説明

電気穿孔用の反応器装置

本発明は反応器装置に関し、反応器装置は、内部に長さ方向に延在する中央区域を画成する反応器室と、反応器室の中央区域内に配置され、長さ方向に測って、少なくとも反応器室の幅の半分の距離で互いに隔てられた2つの電極A1およびA2が接続された第1パルス・ゼネレータと、反応器室の中央区域内に配置され、長さ方向に測って、少なくとも反応器室の幅の半分の距離で互いに隔てられた2つの電極B1およびB2が接続された第2パルス・ゼネレータとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物細胞などの電気穿孔用の反応器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記反応器装置は、特許文献1で既知のものである。当該文献に開示の反応器装置は、一つ以上の高電圧パルス・ゼネレータの電極が、反応器室に配置されて反応器室の幅方向を渡って電場を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE−A−10 2004 025 046
【特許文献2】WO−A−98 14074
【特許文献3】US−A−2008 279995
【特許文献4】WO−A−2006/108481
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の反応器装置は、複数のマルクス・ゼネレータを用いて大量の生産物を処理するのに適したものであるが、欠点として、接地に対して非対称な電圧を印加する場合などにおいて、材料の流れ方向に反応器室からかなりのパルス電流が流出する可能性がある。よって、安全のために別の電極を設ける必要がある。さらに、細胞材料の電気穿孔に必要な閾値以下となる、かなり低い電場の複数の領域が存在する理由で装置の効率が低下することとなる。
【0005】
本発明は、上述の欠点を低減あるいは解消することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するべく、本発明の反応器装置は、特定の長さと幅を有し、かつ長さ方向に沿った中央区域を含む反応器室と、
上記反応器室内の中央区域に設けられて、上記長さ方向に測って、少なくとも当該反応器室の幅の半分に等しい距離で隔てられた2つの電極A1およびA2が接続された第1パルス・ゼネレータと、
上記反応器室内の中央区域に設けられて、上記長さ方向に測って、少なくとも当該反応器室の幅の半分に等しい距離で隔てられた2つの電極B1およびB2が接続された第2パルス・ゼネレータと、を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明による反応器装置は、電極を分割する方法と材料の流れの方向に電場を指向させることとを組み合わせることにより、別の接地電極を付加する必要をなくすことができるので有利である。
【0008】
さらに本発明よる反応器装置は、特に中央区域において、電気穿孔に適するに充分でない強さの電場を有する領域の数を低減可能であるので有利である。
【0009】
また本発明による反応器装置は、単一の極めて強力なパルス・ゼネレータに頼らない、大規模反応器に適したものであるので有利である。
【0010】
しかして、本発明による反応器装置は、反応器室の幅を増大すれば、多量の材料を処理するのに適したものとなり、反応器装置に通される材料の搬送速度を増加する必要性の程度をかなり低下させ、あるいは、その必要性を完全になくすことができるので有利である。当然ながら、速度の増加は、反応器装置の磨耗や圧力損失の原因となり、そして反応器装置を通過する材料に望ましからざるストレスを加えるので問題である。
【0011】
特許文献2は、少なくとも2つの電極と1つの絶縁体を含む、ポンプで搬送可能な食品生産物の減菌および防腐用のパルス電場処理装置を開示している。各電極は、電極流路室を有し、絶縁体は、電極間に適正に配置されている。高電圧パルス・ゼネレータは、電圧、周波数ならびにパルス幅が可変の高電圧パルスを電極に印加されるようになっている。
【0012】
特許文献3は、赤葡萄および/もしくは白葡萄から生産した果汁を電気穿孔することによりワイン葡萄から有益な物質を採取するプロセスを開示している。果汁生産物を加圧する前に装置あるいは装置の一部を通して果汁をポンプで搬送及び循環させ、これにパルス電場を印加させ、葡萄の表皮の生物細胞の壁を非可逆的に破壊させる。果汁電気穿孔を行う装置は、果汁用の送流管としての誘電体パイプを含み、当該誘電体パイプの壁に互いに隔置された2つの電極が設けられ、当該電極間でパルス電場を生成させるようになっている。この装置は、流体中でより不均質な電場分布を呈するものである。
【0013】
本発明は、植物細胞などの細胞の電気穿孔に適した反応器装置に関し、ここで言う反応器装置なる語句の意味は、電気穿孔プロセスを実行する反応器室のみならずパルス・ゼネレータなどの当該反応器室で電気穿孔処理を行う基本的な機器を全て含めるものとする。
【0014】
以上のごとく、反応器で行う電気穿孔は、反応器室内にある細胞を非可逆的に崩壊させることを目的とすることである。それ故、電気穿孔の電力は、かなり大きなものであり、電気透過法と称されるプロセス、すなわち、単に細胞膜の透過性を一時的に増大することを目的とする周知の電気穿孔プロセスに比較してかなり強力である。
【0015】
当然ながら、電気穿孔プロセスでは、電圧は、2つの電極間に印加され、これら電極に電場が発生することとなる。よって、生産物すなわち被電気穿孔生産物が電極間に配置される。印加した電場により、細胞膜を通して電位が誘起され、これにより細胞膜に細孔が形成される。あるいは、電場が充分に強い場合には、細胞膜を破壊することになる。本発明の反応器装置で実施可能のプロセスでは、例えば砂糖大根から蔗糖(砂糖)を放出させるなど、細胞から価値のある化合物を放出させ得るので、上述の破壊的作用が望ましい。
【0016】
本発明による反応器装置は、反応器室すなわち電気穿孔プロセスを実行するための室を有する。通常の反応器室と同様に、本発明による反応器装置の反応器室は、その幅と長さが重要な寸法であり、この長さと幅の双方は、内側寸法を与えるものであり、反応器室を構成する材料の寸法を含めたものではない。
【0017】
ここで言う長さおよび幅なる語句は、当業者が通常時関連づけるものを意味するものである。例えば、反応器室が円筒形(ほぼ円筒形)の形状であれば、長さというのは、円筒の軸線方向に測って、円筒形を閉止する両端間の距離であり、幅は円筒の内径横断面の直径と理解される。別の例では、反応容器室が矩形のダクト(ほぼ矩形のダクト)の形状であれば、長さは、ダクトの両端間の距離であり、幅は、ダクトの矩形横断面の各辺により画成される内側寸法の小さい方の値と理解される。横断面なる語句の意味は、通常の3次元空間における本体を平面で交叉させ切断させたものして理解されるものである。
【0018】
反応器室は、好適には、電気絶縁体をベースとする材料から構成されるべきものである。これにより、電極(以下で詳細に説明する)を、特別の絶縁手段を要さずに反応器室に配置させることができるので有利である。
【0019】
本発明による反応器装置は、市場工業規模で実施できるので、かなりの多量の産物を電気穿孔することが可能となる。特に、本発明の反応器装置では、反応器室の幅を大きくすることができる。本発明の実施例での反応器室の平均幅は、0.05mから2.00mの間でさまざまに設定可能である。好ましくは、反応器室の平均幅は、少なくとも0.10m、0.15m、0.20m、0.25mまたは0.30mであり、反応器室の平均幅は、好ましくは、せいぜい2.00m、1.50m、1.40m、1.30m、1.20m、1.10m、1.00m、0.90m、0.80mまたは0.75mである。
【0020】
反応器室の長さは、本発明の実施例では、好ましくは、0.75mから5.0mの間でさまざまに設定可能であり、より好ましくは、0.80m、0.90m、1.00m、1.10m、1.20m、1.30m、1.40m、1.50mまたは2.00mと4.5m、4.0m、3.5mまたは3.0mとの間でさまざまに設定可能である。反応器室の長さは、好ましくは、少なくとも反応器室の幅と等しく、さらに好ましくは、反応器室の長さは、少なくとも反応器室の幅の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍、3.5倍、4.0倍、4.5倍、5.0倍、5.5倍、6.0倍、6.5倍、7.0倍、7.5倍、8.0倍、8.5倍、9.0倍または9.5倍であり、さらには少なくとも10倍としてもよい。幅に対する長さの比を大きくしていくと、実質的に均一の電場を維持することがより容易となる。
【0021】
本発明では、一つのパルス・ゼネレータで全負荷を賄わないようにすることが有利であるが、本発明のある一つの主たる好適実施例では、大規模な装置として、パルス・ゼネレータのそれぞれが、少なくとも平均電力で10kw、20kw、50kw、100kまたは200kwを供給し、所望の電気穿孔効果を得ている。例えば、砂糖の生産工場で、一日にトータルで15,000トンの砂糖大根が電気穿孔されるとすると、約400kwから700kwあるいはそれ以上の電力の電力容量の設備が必要となる。パルス・ゼネレータの寸法および出力の技術的および市場的設備の観点から、本発明の反応器装置は、上述のタイプの工場で使用すると好都合のものであり、好ましくは、2機、4機、あるいは6機または8機のパルス・ゼネレータを使用することが好ましい。
【0022】
本発明による反応器装置の反応器室は、その長さ方向に沿って中央区域が設けられている。この意味するところは、中央区域が、横断面を有する反応器室の一部であり、その寸法を決定する場合に、反応容器室の長さの少なくとも一部となるものである。ある一つの好適実施例では、中央区域は、反応器室全体をカバーする、すなわち反応器室と一致する大きさである。他の好適実施例では、しかしながら、中央区域は、反応器室全体をカバーするものではなく、この場合は、反応器室の一端あるいは両端における断面は、長さ方向に見て、中央区域の部分でなくなる。中央区域の容積は、反応器室全体の容積に対して、30%、40%または50%と95%、90%、80%または70%との間の容積比率を有する。中央区域の平均幅は、反応器室の平均幅に関して上述した範囲と同じ範囲にあるものとする。
【0023】
本発明による反応器装置は、二つのパルス・ゼネレータすなわち第1パルス・ゼネレータおよび第2パルス・ゼネレータを有する。ここでパルス・ゼネレータは、高電圧パルスを、同パルス・ゼネレータに接続された電極に供給可能なものである。このようなパルス・ゼネレータは既知のものである。例えばその一例がマルクス・ゼネレータである。反応器装置は、好ましくは第3のパルス・ゼネレータを有するものでも良く、さらに一つあるいはそれ以上の追加のパルス・ゼネレータを有しても良い。偶数機のパルス・ゼネレータを用いることが好ましい。ある一つの好適実施例では、4機の好ましくはマルクス・ゼネレータが使用される。
【0024】
二つ以上のパルス・ゼネレータが一対の電極のみに接続され、結果としてゼネレータで並列回路が構成されると、一方に対して他方のパルス・ゼネレータに短時間の遅延がある場合にパルス・ゼネレータ間に振動現象すなわち所謂ジッターが生ずる。このような振動現象は、少なくとも一つの電極を分離して、各ゼネレータ出力を分離した電極の一方の部分にのみ接続するようにすれば解消できる。よって、電極の分離した部分間の抵抗は、減衰素子として作用する。この方法は、原理的には特許文献1により既知のものである。通常一電極の二つの部分(例えば、A1およびB1)の間の抵抗は、数Ωから数十Ωの間となる。電気穿孔用の反応器の設計に関して、二つの電極群A1およびB1の間の抵抗と電極対A1およびA2間の抵抗の比が重要となる。故に、設計規準は、幾何学構造のみが基本となる。
【0025】
第1パルス・ゼネレータに関して、ここでA1およびA2とする二つの電極が接続される。本発明によれば、電極A1およびA2は、その少なくとも一部、好ましくは、ほぼ全体が反応器室の中央区域内に配置される。第1パルス・ゼネレータから電極A1およびA2に印加されるパルスにより発生する電力線が、中央区域の長さ方向にほぼ沿って走ることができるように配置される。この様に電極A1およびA2は、中央区域の長さ方向に測って、互いにある距離で隔てるようにしなければならない。この距離は、反応器室の幅の少なくとも半分に等しく、好ましくは、中央区域の長さの50%、60%、70%、80%または90%更には95%以上とする。ある一つの実施例では、電極A1およびA2は、中央区域の長さ方向のほぼ両端に対向配置されている。
【0026】
両電極A1およびA2の実形状は、さまざまに取り得るものである。しかしながら、好ましくは、電気穿孔プロセスの機能に悪影響を及ぼさず、しかるに積極的にこれに貢献するような形状として、中央区域での電場の強度をできるだけ均一にすべきである。電極A1およびA2の一つあるいは双方を二つに分けた形式としてもよい。ある一つの実施例では、電極A1が、分割電極A1−iおよびA1−iiに分割され、次いで長さ方向に見て、電極A2が分割電極A1−iとA1−iiとの間に位置するように分割電極A1−iおよびA1−iiが配置される。他の実施例では、電極A1(A2)が、分割電極A1−iおよびA1−ii(A2−iおよびA2−ii)に分割され、長さ方向に見て、分割電極A1−iおよびA1−ii(A2−iおよびA2−ii)が同じ位置となるように、分割電極が配置される。
【0027】
第2パルス・ゼネレータに関して、ここでB1およびB2とする二つの電極が接続されている。本発明によれば、電極B1およびB2が、少なくとも部分的に反応器室の中央区域に配置される。これら電極B1およびB2に第1パルス・ゼネレータによって印加されるパルスにより発生する電力線が中央区域の長さ方向にほぼ沿って走るように、電極B1およびB2が配置される。電極B1およびB2は、中央区域の長さ方向に見て、互いにある距離で隔てて配置すべきである。この距離は、反応器室の幅の少なくとも半分の長さであり、好ましくは、中央区域の長さの50%、60%、70%、80%または90%更には95%とする。ある一つの実施例では、電極B1およびB2は、中央区域の長さ方向のほぼ両端に対向配置されている。
【0028】
両電極B1およびB2の実形状は、さまざまに取り得るものである。しかしながら、好ましくは、電気穿孔プロセスの機能に悪影響を及ぼさず、しかるに積極的にこれに貢献するような形状として、中央区域で電場の強度ができるだけ均一になるようにすべきである。電極B1およびB2の一つあるいは双方を二つに分けた形式としてもよい。ある一つの実施例では、電極B1が、分割電極B1−iおよびB1−iiに分割され、次いで長さ方向に見て、電極B2が分割電極B1−iとB1−iiとの間に位置するように分割電極B1−iおよびB1−iiが配置される。他の実施例では、電極B1(B2)が、分割電極B1−iおよびB1−ii(B2−iおよびB2−ii)に分割され、長さ方向に見て、分割電極B1−iおよびB1−ii(B2−iおよびB2−ii)が同じ位置となるように、分割電極を配置する。
【0029】
本発明においては、電極の各対に印加されるパルスの形状をほぼ等しくすると有利である。これは、既知のように各電極対のインピーダンス、パルス・ゼネレータと接続回路のとのインピーダンスあるいは回路の総合インピーダンスをマッチングさせることで実現可能である。簡易設計では、インピーダンスのマッチングは、全ての電極を等しく設計し、内部インピーダンスが等しいパルス・ゼネレータを用い、かつ同じ幾何学形態の接続回路を用いて、これら電極を反応器室内でその内周辺(ここで周辺なる語句は、ある領域を囲む経路である通常に意味するものである)に沿って互いに等しい距離で円上に配置することにより実現させることができる。
【0030】
ある一つの実施例では、電極A1およびB1は、反応器室が空の場合は、互いに電気的に絶縁されて配置される。同様に電極A2およびB2も互いに絶縁されている。しかしながら、他の実施例では、電極A1およびB1あるいは電極A2およびB2のいずれかが一つに結合された組み合せ電極とされている。
【0031】
他の実施例では、電極A1およびB1(A2およびB2)が分割され、分割された電極A1−i・・・A1−i、B1−i・・・B1−i(A2−i・・・A2−i、B2−i・・・B2−i)が混在されており、上述の電極は、反応器室の長さ方向に測って反応器室の幅の半分以下の距離で互いに隔てられ反応器室の中央区域に配置されている。このような形態の一例が本願添付図の図2に図示されている。
【0032】
電力線が中央区域に長さ方向に可能な限り均一に分布し、ほぼ長さ方向に走るようにすることが好ましい。電極A1およびB1が、中央区域の長さ方向に見て、互いに短い距離内で隔てて配置されることが好ましい。好ましくは、電極A1およびB1が、中央区域の長さ方向に沿って幅の20%あるいは10%以下の距離互いに隔てて配置される。より好ましくは、第1パルス・ゼネレータの電極A1は、長さ方向に沿って測って、第2パルス・ゼネレータの電極B1とほぼ同じ場所に配置される。同様に、好ましくは、電極A2およびB2は、中央区域の長さ方向に沿って見て、互いに短い距離内隔てて配置される。好ましくは、電極A2およびB2は、中央区域の長さに沿って、幅の20%あるいは10%以下の距離隔てて配置され、より好ましくは、第1パルス・ゼネレータの電極A2は、長さ方向に沿って測って、第2パルス・ゼネレータの電極B2とほぼ同じ場所に配置される。
【0033】
その機能に鑑みて寸法を予め設定することにより、電極は、反応器室の中央区域の周辺の部分を占めることとなる。にもかかわらず、電極が接合しない場合は、電気的絶縁をなすために内周辺に沿って少なくとも0.5cmの間隔を設けなければならない。好ましくは、その間隔は、少なくとも1cm、2cm、3cm、4cmあるいは少なくとも5cmである。電極が、中央区域の横断面で見て(すなわち、長さ方向ではない)、中央区域の周辺をせいぜい50%だけ占めるか覆うように電極を形作ることが好ましい。電極が、せいぜい周辺の49%、24%、11.5%あるいはせいぜい5.25%を占めるようにすることが好ましい。
【0034】
電力線が、ほぼ中央領域の長さ方向に流れ、および/または、電力線の分布が、ほぼ均一となるように電極が中央区域の内周辺の部分を占めることが好ましい。同時に、特に産物の流れが反応器室を通過する場合であるが、電極が、横断面の周辺から中心に向けてずれて配置されることをなるべく少なくすることが好ましい。これにより、産物の流れを邪魔することをできるだけ少なくすることができる。電極は、横断面の面積の30%以内を占めることが好ましく、横断面の面積の25%、20%、15%、10%あるいは5%以下を占めることがより好ましい。
【0035】
電極A1およびA2の互いに相対的な配置は、長さ方向に見て、大きく捻じれないようにすることが好ましい。内周辺に沿った電極A1およびA2の互いに相対的な配置は、内周辺の30%、好ましくは20%あるいは10%以内で変動し、最も好ましくは、配置がほぼ同じであることが最も好ましい。
【0036】
同様に、電極B1およびB2の互いに相対的な配置も、長さ方向に見て、大きく捻じれないようにすることが好ましい。内周辺に沿った電極B1およびB2の互いに相対的な配置は、30%、好ましくは20%あるいは10%以内で変動し、最も好ましくは、配置がほぼ同じであることが最も好ましい。
【0037】
周辺に沿った電極AおよびBの配置がほぼあるいは基本的に同じである時、各電極対は、中央区域の長さ方向に見て、中央区域内の各独立のセグメントに電力を供給する。
【0038】
本発明の主実施例では、第1および第2パルス・ゼネレータの双方が高電圧マルクス・ゼネレータとなっている。このマルクス・ゼネレータが、既知の起動装置(例えば、特許文献1を参照)を有することが好ましい。起動装置は、パルス長の30%、20%、10%あるいは5%の時間的不確かさでマルクス・ゼネレータを同期させて励起させることが好ましい。これにより、より安定した動作が得られるので有利である。各電極対のパルスの形は、ほぼ同じであることが好ましい。
【0039】
別の実施例では、高電圧マルクス・ゼネレータは、双極性である。すなわち、接地に対して対称である。このため、接地に対して低電圧となるので有利であり、接地に対する絶縁が煩わしくなくなる。入口および出口に更なる電極を必要とし、これら電極間あるいは高電圧電極間のいずれかに短い絶縁体も必要となり、また低電場による付加的損失により効率を低下させる。これに対して、高電圧マルクス・ゼネレータが単極性であれば、有利であることが分かっている。この構成とすることで主に有利なことは、上述の損失は別として、反応器の入口と出口に付加的接地電極を必要としない。結果として、電気穿孔反応器は、単一の形式の絶縁体素子のみで製造可能となる。更には、単極性のマルクス・ゼネレータは、一般に市販されている。
【0040】
特許文献1は、矩形横断面あるいは正方形断面の反応器の電気穿孔室を開示している。このような室に通常円形断面の管路系を接続すると、円形から矩形あるいは正方形に変換する同じ断面積の接続エレメントが必要となる。材料のつまりをなくすために、スムースかつ同断面積で遷移するようにすることが必要となる。円形断面の管路状の電気穿孔反応器を使用すると、このような接続エレメントが必要でなくなる。
【0041】
本発明による反応器装置は、好ましくは植物細胞を含む産物を電気穿孔するプロセスに適したものである。本発明は、更に、好ましくは植物細胞である細胞を電気穿孔するプロセスにも関するものであり、電気穿孔は、本発明の反応器装置により実施される。本発明による電気穿孔プロセスは、バッチ処理でも連続処理でも行うことができる。反応器室に設けられる入口および出口の形状、形式および配置位置は、電気穿孔プロセスが行われる方式によりさまざまに異なる。例えば、既知のことであるが、バッチ処理する場合、被電気穿孔産物用の入口は、同時にその産物の出口として使用しても良い。ある一つの好適実施例では、反応器装置は、連続的に電気穿孔プロセスを実施するのに適したものとなっている。この様な実施例では、反応器室は入口および出口を有する。中央区域は、この出口と入口との間に位置し、産物の流れは、中央区域内を入口から出口に向かって進行する。この方法で電気穿孔可能の産物は、例えば、砂糖大根、砂糖大根の水性分散液、砂糖大根のチップの水性分散液、チコリ根、チコリ根の水性分散液ならびにチコリ根のチップの水性分散液などである。
【0042】
本発明による植物細胞の電気穿孔プロセスの主たる実施例では、基本的に砂糖大根のチップの水性分散液からなる産物が本発明の反応器装置の反応室を通して流される。反応器室に流入する際に、砂糖大根のチップの水性分散液の導電度は、0.2mS/cmから10mS/cmの範囲、より好ましくは2mS/cmから6mS/cmの範囲の値とするか、この範囲の値となるように調節され、さらに、砂糖大根のチップの水性分散液のpHは、7から14の範囲、より好ましくは、9から11の範囲の値であるか、この範囲になるように調節される。中央区域でこの産物に印加される電場は、好ましくは0.1KV/cmから20KV/cmの範囲、より好ましくは、3KV/cmから6KV/cmの範囲である。電気穿孔は、好ましくは、0℃から65℃の範囲の温度で行われる。より好ましくは、前述の温度は、10℃から40℃の範囲とする。なぜならこの温度範囲とすると、例えば、特許文献4に開示の採取作業などの以降の有益な作業をかなりの中間的温度変化を必要とすることなく行うことができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の反応器室(RC)を示す図。
【図2】本発明による中央区域(CS)の横断面図。
【図3】本発明による中央区域(CS)のさらに別の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明の反応器室RCを示す。図示のRCは、円形断面を有るものでも、矩形ダクトの形状であっても良い。反応器室RCの長さをlとし幅をwとする。反応器室RCは、中央区域CSを含み、中央区域CS内には、その周囲に電極A1およびA2および電極B1およびB2が配置されている。電極A1およびA2は、第1パルス・ゼネレータ(図示せず)に接続され、同様に電極B1およびB2は、第2パルス・ゼネレータ(図示せず)に接続される。図1に図示の反応器室RCは、連続作業に適したものであり、例えば、砂糖大根のチップの水性分散液などの産物の流れは、入口ENを通り反応器室RCに入り、次いで中央区域CSを通り、出口EXを通り反応器室RCから外に出る。中央区域CSを通過中に産物は、電極A1およびA2との間および電極B1およびB2との間に生ずる電場パルスに曝されて電気穿孔される。出口EXを通り反応器室RCから出た砂糖大根のチップの水性分散液は、採取プロセスに課せられて砂糖が採取される。
【0045】
図2は、本発明の実施例の中央区域CSを示す、電極A1およびB1が配置される長さに沿った位置での断面図である。当該実施例では、電極A1およびB1が分割された形式で配置されている。さらに,分割した電極は、横断面の周囲に沿って配列され、産物の流れ流を乱すことを可能な限り少なくしている。反応室RCすなわち中央区域CSの幅wも図2に示されている。
【0046】
当該実施例では、分割された電極は、互いに近くに配置されているが、分割された電極は、例えば、長さ方向に、他の電極(A2またはB2)を間に置いて互いに離して配置しても良い。
【0047】
図3は、本発明の他の実施例の中央区域CSを示す電極A1およびB1が配置される長さに沿った位置での横断面図である。当該実施例では、電極は、中央区域CSの内周辺をほぼ完全に覆うように形成され、電極間に電気絶縁が得られるように僅かな空間が残されている。
【符号の説明】
【0048】
RC 反応器室
CS 中央区域
EN 入口
EX 出口
A1、A2 電極
B1、B2 電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ及び幅を有し、その長さに沿って中央区域を含む反応器室、
前記反応器室の中央区域内に配置され、長さ方向に測って該反応器室の幅の少なくとも半分に等しい距離で互いに隔てられた2つの電極A1およびA2が接続された第1パルス・ゼネレータならびに
前記反応器室の中央区域内に配置され、長さ方向に測って該反応器室の幅の少なくとも半分に等しい距離で互いに隔てられた2つの電極B1およびB2が接続された第2のパルス・ゼネレータを備える反応器装置。
【請求項2】
さらに少なくとも一つの追加のパルス・ゼネレータを備え、該追加のパルス・ゼネレータには、前記反応器室の中央区域内に配置され、長さ方向に測って該反応器室の幅の少なくとも半分に等しい距離で互いに隔てられた2つの電極が接続されている、請求項1に記載の反応器装置。
【請求項3】
前記第1のパルス・ゼネレータの少なくとも一つの電極は、前記第2パルス・ゼネレータおよび/もしくは前記追加のパルス・ゼネレータの一つの電極と、長さ方向に測って同じ場所に位置している、請求項1または2に記載の反応器装置。
【請求項4】
前記各パルス・ゼネレータについて、接続された前記電極は、長さ方向に測って前記中央区域の長さの少なくとも50%の距離で互いに隔てられて前記反応器室の中央区域に設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の反応器装置。
【請求項5】
さらに入口および出口を有し、前記中央区域は、該入口と該出口の間に延在し、産物の流れが該入口から該出口に向かうようになっている、請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器装置。
【請求項6】
前記電極は、少なくとも前記中央区域の電場がほぼ均一で、電力線がほぼ長さ方向に延びるように形作られ、かつ配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の反応器装置。
【請求項7】
前記電極の各対は、中央区域の長さに沿って各独立セグメントに電力を印加している、請求項1から6のいずれか一項に記載の反応器装置。
【請求項8】
前記電極の少なくとも一つは、2つまたはそれ以上の分割電極に分割されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の反応器装置。
【請求項9】
前記全パルス・ゼネレータは、双極性パルス・ゼネレータである、請求項1から8のいずれか一項に記載の反応器装置。
【請求項10】
前記全パルス・ゼネレータは、単極性パルス・ゼネレータである、請求項1から8のいずれか一項に記載の反応器装置。
【請求項11】
前記全パルス・ゼネレータは、マルクス・ゼネレータである、請求項9または10に記載の反応器装置。
【請求項12】
前記全パルス・ゼネレータは、該パルス・ゼネレータが、パルス長の30%以下の時間的不確実さで同期して励起するようにした起動装置を有している、請求項9から11のいずれか一項に記載の反応器装置。
【請求項13】
前記電極の各対のパルスの形状がほぼ等しくなっている、請求項1から12のいずれか一項に記載の反応器装置。
【請求項14】
電気穿孔を請求項1から13のいずれか一項に記載の反応器装置で行うことを特徴とする、細胞を電気穿孔するプロセス。
【請求項15】
前記細胞が、砂糖大根の細胞である、請求項14に記載のプロセス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−515464(P2013−515464A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545155(P2012−545155)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007854
【国際公開番号】WO2011/076393
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(500175772)ズートツッカー アクチェンゲゼルシャフト マンハイム/オクセンフルト (47)
【Fターム(参考)】