説明

電気的接続装置

【課題】ケース内における回転電機とインバータ装置との間の電気的な接続及び遮断を簡易かつ安全に行うことができる電気的接続装置を提供する。
【解決手段】電気的接続装置Eは、第一バスバー21と、第二バスバー31と、接続部材41とを備え、接続部材41は、対向配置される第一バスバー21の第一対向部F2と第二バスバー31の第二対向部F3とを挟持して電気的に接続するクリップ部51と、当該クリップ部51を保持する保持部52と、当該保持部52を案内方向に沿って移動可能に案内する案内部53とを備え、クリップ部51は、案内方向の一方側に向けて開口して第一対向部F2及び第二対向部F3を挿入可能な開口部を備え、案内部53は、クリップ部51が第一対向部F2と第二対向部F3とを挟持する接続位置と、第一対向部F2及び第二対向部F3がクリップ部51から外れる非接続位置との間で保持部52を案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機及び当該回転電機を制御するインバータ装置を収容するケース内において、回転電機とインバータ装置とを電気的に接続するための電気的接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の駆動力源として回転電機を備えた電気自動車や、内燃機関及び回転電機を備えたハイブリッド車が、燃費、環境保護等の点から注目を集めている。このような車両に用いられる駆動装置においては、回転電機を制御するためのインバータ装置が必要となる。回転電機及びインバータ装置は、これらを収容するケース内において電気的に接続される。一般的には、回転電機の端子とインバータ装置の端子とがバスバー等の接続導体で接続されることにより、回転電機とインバータ装置とが電気的に接続される。このような構成の一例として、ハイブリッド駆動装置における二つの回転電機とインバータ装置との間の電気的な接続構造が下記の特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1に示されたハイブリッド駆動装置では、回転電機の端子には回転電機側の接続導体としてのリード線の一端が接続され、インバータ装置の端子にはインバータ装置側の接続導体としてのリード線の一端が接続される。また、回転電機側のリード線の他端とインバータ装置側のリード線の他端とは、接続部材としてのターミナルに接続される。これにより、ターミナル部材を介して回転電機とインバータ装置とが電気的に接続される。この際、回転電機側のリード線の他端及びインバータ装置側のリード線の他端は、それぞれターミナルに形成されたボルト孔に螺合するボルトにより締結される。これによって、両リード線は、ターミナルに対して電気的に接続され、機械的に固定される。つまり、特許文献1に記載されたハイブリッド駆動装置においては、回転電機側のリード線、インバータ装置側のリード線、ボルト孔が形成されたターミナル、並びに複数のボルトにより、回転電機とインバータ装置とが電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−119810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された接続構造は、ハイブリッド駆動装置が、回転電機側リード線の外部取り出しスペースを確保するために大きく膨らんでしまうことを抑制できる優れた構造である。但し、ボルトによる締結を必要とするため、回転電機のステータコイルの回線数が増えるなどによって、ボルトによる締結箇所が増大すると締結作業にかかる工数が増大する。また、ケース内にボルト締結のためのスペースを確保しつつ駆動装置の大型化を抑制しようとすれば、ボルト締結を行う工程の順序の自由度が低下する可能性がある。その結果、ボルト締結作業の煩雑化を招いたり、工数削減の余地が低下したりする可能性がある。また、例えば点検や整備等のメンテナンス時に回転電機とインバータ装置とを切り離そうとする場合にも、同様に作業の煩雑化を招く可能性がある。更に、特許文献1の接続構造は、高電圧が印加されることになるリード線とターミナルとを直接ボルトで接続する構造である。このため、特に一旦、高電圧が印加された後に行われる場合が多いボルトの取り外し作業に際して、安全性を確保するためにインターロック機構(例えば、ケースの一部が取り外されたことを検知して自動的に印加電圧をゼロとする機構)などの安全機構を設けることが好ましく、高コスト化を招く原因ともなる。
【0006】
そこで、ケース内における回転電機とインバータ装置との間の電気的な接続及び遮断を簡易かつ安全に行うことができる電気的接続装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気的接続装置の特徴構成は、回転電機及び当該回転電機を制御するインバータ装置を収容するケース内において、前記回転電機と前記インバータ装置とを電気的に接続するために、前記ケースから絶縁された状態で前記回転電機の端子に接続される第一バスバーと、前記ケースから絶縁された状態で前記インバータ装置の端子に接続される第二バスバーと、前記第一バスバーと前記第二バスバーとを電気的に接続する接続部材と、を備え、前記第一バスバー及び前記第二バスバーは、互いに離間しつつ対向して配置される対向部をそれぞれ有し、前記第一バスバーの前記対向部を第一対向部、前記第二バスバーの前記対向部を第二対向部とし、前記第一対向部での前記第一バスバーの延在方向を第一延在方向、前記第二対向部での前記第二バスバーの延在方向を第二延在方向とし、前記第一対向部と前記第二対向部とが対向する方向を対向方向として、前記接続部材は、前記第一対向部と前記第二対向部とを挟持してこれらを電気的に接続するためのクリップ部と、当該クリップ部を保持する保持部と、前記第一延在方向、前記第二延在方向、及び前記対向方向のいずれにも交差する方向を案内方向として前記保持部を当該案内方向に沿って移動可能に案内する案内部と、を備え、前記クリップ部は、前記案内方向の一方側に向けて開口して前記第一対向部及び前記第二対向部を挿入可能な開口部を備え、前記案内部は、前記クリップ部が前記第一対向部と前記第二対向部とを挟持する接続位置と、当該接続位置よりも前記案内方向の他方側の位置であって前記第一対向部及び前記第二対向部が前記クリップ部から外れる非接続位置との間で前記保持部を案内する点にある。
【0008】
ここで、「回転電機」とは、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0009】
このような特徴構成とすれば、第一バスバー及び第二バスバーを電気的に接続するクリップ部を備えた保持部を案内方向に沿って移動させるだけの簡単な構成で、ケース内における回転電機とインバータ装置との間の電気的な接続を簡易に行うことができる。逆に、保持部を引退させて第一バスバーの第一対向部と第二バスバーの第二対向部との挟持状態を解除するだけの簡単な構成で、ケース内における回転電機とインバータ装置との間の電気的な遮断を簡易に行うことができる。したがって、第一バスバー及び第二バスバーの電気的な接続及び遮断を行う際、ユーザが、直接、第一バスバー及び第二バスバーに触れることがないので、安全に行うことが可能となる。
【0010】
また、前記保持部は、前記第一対向部及び前記第二対向部が挿入される挿入孔を備え、前記挿入孔は、前記保持部が前記接続位置と前記非接続位置との間で移動した際に前記第一対向部及び前記第二対向部が当該挿入孔内で相対移動可能に構成され、前記保持部が前記接続位置にある状態で前記第一対向部及び前記第二対向部を挟持可能な前記挿入孔内の位置に、前記クリップ部が配置されていると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、保持部が第一対向部及び第二対向部に干渉することなくクリップ部を適切な位置に保持することができる。そして、保持部を案内部に対して相対移動させることにより、クリップ部で第一バスバーと第二バスバーとを挟持することができるので、第一バスバーと第二バスバーとの電気的な接続及び遮断を簡易かつ安全に行うことが可能となる。
【0012】
また、一本の前記第一バスバーと一本の前記第二バスバーとの組であるバスバー組を複数備え、当該バスバー組のそれぞれの前記第一対向部と前記第二対向部との組を対向部組とし、前記接続部材は、前記対向部組と同数の前記クリップ部を備え、前記保持部は、複数の前記対向部組のそれぞれに対応する位置に前記クリップ部を保持すると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、1つの保持部を案内方向に移動させるだけで、複数の第一バスバーと、複数の第二バスバーとの接続及び遮断を同時に簡易かつ安全に行うことが可能となる。
【0014】
また、複数の前記対向部組の一部が他の前記対向部組に対して前記対向方向の一方側に配置されていると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、接続位置と非接続位置との二位置間で移動させる必要がある複数のクリップ部の一部を他のクリップ部に対して対向方向一方側に配置できる。これにより、複数のクリップ部を少なくとも二列に配置できる。よって、対向部組を一列に並べた場合の長さに比べて、クリップ部の配置領域を、案内方向に短くすることができる。したがって、電気的接続装置をコンパクトに構成することができる。
【0016】
また、例えば、前記第一延在方向と前記第二延在方向とが平行であり、前記対向方向が前記第一延在方向及び前記第二延在方向に直交する方向であり、前記案内方向が、前記第一延在方向及び前記第二延在方向に直交すると共に前記対向方向にも直交する方向であっても良い。
【0017】
このような構成とすれば、延在方向に直交する対向方向に沿って互いに対向する第一バスバー及び第二バスバーの双方を、案内方向に沿って移動するクリップ部材により同時に挟持することができる。また、第一バスバー及び第二バスバーを電気的に遮断する際には、クリップ部を最短の移動量で、且つ、第一バスバー及び第二バスバーから同時に離間させることができる。したがって、接続及び遮断をする際にクリップ部に生じる応力を必要最小限にすることができるので、クリップ部の劣化(弾性力の低下)を防止できる。
【0018】
また、前記保持部を前記案内方向に移動させる移動機構を更に備え、前記移動機構は、前記ケースの内部において前記保持部に連結されると共に、操作部が前記ケースの外部に延出していると好適である。
【0019】
このような構成とすれば、ケースの外部から操作部を操作することにより、ケース内における第一バスバーと第二バスバーとの間の電気的な接続及び遮断を行うことができる。このため、回転電機及びインバータ装置の高圧の電気系統をケースの外部に露出させることがないので、電気的な接続及び遮断を簡易かつ安全に行うことができる。また、安全性を確保するためのインターロック機構などの安全機構を設ける必要がないので、低コストで電気的接続装置を実現できる。更に、電気的接続装置をケース外に取り出すことなく、第一バスバーと第二バスバーとの電気的な接続及び遮断を行うことができるので、ケースの内部への異物の侵入も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電気的接続装置を備えた駆動装置の部分断面図である。
【図2】保持部及び案内部の斜視図である。
【図3】第一対向部及び第二対向部の配置について示す図である。
【図4】第一バスバーと第二バスバーとの非接続状態を示す図である。
【図5】第一バスバーと第二バスバーとの接続状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る電気的接続装置の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る電気的接続装置Eは、車両用の駆動装置1に適用される。本電気的接続装置Eは、回転電機11及び当該回転電機11を制御するインバータ装置16を収容するケース2内において、回転電機11とインバータ装置16とを電気的に接続する機能を備えている。
【0022】
本実施形態に係る電気的接続装置Eは、ケース2から絶縁された状態で回転電機11の端子(回転電機側端子12)に接続される第一バスバー21と、ケース2から絶縁された状態でインバータ装置16の端子(インバータ側端子17)に接続される第二バスバー31と、第一バスバー21と第二バスバー31とを電気的に接続する接続部材41と、を備えている。本実施形態では、このような第一バスバー21及び第二バスバー31は、帯状金属板により構成される。帯状金属板とは帯状の金属板であり、本実施形態では、例えば板厚が数mm程度で、板幅が数cm程度のものが利用される。もちろん、これ以外のサイズのものを利用することも当然に可能である。
【0023】
このような構成において、本実施形態に係る電気的接続装置Eは、図1に示されるように、ケース2によって外部に対して隔離されたケース内空間Sに第一バスバー21と第二バスバー31とが収容された状態で、第一バスバー21及び第二バスバー31は、互いに離間しつつ対向して配置される対向部Fをそれぞれ有する。以下の説明では、理解を容易にするために、第一バスバー21の対向部Fを第一対向部F2、第二バスバー31の対向部Fを第二対向部F3として説明する。第一バスバー21は、ケース2内に固定された固定部材としての保持台62に支持される。接続部材41は、ケース2のケース内空間Sに収容され、互いに離間しつつ対向して配置された一組の第一バスバー21の第一対向部F2及び第二バスバー31の第二対向部F3の双方を板厚方向外側から押圧して、当該一組の第一バスバー21と第二バスバー31とを電気的に接続する。これにより、ケース2内における回転電機11とインバータ装置16との間の電気的な接続及び遮断を簡易かつ安全に行うことが可能となっている。以下、本実施形態に係る電気的接続装置Eの各部の構成について詳細に説明する。
【0024】
1.駆動装置の構成
まず、本実施形態に係る電気的接続装置Eが適用された、車両用の駆動装置1の構成について説明する。駆動装置1は、図1に示されるように、車両の駆動力源として機能する少なくとも1つの回転電機11と、回転電機11を制御するインバータ装置16と、を備えている。本実施形態においては、駆動装置1は、駆動力源としてもう1つの回転電機を備えると共に同じく駆動力源として機能するエンジンに更に駆動連結されており、2モータ式のハイブリッド駆動装置として構成されている。なお、本願では2つの回転電機について、特に区別する必要はないので、以下の説明では、これらを包括的に「回転電機11」と称するものとする。回転電機11及びインバータ装置16は、ケース2内に収容されている。
【0025】
本実施形態では、ケース2は、駆動装置ケース3と、当該駆動装置ケース3に締結固定されるインバータケース4と、当該インバータケース4に締結固定されるインバータカバー5と、を備えている。そして、駆動装置ケース3とインバータケース4とが分離可能に構成されると共に、インバータケース4とインバータカバー5とが分離可能に構成されている。そして、ボルト等の固定手段により駆動装置ケース3に対してインバータケース4が取り付けられた状態で、駆動装置ケース3の内部には回転電機11を収容するためのモータ収容空間S1が形成される。また、ボルト等の固定手段により更にインバータケース4に対してインバータカバー5が取り付けられた状態で、インバータケース4の内部にはインバータ装置16を収容するためのインバータ収容空間S2が形成される。
【0026】
駆動装置ケース3には回転電機11が収容されて固定されている。回転電機11は、ロータ11aとステータ11bとを有して構成され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(回転機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。そのため、回転電機11は、不図示の蓄電装置と電気的に接続されている。ステータ11bには不図示のコイルが巻装されており、当該コイルのステータ11bの軸方向外側に突出するコイルエンド部11cから接続配線が引き出されて、回転電機11の端子である回転電機側端子12が形成されている。本実施形態では、回転電機11は三相交流で駆動される回転電機とされているので、1つの回転電機11当たり、各相に対応させて3つの回転電機側端子12が形成されている。なお、図1には、本発明に係る電気的接続装置Eを説明するのに必要な部分のみを表示している。このため、図1には示されていないが、駆動装置ケース3には、回転電機11以外にも、遊星歯車装置等からなる駆動伝達機構が収容されている。
【0027】
インバータケース4にはインバータ装置16が収容されて固定されている。インバータ装置16は、回転電機11に対して供給する三相交流電力を制御することにより、回転電機11を制御する。詳細な説明は省略するが、インバータ装置16は、スイッチング素子モジュール、リアクトル、及びコンデンサ等を備え、これらが一体的に組み付けられてなるインバータユニットとして構成されている。本実施形態においては、スイッチング素子モジュールから接続配線が引き出されて、インバータ装置16の端子であるインバータ側端子17が形成されている。本実施形態では、回転電機11は三相交流で駆動される回転電機とされているので、1つの回転電機11当たり、各相に対応させて3つのインバータ側端子17が形成されている。
【0028】
上述したような構成を有する駆動装置1において、本発明にあっては、ケース2内において回転電機11とインバータ装置16とを電気的に接続するための装置として、電気的接続装置Eが備えられている。
【0029】
2.電気的接続装置の構成
次に、電気的接続装置Eの構成について説明する。本実施形態に係る電気的接続装置Eは、回転電機側端子12に接続される第一バスバー21と、インバータ側端子17に接続される第二バスバー31と、第一バスバー21と第二バスバー31とを接続する接続部材41と、を備えている。なお、以下では、回転電機側端子12とインバータ側端子17とを結ぶ方向を接続方向Lとして説明する。本実施形態では、図1に示されるように、インバータ側端子17が回転電機側端子12に対して鉛直方向(図1における上下方向)上側に配置されており、当該鉛直方向が接続方向Lとされている。また、この接続方向Lに対して直交する方向が交差方向Cとされている。
【0030】
ここで、詳細は後述するが、第一バスバー21と第二バスバー31との接続は、接続部材41が備えるクリップ部51(図2参照)で第一バスバー21及び第二バスバー31の双方を挟持することにより行われる。説明の理解を容易にするために、ここで、上述の接続方法L及び交差方向C以外にも各方向を定義する。図3(a)には、クリップ部51が第一バスバー21及び第二バスバー31を挟持する前の状態が示される。図3(b)には、クリップ部51が第一バスバー21及び第二バスバー31を挟持した後の状態が示される。図3(a)に示されるように、第一バスバー21は第一対向部F2を有し、第二バスバー31は第二対向部F3を有している。
【0031】
第一対向部F2での第一バスバー21の延在方向が第一延在方向Z1として規定される。本実施形態では、上述のように、第一バスバー21は帯状金属板で構成される。したがって、第一バスバー21の延在方向とは、第一バスバー21を構成する帯状金属板の長手方向が相当する。また、上述のように、第一対向部F2は第一バスバー21の一部を構成する。したがって、第一対向部F2での第一バスバー21の延在方向とは、第一対向部F2における第一バスバー21が延びている方向が相当する。このような方向は、図3(a)に示されるように第一延在方向Z1として規定される。なお、第一バスバー21は、図3に示されていない部分において各方向に屈曲されている場合がある。
【0032】
また、第二対向部F3での第二バスバー31の延在方向が第二延在方向Z2として規定される。本実施形態では、上述のように、第二バスバー31も帯状金属板で構成される。したがって、第二バスバー31の延在方向とは、第二バスバー31を構成する帯状金属板の長手方向が相当する。また、第二対向部F3は第二バスバー31の一部を構成する。したがって、第二対向部F3での第二バスバー31の延在方向とは、第二対向部F3における第二バスバー31が延びている方向が相当する。このような方向は、図3(a)に示されるように第二延在方向Z2として規定される。なお、第二バスバー31は、図3に示されていない部分において各方向に屈曲されている場合がある。
【0033】
同様に、第一対向部F2と第二対向部F3とが対向する方向は、対向方向Yとして規定される。上述のように、第一対向部F2と第二対向部F3とは、互いに離間しつつ対向して配置される。このような第一対向部F2と第二対向部F3とが互いに対向する方向は、図3(a)に示されるように対向方向Yとして規定される。ここで、上述のように、第一バスバー21及び第二バスバー31が帯状金属板で形成されている。そして、第一対向部F2を構成する平面と第二対向部F3を構成する平面とは互いに平行に配置されている。本実施形態では、この第一対向部F2及び第二対向部F3の双方の法線ベクトルに平行な方向が対向方向Yとなっている。また、本実施形態では、第一対向部F2と第二対向部F3とが、対向方向Yに沿って所定の離間距離Dだけ間隔を空けて互いに平行に配置される。
【0034】
更に、第一延在方向Z1、第二延在方向Z2、及び対向方向Yのいずれにも交差する方向が、案内方向Xとして規定される。第一延在方向Z1、第二延在方向Z2、及び対向方向Yのいずれにも交差するとは、第一延在方向Z1、第二延在方向Z2、及び対向方向Yの全てに対し、平行でないことを意味する。案内方向Xは、このように第一延在方向Z1、第二延在方向Z2、及び対向方向Yに対して交差するように規定される。
【0035】
本実施形態では、より理解し易くするために、第一延在方向Z1と第二延在方向Z2とが平行であり、対向方向Yが第一延在方向Z1及び第二延在方向Z2に直交する方向であり、案内方向Xが、第一延在方向Z1及び第二延在方向Z2に直交すると共に対向方向Yにも直交する方向に設定される例について説明する。ここでは、第一延在方向Z1と第二延在方向Z2とが平行であるとは、第一延在方向Z1と第二延在方向Z2との双方を含む平面内においてこれらが互いに平行であることを意味している。図3(a)には、このような第一延在方向Z1及び第二延在方向Z2と、対向方向Yと、案内方向Xとが、互いに直交するように規定された座標系が示されている。以下の説明においては、それぞれの方向が、図3(a)のように規定されているとして説明する。
【0036】
第一バスバー21及び第二バスバー31は、銅やアルミニウム等の導電性材料で形成された帯状の部材で構成される。第一バスバー21は回転電機側端子12に電気的に接続され、本実施形態においては、第一バスバー21は接続方向Lに沿って延在している。したがって、上述の第一延在方向Z1は接続方向Lと一致している。第二バスバー31はインバータ側端子17に電気的に接続され、本実施形態においては、第二バスバー31は接続方向Lに沿って延在している。したがって、上述の第二延在方向Z2は接続方向Lと一致している。ここで、本実施形態では、上述のように回転電機11は三相交流で駆動される回転電機11とされているので、1つの回転電機11当たり、各相に対応させて3つの第一バスバー21及び3つの第二バスバー31が設けられている。また、本実施形態では、駆動装置1は2つの回転電機11を備えて構成されることから、2つの回転電機11で合計6つの第一バスバー21及び6つの第二バスバー31が設けられる(図4及び図5参照)。したがって、本実施形態では、一本の第一バスバー21と一本の第二バスバー31との組であるバスバー組が複数備えられ、当該バスバー組のそれぞれの第一対向部F2と第二対向部F3との組を対向部組として規定される。本実施形態では、第一バスバー21は6本備えられ、第二バスバー31も6本備えられる。このため、バスバー組は6組備えられるとともに、対向部組も6組備えられる。
【0037】
また、図4及び図5に示されるように、複数の対向部組の一部が、他の対向部組に対して対向方向Yの一方側に配置される。本実施形態では、6組の対向部組のうちの2組の対向部組が、他の対向部組に相当する4組の対向部組に対して対向方向Yの一方側において案内方向Xに一列に並んで配置される。また、4組の対向部組が対向方向Yの他方側において案内方向Xに一列に並んで配置される。このように電気的接続装置Eにおいては、対向部組が対向方向Yに互いにずれて2列に並んで構成される。このように2列に並んだそれぞれの対向部組の第一バスバー21の接続方向Lの一箇所には、図1に示されるように、段差部24が設けられる。それぞれの第一バスバー21において当該段差部24よりも回転電機側端子12側の部位が第一延在部22とされ、その反対側(段差部24よりもインバータ側端子17側)の部位が第二延在部23とされている。第一延在部22と第二延在部23とは、段差部24を介して互いに連続するように設けられている。
【0038】
本実施形態では、第一バスバー21は、段差部24において、交差方向Cにオフセットされている。本実施形態では、この交差方向Cと対向方向Yとが一致するように構成される。そして、第一バスバー21のそれぞれの第二延在部23は、交差方向Cでそれぞれの第一延在部22よりもインバータケース4の側壁4aとは反対側に配置されている。本実施形態では、2列に並んだ対向部組のうちの一方の列(図1において側壁4a側の列)の対向部組の第一バスバー21の段差部24より、他方の列(図1において側壁4aから離れた側の列)の対向部組の第一バスバー21の段差部24の方が、交差方向Cのオフセット量が大きく構成されている。
【0039】
第一バスバー21は、回転電機11とインバータ装置16との電気的な接続を可能とするべく、モータ収容空間S1とインバータ収容空間S2とに亘って、インバータケース4の底部壁4bを貫通する形態で設けられている。ここでは、図1に示されるように、インバータケース4の底部壁4bにはモータ収容空間S1とインバータ収容空間S2とを連通する連通孔4cが形成されており、互いに並列配置された3つの第一バスバー21は絶縁性の樹脂材料(例えばPPS樹脂、エポキシ樹脂等)を用いて形成された保持台62によって一括保持された状態で連通孔4c部分を通過することにより、インバータケース4の底部壁4bを貫通するように構成されている。保持台62はボルト等の締結部材により駆動装置ケース3の上面部に固定されている。
【0040】
本実施形態における6つの第一バスバー21のそれぞれの第一延在部22は、一端が接続方向Lに沿って駆動装置ケース2内に突出し、他端が保持台62により保持されている。また、それぞれの段差部24は保持台62の内部に位置するように構成される。更に、それぞれの第二延在部23は、一端が接続方向Lに沿ってインバータ収容空間S2に突出し、他端が保持台62に支持されている。
【0041】
本実施形態では、図1に示されるように、電気的接続装置Eにおいて、交差方向Cに2列に第二バスバー31が並べられる。このように2列に並んだうちの一方の列(図1において側壁4aから離れた側の列)のそれぞれの第二バスバー31の接続方向Lには2つの段差部35、36が設けられる。それぞれの第二バスバー31において段差部35よりもインバータ側端子17側の部位が第一延在部32とされ、段差部35と段差部36との間の部位が第二延在部33とされ、段差部36よりも回転電機側端子12側の部位が第三延在部34とされている。第一延在部32と第二延在部33とは、段差部35を介して互いに連続するように設けられ、第二延在部33と第三延在部34とは、段差部36を介して互いに連続するように設けられている。
【0042】
また、本実施形態では、図1に示されるように、段差部35、36は、交差方向Cにオフセットされ、水平方向の段差を有して形成されている。また、段差部35よりも段差部36の方が段差が小さく構成されている。このような第二バスバー31(図1における側壁4aから離れた側の第二バスバー31)は、第一延在部32の一端がインバータ装置16のインバータ側端子17に固定され、接続方向Lに沿って設けられる。また、第一延在部32の他端に設けられた段差部35により交差方向Cに沿って側壁4aから離れる方向にオフセットされる。オフセットされた位置を一端とする第二延在部33が接続方向Lに沿って設けられる。第二延在部33の他端には段差部36が設けられ、交差方向Cに沿って側壁4a側にオフセットされる。オフセットされた位置から接続方向Lに沿って第三延在部34が設けられる。
【0043】
一方、第二バスバー31が板厚方向に2列に並べられたうちの一方の列(図1において側壁4a側の列)のそれぞれの第二バスバー31は、接続方向Lに沿って段差部を有することなく設けられ、第一延在部32のみで構成されている。なお、この第二バスバー31も、第一延在部32の一端がインバータ装置16のインバータ側端子17に固定され、接続方向Lに沿って設けられる。
【0044】
また、インバータケース4には電流センサ61が固定されている。インバータ収容空間S2において、第一延在部32のみからなる第二バスバー31は、電流センサ61を接続方向Lに貫通するように設けられている。また、図示はしないが、段差部35、36を有する第二バスバー31にも電流センサ61が設けられている。したがって、電流センサ61は、2つの回転電機11(二組の3つの第二バスバー31)のそれぞれに対して設けられている。電流センサ61は、1つの回転電機11が備える3つの第二バスバー31のそれぞれを流れる電流値を検出して、回転電機11を駆動するための各相の駆動電流の瞬時値を検出する。
【0045】
接続部材41は、クリップ部51、保持部52、及び案内部53を備えて構成される。クリップ部51は、第一対向部F2と第二対向部F3とを挟持してこれらを電気的に接続する。図3(a)に示されるように、第一対向部F2と第二対向部F3とは、対向方向Yに離間距離Dを有して平行に配置されている。クリップ部51は、図3(b)に示されるように、このような第一対向部F2及び第二対向部F3の双方を、対向方向Yの外側から挟持する。これにより、第一対向部F2と第二対向部F3とが接触し、電気的に接続されることになる。ここで、本実施形態では、6組の対向部組を備えている。したがって、接続部材41は、対向部組と同数のクリップ部51を備える。
【0046】
クリップ部51は、保持部52が案内方向Xに移動することにより、第一バスバー21の対向部F2と第二バスバー31の対向部F3とを挟持するように構成されている。本実施形態では、接続方向Lから見たクリップ部51の断面形状は、先広がりの形態で案内方向Xに沿って進入方向前方側に開口する略U字状とされている。このような略U字形状からなる一対の先端部で挟まれた空間が後述する開口部54に相当する。そして、略U字状のクリップ部51の両先端部が、第一バスバー21の対向部F2と第二バスバー31の対向部F3とを対向方向Yの両外側から互いに接近させるように押圧してこれらを挟持する。このクリップ部51の押圧力により第一バスバー21の対向部F2と第二バスバー31の対向部F3とが接触し、これにより第一バスバー21と第二バスバー31とが導通する。そのため、第一バスバー21の対向部F2と第二バスバー31の対向部F3との間の離間距離Dは、少なくとも第一バスバー21と第二バスバー31との間の電気的絶縁性を確保可能な距離であって、かつ、第一バスバー21と第二バスバー31とがクリップ部51で挟持可能な距離とされている。このような離間距離Dとしては、例えば1〜3mmとすることができる。
【0047】
保持部52は、クリップ部51を保持する。図2には保持部52及び案内部53の斜視図が示される。図2に示されるように、保持部52には、第一対向部F2及び第二対向部F3が挿入される挿入孔61が形成される。本実施形態では、6組の対向部組を備えている。このため、6つの挿入孔61が形成される。また、クリップ部51は、上述のように、第一対向部F2及び第二対向部F3の双方を対向方向Yの外側から挟持する。このような、クリップ部51が第一対向部F2及び第二対向部F3を挟持する位置は接続位置と称する。一方、第一対向部F2及び第二対向部F3がクリップ部51から外れる位置は非接続位置と称する。挿入孔61は、保持部52が接続位置と非接続位置との間で移動した際に第一対向部F2及び第二対向部F3が当該挿入孔61内で相対移動可能に構成される。したがって、第一対向部F2及び第二対向部F3が挿入孔61に挿入された状態で、保持部52は接続位置と非接続位置との間を移動可能に構成されている。
【0048】
クリップ部51は、このような挿入孔61において、支持部材55を介して配置される。支持部材55は、クリップ部51を所期の位置で支持すると共に、クリップ部51により挿入孔61の形状を変形させることを防止するために配置されている。図2に示されるように、支持部材55は、それぞれのクリップ部51の外側に被せるように設けられている。
【0049】
図2に示されるように、保持部52が接続位置にある状態で第一対向部F2及び第二対向部F3を挟持可能な挿入孔61内の位置に、クリップ部51が配置されている。クリップ部51は、案内方向Xの一方側に向けて開口して第一対向部F2及び第二対向部F3を挿入可能な開口部54を備えて構成される。案内方向Xの一方側とは、クリップ部51から見て第一対向部F2及び第二対向部F3が配設されている側が相当する。この方向を向いて開口部54が構成されている。したがって、クリップ部51の開口部54が開口する方向と、案内方向Xとは一致する。また、保持部52は、複数の対向部組のそれぞれに対応する位置にクリップ部51を保持する。したがって、本実施形態では、図2に示されるように、6組のクリップ部51が設けられる。
【0050】
挿入孔61は、接続方向Lの一方側から見て、対向方向Yを幅方向とする幅の狭い第一孔61Aと、当該第一孔61Aよりも幅が広い第二孔61Bとを有して構成される。このような第一孔61Aと第二孔62Bとは、案内方向Xに沿って連通して設けられる。第一孔61Aは、クリップ部51を保持するクリップ保持部として機能する。したがって、第一孔61Aの幅は、クリップ部51の幅と略等しく形成される。第一孔61Aの長さは、クリップ部51より短く形成され、クリップ部51の先端部(開口部54)が第二孔61B側へ突出するように構成されている。保持部52が接続位置にある状態では、第一対向部F2及び第二接続部F3は第一孔61A内に位置する。よって、第一対向部F2及び第二対向部F3はクリップ部51内に挿入され挟持される。一方、第二孔61Bの長さ及び幅は第二孔61Bにおいて、第一対向部F2及び第二接続部F3が保持部52(第二孔61Bの横壁)と干渉しないように形成される。保持部52が非接続位置にある状態では、第一対向部F2及び第二対向部F3は第二孔61B内に位置する。第一孔61A及び第二孔61Bを合わせた挿入孔61の案内方向Xの長さは、保持部52が接続位置と非接続位置との間で移動した際に、第一対向部F2及び第二対向部F3に干渉しない長さとされる。なお、第一孔61A及び第二孔61Bは、同じ幅で形成することも可能である。
【0051】
また、保持部52の両側面部には、側面中央部から突出する凸部63が形成される。凸部63は、案内方向Xに延びる凸条とされており、一定幅、一定高さの直線状の凸条で形成されている。図2に示される保持部52及び案内部53の長手方向を軸方向とした場合、保持部52の一方の軸方向端部に円形の軸方向貫通孔64が形成される。また、保持部52には、上述の挿入孔61と同一方向に貫通する貫通部65が形成される。貫通部65と軸方向貫通孔64とは、互いに連接される。
【0052】
案内部53は、保持部52を案内方向Xに沿って移動可能に案内する。この案内部53による保持部52の案内は、上述の接続位置と非接続位置との間で行われる。図2には案内部53の斜視図も示されている。図2に示されるように、案内部53には、第一対向部F2及び第二対向部F3が挿入される挿入孔71が形成される。本実施形態では、6組の対向部組を備えている。このため、6つの挿入孔71が形成される。案内部53は、軸方向両側に備えられるボルト穴72に締結ボルト74を挿通してインバータケース4に固定される。また、案内部53の側方壁部の両内側には、凹溝73が形成される。凹溝73は、案内方向Xに延びるように一定幅、一定高さの直線状の溝で形成されている。この凹溝73に保持部52の凸部63を嵌め込むようにして、保持部52が案内部53に導入される。これにより、保持部52の移動方向を凹溝73が形成された方向にのみ規制することが可能となる。この凹溝73の形成される方向が、上述の案内方向Xに一致する。凹溝73の延在方向一方の端部は閉じられており、この端部により保持部52の移動範囲が規制される。ここでは、案内方向Xに沿って接続位置側への保持部52の移動範囲が凹溝73の延在方向一方の端部により規制されている。
【0053】
3.保持部の移動
次に、第一バスバー21と第二バスバー31との電気的接続について説明する。図4には第一バスバー21と第二バスバー31とが接続されていない状態が示され、図5には第一バスバー21と第二バスバー31とが接続されている状態が示される。以下の説明では、それぞれの状態を非接続状態及び接続状態として説明する。
【0054】
第一バスバー21と第二バスバー31との非接続状態と接続状態との間の移行は、移動機構81により行われる。上述のように、接続部材41の保持部52は、当該保持部52が有する凸部63がケース2に固定された案内部53に設けられる凹溝73に嵌め込まれることにより移動方向が規制されて案内方向Xに沿って移動する。この保持部52の案内方向Xへの移動が移動機構81により行われる。
【0055】
ここで、本実施形態では、移動機構81はボルトが相当する。したがって、以下の説明では、ボルトに符号81を付して説明する。ボルト81は、ケース2の内部において保持部52に連結されると共に、操作部82がケース2の外部に延出している。ボルト81は、保持部52を案内方向Xに移動させるために、保持部52に連結される。本実施形態では、操作部82はボルト81の頭部が相当する。したがって、以下の説明ではボルト頭部に符号82を付して説明する。
【0056】
ボルト81と保持部52との連結は、保持部52に設けられた貫通部65が利用される。まず、ボルト81の本体部83の外周面には当該本体部83の軸方向全長に亘ってねじ山が設けられ、本体部83が雄ネジとされている。一方、インバータケース4には、この雄ネジと螺合可能な雌ネジを有するネジ孔91が形成される。したがって、ネジ孔91は、インバータケース4の外側と内側とを挿通するように形成される。ボルト81は、本体部83がネジ孔91に挿入され、螺合される。また、インバータケース4の外周面とボルト頭部82との間には、インバータケース4内のシール性を向上するために、Oリング92が設けられる。
【0057】
ボルト81は、保持部52に設けられている軸方向貫通孔64に挿入される。この軸方向貫通孔64は、ボルト81の本体部83の外径よりも大きく形成される。したがって、保持部52は、ボルト81から回転方向の力が作用することはない。すなわち、ボルト81は保持部52に対しては空回り状態とされる。軸方向貫通孔64に挿入された本体部83の先端部分は貫通部65まで達し、ボルト81は、その先端部分に貫通部65内において軸方向貫通孔64の内径よりも大きい外径を有するCリング84が配設される。このCリング84は、本体部83の先端部分から離脱しないように固定される。
【0058】
このように構成することにより、ボルト81をインバータケース4のネジ孔91に対して反時計周りに回すことによりCリング84のボルト頭部82側の面が貫通部65の内壁65Bに当接し、保持部52を図4において左方向に移動させることが可能となる。一方、ボルト81をインバータケース4のネジ孔91に対して時計周りに回すことにより本体部83の先端が貫通部65の内壁65Aに当接し、保持部52を図5において右方向に移動させることが可能となる。
【0059】
図4に示されるように、第一バスバー21の第一対向部F2と第二バスバー31の第二対向部F3とからなる対向部組が6組設けられ、それぞれの対向部組が保持部52の挿入孔61及び案内部53の挿入孔71に挿入された状態とされる。また、第一対向部F2と第二対向部F3とは、離間距離Dを有する状態で電気的には遮断された状態とされている。このような状態は、第一対向部F2及び第二対向部F3がクリップ部51から外れる状態であるので非接続位置と称される。
【0060】
一方、上述のようにボルト81のボルト頭部82を時計方向に回転させるとインバータケース4に対してボルト81が入り込み、更に同方向に回転することで保持部52が案内部53に対してボルト81から見て奥方向(図5における右方向)に移動する。これにより、クリップ部51の開口部54からクリップ部51の内部に第一対向部F2と第二対向部F3とが進入する。そして、図4において、離間距離Dを有していた第一対向部F2と第二対向部F3とが、クリップ部51により挟持された状態となる。このような状態が図5に示される。これにより、第一バスバー21と第二バスバー31とが電気的に接続された状態とされる。このようにして、本電気的接続装置Eは、回転電機11及び当該回転電機11を制御するインバータ装置16を収容するケース2内において、回転電機11とインバータ装置16とを電気的に接続することが可能となる。
【0061】
このように、本電気的接続装置Eによれば、第一バスバー21及び第二バスバー31を電気的に接続するクリップ部51を備えた保持部52を案内方向Xに沿って移動させるだけの簡単な構成で、ケース2内における回転電機11とインバータ装置16との間の電気的な接続を簡易に行うことができる。逆に、保持部52を引退させて第一バスバー21の第一対向部F2と第二バスバー31の第二対向部F3との挟持状態を解除するだけの簡単な構成で、ケース2内における回転電機11とインバータ装置16との間の電気的な遮断を簡易に行うことができる。したがって、第一バスバー21及び第二バスバー31の電気的な接続及び遮断を行う際、ユーザが、直接、第一バスバー21及び第二バスバー31に触れることがないので、安全に行うことが可能となる。
【0062】
また、電気的接続装置Eを、例えばFF方式のハイブリッド車両に適用することが考えられる。このようなFF方式の車両においては、回転電機11を含む車両用ユニットは、車両に対して横置きに配置される。上述のように、例えば帯状の金属板で電気的接続装置Eが備える第一バスバー21及び第二バスバー31を構成した場合、第一バスバー21及び第二バスバー31の板幅方向は、回転電機11のロータ軸に直交する方向に配置されることが多い。この場合、第一バスバー21及び第二バスバー31の板幅方向は、車両の前後方向になる。したがって、本特徴構成によれば、電気的接続装置Eが備える案内部53が、第一バスバー21及び第二バスバー31を電気的に接続するクリップ部51を保持する保持部52を車両の前後方向に沿って移動させることができる。このような車両の前後方向は、車両の幅方向に比べてスペース的に余裕があるので、電気的接続装置Eの配置についての自由度を大きくすることができる。
【0063】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態では、接続部材41を構成するクリップ部51、保持部52、案内部53は、夫々が別体で備えられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、案内部53は、インバータケース4と一体的に構成することも可能である。或いは、インバータケース4を案内部53として利用することも可能である。係る場合には、インバータケース4における、保持部52の凸部63に対応する位置に凹溝を構成すると好適である。このように構成することにより、保持部52を案内部53に対して相対移動させることは当然に可能である。
【0064】
(2)上記実施形態では、一本の第一バスバー21と一本の第二バスバー31との組であるバスバー組を複数備え、電気的接続装置Eを三相の回転電機11に適用した場合の例を挙げて説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。一本の第一バスバー21と一本の第二バスバー31との組であるバスバー組を一組備え、単相の回転電機に適用することも当然に可能である。また、複数のバスバー組のそれぞれに独立した接続部材41を設けることも可能である。また、上記実施形態では、三相の回転電機11を2台備えた場合の例を説明したが、3台以上の三相の回転電機11の電気的な接続及び遮断を行うために用いることも可能であるし、1台の回転電機11の電気的な接続及び遮断を行うために用いることも当然に可能である。
【0065】
(3)上記実施形態では、第一バスバー21の第一対向部F2及び第二バスバー31の第二対向部F3からなる複数の対向部組のうち一部の対向部組が、他の対向部組に対して対向方向Yの一方側に配置されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、複数の対向部組を一列に配置することも当然に可能である。
【0066】
(4)上記実施形態では、第一延在方向Z1と第二延在方向Z2とが平行であり、対向方向Yが第一延在方向Z1及び第二延在方向Z2に直交する方向であり、案内方向Xが、第一延在方向方Z1及び第二延在方向Z2に直交すると共に対向方向Yにも直交する方向であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第一延在方向Z1と第二延在方向Z2とが平行でなく、対向方向Yの一方側から見て所定の角度で交差する方向に配置されていても良い。この場合にも、案内方向Xが対向方向Yに対して直交していれば、クリップ部51により第一対向部F2及び第二対向部F3を容易に挟持することができる。また、案内方向Xが、対向方向Yに直交していなくても対向方向Yに交差する方向になっていればクリップ部51により第一対向部F2及び第二対向部F3を挟持することは可能である。いずれにしても、第一延在方向Z1、第二延在方向Z2、及び対向方向Yのいずれにも交差する方向を案内方向Xとすれば、クリップ部51により第一対向部F2及び第二対向部F3を挟持することは可能である。
【0067】
(5)上記実施形態では、移動機構81がボルトであり、操作部81がボルト頭部であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。移動機構81として、リンク機構等、他の機構を用いて構成することも可能である。また、上記実施形態では、移動機構81が、保持部52における案内方向Xの一方側に設けられるとして説明した。移動機構81を、保持部52にける案内方向Xの一方側及び他方側の双方に設けることも当然に可能である。このような場合には、上述のように移動機構81としてボルトを用いることも可能であるし、棒状の部材で案内方向Xの一方側及び他方側から相互に押して保持部52を移動させる構成とすることも可能である。
【0068】
(6)上記実施形態では、第一バスバー21及び第二バスバー31は、帯状金属板で形成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、断面が矩形、円形、楕円形、多角形等の各種形状の第一バスバー21及び第二バスバー31を用いることが可能である。また、例えば第一バスバー21及び第二バスバー31が、それぞれ互いに対向する平面有するように、円形断面の一部を切り欠いた形状とすることも可能である。このような形状で第一バスバー21及び第二バスバー31を構成した場合であっても、本電気的接続装置Eによれば、接続及び遮断を行うことが可能である。
【0069】
(7)上記実施形態では、電気的接続装置EをFF方式のハイブリッド車の駆動装置1に適用した場合の例を挙げて説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。FF方式以外のハイブリッド車の駆動装置1に適用することも可能であるし、電気自動車に適用することも可能である。更には、車両以外の用途に適用することも当然に可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、ケース内における回転電機とインバータ装置との間の電気的な接続及び遮断を簡易かつ安全に行うことができる電気的接続装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
2:ケース
11:回転電機
16:インバータ装置
21:第一バスバー
31:第二バスバー
41:接続部材
51:クリップ部
52:保持部
53:案内部
54:開口部
61:挿入孔
81:ボルト(移動機構)
82:ボルト頭部(操作部)
E:電気的接続装置
F2:第一対向部
F3:第二対向部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機及び当該回転電機を制御するインバータ装置を収容するケース内において、前記回転電機と前記インバータ装置とを電気的に接続するための電気的接続装置であって、
前記ケースから絶縁された状態で前記回転電機の端子に接続される第一バスバーと、前記ケースから絶縁された状態で前記インバータ装置の端子に接続される第二バスバーと、前記第一バスバーと前記第二バスバーとを電気的に接続する接続部材と、を備え、
前記第一バスバー及び前記第二バスバーは、互いに離間しつつ対向して配置される対向部をそれぞれ有し、前記第一バスバーの前記対向部を第一対向部、前記第二バスバーの前記対向部を第二対向部とし、前記第一対向部での前記第一バスバーの延在方向を第一延在方向、前記第二対向部での前記第二バスバーの延在方向を第二延在方向とし、前記第一対向部と前記第二対向部とが対向する方向を対向方向として、
前記接続部材は、前記第一対向部と前記第二対向部とを挟持してこれらを電気的に接続するためのクリップ部と、当該クリップ部を保持する保持部と、前記第一延在方向、前記第二延在方向、及び前記対向方向のいずれにも交差する方向を案内方向として前記保持部を当該案内方向に沿って移動可能に案内する案内部と、を備え、
前記クリップ部は、前記案内方向の一方側に向けて開口して前記第一対向部及び前記第二対向部を挿入可能な開口部を備え、
前記案内部は、前記クリップ部が前記第一対向部と前記第二対向部とを挟持する接続位置と、当該接続位置よりも前記案内方向の他方側の位置であって前記第一対向部及び前記第二対向部が前記クリップ部から外れる非接続位置との間で前記保持部を案内する電気的接続装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記第一対向部及び前記第二対向部が挿入される挿入孔を備え、
前記挿入孔は、前記保持部が前記接続位置と前記非接続位置との間で移動した際に前記第一対向部及び前記第二対向部が当該挿入孔内で相対移動可能に構成され、
前記保持部が前記接続位置にある状態で前記第一対向部及び前記第二対向部を挟持可能な前記挿入孔内の位置に、前記クリップ部が配置されている請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項3】
一本の前記第一バスバーと一本の前記第二バスバーとの組であるバスバー組を複数備え、当該バスバー組のそれぞれの前記第一対向部と前記第二対向部との組を対向部組とし、
前記接続部材は、前記対向部組と同数の前記クリップ部を備え、
前記保持部は、複数の前記対向部組のそれぞれに対応する位置に前記クリップ部を保持する請求項1又は2に記載の電気的接続装置。
【請求項4】
複数の前記対向部組の一部が他の前記対向部組に対して前記対向方向の一方側に配置されている請求項3に記載の電気的接続装置。
【請求項5】
前記第一延在方向と前記第二延在方向とが平行であり、前記対向方向が前記第一延在方向及び前記第二延在方向に直交する方向であり、前記案内方向が、前記第一延在方向及び前記第二延在方向に直交すると共に前記対向方向にも直交する方向である請求項1から4のいずれか一項に記載の電気的接続装置。
【請求項6】
前記保持部を前記案内方向に移動させる移動機構を更に備え、
前記移動機構は、前記ケースの内部において前記保持部に連結されると共に、操作部が前記ケースの外部に延出している請求項1から5のいずれか一項に記載の電気的接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−210429(P2011−210429A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75031(P2010−75031)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)