁場内に分調波及び超調波回転磁場が発生する。回転子の磁場内に発生するこれらの分調波及び超調波の回転磁場は、固定子の磁場内にある分調波及び超調波の回転磁場の作用を打ち消す役割を果たす。永久磁石機10の動作中、固定子の磁場の分調波及び超調波の回転磁場と回転子の磁場の分調波及び超調波の回転磁場とが相互に作用して、永久磁石機10内に生成される同期トルク以外のトルクが生成される。この付加的なトルクは「補助」トルクの役割を果たし、永久磁石機10の効率と速度を高める。付加的なトルクは更に、固定子の磁場の分調波及び超調波の回転磁場のトルク遅延作用を打ち消す役割も果たす。
【0016】
図2は、固定子12の三次元図を示す。前述のように、固定子12は、固定子歯20と複数の固定子スロット22とを有する固定子コア18を含む。固定子コア18は更に、固定子歯20に巻回された複数の固定子巻線24を含む。図示の実施形態では、複数の固定子巻線24が複数のコイル23を含み、各コイル23が、固定子歯20のうちの対応する歯に巻回されている。
【0017】
図3は、所定の配向プロファイルを有する複数の回転子磁石32を有する、回転子14の断面図である。図示の実施形態では、回転子コア26の周囲34が、1つの半部40と別の半部42から成る。回転子磁石32は、1つの極性36の磁石が回転子コア26の周囲34の1つの半部40に沿って配置され、反対の極性38の回転子磁石32が、周囲34の別の半部42に沿って配置されるように、回転子コア26の周囲34に沿って配置されている。1つの半部40は、回転子コア26の周囲34に沿って、例えば0°〜180°との間に延在している。別の半部42は、回転子コア26の周囲34に沿って、例えば180°〜360°との間に延在している。一実施形態では、N極の磁石32は、回転子コア26の周囲34の1つの半部40に沿って配置され、S極の回転子磁石32は、周囲34の別の半部42に沿って配置される。別の実施形態では、磁石32を逆の極性で配置する。
【0018】
図4は、従来の10極回転子配置48の模式図である。N極の複数の回転子磁石50とS極の複数の回転子磁石52とから成る10極回転子配置48が、回転子コアの周囲に沿って交互に構成されている。より具体的には、図示した従来配置では、N極の3つの回転子磁石50と、S極の2つの磁石52とが、回転子コアの両方の半部に沿って交互に配置されている。このような回転子磁石配置48の結果、或る一定の高調波回転磁場が回転子の磁場内に発生する。この回転子磁石配置48によって発生する高調波磁場は、複数の固定子巻線が多相電流で励磁される際に固定子磁場内に存在する分調波及び超調波回転磁場のトルク遅延作用を打ち消すことができない。この回転子磁石配置48によって発生する高調波磁場には、固定子の磁場内に存在する分調波及び超調波回転磁場を打ち消すことができる、さしたる高調波が無い。
【0019】
図5は、本発明の一実施例による2極回転子配置54の模式図である。2極回転子配置54は、回転子コアの1つの半部に沿って配置されたN極の1つの回転子磁石56と、回転子コアの別の半部に沿って配置されたS極の別の回転子磁石58とを含む。図3に示した前述の実施形態と同様に、回転子磁石54及び56は、18°の角度だけ離間している。このような所定の回転子磁石配置54は、回転子の磁場内に分調波及び超調波回転磁場を発生する。
【0020】
図6は、本発明の一実施例による回転子磁石32の所定の配置の模式図である。図示の実施形態において、回転子磁石32の所定の配置は、10極及び2極の回転子磁石配置を組み合わせたものである。回転子磁石32の所定の配置は、回転子の周囲の1つの半部に沿って配置された1つの極性36の回転子磁石と、周囲の別の半部に沿って配置された、逆の極性38の回転子磁石とから成る。この所定の配置は更に、相互に隣接する回転子磁石32の間に18°の空隙を含んでいる。図示の実施形態では、N極の回転子磁石36を、相互の間に18°の空隙を有して配置されるものとして示している。また、S極の磁石38を、相互の間に18°の空隙を有して配置されるものとして示している。或る実施形態では、磁石間の空隙は17°〜19°の範囲にある。磁石32のこの所定の配置により、固定子の磁場内に存在する分調波及び超調波回転磁場を打ち消すことができる分調波及び超調波回転磁場を、回転子の磁場内に発生させる。
【0021】
図7は、永久磁石機の巻線関数の高調波スペクトル60のグラフである。x軸は固定子の磁場内に存在する高調波の次数を表し、y軸は複数の固定子巻線の巻数関数を表している。図示の実施形態では、1次、3次、5次、7次、9次、及び11次の調波61、65、64、66、67、69を、固定子の磁場内の支配的な調波62として示している。図示の実施形態では、永久磁石機は、複数の固定子巻線が多相電流で励磁され、磁場が固定子の周囲に発生すると7次調波66で動作する10極12スロット機である。
【0022】
このような実施形態では、5次調波64は同期トルク生成成分である。1次及び3次調波61及び65は、分調波とよばれ、7次、9次、11次調波66、67、及び69は、超調波とよばれる。このような実施形態では、11次調波69は、永久磁石機内に生成されるトルクへの補助作用を有し、1次、7次、及び9次調波61、66、67は、永久磁石機内に生成されるトルクと相反する作用を有する。グラフから、5次分調波64は7次基本調波66と比較してマグニチュードが大きく、前者は同期トルク生成成分であることがわかる。従来の機械では、この5次分調波64は、複数の固定子巻線が多相電流によって励磁されると、回転子磁場と同期しない回転磁場を発生するので、永久磁石機内に振動損失及び電磁損失を生じる。図7に示すように、固定子の磁場は、概ね正弦波パターン62を辿る。従来の機械では、固定子コイルの分布、又は固定子スロット内の巻線の幾何学的影響により、回転子と固定子の間の空隙内の磁場の分布が変形し、回転子の磁場と同期しない分調波及び超調波回転磁場が生成される。これらの分調波及び超調波回転磁場により、永久磁石機に振動損失と電磁損失が生じる。
【0023】
本発明の実施形態によると、固定子の磁場に関連する分調波及び超調波回転磁場のトルク遅延作用は、回転子の磁場内に分調波及び超調波回転磁場を誘導することによって除去できる。例えば、図1、3、5、及び6を参照して本明細書で説明する回転子磁石の配置は、固定子の磁場内の5次分調波64のマグニチュードと同様の調波回転磁場を回転子の磁場内に発生する。回転磁場内のこれらの高調波回転磁場は、複数の固定子巻線24が多相電流によって励磁されると、固定子12の回転磁場内に存在する分調波及び超調波回転磁場のトルク遅延作用を打ち消す役割を果たす。
【0024】
図8は、本発明の別の実施例による回転子14の断面図である。前述の実施形態と同様に、固定子の空洞内部に回転子14を配置する。図示の実施形態では、回転子14が、層板積層体68を有する回転子コア26を含む。回転子磁石32は、回転子コア26内の層板積層体68の間に配置されるか、層板積層体68内に埋設される。
【0025】
図9は、本発明の一実施例による永久磁石機70の断面図である。機械70は、固定子72と、固定子72内の空洞75内部に配置された回転子74とを含む。固定子72は、固定子歯78と複数の固定子スロット80とを有する固定子コア76を含む。固定子コア76は更に、固定子歯78に巻回された複数の固定子巻線82を含む。図示の実施形態では、回転子74が、回転子コア84と、軸88を中心に回転する回転子シャフト86とを含む。回転子コア84は更に、回転子コア84の周囲に沿って配置された複数の回転子磁石90を含む。回転子コア84の周囲92に沿って0°〜180°の間に延在する1つの半部を、参照番号94で示す。回転子コア84の周囲92に沿って180°〜360°の間に延在する別の半部を、参照番号96で示す。回転子磁石90は、固定子72と回転子74との間の空隙内に磁場を生成するように構成される。
【0026】
図示の実施形態では、回転子コア84の周囲92に沿って配置された所定の配向プロファイルを有する回転子磁石90があるために、固定子72と回転子74との間の空隙に磁場が発生する。図示の実施形態では、N極98とS極100の回転子磁石90が交互に位置するように、回転子磁石90が回転子コア84の周囲92に沿って配置されている。回転子磁石90は、複数の連続する正の正弦波プロファイル(図示せず)を概ね形成するように、回転子コアの周囲92に沿って配置されている。回転子コア84の周囲92に沿った回転子磁石90の所定の配置は、回転子の磁場内に分調波及び超調波回転磁場を発生する。回転子の磁場内に発生するこれらの分調波及び超調波の回転磁場は、固定子の磁場内に存在する同様の回転磁場の作用を打ち消す役割を果たし、その結果、付加的なトルクが発生する。この付加的なトルクは補助トルクの役割を果たし、永久磁石機70の効率と速度を高める。
【0027】
図10は、図9の実施形態による回転子磁石90の所定の配置の断面図である。図示の実施形態では、回転子磁石90が、複数の連続する正の正弦波プロファイル102を概ね形成するように回転子コアの周囲92に沿って配置されている。回転子磁石90の成形は、tは回転子磁石の厚さであり、a1及びb1は定数であり、θは0°〜180°の範囲にわたる回転子コア84の周囲92の部分94を横切る機械的後退角であるとき、回転子コア84の周囲92の1つの部分94に沿って配置された各磁石の厚さが、関係式t=(a1+b1×sinθ)によって概ね定められるように行われる。a1及びb1の値は定数であり、永久磁石機70の設計パラメータに依存する。
【0028】
更に、回転子磁石90の成形は、tが回転子磁石の厚さであり、a1及びb1が定数であり、θが180°〜360°の範囲にわたる回転子コア84の周囲92の部分96を横切る機械的後退角であるとき、回転子コア84の周囲92の別の部分96に沿って配置された各磁石の厚さが、関係式t=(a1−b1×sinθ)によって概ね定められるように行われる。この場合も、a1及びb1の値が定数であり、永久磁石機70の設計パラメータに依存する。N極の磁石98とS極の磁石100とは、回転子コア84の周囲92に沿って交互に配置されている。
【0029】
図11は、本発明の別の実施例による回転子74の断面図である。前述の実施形態と同様に、固定子の空洞内部に回転子74が配置されている。図示の実施形態では、回転子74が、層板積層体114を有する回転子コア76を含む。回転子磁石90は、回転子コア76内の層板積層体114の間に配置されるか、又は層板積層体内114に埋設される。
【0030】
図示の実施形態では、回転子磁石90が、複数の連続する正の正弦波プロファイル102を概ね形成するように、回転子コア76の層板積層体114の間に配置されるか、層板積層体114内に埋設される。N極の回転子磁石98とS極の回転子磁石100は、回転子コア76の層板積層体114の間に交互に配置されるか、層板積層体114内に埋設される。
【0031】
図12は、永久磁石機の固定子巻線内での三相電流の流れを表すグラフである。x軸はミリ秒単位の時間104を表し、y軸は特定の周波数を有する電流106をアンペアで表している。電流106は、同期調波成分を有する三相電流である。この電流106は、「第1の所定の位相シーケンス」ともよばれる位相シーケンスABCで固定子巻線に供給される。ここで、A位相108は第1の位相を表し、B位相110は第2の位相を表し、C位相112は電流106の第3の位相を表す。図示の実施形態では、A位相108がB位相110に先行し、B位相がC位相112に先行しており、各位相間の位相角は120°である。固定子巻線がこのような電流106によって励磁されると、固定子の磁場内に同期回転磁場が発生する。前述のように、固定子の磁場内の同期回転磁場は、回転子の磁場内の同様の回転磁場と相互作用する。固定子と回転子の同期回転磁場の相互作用は、永久磁石機内に同期トルクを生成する。
【0032】
図13は、永久磁石機の固定子巻線内の三相電流の流れを表すグラフである。x軸はミリ秒単位の時間116を表し、y軸は特定の周波数を有する電流118をアンペアで表す。電流118は、分調波成分を有する三相電流である。この電流118は、「第2の所定の位相シーケンス」ともよばれる位相シーケンスACBで固定子巻線に供給され、A位相108は電流118の第1の位相を表し、C位相112は電流118の第2の位相を表し、B位相110は電流118の第3の位相を表している。図示の実施形態では、A位相108がC位相112に先行し、C位相112がB位相110に先行しており、各位相間の位相角が120°である。固定子巻線がこのような電流118によって励磁されると、これらの巻線は固定子の磁場内に分調波及び超調波回転磁場を生成する。前述のように、固定子の磁場内のこれらの分調波及び超調波回転磁場は、前述の実施形態で記載したように、回転子磁石の所定の配向プロファイルにより、回転子で生成される回転子の磁場内の同様の分調波及び超調波回転磁場と相互作用する。固定子と回転子の分調波及び超調波回転磁場の相互作用は、永久磁石機内に付加的な補助トルクを生成する。
【0033】
別の実施形態によると、図12及び図13に示す両方の電流106及び118の重畳によって、永久磁石機の固定子巻線内に注入される多相電流内に同期調波成分と分調波成分の両方を含めることが可能になる。なお、「重畳」という用語は、2つの電流106と118の加算を意味する。両方の電流106と118との間の位相シーケンスによって、これらの両方の電流によって生成されるトルクが相反せず、相補する方向に作用することが確実になる。同期調波成分と分調波成分の両方を含むこのような電流を注入すると、固定子の磁場内に同期回転磁場と高調波回転磁場の両方が発生する。前述の実施形態で記載した固定子の同期回転磁場及び高調波回転磁場と、回転子の同期回転磁場及び高調波回転磁場との相互作用により、永久磁石機内に同期トルクと付加的な補助トルクの両方が生成される。この付加的なトルクは、補助トルクとして作用し、永久磁石機の全体的効率と速度とを高める。
【0034】
図12及び13を参照すると、永久磁石機械の固定子巻線に注入された電流106及び118の各々が、2つの位相シーケンスを含んでおり、その1つはABCであり、もう1つはACBである。第1の所定の位相シーケンスABCでは、A位相108がB位相110に先行し、B位相がC位相112に先行し、各々の位相間の位相角が120°である。同様に、第2の所定の位相シーケンスACBでは、A位相108がC位相112に先行し、C位相112がB位相110に先行し、各々の位相間の位相角は120°である。
【0035】
第1の所定の位相シーケンスABCの場合、電流106の位相A108内の位相電流A1は、I1が固定子巻線に注入された電流A1の同期成分のマグニチュードであり、f1が電流A1の同期成分の周波数であり、θ1が固定子巻線に注入された電流A1の同期成分の位相角であるとき、方程式A1=I1×sin(2π×f1+θ1)によって表される。第2の所定の位相シーケンスABCの場合、電流118の位相A108内の位相電流A2は、I2が固定子巻線に注入された電流A2の分調波成分のマグニチュードであり、f2が電流A2の同期成分の周波数であり、θ2が固定子巻線に注入された電流A2の分調波成分の位相角であるとき、方程式A2=I2×sin(2π×f2+θ2)によって表される。巻線に注入される全電流は、2つの位相電流の総和、即ちA1+A2である。
【0036】
同様に、第1の所定の位相シーケンスABCの場合、位相B110内の電流106の位相電流B1は、I1が固定子巻線に注入された電流B1の同期成分のマグニチュードであり、f1が電流B1の同期成分の周波数であり、θ1が固定子巻線に注入された電流B1の同期成分の位相角であるとき、方程式B1=I1×sin(2π×f1+θ1−2π/3)によって表される。第2の所定の位相シーケンスACBの場合、位相B110内の電流118の位相電流B2は、I2が固定子巻線に注入される電流B2の分調波成分のマグニチュードであり、f2が電流B2の分調波成分の周波数であり、θ2が固定子巻線に注入される電流B2の分調波成分の位相角であるとき、方程式B2=I2×sin(2π×f2+θ2−2π/3)によって表される。巻線に注入される全電流は、2つの位相電流の総和、即ちB1+B2である。
【0037】
同様に、第1の所定の位相シーケンスABCの場合、位相C112内の電流106の位相電流C1は、I1が固定子巻線に注入された電流C1の同期成分のマグニチュードであり、f1が電流C1の同期成分の周波数であり、θ1が固定子巻線に注入された電流C1の同期成分の位相角であるとき、方程式C1=I1×sin(2π×f1+θ1+2π/3)によって表される。第2の所定の位相シーケンスACBの場合、位相C112内の電流118の位相電流C2は、I2が固定子巻線に注入された電流C2の分調波成分のマグニチュードであり、f2が電流C2の分調波成分の周波数であり、θ2が固定子巻線に注入された電流C2の分調波成分の位相角であるとき、方程式C2=I2×sin(2π×f2+θ2+2π/3)によって表される。巻線に注入される全電流は、2つの位相電流の総和、即ちC1+C2である。
【0038】
両方の電流106及び118の重畳と、電流106の位相電流A1、B1、C1と電流118の位相電流A2、B2、C2との間の位相シーケンスによって、両方の電流106、108が相反せず、相補する方向に作用することが確実になる。同期調波成分と分調波成分の両方を含む電流106、118の注入により、固定子の磁場内に同期回転磁場と高調波回転磁場の両方が発生する。前述の実施形態で記載したように、固定子の同期回転磁場及び高調波回転磁場と、回転子の同期回転磁場及び高調波回転磁場との相互作用により、永久磁石機内に同期トルクと付加的な補助トルクの両方が生成される。この付加的なトルクは、補助トルクとして作用し、永久磁石機の全体効率と速度を高める。
【0039】
有利には、本発明の各種実施形態により、分数スロット集中巻線ベースの永久磁石機内に必然的に生じる損失が無くなる。加えて、損失を生じる固定子磁場内の分調波回転磁場は、回転子の分調波回転磁場と相互作用して、永久磁石機に付加的なトルクを生成するようになっている。この付加的なトルクによって、永久磁石機が高速で損失を伴わずに効率的に動作可能になる。本発明の各種実施形態によって、改善した電力密度と効率で永久磁石機を動作させることができる。
【0040】
本明細書では本発明の或る一定の特徴を図示及び説明したが、当業者には多くの修正及び改変が想到されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の本質に含まれる、このような修正及び改変を全て網羅することを意図していることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コアと、複数の固定子歯と、前記固定子コアに結合された複数の固定子巻線とから成る固定子と、
回転子コアと、該回転子コアに結合された複数の回転子磁石とから成る、前記固定子内に配置された回転子と、
を備えた装置であって、
同期調波成分と分調波成分とを含む電流が前記複数の固定子巻線に供給されると、前記固定子が固定子分調波及び超調波回転磁場を発生させ、前記回転子の回転が回転子分調波及び超調波回転磁場を発生させるような所定の配向プロファイルを、前記複数の回転子磁石が有し、且つ、前記固定子の分調波及び超調波回転磁場と前記回転子の分調波及び超調波回転磁場とが相互作用して、前記回転子に補助トルクを誘導する、装置。
【請求項2】
前記電流が前記複数の固定子巻線に供給されると、前記固定子が固定子同期回転磁場を発生し、前記回転子が回転子同期回転磁場を発生し、前記固定子同期回転磁場と前記回転子同期回転磁場とが相互作用して、前記回転子に同期トルクを生成し、前記同期トルクに加えて前記回転子に補助トルクが生成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
分数スロット集中永久磁石機から構成され、前記複数の固定子巻線が複数の固定子コイルから構成され、該固定子コイルの各々が、前記複数の固定子歯のうち対応する固定子歯に巻回される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記所定の配向が、前記回転子コアの外周の1つの半部に沿って配置された1つの極性の1セットの回転子磁石と、前記回転子コアの外周の別の半部に沿って配置された逆の極性の別のセットの回転子磁石とを含み、該複数の回転子磁石が互いに17〜19°の範囲の角度で離間している、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記外周の前記1つの半部が前記回転子コアの外周に沿って0°〜180°の角度で延在し、前記外周の前記別の半部が前記回転子コアの外周に沿って180°〜360°の角度で延在する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記回転子コアが複数の回転子積層体を含み、前記複数の回転子磁石が該複数の回転子積層体内に埋設される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記回転子コアの外周に沿って配置され、前記回転子コアの外周に沿って概ね連続する正の正弦波プロファイルを形成する前記複数の回転子磁石によって、前記所定の配向が構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の回転子磁石が1つのセットのS極の磁石と別のセットのN極の磁石とから成り、該1つのセットのS極の磁石が、前記回転子コアの周囲に沿って該別のセットのN極の磁石と交互に配置される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
tが前記回転子磁石の厚さであり、a1及びb1が定数であり、θが0°〜180°の範囲にわたる前記回転子コアの周囲を横切る機械的後退角であるとき、前記回転子コアの周囲の1つの半部に沿って配置された各磁石の厚さが、関係式t=(a1+b1×sinθ)によって概ね定められる、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
θが180°〜360°の範囲にわたるとき、前記回転子コアの周囲の別の半部に沿って配置された各磁石の厚さが、関係式t=(a1−b1×sinθ)によって概ね定められる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記回転子コアが複数の回転子積層体を含み、該複数の回転子積層体内に概ね連続する正の正弦波プロファイルが形成されるように該回転子積層体内に配置された複数の回転子磁石によって、前記所定の配向が構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
固定子コアと、複数の固定子歯と、該固定子コアに結合された複数の固定子巻線とから成る固定子と、
回転子コアと、該回転子コアの周囲に沿って配置された複数の回転子磁石とから成る、前記固定子内に配置された回転子と、
を備えた装置であって、
該複数の回転子磁石が、該回転子コアの周囲の1つの半部に沿って配置された1つの極性の1セットの回転子磁石と、該回転子コアの周囲の別の半部に沿って配置された逆の極性の別のセットの回転子磁石とを含み、該複数の回転子磁石が互いに17〜19°の範囲の角度で離間している、装置。
【請求項13】
前記周囲が、前記回転子コアの外周である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記外周の前記1つの半部が、前記回転子コアの外周に沿って0°〜180°の角度で延在し、前記外周の前記別の半部が、前記回転子コアの外周に沿って180°〜360°の角度で延在する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
固定子コアと、複数の固定子歯と、該固定子コアに結合された複数の固定子巻線とから成る固定子と、
回転子コアと、該回転子コアの周囲に沿って配置された複数の回転子磁石とから成る、前記固定子内に配置された回転子と、
を備えた装置であって、
前記回転子コアの周囲に沿って概ね連続する正の正弦波プロファイルが形成されるように、前記複数の回転子磁石が前記回転子コアの周囲に沿って配置される、装置。
【請求項16】
前記周囲が、前記回転子コアの外周である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記複数の回転子磁石が、1セットのS極の磁石と別のセットのN極の磁石とから成り、前記1セットのS極の磁石と前記別のセットのN極の磁石とが、前記回転子コアの外周に沿って交互に配置される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
tが前記回転子磁石の厚さであり、a1及びb1が定数であり、θが0°〜180°の範囲にわたる前記回転子コアの周囲を横切る機械的後退角であるとき、前記回転子コアの外周に沿って配置された各磁石の厚さが、関係式t=(a1+b1×sinθ)によって概ね定められる、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
θが180°〜360°の範囲にわたるとき、前記回転子コアの外周に沿って配置される各磁石の厚さが、関係式t=(a1−b1×sinθ)によって概ね定められる、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
固定子が、固定子歯と複数の固定子巻線とから成り、回転子が、回転子コアと、該回転子コアの周囲に沿って配置された所定の配向プロファイルを有する複数の回転子磁石とから成る、固定子及び回転子を備えた装置を準備するステップ
と、
所定の位相シーケンスで電力を前記複数の固定子巻線に供給し、前記固定子を用いて固定子分調波及び超調波回転磁場と、前記回転子を用いて回転子分調波及び超調波磁場とを発生させることにより、前記固定子の分調波及び超調波回転磁場と、前記回転子の分調波及び前記超調波回転磁場とが相互作用して、回転子に補助トルクを誘導するステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記所定の位相シーケンスが、第1の位相、第2の位相、及び第3の位相を含み、前記位相の各々が、120°の位相角で相互に離間している、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の所定の位相シーケンスで電力を供給するステップが、相互に作用して前記回転子に同期トルクを生成する、固定子同期回転磁場と回転子同期回転磁場とを発生する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記所定の位相シーケンスが、前記第1の位相と前記第2の位相と前記第3の位相との第2の位相シーケンスを含み、該第2の所定の位相シーケンスで電力を供給すると、前記固定子の分調波及び超調波回転磁場と、前記回転子の分調波及び超調波回転磁場とが発生する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の位相シーケンスの前記第1、第2、及び第3の位相の第1の位相電流のセットと、前記第2の位相シーケンスの前記第1、第2、及び第3の位相の第2の位相電流のセットとを重畳させるステップを更に含む、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−51868(P2013−51868A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−146723(P2012−146723)
【出願日】平成24年6月29日(2012.6.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】