説明

電気治療器のコントローラ

【課題】使用者にとってより使い易く使用感の良い電気治療器とするためのコントローラを提供する。
【解決手段】導子に電圧を印加することにより、被検体の周囲に電界を発生させる、或いは、被検体の局所に電圧を印加する電気治療器の動作を制御するコントローラ1であって、使用者による複数の操作手順での入力に基づいて、電圧、動作時間、及び周波数の少なくとも一つを含む動作条件を設定すると共に、動作条件の設定に際し、複数の操作手順のうち次に操作されるべき操作手順を案内する案内メッセージを表示装置21に表示させる動作条件設定手段2と、動作条件設定手段2によって設定された動作条件に基づいて、導子26,27,28に電圧を印加する動作制御手段3とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気治療器のコントローラに関するものであり、特に、導子に電圧を印加することにより、被検体の周囲に電界を発生させる、或いは、被検体の局所に電圧を印加する電気治療器の動作を制御するコントローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電位治療器、低周波治療器、或いはこれらを複合させた電気治療器が、一般的に使用されている。ここで、電位治療器は、シート状の導子に電圧を印加し、導子の上に座したり横臥した人(被検体)の周囲に電界を発生させる機器である。電界の中に置かれた人の体内に微弱な誘導電流が流れると共に、人体表面の感覚受容器が刺激されることにより、血液循環が促進され、また自律神経系が調整される効果が期待され、不眠症、慢性便秘、肩こり、頭痛の症状を和らげることができると言われている。また、家庭用電位治療器には、シート状の導子に加えて突起型の導子を備え、局所的に電圧を印加することができるものもある。
【0003】
一方、低周波治療器は、パッド型や突起型等の導子を通して、パルス電圧を被検体に局所的に印加するものである。周期的な電気刺激によって筋肉が収縮弛緩を繰り返すことにより、筋肉のポンプ作用で血液循環が促進されると共に、痛みの伝達が抑制され、筋肉のこりや慢性痛を和らげる効果があると言われている。
【0004】
これらの電気治療器は、電圧値、電圧値と出力波形の組み合わせによる出力パタン、動作時間、周波数等の動作条件を、使用者による入力操作で予め設定してから、治療を開始するものが一般的である。
【0005】
上記の従来技術は、公然に実施されているものであり、出願人は、この従来技術が記載された文献を、本願出願時においては知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電気治療器では、動作条件の入力を行うボタンやスイッチ等に、これらによって入力できる動作条件の項目が記されている程度に留まり、入力の手順が分かり難いものであった。そのため、使用に慣れるまでは、使用者は操作マニュアルを参照する必要があり、煩雑であった。特に、電気治療器の使用者には、体調のすぐれない人や高齢者も多いため、入力操作のたびに操作マニュアルのページを繰る必要があることは、大変不便であり、改善が望まれていた。
【0007】
また、従来の電気治療器には、設定された動作条件が表示画面に表示され、入力した動作条件を使用者が表示画面で確認することができるものもある。しかしながら、このような表示画面を備えた従来の電気治療器は、落ち着いた雰囲気でリラックスして治療を受けたいと望む使用者にとって、表示画面の明るさが邪魔なものに感じられることがあるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、使用者にとってより使い易く使用感の良い電気治療器とするためのコントローラの提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる電気治療器のコントローラは、「導子に電圧を印加することにより、被検体の周囲に電界を発生させる、或いは、被検体の局所に電圧を印加する電気治療器の動作を制御するコントローラであって、使用者による複数の操作手順での入力に基づいて、電圧、動作時間、及び周波数の少なくとも一つを含む動作条件を設定すると共に、前記動作条件の設定に際し、複数の前記操作手順のうち次に操作されるべき操作手順を案内する案内メッセージを前記電気治療器の表示装置に表示させる動作条件設定手段と、前記動作条件設定手段によって設定された前記動作条件に基づいて、前記導子に電圧を印加する動作制御手段とを」具備している。
【0010】
「電気治療器」は、被検体の周囲に電界を発生させる電位治療器、被検体の局所にパルス電位を印加する低周波治療器、或いは、これらの複合機とすることができる。また、「導子」は、被検体の周囲に電界を発生させる場合はシート型とすることができ、椅子の座面に敷くサイズや、横臥するための敷布となるサイズに形成することができる。更に、被検体の局所に電圧を印加する場合は、突起型やパッド型とすることができる。
【0011】
「コントローラ」は、ハード構成として、動作条件設定手段及び動作制御手段として機能するプログラムを記憶させる主記憶装置、及び主記憶装置に記憶されたプログラムに従って演算や処理を行う中央処理装置(CPU)を具備する。
【0012】
「動作条件」としては、導子に出力する電圧値、周波数、動作時間、電流値、複数の波形と電圧値との組み合わせによる出力パタン、複数の電圧値と動作時間との組み合わせによる出力パタン等を例示することができる。また、電位治療器と低周波治療器を複合させた機器など、複数種類の治療が可能な電気治療器の場合は、治療の種類を「動作条件」に含めることができる。
【0013】
「表示装置」としては、例えば、液晶ディスプレイ、CRT等を使用することができる。また、表示装置は、コントローラが組み込まれる電気治療器本体の一構成であっても、本体とは別体の構成であっても良い。
【0014】
上記の構成により、本発明によれば、使用者が複数の操作手順で動作条件を入力する際、例えば、「治療の種類を治療選択スイッチで選択して下さい」、「パタンスイッチで出力パタンを設定して下さい」、「タイマスイッチで時間を設定して下さい」など、次に操作されるべき操作手順が表示装置に表示される。これにより、操作マニュアルを参照する必要なく、不慣れな使用者であっても、分かり易く容易な操作で、動作条件を設定することができる。
【0015】
なお、現時点で設定されている動作条件を表示装置に表示させる構成とすれば、動作条件を確認しながら入力を行うことができ、より好適である。
【0016】
また、本発明にかかる電気治療器のコントローラは、上記構成に加え、「照度センサによる周囲環境の照度の検知に基づいて、前記表示装置の画面の明るさを調整する明るさ調整手段を」具備するものとすることができる。
【0017】
「照度センサ」は、周囲環境、すなわち電気治療器が設置されている部屋などの明るさを検知するセンサであり、例えば、フォトダイオード、フォトダイオードとトランジスタが組み合わされたフォトトランジスタ、フォトダイオードと集積回路が組み合わされたフォトICを受光素子としたセンサを使用することができる。また、照度センサは、コントローラが組み込まれた電気治療器本体の一構成であっても、本体とは別体の構成であっても良い。
【0018】
「表示装置の画面の明るさの調整」は、例えば、周囲環境の照度に対して予め閾値を設定しておき、その閾値に基づいて表示装置の画面の輝度値を変化させることによって行うことができる。また、閾値を複数設定することにより、画面の輝度値を微調整することもできる。更に、時間の経過を検知する構成とし、照度センサにより検知された照度が閾値以下の場合に、時間の経過に伴って、画面の輝度値を段階的に低下させる構成とすることもできる。加えて、使用者自身が、閾値の設定を変更することが可能な構成とすることもできる。
【0019】
従来の電気治療器では、使用者の入力により設定された動作条件が、表示装置に表示されるものがある。また、電気治療器では、出力の有無を認識可能な構成とするよう、日本工業規格によって規定されているため、従来の電気治療器には、現在の出力状態を表示装置に表示させる構成としているものも多い。そのため、従来では、電気治療器による治療を受けて、心地よくなった使用者が眠りかけても、明るい画面表示によって眠りが妨げられるという問題があった。
【0020】
上記の構成により、本発明によれば、照明を落としたりカーテンを引くなどして部屋を暗くすれば、照度センサがそれを検知し、自動的に表示装置の画面の輝度値を下げることが可能となる。これにより、電気治療器の使用者は、動作条件の設定時には表示装置の表示によって操作を案内されるという利益を受け、かつ、治療を受ける際には表示装置の画面の明るさに邪魔されることなく、電気治療器による治療を受けながら眠ることができる。また、暗めの落ち着いた環境で、くつろいだ状態で電気治療器による治療を受けることができる。
【0021】
更に、本発明にかかる電気治療器のコントローラは、上記構成に加え、「複数の異なる言語による前記案内メッセージを記憶する記憶装置を更に具備し、前記動作条件設定手段は、前記記憶装置から読み出して前記表示装置に表示させる前記案内メッセージを、使用者による入力に基づいて異なる言語の前記案内メッセージに切り替える」ものとすることができる。
【0022】
「記憶装置」は、ハードディスク、或いは、フレキシブルディスク、CD−R、フラッシュメモリに例示されるリムーバルメディア等、不揮発性の補助記憶装置で構成させることができる。また、上記に例示した記憶媒体を、複数を組み合わせて構成させることもできる。
【0023】
上記の構成により、本発明によれば、異なる言語を母国語とする多様な使用者にとって、動作条件の入力操作が、分かり易く容易なものとなる。なお、案内メッセージに加え、設定された動作条件や電気治療器の現在の状態など、表示装置に表示される全ての内容を、異なる言語に切り替える構成としても良い。
【0024】
また、本発明にかかる電気治療器のコントローラは、「前記動作条件設定手段は、設定された前記動作条件を前記記憶装置に記憶させ、前記動作条件の設定の開始に際し、最後に記憶された前記動作条件を前記記憶装置から読み出して初期値として設定すると共に前記表示装置に表示させる」ものとすることができる。
【0025】
「動作条件を記憶装置に記憶させる」方法は、設定された動作条件を順次記憶させるものであっても、動作条件が設定されるたびに最終的な動作条件を更新するものであっても良い。
【0026】
電気治療器が有効であると言われている症状は、上述のように、肩こりや便秘などの慢性的な症状であり、同一の使用者によって電気治療器が継続的に使用されることが想定される。そして、使用者の症状や好みに合わせていったん動作条件が設定されれば、同じ条件で繰返し治療を受けたいという使用者の要望も多い。従って、上記の構成により、本発明によれば、使用者による動作条件の入力操作に先立ち、前回治療を受けた際の動作条件が表示装置に表示される。これにより、使用者が前回の動作条件を確認することができ、同じ条件で治療を受けたい場合は、動作条件を最初から入力する手間を省略し、簡易な手続きで、速やかに治療を開始することができる。
【0027】
更に、本発明にかかる電気治療器のコントローラは、上記構成に加え、「時間を計測する時間計測手段と、該時間計測手段による計測に基づいて、前記導子に電圧を印加した時間を積算すると共に前記記憶装置に記憶させる動作時間積算手段とを」具備するものとすることができる。
【0028】
動作時間の積算は、例えば、電気治療器全体としての動作時間、電位治療や低周波治療などの治療の種類ごとの動作時間、電圧値や出力パタンごとの動作時間について行うことができる。また、動作時間積算手段によって積算されたデータは、表示装置の画面に表示させたり、プリンタ等を介して印刷させる構成とすることができる。
【0029】
上記の構成により、本発明によれば、電気治療器を動作させた総時間を把握することができ、導子や部品の交換等のメンテナンスを行う時期の参考とし、或いは、電気治療器が正常に動作するかの検査を行う時期の参考とすることができる。これにより、長期間にわたり、電気治療器の安全性を担保して使用することができる。
【0030】
また、治療の種類や出力パタンごとに積算されたデータを、使用者自身が健康管理に役立てることができる。或いは、電気治療器の販売店やメーカーの相談員が、積算された動作時間を参考として、使用者の症状や年齢等に応じた電気治療器の望ましい使用方法について、適切なアドバイスを行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明の効果として、使用者にとってより使い易く使用感の良い電気治療器とするためのコントローラを、提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の最良の一実施形態である電気治療器のコントローラ(以下、単に「コントローラ」という)について、図1乃至図8に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態のコントローラの機能的構成を示すブロック図であり、図2は図1のコントローラが組み込まれた電気治療器本体の概略正面図であり、図3は図1のコントローラによって表示装置に表示される内容を例示する説明図であり、図4乃至図8は図1のコントローラによる処理の流れを説明するフローチャートである。
【0033】
本実施形態のコントローラが適用された電気治療器は、電位治療器と低周波治療器を複合させた家庭用電気治療器であり、電位治療としては、シート型の導子に電圧を印加して被検体の周囲に電界を発生させる「全身治療」と、突起型の導子を通じて局所的に被検体に電圧を印加する「局所治療」が可能な構成とされている。ここで、全身治療では、実効値3000V,6000V,または9000Vの一定値の交流電圧を連続的に出力する三種類の出力パタン、及び、複数の実効値の交流電圧を所定時間ごとに切り替えて出力する複数種類の出力パタンを選択することができる。更に、それぞれの出力パタンについて、20〜60分の動作時間を複数の選択肢の中から選択することができる。また、局所治療は、1500Vの一定値の直流電圧を連続的に出力するものであり、10〜20分の動作時間を複数の選択肢の中から選択することができる。
【0034】
一方、低周波治療では、5〜600Hzの間で周波数を選択し、その一定値の周波数を連続的に出力する複数種類の出力モード、2〜7Hzの周波数を所定時間ごとに切り替えて“たたく”感覚を与える出力モード、及び60〜200Hzの周波数を所定時間ごとに切り替えて“もむ”感覚を与える出力モードの中から、何れかを選択することができる。そして、それぞれの出力モードについて、10〜30分の動作時間を複数の選択肢の中から選択することができ、更に、十数種類の選択肢の中から出力レベル(電流値)の大きさを選択することができる。従って、本実施形態の「治療の種類」(全身治療・局所治療・低周波治療)、「出力パタン」、「出力モード」、「出力レベル」、及び「動作時間」が、本発明の「動作条件」に相当する。
【0035】
コントローラ1は、機能的構成として、図1に示すように、入力スイッチ22を介して行われる使用者による入力に基づいて、複数の操作手順で動作条件を設定すると共に、動作条件の設定に際し次に操作されるべき操作手順を案内する案内メッセージを表示装置21に表示させる動作条件設定手段2と、動作条件設定手段2によって設定された動作条件に基づいて、全身治療用導子26、局所治療用導子27、または低周波治療用導子28に電圧を印加すると共に、電圧の印加を終了する際にブザー29を作動させる動作制御手段3と、照度センサ24による周囲環境の照度の検知に基づいて、表示装置21の画面の明るさを調整する明るさ調整手段4と、時間を計測する時間計測手段5と、時間計測手段5による計測に基づいて、導子に電圧を印加した時間を積算する動作時間積算手段6とを、主に具備している。
【0036】
また、コントローラ1は記憶装置10を具備し、ここに複数の異なる言語による案内メッセージデータ12が記憶されている。また、記憶装置10は、最後に設定された動作条件を最終条件データ13として記憶しており、新たな動作条件が設定されるたびに、動作条件設定手段2によって最終条件データ13の更新が行われる。更に、記憶装置10は、電気治療器の使用を最初に使用してからの総動作時間を、積算時間データ16として記憶しており、新たに電気治療器が使用されるたびに、動作時間積算手段6によって積算時間が算出され、積算時間データ16の更新が行われる。加えて、コントローラ1は、動作条件の設定の際、入力が行われることなく所定時間が経過した場合に、表示装置21の画面を消灯する消灯手段7と、動作制御手段3による制御によって導子26,27,28に出力されている電圧値や波形等を表示装置21に表示させる治療内容表示手段9、及び、時間計測手段5による計測に基づいて、治療の残り時間を算出して表示装置21に表示させる残余時間算出手段8とを具備している。
【0037】
コントローラ1は、図2に示す電気治療器本体30の函型のケーシング31に格納されており、正面の操作パネル32には、コントローラ1の電源をON/OFFするための電源スイッチ33に加えて、使用者の操作によってコントローラ1に対して入力を行うための種々の入力スイッチ22が配設されている。より詳細に説明すると、本実施形態の入力スイッチ22として、治療の種類を選択する治療選択スイッチ22c、全身治療の出力パタンを選択するためのパタンスイッチ22p、低周波治療の出力モードを選択するためのモードスイッチ22m、出力モードが定周波モードの際に周波数を選択するための周波数スイッチ22f、低周波の出力レベルを選択するためのレベルスイッチ22v、全身治療、局所治療、及び低周波治療において動作時間を選択するためのタイマスイッチ22t、設定内容を確定し或いは動作の開始及び中止を指令するためのスタート/ストップボタン22s(以下、単に「Sボタン22s」という)を備えている。
【0038】
更に、ケーシング31内には、表示装置21も格納されており、表示画面21aが操作パネル32の上方、すなわち、入力スイッチ22を操作する使用者にとって視認しやすい位置に配されている。また、ケーシング31の正面には、周囲環境の照度を検知する照度センサ24、及び、全身治療出力端子26a、局所治療出力端子27a、及び低周波治療出力端子28aが設けられている。
【0039】
ここで、全身治療を行う場合は、全身治療出力端子26aにシート型の全身治療用導子26を、局所治療を行う場合は、局所治療出力端子27aに突起型の局所治療用導子27を、低周波治療を行う場合は、低周波治療出力端子28aにパッド型の低周波治療用導子28を、それぞれ差し込む。また、全身治療を行う場合は、床等の接地面の上に絶縁用マットを敷いてから、その上にシート状の全身治療用導子26を敷き重ねる。なお、全身治療用導子26は、樹脂等の絶縁性及び耐湿性に優れた材料で導電体を被覆することにより形成されている。
【0040】
次に、コントローラ1による処理の流れについて、図1及び図3を参照しつつ、主に図4乃至図8を用いて説明する。まず、電源スイッチが「ON」操作されると、表示画面21aに言語選択を促す案内メッセージが表示される(ステップS1)。この案内メッセージは、選択可能な全ての言語で表示させることができ、例えば、日本語の場合、「言語選択をする場合は[S]ボタンを押して下さい」という案内メッセージが表示される。なお、本実施形態では、日本語、中国語、及び英語が選択可能であり、この三カ国語による操作案内メッセージデータ12が予め記憶装置10に記憶されている。
【0041】
時間計測手段5による時間の計測に基づき、5秒以内にSボタン22sが押された場合は(ステップS2においてYes)、Sボタン22sが押された回数に応じて、これ以降に操作条件設定手段2によって記憶装置10から読み出される案内メッセージデータ12の言語が切り替えられる(ステップS3)。一方、5秒以内にSボタン22sが押されなかった場合は(ステップS2においてNo)、日本語が選択される(ステップS4)。
【0042】
その後、表示画面21aに待機画面が表示されると共に、選択された言語で、治療の開始を促す案内メッセージが表示する。以下では、ステップS2及びステップS4を経て、日本語が選択された場合を例示することとし、「治療を開始する場合は治療選択スイッチ[C]を押して下さい」という案内メッセージが表示される(ステップS5)。ここで、治療選択スイッチ22cが押されない場合(ステップS6においてNo)、時間計測手段5による時間の計測に基づいて5分が経過するまでは(ステップS7においてNo)、ステップS6に戻って待機するが、治療選択スイッチ22cが押されることなく5分が経過したと判断されると(ステップS7においてYes)、消灯手段7によって表示画面21aの電源が切られる(ステップS8)。その後は、何れかの入力スイッチ22が操作されない限りは(ステップS9においてNo)、非表示状態がそのまま継続する。一方、何れかの入力スイッチ22が操作された場合は(ステップS9においてYes)、ステップS5に戻り待機画面及び治療開始の案内メッセージが表示画面21aに表示される。
【0043】
治療開始の案内メッセージに応じて、使用者が治療選択スイッチ22cを操作した場合は(ステップS6においてYes)、電気治療器を前回使用した際に最後に設定した動作条件、すなわち、最終条件データ13が記憶装置10から読み出され、動作条件の初期値として設定される(ステップS10)。また、この初期値が表示画面21aに表示されると共に、この条件で治療を行う場合はSボタン22sを押し、別の動作条件を設定する場合は治療選択スイッチ22cを押すようにという、案内メッセージが表示される(ステップS11)。
【0044】
Sボタン22sが押されたときは(ステップS12においてNo)、ステップS23に進み、直ちに最終条件データ13の動作条件で、後述のように治療が開始される。一方、Sボタン22sは押されずに治療選択スイッチ22cが操作されたときは(ステップS12においてYes、ステップS13においてYes)、選択された治療の種類に応じて動作条件を設定するステップS14以降の処理に進む。
【0045】
なお、Sボタン22sも治療選択スイッチ22cも操作されない場合は(ステップS12においてYes、ステップS13においてNo)、ステップS12に戻って操作を待機するが、ステップS7〜S9で例示したように、所定時間の経過に伴い表示画面21aを消灯する処理をここに挿入することもできる。
【0046】
治療選択スイッチ22cの操作によって「全身治療」が選択された場合は(ステップS14においてYes)、図3(a)に例示するように、出力パタンの初期値が設定されて表示画面21aに表示されると共に、別の出力パタンを選択する場合はパタンスイッチ22pを操作し、設定されている出力パタンでよければタイマスイッチ22tを操作するようにという内容の案内メッセージが表示される(ステップS15)。本実施形態では、パタンスイッチ22pを押すごとに、別の出力パタンが設定されて表示画面21aに表示される構成であり(ステップS16においてYes、ステップS17)、タイマスイッチ22tが押されるまでは(ステップS18においてNo)、ステップS16に戻り、パタンスイッチ22pの操作が確認される。
【0047】
タイマスイッチ22tが操作されると(ステップS18においてYes)、出力パタンが確定し、次に、動作時間の設定が行われる。まず、図3(b)に例示するように、動作時間の初期値が設定されて表示画面21aに表示されると共に、別の動作時間を選択する場合はタイマスイッチ22tを操作し、設定されている動作時間でよければ、Sボタン22sを押して治療を開始するようにという内容の案内メッセージが表示される(ステップS19)。そして、タイマスイッチ22tを操作するごとに、別の動作時間が設定されると共に表示画面21aに表示され(ステップS20においてYes、ステップS21)、Sボタン22sが押されるまでは(ステップS22においてNo)、ステップS20に戻ってタイマスイッチ22tの操作が確認される。
【0048】
Sボタン22sが押されると、動作時間が確定し、「全身治療を開始します」という案内メッセージが表示画面21aに表示される(ステップS23)。そして、上記の操作によって設定されている動作条件(出力パタン及び動作時間)に基づき、動作制御手段3によって全身治療用導子26に電圧が印加される(ステップS24)。
【0049】
このとき、現在の出力に関する情報が、治療内容表示手段9によって表示画面21aに表示される(ステップS25)。例えば、本実施形態では、刺激に対する身体の慣れを防止するために、時間の経過に伴い出力する波形を変化させているため、現在出力されている波形の形状を表示画面21aに表示させることができる。また、時間の経過に伴って印加する電圧の大きさを切り替える出力パタンが選択されたときは、現在出力されている電圧の実効値を、表示画面21aに表示させることができる。
【0050】
更に、本実施形態では、時間計測手段5の計測及び設定された動作時間に基づき、残余時間算出手段8によって治療の残り時間が算出され、表示画面21aに表示される(ステップS26)。そして、時間計測手段5の計測に基づき、設定された動作時間分の時間の経過が検知されるまでは(ステップS27においてYes、ステップS28においてNo)、電圧の印加(ステップS24)、治療内容の表示(ステップS25)、及び残り時間の表示(ステップS26)が継続される。
【0051】
ただし、設定した動作時間が経過しなくても、使用者はSボタン22sを押すことにより(ステップS27においてNo)、ステップS29に進み、いつでも治療を中止することができる。すなわち、使用者によってSボタン22sが押された場合、或いは、設定された動作時間の経過が検知された場合は(ステップS27においてYes)、まず、後述の明るさ調整手段4から睡眠モード信号を受信しているか否かが確認され、受信していない場合は(ステップS29においてNo)、治療の終了を報知するために、動作制御手段3によって一定時間ブザー29が作動させられる(ステップS30)。また、治療内容表示手段9によって治療の終了を告げるメッセージが表示画面21aに表示される(ステップS31)。一方、睡眠モード信号を受信している場合は(ステップS29においてYes)、ブザー29を作動させることなく、治療終了のメッセージが表示される(ステップS31)。
【0052】
その後、動作時間積算手段6によって、動作時間の積算が行われ、記憶装置10に記憶されている積算時間データ16の更新が行われる(ステップS32)。そして、ステップS5に戻り、待機画面が表示画面21aに表示されて、使用者による入力を待機する待機状態となる。なお、積算時間は、電気治療器の総稼動時間の他、治療の種類、出力パタン等に区分して算出し、記憶することもできる。また、記憶装置10に記憶された積算時間データ16は、電気治療器のメンテナンスを行う者や使用方法のアドバイザー等の操作によって、表示画面21aに表示させることができる。例えば、複数の入力スイッチ22を同時に操作することによって積算時間データ16が表示画面21aに表示されるよう、動作時間積算手段6を構成させることができる。また、入力スイッチ22の操作により、積算時間データ16がリセットされる構成とすることもできる。
【0053】
ステップS13における治療選択スイッチ22cの操作により、局所治療が選択された場合は(ステップS14においてNo、ステップS40においてYes)、動作時間の設定が行われ(ステップS41〜S43)、Sボタン22sの操作により「局所治療を開始します」というメッセージが表示されて(ステップS44においてYes、ステップS45)、ステップS24に進み、動作条件に基づいた治療が行われる。なお、処理の流れについては、上記と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0054】
また、ステップS13における治療選択スイッチ22cの操作により、低周波治療が選択された場合は(ステップS14においてNo、ステップS40においてNo)、まず、出力モードの選択が行われる(ステップS51,S56,S57)。本実施形態では、一定の周波数を出力するモード1、“たたく”感覚を与えるモード2、及び、“もむ”感覚を与えるモード3を選択することができ、モード1を選択した場合は周波数スイッチ22fによる周波数の選択が行われる(ステップS51〜ステップS55)。その後、動作時間の設定(ステップS58〜S61)、及びレベルスイッチ22vを使用した出力レベルの設定(ステップS62〜S64)により、全ての動作条件が設定され、Sボタン22sが押されると(ステップS65においてYes)、「低周波治療を開始します」というメッセージが表示されて(ステップS66)、ステップS24に進み、動作条件に基づいた治療が行われる。
【0055】
次に、明るさ調整手段4による処理について説明する。本実施形態の明るさ調整手段4は、照度センサ24による周囲環境の照度の検知に基づき、表示画面21aの明るさを三段階に調整する。より詳細に説明すると、照度センサ24により検知された照度が、予め定めた閾値より大きい場合は、表示画面21aの輝度値を初期値の設定のまま継続させる。そして、周囲の照度が閾値以下となると、まず、時間をリセットし、時間計測手段5の計測に基づいて、周囲の照度が閾値以下の状態のまま3分が経過したことを検知すると、表示画面21aの輝度値を半減させる。そして、周囲の照度が閾値以下の状態のまま更に2分が経過したことを検知すると、表示画面21aの輝度値を予め定めた最下限値に切り替える。なお、本実施形態では、いったん周囲の照度が閾値以下となったことを検知しても、再び周囲環境の照度が閾値より大きくなったことを検知した場合、或いは、使用者によって何れかの入力スイッチ22が操作された場合は、表示画面21aの輝度値を初期値に復帰させる構成となっている。
【0056】
加えて、本実施形態の明るさ調整手段4は、表示画面21aの輝度値を初期値より小さい設定としたとき(輝度値を半減させたとき、及び輝度値を最下限値としたとき)は、睡眠モード信号を動作制御手段3に送信する。また、睡眠モード信号を送信後に、表示画面21aの輝度値を初期値に復帰させた場合は、睡眠モード取消信号を動作制御手段3に送信する。そして、動作制御手段3は、治療を終了する際、睡眠モード信号及び睡眠モード取消信号の受信の有無を確認し、上述のように、睡眠モードであればブザー29を作動させることなく出力を停止し、睡眠モードでなければ、出力の停止に際して治療の終了をブザー29によって報知する(ステップS29〜S31)。なお、本実施形態では、使用者等の操作によって、閾値を変化させることができる。
【0057】
また、全身治療を行う場合、シート型の全身治療用導子26と床等の接地面との間には絶縁用マットが敷かれるが、絶縁用マットや全身治療用導子26の被覆部の破損、水濡れ、或いは何らかの異常によって、全身治療出力端子26aから出力された電流が、全身治療用導子26を介して接地面に流れる恐れがある。そこで、本実施形態のコントローラ1は、上記の漏電を検知するため、これに起因して高圧ケーブルに生じる電圧降下を検知する、出力異常検知手段を更に具備している。
【0058】
より詳細に説明すると、電源から全身治療出力端子26aに至る高圧ケーブルには、細い金属線がコイル状に巻回されている。これにより、高圧ケーブルに交流電流が流れる際には、コイル状の金属線に誘起電圧が生じるため、出力異常検知手段はこの誘起電圧を検出し、高圧ケーブルの電圧値を算出する。そして、算出された電圧値が、予め定めた閾値を下回ったことを検知した場合、出力異常検知手段は、異常な漏電が起こっていると判断して動作制御手段3に危険信号を送出し、この信号を受信した動作制御手段3によって、直ちに全身治療出力端子26aへの出力が停止される。
【0059】
以上のように、本実施形態のコントローラ1によれば、次に操作されるべき操作手順が表示装置21aに表示されるため、操作マニュアルを参照する必要がなく、分かり易く容易な操作で、動作条件を設定することができる。また、最終条件データ13が動作条件の初期値として設定されると共に表示画面21aに表示されるため、同じ条件で繰り返し治療を受けたい場合、動作条件を入力する手間を省略して、容易かつ速やかに治療を開始することができる。
【0060】
更に、照度センサ24による周囲環境の照度の検知に基づいて、明るさ調整手段4が自動的に表示画面21aの輝度値を低下させるため、使用者は、動作条件の入力の際には表示画面21aの表示によって利益を受けつつ、治療の際には表示画面21aの明るさに邪魔されることのないものとなる。更に、本実施形態では、時間の経過に伴い、表示画面21aの輝度値を二段階に低下させる構成となっているため、表示内容を見たいのに表示画面21aが見にくいという不自由を防止することができると共に、周囲環境の明るさに応じて、より自然に、表示画面21aの明るさを低下させることができる。加えて、表示画面21aの輝度値を低下させた睡眠モードの際は、ブザー29を作動させない構成であるため、電気治療器による治療によって心地よくなった使用者の眠りを、妨げる恐れがない。
【0061】
また、表示画面21aに表示される案内メッセージの言語を、三カ国語に切り替えることができるため、日本語以外の言語を母国語とする使用者にとっても、操作が分かり易いものとなっている。
【0062】
更に、動作時間積算手段6によって、電気治療器の使用のたびに積算時間データ16が更新されるため、部品交換や検査等の時期を判断する参考とし、電気治療器の安全性をより高めることができる。また、積算時間データ16は、アドバイザー等が電気治療器の使用状況を把握し、使用者の症状等に適した使用方法を助言するための有益な情報となる。
【0063】
加えて、本実施形態のコントローラ1は、出力異常検知手段を備えているため、最大で9000Vという非常に大きな値である高圧ケーブルの電圧値を直接測定することなく、漏電に起因する電圧降下を検知することができる。
【0064】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0065】
例えば、全身治療、局所治療、及び低周波治療の三種類の治療について制御を行うコントローラ1を例示したが、これに限定されず、一部の治療のみ、或いは、更に超短波治療等を付加して制御するものであっても良い。
【0066】
また、日本語、中国語、及び英語の三カ国語の操作案内データ12を備える場合を例示したが、言語の種類及び数はこれに限定されるものではない。
【0067】
更に、動作条件は、前回の使用時の最終の条件を最終条件データとして記憶する場合を例示したが、これに限定されず、例えば、使用の日時と動作条件を全て記憶させ、一覧表として表示可能な構成とすることもできる。或いは、過去に設定した動作条件を全て表示画面に表示させ、その中から一つを選択することによって、これから行う治療の動作条件を容易に設定できる構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態のコントローラの機能的構成を示すブロック図である。
【図2】図1のコントローラが組み込まれた電気治療器本体の概略正面図である。
【図3】図1のコントローラによって表示装置に表示される内容を例示する説明図である。
【図4】図1のコントローラによる処理の流れを説明するフローチャートである。
【図5】図1のコントローラによる処理の流れを説明するフローチャートである。
【図6】図1のコントローラによる処理の流れを説明するフローチャートである。
【図7】図1のコントローラによる処理の流れを説明するフローチャートである。
【図8】図1のコントローラによる処理の流れを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 コントローラ
2 動作条件設定手段
3 動作制御手段
4 明るさ調整手段
5 時間計測手段
6 動作時間積算手段
10 記憶装置
21 表示装置
24 照度センサ
26 全身治療用導子(導子)
27 局所治療用導子(導子)
28 低周波治療用導子(導子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導子に電圧を印加することにより、被検体の周囲に電界を発生させる、或いは、被検体の局所に電圧を印加する電気治療器の動作を制御するコントローラであって、
使用者による複数の操作手順での入力に基づいて、電圧、動作時間、及び周波数の少なくとも一つを含む動作条件を設定すると共に、前記動作条件の設定に際し、複数の前記操作手順のうち次に操作されるべき操作手順を案内する案内メッセージを前記電気治療器の表示装置に表示させる動作条件設定手段と、
前記動作条件設定手段によって設定された前記動作条件に基づいて、前記導子に電圧を印加する動作制御手段と
を具備することを特徴とする電気治療器のコントローラ。
【請求項2】
照度センサによる周囲環境の照度の検知に基づいて、前記表示装置の画面の明るさを調整する明るさ調整手段を、更に具備することを特徴とする請求項1に記載の電気治療器のコントローラ。
【請求項3】
複数の異なる言語による前記案内メッセージを記憶する記憶装置を更に具備し、
前記動作条件設定手段は、前記記憶装置から読み出して前記表示装置に表示させる前記案内メッセージを、使用者による入力に基づいて異なる言語の前記案内メッセージに切り替える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気治療器のコントローラ。
【請求項4】
前記動作条件設定手段は、設定された前記動作条件を前記記憶装置に記憶させ、前記動作条件の設定の開始に際し、最後に記憶された前記動作条件を前記記憶装置から読み出して初期値として設定すると共に前記表示装置に表示させる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の電気治療器のコントローラ。
【請求項5】
時間を計測する時間計測手段と、
該時間計測手段による計測に基づいて、前記導子に電圧を印加した時間を積算すると共に前記記憶装置に記憶させる動作時間積算手段と
を更に具備することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の電気治療器のコントローラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−237458(P2008−237458A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80911(P2007−80911)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(303017738)昭和電機産業株式会社 (4)
【出願人】(507099033)株式会社フェニックス コスモ (2)
【Fターム(参考)】