電気穿孔用ピペットチップ
本願明細書には、外面と、この外面内に位置する空所と、外面の上またはその内部に少なくとも一部位置し、外面の少なくとも一部と空所とに少なくとも一部電気的に連通する導体とを含む電気穿孔用ピペットチップが提供される。さらに、本願明細書に提供するのは、本体とコネクタと長軸棒状部とを含む電気穿孔用ピペットチップである。コネクタは、本体の先端に位置にしており、さらに少なくとも1個の接続ポストと、コネクタに機械的に連通する接続部と、コネクタの上またはその内部に少なくとも一部位置する導体とを含んでおり、ここで導体は接続ポストの少なくとも一部を囲繞している。長軸棒状部もまた空所を有しており、コネクタの先端に配置してある。本体とコネクタと長軸棒状部の空所は、流体連通している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年4月15日に提出された「電気穿孔装置用ピペットチップ(Pipette Tip for Electroporation Device)」と題する韓国特許出願第10−2008−0034744号に基づく優先権と利益とを主張するものであり、同出願は参照によりその全体を本願明細書に取り込むものとする。
【0002】
本発明は、電気穿孔用ピペットチップに関する。
【背景技術】
【0003】
電気穿孔は、細胞膜に浸透させることのできない巨大分子を電気パルスを用いて細胞内へ導入する技法である。電気穿孔は幅広く使用されており、細胞実験や遺伝子治療用に強く推奨される方法である。高電界を印加すると、細胞膜は一時的に多孔質となり、巨大分子等の異種材料に対し浸透可能となる。膜の電気的浸透可能化は、パルス幅やパルス持続時間やパルス数、加えて他の実験条件等の電界の様々なパラメータに依存する。移行の効果を助長する電気穿孔のメカニズムを理解すべく、上記パラメータに関する研究がなされてきた。例えば、電界の大きさは、膜の浸透性を増大させ、移入を生ぜしめる細胞膜部分を制御するための重要なパラメータであると報告されている。
【0004】
電気穿孔を行なう様々な装置が存在する。図1は、電気穿孔を行なうのに用いることのできる先行技術のキュベットの斜視図である。図2は、関連する米国特許出願第10/560,301号に記載された電気穿孔装置およびシステムを示す。図3は、図2に示した電気穿孔装置の側面図である。図4は、図2と図3に示した装置と共に用いるピペットチップの構成要素を示す側面図である。
【0005】
図1に示したキュベットを用い、細胞懸濁液および/または遺伝子混合物に電界を印加することができる。この種のシステムでは、キュベットには2枚の並列電極板1を装備することができる。2枚の電極板間に高電界を印加すると、細胞膜は浸透可能となり、細胞内へ遺伝子あるいは他の異物が導入できるようになる。アルミニウム電極は安価であり、使い捨て可能なキュベットと共に用いることができる。しかしながら、アルミニウムの使用がアルミニウム電極から溶解したAl3+イオンを生み出し、これらイオンが細胞に負の影響を及ぼすことが判っている。さらに、アルミニウム電極を用いると、電極上への酸化物層の堆積が引き起こす電圧の低下に起因して電界の大きさが変化することがある。それ故、より恒常的な電界を生成するには、白金電極や金電極を用いる方が好ましいようである。しかしながら、これらの材料から形成された電極は高価であり、それ故これら材料から形成された電極を消耗品に使用することは実用的でない。
【0006】
したがって、現行の電気穿孔装置は下記の欠点を有する。第1に、電気穿孔用のキュベットの使用は使用する電極材料に依存して高価でありうる。何故ならキュベットの両側に2個の電極が装着されているからであり、また各電極が広い表面積を有するからである。加えて、キュベットは1回限りの使用とすることが推奨されている。しかしながら、多くのユーザは同一のキュベットを用いて実験を数回行ない、したがって実験上の誤操作が発生する高い可能性が生まれる。第2に、電極材料(アルミニウム)は溶液中で反応性があり、水素発生に対する過電圧は低く、現行の電気穿孔装置を用いて電気穿孔を行なうことで電極の表面上の水の分解に起因する気泡が生み出される。第3に、生成したイオン(Al3+)副生成物が細胞に対し負の影響を有することが判っている。第4に、電極上の表面抵抗が電極面上の酸化物層(Al2O3)の生成に起因して目覚ましく増大する。第5に、電極間の電界は一定のままとすることができない可能性がある。これは、電極の隅部を貫流し、それによって電界を歪める大量の電流に起因するようである。最後に、必要とされる試料体積は大きく、そのことが試料内の少量の細胞の分析を困難にすることがある。それ故、これらの欠点に対処する新規の電気穿孔装置を開発する必要がある。
【0007】
図2〜図4は、上記欠点を解決するための電気穿孔装置とピペットチップならびにその詳細な構成要素の先行技術版を示す。図2〜図4を参照するに、現行の電気穿孔装置は、電気パルスを生成するパルス発生器10と、試料貯蔵器20と、一端をパルス発生器に電気的に連通させたピペット30と、ピペットチップ40で、一端がピペット30の端部に挿入できて他端が試料貯蔵器20内に挿入でき、かつ試料に流体連通させることのできるピペットチップとを含みうる。加えて、ピペット30の先端すなわちピペットチップ40は試料に流体連通させることができ、ピペット30は試料をピペットチップ40内へ吸入可能とすることができる。加えて、試料貯蔵器20内へは電極50が挿入でき、試料に流体連通させることができる。ピペット30の外周面は導電材で形成された接触子本体31を備えており、ここで接触子本体31には図3に示す如くピペットチップ40内部に配置したプランジャ42を電気的に接続することができる。ピペットチップ40はその両端に開口を有する管状本体41を備えており、ここで一端の開口はピペット30の端部へ挿入できるよう比較的大径を有する環状断面とし、他端は比較的小径を有する環状断面とすることができる。そこで、ピペットチップ30を試料貯蔵器20内へ挿入し、プランジャ42をピペットチップ40の本体41に挿通させて配置する。
【0008】
図2〜図4に示したシステムならびに電気穿孔装置を用いて電気穿孔を行なう際、ピペットはピペットチップ40内に試料を吸入するが、この間は圧力を維持し、それによってピペットチップ40の内部に試料を保持したままとする。試料貯蔵器20はそこで、電解液を収容した貯蔵器と交換することができる。ピペットチップ40の本体41内に配置されたプランジャ42と、試料貯蔵器40内の試料または電解液貯蔵器内の電解液とに接触している電極50に対し電流を印加することで、ピペットチップ40内に吸入された試料中に在る細胞に、2個の電極間と2個の電極間に位置するあらゆる細胞を介して電流を通すことによって電気穿孔することができる。ピペットチップ40内の試料中に在る細胞の電気穿孔により細胞膜はより浸透性となり、それ故に通常は細胞膜を浸透させることのできない巨大分子や分子プローブや薬剤やDNAやRNAやバクテリアや遺伝子や蛋白質や細胞あるいは任意の他の適当な物質の細胞内への導入が容易になる。
【0009】
図2〜図4に示した先行技術の電気穿孔システムならびに装置にあっては、ピペット30の外周面には別個の接触子本体31と、ピペットチップ40の本体41内にあって接触子本体31に電気的に連通させることのできる別個のプランジャ42とが備わっている。ピペット30の外周面には別個の接触子本体31が含まれ、別個のプランジャ42を接触子本体31と電気的に連通接続させるため、装置の構造は複雑であり、そのことが装置の製造を高価かつ時間を浪費するものとしている。ピペット30の外周面上に形成した接触子本体31とプランジャ42は装置内部で互いに接続しているため、プランジャと接触子本体との間の接続状態をユーザが判断することが困難である恐れがある。
【0010】
それ故、ピペットチップ自体を電極として機能させ、それによって電極として機能する別個の構造(プランジャ42等)の必要性を伴うことなく試料に対し電流を印加することのできる電気穿孔装置を開発することは、有用な筈である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願明細書に提供するのは、外面と、外面内に配置した空所と、外面の一側に配置した導体とを含む電気穿孔装置と共に用いるピペットチップである。導体は、ピペットチップの空所に電界を印加し、それによってピペットチップ内に在る試料とその中のあらゆる細胞に電界を印加することができる。細胞の細胞膜をそこでピペットチップにより電気穿孔し、試料中に在るあらゆる物質をそこで細胞内へ移行させることができる。
【0012】
さらに本願明細書に提供するのは、電気穿孔装置と共に用いるピペットチップであり、ここでピペットチップ自体は電気穿孔を行なう電極として機能し、またピペットチップ/電極は別個の電極構造を必要とせずに試料に接触する。加えて、本発明は簡略化された設計を用いて誤操作率を減らすとともに試行と誤操作の数を減らすことで、電気穿孔を簡単に行なう追加の効果を有する。例えば、1回限りの使用を意図したものではあるが、電気穿孔に現在用いられているキュベットは事実上複数回用いることができる。キュベット内に配置した電極から溶液内へのイオンの放出と細胞に対しこれらイオンが有する負の影響とがあることで、行程間の誤操作率は増大することがある。加えて、ピペットチップの空所が電極として機能するプランジャ等の電極として機能する追加の構造を含まないため、本発明のピペットチップの空所はただ空気圧を使用することで試料をピペットチップから簡単に吸入し放出することができる。
【0013】
本願明細書に提供されるのはピペットチップであり、外面と、外面内に配置した空所と、外面上または外面内部に少なくとも一部配置した導体で、外面と空所の少なくとも一部と電気的に連通する導体とを備える。導体をピペットチップの外面上または外面内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。導体は、空所に流体連通させることができる。一部実施形態では、導体はリング形状とすることができる。加えて、導体には本体と面とを含ませることができ、ここで本体は銅か真鍮かニッケルか金か銀かアルミニウムかそれらの任意の組み合わせかまたは任意の他の適当な導電材のうちの少なくとも1つから選択される導電材を含む。一部実施形態では、導体の本体は射出成形導体とすることができ、ここで射出成形導体は可塑性ポリマーまたは導電性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む。一部実施形態では、導体の表面に真鍮か銅かアルミニウムかニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかまたは任意の他の適当な導電材のうちの少なくとも1つを含めることができる。一部実施形態では、ピペットチップにさらに少なくとも1個の接続ポストを含めることができる。接続ポストは漏斗形状とすることができ、あるいはそうしないこともできる。一部実施形態では、ピペットチップには少なくとも1個、少なくとも2個または少なくとも3個の接続ポストを含めることができる。一部実施形態では、3個の接続ポストは互いに対しかつ外面に対し120度に配置することができる。
【0014】
本願明細書にさらに提供するのは電気穿孔装置と共に用いるピペットチップであり、これは基端と先端と空所とを有する本体と、基端と先端と空所とを有し、さらに本体の先端に配置したコネクタで、少なくとも1個の接続ポストと、少なくとも1個のコネクタに機械的に連通する接続部と、本体の上または内部に少なくとも一部配置され、少なくとも1個の接続ポストの少なくとも一部を囲繞する導体と、空所を有し、コネクタの先端に配置した長軸棒状部で、本体とコネクタと長軸棒状部の空所が流体連通する長軸棒状部とを含むコネクタとを備える。導体をピペットチップの外面上または外面内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。導体は、少なくとも1個の接続ポストを囲繞できるようにするか、あるいはそうできないようにもできる。一部実施形態では、導体はさらに接続部の空所に電流を印加することのできる内面を含んでいる。一部実施形態では、導体はニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムのうちの少なくとも1個から選択される導電材とすることができる。一部実施形態では、導体の内面は真鍮かアルミニウムか銅かニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材のうちの少なくとも1つから選択される導電材を用いてメッキすることができる。一部実施形態では、導体は可塑性ポリマーまたは導電性ポリマーを用いて射出成形することができる。加えて、一部実施形態では、ピペットチップには結合部直径と導体直径とを含めることができ、ここで導体直径は結合部直径未満とすることができ、あるいはそうしないこともできる。一部実施形態では、長軸棒状部はその長さに沿って先細とすることができる。接続部には、一部実施形態において結合部の空所に連通する接続孔を含めることができる。接続孔にはさらに、接続孔から径方向に延出する溝を含ませることができる。一部実施形態では、接続部にはさらに少なくとも1個の接続用突起と固定用突起とを含めることができ、ここで少なくとも1個の接続用突起と固定用突起は互いに相互ロックさせることができる。
【0015】
本願明細書に提供するのは電気穿孔システムであり、これはパルス発生器と、ピペットと、パルス発生器に電気的に連通するピペットチップで、外面と、外面内に配置した空所と、外面上または外面内部に少なくとも一部配置した導体領域で、導体が外面と空所の少なくとも一部に電気的に連通する導体領域と、パルス発生器に連通する電極とを含むピペットチップとを備える。導体をピペットチップの外面上または外面内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。ピペットチップは、電極と電気的に連通させることができる。
【0016】
本明細書内に記載する全ての刊行物、特許、特許出願は、あたかも各別個の刊行物と特許と特許出願が参照により組み込まれるよう具体的かつ個別に指示されているかの如く、同範囲にわたり参照により本願明細書に組み込むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の新規の特徴を、特に添付の特許請求の範囲と併せ説明する。本発明の特徴と利点のより良き理解は、本発明の原理を活用する例示実施形態を記載する下記の詳細な説明と添付の図面とを参照することで得られよう。
【0018】
【図1】電気穿孔を行なうのに現在用いられているキュベットの斜視図である。
【0019】
【図2】電気穿孔を行なうのに用いるシステムならびに装置の現行の実施形態を示す。
【0020】
【図3】図2に示した装置の側面図である。
【0021】
【図4】図2に示した装置と共に用いるピペットチップの構成要素の側面図である。
【0022】
【図5】ピペットチップの一実施形態を示す斜視図である。
【0023】
【図6】導体を取り外した図5に示したピペットチップを示す斜視図である。
【0024】
【図7】図5に示したピペットチップの断面図である。
【0025】
【図8】ピペットチップの一実施形態の斜視図である。
【0026】
【図9】図8に示したピペットチップの断面図である。
【0027】
【図10】ピペットチップの一実施形態の斜視図である。
【0028】
【図11】図10に示したピペットチップの断面図である。
【0029】
【図12】電気穿孔装置およびシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願明細書に提供されるのは、電気穿孔装置と共に用いるピペットチップである。ピペットチップは電気穿孔を容易にする。何故ならピペットチップ自体は図3と図4に示したプランジャ電極等の別個の電極を持たせる必要なく、試料に対し電極および/または電流を供給するのに用いることができるからである。したがって、本願明細書に記載するピペットチップは電気穿孔装置の製造単価を低減し、したがって試料とその内容物に対し電気穿孔を施すのを容易にすることができる。
【0031】
一部実施形態では、本願明細書に提供されるのは、外面と、外面内に配置した空所と、外面の一側に配置した導体とを含む電気穿孔装置と共に用いるピペットチップである。導体は、ピペットチップの空所とピペットチップ内に配置したあらゆる試料および/または細胞とに電界を印加することができる。ピペットチップにより細胞の細胞膜に対し電界を印加することで、細胞に電気穿孔し、試料中に在る物質をそこで細胞へ移行せることができる。細胞内へ導入することのできる物質の例には、巨大分子や分子プローブや薬剤や治療薬やDNAやRNAやバクテリアや遺伝子や蛋白質や細胞あるいは任意の他の適当な物質が含まれる。
【0032】
ここで、図5〜図7を参照するに、図5〜図7はピペットチップの一実施形態の様々な図を示すものであり、ここでピペットチップ400は、(図12に示す如く)ピペット300の一端に接続することのできる空所411を有する結合部410を含んでいる。ピペット300は、空所411に流体連通している。ピペットチップはさらに、結合部410から延出する長軸棒状部430を含んでいる。一部実施形態では、長軸棒状部430は結合部410に比べ小径を有する。長軸棒状部430内にも空所431が配置してあり、ピペットチップ内へ吸入する試料に接触するよう形成してある。ピペットチップはさらに、結合部410と長軸棒状部430との間に配置した接続部420を含んでいる。接続部420はさらに、結合部410の空所411と長軸棒状部430の空所431とに連通する空所421を含んでいる。結合部410と接続部420と長軸棒状部430の空所411、421、431間の接続が、それぞれ試料に対する接続部による電界の印加を容易にしている。一部実施形態では、ピペット300により吸引力を作用させることができる。ピペット上のプランジャを押し下げると、ピペット300が生成する吸引力が結合部410と接続部420と長軸棒状部430の空所411、421、431をそれぞれ介して伝わり、長軸棒状部430の空所431内と接続部420の空所421内へ試料を吸入する。一部実施形態では、長軸棒状部430と接続部420の空所431、421だけをそれぞれ充填する十分な量の試料を吸入するよう、ピペットチップ400を較正する。一部実施形態では、結合部410と接続部420と長軸棒状部430の空所411、421、431内にそれぞれ試料を吸入することができる。
【0033】
結合部410は2個の端部、先端すなわちユーザ/ピペットから最も遠い端部と、基端すなわちユーザ/ピペットに最も近い端部とを有する。結合部410の両端は、開口と、その中に試料を吸入することのできる外面により囲繞された空所411とを有する。加えて、結合部410の上部外周面は、ピペットチップ400をピペット300の端部に対し簡単に接続または分離できるよう、所定の長さを有しており、さらに結合部410から径方向に延出する突起412を含めることができる。
【0034】
図6を参照するに、一部実施形態では、ピペットチップは、結合部410の一端に固定した少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、または3個以上の筒状接続ポスト423と、1個または複数の接続ポスト423の端部に固定した漏斗状接続部424とを具備する接続部420と、接続ポスト423を囲繞する導体422とを含んでいる。一部実施形態では、導体は結合部410の表面上または表面内部に少なくとも一部配置する。導体を結合部の上または内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。一部実施形態では、3個の接続ポスト423を設けることができる。導体422は、接続ポスト423の少なくとも一部または全体を囲繞することができる。一部実施形態では、導体422はリング形状の導体とする。接続ポスト423は、結合部420周りの任意の位置に配置することができる。一部実施形態では、接続ポスト423は他の接続ポストに対し、かつ結合部410の下部表面に対し、それぞれ120°の角度に配置でき、空所421は接続部424の中心を通して形成する。導体422の内周面を接続ポスト423間の空隙を介して露出させ、ピペットチップ内に吸入された試料に対する電界の印加を容易にすることができる。一部実施形態では、導体は、例示目的に限るが、ニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムかそれらの任意の組み合わせかまたは任意の他の適当な導電材等の導電材で構成し、かつ/または導体の表面は、例示目的に限るが、ニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムかそれらの任意の組み合わせかまたは任意の他の適当な導電材等の導電材を用いてメッキすることができる。一部実施形態では、導体はプラスチックを用いて射出成形することができる。導体の表面はそこで、銅か真鍮かアルミニウムかニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材等の導電材を用いてメッキすることができる。一部実施形態では、導体は導電性ポリマーを用いて射出成形することができる。
【0035】
長軸棒状部430は、接続部424の下部表面に固定することで接続部424の長手方向に任意の適当な所定の長さを持たせることができ、その中心を通して接続部424の空所421に連通する空所431を形成することができる。一部実施形態では、ピペットチップ400を試料貯蔵器から取り外したときに長軸棒状部430の端部に残留する試料の量を低減できるよう、長軸棒状部430はその長さに沿って直径を先細とすることができる。
【0036】
図8と図9を参照するに、図8は本願明細書に提供するピペットチップの一実施形態の斜視図であり、その外観は図5に示したピペットチップに類似しており、図9は図8に示したピペットチップの断面図である。本発明の別の実施形態になる電気穿孔装置用のピペットチップ600は、ピペット300(図12に示す)の一端をその中に挿入して空所611に連通させることのできる空所611を有する結合部610と、その中に試料を吸入することのできる空所631を有する長軸棒状部630と、前記結合部610と前記長軸棒状部630との間に配設され、内部に空所621を有し、該結合部630の空所631が前記長軸棒状部610の空所611に連通できるようにする接続部620とを含んでいる。接続部には、結合部610よりも小径を持たせることができる。接続部620は、ピペットチップ600の空所内の試料に電界を印加する導体622を含んでいる。
【0037】
結合部610は、各端部に配置した開口を有する両端部と中心の空所611とを有する。空所611は、結合部610の中心に位置する。空所411は、接続部420と長軸棒状部430の空所421、431とにそれぞれ流体連通しており、その中に試料を吸入することができる。一部実施形態では、試料は接続部610の空所611内にも吸入することができる。結合部610の上部外周面は、ピペット300の端部に対しピペットチップ600を簡単に接続または分離できるよう所定の長さを有し、さらに結合部610から径方向に延出する突起612を含めることができる。
【0038】
図9を参照するに、一部実施形態では、ピペットチップ600は結合部610の下部表面に形成した空所611に連通する接続孔613と、接続孔613から径方向に延在しかつ接続孔613の側部で凹み、接続部620の上端に嵌合するようにした環状溝614とを有する。嵌合対象である結合部610の接続孔613に対応する形状を有する接続用突起623が上端に形成してあり、また接続用溝614に対応する形状を有する固定用突起624が接続用溝614内に挿入する接続用突起623の側部に形成してあり、それによって結合部610と接続部620とが接続されている。さらに、その中に嵌合させる長軸棒状部630の接続孔613’に対応する形状を有する接続用突起623’が下端に形成してあり、また接続用溝614’に対応する形状を有する固定用突起624’が接続用溝614’内に挿入する接続用突起623’の側部に形成してあり、それによって結合部610と長軸棒状部630とが接続されている。
【0039】
接続部620の中心を通り、試料をその中に吸入することのできる空所621を形成することができる。接続部620には、例示目的に限るが、ニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムかそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の導電材等の導電材から選択した材料から作成することのできる導体622が含まれる。導体622は、接続部620の表面上または表面内部に少なくとも一部配置することができる。導体622を接続部620の表面上または表面内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。導体622はこのように、接続部620の空所621か長軸棒状部630の空所631かまたはその両方の空所621、631かのいずれかに配置した試料に電界を印加することができる。導体の表面は、例示目的に限るが、ニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムかそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材等の導電材を用いてメッキすることができる。一部実施形態では、導体622はプラスチックを用いて射出成形することができ、その表面はそこで例えば真鍮かアルミニウムか銅かニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材等の導電材を用いて被覆あるいはメッキすることができる。一部実施形態では、導体622は導電性ポリマーを用いて射出成形することができる。
【0040】
前述の如く、長軸棒状部630の上面の形状を結合部610の表面形状に対応させ、結合部610と接続部620と長軸棒状部630の接続を容易にすることができる。接続部620の結合部分621に連通する空所631が、棒状部の中心を通して形成してあり、長手方向に延在させてある。一部実施形態では、長軸棒状部630はその長さに沿って先細とすることができる。一部実施形態では、長軸棒状部630を試料貯蔵器から取り外したときに長軸棒状部630の端部に残留する試料の量が減らせるよう、長軸棒状部630の端部を上端すなわち基端から先端にかけて直径を先細とする。
【0041】
上記の構造により、本発明の一実施形態になる電気穿孔用のピペットチップを用いて標本を抽出する場合、追加のプランジャを用いることなくピペットチップ自体を用いて標本に電気を印加することにより電気穿孔を可能にすることで、電気穿孔装置の構成はより簡単に作成でき、それによって本発明は製造単価を低減することができる。加えて、本発明は試料に電極を作用させる簡単な構造を用い、誤操作率を低減しかつ試行と誤操作の回数を低減することで、電気穿孔を簡単に行なうことができる。また、電気穿孔装置内に使用する現行のピペットチップは、先行技術に説明したプランジャ等の電極として機能する別個の構造を有することがあるため、この別個の構造がピペットチップから試料を吸入または放出するのに空気圧を使用することと相容れない可能性がある。本発明の一実施形態になる電気穿孔用のピペットチップは別個の電極を持たないため、ピペットチップは空気圧を用いて真空を生み出すかまたは試料を排出することで試料を簡単に吸入または放出することができる。
【0042】
図10は本願明細書に提供するピペットチップの一実施形態を示す斜視図であり、図11は図10の断面図である。ここで図10と図11を参照するに、電気穿孔用のピペットチップ700は、空所711を有する結合部710で、空所内にピペット300の一端を挿入して連通させる結合部710と、その中に試料を吸入する結合部710の空所711に連通する空所731を有する長軸棒状部730と、結合部710よりも比較的小径を有し、結合部710の端部に固定され、その側面を導電材で構成した導体732とを含んでいる。一部実施形態では、導電材は導体の内部側に配置することができる。
【0043】
結合部は基端と先端とを有しており、結合部710の基端と先端は共に開口を有する。結合部もまた、内部に試料を吸入することのできるその中心を通して形成した空所711を有する。加えて、結合部710の上部外周面は、ピペット300の端部に対しピペットチップ700を簡単に接続または分離できるよう所定の長さを有する。一部実施形態では、結合部710の上部外周にはさらに結合部710から径方向に延出形成した突起712を含ませることができる。
【0044】
所定の高さを有する接続用突起713が、結合部710の先端に配置してある。接続用突起713は、長軸棒状部730の基端に配置した固定用突起714内へ挿入することができる。合体させると、接続用突起713と固定用突起714が結合部710と長軸棒状部730とを接続用突起730の側部に固定する。接続用突起713に対応する形状を有する接続用溝732を、接続用突起713を挿入する長軸棒状部730の基端に形成することができる。一部実施形態では、固定用突起714を挿入して結合する固定用溝733を接続用溝732の内側に形成する。一部実施形態では、長軸棒状部730の端部はその長さに沿って先細とする。一部実施形態では、長軸棒状部730は上端すなわち基端から先端にかけて径を先細とし、長軸棒状部730を試料貯蔵器から取り外した後に長軸棒状部730の端部に残留する試料の量を減らすことができる。導体734は、接続用突起713の上または内部に少なくとも一部配置することができる。導体をピペットチップの外面上または外面内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。一部実施形態では、コネクタは結合部710の上または内部に少なくとも一部配置することができる。一部実施形態では、導体734は銅か真鍮かアルミニウムかニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材等の導電材で構成することができ、その表面を、例えば銅か真鍮かアルミニウムかニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材等の導電材を用いてメッキすることができる。一部実施形態では、導体は可塑性ポリマーあるいは導電性ポリマーを用いて射出成形することができる。
【0045】
ここで図12を参照するに、図12は電気穿孔用のピペットチップをその上に装着することのできるピペットを含む電気穿孔装置を含む電気穿孔システムを示す。加えて、本願明細書に提供するのは装置とシステムの使用方法である。電気穿孔システムは、電気パルスを生成するパルス発生器100と、試料貯蔵器200と、試料貯蔵器から試料を吸入することができ、かつ吸入した試料を保持することのできるピペット300と、パルス発生器100に電気的に接続したピペットチップ400で、その一端をピペット300の端部に接続し、その他端を試料貯蔵器200内へ挿入し、その中にピペット300により試料を吸入するピペットチップと、パルス発生器100に電気的に接続され、貯蔵器200内に浸漬させる追加の電極500とを含んでいる。ピペット300を圧力維持手段として用いてピペットチップ400内に試料を吸入した後、ピペットチップ400内に吸入した試料中に細胞や細胞群が存在する場合、そこでパルス発生器100を用いて電極500の導体422とピペットチップ400に電気パルスを印加することで上記の細胞や細胞群を電気穿孔することができる。一部実施形態では、試料貯蔵器200は試料に加え電流を導く電解液を収容することができる。一部実施形態では、試料貯蔵器200は試料をピペットチップ400内へ吸入した後で電流を導く電解液を収容した電解液貯蔵器と交換することができる。ピペットチップ400と追加の電極500はそこで、電解液貯蔵器内に配置することができる。そこで、電極とピペットチップとを用い、電極とピペットチップ上に位置する導体との間に電流を通ずることで細胞膜に電流パルスを印加することができる。電流パルスはそこで細胞膜の脂質二重層の構成を変え、通常は細胞膜を通過することのできない試料中に在る物質が細胞膜を通過できるようにすることができる。印加するパルスは、そこで細胞を傷つけたり破壊したりすることなく再封止することのできる非浸透性物質に対し一時的な通過を生み出すのに十分な強度と持続時間とを有する。そこで細胞膜を介して通過させることのできる物質の例には、これらに限定はされないが、巨大分子や分子プローブや薬剤や治療薬やDNAやRNAやバクテリアや遺伝子や蛋白質や細胞あるいは任意の他の適当な物質が含まれる。ピペットは、図12に矢印で示す如くピペット先端のプランジャを動かすことで試料を吸入および放出するよう真空引きと圧出とを用いることができる。
【0046】
本発明の好適な実施形態を本願明細書に例示し説明してきたが、当業者にはこれらの実施形態が例示としてのみ提供されていることは明白となろう。ここで、本発明から逸脱することなく多数の変形例や改変例や置換例が当業者には想起されよう。本願明細書に記載した本発明の実施形態に対する様々な代替例が本発明の実施に用いられうることを、理解されたい。下記の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、かつこれら請求項群の範囲内の方法と構造ならびにそれらの等価物がそれによって網羅されることを意図するものである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年4月15日に提出された「電気穿孔装置用ピペットチップ(Pipette Tip for Electroporation Device)」と題する韓国特許出願第10−2008−0034744号に基づく優先権と利益とを主張するものであり、同出願は参照によりその全体を本願明細書に取り込むものとする。
【0002】
本発明は、電気穿孔用ピペットチップに関する。
【背景技術】
【0003】
電気穿孔は、細胞膜に浸透させることのできない巨大分子を電気パルスを用いて細胞内へ導入する技法である。電気穿孔は幅広く使用されており、細胞実験や遺伝子治療用に強く推奨される方法である。高電界を印加すると、細胞膜は一時的に多孔質となり、巨大分子等の異種材料に対し浸透可能となる。膜の電気的浸透可能化は、パルス幅やパルス持続時間やパルス数、加えて他の実験条件等の電界の様々なパラメータに依存する。移行の効果を助長する電気穿孔のメカニズムを理解すべく、上記パラメータに関する研究がなされてきた。例えば、電界の大きさは、膜の浸透性を増大させ、移入を生ぜしめる細胞膜部分を制御するための重要なパラメータであると報告されている。
【0004】
電気穿孔を行なう様々な装置が存在する。図1は、電気穿孔を行なうのに用いることのできる先行技術のキュベットの斜視図である。図2は、関連する米国特許出願第10/560,301号に記載された電気穿孔装置およびシステムを示す。図3は、図2に示した電気穿孔装置の側面図である。図4は、図2と図3に示した装置と共に用いるピペットチップの構成要素を示す側面図である。
【0005】
図1に示したキュベットを用い、細胞懸濁液および/または遺伝子混合物に電界を印加することができる。この種のシステムでは、キュベットには2枚の並列電極板1を装備することができる。2枚の電極板間に高電界を印加すると、細胞膜は浸透可能となり、細胞内へ遺伝子あるいは他の異物が導入できるようになる。アルミニウム電極は安価であり、使い捨て可能なキュベットと共に用いることができる。しかしながら、アルミニウムの使用がアルミニウム電極から溶解したAl3+イオンを生み出し、これらイオンが細胞に負の影響を及ぼすことが判っている。さらに、アルミニウム電極を用いると、電極上への酸化物層の堆積が引き起こす電圧の低下に起因して電界の大きさが変化することがある。それ故、より恒常的な電界を生成するには、白金電極や金電極を用いる方が好ましいようである。しかしながら、これらの材料から形成された電極は高価であり、それ故これら材料から形成された電極を消耗品に使用することは実用的でない。
【0006】
したがって、現行の電気穿孔装置は下記の欠点を有する。第1に、電気穿孔用のキュベットの使用は使用する電極材料に依存して高価でありうる。何故ならキュベットの両側に2個の電極が装着されているからであり、また各電極が広い表面積を有するからである。加えて、キュベットは1回限りの使用とすることが推奨されている。しかしながら、多くのユーザは同一のキュベットを用いて実験を数回行ない、したがって実験上の誤操作が発生する高い可能性が生まれる。第2に、電極材料(アルミニウム)は溶液中で反応性があり、水素発生に対する過電圧は低く、現行の電気穿孔装置を用いて電気穿孔を行なうことで電極の表面上の水の分解に起因する気泡が生み出される。第3に、生成したイオン(Al3+)副生成物が細胞に対し負の影響を有することが判っている。第4に、電極上の表面抵抗が電極面上の酸化物層(Al2O3)の生成に起因して目覚ましく増大する。第5に、電極間の電界は一定のままとすることができない可能性がある。これは、電極の隅部を貫流し、それによって電界を歪める大量の電流に起因するようである。最後に、必要とされる試料体積は大きく、そのことが試料内の少量の細胞の分析を困難にすることがある。それ故、これらの欠点に対処する新規の電気穿孔装置を開発する必要がある。
【0007】
図2〜図4は、上記欠点を解決するための電気穿孔装置とピペットチップならびにその詳細な構成要素の先行技術版を示す。図2〜図4を参照するに、現行の電気穿孔装置は、電気パルスを生成するパルス発生器10と、試料貯蔵器20と、一端をパルス発生器に電気的に連通させたピペット30と、ピペットチップ40で、一端がピペット30の端部に挿入できて他端が試料貯蔵器20内に挿入でき、かつ試料に流体連通させることのできるピペットチップとを含みうる。加えて、ピペット30の先端すなわちピペットチップ40は試料に流体連通させることができ、ピペット30は試料をピペットチップ40内へ吸入可能とすることができる。加えて、試料貯蔵器20内へは電極50が挿入でき、試料に流体連通させることができる。ピペット30の外周面は導電材で形成された接触子本体31を備えており、ここで接触子本体31には図3に示す如くピペットチップ40内部に配置したプランジャ42を電気的に接続することができる。ピペットチップ40はその両端に開口を有する管状本体41を備えており、ここで一端の開口はピペット30の端部へ挿入できるよう比較的大径を有する環状断面とし、他端は比較的小径を有する環状断面とすることができる。そこで、ピペットチップ30を試料貯蔵器20内へ挿入し、プランジャ42をピペットチップ40の本体41に挿通させて配置する。
【0008】
図2〜図4に示したシステムならびに電気穿孔装置を用いて電気穿孔を行なう際、ピペットはピペットチップ40内に試料を吸入するが、この間は圧力を維持し、それによってピペットチップ40の内部に試料を保持したままとする。試料貯蔵器20はそこで、電解液を収容した貯蔵器と交換することができる。ピペットチップ40の本体41内に配置されたプランジャ42と、試料貯蔵器40内の試料または電解液貯蔵器内の電解液とに接触している電極50に対し電流を印加することで、ピペットチップ40内に吸入された試料中に在る細胞に、2個の電極間と2個の電極間に位置するあらゆる細胞を介して電流を通すことによって電気穿孔することができる。ピペットチップ40内の試料中に在る細胞の電気穿孔により細胞膜はより浸透性となり、それ故に通常は細胞膜を浸透させることのできない巨大分子や分子プローブや薬剤やDNAやRNAやバクテリアや遺伝子や蛋白質や細胞あるいは任意の他の適当な物質の細胞内への導入が容易になる。
【0009】
図2〜図4に示した先行技術の電気穿孔システムならびに装置にあっては、ピペット30の外周面には別個の接触子本体31と、ピペットチップ40の本体41内にあって接触子本体31に電気的に連通させることのできる別個のプランジャ42とが備わっている。ピペット30の外周面には別個の接触子本体31が含まれ、別個のプランジャ42を接触子本体31と電気的に連通接続させるため、装置の構造は複雑であり、そのことが装置の製造を高価かつ時間を浪費するものとしている。ピペット30の外周面上に形成した接触子本体31とプランジャ42は装置内部で互いに接続しているため、プランジャと接触子本体との間の接続状態をユーザが判断することが困難である恐れがある。
【0010】
それ故、ピペットチップ自体を電極として機能させ、それによって電極として機能する別個の構造(プランジャ42等)の必要性を伴うことなく試料に対し電流を印加することのできる電気穿孔装置を開発することは、有用な筈である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願明細書に提供するのは、外面と、外面内に配置した空所と、外面の一側に配置した導体とを含む電気穿孔装置と共に用いるピペットチップである。導体は、ピペットチップの空所に電界を印加し、それによってピペットチップ内に在る試料とその中のあらゆる細胞に電界を印加することができる。細胞の細胞膜をそこでピペットチップにより電気穿孔し、試料中に在るあらゆる物質をそこで細胞内へ移行させることができる。
【0012】
さらに本願明細書に提供するのは、電気穿孔装置と共に用いるピペットチップであり、ここでピペットチップ自体は電気穿孔を行なう電極として機能し、またピペットチップ/電極は別個の電極構造を必要とせずに試料に接触する。加えて、本発明は簡略化された設計を用いて誤操作率を減らすとともに試行と誤操作の数を減らすことで、電気穿孔を簡単に行なう追加の効果を有する。例えば、1回限りの使用を意図したものではあるが、電気穿孔に現在用いられているキュベットは事実上複数回用いることができる。キュベット内に配置した電極から溶液内へのイオンの放出と細胞に対しこれらイオンが有する負の影響とがあることで、行程間の誤操作率は増大することがある。加えて、ピペットチップの空所が電極として機能するプランジャ等の電極として機能する追加の構造を含まないため、本発明のピペットチップの空所はただ空気圧を使用することで試料をピペットチップから簡単に吸入し放出することができる。
【0013】
本願明細書に提供されるのはピペットチップであり、外面と、外面内に配置した空所と、外面上または外面内部に少なくとも一部配置した導体で、外面と空所の少なくとも一部と電気的に連通する導体とを備える。導体をピペットチップの外面上または外面内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。導体は、空所に流体連通させることができる。一部実施形態では、導体はリング形状とすることができる。加えて、導体には本体と面とを含ませることができ、ここで本体は銅か真鍮かニッケルか金か銀かアルミニウムかそれらの任意の組み合わせかまたは任意の他の適当な導電材のうちの少なくとも1つから選択される導電材を含む。一部実施形態では、導体の本体は射出成形導体とすることができ、ここで射出成形導体は可塑性ポリマーまたは導電性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む。一部実施形態では、導体の表面に真鍮か銅かアルミニウムかニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかまたは任意の他の適当な導電材のうちの少なくとも1つを含めることができる。一部実施形態では、ピペットチップにさらに少なくとも1個の接続ポストを含めることができる。接続ポストは漏斗形状とすることができ、あるいはそうしないこともできる。一部実施形態では、ピペットチップには少なくとも1個、少なくとも2個または少なくとも3個の接続ポストを含めることができる。一部実施形態では、3個の接続ポストは互いに対しかつ外面に対し120度に配置することができる。
【0014】
本願明細書にさらに提供するのは電気穿孔装置と共に用いるピペットチップであり、これは基端と先端と空所とを有する本体と、基端と先端と空所とを有し、さらに本体の先端に配置したコネクタで、少なくとも1個の接続ポストと、少なくとも1個のコネクタに機械的に連通する接続部と、本体の上または内部に少なくとも一部配置され、少なくとも1個の接続ポストの少なくとも一部を囲繞する導体と、空所を有し、コネクタの先端に配置した長軸棒状部で、本体とコネクタと長軸棒状部の空所が流体連通する長軸棒状部とを含むコネクタとを備える。導体をピペットチップの外面上または外面内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。導体は、少なくとも1個の接続ポストを囲繞できるようにするか、あるいはそうできないようにもできる。一部実施形態では、導体はさらに接続部の空所に電流を印加することのできる内面を含んでいる。一部実施形態では、導体はニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムのうちの少なくとも1個から選択される導電材とすることができる。一部実施形態では、導体の内面は真鍮かアルミニウムか銅かニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材のうちの少なくとも1つから選択される導電材を用いてメッキすることができる。一部実施形態では、導体は可塑性ポリマーまたは導電性ポリマーを用いて射出成形することができる。加えて、一部実施形態では、ピペットチップには結合部直径と導体直径とを含めることができ、ここで導体直径は結合部直径未満とすることができ、あるいはそうしないこともできる。一部実施形態では、長軸棒状部はその長さに沿って先細とすることができる。接続部には、一部実施形態において結合部の空所に連通する接続孔を含めることができる。接続孔にはさらに、接続孔から径方向に延出する溝を含ませることができる。一部実施形態では、接続部にはさらに少なくとも1個の接続用突起と固定用突起とを含めることができ、ここで少なくとも1個の接続用突起と固定用突起は互いに相互ロックさせることができる。
【0015】
本願明細書に提供するのは電気穿孔システムであり、これはパルス発生器と、ピペットと、パルス発生器に電気的に連通するピペットチップで、外面と、外面内に配置した空所と、外面上または外面内部に少なくとも一部配置した導体領域で、導体が外面と空所の少なくとも一部に電気的に連通する導体領域と、パルス発生器に連通する電極とを含むピペットチップとを備える。導体をピペットチップの外面上または外面内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。ピペットチップは、電極と電気的に連通させることができる。
【0016】
本明細書内に記載する全ての刊行物、特許、特許出願は、あたかも各別個の刊行物と特許と特許出願が参照により組み込まれるよう具体的かつ個別に指示されているかの如く、同範囲にわたり参照により本願明細書に組み込むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の新規の特徴を、特に添付の特許請求の範囲と併せ説明する。本発明の特徴と利点のより良き理解は、本発明の原理を活用する例示実施形態を記載する下記の詳細な説明と添付の図面とを参照することで得られよう。
【0018】
【図1】電気穿孔を行なうのに現在用いられているキュベットの斜視図である。
【0019】
【図2】電気穿孔を行なうのに用いるシステムならびに装置の現行の実施形態を示す。
【0020】
【図3】図2に示した装置の側面図である。
【0021】
【図4】図2に示した装置と共に用いるピペットチップの構成要素の側面図である。
【0022】
【図5】ピペットチップの一実施形態を示す斜視図である。
【0023】
【図6】導体を取り外した図5に示したピペットチップを示す斜視図である。
【0024】
【図7】図5に示したピペットチップの断面図である。
【0025】
【図8】ピペットチップの一実施形態の斜視図である。
【0026】
【図9】図8に示したピペットチップの断面図である。
【0027】
【図10】ピペットチップの一実施形態の斜視図である。
【0028】
【図11】図10に示したピペットチップの断面図である。
【0029】
【図12】電気穿孔装置およびシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願明細書に提供されるのは、電気穿孔装置と共に用いるピペットチップである。ピペットチップは電気穿孔を容易にする。何故ならピペットチップ自体は図3と図4に示したプランジャ電極等の別個の電極を持たせる必要なく、試料に対し電極および/または電流を供給するのに用いることができるからである。したがって、本願明細書に記載するピペットチップは電気穿孔装置の製造単価を低減し、したがって試料とその内容物に対し電気穿孔を施すのを容易にすることができる。
【0031】
一部実施形態では、本願明細書に提供されるのは、外面と、外面内に配置した空所と、外面の一側に配置した導体とを含む電気穿孔装置と共に用いるピペットチップである。導体は、ピペットチップの空所とピペットチップ内に配置したあらゆる試料および/または細胞とに電界を印加することができる。ピペットチップにより細胞の細胞膜に対し電界を印加することで、細胞に電気穿孔し、試料中に在る物質をそこで細胞へ移行せることができる。細胞内へ導入することのできる物質の例には、巨大分子や分子プローブや薬剤や治療薬やDNAやRNAやバクテリアや遺伝子や蛋白質や細胞あるいは任意の他の適当な物質が含まれる。
【0032】
ここで、図5〜図7を参照するに、図5〜図7はピペットチップの一実施形態の様々な図を示すものであり、ここでピペットチップ400は、(図12に示す如く)ピペット300の一端に接続することのできる空所411を有する結合部410を含んでいる。ピペット300は、空所411に流体連通している。ピペットチップはさらに、結合部410から延出する長軸棒状部430を含んでいる。一部実施形態では、長軸棒状部430は結合部410に比べ小径を有する。長軸棒状部430内にも空所431が配置してあり、ピペットチップ内へ吸入する試料に接触するよう形成してある。ピペットチップはさらに、結合部410と長軸棒状部430との間に配置した接続部420を含んでいる。接続部420はさらに、結合部410の空所411と長軸棒状部430の空所431とに連通する空所421を含んでいる。結合部410と接続部420と長軸棒状部430の空所411、421、431間の接続が、それぞれ試料に対する接続部による電界の印加を容易にしている。一部実施形態では、ピペット300により吸引力を作用させることができる。ピペット上のプランジャを押し下げると、ピペット300が生成する吸引力が結合部410と接続部420と長軸棒状部430の空所411、421、431をそれぞれ介して伝わり、長軸棒状部430の空所431内と接続部420の空所421内へ試料を吸入する。一部実施形態では、長軸棒状部430と接続部420の空所431、421だけをそれぞれ充填する十分な量の試料を吸入するよう、ピペットチップ400を較正する。一部実施形態では、結合部410と接続部420と長軸棒状部430の空所411、421、431内にそれぞれ試料を吸入することができる。
【0033】
結合部410は2個の端部、先端すなわちユーザ/ピペットから最も遠い端部と、基端すなわちユーザ/ピペットに最も近い端部とを有する。結合部410の両端は、開口と、その中に試料を吸入することのできる外面により囲繞された空所411とを有する。加えて、結合部410の上部外周面は、ピペットチップ400をピペット300の端部に対し簡単に接続または分離できるよう、所定の長さを有しており、さらに結合部410から径方向に延出する突起412を含めることができる。
【0034】
図6を参照するに、一部実施形態では、ピペットチップは、結合部410の一端に固定した少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、または3個以上の筒状接続ポスト423と、1個または複数の接続ポスト423の端部に固定した漏斗状接続部424とを具備する接続部420と、接続ポスト423を囲繞する導体422とを含んでいる。一部実施形態では、導体は結合部410の表面上または表面内部に少なくとも一部配置する。導体を結合部の上または内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。一部実施形態では、3個の接続ポスト423を設けることができる。導体422は、接続ポスト423の少なくとも一部または全体を囲繞することができる。一部実施形態では、導体422はリング形状の導体とする。接続ポスト423は、結合部420周りの任意の位置に配置することができる。一部実施形態では、接続ポスト423は他の接続ポストに対し、かつ結合部410の下部表面に対し、それぞれ120°の角度に配置でき、空所421は接続部424の中心を通して形成する。導体422の内周面を接続ポスト423間の空隙を介して露出させ、ピペットチップ内に吸入された試料に対する電界の印加を容易にすることができる。一部実施形態では、導体は、例示目的に限るが、ニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムかそれらの任意の組み合わせかまたは任意の他の適当な導電材等の導電材で構成し、かつ/または導体の表面は、例示目的に限るが、ニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムかそれらの任意の組み合わせかまたは任意の他の適当な導電材等の導電材を用いてメッキすることができる。一部実施形態では、導体はプラスチックを用いて射出成形することができる。導体の表面はそこで、銅か真鍮かアルミニウムかニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材等の導電材を用いてメッキすることができる。一部実施形態では、導体は導電性ポリマーを用いて射出成形することができる。
【0035】
長軸棒状部430は、接続部424の下部表面に固定することで接続部424の長手方向に任意の適当な所定の長さを持たせることができ、その中心を通して接続部424の空所421に連通する空所431を形成することができる。一部実施形態では、ピペットチップ400を試料貯蔵器から取り外したときに長軸棒状部430の端部に残留する試料の量を低減できるよう、長軸棒状部430はその長さに沿って直径を先細とすることができる。
【0036】
図8と図9を参照するに、図8は本願明細書に提供するピペットチップの一実施形態の斜視図であり、その外観は図5に示したピペットチップに類似しており、図9は図8に示したピペットチップの断面図である。本発明の別の実施形態になる電気穿孔装置用のピペットチップ600は、ピペット300(図12に示す)の一端をその中に挿入して空所611に連通させることのできる空所611を有する結合部610と、その中に試料を吸入することのできる空所631を有する長軸棒状部630と、前記結合部610と前記長軸棒状部630との間に配設され、内部に空所621を有し、該結合部630の空所631が前記長軸棒状部610の空所611に連通できるようにする接続部620とを含んでいる。接続部には、結合部610よりも小径を持たせることができる。接続部620は、ピペットチップ600の空所内の試料に電界を印加する導体622を含んでいる。
【0037】
結合部610は、各端部に配置した開口を有する両端部と中心の空所611とを有する。空所611は、結合部610の中心に位置する。空所411は、接続部420と長軸棒状部430の空所421、431とにそれぞれ流体連通しており、その中に試料を吸入することができる。一部実施形態では、試料は接続部610の空所611内にも吸入することができる。結合部610の上部外周面は、ピペット300の端部に対しピペットチップ600を簡単に接続または分離できるよう所定の長さを有し、さらに結合部610から径方向に延出する突起612を含めることができる。
【0038】
図9を参照するに、一部実施形態では、ピペットチップ600は結合部610の下部表面に形成した空所611に連通する接続孔613と、接続孔613から径方向に延在しかつ接続孔613の側部で凹み、接続部620の上端に嵌合するようにした環状溝614とを有する。嵌合対象である結合部610の接続孔613に対応する形状を有する接続用突起623が上端に形成してあり、また接続用溝614に対応する形状を有する固定用突起624が接続用溝614内に挿入する接続用突起623の側部に形成してあり、それによって結合部610と接続部620とが接続されている。さらに、その中に嵌合させる長軸棒状部630の接続孔613’に対応する形状を有する接続用突起623’が下端に形成してあり、また接続用溝614’に対応する形状を有する固定用突起624’が接続用溝614’内に挿入する接続用突起623’の側部に形成してあり、それによって結合部610と長軸棒状部630とが接続されている。
【0039】
接続部620の中心を通り、試料をその中に吸入することのできる空所621を形成することができる。接続部620には、例示目的に限るが、ニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムかそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の導電材等の導電材から選択した材料から作成することのできる導体622が含まれる。導体622は、接続部620の表面上または表面内部に少なくとも一部配置することができる。導体622を接続部620の表面上または表面内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。導体622はこのように、接続部620の空所621か長軸棒状部630の空所631かまたはその両方の空所621、631かのいずれかに配置した試料に電界を印加することができる。導体の表面は、例示目的に限るが、ニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムかそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材等の導電材を用いてメッキすることができる。一部実施形態では、導体622はプラスチックを用いて射出成形することができ、その表面はそこで例えば真鍮かアルミニウムか銅かニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材等の導電材を用いて被覆あるいはメッキすることができる。一部実施形態では、導体622は導電性ポリマーを用いて射出成形することができる。
【0040】
前述の如く、長軸棒状部630の上面の形状を結合部610の表面形状に対応させ、結合部610と接続部620と長軸棒状部630の接続を容易にすることができる。接続部620の結合部分621に連通する空所631が、棒状部の中心を通して形成してあり、長手方向に延在させてある。一部実施形態では、長軸棒状部630はその長さに沿って先細とすることができる。一部実施形態では、長軸棒状部630を試料貯蔵器から取り外したときに長軸棒状部630の端部に残留する試料の量が減らせるよう、長軸棒状部630の端部を上端すなわち基端から先端にかけて直径を先細とする。
【0041】
上記の構造により、本発明の一実施形態になる電気穿孔用のピペットチップを用いて標本を抽出する場合、追加のプランジャを用いることなくピペットチップ自体を用いて標本に電気を印加することにより電気穿孔を可能にすることで、電気穿孔装置の構成はより簡単に作成でき、それによって本発明は製造単価を低減することができる。加えて、本発明は試料に電極を作用させる簡単な構造を用い、誤操作率を低減しかつ試行と誤操作の回数を低減することで、電気穿孔を簡単に行なうことができる。また、電気穿孔装置内に使用する現行のピペットチップは、先行技術に説明したプランジャ等の電極として機能する別個の構造を有することがあるため、この別個の構造がピペットチップから試料を吸入または放出するのに空気圧を使用することと相容れない可能性がある。本発明の一実施形態になる電気穿孔用のピペットチップは別個の電極を持たないため、ピペットチップは空気圧を用いて真空を生み出すかまたは試料を排出することで試料を簡単に吸入または放出することができる。
【0042】
図10は本願明細書に提供するピペットチップの一実施形態を示す斜視図であり、図11は図10の断面図である。ここで図10と図11を参照するに、電気穿孔用のピペットチップ700は、空所711を有する結合部710で、空所内にピペット300の一端を挿入して連通させる結合部710と、その中に試料を吸入する結合部710の空所711に連通する空所731を有する長軸棒状部730と、結合部710よりも比較的小径を有し、結合部710の端部に固定され、その側面を導電材で構成した導体732とを含んでいる。一部実施形態では、導電材は導体の内部側に配置することができる。
【0043】
結合部は基端と先端とを有しており、結合部710の基端と先端は共に開口を有する。結合部もまた、内部に試料を吸入することのできるその中心を通して形成した空所711を有する。加えて、結合部710の上部外周面は、ピペット300の端部に対しピペットチップ700を簡単に接続または分離できるよう所定の長さを有する。一部実施形態では、結合部710の上部外周にはさらに結合部710から径方向に延出形成した突起712を含ませることができる。
【0044】
所定の高さを有する接続用突起713が、結合部710の先端に配置してある。接続用突起713は、長軸棒状部730の基端に配置した固定用突起714内へ挿入することができる。合体させると、接続用突起713と固定用突起714が結合部710と長軸棒状部730とを接続用突起730の側部に固定する。接続用突起713に対応する形状を有する接続用溝732を、接続用突起713を挿入する長軸棒状部730の基端に形成することができる。一部実施形態では、固定用突起714を挿入して結合する固定用溝733を接続用溝732の内側に形成する。一部実施形態では、長軸棒状部730の端部はその長さに沿って先細とする。一部実施形態では、長軸棒状部730は上端すなわち基端から先端にかけて径を先細とし、長軸棒状部730を試料貯蔵器から取り外した後に長軸棒状部730の端部に残留する試料の量を減らすことができる。導体734は、接続用突起713の上または内部に少なくとも一部配置することができる。導体をピペットチップの外面上または外面内部に少なくとも一部配置することで、空所内の導電構造または電極の必要性が取り除かれる。したがって、空所には試料だけが充填される。一部実施形態では、コネクタは結合部710の上または内部に少なくとも一部配置することができる。一部実施形態では、導体734は銅か真鍮かアルミニウムかニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材等の導電材で構成することができ、その表面を、例えば銅か真鍮かアルミニウムかニッケルか金か銀かそれらの任意の組み合わせかあるいは任意の他の適当な導電材等の導電材を用いてメッキすることができる。一部実施形態では、導体は可塑性ポリマーあるいは導電性ポリマーを用いて射出成形することができる。
【0045】
ここで図12を参照するに、図12は電気穿孔用のピペットチップをその上に装着することのできるピペットを含む電気穿孔装置を含む電気穿孔システムを示す。加えて、本願明細書に提供するのは装置とシステムの使用方法である。電気穿孔システムは、電気パルスを生成するパルス発生器100と、試料貯蔵器200と、試料貯蔵器から試料を吸入することができ、かつ吸入した試料を保持することのできるピペット300と、パルス発生器100に電気的に接続したピペットチップ400で、その一端をピペット300の端部に接続し、その他端を試料貯蔵器200内へ挿入し、その中にピペット300により試料を吸入するピペットチップと、パルス発生器100に電気的に接続され、貯蔵器200内に浸漬させる追加の電極500とを含んでいる。ピペット300を圧力維持手段として用いてピペットチップ400内に試料を吸入した後、ピペットチップ400内に吸入した試料中に細胞や細胞群が存在する場合、そこでパルス発生器100を用いて電極500の導体422とピペットチップ400に電気パルスを印加することで上記の細胞や細胞群を電気穿孔することができる。一部実施形態では、試料貯蔵器200は試料に加え電流を導く電解液を収容することができる。一部実施形態では、試料貯蔵器200は試料をピペットチップ400内へ吸入した後で電流を導く電解液を収容した電解液貯蔵器と交換することができる。ピペットチップ400と追加の電極500はそこで、電解液貯蔵器内に配置することができる。そこで、電極とピペットチップとを用い、電極とピペットチップ上に位置する導体との間に電流を通ずることで細胞膜に電流パルスを印加することができる。電流パルスはそこで細胞膜の脂質二重層の構成を変え、通常は細胞膜を通過することのできない試料中に在る物質が細胞膜を通過できるようにすることができる。印加するパルスは、そこで細胞を傷つけたり破壊したりすることなく再封止することのできる非浸透性物質に対し一時的な通過を生み出すのに十分な強度と持続時間とを有する。そこで細胞膜を介して通過させることのできる物質の例には、これらに限定はされないが、巨大分子や分子プローブや薬剤や治療薬やDNAやRNAやバクテリアや遺伝子や蛋白質や細胞あるいは任意の他の適当な物質が含まれる。ピペットは、図12に矢印で示す如くピペット先端のプランジャを動かすことで試料を吸入および放出するよう真空引きと圧出とを用いることができる。
【0046】
本発明の好適な実施形態を本願明細書に例示し説明してきたが、当業者にはこれらの実施形態が例示としてのみ提供されていることは明白となろう。ここで、本発明から逸脱することなく多数の変形例や改変例や置換例が当業者には想起されよう。本願明細書に記載した本発明の実施形態に対する様々な代替例が本発明の実施に用いられうることを、理解されたい。下記の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、かつこれら請求項群の範囲内の方法と構造ならびにそれらの等価物がそれによって網羅されることを意図するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットチップであって、
外面と、
前記外面内に配置した空所と、
前記外面上または該外面内部に少なくとも一部位置する導体で、前記外面と前記空所の少なくとも一部と電気的に連通する導体と
を備える、ピペットチップ。
【請求項2】
前記導体は前記空所に流体連通する、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項3】
前記導体はリング形状をなす、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項4】
前記導体は本体と表面とを含む、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項5】
前記本体は導電材を含む、請求項4に記載のピペットチップ。
【請求項6】
前記導電材は銅か真鍮かニッケルか金か銀かアルミニウムのうちの少なくとも1個から選択する、請求項5に記載のピペットチップ。
【請求項7】
前記本体は射出成形導体である、請求項4に記載のピペットチップ。
【請求項8】
前記射出成形導体は可塑性ポリマーまたは導電性ポリマーのうちの少なくとも1個を含む、請求項7に記載のピペットチップ。
【請求項9】
前記表面は、真鍮か銅かアルミニウムかニッケルか金か銀のうちの少なくとも1個でメッキする、請求項4に記載のピペットチップ。
【請求項10】
さらに少なくとも1個の接続ポストを備える、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項11】
前記少なくとも1個の接続ポストは漏斗形状をなす、請求項10に記載のピペットチップ。
【請求項12】
3個の接続ポストを備える、請求項10に記載のピペットチップ。
【請求項13】
前記3個の接続ポストは互いに対しかつ前記外面に対し120度に配置した、請求項12に記載のピペットチップ。
【請求項14】
電気穿孔装置と共に用いるピペットチップであって、
a. 基端と先端と空所とを有する本体と、
b. 基端と先端と空所とを有し、さらに前記本体の前記先端上または該先端内部に少なくとも一部配置したコネクタで、
i. 少なくとも1個の接続ポストと、
ii. 前記少なくとも1個のコネクタと機械的に連通する接続部と、
iii. 前記少なくとも1個の接続ポストの少なくとも一部を囲繞する導体とを含むコネクタと、
c. 空所を有し、前記コネクタの前記先端に配置する長軸棒状部で、前記本体と前記コネクタと長軸棒状部の空所どうしが流体連通する長軸棒状部と
を備える、ピペットチップ。
【請求項15】
前記導体は前記少なくとも1個の接続ポストを囲繞することができる、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項16】
前記導体はさらに、前記接続部の前記空所に電流を印加することのできる内面を備える、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項17】
前記導体は導電材である、請求項16に記載のピペットチップ。
【請求項18】
前記導電材は、ニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムのうちの少なくとも1つから選択する、請求項17に記載のピペットチップ。
【請求項19】
前記内面を導電材でメッキした、請求項16に記載のピペットチップ。
【請求項20】
前記導電材は、真鍮かアルミニウムか銅かニッケルか金か銀のうちの少なくとも1つから選択する、請求項19に記載のピペットチップ。
【請求項21】
前記導体は射出成形する、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項22】
前記導体は可塑性ポリマーあるいは導電性ポリマーを射出成形する、請求項21に記載のピペットチップ。
【請求項23】
結合部直径と導体直径とをさらに含み、該導体直径を前記結合部直径未満とした、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項24】
前記長軸棒状部はその長さに沿って先細とした、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項25】
前記接続部はさらに、前記結合部の前記空所に連通する接続孔を含む、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項26】
前記接続孔はさらに、前記接続孔から径方向に延出する溝を含む、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項27】
前記接続部は、少なくとも1個の接続用突起と固定用突起とを含み、前記少なくとも1個の接続用突起と前記固定用突起とを互いに相互ロック可能とした、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項28】
電気穿孔システムであって、
a. パルス発生器と、
b. ピペットと、
c. パルス発生器に電気的に連通させたピペットチップで、
外面と、
前記外面内に配置した空所と、
前記外面の上またはその内部に少なくとも一部配置した導体領域で、前記導体が前記外面と前記空所の少なくとも一部に電気的に連通する導体領域とを含むピペットチップと、
d. 前記パルス発生器に連通させた電極と
を備える、システム。
【請求項29】
前記ピペットチップは前記電極に電気的に連通させる、請求項28に記載の電気穿孔システム。
【請求項1】
ピペットチップであって、
外面と、
前記外面内に配置した空所と、
前記外面上または該外面内部に少なくとも一部位置する導体で、前記外面と前記空所の少なくとも一部と電気的に連通する導体と
を備える、ピペットチップ。
【請求項2】
前記導体は前記空所に流体連通する、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項3】
前記導体はリング形状をなす、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項4】
前記導体は本体と表面とを含む、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項5】
前記本体は導電材を含む、請求項4に記載のピペットチップ。
【請求項6】
前記導電材は銅か真鍮かニッケルか金か銀かアルミニウムのうちの少なくとも1個から選択する、請求項5に記載のピペットチップ。
【請求項7】
前記本体は射出成形導体である、請求項4に記載のピペットチップ。
【請求項8】
前記射出成形導体は可塑性ポリマーまたは導電性ポリマーのうちの少なくとも1個を含む、請求項7に記載のピペットチップ。
【請求項9】
前記表面は、真鍮か銅かアルミニウムかニッケルか金か銀のうちの少なくとも1個でメッキする、請求項4に記載のピペットチップ。
【請求項10】
さらに少なくとも1個の接続ポストを備える、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項11】
前記少なくとも1個の接続ポストは漏斗形状をなす、請求項10に記載のピペットチップ。
【請求項12】
3個の接続ポストを備える、請求項10に記載のピペットチップ。
【請求項13】
前記3個の接続ポストは互いに対しかつ前記外面に対し120度に配置した、請求項12に記載のピペットチップ。
【請求項14】
電気穿孔装置と共に用いるピペットチップであって、
a. 基端と先端と空所とを有する本体と、
b. 基端と先端と空所とを有し、さらに前記本体の前記先端上または該先端内部に少なくとも一部配置したコネクタで、
i. 少なくとも1個の接続ポストと、
ii. 前記少なくとも1個のコネクタと機械的に連通する接続部と、
iii. 前記少なくとも1個の接続ポストの少なくとも一部を囲繞する導体とを含むコネクタと、
c. 空所を有し、前記コネクタの前記先端に配置する長軸棒状部で、前記本体と前記コネクタと長軸棒状部の空所どうしが流体連通する長軸棒状部と
を備える、ピペットチップ。
【請求項15】
前記導体は前記少なくとも1個の接続ポストを囲繞することができる、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項16】
前記導体はさらに、前記接続部の前記空所に電流を印加することのできる内面を備える、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項17】
前記導体は導電材である、請求項16に記載のピペットチップ。
【請求項18】
前記導電材は、ニッケルか金か銀か銅か真鍮かアルミニウムのうちの少なくとも1つから選択する、請求項17に記載のピペットチップ。
【請求項19】
前記内面を導電材でメッキした、請求項16に記載のピペットチップ。
【請求項20】
前記導電材は、真鍮かアルミニウムか銅かニッケルか金か銀のうちの少なくとも1つから選択する、請求項19に記載のピペットチップ。
【請求項21】
前記導体は射出成形する、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項22】
前記導体は可塑性ポリマーあるいは導電性ポリマーを射出成形する、請求項21に記載のピペットチップ。
【請求項23】
結合部直径と導体直径とをさらに含み、該導体直径を前記結合部直径未満とした、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項24】
前記長軸棒状部はその長さに沿って先細とした、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項25】
前記接続部はさらに、前記結合部の前記空所に連通する接続孔を含む、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項26】
前記接続孔はさらに、前記接続孔から径方向に延出する溝を含む、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項27】
前記接続部は、少なくとも1個の接続用突起と固定用突起とを含み、前記少なくとも1個の接続用突起と前記固定用突起とを互いに相互ロック可能とした、請求項14に記載のピペットチップ。
【請求項28】
電気穿孔システムであって、
a. パルス発生器と、
b. ピペットと、
c. パルス発生器に電気的に連通させたピペットチップで、
外面と、
前記外面内に配置した空所と、
前記外面の上またはその内部に少なくとも一部配置した導体領域で、前記導体が前記外面と前記空所の少なくとも一部に電気的に連通する導体領域とを含むピペットチップと、
d. 前記パルス発生器に連通させた電極と
を備える、システム。
【請求項29】
前記ピペットチップは前記電極に電気的に連通させる、請求項28に記載の電気穿孔システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−516096(P2011−516096A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505178(P2011−505178)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/040698
【国際公開番号】WO2009/129327
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/040698
【国際公開番号】WO2009/129327
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
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