説明

電気泳動表示パネルの製造方法及び電気泳動表示パネル

【課題】母材から可撓性のある電気泳動表示パネルを分割する際に加わる応力を抑制した
、電気泳動表示パネルの製造方法、及び、電気泳動表示パネルを提供すること。
【解決手段】レーザヘッド39下面のレンズ40の真下には、母材13を位置させること
ができるようになっている。レンズ40は、YAGレーザのレーザ光Lを、レンズ40の
真下に位置された母材13上の分割線C1上の加工点に照射させる。レーザ光Lが照射さ
れた加工点は、レーザ光Lの照射によって熔解するとともに、その一部が拡散して、該加
工点には、レーザ光Lによって貫通穴が形成される。レーザ光Lが母材13上に連続する
加工点に順次照射されると、レーザ光Lは、それぞれの加工点を熔解及び拡散させて貫通
穴を形成して、最終的に母材13を分割線C1に沿って切断する。そして、母材13から
複数の電気泳動表示パネルを切り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示パネルの製造方法、及び、電気泳動表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパなどのフレキシブル性を要求される機器に用いられる表示デバイスと
して、フレキシブルな構造の非発光型の表示デバイスが用いられるようになってきている
。このような非発光型の表示デバイスの一つとして、電気泳動現象を利用した電気泳動表
示パネルがある。ここで、電気泳動現象とは、液体中(分散媒)に微粒子(電気泳動粒子
)を分散させた分散系に、電界を印加したときに微粒子がクーロン力により泳動する現象
である。
【0003】
この電気泳動表示パネルの駆動は、電気泳動粒子を挟んで対向する電極間の電位を薄膜
トランジスタの駆動によって変化させ、該電極間に電界を生じさせることにより行なわれ
る。そして、電気泳動表示装置としてフレキシブル性が要求される用途にあっては、薄膜
トランジスタとしてもフレキシブル性を有する有機薄膜トランジスタ(有機TFT)が用
いられることが多い。
【0004】
ところで、電気泳動表示パネルの形成方法のひとつに、基板上に多数の素子基板を区画
形成した大判のマザー基板と、同じく基板上に多数の対向基板を区画形成した大判のマザ
ー基板とを貼り合わせた後、区画ごとにカットして多数の電気泳動表示パネルを製造する
(多面取り)方法がある。
【0005】
フレキシブル性を有する電気泳動表示パネルを構成する材料は、基板も含めて比較的や
わらかいため切断することは難しくないものの、裁断機やはさみによる切断では、切断個
所やその周辺部に応力がかかる問題があった。切断時に、電気泳動表示パネルのように複
数の材料を積層して形成された基板等に応力かかると、その応力によって、積層された材
料が剥離することやデバイスを損傷するおそれがあった。例えば、図11に示すように、
素子基板11に張り合わせた可撓性を有する表示シート12を切断するために矢印f1の
方向からせん断力を加えると、その周辺部には矢印f2,f3の方向に応力が発生して、
素子基板11と表示シート12が剥離する場合があった。
【0006】
従来から、電気・電子回路を構成するための基板を好適に分割するための切断方法が提
案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の基板の分割方法は、マザー基板に予め
格子状に複数設けたV溝の端部にV溝を中心とした角形孔設けて、該角形孔に挿入した拡
開金具を基板に水平かつV溝鉛直方向に拡開するようにした。該拡開金具を拡開してV溝
に沿って基板を分割することで、基板に部品を実装した後であっても、基板面を押さえて
切断する方法のように基板表面に実装された部品(デバイス)を損傷することなく好適に
基板を分割できるようにした。
【0007】
また、マザー基板に形成したV溝に沿って折ることにより基板を分割する方法も提案さ
れている(特許文献2)。特許文献2に記載のマザー基板の分割方法は、マザー基板に格
子形状にV溝を形成するとともに、該格子形状から凸状に張り出した部分にはプレス打ち
抜きやルータにより穴を開けておくことで、マザー基板から凸部を有する基板を折り曲げ
により個別に分割することができた。
【特許文献1】特開平1−178408
【特許文献2】特開平5−152712
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の方法には、基板にある程度の剛性が必要なことから、フレキシブ
ル性を有する材料を多数積層して形成された電気泳動表示パネルの切断に用いるには難し
かった。また、特許文献2の方法には、基板には折れる程度の硬さが必要なことから、フ
レキシブル性を有する電気泳動表示パネルの分割に用いることは難しかった。また、プレ
ス打ち抜きやルータによる穴あけ加工には、電気泳動表示パネルに応力がかる問題があっ
た。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、母材から可撓
性のある電気泳動表示パネルを分割する際に加わる応力を抑制した、電気泳動表示パネル
の製造方法、及び、電気泳動表示パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電気泳動表示パネルの製造方法は、電気泳動表示セルを形成した母材を熔解さ
せ切断することで、前記母材を複数の電気泳動表示パネルに分割することを特徴とする。
上記の電気泳動表示パネルの製造方法において、前記電気泳動表示セルは、共通電極を
有する透明である対向基板と、前記対向基板と対向する複数の画素電極を有する素子基板
と、前記共通電極と前記素子基板の間に備えられた分散系と、前記共通電極と前記画素電
極が作る電界に基づいて前記分散系を泳動する電気泳動粒子とを備えることが好ましい。
【0011】
本発明の電気泳動表示パネルの製造方法によれば、母材を熔解させることによって電気
泳動表示パネルを切り離して取り出せる。従って、母材から電気泳動表示パネルを分割(
切断)する際に、母材に大きな応力が加わらない。そのため、部材を積層して形成された
電気泳動表示パネルにおいて部材が剥離することが抑制されるとともに、電気泳動表示パ
ネルに形成されたデバイスの損傷等が抑制される。
【0012】
さらに、熔解によって電気泳動表示パネルを形成する部材が溶着されて、電気泳動表示
パネルを形成する部材同士の接着をより強固にすることができる。
この電気泳動表示パネルの製造方法は、前記熔解は、YAGレーザにてさせてもよい。
【0013】
この電気泳動表示パネルの製造方法によれば、母材をYAGレーザにて熔解させて、母
材から電気泳動表示パネルを切り離して取り出せる。従って、電気泳動表示パネルに応力
を加えることなく切断することができる。
【0014】
この電気泳動表示パネルの製造方法は、前記熔解は、赤外線レーザにてさせることが好
適である。
この電気泳動表示パネルの製造方法によれば、母材を赤外線レーザにて熔解させて、母
材から電気泳動表示パネルを切り離して取り出せる。すなわち、熔解能力の高い赤外線レ
ーザによって、電気泳動表示パネルを形成する部材を、より熔解させながら切断すること
ができる。また、より熔解するので、電気泳動表示パネルを形成する部材を強固に接着す
ることができる。
【0015】
この電気泳動表示パネルの製造方法は、前記熔解は、超音波振動子で振動されるカッタ
ーにてさせてもよい。
この電気泳動表示パネルの製造方法によれば、母材を超音波振動子で振動されるカッタ
ーにて熔解させて、母材から電気泳動表示パネルを切り離して取り出せる。従って、簡単
な構造によって、電気泳動表示パネルを形成する部材を熔解させながら切断することがで
きる。
【0016】
この電気泳動表示パネルの製造方法は、前記熔解は、高温のコテにてさせることも好ま
しい。
この電気泳動表示パネルの製造方法によれば、母材を高温のコテにて熔解させて、母材
から電気泳動表示パネルを切り離して取り出せる。従って、極めて簡単な構造によって、
電気泳動表示パネルを形成する部材を熔解させながら切断することができる。
【0017】
本発明の電気泳動表示パネルは、切り離して電気泳動表示パネルとなる電気泳動表示セ
ルを複数形成した母材を、前記に記載の電気泳動表示パネルの製造方法によって切り離し
て形成されたことを特徴とする。
【0018】
本発明の電気泳動表示パネルによれば、電気泳動表示パネルは、切断時に母材に応力を
加えずに分割(切断)される。従って、電気泳動表示パネルを形成する部材同士が剥離す
ることや、電気泳動表示パネルに形成されたデバイスの損傷が生じること等を抑制するこ
とができる。
【0019】
さらに、熔解によって電気泳動表示パネルを形成する部材が溶融されて電気泳動表示パ
ネルをより強固にすることができる。
この本発明の電気泳動表示パネルは、前記電気泳動表示パネルは、共通電極を有する透
明である対向基板と、前記対向基板と対向する複数の画素電極を有する素子基板と、前記
共通電極と前記素子基板の間に備えられた分散系と、前記共通電極と前記画素電極が作る
電界に基づいて前記分散系を泳動する電子泳動粒子とを備えることが望ましい。
【0020】
この電気泳動表示パネルによれば、多層構造からなる電気泳動表示パネルでも、切断時
に母材に応力を加えずに分割(切断)することができるので、構成部材同士が剥離するこ
とや、形成されたデバイスの損傷等が生じすることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明にかかる電気泳動表示パネルの製造方法、及び電気泳動表示パネルを具体
化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1は、電気泳動表示パネルの全体の平面図を示すものである。
【0022】
図1に示すように、電気泳動表示セルを構成する電気泳動表示パネル(表示パネル)1
0は、素子基板11と表示シート12を有し、その中央部に区画された表示領域12aに
画像が表示される。また、表示パネル10の左側、すなわち素子基板11の上面には、外
部からの信号線が接続される外部接続端子21と、その外部接続端子21を通じて授受さ
れる外部信号等に基づいて表示パネル10に画像を表示する信号等を生成する走査線駆動
回路22、データ線駆動回路23が設けられている。
【0023】
図2は、6個の表示パネル10をまとめて形成した母材13の平面構造を示す平面図で
ある。
図2に示すように、母材13は、6個の表示パネル10からなり、各表示パネル10は
、それぞれの表示領域12aが母材13の中央部に集まるように、すなわち外部接続端子
21が母材13の端部に位置するように配置されている。また、それぞれの表示パネル1
0と表示パネル10の間には、表示パネル10を母材13から分割する際の分割位置を示
す分割線C1,C2,C3が設けられている。分割線C1は、母材13を上下方向に分割
する線であり、分割線C2,C3は、母材13を左右方向に分割する線である。そして、
母材13をすべての分割線C1〜C3で分割することで、母材13から6個の表示パネル
10が分割されるようになっている。
【0024】
図3は、母材13の断面構造を示す、図2のA−A線断面図である。
図3に示すように、素子基板11は、可撓性を有する背面基板15を備え、その一面(
図3における上面)には、形成層16が形成されている。背面基板15は、可撓性、弾性
等に優れた熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポ
リカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン等により形成されている。また、形成層16
には、有機ポリマーや絶縁性ポリマー等による複数の導電層、絶縁層が形成されており、
例えば、有機トランジスタ、画素電極、各種の配線が形成されている。そして、形成層1
6は、有機ポリマー材料としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル
系樹脂を用いている。また、絶縁性ポリマーとしては、例えば、ポリメチルメタクリレー
ト、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビ
ニールアセテート等の1種類又は2種類以上を組み合わせて用いている。
【0025】
表示シート12は、対向基板14と電気泳動表示層14aから形成されている。
対向基板14は、これも可撓性を有する透明基板17を備え、その一面(図3における
下面)には、共通電極18が形成されている。透明基板17は、透明性、可撓性等に優れ
た熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカー
ボネート、ポリイミド、ポリエチレン等により形成されている。共通電極18は、透明性
を有する導電性の材料、例えば、インジウムスズ酸化物等、もしくはポリアニリン等の電
子導電性高分子等により形成されている。
【0026】
電気泳動表示層14aは、バインダ19によって一体化された多数のマイクロカプセル
20によって構成されている。マイクロカプセル20には、図4に示すように、分散系と
しての電気泳動分散媒28と、電気泳動粒子29とが封入されている。電気泳動粒子29
は、正あるいは負に帯電した白色粒子29w、及び、その白色粒子29wとは異なる極性
に帯電した黒色粒子29bとからなり、それぞれマイクロカプセル20に印加された電界
の向きに応じて電気泳動分散媒28中を泳動する。
【0027】
マイクロカプセル20は、例えば、アラビアゴム・ゼラチン系化合物、ウレタン系化合
物等により形成されている。電気泳動分散媒28は、例えば、水、メタノール、エタノー
ル等からなる。また、電気泳動粒子29は、例えば、アニリンブラック、カーボンブラッ
ク、二酸化チタン等により形成されている。
【0028】
次に、このように構成された母材13から表示パネル10を切断により分割するための
切断装置30について図5を参照して説明する。
図5は、切断装置30の斜視構造を示す斜視図である。
【0029】
図5において、切断装置30には、直方体形状に形成された基台31が備えられるとと
もに、その基台31の上面には、その左右方向(X矢印方向)に沿って延びる一対の案内
溝32が形成されている。その基台31の上方には、基台31に設けられたX軸モータM
X(図6の左参照)の出力軸に駆動連結されるXステージ33が備えられるとともに、そ
のXステージ33が、前記案内溝32に沿って、X矢印方向及び反X矢印方向に往復動す
る(X矢印方向に沿って走査される)ようになっている。
【0030】
Xステージ33の上面には、その前後方向(Y矢印方向)に沿って延びる一対の案内溝
34が形成されている。そのXステージ33の上方には、Xステージ33に設けられたY
軸モータMY(図6の左参照)の出力軸に駆動連結されるYステージ35が備えられると
ともに、そのYステージ35が、前記案内溝34に沿って、Y矢印方向及び反Y矢印方向
に往復動する(Y矢印方向に沿ってフィードされる)ようになっている。
【0031】
Yステージ35の上面には、母材13を載置可能にする載置面36が形成されていて、
載置された状態の母材13をYステージ35に対して位置決め固定するようになっている
。尚、本実施形態では、載置面36には、表示パネル10が6個形成された母材13を載
置することとしたが、載置面36には、種々のサイズの母材や基板等を位置決め固定する
ことができる。
【0032】
基台31のX矢印方向には、逆「L」字形に形成された支持部材37が配設されている
。支持部材37は、その先端部38が基台31の中央方向に延出するとともに、先端部3
8の側面には、レーザヘッド39が備えられている。レーザヘッド39は、レーザ発振回
路46(図6参照)と図示しない光ファイバーケーブルによって接続されていて、レーザ
発振回路46が発振したYAGレーザ(波長1.06マイクロメートル)を受けるととも
に、基台31の方向に出力するようになっている。
【0033】
レーザヘッド39の下面にはレンズ40が備えられている。レンズ40は、基台31の
中央部上方に位置されていて、レンズ40の真下には、Xステージ33とYステージ35
との協働によって載置面36の任意の位置を位置させることができるようになっている。
すなわち、レンズ40は、レーザヘッド39が出力したYAGレーザのレーザ光L(図7
参照)を、レンズ40の真下に位置された母材13上の分割線C1〜C3上の加工点に照
射させる。ここで、加工点とはレーザ光Lが照射されている点のことで、本実施形態では
、分割線C1〜C3上に仮想的に連続して設定されているものとする。
【0034】
レーザ光Lが照射された加工点は、レーザ光Lの照射によって熔解するとともに、その
一部が拡散する。そして、母材13の該加工点には、レーザ光Lによって貫通穴が形成さ
れる。すなわち、レーザ光Lが母材13上に連続する加工点に順次照射されると、レーザ
光Lは、それぞれの加工点を熔解及び拡散させて貫通穴を形成して、最終的に母材13を
分割線C1〜C3に沿って切断するようになっている。
【0035】
次に、上記のように構成した切断装置30の電気的構成を図6に従って説明する。
図6において、制御装置41には、CPU、RAM、ROMなどが備えられている。そ
して、制御装置41は、RAMやROMなどに格納された各種データ及び各種プログラム
に従って、Xステージ33を走査させて、Yステージ35をフィードさせるとともに、レ
ーザ発振回路46を制御するようになっている。
【0036】
制御装置41には、入力装置42、X軸モータ駆動回路43、Y軸モータ駆動回路44
及びレーザ発振回路46が接続されている。
入力装置42は、起動スイッチ、停止スイッチなどの操作スイッチを有して各種操作信
号を制御装置41に入力する。また、入力装置42は、母材13に設定された分割線C1
,C2,C3の位置情報、及び母材13を切断するためにレーザ光Lから与えるエネルギ
ー量Iaを制御装置41に入力するようになっている。このエネルギー量Iaは、レーザ
光Lを母材13の一点に所定時間照射した場合に母材13に貫通穴を形成することができ
るだけのエネルギー量である。そして、各分割線C1,C2,C3の位置情報及びエネル
ギー量Iaを入力装置42から制御装置41に入力する。
【0037】
制御装置41は、入力装置42からのエネルギー量Iaを受けると、加工点に照射され
るレーザ光Lの出力エネルギー量及びビーム径に基づいて、レーザ光Lと母材13の相対
速度を算出してRAMに記憶する。すなわち、制御装置41は、母材13の加工点に照射
されるレーザ光Lのエネルギーの強度から、母材13上の加工点にレーザ光Lからエネル
ギー量Iaが与えられるような母材13とレーザ光Lとの相対速度を算出する。この相対
速度が速ければ、レーザ光Lから母材13に与えられるエネルギー量を減少させることが
でき、相対速度が遅ければ、レーザ光Lから母材13に与えられるエネルギー量を増加さ
せることができるようになる。
【0038】
制御装置41は、母材13とレーザ光Lとの相対速度と、分割線C1の位置情報とから
、載置面36に載置された母材13の分割線C1の右端を、レーザ光Lが照射される加工
点に位置させてから、X方向にXステージ33を走査する駆動データD1を生成してRA
Mに記憶する。
【0039】
また、制御装置41は、母材13とレーザ光Lとの相対速度と、分割線C2の位置情報
とから、載置面36に載置された母材13の分割線C2の後端を、レーザ光Lが照射され
る加工点に位置させてから、Y方向にYステージ35をフィードする駆動データD2を生
成してRAMに記憶する。
【0040】
さらに、制御装置41は、母材13とレーザ光Lとの相対速度と、分割線C3の位置情
報とから、載置面36に載置された母材13の分割線C3の前端を、レーザ光Lが照射さ
れる加工点に位置させてから、反Y方向にYステージ35をフィードする駆動データD3
を生成してRAMに記憶する。
【0041】
X軸モータ駆動回路43は、制御装置41からのX軸モータ駆動回路43に対応する駆
動制御信号に応答して、Xステージ33を往復移動させるX軸モータMXを正転又は逆転
させるようになっている。そのX軸モータ駆動回路43には、X軸モータ回転検出器ME
Xが接続されて、X軸モータ回転検出器MEXからの検出信号が入力されるようになって
いる。X軸モータ駆動回路43は、X軸モータ回転検出器MEXからの検出信号に基づい
て、Xステージ33の移動方向及び移動量を演算するとともに、Xステージ33の現在位
置に関する情報をXステージ位置情報XPIとして生成するようになっている。そして、
制御装置41は、X軸モータ駆動回路43からのXステージ位置情報XPIを受けて、各
種信号を出力するようになっている。
【0042】
Y軸モータ駆動回路44は、制御装置41からのY軸モータ駆動回路44に対応する駆
動制御信号に応答して、Yステージ35を往復移動させるY軸モータMYを正転又は逆転
させるようになっている。そのY軸モータ駆動回路44には、Y軸モータ回転検出器ME
Yが接続されて、Y軸モータ回転検出器MEYからの検出信号が入力されるようになって
いる。Y軸モータ駆動回路44は、Y軸モータ回転検出器MEYからの検出信号に基づい
て、Yステージ35の移動方向及び移動量を演算するとともに、Yステージ35の現在位
置に関する情報をYステージ位置情報YPIとして生成するようになっている。そして、
制御装置41は、Y軸モータ駆動回路44からのYステージ位置情報YPIを受けて、各
種信号を出力するようになっている。
【0043】
レーザ発振回路46は、制御装置41からのレーザ発振回路46に対応する駆動制御信
号COM1に応答して、YAGレーザを発振して該レーザをレーザヘッド39に光ファイ
バーケーブルを通じて供給するようになっている。
【0044】
次に、上記のように構成した切断装置30を用いて母材13から表示パネル10を切り
出す(分割)する動作について図7に従って説明する。
図7は、切断装置30のレーザヘッド39からレンズ40を介して出力されたレーザ光
Lが母材13を分割線C1に沿って溶断している状態を示す模式図である。
【0045】
ここでは、Yステージ35を初期位置(図5に示す位置)に配置して、その載置面36
に母材13を載置固定しているものとする。
載置面36に母材13がセットされると、制御装置41は、RAMに記憶された駆動デ
ータD1に基づいて、X軸モータMX及びY軸モータMYを駆動制御して、Xステージ3
3とYステージ35を協働させて、母材13の分割線C1の右端を、レンズ40の直下、
すなわちレーザ光Lの加工点に位置するように移動させる。
【0046】
分割線C1の右端が加工点に移動させられたら、制御装置41は、レーザヘッド39か
らレンズ40を通じて所定の出力のレーザ光Lを照射させるとともに、Xステージ33を
駆動データD1に基づいた所定の速度で右方向(X矢印方向)に移動させる。すなわち、
母材13上のレーザ光Lの加工点には、所定の出力のレーザ光Lが所定時間照射されるこ
とにより、該レーザ光Lから切断するためのエネルギー量Iaが供給されるようになって
いる。
【0047】
母材13の分割線C1上の加工点では、レーザ光Lによって与えられるエネルギー量I
aによって、表示シート12及び素子基板11(形成層16及び背面基板15)が加熱さ
れて熔解及び拡散するようになっている。そして、表示シート12及び素子基板11は、
レーザ光Lにより熔解及び拡散されることで、レーザ光Lの幅だけ除去されるようになっ
ている。また、レーザ光Lに除去された表示シート12及び素子基板11の少なくとも一
部が、分割線C1の左右におよそレーザ光Lの幅の間隔だけ離れて、溶着層M1,M2を
形成するようになっている。すなわち、溶着層M1,M2は、レーザ光Lにより溶融され
た表示シート12及び素子基板11を形成する材料から形成されていて、熔解時は流動性
を有するが、レーザ光Lから離間してほどなく固形化したものである。この固形化した溶
着層M1,M2は、母材13の分割線C1の左右から表示シート12及び素子基板11を
溶着するようになっている。すなわち、表示シート12及び素子基板11はその分割面(
切断面)を溶着層M1,M2によって溶着されて、表示シート12及び素子基板11の接
着をより強固にすることができる。
【0048】
母材13が分割線C1で分割されたら、制御装置41は、RAMに記憶された駆動デー
タD2に基づいて、X軸モータMX及びY軸モータMYを駆動制御して、Xステージ33
とYステージ35を協働させて、母材13の分割線C2の後端を、レーザ光Lの加工点に
位置するように移動させる。
【0049】
分割線C2の後端が加工点に移動させられたら、制御装置41は、レーザヘッド39か
らレンズ40を通じて所定の出力のレーザ光Lを照射させるとともに、Yステージ35を
駆動データD2に基づいた所定の速度で後方向(Y矢印方向)に移動させる。すなわち、
母材13上の分割線C2のレーザ光Lの加工点には、所定の出力のレーザ光Lが所定時間
照射されることにより、該レーザ光Lから切断するためのエネルギー量Iaが供給される
ようになっている。これにより、母材13は、分割線C1で分割したのと同様に分割線C
2にて分割されることができる。
【0050】
母材13が分割線C2で分割されたら、制御装置41は、RAMに記憶された駆動デー
タD3に基づいて、X軸モータMX及びY軸モータMYを駆動制御して、Xステージ33
とYステージ35を協働させて、母材13の分割線C3の前端を、レーザ光Lの加工点に
位置するように移動させる。
【0051】
分割線C3の前端が加工点に移動させられたら、制御装置41は、レーザヘッド39か
らレンズ40を通じて所定の出力のレーザ光Lを照射させるとともに、Yステージ35を
駆動データD3に基づいた所定の速度で前方向(反Y矢印方向)に移動させる。すなわち
、母材13上の分割線C3のレーザ光Lの加工点には、所定の出力のレーザ光Lが所定時
間照射されることにより、該レーザ光Lから切断するためのエネルギー量Iaが供給され
るようになっている。これにより、母材13は、分割線C1で分割したのと同様に分割線
C3にて分割されることができる。
【0052】
以上によって、母材13に応力を加えずに、母材13から表示パネル10を分割(切断
)することができる。その結果、表示シート12と素子基板11との剥離や素子基板11
上に形成されたデバイスの損傷等を抑制した電気泳動表示パネル10を提供することがで
きる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態にかかる電気泳動表示パネルの製造方法、及び、電気
泳動表示パネルによれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)上記実施形態によれば、母材13にレーザ光Lを照射して熔解するとともに、そ
の一部を拡散させて母材13に貫通穴を形成して、最終的に母材13を分割線C1〜C3
に沿って切断した。その結果、母材13に応力を加えずに、母材13から表示パネル10
を分割(切断)することができる。そして、表示シート12と素子基板11との剥離や素
子基板11上に形成されたデバイスの損傷等を抑制した電気泳動表示パネル10を提供す
ることができる。
【0054】
(2)上記実施形態によれば、レーザ光Lによって表示シート12及び素子基板11の
少なくとも一部が、分割線C1の左右に溶着層M1,M2を形成した。従って、レーザ光
Lにより溶融された後に固形化した溶着層M1,M2によって、表示シート12及び素子
基板11をより強固に接着することができる。
【0055】
(3)上記実施形態によれば、表示パネル10は、いずれも可撓性を有したフレキシブ
ルな部材、例えば、樹脂系材料により構成された。従って、レーザ光Lによって、切断さ
れるとともに、熔解して切断された面を溶着することができる。また、樹脂系材料である
ので、熔解させる温度も金属やガラスなどと比較しても非常に低くすることができる。
【0056】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、例えば以下のような態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、母材13の切断をレーザ光で行なった。しかし、それに限らず、
母材13の切断を超音波振動子で駆動されるカッターで行なってもよい。この場合、レー
ザヘッド39に変えて、図8に示すように、超音波振動子50の先端に超音波が伝達され
るように接続されたカッター51を用いる。超音波振動子50は、10キロヘルツから1
50キロヘルツの周期で振動してその振動をカッター51に伝達するが、振動周期として
は特に20キロヘルツから80キロヘルツが望ましい。カッター51によって、表示シー
ト12及び素子基板11は熔解されて、カッター51の幅だけ除去されるようになる。ま
た、カッター51に熔解された表示シート12及び素子基板11の少なくとも一部が、溶
着層M3,M4を形成して表示シート12及び素子基板11の接着をより強固にすること
ができる。
【0057】
・上記実施形態では、母材13の切断をレーザ光で行なった。しかし、それに限らず、
母材13の切断を発熱体に接続されたコテで行なってもよい。この場合、レーザヘッド3
9に変えて、図9に示すように、発熱体55の先端に伝熱するように接続されたコテ56
を用いる。コテ56は、その先端は15マイクロメートル〜2ミリメートルの厚みを有し
て、発熱体により温度を150度〜350度にされることで、その先端に接触する樹脂製
の材料を熔解することにより切断するが、温度としては特に190度〜260度が望まし
い。そして、コテ56によって、表示シート12及び素子基板11は熔解されて、コテ5
6の幅だけ除去されるようになる。また、コテ56に熔解された表示シート12及び素子
基板11の少なくとも一部が、溶着層M5,M6を形成して表示シート12及び素子基板
11の接着をより強固にすることができる。
【0058】
・上記実施形態では、母材13は封止されていなかった。しかしこれに限らず、図10
に示すように、母材13の各外部接続端子21にフレキシブルプリント配線板(FPC)
21aを接続してから、母材13全体を封止材60にて封止してもよい。そして、封止材
60により封止された母材13を分割線C11〜C13に沿って切断することで、切断面
においては表裏の封止材60が溶着して封止を維持したままの表示パネル10を母材13
から分割することができる。このとき、封止材60は、例えば外側に配置される高分子樹
脂フィルム層と、その内側に配置される無機材料バリア層とにより構成される。そして、
高分子樹脂フィルム層は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、液晶ポリマーフィルム等からなる
。無機材料バリア層は、例えば、層状ケイ酸塩(酸化珪素)、窒化珪素、酸化アルミニウ
ム、インジウムスズ酸化物、フッ素ドープ酸化スズ化合物等よりなる。
【0059】
・上記実施形態では、母材13をYAGレーザによるレーザ光Lにて切断した。しかし
、これに限らず、レーザは、エキシマレーザ、アルゴンレーザ、赤外線レーザなどでもよ
い。特に、赤外線レーザは、電気泳動表示パネル10を構成する材料、例えば樹脂材料を
熔解させる能力が高いので好適な切断及び溶着ができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明にかかる電気泳動粒子を備えた表示パネルの実施形態についてその全体の平面図。
【図2】同実施形態の表示パネルを複数含む母材の平面構造を示す平面図。
【図3】同実施形態の表示パネルの断面構造を示す図2のA−A線断面図。
【図4】同実施形態の表示パネルの断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態の切断装置の斜視構造を示す斜視図。
【図6】同実施形態の切断装置の電気構成を示すブロック図。
【図7】同実施形態の表示パネルをレーザにて切断する態様を示す模式図。
【図8】別例における表示パネルを超音波振動子で駆動されるカッターにて切断する態様を示す模式図。
【図9】別例における表示パネルを高温のコテにて切断する態様を示す模式図。
【図10】別例における封止材で封止された表示パネルの切断を説明する際の封止された母材の平面構造を示す平面図。
【図11】従来の方法にて表示パネルを切断する態様を示す模式図。
【符号の説明】
【0061】
L…レーザ光、C1,C2,C3…分割線、D1,D2,D3…駆動データ、Ia…エ
ネルギー量、M1〜M6…溶着層、MX…X軸モータ、MY…Y軸モータ、MEX…X軸
モータ回転検出器、MEY…Y軸モータ回転検出器、XPI…Xステージ位置情報、YP
I…Yステージ位置情報、COM1…駆動制御信号、C1〜C3,C11〜C13…分割
線、10…電気泳動表示パネル、11…素子基板、12…表示シート、12a…表示領域
、13…母材、14…対向基板、14a…電気泳動表示層、15…背面基板、16…形成
層、17…透明基板、18…共通電極、19…バインダ、20…マイクロカプセル、21
…外部接続端子、21a…フレキシブルプリント配線板、22…走査線駆動回路、23…
データ線駆動回路、28…電気泳動分散媒、29…電気泳動粒子、29b…黒色粒子、2
9w…白色粒子、30…切断装置、31…基台、32,34…案内溝、33…Xステージ
、35…Yステージ、36…載置面、37…支持部材、38…先端部、39…レーザヘッ
ド、40…レンズ、41…制御装置、42…入力装置、43…X軸モータ駆動回路、44
…Y軸モータ駆動回路、46…レーザ発振回路、50…超音波振動子、51…カッター、
55…発熱体、56…コテ、60…封止材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動表示セルを形成した母材を熔解させ切断することで、前記母材を複数の電気泳
動表示パネルに分割する電気泳動表示パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気泳動表示パネルの製造方法において、前記電気泳動表示セルは、
共通電極を有する透明である対向基板と、
前記対向基板と対向する複数の画素電極を有する素子基板と、
前記共通電極と前記素子基板の間に備えられた分散系と、
前記共通電極と前記画素電極が作る電界に基づいて前記分散系を泳動する電気泳動粒子
とを備えることを特徴とする電気泳動表示パネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の電気泳動表示パネルの製造方法において、
前記熔解は、YAGレーザにてさせることを特徴とする電気泳動表示パネルの製造方法

【請求項4】
請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の電気泳動表示パネルの製造方法において、
前記熔解は、赤外線レーザにてさせることを特徴とする電気泳動表示パネルの製造方法

【請求項5】
請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の電気泳動表示パネルの製造方法において、
前記熔解は、超音波振動子で振動されるカッターにてさせることを特徴とする電気泳動
表示パネルの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の電気泳動表示パネルの製造方法において、
前記熔解は、高温のコテにてさせることを特徴とする電気泳動表示パネルの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電気泳動表示パネルの製造方法によって切り
離して形成されたことを特徴とする電気泳動表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−242384(P2008−242384A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86784(P2007−86784)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】