説明

電気発色性多層構造を含む化粧品

本発明は、ヒトの角質物質に施与されるためのメイクアップデバイス(1)に関し、このデバイスは、少なくとも:・第1および第2の電極層(10;20);・第1および第2の活性電気発色性層(40;50);ならびに・電解質層(30)によって形成される電気応答性スタックを含み;かつ・電気応答性スタック上に少なくとも部分的に重ねられた光学活性層(200)をさらに含む電気発色性多層構造を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの角質物質、より具体的には、限定はされないが、手の指または足の指の爪に施与されるためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
マニキュア液または口紅などの従来のメイクアップ組成物は、色または光学効果の変更が必要な場合、それを落として塗り直す必要があるという欠点を示す。
【0003】
衣類、宝石、または他のアクセサリーを替えるとき、メイクアップを完全に落としてから別のメイクアップ組成物を施与する必要なく、メイクアップの色および/または光学効果も変更することができると有利であろう。
【0004】
さらに、マニキュア液または口紅などの従来のメイクアップ組成物は、塗った後にその色を調節できないという欠点を示す。色を変更するためには、メイクアップを完全に落としてから、別のメイクアップ組成物を施与する必要がある。
【0005】
出願仏国特許第2811206号明細書から、電源を用いることによって外観を変更することが可能な光電式デバイスを角質物質に適用することが知られている。
【0006】
エレクトロルミネセンス材料をベースとする発光層を含む、角質物質に施与されるためのデバイスが記載されている。このようなデバイスは、エネルギーを消費し、例えば地味なメイクアップが求められるときなどの所望の用途に適さない結果になり得る。
【0007】
特に、仏国特許第2825619号明細書には、エレクトロルミネセンス多共役ポリマーを含む多層構造を含む、角質支持体に施与されるための粘着性の「パッチ」が記載されている。
【0008】
国際公開第2008/053549号パンフレットは、有機エレクトロルミネセンス層または有機エレクトロルミネセンス(発光)ダイオード(OLED)を含む、爪に施与されるためのデバイスに関する。
【0009】
さらに、特開2006−230436号公報には、電磁界の効果に基づいて移動可能な色粒子を含有するマイクロカプセルを含む、爪に施与されるためのデバイスが開示されている。
【0010】
また、特開2006−262982号公報には、液晶表示を含む、爪に施与されるためのデバイスが開示されている。このデバイスは、液晶表示を用いることに固有の欠点、特に、多かれ少なかれ画面を見る角度に依存して、画面によって届けられる画像が見えるという事実を示す。
【0011】
従来のメイクアップ組成物の上記の課題を解消する必要がある。
【0012】
特に、使用および設置するのが容易であり、外観をその場で変更でき、および/または角質物質上に設置される前または後に、使用者によって選択される外観に変化させることができる、大量生産に対応する製造およびコストのデバイスから利益を得る必要がある。
【0013】
さらに、公報の国際公開第03/098339号パンフレットにおいて特に、多層構造を有する電気発色性(electrochromic)デバイスが、光沢を取り込むことが知られている。それらの多層構造は、電解質層によって隔てられた2つの活性電気発色性層を間に有する2つの電極層を含む。
【0014】
参照により本明細書に援用される刊行物、Chem.Mater、2004年、第16巻、4401〜4412頁、ポリマーにおける多色電気発色性:導電するためのポリマー/金属ナノ粒子フィルムにおける構造及びデバイス並びに組み合わされた電気発色性及びプラズモン光学応答(Multicolored Electrochromism in Polymers: Structures and Devices and Combined Electrochromic and Plasmonic Optical Responses in Conducting Polymer/Metal Nanoparticle Films)、New Materials Department、CIDETEC−Center for Electrochemical Technologies、Parque Technologico de San Sebastian、Paseo Miramon 196、E−20009 Donastia−San Sebastian(スペイン)には、電気発色性構造の他の考えられる構成が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、新規な効果を生み出すことができる新規なメイクアップデバイスを提案しようとするものである。
【0016】
本発明の例示的実施形態は、ヒトの角質物質に施与されるためのメイクアップデバイスを提供し、このデバイスは、少なくとも:
・第1および第2の電極層;
・第1および第2の活性電気発色性層;ならびに
・電解質層
によって形成される任意的に均一であってもよい電気応答性スタックを含み;かつ
・該電気応答性スタック上に少なくとも部分的に重ねられた光学活性層
をさらに含む電気発色性多層構造を含む。
【0017】
このデバイスは、爪に固着されるように構成され得、任意的にメイクアップされた爪、あるいは付け爪に施与され得る。このデバイスは、例えば付け爪としての爪に施与されるためのものであり得、または付け爪に取り付けられ得る。
【0018】
一般に、本発明のこれらの例示的実施形態において、および以下の明細書全体にわたって、電極層は、任意に、活性電気発色性層と別個であり得る。
【0019】
活性電気発色性層は、層の光吸収が変更されるため、電気励起の効果に基づいて変化し得る色を有し、発光しない層である。このような層は、発光するエレクトロルミネセンス層と異なる。電気発色性層は、入射光がないと目視できないが、電気的に活性化されたエレクトロルミネセンス層は目視可能である。電気発色性層の色の変化は、層の少なくとも1種の化合物中の電子の分布の変化に関係している。
【0020】
電気発色性効果は、液晶で起こるような、電界の効果の下での分子鎖の整列と異なり、マイクロカプセルで起こるような、電磁界の効果の下での粒子の移動と異なる。
【0021】
「光学活性」層は、電気発色性多層構造中に存在することで、構造の(励起または非励起)状態のうちの少なくとも1つにおいて、光学活性層がない場合に構造が示す外観と比較して、構造の視覚的な外観を変化させる層である。
【0022】
光学活性層は、効果顔料を含む層;着色された層;発光層、例えば蛍光性またはリン光性層;光発色性(photochromic)層;角質物質に付着されるメイクアップ;または印刷から選択され得る。
【0023】
電極層は、好ましくは無孔である。
【0024】
単一の電極層は、好ましくはアノードおよびカソードの両方を含むわけではない。
【0025】
電解質層は、第1および第2の活性電気発色性層に電気的に接続され、例えば、それらと少なくとも部分的に接触している。特に、電解質層は、第1の活性電気発色性層と第2の活性電気発色性層との間に挟まれていてもよい。
【0026】
活性電気発色性層の各々は、電極層の1つの電気的に接続され、例えば、それらと少なくとも部分的に接触している。特に、第1および第2の活性電気発色性層は、第1の電極層と第2の電極層との間に挟まれていてもよい。
【0027】
好ましい実施形態において、活性電気発色性層および/または電解質層は、液晶を有さず、電磁界の効果の下で移動するのに適した粒子を封入するマイクロカプセルを有さない。
【0028】
光学活性層は、任意に、上で定義した電気応答性スタックの層の1つと別個であってもよく、特に、任意に、第1および第2の活性電気発色性層と別個であってもよい。
【0029】
例として、光学活性層は、電気応答性スタックの上に位置し得る。変形例において、該光学活性層は、電気応答性スタックの2つの層の間に位置し得る。あるいは、該光学活性層は、電気応答性スタックの下に位置し得る。該光学活性層は、以下に定義されるマスクで形成されていてもよい。
【0030】
該光学活性層は、任意に着色されてもよく、デバイスの外観を変更するのに有用であり得る。
【0031】
該光学活性層は、冷光発光性または光発色性であってもよく、電気応答性スタックは、その電気励起に応じて、該光学活性層の少なくとも1つの光励起波長を多かれ少なかれ遮断し得る。すなわち、該光学活性層の励起は、電気応答性スタックによって制御され、それによって、相乗効果の新規な可能性が提供され得る。
【0032】
該光学活性層は、スタックの全範囲にわたって延在してもよく、または不連続であってもよく、例えば、少なくとも1つの模様を形成してもよい。
【0033】
光学活性層は、干渉顔料および/または液晶を含んでいてもよい。干渉顔料および/または液晶の可視性は、電気応答性スタックの励起に左右され得る。例えば、干渉顔料または液晶が、電気応答性スタック上またはその中に位置するとき、電気応答性スタックは、観察される色経路(color path)を変更し、および/または顔料または液晶の下に多かれ少なかれ暗色の背景を形成することによって、顔料または液晶を多かれ少なかれ目視可能にし得る。
【0034】
例として、光学活性層の厚さは、1マイクロメートル(μm)〜100μmの範囲、好ましくは5μm〜30μmの範囲にある。
【0035】
必要に応じて、光学活性層は、使用者によって、多層構造の表面上に付着されてもよく、または、必要に応じて、特定の模様での印刷によって付着されてもよい。
【0036】
例として、光学活性層は、多層構造の取り外し可能な保護層上に付着されてもよい。
【0037】
光学活性層は、角質物質上に付着され、次に電気発色性多層構造によって覆われるメイクアップであり得る。
【0038】
対比効果
光学活性層は、電気応答性スタックの少なくとも1つの領域との対比効果を生み出すように配置されてもよい。
【0039】
「対比効果」という用語は、デバイスの2つの可視領域間の対比が、電気発色性デバイスの励起に応じて変更されることを意味することが理解されるべきである。これにより、デバイスの状態に応じて領域が多かれ少なかれ目視可能になり、または見るヒトから見える色を変更することができる。特定の色は、周囲の色に応じて、多かれ少なかれ飽和された(saturated)ように見え得る。
【0040】
本発明の意味での「領域」という用語は、構造の上から見たときの部分を意味することが理解されるべきである。即ち、2つの重ねられた層は、本発明の意味での2つの領域ではない。
【0041】
このような光学活性層は、例えば、干渉顔料および金属粒子から選択される効果顔料を含み得る。
【0042】
「効果」顔料は、電気発色性多層構造中に存在することで、構造の(励起または非励起)状態のうちの少なくとも1つにおいて、効果顔料がない場合の構造の外観と比較して、構造の視覚的外観を変化させる顔料である。
【0043】
効果顔料は、特に、干渉顔料、例えば角度彩色性(goniochromatic)顔料または真珠層などの真珠光沢顔料;金属粒子、特に反射性粒子;液晶;回折格子を有する顔料;およびそれらの混合物から選択され得る。
【0044】
活性電気発色性層の1つは、効果顔料を含み得る。すなわち、単一層が、活性電気発色性層および光学活性層の両方となり得る。
【0045】
光学活性層は、電気応答性スタックの上に位置してもよく、例えば、その表面上に模様を描いてもよい。この場合、模様とその周囲との対比は、電気発色性多層構造の励起状態に左右される。
【0046】
あるいは、光学活性層は、電気応答性スタックの下に位置してもよい。
【0047】
特定の例示的実施形態において、電気応答性スタックは、その電気励起に応じて、光学活性層と実質的に同じ色を呈することが可能であり得る。これにより、デバイスの励起状態に応じて、光学活性層によって形成される模様の可視性を変更することができる。
【0048】
光学活性層は、電気発色性多層構造の取り外し可能な保護層上に付着されてもよい。
【0049】
干渉顔料または液晶を含む光学活性層
光学活性層は、干渉顔料または液晶を含んでいてもよく、電気発色性多層構造は、光学活性層の下に位置している。
【0050】
電気発色性多層構造は、色または変化する不透明性の背景として働いてもよく、それによって、それを覆っている光学活性層が多かれ少なかれ目視可能になる。
【0051】
例として、電気発色性多層構造は、その電気励起に応じて、第1に暗状態を表示し、第2に明状態または透明状態を表示し得る。暗状態では、光学活性層の色は透明に見えるが、明状態では、色はより見えにくい。
【0052】
光学活性層は、特に、明るい背景に対して低い可視性を有するもの、例えば虹色顔料から選択される、真珠層、角度彩色性顔料、または液晶を含み得る。
【0053】
光学活性層は、電気発色性構造全体を覆ってもよく、またはその表面上に模様を描いてもよい。
【0054】
不均一な多層構造
電気発色性多層構造は、少なくとも:
・第1および第2の電極層;
・第1および第2の活性電気発色性層;ならびに
・複数の活性電気発色性層の間の電解質層
の不均一な電気応答性スタックを含み得る。
【0055】
「不均一」という用語は、電気応答性スタックの少なくとも2つの箇所において、前記スタックを上から見たとき、スタックが全く同じ構造を有するわけではないことを意味することが理解されるべきである。
【0056】
例えば、前記層の少なくとも1つは、例えば変化する組成および/または厚さを有するスタック中で、不均一に延在してもよく、ここで、厚さは、場合により、必要に応じて連続してまたは不連続に(discrete)変化し、場合により局所的にゼロである。例として、層の厚さは、少なくとも20%だけ、あるいは少なくとも50%以上だけ変化し得る。層は、電解質層、活性電気発色性層、または電極層であり得る。
【0057】
電気応答性スタックが不均一であることにより、例えば少なくとも1つの陰影または装飾模様、特に色のグラデーションといった、化粧料に有利な様々な外観を得ることができる。
【0058】
活性電気発色性層の少なくとも1つは、異なるそれぞれの厚さを有する少なくとも2つの領域、例えば、ゼロでない厚さeを有する領域、およびゼロの厚さを有する領域を示し得る。領域の1つの輪郭の形状に応じて、様々な模様を得ることができる。例として、活性電気発色性層は、20%超だけ、より良好には50%超だけ異なる厚さを有する2つの領域を示し得る。
【0059】
電気応答性スタックの少なくとも1つの層は、スタックの範囲にわたって一定でない厚さで延在し得る。厚さは、スタックの1つの寸法Xに沿って、または2つの寸法XおよびYに沿って変化し得る。厚さは、XおよびYに対して局所的に垂直である寸法Zに沿って測定される。
【0060】
少なくとも1つの層の厚さは、層のある箇所から別の箇所へと徐々に変化し得る。厚さは、少なくとも1つの箇所においてゼロであり得る。変化する厚さを有する層は不連続であり得る。層の不連続(disjoint)領域は、必要に応じて異なる色を生成するように、任意に異なる組成を有し得る。
【0061】
同じタイプの層、例えば、活性電気発色性層の各々は、厚さがゼロでない領域および厚さがゼロの領域の両方を示し得る。2つの活性電気発色性層の厚さがゼロでない領域は、電気応答性スタック中で、前記スタックを上から見たときにぴったりと重なり得る。
【0062】
活性電気発色性層の厚さがゼロの領域は、電解質層および/または電極層の1つ以上の厚さがゼロの領域と重ねられ得る。例として、厚さがゼロの領域は、材料を除去することによってまたは電気応答性スタックの少なくとも1つの材料を選択的に付着することによって、形成される。
【0063】
活性電気発色性層の少なくとも1つは、層の2つの箇所の間で変化する厚さ、例えば、特に、電気応答性スタックの縁部と一致し得る複数の箇所の間で線形に減少する厚さを示し得る。活性電気発色性層のうちの1つのみが、可変の厚さを有してもよく、または、変形例において、活性電気発色性層の両方が、可変の厚さ、例えば、単一方向において減少または増加することによって変化する厚さを有してもよい。スタックの所与の箇所について、前記スタックを上から見たとき、2つの活性電気発色性層は、任意に同じ厚さを示してもよい。
【0064】
電解質層の厚さはまた、電気応答性スタックの他の層の厚さが変化するか否かにかかわらず、例えば、スタックのある箇所から別の箇所へと線形に変化し得る。例として、変化する厚さの電解質層は、特に各々が一定の厚さを有する2つの均一な活性電気発色性層の間に位置し得る。
【0065】
電極層、活性電気発色性層、および電解質層のいずれかは、例えば、1つ以上の模様を生成することができるように不連続なスタックを形成するように、厚さがゼロの領域および厚さがゼロでない領域を示し得る。
【0066】
電解質層および活性電気発色性層の少なくとも1つは、均一でない組成を有してもよい。例えば、電解質層および/または少なくとも1つの活性電気発色性層は、異なるそれぞれの組成を有する領域を示し得る。例えば、活性電気発色性層の少なくとも1つは、第1のポリマーを含む第1の領域、および第1のポリマーと異なる第2のポリマーを含む第2の領域を含み得る。ポリマーは、例えば、色の差異を生じるように選択され得る。
【0067】
電解質層は、均一な活性電気発色性層の間に配置される、異なる組成を有する領域を含み得る。例えば、電解質層は、異なる材料で作製される少なくとも2つの領域を含む。
【0068】
電気応答性スタックの単一層における異なる組成の領域は、任意に同じ厚さを有し得る。
【0069】
電気発色性デバイスは、層間の相互作用の変化を局所的に生じさせるために電気応答性スタックの2つの層の間に配置される少なくとも1つのシールドを含み得る。例として、シールドは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはポリエチレンテレフタレート(PET)で作製される。
【0070】
シールドは、電解質層と活性電気発色性層との間に延在し得る。
【0071】
シールドは、その形状、またはその厚さの変化、またはその組成に応じて、少なくとも1つの模様を形成してもよく、その可視性は、例えば電気発色性デバイスの励起状態に左右される。シールドは、特に、転写、印刷、またはエッチングによって作製され得る。シールドは、任意に透明であり得る。透明のシールドの場合、シールドによって画定される模様は、デバイスが励起されている間に現れ得る。
【0072】
例として、シールドの厚さは、1μm〜100μmの範囲、好ましくは5μm〜30μmの範囲にある。
【0073】
マスクに関連する多層構造
多層構造は、少なくとも1つの模様を形成できるようにする少なくとも1つのマスクを含み得る。
【0074】
必要に応じて、マスクは、光学活性層と一致し得る。
【0075】
マスクは、任意に着色されてもよく、任意に不透明であってもよく、連続的または不連続であり得る。
【0076】
マスクは反射性であり得る。
【0077】
マスクは、電気応答性スタックの外部にあり得る。
【0078】
マスクは、電気発色性デバイスの励起状態に左右され得る可視性を有する少なくとも1つの模様を形成し得る。
【0079】
「フレンチネイル」として知られている非常にファッショナブルな爪のメイクアップ効果は、きれいで自然な結果の印象を与えるように、好ましくは明色のメイクアップを、爪の先のみに施与することにある。しかしながら、そのタイプのメイクアップ効果は、凝り過ぎて見えるという欠点を示すことがあり得る。その結果として、メイクアップを落とす必要なく、必要に応じてメイクアップ効果をなくしたり再度現れたりさせることができると有利であろう。即ち、電気発色性デバイスは、例えば三日月形の爪の先の色を変化させ、そのタイプのメイクアップ効果を模倣するように構成され得る。電気応答性スタックの輪郭は三日月形であり得る。変形例において、マスクを用いて、電気応答性スタックを部分的に覆い、三日月形の模様を画定する。
【0080】
電気応答性スタックは、その電気励起に応じて、マスクの色に近い色を表示するように作製され得る。色が「近い」と言及されるとき、1976 CIE Lab色空間における複数の色の間の距離ΔEが1.5以下であることを意味することが理解されるべきである。即ち、マスクの可視性は、電気発色性デバイスの電気励起に左右され得る。
【0081】
例として、マスクは、多層構造が爪に固着される前または後に前記構造に取り付けられてもよく、または電極層に隣接する支持層に統合されてもよい。
【0082】
マスクは、特に、印刷、転写、またはエッチングによって形成され得る。
【0083】
例として、マスクは、爪の上に設置されるかまたは爪の上に設置される準備ができている多層構造へのインクジェット印刷によって作製され得る。
【0084】
必要に応じて、マスクは、取り外し可能なフィルム上に印刷されて、それによって、マスクを取り外して、それを異なる模様を有する別のマスクに交換することができる。
【0085】
マスクが支持層に統合されるとき、マスクは、例えば、支持層となる2つのフィルムの間に積層される。
【0086】
マスクは、顔料または着色料、金属層、ポリマーフィルムを含んでいてもよく、必要に応じて、例えば、光学効果を生み出すマイクロレリーフを含んでいてもよい。
【0087】
例として、マスクの厚さは、1μm〜100μmの範囲、好ましくは5μm〜30μmの範囲にある。
【0088】
マスクが完全に不透明ではないとき、マスクは、例えば、下層に達する光を制御するように、光学フィルタとして働き得る。
【0089】
電気接点
デバイスは、電気接点を含んでいてもよく、ここで、前記接点の少なくとも1つは、爪の正面に延在しているデバイスの遠位部分、例えばデバイスの底面に配置されている。また、接点の少なくとも1つは、デバイスの遠位端において、デバイスの縁部に配置され得る。
【0090】
接点のこのような配置により、爪の外観を損なうのを避けることができる。
【0091】
多層構造は、上で定義した電気応答性スタックを含んでいてもよく、この電気応答性スタックは、任意に均一であってもよく、任意に上で定義したマスクが設けられていてもよい。
【0092】
接点の少なくとも1つは、電気発色性多層構造の電極層の厚さを超える高さにわたって延在し得る。これにより、接点が当接する電気端子を介して電力供給しやすくなる。
【0093】
接点の一方はデバイスの底面に、他方はデバイスの遠位端においてデバイスの縁部に配置され得る。これにより、使用者が電源端子に対して手の指を位置決めしやすくすることで、デバイスに電力供給しやすくなる。
【0094】
デバイスは、活性電気発色性層、電極層、および電解質層を含む電気応答性スタックを含んでいてもよく、前記接点は、任意にそれぞれの電極層に直接接続され得る。
【0095】
電気発色性デバイスは、前記接点の少なくとも1つに電気的に接続される少なくとも1つの電気回路を含み得る。例として、電気回路は、電気応答性スタックの励起レベルを選択することができるように構成され、簡単なタッチセンサー式スイッチおよび/または例えば電気応答性スタックの励起を周期的に変更するように構成される、より複雑な電子回路用の電位差計であり得る。
【0096】
統合されたエネルギー源
デバイスは、統合されたエネルギー源を含み得る。
【0097】
エネルギー源は、電池、充電池、コンデンサ、および/またはコイルを含み得る。エネルギー源は、可撓性または硬質であり得る。
【0098】
エネルギー源は、例えば1時間(h)超、より良好には4h超の持続時間にわたって、および場合によりエネルギーが切れるまで、電気応答性スタックに永続的に電力供給し得る。変形例において、電力は、例えば使用者によって制御されるスイッチによって、選択的に供給され得る。
【0099】
取り外し可能な絶縁タブが、最初に使用する前にエネルギー源から少なくとも1つの端子を絶縁し得る。
【0100】
単一層中の複数のポリマー
・電極層;
・活性電気発色性層;および
・複数の活性電気発色性層の間の電解質層
を含む多層電気発色性構造では;
電解質層および活性電気発色性層の少なくとも1つは、少なくとも第1および第2の材料、特にポリマーを含み得る。
【0101】
ポリマーは、電気発色性ポリマーから選択され得る。
【0102】
第1および第2の材料は並置されてもよく、例として、各々が、ある模様を示す領域に対応し得る。第1および第2の材料は、任意に異なっていてもよい。
【0103】
第1および第2の材料は、電気的に接触していてもよい。
【0104】
第1および第2の材料は、例えば、混ぜ合わせられる材料、特にポリマーと関連する複数の色の間の中間色を生成するように、混ぜ合わせられ得る。
【0105】
デバイスの適合
一般に、電気発色性デバイスは、プラスチック材料で作製される付け爪、例えば、ネイルサロンの多くの供給業者から入手可能なタイプの付け爪に保有され得る。従来用いられる付け爪は長い長さを示し、一般に、使用前に切断されるべきである。例えば、少なくともいくつかの層のコーティングによって、このような付け爪に電気発色性多層構造を付着する前に、例えば、付け爪の長さと幅の差が、0.6センチメートル(cm)〜1.2cmの範囲、好ましくは0.7cm〜1.1cmの範囲、好ましくは0.8cm〜1.0cmの範囲にあるように、付け爪を切断してもよい。付け爪の幅は、例えば、0.7cm〜1.3cmの範囲にあり得る。
【0106】
保護
デバイスは、剥離可能な保護層、あるいは複数の剥離可能な層を含み得る。デバイスは、剥離可能でない保護層も有し得る。
【0107】
メイクアップの施与
本発明は、ヒトの角質物質、例えば、爪、皮膚、または唇にメイクアップを施与する方法も提供し、ここで、本発明の上で定義した例示的実施形態の少なくとも1つにしたがって作製される電気発色性デバイスが、前記物質に施与される。
【0108】
デバイスを受け入れる角質物質は、デバイスが上に設置される前にメイクアップされ得る。
【0109】
変形例において、デバイスが角質物質上に設置された後、デバイスおよび角質物質はメイクアップ組成物で覆われる。
【0110】
本発明は、その限定されない実施形態の以下の詳細な説明を読み、添付の図面を検討するとよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1A−1B】本発明の特定の例示的実施形態にしたがって作製され、外部電源を有する電気発色性多層構造の2つの例を示す略図である。
【図2】統合された電源を有する電気発色性多層構造の別の例を示す。
【図3A−3B】電気発色性多層構造を、手の指または足の指の爪に固着する例を示す略図である。
【図4】保護層を用いて電気発色性多層構造を保護する可能性を示す。
【図5A−5L】特に、電気発色性多層構造中の様々な考えられる構成を示す。
【図6A−6E】電気発色性多層構造の他の例を示す。
【図7A−7J】得ることができる効果の様々な例を示す。
【図8】電気発色性多層構造を電気的に励起するため、および/またはそれに情報を伝達するための電源デバイスの例を示す。
【図9A−9B】使用の際の図8のデバイスを示す。
【図10】様々な電気発色性多層構造を顧客に表示するための表示ユニットの例を示す。
【図11】本発明の変形実施形態の電源デバイスの例を示す。
【図12】図11の詳細を示す。
【図13】様々なサイズの電気発色性多層構造の範囲を示す。
【発明を実施するための形態】
【0112】
図面において、分かりやすさのために、互いに接触している、異なる層が、間隔を空けて示されている場合がある。同様に図面の分かりやすさのために、図示される様々なデバイスの構成要素の実際の相対的比率が常に一致しているとは限らない。
【0113】
特に図1Aおよび1Bに示されるように、本発明の電気発色性デバイス1は、第1の活性電気発色性層10および第2の活性電気発色性層20を含んでいてもよく、第1の活性電気発色性層10および第2の活性電気発色性層20は、それらが接触している電解質層30によって隔てられている。
【0114】
特に図1Aおよび1Bに示されるように、デバイス1は、第1の電極層40および第2の電極層50も含んでいてもよく、第1の電極層40および第2の電極層50は、活性電気発色性層および電解質層によって形成されるスタックの両側に配置され、かつ第1および第2の活性電気発色性層と、電解質層30から離れた面においてそれぞれ接触している。
【0115】
例として、電極層40および50は、透明な導電性材料、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)のコーティングであり、このコーティングは、支持層60および70、例えば、透明な任意に着色された熱可塑性材料、例えばPETで作製されるそれぞれの支持層60および70によって支持されている。支持層60および70の各々は、単一の可撓性フィルムによって、または、変形例において、互いに積層された複数の可撓性フィルムの組立体によって構成され得る。可撓性フィルムは、破断せずに半分に折ることができるよう可撓性を示すのが有利であり得る。
【0116】
支持層60および70は、好ましくは、100μm未満、好ましくは70μm未満の厚さを示す。即ち、電気発色性デバイスは、施与の際、施与区域、例えば手の指の爪または唇の輪郭に合わせることが可能であり得る。即ち、電気発色性多層構造は、爪の曲線に合わせるのに十分に可撓性であり得る。
【0117】
電極層、例えば、上記のITOコーティングの厚さは、50ナノメートル(nm)〜1000nmの範囲にあり得る。
【0118】
例として、透明な導電性材料は、支持層60および70を均一に覆うが、これは、後述するように、例えば、模様を生成し、または構造の特定の区域の選択的な励起を可能にするために様々であり得る。
【0119】
電極層を作製するために、ITO以外の材料、例えば金および銀を使用することができる。金が最も性能の優れた金属であり、多くの利点(弾性、電気化学安定性など)も示す。
【0120】
支持層を作製するために、PET以外の材料、例えばPMMAを使用することができる。
【0121】
活性電気発色性層10または20の厚さは、50nm〜1000nmの範囲にあり得る。
【0122】
電解質層30の厚さは、50nm〜1000nmの範囲にあり得る。
【0123】
多層構造は、図6A〜6Eの説明において後述されるように、例えば電気応答性スタックの上に位置する光学活性層200も含む。光学活性層は、間隙ありで図示される場合と、間隙なしで図示される場合がある。間隙のある場合の例は、間隙のない場合の例と置き換えられ得る。
【0124】
図1A〜5Lは、配置の例とともに光学活性層200を示すが、この配置は、図6A〜6Eにおける位置のうちのいずれか1つに変更され得る。
【0125】
電気発色性多層構造1は、示されるように、爪0に装着され得る。電気発色性多層構造1は、後述されるように、様々な方法で爪に固着され得る。しかしながら、本発明は、爪をメイクアップすることに限定されない。
【0126】
電極層、活性電気発色性層、および電解質層のスタックは、電気励起に応じて、外観を変更することができる電気応答性スタックを構成する。
【0127】
電気発色性多層構造は、用いられる多層構造に応じて、電気発色性多層構造の外観を単に変更するために一時的に、あるいは永続的に、すなわち、用いられているデバイスの全持続時間にわたって電気的に励起され得る。
【0128】
電気発色性多層構造は、電気励起が停止すると外観を保持するか、または電気励起が停止すると外観を変更し得る。電気励起後に効果を保つための手段の1つは、低い導電率の電解質ポリマーを用いることで、電気発色性層が緩和する現象を遅らせることに依拠する。ここで、ポリエチレンオキシド(PEO)あるいはポリプロピレンオキシド(PPO)をベースとし、かつかなり低い導電率(10−7ジーメンス/センチメートル(S/cm))を示す従来の固体電解質が使用され得る。この種の材料では、非晶相のみが伝導を提供する。材料の結晶化度を低減することによって、またより少ない分子量を用いることによって、ガラス転移温度が変更される場合、固体電解質の導電率は増加される(しかし、機械的特性の低下を伴う)。
【0129】
様々な論文が、可塑剤を組み込むことによって固体電解質の導電率を調節する方法を教示している。
【0130】
P.M.BlonskyおよびD.F.Shriverによる論文、J.Am.Chem.Soc.1984.106、6854〜55ページには、25℃で10−5S/cmを超えるイオン導電率を有するPEOの短鎖を組み込むポリ(ビス(メトキシエトキシ)ホスファゼン)タイプのポリマーが記載されている。
【0131】
米国特許第4654279A号明細書において、Bauerらが、良好なイオン導電率(>10−4S/cm)を有する、架橋された不活性固体相および液体ポリマー相(低分子量のポリエーテル)という2つの相互浸透相によって構成される固体ポリマー電解質を記載している。架橋相と液体相との相対的比率は、良好な機械的および電気化学的特性を兼ね備えるように選択される。電解質のイオン導電率は、環境温度で約10−4S/cmである。
【0132】
G.SchwabおよびM.T.Leeによる米国特許第4792504A号明細書において、ポリアクリレートタイプの化合物によって架橋されるPEOによって構成される液体相支持マトリックスを有する固体電解質が開示されている。金属塩を溶解させる液体は、低分子量のポリエーテルまたは非プロトン性溶媒である。
【0133】
図1Aおよび1Bの実施形態は、例えば、電極層50および40にそれぞれ接続される導体81および82によって一時的に電気的に励起されるのに適している。電気エネルギー源は、デバイスの外部にある。
【0134】
導体81および82は、スタックの様々な層を通っていてもよく、必要に応じて、例えば絶縁被覆の形態のそれぞれの絶縁層84および85によって電気的に絶縁され得る。
【0135】
図1Aの実施形態において、導体81および82は、爪0の正面に位置するそれらの底端を介して、電気発色性多層構造1の底面に電源を接触させるためのものである。即ち、多くの状況において、接点として働く導体の底面は、デバイスを着用するヒトの側から、見えたとしてもほとんど見えない。導体81および82は、金属導線または金属導体ストリップ;金属、ポリマー、または導電性インクの付着物によって;あるいは何か他の方法では、例えば、電気応答性スタックから電極層を延ばすことによって作製され得る。
【0136】
図1Bの変形実施形態は、導体81および82が作製される方法が図1Aの実施形態と異なり、例えば、導体81が電気的絶縁被覆を有さない一方、例えば、導体82は、電極層50の側のみに延在する電気絶縁84を含み、それによって、電気発色性デバイス1の底面だけでなく、その遠位端の縁部88も介して導体82に電力供給する可能性を提供する。変形例において、導体82は、電気的に絶縁された底端を有し、遠位端の縁部88にあるその面を介してのみ電力供給され得る。
【0137】
図1Bは、それぞれの活性電気発色性層20および10まで延在する導電性材料で作製される導体81および82の可能性を示す。
【0138】
上述したように、電気発色性多層構造1は、統合されたエネルギー源も含んでいてもよく、それによって、例えば電気発色性多層構造1に電圧をかけることが可能になり、電圧は、使用者が着用している間一定であるかまたは所定の方法で変化し、例えば電気発色性多層構造に埋め込まれたプロセッサに格納されたプログラムにしたがって、あるいはデジタルまたはアナログ発振回路(例えばマルチバイブレータタイプ)、例えば参照NE555Dの状態に応じて変化する。また、統合されたエネルギー源の存在により、電気励起が続く限り、電気励起に応じた外観の変化がある電気応答性スタックを使用することが可能になる。
【0139】
図2の実施形態において、統合されたエネルギー源90が、導体91および92を介して、場合により、図示されるように、電子回路95を用いて電極層40および50に接続され、電子回路95は、デバイスの少なくとも1つの動作特性、例えばデバイスのスイッチのオン・オフを変更するように、または少なくとも1つの動作パラメータ、例えば多層構造の外観、および/または励起電圧の振幅を変更するための周波数を変更するように、使用者によって作動されるのに適した制御および/または調節部材97、例えば電位差計および/またはスイッチを含むかまたはそれらによって構成されてもよい。
【0140】
スイッチおよび/または電位差計には、爪の正面にある、デバイスの底面、またはデバイスの遠位端から触れられる。
【0141】
デバイスは、制御または調節部材を動作させることができるような付属物とともに単一のパッケージ内で利用可能であり得る。
【0142】
電子回路95は、場合により、統合された1つ以上のセンサを有してもよく、このセンサは、外部刺激に感受性であり、例えば、光、湿度、および/または温度に感受性である。例えば、電気発色性多層構造の色は、湿度センサ、温度センサ、または光センサからの出力に応じて電気発色性多層構造の励起電圧を変更する電子回路によって、湿度、温度、または周辺光に応じて、変化し得る。
【0143】
例として、エネルギー源90は、電池またはコンデンサタイプのものであり、必要に応じて印刷によって作製され得る。例えば約400μmの厚さには、領域に応じて約2.5ボルト(V)〜3Vの範囲の電圧を生成することができるペーパー電池タイプの電気エネルギー源、例えば参照SOFT BATTERIE(登録商標)が用いられてもよい。このような電池は、アルミニウムまたは亜鉛(アノード用)および酸化マグネシウム(カソード用)でそれぞれ作製されるアノードとカソードとの間にペーパー型の電解質を用いてもよい。
【0144】
統合されたエネルギー源は、以下の論文に記載されるタイプのものでもあり得る:須賀健雄(T.Suga)、小西宏明(H.Konishi)、西出宏之(H.Nishide)による「有機物に基づくペーパー電池をもたらす、光架橋されたニトロキシドポリマーカソード(Photo−Crosslinked Nitroxide Polymer Cathode Leading to an Organic−Based Paper Battery)」、Chem.Commun.、2007、1730〜1732;または須賀健雄(T.Suga)、Y.−J.Pu、笠鳥晋司(S Kasatori)、西出宏之(H.Nishide)による「充電可能な電池のためのカソード−及びアノード−活性なポリ(ニトロキシスチレン):置換基効果を介してのP−及びN−タイプの酸化還元スイッチング(Cathode−and Anode−Active Poly(nitroxylstyrene)s for Rechargeable Batteries:P−and N−Type Redox Switching via Substituent Effects)」、Macromolecules、2007、40、3167〜3173;これらの論文は参照により本明細書に援用される。このような電池は、酸化還元の原理に基づいて機能し、200nmの厚さを有するフィルムの形態であり得る。
【0145】
デバイスが統合されたエネルギー源を含むとき、電気発色性多層構造の励起電圧は一定であってもよく、あるいは、例えば階段状の波形または例えば三角形の1つ以上のランプ波形で、あるいは正弦波形で、時間とともに多くの方法で変化してもよい。あるいは、励起電圧は、デバイスが電力供給されている間ほぼ一定であり、エネルギー源が徐々に切れてくるにつれて低下してもよい。
【0146】
統合されたエネルギー源は、光電池または使用者の動きからエネルギーを引き出す機構も含み得る。
【0147】
電気応答性スタックに印加される電圧は、例えば所定の持続時間後にデバイスのスイッチを切るためのタイマーに応じて決まるか、または上述したような、刺激に対して感受性のセンサ、例えば光センサから来る少なくとも1つの信号に応じて決まり得る。
【0148】
必要に応じて、デバイスは、例えば1つ以上の電気接点によって遠隔から、あるいは例えば光学または無線周波数(RF)接続によってワイヤレスで情報を読み取るように構成される電子回路を含み得る。例として、情報により、デバイスの動作、例えば電気発色性多層構造の励起レベルおよび/または経時的なその変化をプログラムすることが可能になる。
【0149】
デバイスは、統合されたアンテナを有してもよく、このアンテナは、遠隔から励起場に曝されたときに電気エネルギーを受信することが可能であり、および/または例えば電気発色性多層構造の動作モードに関連する情報を受信することが可能である。アンテナは、デバイスに統合される電子チップに巻かれるか、印刷されるか、または埋め込まれ得る。必要に応じて、このようなチップは、任意に充電式の埋め込まれた電池を含み得る。
【0150】
図2の実施形態において、エネルギー源は、爪に重ねられる。図示されていない変形例において、エネルギー源は、爪の正面、例えばデバイスの下側に位置する。これにより、爪に重ねられる部分における構造の厚さを低減することができる。また、これにより、エネルギー源が、例えばボタン電池タイプの小型電池であるとき、必要に応じて前記エネルギー源をより容易に交換することができる。
【0151】
後述される手の指において、電源導体および/または統合されたエネルギー源は、図面の分かりやすさのために省略される。
【0152】
電気発色性多層構造は、電極層を用いて励起されてもよく、電極層は、抵抗損失を無視すると、各々、ほぼ一定の電位にある。特に、これは特に、電極層がスタックの全範囲にわたって延在する層であるとき、そうである。
【0153】
変形例において、電気発色性多層構造は、例えば異なる電位で選択的に電力供給されるのに適した少なくとも2つの領域を含む電極層を含む。例として、これにより、任意に、電力供給される領域に応じて模様が現れることが可能になる。例えば、電極層の1つは、ばらばらに延在し、かつ電子部品の2つの差し込み口(outlet)にそれぞれ接続される2つの領域を含み、それによって選択的な電力供給が可能になる。
【0154】
電気応答性スタックの構成にかかわらず、電気発色性多層構造は、様々な方法で、好ましくは、デバイスを損傷する危険性なく前記デバイスを取り外すことができるシステムによって、角質物質、例えば爪に固着され得る。
【0155】
電気発色性デバイスは、施与区域、例えば爪または唇と接触されたときにデバイスを付着させることができるように、底部支持層を覆う接着剤を含んでいてもよい。
【0156】
図2および3Aは、接着剤が好ましくは低刺激性である接着剤層100を示す。
【0157】
電気発色性デバイスを角質物質に固着するのに貼り直し可能な接着剤が用いられるとき、接着剤は、Kratonから入手可能なスチレンブロックコポリマーなどのブロックコポリマー、または30000超、より良好には100000超、好ましくは200000超の分子量を有するアクリルポリマーを含み得る。ブロックコポリマーまたはアクリルポリマーは、20%超、好ましくは30%超の重量含量で接着剤層に存在してもよく、それによって、剥がす際に完全性を保つことが可能な凝集性のある接着剤層を得ることがより容易になる。
【0158】
電気発色性デバイスは、施与区域、特に爪または唇への接着剤層の付着を促すという利点を有する、施与の際に架橋可能な接着剤層を含み得る。架橋の前、接着剤層は、施与区域上に良好な湿潤性を生じ得る。架橋の後、接着剤層は、より硬質になり、せん断に対する耐性がより高くなる。
【0159】
電気発色性デバイスが架橋性接着剤を含むとき、電気発色性デバイスは、デバイスを使用する前に架橋が開始しないことを確実にするように、漏れ止めパッケージ中で利用され得る。好ましくは、架橋性接着剤はシアノアクリレートを含む。架橋性接着剤は、エチルシアノアクリレートと、ポリメチルメタクリレートと、ヒドロキノンとの混合物(「Francenails」から入手可能な接着剤)を含み得る。
【0160】
電気発色性デバイスは、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%の少なくとも1つの残留溶媒を含む接着剤層を含み得る。この特性は、施与区域、特に爪または唇への接着剤層の付着を促すという利点を有する。完全に乾燥する前、残留溶媒の存在により、施与区域における接着剤層の湿潤性が促進される。完全に乾燥した後、接着剤層はより硬質であり、せん断に対する耐性がより高くなる。
【0161】
接着剤は、Kratonから入手可能なスチレンブロックコポリマーなどのブロックコポリマー、またはアクリルポリマー、またはBIO/PSAタイプのシリコーン接着剤のいずれかを含み得る。例えば、接着剤は、例えば、10%を超える残留溶媒を含む、National Adhesivesから入手可能なDuro−Takシリーズからの接着剤のような溶媒相中のアクリル接着剤である。
【0162】
接着剤は、多層構造が設置される前に前記構造に存在するのが好ましいが、変形例において、接着剤が爪に施与されてから、多層構造が接着剤と接触されてもよい。
【0163】
図3Bは、機械的な固着を用いる固着システム110を示す。
【0164】
機械的な固着システム110が用いられるとき、前記システムは、例えば爪の先の下に位置することになる固定具のように働き、即ち、前記爪は、固着システム110の支持層70とタブ111との間に固定される。
【0165】
電気発色性多層構造はまた、何か他の方法で、例えば接着剤および固定の両方によって、磁化によって、または静電付着によって、固着されてもよい。
【0166】
以下の図において、用いられる固着手段、例えば電気発色性デバイスを角質物質に固着するための爪の先における接着剤または機械的な固着は、図面の分かりやすさのためにもはや示されていない。
【0167】
図4に示されるように、電気発色性多層構造1の外側は、任意に剥がすことが可能であり得る1つ以上の外側保護層120に被覆され得る。
【0168】
少なくとも1つの外側保護層120は、静電気力によってまたは接着剤を用いて付着し得る。必要に応じて、デバイス1は、欠陥(擦り傷、摩耗)が見られ次第、すぐにうまく取り外すのに適した複数の剥離可能な保護層を含む。デバイスの表面に複数の剥離可能な層が存在すると、例えば、擦り傷がデバイスの表面に見られるとき、表面における層のうちの1つを取り外すことができる。さらに、電気発色性デバイスは、可能であれば数回使用できるように保存する必要がある比較的コストの高い技術的な物品である。好ましくは、剥離可能な層は、層が互いに付着しない特性を示すように、交互の化学物質の層を含む。
【0169】
他の例示的実施形態において、長持ちするように、架橋されたトップコートが、電気発色性デバイスの表面を被覆する。架橋は、エポキシおよびアミン反応によって、またはシアノアクリレートを用いて、またはエチレン二重結合を紫外(UV)線に曝すことによって行われ得る。デバイスの可撓性に対するトップコートの影響を抑えるために、好ましくは、トップコートの層の厚さは、50μm未満、好ましくは20μm未満、より良好には10μm未満である。架橋されたトップコートの例は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2008/0031836号明細書に示される。
【0170】
例えば模様または陰影を生成するのを可能にする、様々な光学効果を得ようとする様々な構成(arrangement)が後述される。
【0171】
図5Aまたは5Bに示されるように、第1の活性電気発色性層10および/または第2の活性電気発色性層20は、均一でない厚さ、例えば不連続に変化する厚さを有するように作製されてもよく、電気発色性構造によって生成される外観が、活性電気発色性層の材料が存在するか否かによって決まるようになっている。例えば、間隙10aおよび/または20aが、それぞれの層10および/または20に形成される。層10または20の材料は、印刷または転写によって、ある模様で付着され得る。変形例において、間隙10aおよび/または20aは、材料除去技術、例えばレーザー加工、エッチング、または切り取りを用いて形成される。ある模様、例えばハート形の形態で付着される層が用いられ得る。このような層は、電気励起なしで着色されず、電気励起により、例えば青色へと色が変化し得る。それによって、着色された背景が赤色である場合、ハート形の模様が紫色に現れることが可能になる。
【0172】
図5Aおよび5Bにおいて、電極層40および50が、間隙10aまたは20aの上下にそれぞれ存在し得ることが分かる。
【0173】
あるいは、図5Cに示されるように、第1の活性層10および第2の活性層20の両方が、例えば、前記活性層の間隙10aおよび20aが例えば互いに上下になるように直接位置決めされた状態で、不連続に形成され得る。
【0174】
間隙10aおよび/または20aが存在することにより、電気発色性構造の電気励起の所定の条件下でのみ目視可能な1つ以上の模様を形成することができる。例えば、電気発色性構造の電気励起がない場合、図7Aに示されるように、爪の色が均一に見える。均一な色は、例えば爪の色であってもよく、または構造の層のうちの1つの固有色から生じ得る。後述されるように、あるいは均一な色は、例えば着色された背景としての、電気応答性スタック中または前記スタックの下の光学活性層の存在から生じ得る。電気励起の存在下で、例えば電気応答性スタックの外観の変化の結果として、図7Bに示されるように、模様M、例えばハート形の模様が爪に現れ得る。
【0175】
電極層、活性電気発色性層、および/または電解質層が均一であるか、特に一定の厚さ、および/または均一な組成のものであるか否かにかかわらず、活性電気発色性層10または20および電解質層30のうちの1つの間にシールド160、例えば電気絶縁のシールドを挟むことができ、それによって、図5Dまたは5Eに示されるように、局所的に、隣接する活性電気発色性層から電解質層の距離を置くことができ、またはシールド160の両側に位置し、かつそれと接触している層の間の相互作用を何か他の方法で変更することができる。シールド160に与えられる形状は、生成したい模様の形状に応じて決まる。例として、シールド160は、所望の模様での印刷または転写によって付着される。あるいは、シールド160は、所望の模様を形成するように、加工され、切り取られ、またはエッチングされ得る。シールド160は、任意に着色されてもよく、任意に反射性であり、PMMAで構成されるか、またはPETで作製され得る。例として、シールド160の厚さは、1μm〜100μmの範囲、好ましくは5μm〜30μmの範囲にある。
【0176】
多層構造のスタックの層の少なくとも1つは、異なる電気的および/または光学的特性を有する材料を層内で用いる結果として不均一な特性を有し得る。
【0177】
図5Fに示されるように、異なる材料が、電解質層30に用いられてもよく、この材料は、任意にばらばら(disjoint)であり得るそれぞれの領域に位置する。
【0178】
例えば、電解質層30は、第1の電解質を含む1つ以上の第1の領域30a、および第1の電解質と異なる第2の電解質を含む1つ以上の第2の領域30bを含み得る。例として、領域30aおよび30bは、印刷によって付着され、または領域のうちの1つが、材料を転化し、その特性を変更するように、他の領域の材料を選択的に処理することによって形成される。
【0179】
領域30aおよび30bのうちの1つは、形成しようとする模様の形状に対応する形状のものであり得る。領域30aまたは30bのうちの1つは、電気化学的な観点から不活性であってもよく、電解質層として働く他の領域の厚さを単に補うために用いられ得る。
【0180】
図5G、5H、および5Iに示されるように、活性電気発色性層10または20の少なくとも1つは、一定でなく、ゼロでない厚さで作製され得る。
【0181】
図5Jにあるように、電解質層30も、厚さの変化を伴って作製され得る。
【0182】
例として、厚さは、陰影を生成するように徐々に変化してもよく、ここで、前記厚さは任意に一定に減少する。変化は、平面の方向の1つにおいて、または、変形例において、両方の方向において起こり得る。平面の第1の方向Xの変化を得るために、例えば、第1の方向に対して垂直であり、かつ第1の方向に傾斜を有する第2の方向Yにおいて移動するスプレッダを使用することができ、それによって、当該方向に厚さの変化をもたらす。平面の少なくとも1つの方向に沿って、厚さはまた、最大または最小であり得る極値間にわたり得る。
【0183】
スタックの層の1つの厚さの変化を補うために、構造の少なくとも1つの他の層は、反対方向において変化する厚さを示し得る。他の層は隣接する層であり得る。他の層は、任意に電気的に活性であり、任意に光学活性であり得る。
【0184】
活性電気発色性層10および/または20で光学効果を生み出すために、図5Lおよび5Kに示されるように、異なる導電率および/または異なる電気発色性特性を示す複数の材料が用いられ得る。
【0185】
図5Lは、異なる材料によって形成される領域20aおよび20bを有する層20を作製する可能性を示す。同じことが、異なる材料でできている領域10aおよび10bで形成される図5Kの層10に当てはまる。異なる材料は、活性電気発色剤であり得るが、変形例において、材料の一方のみがこの役割を果たし、他方の材料は場合により電気発色性の観点から不活性である。領域20aおよび20bの材料は、任意に接触されていてもよい。
【0186】
電気発色性の観点から不活性な材料で作製される領域は、他の活性電気発色性領域の厚さを補うのに用いられ得る。
【0187】
ポリマー混合物については、例えば活性電気発色性層の1つにおいて、2種のポリマーが用いられてもよく、これらのポリマーは、並置されるか、あるいは均一にまたは混合物の全体が均一にならないように混合され、それによって、他の色を生成し、および/または例えばデバイスが作動される間のみ目視可能な1つ以上の模様を形成することができる。
【0188】
複数のポリマーが並置されるとき、異なる導電率を有するポリマーが用いられてもよく、それによって、様々な領域間で対比を生成する。
【0189】
電気発色性導電性ポリマーの層は、例えば、ポリアニリン;ポリチオフェン;およびポリピロールおよびドーパントから選択される材料を含み得る。好ましくは、電気発色性導電性ポリマーの層は、ポリジフェニルアミン;ポリ(4−アミノビフェニル);ポリ(3−アルキル(C1〜C8)チオフェン);ポリ(ジフェニルベンジジン);ポリフェニレン;ポリ(フェニレンビニレン);ポリ(アリレンビニレン);ポリ(アミノキノリン);ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)およびそれらの誘導体;あるいはそれらの誘導体またはコポリマー;およびドーパントから選択される材料を含む。
【0190】
図5A〜5Lに示される構造例の全ては、図示されていない変形例の中で組み合わせられ得る。
【0191】
光学活性な非電気発色性層200は、図6Aおよび6Bに示されるようにマスクならびに/あるいは入射光および/または反射光に対するフィルタとして、あるいは図6Cに示されるように背景、特に着色された背景として働き得る。層200は、図6Dおよび6Eに示されるように連続していても、または図6Aおよび6Bに示されるように不連続であってもよい。特に、層200は模様を形成し得る。
【0192】
図5Jに示されるように、光学活性層200は、支持層、例えば支持層60と一致し得る。
【0193】
電気発色性デバイスは、任意に均一な層で、例えばある模様で配置される、干渉顔料、例えば真珠層または角度彩色性顔料を含む少なくとも1つの光学活性層を含み得る。干渉顔料として導入されるのに適した、挙げられる真珠層の例示的な例は、金色の真珠層、特にBrillant gold 212G(Timica)、Gold 222C(Cloisonne)、Sparkle gold(Timica)、Gold 4504(Chromalite)、およびMonarch gold 233X(Cloisonne)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;青銅色の真珠層、特にBronze fine(17384)(Colorona)およびBronze(17353)(Colorona)の商品名でMERCKによって販売されているもの、ならびにSuper bronze(Cloisonne)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;オレンジ色の真珠層、特にOrange 363C(Cloisonne)およびOrange MCR 101(Cosmica)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの、ならびにPassion orange(Colorona)およびMatte orange(17449)(Microna)の商品名でMERCKによって販売されているもの;Nu−antique copper 340XB(Cloisonne)およびBrown CL4509(Chromalite)の商品名でENGELHARDによって販売されている茶色がかった真珠層;Copper 340A(Timica)の商品名でENGELHARDによって販売されている銅の光沢を有する真珠層;赤色の光沢を有する真珠層、特にSienna fine(17386)(Colorona)の商品名でMERCKによって販売されているもの;黄色の光沢を有する真珠層、特にYellow(4502)(Chromalite)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;金色の光沢を有する赤色がかった真珠層、特にSunstone G012(Gemtone)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;ピンク色の真珠層、特にTan opale G005(Gemtone)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;光沢を有する黒色の真珠層、特にNu antique bronze 240 AB(Timica)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;青色の真珠層、特にMatte blue(17433)(Microna)の商品名でMERCKによって販売されているもの;銀色の光沢を有する白色の真珠層、特にXirona Silverの商品名でMERCKによって販売されているもの;およびIndian summer(Xirona)の商品名でMERCKによって販売されているオレンジ−ピンクグリーン−金色のハイライト真珠層;ならびにそれらの混合物である。
【0194】
電気発色性デバイスは、電気的に励起されている間の色の変化に際して、少なくとも1つの波長をフィルタリングし、したがって干渉顔料および電気応答性スタックの少なくとも1つの層を含む光学活性層を重ねることから得られる色を変化させるように構成され得る。
【0195】
例として、電気発色性デバイスを用いて、少なくとも1つの干渉顔料の1つ以上の色成分を抑制してもよく、それによって、観察角度および/または支持体の曲率に応じて色の変化を示す。
【0196】
この場合、電気発色性デバイスの電気的に励起可能なスタックは、下層の角度彩色性干渉顔料の色経路の成分のうちの1つをフィルタリングする色を示し得る。
【0197】
例えば、赤色/金色経路について、電気発色性デバイスは、金色を吸収する青色を示すように構成され得る。このように、電気発色性デバイスが作動されている間、赤色のみが見られ、電気応答性スタックが透明になるとき、効果が変化し、見られる色が赤色/金色経路にしたがう。
【0198】
電気発色性デバイスは、少なくとも1つの回折顔料を含有する層も含み得る。特に、用いられる回折顔料は、2003年2月13日に公開された米国特許出願公開第2003/0031870号明細書に記載されるものから選択され得る。
【0199】
回折顔料は、例えば、以下の構造:MgF/Al/MgFを有してもよく、この構造を有する回折顔料は、SPECTRAFLAIR 1400 Pigment SilverまたはSPECTRAFLAIR 1400 Pigment Silver FGの商品名でFLEX PRODUCTSによって販売されている。MgFの重量の比率は、顔料の総重量の80%〜95%の範囲にあり得る。
【0200】
他の回折顔料は、Metalure(登録商標)Prismaticの商品名でECKART(登録商標)によって販売されている。
【0201】
電気応答性スタックを必要に応じて用いて、下層の回折顔料によって反射される光の少なくとも1つの波長をフィルタリングし得る。回折顔料は、角度彩色効果、特にレインボー効果を示してもよく、この効果は、電気発色性デバイスが作動されていない間は完全であり得、電気発色性デバイスが作動されている間は、回折顔料によって反射される1つ以上の波長をフィルタリングすることによって可視スペクトルの一部に限定され得る。このように、先行技術において干渉顔料を単に組み合わせることでは得られない効果が得られる。
【0202】
電気発色性デバイスは、デバイスを発光させる少なくとも1つの波長に感受性である少なくとも1種の発光化合物を含み得る。
【0203】
電気発色性デバイスの電気応答性スタックを用いて、例えば蛍光性またはリン光性化合物である下層の発光化合物の励起波長をフィルタリングし得る。即ち、電気発色性デバイスを任意に用いて、発光化合物を照射することができ得る。例えば、電気発色性デバイスを用いて、赤外線または紫外線をフィルタリングしてもよく、発光化合物は、赤外線または紫外線中で蛍光性であり得る。電気応答性スタックの励起状態に応じた蛍光を多かれ少なかれ抑制することによって、発光化合物の外観を変更することができる。
【0204】
デバイスは、光励起によって強められる、ある色、例えば赤色を有する蛍光性化合物を含み得る。電気応答性スタックを用いて、蛍光性化合物を活性化する光を任意に局所的にフィルタリングし得る。蛍光を局所的に抑制することで、化合物における蛍光が抑制される区域と抑制されない区域との外観の差異をもたらし得る。例として、着色の淡い区域と並置される着色の濃い区域、例えば淡い赤色の区域と交互の濃い赤色の区域を得ることができる。
【0205】
発光化合物は、好適な市販の光輝剤(photoluminescent agent)から選択されてもよく、特に、HONEYWELLによって販売されている光輝剤Luminux(登録商標)、特にLuminux(登録商標)Effect Blue A、Luminux(登録商標)Effect Green A、およびLuminux(登録商標)Effect Red A、または高い比率の希土類元素を含有し、かつNEC/TOKINによって販売されている光輝剤Netoje(登録商標)が挙げられる。本発明の別の実装例において、少なくとも1つの光輝剤は、特に、例えばSi、ZnO、CdSeなどの粒子の形態の半導体を含み得る。本発明の別の実装例において、少なくとも1つの光輝剤は、例えばCdSE、CdSe/ZnS、またはCdTe/CdSの結晶の形態で存在する約1nm〜約10nmの範囲にある平均径を有する粒子を含み得る。CdSeのナノ粒子を封入するPMMA、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、またはポリカーボネート(PC)の粉末粒子は、EVI COMPOSITE(商標)の商品名でEVIDENT TECHNOLOGIESによって販売されている。電気発色性デバイスは、少なくとも1つの金属顔料、特にメイクアップ区域にハイライト箇所を生成することができる顔料を含み得る。電気応答性スタックが、その電気励起に応じて、透明から着色された状態へとまたはある色から別の色へと変化するとき、金属粒子の色は、前記スタックによって調節され得る。金属粒子は、銀色、金色、または銅色で反射性であってもよく、例として、光学活性層において、電気応答性スタックの中、前記電気応答性スタックの上、または前記電気応答性スタックの下に位置し得る。
【0206】
金属粒子は、金属層で被覆される無機基材を含む反射性粒子から選択されてもよく;銀で被覆されるホウケイ酸塩の基材を含む粒子も挙げられる。フレークの形態の銀で被覆されるガラス基材粒子は、MICROGLASS METASHINE REFSX 2025 PSの商品名でTOYALによって販売されている。ニッケル、クロム、およびモリブデンの合金で被覆されるガラス基材粒子は、CRYSTAL STAR GF 550、GF 2525の商品名で同じ会社によって販売されている。
【0207】
金属のような光沢および任意の形状を有する反射性粒子は、例えば、チタンの酸化物、特にTiO、鉄の酸化物、特にFe、スズの酸化物、またはクロムの酸化物から選択される少なくとも1つの金属酸化物、硫酸バリウム、ならびに以下の材料:MgF;CrF;ZnS;ZnSe;SiO;Al;MgO;Y;SeO;SiO;HfO;ZrO;CeO;Nb;Ta;MoS;ならびにそれらの混合物の少なくとも1つの層で少なくとも部分的に被覆される合成基材の粒子からも選択され得る。
【0208】
挙げられる反射性粒子の例は、二酸化チタンで被覆される合成雲母の基材を含む粒子、あるいは褐色酸化鉄、酸化チタン、酸化スズ、またはREFLECKS(登録商標)の商品名でENGELHARDによって販売されているものなどのそれらの混合物のうちの1つのいずれかで被覆されるガラス粒子である。
【0209】
金属のような光沢を有し、表面に金属化合物を示すかまたは挙げられる少なくとも1種の被覆される金属化合物を含む反射性粒子の他の例は、以下の商品名で提供される粒子である:日本板硝子株式会社によるMETASHINE(登録商標)ME 2040 PS、METASHINE(登録商標)MC5090 PS、またはMETASHINE(登録商標)MC280GP(2523);ENGELHARDによるSPHERICAL SILVER POWDER(登録商標)DC 100、SILVER FLAKE(登録商標)JV6、またはGOLD POWDER(登録商標)A1570;ENERGY STRATEGY ASSOCIATES INCによるSTARLIGHT REFLECTIONS FXM(登録商標);MEADOWBROOK INVENTIONSによるBRIGHT SILVER(登録商標)1 E 0.008X0.008;ULTRAMIN(登録商標)(FINE LIVING ALUMINUM POWDER);およびECKARTによるCOSMETIC METALLIC POWDER VISIONNAIRE BRIGHT SILVER SEA(登録商標)、COSMETIC METALLIC POWDER VISIONNAIRE NATURAL GOLD(登録商標)(60314)、またはCOSMETIC METALLIC POWDER VISIONNAIRE HONEY(登録商標)(60316)。電気発色性デバイスは、例えば、少なくとも着色された第1の領域と、電気発色性デバイスの作動状態に応じて変化する色を有する周囲の第2の領域との間の目視可能な対比を変更するように作製され得る。即ち、第1の領域を囲む第2の領域の色を変更することによって、それらの領域間の色の対比を増減し、例として、図7Cおよび7Dに示されるように、多かれ少なかれ目視可能な目立つ模様を形成することができる。
【0210】
図7Cは、所定の色を有する少なくとも第1の領域R、および第1の領域Rに隣接し、かつ電気発色性デバイスの作動状態に応じて変化する色を有する少なくとも第2の領域Rを示す。即ち、領域Rの色は、図7Cにあるように領域Rがはっきりと見える色から、領域Rの色が領域Rの色に近い状態(この場合、領域R1は、対比が欠如しているために区別しにくい)までわたり得る。
【0211】
例として、図7Cおよび7Dでは、領域Rは、電気応答性スタックの下の均一な色の背景に対応する。
【0212】
変形例において、領域Rは、表面層として画定される。
【0213】
さらなる変形例において、領域Rは、電気応答性スタック中に存在する層によって画定される。
【0214】
電気発色性デバイスは、外部刺激に対して感受性の少なくとも1つの「X発色(性)(Xchrome)」着色剤、例えば光発色剤、溶媒発色(solvatochromic)剤、または摩擦発色(tribochromic)剤を含み得る。この場合、このような着色剤を含む領域は、メイクアップされた区域の環境に応じて、またX発色(性)顔料の色をフィルタリングするのに用いられ得る電気発色性デバイスの状態に応じて、および/または着色剤の色環境に応じて変化する外観を有し得る。
【0215】
少なくとも1つの光発色剤が用いられるとき、電気発色性デバイスを用いて、任意に光発色剤を周囲光によって励起させることができ得る。例えば、波長500nmの光に曝されると光発色剤の外観が変化する場合、特に色が変化する場合、電気応答性スタックは、光発色剤の少なくとも1つの励起波長をフィルタリングするように構成され得る。即ち、電気発色性デバイスの励起状態に応じて、光発色剤は、周囲光に反応してもまたは反応しなくてもよい。
【0216】
図7E〜7Hは、場合により得られる様々な効果を示す。
【0217】
図7Eは、電気励起されていない場合のメイクアップされた区域の外観を示し、図7Fは電気励起されている場合のメイクアップされた区域の外観を示す。図7Gは、光活性化されていないが電気励起されている場合のメイクアップされた区域の外観を示し、図7Hは、光励起され、かつ電気活性化されている場合のメイクアップされた区域の外観を示す。
【0218】
本発明の他の例示的実施形態において、電気発色性デバイスを用いて、真珠光沢効果または干渉効果の可視性を向上させ得る。
【0219】
例えば、電気発色性デバイスの電気応答性スタックの色および干渉顔料の色に応じて、見られる色の強度を増幅することができる。例えば、電気発色性デバイスが、例えばスタックの層の1つにおいてあるいはその表面において少なくとも1つの真珠層、例えば赤色に着色された真珠層を含有する場合、および電気発色性デバイスにより電気応答性スタックの色を青色から緑色へと変更できる場合、真珠層の色の強度は、緑色に着色された電気応答性スタックで、より色が濃いように見える。
【0220】
電気発色性デバイスの電気応答性スタックが、スタックの表面またはスタック中に存在する区域の色に近い色を呈するように作製されるとき、この区域の可視性は低下され得る。前記区域が、色経路に応じて角度彩色効果を示す場合、および電気発色性デバイスが、作動によって、色経路に含まれる色のうちの1つを示すことができる場合、観察角度、照明、および/またはデバイスの曲率に応じて、区域の存在を覆い隠すことが任意に可能になる。例えば、角度彩色性顔料の色経路は必要に応じて、例えば任意に、多かれ少なかれ体積効果を高めるために、現れ得る。
【0221】
電気発色性デバイスを用いて、真珠光沢顔料、例えば真珠層の色効果を選択的に強化し得る。電気発色性デバイスの色に応じて、このような真珠層で生成されるハイライト箇所の強度を増幅することが任意に可能である。
【0222】
電気応答性スタックを用いて、電気発色性デバイスの表面に付着される光学活性層によって伝達される光を吸収または反射してもよく、この光学活性層は、干渉顔料、例えば虹色効果を与える真珠層、または液晶を含有する。干渉顔料として組成物に導入されるのに適した、挙げられる真珠層の例示的な例は、金色の真珠層、特にBrillant gold 212G(Timica)、Gold 222C(Cloisonne)、Sparkle gold(Timica)、Gold 4504(Chromalite)、およびMonarch gold 233X(Cloisonne)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;青銅色の真珠層、特にBronze fine(17384)(Colorona)およびBronze(17353)(Colorona)の商品名でMERCKによって販売されているもの、ならびにSuper bronze(Cloisonne)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;オレンジ色の真珠層、特にOrange 363C(Cloisonne)およびOrange MCR 101(Cosmica)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの、ならびにPassion orange(Colorona)およびMatte orange(17449)(Microna)の商品名でMERCKによって販売されているもの;Nu−antique copper 340XB(Cloisonne)およびBrown CL4509(Chromalite)の商品名でENGELHARDによって販売されている茶色がかった真珠層;Copper 340A(Timica)の商品名でENGELHARDによって販売されている銅の光沢を有する真珠層;赤色の光沢を有する真珠層、特にSienna fine(17386)(Colorona)の商品名でMERCKによって販売されているもの;黄色の光沢を有する真珠層、特にYellow(4502)(Chromalite)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;金色の光沢を有する赤色がかった真珠層、特にSunstone G012(Gemtone)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;ピンク色の真珠層、特にTan opale G005(Gemtone)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;光沢を有する黒色の真珠層、特にNu antique bronze 240 AB(Timica)の商品名でENGELHARDによって販売されているもの;青色の真珠層、特にMatte blue(17433)(Microna)の商品名でMERCKによって販売されているもの;銀色の光沢を有する白色の真珠層、特にXirona Silverの商品名でMERCKによって販売されているもの;およびIndian summer(Xirona)の商品名でMERCKによって販売されているオレンジ−ピンクグリーン−金色のハイライト真珠層;ならびにそれらの混合物である。例として、磁気的特性を示す干渉顔料は、以下の商品名で販売されているものである:MERCKによるCOLORONA BLACKSTAR BLUE、COLORONA BLACKSTAR GREEN、COLORONA BLACKSTAR GOLD、COLORONA BLACKSTAR RED、CLOISONNE NU ANTIQUE SUPER GREEN、MICRONA MATTE BLACK(17437)、MICA BLACK(17260)、COLORONA PATINA SILVER(17289)、およびCOLORONA PATINA GOLD(117288)、または実際にENGELHARDによるFLAMENCO TWILIGHT RED、FLAMENCO 25 TWILIGHT GREEN、FLAMENCO TWILIGHT GOLD、FLAMENCO TWILIGHT BLUE、TIMICA NU ANTIQUE SILVER 110 AB、TIMICA NU ANTIQUE GOLD 212 GB、TIMICA NU−ANTIQUE COPPER 340 AB、TIMICA NU ANTIQUE BRONZE 240 AB、CLOISONNE NU ANTIQUE GREEN 828 CB、CLOISONNE NU ANTIQUE BLUE 626 CB、GEMTONE MOONSTONE G 004、CLOISONNE NU ANTIQUE RED 424 CHROMA−LITE、BLACK(4498)、CLOISONNE NU ANTIQUE ROUGE FLAMBE(コード440 XB)、CLOISONNE NU ANTIQUE BRONZE(240 XB)、CLOISONNE NU ANTIQUE GOLD(222 CB)、およびCLOISONNE NU ANTIQUE COPPER(340 XB)。
【0223】
例として、電気応答性スタックは、電気励起に応じてカメオ(cameo)(淡色/暗色)のバリエーションを示し得る。ここで、電気応答性スタックが淡色を生成するとき、電気応答性スタックの上に位置する干渉顔料はほとんど目視できない。他方、電気応答性スタックまたは液晶が暗色であるとき、干渉顔料または液晶ははっきりと目視可能になる。
【0224】
図7Iおよび7Jは、干渉顔料が、背景の色に応じておおよそ目視可能なときの外観を示す。図7Iは、例えば電気発色性デバイスが作動されていないときの暗色の背景色を示し、図7Jは、例えば電気発色性デバイスが作動されているときの淡色の背景色を示す。
【0225】
図8は、本発明の電気発色性デバイス1が統合されたエネルギー源を含まないとき、または前記エネルギー源を充電する必要があるか、および/またはデバイスをプログラムする必要があるときの、前記デバイスの例に電力供給するのに適したデバイス300を示す。
【0226】
デバイス300は、少なくとも1つの手の指を受け入れるための筐体301を含んでいてもよく、筐体301には、場合により、例えば電気発色性デバイスに電力供給するための電気接点302および303が設けられている。
【0227】
電気接点302および303は、手の指により容易に合わせるために、ばね上に固着または取り付けられていてもよい。
【0228】
図示されていない変形例において、デバイス300は、誘導によって、エネルギーおよび/または情報を電気発色性デバイスに統合されるアンテナに伝達するのを可能にするRFデバイスを含む。
【0229】
図8のデバイス300を使用するために、使用者は、図9Aおよび9Bに示されるように、手の指を筐体301に嵌め、例えば図1Aおよび1Bに示される導体81および82によって形成される、電気発色性デバイスの電気接点を、電源端子303および302に当接させ得る。
【0230】
例えばデバイス300などの電源デバイスは、電気発色性デバイスとともに単一のパッケージ内で販売され得る。
【0231】
本発明にしたがって作製される電気発色性デバイスで起こるような刺激を受けて結果の変化を示す物品の販売は、顧客が、購入の際、その結果を視覚化することができないため、購入する気にならないという欠点を示し得る。このことを改善するために、表示ユニットは、販売場所において、顧客が電気的刺激をかけて色の変化を見ることができるよう少なくとも1つのテスターを提示し得る。表示ユニットは、様々な電気励起手段を含み得る。
【0232】
図10は、本発明の1つ以上の電気発色性多層構造を顧客に示すのに用いられるのに適した表示ユニット400の例を示す。
【0233】
表示ユニットは、見る人が電気発色性構造の少なくとも1つの電気励起の変化によって誘発される変化を見ることができるように、1つ以上の電気発色性構造に選択的に電力供給できるようにする手段を含み得る。例として、電源手段は、使用者が選択した多層電気発色性構造に電力供給するために用い得るスタイラス410、または他のハンドピースの形態である。
【0234】
必要に応じて、表示ユニットは、複数の人が同時に使用できるように、複数の電源手段410を含み得る。表示ユニット上に存在する電気発色性構造には、顧客が後に対応する電気発色性構造を含むパッケージを入手できるようにするための識別子が伴い得る。
【0235】
表示ユニットは、外観の変化の効果を観察するために、自動的にまたは見る人が制御部材を作動させたときに励起される電気発色性多層構造も含み得る。電気発色性多層構造は、販売されている構造と同一の構造であってもよく、または遠くからより見えやすいより大きな構造であってもよい。
【0236】
必要に応じて、電気発色性多層構造を異なる指に取り付けることができるように、図13に示されるように、例えば異なるサイズの電気発色性多層構造の全範囲が使用者に利用され得る。
【0237】
サイズを選択するのを助けるための補助システムが、使用者に利用され得る。選択補助システムは、手の指の図面、図形、または写真を示すパネルに含まれ得る。この際、手の指をパネル上に置き、使用者自身の手の指または爪に最も一致する図面、図形、または写真中の手の指または爪を特定するだけで済む。選択されたサイズの手の指または爪に対応する参照により、最適なサイズの電気発色性デバイスを選択することができる。好ましくは、少なくとも8または10個の異なる電気発色性爪のサイズが、使用者に利用される。
【0238】
電気発色性デバイスは、例えば付け爪の中でも特に、1.1cm〜1.3cmの範囲にある幅の2個の爪、好ましくは幅1.2cmの2個の爪(親指用)、0.6cm〜0.8cmの範囲にある幅の2個の爪、好ましくは幅0.7cmの2個の爪(小指用)、および0.8cm〜1.0cmの範囲にある幅の6個の爪、好ましくは幅0.9cmの6個の爪(その他の指用)を含む、10個の電気発色性付け爪(両手用)のパックで使用者に利用され得る付け爪の形態であり得る。
【0239】
付け爪は個々でも、使用者に利用され得る。
【0240】
電気発色性デバイスは、電気発色性デバイスの励起の変化に伴う前記デバイスの外観の変化を見ることができるように、少なくとも部分的に透明な少なくとも1つのパッケージで販売され得る。電気発色性デバイスの電気接点は、パッケージを開封しなくても使用者が触れられるスイッチを含む電気回路とともにパッケージに含まれる電池に接続され得る。スイッチにより、例えばパッケージの所定の箇所で使用者がかけた圧力の効果で電流を流すことができる。
【0241】
統合されたエネルギー源を充電するため、または電気応答性スタックの外観を少なくとも一時的に変更するために電気応答性スタックを励起するための電気発色性多層構造への電力供給は、図11および12に示される電源デバイスによって行われる。例として、デバイスは、使用者によって扱われるハンドピースを含み、前記ハンドピースの端部には、例えばデバイスの遠位端またはデバイスの底面に位置する電気発色性多層構造の2つの対応する接点を電気的に接触させるための2つの電気端子420および421が設けられている。
【0242】
必要に応じて、デバイス415は、電気エネルギー源423を収容し得る。デバイス415は、端子420または421の少なくとも1つをエネルギー源423に任意に接続できるようにする作動ボタン424およびスイッチ425を含み得る。
【0243】
ここで、使用者は、励起されるべき電気発色性多層構造とデバイス415を接触させることによってデバイス415を使用し、次に電圧が印加される持続時間を正確に制御するための作動ボタン424を押し得る。外観の変化が徐々に進行すると、使用者は、所望の外観が得られたときに電圧の印加を停止し得る。
【0244】
本発明は、爪に施与されるための電気発色性デバイスに限定されず、例として、電気発色性デバイスは、例えば低刺激性の接着剤を用いて、唇または皮膚に施与され得る。
【0245】
示される様々な実施形態の特性が、示されていない変形例において組み合わされ得る。
【0246】
例えば、図1Aおよび1Bに示される導体の構成は、特に図3A〜6Eに示される電気発色性多層構造に用いられ得る。同じことが、図2に示される構成、および図3Aおよび3Bを参照して説明される、角質物質に固着するための固着手段に当てはまる。図4に示される剥離可能な保護フィルムが、他の実施形態の中でも特に図5A〜5Iおよび6A〜6Eに記載されるスタックのいずれかに加えられ得る。
【0247】
電気発色性多層構造によって生成される模様は様々であってもよく、特に任意の英数字および/または陰影、特に陰影を組み込んだ任意のデザインに相当し得る。模様は、場合により自分の好みに合わせてカスタマイズすることができ、その際、デバイスを受け取ることになる人が選択した模様の画像を与え、それにしたがって電気発色性多層構造が作製される。
【0248】
本発明は、電極層および活性電気発色性層が別個である電気発色性多層構造に限定されず、これらの層は、公報の国際公開第2005/015301号パンフレットに示されるように、必要に応じて一致してもよい。
【0249】
模様は、電気発色性デバイスが励起されている間のみ目視可能であるか、または、変形例において、模様は、用いられる材料に応じて、電気発色性デバイスが励起されている間のみ目視可能であることを中断し得る。
【0250】
活性電気発色性層は、例えば以下のリストから選択され、単独で、混合物で、または並行して用いられる1つ以上のポリマーを含み得る:
・ポリ(3−メチルチオフェン):
【化1】


・ポリ(3,3−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−チエノ−[3,4−b]ジオキセピン:
【化2】


・ポリ(3,4−エチレンジオキシピロール)(a)およびポリ(3,4−プロピレンジオキシピロール)(Pprodop)(b)[(ポリ(3,4−アルキレンジオキシピロール)PXDOT誘導体の代表例]:
【化3】


・ポリ(N−スルホナトプロポキシ−ProDOP):
【化4】


・ポリ(ビス−エチレンジオキシチオフェン−N−メチルカルバゾール):
【化5】


・ポリ(ビス−エチレンジオキシチオフェン−ピリジン):
【化6】


・ポリ(ビス−エチレンジオキシチオフェン−ピリドピラジン):
【化7】


・ポリ−(ベンゾ[c]チオフェン−N−2−エチルヘキシ−4,5−ジカルボン酸イミド):
【化8】


・ポリ(2,2’−[10−メチル−3,7−フェノチアジレン]−6,6’−ビス[4−フェニルキノリン]):
【化9】

【0251】
本発明において、電気発色性導電性ポリマーの層は、例えば、ポリアニリン;ポリチオフェン;およびポリピロール;およびドーパントから選択される材料を含み得る。好ましくは、電気発色性導電性ポリマーの層は、ポリジフェニルアミン;ポリ(4−アミノビフェニル);ポリ(3−アルキル(C1〜C8)チオフェン);ポリ(ジフェニルベンジジン);ポリフェニレン;ポリ(フェニレンビニレン);ポリ(アリレンビニレン);ポリ(アミノキノリン);ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン);およびそれらの誘導体;あるいはそれらの誘導体またはコポリマー;およびドーパントから選択される材料を含む。
【0252】
電解質層は、ポリマーと溶解塩との混合物の中から選択されるのが好ましい。ポリマーは、例えば、以下のリストから選択される:ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンポリオキシド、オキシエチレンおよびエピクロリドリン(epichloridrine)コポリマー、プロピレンポリオキシド、ポリアルキル−メタクリレート、およびポリアルキル−アクリレート。塩は、塩化ナトリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、またはテトラフルオロホウ酸リチウムであり得る。
【0253】
電解質層は、特に、過塩素酸リチウムと、オキシエチレンおよびエピクロリドリンコポリマーとの混合物であり得る。
【0254】
ポリマーはまた、必ずしも溶解塩を伴わなくても用いられ得る。これは、特に、スルホネートポリスチレン、ポリイミダゾールの塩化物または臭化物、ポリビニルピリジン、およびポリアミドプロピルスルホネートなどの高分子電解質ポリマーの場合、そうである。
【実施例】
【0255】
提供される実施例
実施例1
ポリエチレンジオキシチオフェンの溶液(参照Baytron(登録商標)で販売されており、Bayerから入手可能である)を、支持体ならびに導電性の透明なITOで例えば3平方センチメートル(cm)の範囲にわたって覆われたPETで形成されるShieldal(米国)から入手可能な電極層に付着させ、次に、第1の活性電気発色性層を形成するように乾燥させた。
【0256】
次に、ポリピロールのフィルムを、導電性の透明な酸化物で覆われたポリエチレンテレフタレートの第2の層に電気泳動によって付着させた。0.7Vの定電位を用いて、過塩素酸リチウムを含む水溶液で電解重合を行った。第2の活性電気発色性層で被覆された第2の電極支持層が得られた。
【0257】
0.015グラム(g)の過塩素酸リチウムを、オキシエチレンおよびエピクロリドリンコポリマー(DAISO Co.から参照EM−2で入手可能)0.7gと、5ミリリットル(mL)のテトラヒドロフランとの混合物に溶解させることによって、電解質を作製した。次に、混合物をBaytron(登録商標)で覆われた電極に塗布した。周囲温度で2時間乾燥させた後、ポリピロールで覆われた裏面電極を、圧力をかけながら加えることで、電気応答性スタックを得た。電気応答性スタックにより、赤色に着色されたフィルムによって構成された光学活性層を覆った。デバイスは、電位を−1.5V〜+1.5Vの間で変更することによって、オレンジ色/茶色と青色/紫色との間の色の変化を表示することができた。
【0258】
色の変化は、10秒未満の間、起こった。
【0259】
実施例2
この実施例は、第1の活性電気発色性層を、ある模様、例えばハート形の模様を形成するように被覆したことで、実施例1と異なる。デバイスの電気励起により、図7Aおよび7Bに示されるように、デバイスの色を変化させることができた。
【0260】
実施例3
この実施例は、ある模様、例えば星形が見えるように切り取った、例えば赤色のマスク形成不透明フィルムを、電気応答性スタックの表面に設置したことで、実施例1と異なる。電気励起により、マスクにおいて切り取りによって画定された模様の色を変化させることができた。
【0261】
実施例4
この実施例は、Baytron(登録商標)の層を不均一に付着させたことで、実施例1と異なる。スプレッダを、異なる高さの2つの側を有するように調節した。電位を−1.5V〜1.5Vの間で変更することによって、色の陰影が得られた。
【0262】
実施例5
実施例1の多層構造を付け爪に施与した。Baytron(登録商標)およびポリピロールの層を、施与後のデバイスの外観を損なうことなく、触れられる状態に保つように付け爪の底面および付け爪の先に位置する導体に接続した。導体は、1mmの表面積を各々が有する銅板であった。
【0263】
実施例6
この実施例では、多層構造の下に設置されたSR416ボタン電池に接続された、実施例1の多層構造を用いた。スイッチとして働くポリエチレンのフィルムなどの絶縁シートを電気回路に挿入した。爪のメイクアップのために、絶縁シートは、最初に、爪の先において、デバイスの下の電池の端子の1つと接触され得る。
【0264】
実施例7
この実施例は、例えばAPEMから入手可能なPHAP3391タイプのタッチセンサー式スイッチがデバイスに設けられたことで、実施例6と異なる。このスイッチは、爪の先において、多層構造の下に設置されるのに適するものであった。
【0265】
実施例8
この実施例は、励起電流の強度を変更するために、調節可能な電位差計、例えばCERMET CMSを電気回路に挿入したことで、実施例6と異なる。
【0266】
実施例9
この実施例は、剥離可能な保護フィルムを形成するために、上部支持層の表面に付着された、厚さ5μmのセルロースアセトブチレートおよび厚さ5μmのポリエチレンの5つの交互の層を含んでいたことで、実施例1と異なる。各層を取り外しやすくするために、上部層が、層の全てを剥がすことなく、剥がそうとするフィルムを簡単に掴めるようにするためのタブとなるように、セルロースアセトブチレートコーティングの部分は、施与区域をわずかに超えていた。
【0267】
実施例10
この実施例では、電気発色性デバイスは、その表面に、メイクアップ落としによって取り除かれるのに適した保護層を示した。デバイスの残りの部分は、メイクアップ落としに耐性があった。
【0268】
実施例1のデバイスの上部を、エタノールベースのニス(20%のシェラック(Shellac)ガム、80%のエタノール)の層で被覆した。PETはエタノールに耐性があるため、デバイスを損傷せずにエタノールベースのメイクアップ落としで保護層を取り除くことができた。その後、必要に応じて、ニスを用いて保護層を再度施与することができた。
【0269】
実施例11
Dispofix 645 E(National Adhesivesから入手可能)の50μmの層で覆われた接着剤を、実施例1の電気発色性デバイスの底面と接触させた。付着性を高めるために圧力をかけた。施与の際に、接着剤を保護するための保護フィルムを取り外した。
【0270】
実施例12
3%のXirona Kiwi−rose角度彩色性顔料(Merck)を、実施例1の第1の活性電気発色性層に加えた。そのようにして、角度彩色性顔料の光学効果によって高められた電気発色性効果は、電気発色性デバイスの励起状態に応じて多かれ少なかれ目視可能であった。
【0271】
実施例13
3%のMetashine Silver顔料(日本板硝子株式会社)を、実施例1の第1の活性電気発色性層に加えた。そのようにして、金属顔料の光学効果によって高められた電気発色性効果は、電気発色性デバイスの励起状態に応じて多かれ少なかれ着色された。
【0272】
本発明は、示される実施形態に限定されない。
【0273】
電気発色性デバイスは、冷光発光性であってもまたは冷光発光性でなくてもよい。
【0274】
「1つの〜を含む」という表現は、相反する規定がない限り「少なくとも1つの〜を含む」と同義であるものと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0275】
10:第1の活性電気発色性層
20:第2の活性電気発色性層
30:電解質層
40:第1の電極層
50:第2の電極層
60:支持層
70:支持層
81:導体
82:導体
84:絶縁層
85:絶縁層
200:光学活性層
0:爪
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの角質物質に施与されるためのメイクアップデバイス(1)において、少なくとも:
・第1および第2の電極層(10;20);
・第1および第2の活性電気発色性層(40;50);ならびに
・電解質層(30)
によって形成される電気応答性スタックを含み;かつ
・前記電気応答性スタック上に少なくとも部分的に重ねられた光学活性層(200)
をさらに含む電気発色性多層構造を含む前記デバイス。
【請求項2】
前記光学活性層が、前記電気応答性スタックの上に位置する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記光学活性層が、前記電気応答性スタックの2つの層の間に位置する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記光学活性層が前記電気応答性スタックの下に位置する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記光学活性層が着色されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記光学活性層が冷光発光性であり、前記電気応答性スタックが、その電気励起に応じて、前記光学活性層の少なくとも1つの光励起波長を多かれ少なかれ遮断することが可能である、請求項3または請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記光学活性層が光発色性であり、前記電気応答性スタックが、その電気励起に応じて、前記光学活性層の少なくとも1つの光励起波長を多かれ少なかれ遮断することが可能である、請求項3または請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記光学活性層が、前記電気応答性スタックの全範囲にわたって延在している、請求項1〜7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記光学活性層が不連続である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記光学活性層が、干渉顔料および/または液晶を含む、請求項2または請求項3に記載のデバイス。
【請求項11】
前記干渉顔料が、角度彩色性顔料または回折顔料を含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記電気応答性スタックが、前記角度彩色性顔料または回折顔料の色経路の色をフィルタリングすることが可能である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
爪に固着されるように構成される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
ヒトの角質物質にメイクアップを施与する方法において、請求項1〜13のいずれか一項に記載のデバイスが前記物質に固着される、前記方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図5J】
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【図5K】
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【図5L】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−531940(P2012−531940A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516971(P2012−516971)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053058
【国際公開番号】WO2011/001416
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(595100370)ロレアル (108)
【氏名又は名称原語表記】L′OREAL
【Fターム(参考)】