説明

電気溶接機用アース側接続装置

【課題】 導通性が確保される任意の位置に簡単且つ安定的に取り付けることができ、狭い塗装面の塗料剥離部分においてアース接続が確実にできるとともに、使用後に容易に取り外すことができ、塗装面等を削剥する若しくはキズを付ける虞のない電気溶接機用アース側接続装置を提供する。
【解決手段】 主体に揺動自在に設置される磁石体と、主体の略中央部に設置され、磁石体の吸着力よりも小さい押圧力によりアース面を押圧するバネ手段により鉛直方向に可動するアース接続装置を備えるアース接続棒とを備えた電気溶接機用アース側接続装置において、主体は天板の左右から下方に位置する側板と、側板の下端部から外側へ位置する底板とを有してなり、天板、側板及び底板は夫々が折曲する若しくは一体にして形成され、夫々の底板下方に磁石体を備えたことを特徴とする電気溶接機用アース側接続装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金修理加工等に使用する溶接機におけるアース側を接続する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スポット溶接機を使用して車両の板金修理加工を行う場合、例えば、ドアの凹み部分を平滑にする場合、修理位置と電気的に通じたドアの縁部に塗料剥離部分を形成し、当該塗装剥離部分に、電極装着筒を備えたアース用フラット板を重ねて、小型万力(例えば、しゃこ万力)によりクランプ固定(クランプ式アース)し、電極装着筒にアース側の電極棒を固定接続した後、先端にワッシャー溶植用チップ等を装着した他方の電極棒で、凹み部分にワッシャーを溶接し、このワッシャーを、先端部にフックを有し後端部にストッパを有するシャフトに、ハンマーを移動自在に支持させた構成の鈑金用プーラ装置を用いて引き出して平滑にするなど、凹みの度合い等に応じたチップを用いて行っている。
【0003】
また、別のアース手段として、電極装着筒を一体化したボディのアース用フラット面を断面形状が角歯ラック状に形成し、歯間に歯高よりも低い磁石を介在させたマグネット式アースも使用されている。当該マグネット式アースによれば、前記クランプ式アースのようにアース位置が限定されない利点はあるが、ボディのアース側面積が広範である為に、修理面とは別に塗料剥離面を広く形成する必要があった。
【0004】
そこで、本出願人は従来のアース手段の欠点を解消し、導通性が確保される任意の位置に簡単且つ安定的に取り付けることができ、狭い塗装面の塗料剥離部分においてアース接続が確実にできる電気溶接機用アース側接続装置について発明し特許権を取得している。
【0005】
当該構造においては、磁石体とアース接続装置を備えた電気溶接機用アース側接続装置であり、平面載置姿勢を基準として、上部に把持ハンドルを備えた主体の下部左右に、磁石保持用のキャップの周壁に阻害されることなく吸着面に付着した吸着粉末等の掻き取りができる平面とした一対の磁石体を設けるとともに、主体の中央部に、アース接続装置であるアース接続棒を、磁石体の吸着力よりも小さい押圧力によりアース面を押圧するバネ手段で鉛直方向に進退自在となるように支持させて設け、アース接続棒には、溶接機の一方の電極を接続するアダプターを固定したものである(例えば、特許文献1)。
【0006】
これにより、把持ハンドルを握ってアース面にアース接続棒の先端部を一致させつつ近づけると、主体に設けた磁石体がアース面に吸着されて、アース接続棒に加わる押圧手段によって、先端部をアース面に強圧させることができるので、アース接続を確実なものとし、当該装置の吸着保持を安全とすることができるものである。
【0007】
また、磁石体を主体に対して揺動自在に設置したことから、アース面の平面、曲面の度合いに応じて安定的に装置を吸着保持してアース状態を確保することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許公報 第2867234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に係る構造では、揺動自在な磁石体によりアース面に簡単且つ安定的に取り付けることができるものであるが、板金修理後において、アース面から当該装置を取り外す作業が困難となる虞がある。詳細には、磁石体に使用される磁石がネオジム等の強力な永久磁石である場合には、当該装置の把持ハンドルを握って、アース面から上方へ持ち上げることは非常に困難である。
【0010】
また、把持ハンドルを斜め上方へ持ち上げ、磁石体を片側ずつ取り外すことも考えられる。このような方法で、片側の磁石体をアース面から取り外した状態においては、その余勢により勢いよく、他方の磁石体もアース面から取り外すことができれば問題ないが、磁石体がアース面を摺動しながら取り外すこととなる虞もある。
【0011】
当該状況下においては、磁石体の角部により塗装面を削剥する虞があり、アース接続部を含めて再度、塗装しなければならないという煩雑な工程が生じてしまう。
【0012】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するものであって、導通性が確保される任意の位置に簡単且つ安定的に取り付けることができ、狭い塗装面の塗料剥離部分においてアース接続が確実にできるとともに、使用後に容易に取り外すことができ、塗装面等を削剥する若しくはキズを付ける虞のない電気溶接機用アース側接続装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記問題点を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明の電気溶接機用アース側接続装置は、主体に揺動自在に設置される磁石体と、主体の略中央部に設置され、磁石体の吸着力よりも小さい押圧力によりアース面を押圧するバネ手段により鉛直方向に可動するアース接続装置を備えるアース接続棒とを備えた電気溶接機用アース側接続装置において、主体は天板の左右から下方に位置する側板と、側板の下端部から外側へ位置する底板とを有してなり、天板、側板及び底板は夫々が折曲する若しくは一体にして形成され、夫々の底板下方に磁石体を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の発明の電気溶接機用アース側接続装置は、請求項1に記載の電気溶接機用アース側接続装置において、アース接続棒にバネ手段の付勢力を調節する調節機構を備えたものである。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載の発明の電気溶接機用アース側接続装置は、請求項1又は請求項2に記載の電気溶接機用アース側接続装置において、アース接続棒に螺合される可動体の進退によりバネ手段の付勢力を調節するものである。
【0016】
また、本発明の請求項4に記載の発明の電気溶接機用アース側接続装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電気溶接機用アース側接続装置において、底板より上方であって、いずれかの底板の一端部を折曲する若しくは一端部に一体にして形成する把持部を備えるものである。
【0017】
また、本発明の請求項5に記載の発明の電気溶接機用アース側接続装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電気溶接機用アース側接続装置において、底板より下方であって、いずれかの底板の一端部を折曲する若しくは一端部に一体にして形成する延設部を備えるものである。
【0018】
また、本発明の請求項6に記載の発明の電気溶接機用アース側接続装置は、請求項5に記載の電気溶接機用アース側接続装置において、底板より下方に位置してなる延設部の端部に緩衝部材を備えるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に記載の電気溶接機用アース側接続装置では、従来における電気溶接機用アース側接続装置と同様にして、主体に揺動自在に設置される磁石体と、主体の略中央部に設置され、磁石体の吸着力よりも小さい押圧力によりアース面を押圧するバネ部材により鉛直方向に可動するアース接続装置を備えるアース接続棒とを備えることから、導通性が確保される任意の位置に簡単、且つ安定的にアース面に取り付けることができ、狭い塗装面の塗料剥離部分においてアース接続が確実に行うことができる。
【0020】
更に、主体は天板の左右から下方に位置する側板と、側板の下端部から外側へ位置する底板とを有してなり、天板、側板及び底板は夫々が折曲する若しくは一体にして形成され、夫々の底板下方に磁石体を備えることから、使用後に容易に取り外すことができる。詳細には、アース面に吸着させる際に、側板に対して撓んだいずれか一方における底板の端部が、電気溶接機用アース側接続装置の取り外し時に支点となる他方の底板の磁石体との距離を十分に確保してなり、持ち上げ時に作用する力を大きくするとともに、撓んだ底板が復元しようとする力も助勢される。更に、電気溶接機用アース側接続装置の中心位置にてアース面を押圧するバネ力の反作用の力が上方へ作用する。これらの3力が電気溶接機用アース側接続装置の取り外し時に、他方の底板の磁石体を支点として作用することによって、底板を持ち上げる側における磁石体の取り外しを容易とすることができる。
【0021】
本発明の請求項2又は請求項3に記載の電気溶接機用アース側接続装置では、アース接続棒にバネ手段の付勢力を調節する調節機構を備える、又はアース接続棒に螺合される可動体の進退によりバネ手段の付勢力を調節することから、アース面に対して必要な吸着力に応じて、磁石体の吸着力とともに適宜調節することで、電気溶接機用アース側接続装置を取り外す作業を容易とすることができる。
【0022】
本発明の請求項4に記載の電気溶接機用アース側接続装置では、底板より上方であって、いずれかの底板の一端部を折曲する若しくは一端部に一体にして形成する把持部を備えたことから、アース面と底板との間隙を大きくすることで指を掛けやすくすることができる。
【0023】
本発明の請求項5に記載の電気溶接機用アース側接続装置では、底板より下方であって、いずれかの底板の一端部を折曲する若しくは一端部に一体にして形成する延設部を備えたことから、片側の磁石体をアース面から取り外した状態において、他方の磁石体がアース面を摺動しながら取り外すこととなった場合であっても、延設部がアース面と当接する、又は請求項6に記載の電気溶接機用アース側接続装置では、延設部の端部に設置した緩衝部材が当接することから、アース面に対する電気溶接機用アース側接続装置の取り外し時における塗装面等を削剥する若しくはキズが付くのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る電気溶接機用アース側接続装置の一部断面正面図である。
【図2】本発明に係る電気溶接機用アース側接続装置の底面図である。
【図3】本発明に係る電気溶接機用アース側接続装置の斜視図である。
【図4】本発明に係る電気溶接機用アース側接続装置におけるアース接続棒に電極棒を水平方向から取り付けた状態斜視図である。
【図5】本発明に係る電気溶接機用アース側接続装置をアース面に(a)取り付ける前の正面図である、(b)取り付けた後の正面図である。
【図6】本発明に係る電気溶接機用アース側接続装置を(a)アース面に取り付けた後の正面図である、(b)アース面から取り外す途中の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態における電気溶接機用アース側接続装置を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0026】
本発明に係る電気溶接機用アース側接続装置1は、図1乃至図3に示すように、主に、主体2、アース接続棒3、アース接続棒3に設置されるアース接続装置4及び主体2に設置される磁石体12によって構成され、中電流から大電流の範囲に使用されるもので、主たる構成部品は従来における電気溶接機用アース側接続装置と略同様である。
【0027】
主体2は、鉄鋼板をプレス加工等して形成されるもので、天板2aの左右を夫々下方へ折曲して形成する側板2bと、当該側板2bの下端部を外側方向へ折曲して形成する底板2cとが連続することで形成してなる。また、天板2aの略中央部には、アース接続棒3を嵌挿させる貫通孔が設けられている。天板2a、側板2b及び底板2cは、溶接等の固着手段を採用して相互を一体に固着することもできる。また、折曲部及び固着手段の両方を採用することもできる。
【0028】
また、いずれか一方の底板2cの一端部は、図1及び図3に示すように、底板2cより上方であって、略V字状に折曲され把持部2dを形成する。底板2cと把持部2dにおける平面は平行であることが望ましい。また、当該把持部2dは、主体2とは別部材、例えば合成樹脂等を採用して形成し、底板2cに取り付けることもできる。当該把持部2dを設けることにより、アース面Fと底板2cとの間隙を大きくすることで指を掛けやすくし、アース面Fに対する電気溶接機用アース側接続装置1の取り外しを容易に行うことができる。
【0029】
更に、図2及び図3に示すように、底板2cは天板2a及び側板2bよりも当該幅を広くしてなり、底板2cが側板2bに対して撓みやすくなるように形成されている。また、側板2bにおける幅方向の端部からは、相互に対向する側板2bに向けて折曲板2eが折曲して形成されている。
【0030】
アース接続棒3は、図1に示すように、上部ロッド3a及び下部ロッド3dとから構成されている。上部ロッド3aは例えば略円柱状からなり、段部3bを介して当該径を小さくして形成される。上方部の周面には電極棒18を取り付ける為の取付孔3fが形成され、クリップ等の狭持手段を有する電極を設置し易くする為の平面部3gが対向して設けられている。上端部には電極棒18を固着する為の固定部材17を螺合させるネジ孔が形成される。また、下端部からも貫通孔3cが形成されるとともに、当該貫通孔3cの下方側にはネジ部が設けられている。
【0031】
下部ロッド3dにおいても同様に例えば略円柱状であって、径を小さくする上部ロッド3aと略同径からなり、下方における周面にはネジ部3eが形成されている。また、下端部からは貫通孔が設けられている。
【0032】
アース接続装置4は導電性部材を例えば略円柱状に形成してなり、図1及び図2に示すように、上端部から下端部に掛けて略中央部に貫通孔を有し、下端部であって当該貫通孔の周囲には複数のアース用接点5が突設してなる。当該アース用接点5は、特に電気抵抗の小さい銀接点とする。
【0033】
アース接続棒3及びアース接続装置4は、上部ロッド3aの下端部及び下部ロッド3dの上端部を当接させた状態で、且つ、下部ロッド3dの下端部及びアース接続装置4の上端部を当接させた状態で、アース接続装置4の下方より連結部材8となるネジにてこれらを固着してなる。上部ロッド3a及び下部ロッド3dの当接する端面には、夫々が嵌合してなる回り止め等を形成しておくことが望ましい。
【0034】
アース接続装置4より大径からなり、例えば略円柱状に形成される可動体6は、略中央部にネジ部を有して、下部ロッド3dにおけるネジ部3eに螺合して取り付けられる。また、可動体6における周面には、指を掛けやすくし可動体6の回動を容易にする為の複数の突起7が設けられている。
【0035】
アース接続棒3の外径を収納し得る段部10aを有し、略中央部にネジ部10bを有する上部絶縁部材10は主体2における天板2aの上方に配置される。一方、略中央部にネジ部11aを有する下部絶縁部材11は天板2bの下方に配置されており、夫々はネジ部10b、11aによって固着されている。上部絶縁部材10及び下部絶縁部材11が構成する絶縁部材には、アース接続棒3を嵌挿させる貫通孔が設けられている。
【0036】
バネ部材9は、下部絶縁部材11と下部ロッド3dに螺合される可動体6との間隙に位置してなる。バネ部材9の上端部は、下部絶縁部材11における凹部に保持されており、下部ロッド3dにおけるネジ部3e、可動体6及びバネ部材9は、可動体6の進退によりバネ力を調節する調節機構として作用する。当該調節機構は、アース面Fに対して必要な吸着力に応じて、後述する磁石体12の吸着力とともに適宜調節することで、電気溶接機用アース側接続装置1を取り外す作業を容易とすることができる。
【0037】
また、アース接続装置4を鉛直下方へ押圧するようバネ部材9の付勢力は作用するが、アース接続棒3における段部3bが上部絶縁部材10における段部10aに当接することにより、アース接続装置4を備えるアース接続棒3は主体2に鉛直方向に可動するよう所望の位置に保持されている。電気溶接機用アース側接続装置1をアース面Fに吸着させ得る為に、磁石体12の吸着力よりもバネ部材9のバネ力は小さいものを採用する必要がある。
【0038】
磁石体12は、図1及び図2に示すように、断面略コ字状に折曲されるヨーク12bにネオジム等の永久磁石12aが取り付けられて形成される。当該磁石体12は、Oリング等の弾性部材13を介して底板2cの下端面に配置され、ナット14によって複数個所に設置される。当該磁石体12の配置及び個数は、アース面Fに対する吸着力によって適宜設定することができ、弾性部材13を介する為、揺動自在とすることができる。
【0039】
また、把持部2dを有しない側における底板2cの一端部は、図1及び図3に示すように、底板2cより下方であって、略L字状に折曲され延設部15を形成する。当該延設部15は、主体2とは別部材、例えば合成樹脂等を採用して形成し、底板2cに取り付けることもできる。また、下方端部には合成ゴム、合成樹脂等から形成される緩衝部材16が、図2及び図3に示すように、幅方向の全面に取り付けられている。緩衝部材16を取り付けた延設部15は、電気溶接機用アース側接続装置1をアース面Fに取り付けた状態において、アース面Fと当接することなく、磁石体12の下端面よりも僅かに上方に位置することが望ましい。詳細については後述するが、当該延設部15を設けることにより、アース面Fに対する電気溶接機用アース側接続装置1の取り外し時における塗装面等を削剥する若しくはキズが付くのを防止することができる。
【0040】
このようにして構成される電気溶接機用アース側接続装置1は、図4に示すようにして、水平方向から電極棒18をアース接続棒3における取付孔3fに挿通させ、上方より固定部材17にて固着させる。その後、図5(a)に示すようにして、鉛直方向に電極棒18を固着した電気溶接機用アース側接続装置1は、アース面Fにおける塗装面の塗料剥離部分にアース接続装置4を配置した後、同図(b)に示すように、磁石体12をアース面Fに吸着させ、板金修理加工等を行う。
【0041】
磁石体12がアース面Fに吸着することにより、アース接続装置4を備えるアース接続棒3は、アース面Fを押圧した状態でバネ部材9のバネ力に抗して鉛直上方へ可動する。また、当該鉛直上方に作用するバネ力より大きく、且つ、鉛直下方に作用する磁石体12の吸着力により、主体2における底板2cは側板2bに対して撓んだ状態となる。
【0042】
図6(a)に示すようにして、板金修理加工等が終了した電気溶接機用アース側接続装置1は、同図(b)に示すようにして、把持部2dを上方へ持ち上げることで、左右の底板2cにおける磁石体12がアース面Fから取り外される。
【0043】
詳細には、アース面Fに吸着させる際に、側板2bに対して撓んだ底板2cの端部に把持部2dを設けることで、電気溶接機用アース側接続装置1の取り外し時に支点となる延設部15側の磁石体12との距離を十分に確保し、把持部2dの持ち上げに作用する力を大きくすることができる。また、撓んだ底板2cが復元しようとする力も把持部2dを上方へ持ち上げようとする力に助勢されることになる。更に、電気溶接機用アース側接続装置1の中心位置にてアース面Fを押圧するバネ力の反作用の力が上方へ作用する。これらの3力が電気溶接機用アース側接続装置1の取り外し時に延設部15側の磁石体12を支点として作用することによって、把持部2d側における磁石体12の取り外しを容易とすることができる。
【0044】
このとき、電気溶接機用アース側接続装置1は斜め姿勢となり、磁石体12がアース面Fと当接する虞があるが、延設部15における緩衝部材16が、先にアース面Fと当接するので、アース面Fを削剥する若しくはキズを付ける虞はない。
【0045】
更に、電気溶接機用アース側接続装置1の設置場所により、電極棒18をアース接続棒3における取付孔3fに固着することができない場合には、クリップ等の狭持手段を有する電極(図示しない)をアース接続棒3における平面部3gに設置することもできる。
【0046】
以上、説明した本発明の実施例に係る電気溶接機用アース側接続装置1によれば、従来の電気溶接機用アース側接続装置と同様にして、導通性が確保される任意の位置に簡単、且つ安定的にアース面Fに取り付けることができ、狭い塗装面の塗料剥離部分においてアース接続が確実にできるとともに、板金修理加工等が終了時において、把持部2dの持ち上げに作用する力、撓んだ底板2cが復元しようとする力、電気溶接機用アース側接続装置1の中心位置にて鉛直上方に作用するバネ力の3力を作用させることで、アース面Fから電気溶接機用アース側接続装置1を容易に取り外すことができ、塗装面等を削剥する若しくはキズを付ける虞がない。
【符号の説明】
【0047】
1 電気溶接機用アース側接続装置
2 主体
2a 天板
2b 側板
2c 底板
2d 把持部
2e 折曲板
3 アース接続棒
3a 上部ロッド
3b 段部
3c 貫通孔
3d 下部ロッド
3e ネジ部
3f 取付孔
3g 平面部
4 アース接続装置
5 アース用接点
6 可動体
7 突起
8 連結部材
9 バネ部材
10 上部絶縁部材
10a 段部
10b ネジ部
11 下部絶縁部材
11a ネジ部
12 磁石体
12a 永久磁石
12b ヨーク
13 弾性部材
14 ナット
15 延設部
16 緩衝部材
17 固定部材
18 電極棒
F アース面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主体に揺動自在に設置される磁石体と、
主体の略中央部に設置され、磁石体の吸着力よりも小さい押圧力によりアース面を押圧するバネ手段により鉛直方向に可動するアース接続装置を備えるアース接続棒とを備えた電気溶接機用アース側接続装置において、
主体は天板の左右から下方に位置する側板と、側板の下端部から外側へ位置する底板とを有してなり、
天板、側板及び底板は夫々が折曲する若しくは一体にして形成され、
夫々の底板下方に磁石体を備えたことを特徴とする電気溶接機用アース側接続装置。
【請求項2】
アース接続棒にバネ手段の付勢力を調節する調節機構を備えた請求項1に記載の電気溶接機用アース側接続装置。
【請求項3】
アース接続棒に螺合される可動体の進退によりバネ手段の付勢力を調節する請求項1又は請求項2に記載の電気溶接機用アース側接続装置。
【請求項4】
底板より上方であって、いずれかの底板の一端部を折曲する若しくは一端部に一体にして形成する把持部を備える請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電気溶接機用アース側接続装置。
【請求項5】
底板より下方であって、いずれかの底板の一端部を折曲する若しくは一端部に一体にして形成する延設部を備える請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電気溶接機用アース側接続装置。
【請求項6】
底板より下方に位置してなる延設部の端部に緩衝部材を備える請求項5に記載の電気溶接機用アース側接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−201472(P2010−201472A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50653(P2009−50653)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000109772)デンゲン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】