説明

電気装置及びその製造方法

【課題】基板との間に隙間を備える配線を用いた電気装置が、装置の寸法の増大や実装の制約などを招くことなく、より高い信頼性を備えた状態で形成できるようにする。
【解決手段】配線支持部103とこの上に形成された内部配線104とから構成された配線構造体は、支持枠102と同じ高さに形成されている。また、配線構造体と支持枠102とに支持された状態に形成され、支持枠102の内側の空間(配線形成空間)を封止する封止膜105を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止された空間内に素子を備える電気装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速な信号を処理する電気装置の開発において、トランジスタの微細化による高速化が進む一方で、配線における信号の遅延及び損失や、配線を用いて形成されるインダクタなどの受動素子の性能不足が問題となっている。これらの原因としては、配線の寄生抵抗による導体損失や、配線と基板の相互インダクタンスを介した渦電流による基板損失、配線間の寄生容量による周波数帯域の低下などが挙げられる。
【0003】
このような問題を解決するため、薄膜形成技術やフォトリソグラフィ技術を基本にしてエッチングすることなどで立体的に微細加工を行うマイクロマシン技術を利用することで、高性能な配線や受動素子を備えた電気装置が開発されている(非特許文献1参照)。図8は、このような電気装置の一例を示す斜視図である。この電気装置では、基板801の上に、電極803が形成され、電極に接続する支持部812により基板801の上に支持された螺旋状の金属配線811が配置されてインダクタ素子が構成されている。
【0004】
金属配線811は厚さ10μm程度に形成され、配線抵抗に起因した損失を低減するようにされている。また、金属配線811は、基板801の上に離間して形成されて周囲に空間が形成され、金属配線811の周囲の比誘電率がほぼ1とされており、寄生容量が低減されている。さらに、金属配線811を基板801より離間して形成することで、基板801との間の相互インダクタンスを低減し、基板801に流れる過電流に起因した基板損失を低減している。
【0005】
【非特許文献1】Eun-Chul Park, et al., "Full Integrated Low Phase-Noise VCOs with On-Chip MEMS Inductors", IEEE Trans. Microwave Theory and Technics, vol.51, No.1, pp.289-296, Jan. 2003.
【非特許文献2】Harrie A. C. Tilmans, "RF-MEMS: Materials and technology, integration and packaging", Proc.MRS2003, vol.738, Fall Meeting, Boston, pp.B6.6.1-B6.6.12, Dec. 1-5, 2003.
【非特許文献3】N. Sato, H. Ishii, S. Shigematu, H. Morimura, T. Kamei, K. Kudiu, M. Yano, K. Machida, H. Kyuragi, "A sealing technique for stacking MEMS on LSI using spin-coating film transfer and hot pressing",Jpa.J.Appl.Phys., Vol.42, Part 1, No.4B, pp.2462-2467, Apr. 2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の電気装置の構成は、配線や受動素子の高性能化には有効であるが、基板より離間させて空中に浮遊させた配線の部分が破損しやすいという問題がある。例えば、ウェハをチップに切り分けるダイシングなどの工程においては、切削箇所の冷却や切削かすの飛散防止などのために高圧水流が供給されているが、この高圧水流によって、配線が容易に破損してしまう。また、露出した配線の部分に不純物が付着することによって、電気的な特性が劣化するなど、実用上多くの問題を抱えている。
【0007】
これらの問題を回避するために、ガラスからなるキャップを基板の上に固定し、このキャップで金属配線などの微細構造体を封止することで、機械的に脆弱な構造を保護する技術が提案されている(非特許文献2参照)。ガラスは比較的高い剛性を備えた絶縁部材であるため、所定の領域(空間)をゆがめることなく封止するのに好適である。
【0008】
しかしながら、このような方法を用いた場合、特殊な実装工程が追加されるため電気装置のコスト増加を招き、また、キャップが電気装置を大型化させてしまうといった問題があった。また、ガラスからなるキャップを用いた場合、フリップチップ実装やSi貫通ビア配線技術などを用いたチップの積層実装が困難となるなど、実装に制約が生じるという問題があった。
【0009】
上述したように、従来技術においては、基板との間に隙間を備えた配線を用いた高性能な電気装置を実現しようとした場合、装置の機械的,電気的信頼性の確保が困難であった。またこの問題を回避するために、配線が配置された空間をガラスキャップなどで保護封止する技術を用いた場合、電気装置が大型化し、また、実装に制約が生じるという問題があった。従って、従来技術では、隙間が形成された配線を用いた電気装置を実用化することが困難であった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、基板との間に隙間を備える配線を用いた電気装置が、装置の寸法の増大や実装の制約などを招くことなく、より高い信頼性を備えた状態で形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電気装置は、所定の領域を囲うように基板の上に形成された支持枠と、基板の上の支持枠で囲われた領域に配置された配線構造体と、配線構造体及び支持枠に支持されて、支持枠に囲われた領域を封止する樹脂から構成された封止膜とを少なくとも備え、一部の配線構造体は、基板の表面より離間して基板との間に空間を形成しているようにしたものである。
【0012】
また、上記電気装置において、配線構造体は、支持枠と同じ高さに形成されているとよい。また、配線構造体は、基板から封止膜の方向において、複数の配線が配置された多層配線構造を備えるようにしてもよい。また、支持枠の内側領域における基板の上に配線構造体から離間して形成され、封止膜を支持する支持柱をさらに備えるようにしてもよい。この場合、支持柱は、配線構造体を構成している配線とは直交する方向に延在する構造を備えるようにしてもよい。同様に、支持枠は、配線構造体を構成している配線とは直交する方向に延在する構造を備えるようにしてもよい。
【0013】
また、上記電気装置において、基板の上の支持枠の外側領域に配置されて配線構造体に電気的に接続する外部配線を備えるようにしてもよい。また、封止膜は、配線構造体の封止膜を支持している領域の一部を露出させる開口部を備えるようにしてもよい。なお、配線構造体は、スパイラルインダクタ,トランスフォーマ,及び伝送線路の少なくとも1つから構成されているものである。
【0014】
本発明に係る電気装置の製造方法は、基板の上に犠牲膜を用いて金属膜を積層して積層した金属膜により基板の上に所定の領域を囲う支持枠及び支持枠で囲われた領域に配置された配線構造体が形成された状態とする工程と、犠牲膜を除去し、一部の配線構造体が、基板の表面より離間して基板との間に空間を形成した状態とする工程と、犠牲膜を除去した後、支持枠及び配線構造体の上面に接触する封止膜を貼り付け、配線構造体及び支持枠に支持されて支持枠に囲われた領域を封止する封止膜が形成された状態とする工程とを少なくとも備えるようにしたものである。
【0015】
上記電気装置の製造方法において、封止膜を貼り付けた後、配線構造体の封止膜を支持している領域の一部を露出させる開口部が封止膜に形成された状態とする工程を備えるようにしても良い。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、一部に基板の表面より離間して基板との間に空間を形成している配線構造体及び支持枠とで、封止膜を支持するようにしたので、基板との間に隙間を備える配線を用いた電気装置が、装置の寸法の増大や実装の制約などを招くことなく、より高い信頼性を備えた状態で形成できるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0018】
[実施の形態1]
始めに、本発明に係る実施の形態1について、図1(a)及び図1(b)を用いて説明する。図1(a)は、本実施の形態における電気装置の構成を示す斜視図、図1(b)は断面図である。この電気装置は、基板101と、基板101の所定領域(内部配線形成領域)を囲うように配置された支持枠102と、支持枠102の内部の基板101の上に形成された配線支持部103と、配線支持部103の上に形成されて基板101より離間している内部配線104を備えている。従って、配線支持部103以外の領域の内部配線104と基板101との間には、空間が形成されている。また、隣の内部配線104との間にも、空間が形成されている。
【0019】
本実施の形態の電気装置では、配線支持部103の上に支持されている内部配線104が、基板101の上において、支持枠102と同じ高さに形成されている。言い換えると、配線支持部103とこの上に形成された内部配線104とから構成された配線構造体は、支持枠102と同じ高さに形成されている。また、本実施の形態の電気装置では、上述したように支持枠102と同じ高さに形成されている配線構造体と、支持枠102とに支持された状態に形成され、支持枠102の内側の空間(配線形成空間)を封止する封止膜105を備えている。なお、配線構造体と支持枠102とは、同じ高さに形成されている必要はなく、ある程度異なる高さに形成されていても良い。配線構造体と支持枠102とで、封止膜105が支持されている状態となっていればよい。ただし、これらが全て同じ高さとなっている状態は、後述するように、より容易に製造することが可能となり、製造上有利である。
【0020】
基板101は、例えば、表面にシリコン酸化膜などの絶縁層を備えたシリコン基板や、ガラスなどの絶縁基板、また、埋め込み絶縁層を備えたSOI(Silicon On Insulator)基板などであればよい。支持枠102で囲う領域(内部配線形成領域)の表面が絶縁材料で構成されていればよい。基板101には、配線支持部103を介して内部配線104に接続する集積回路が形成されていても良い。例えば、シリコン基板に集積回路が形成され、この上に層間絶縁層を介して支持枠102,配線支持部103,内部配線104などが形成され、上記層間絶縁層に形成されたスルーホールを介し、配線支持部103が上記集積回路に接続していればよい。また、基板101の他の領域に、集積回路が設けられていても良い。また、配線支持部103及び内部配線104は、Au,Cu,Alなどの金属材料から構成されていればよい。
【0021】
ここで、前述したように、内部配線104は、上面以外がこの周囲の構造体から離間して配置され、内部配線104の周囲には空間が形成されており、内部配線104は、比誘電率がほぼ1となる雰囲気に配置されていることになる。このため、内部配線104においては、シリコン酸化物や金属酸化物などの絶縁層に接し又は覆われている場合に比較し、寄生容量が低減する。
【0022】
内部配線104の基板101の表面の法線方向の厚さ(膜厚)は、例えば1μm以上100μm以下である。内部配線104の膜厚を1μm以上とすることで小さな配線抵抗が得られ、100μm以下とすることで製造性が向上する。さらに、内部配線104と基板101の間の距離は、例えば1μm以上100μm以下である。内部配線104と基板101との距離をlμm以上とすることで基板損失の低減効果が得られ、100μm以下とすることで製造性が向上する。
【0023】
これらの特徴により、本実施の形態の配線は、非常に優れた性能を有している。また、内部配線104(配線支持部103)を特に金で構成することによって、金の持つ耐酸化性のため、電気的により安定な電気装置を得ることができる。
【0024】
支持枠102は、例えば金属材料,絶縁材料,またはこれらの組み合わせ等により構成され、配線103の周囲を取り囲むように形成されている。なお、図1(a)において、支持枠102は平面視長方形の領域を取り囲んでいるが、これに限定されるものではない。支持枠102は、平面視多角形や円弧などを含む複雑な形状の領域を囲うように形成されていても良い。また、一部の支持枠102が、一部の配線103と接触していても良い。
【0025】
封止膜105は、例えば有機樹脂などの絶縁材料により構成され、支持枠102が囲む領域と同様の形状を有し、配線支持部103及び内部配線104とからなる配線構造体及び支持枠102によって支持されている。封止膜105の膜厚は、例えば1μm以上100μm以下であればよい。封止膜105の膜厚を1μm以上とすることで内部配線104を保護するための強度が得られ、100μm以下とすることで製造性が向上する。
【0026】
本実施の形態では、内部配線104の形成領域(内部配線形成領域)を支持枠102により囲むとともに、封止膜105によって封止しているため、内部配線104が外部の環境から遮蔽されており、実装工程等における異物の付着を防ぐことができる。
【0027】
また、封止膜105は、この周辺部が支持枠102に支持されると共に、内部の領域も、配線支持部103及び内部配線104よりなる配線構造体により支持されて補強されている。このため、封止膜105に要求される強度が低減し、封止膜105の薄膜化が可能となる。これにより、電気装置をより薄型にすることが可能となり、例えば、より多くのチップの積層実装などが可能となる。
【0028】
加えて、内部配線104の一部(上面)が封止膜105の内側面に接着して形成されていれば、複数の内部配線104が封止膜105により機械的に結合された状態となり、強度が増強された状態となる。これにより、実装工程における水流や実使用時における振動などに対して、配線が十分な耐性を備えた電気装置が得られるようになる。例えば、封止膜105は、樹脂より構成することが可能となる。封止膜105を樹脂膜より構成すれば、後述するように、STP法などにより容易に形成することが可能となる。また、樹脂膜より構成すれば、膜厚1μm程度の封止膜105が容易に形成可能であり、ガラスなどを用いる場合に比較して、より薄く形成することが可能となり、電気装置の微細化がより容易となる。また、封止膜105の内側面が内部配線104に接着していれば、封止膜105が配線形成空間に対して外側に撓む(膨らむ)ことも抑制できるようになる。
【0029】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について、図2(a)、図2(b)を参照して説明する。図2(a)は、本実施の形態における電気装置の構成を示す平面図、図2(b)は図2(a)のb−b線における断面図である。この電気装置は、基板201と、基板201の所定領域(内部配線形成領域)を囲うように配置された支持枠202と、支持枠202の内部の基板201の上に形成された基板配線203と、基板配線203の上に形成されて基板201より離間している上部配線205を備えている。上部配線205は、螺旋状に形成され、よく知られたスパイラルインダクタを構成している。この電気装置では、基板配線203と上部配線205とが、内部配線となる。
【0030】
また、上部配線205は、一端が配線支持部204aにより基板配線203に接続し、他端が配線支持部204bに接続し、かつ配線支持部204bにより基板201の上に支持されている。従って、配線支持部204a,204b以外の領域の上部配線205と基板201との間には、空間が形成されている。加えて、本実施の形態の電気装置では、上部配線205の内側の領域に、支持枠202と同じ高さの支持柱207を備えている。
【0031】
また、本実施の形態における電気装置においても、配線支持部204a及び配線支持部204bに支持されている上部配線205は、基板201の上において、支持枠202及び支持柱207と同じ高さに形成されている。言い換えると、配線支持部204a及び配線支持部204bと上部配線205とから構成された配線構造体は、支持枠202及び支持柱207と同じ高さに形成されている。
【0032】
本実施の形態の電気装置では、このように配線構造体と支持枠202及び支持柱207とが同じ高さに形成されている上に、封止膜206を備えている。封止膜206は、配線構造体,支持枠202,及び支持柱207に支持され、支持枠202の内側の空間(配線形成空間)を封止している。従って、上部配線205の上面は、封止膜206の内側の面に接して形成されていることになる。なお、上部配線205の上面が、封止膜206の内側の面に接着していても良い。ところで、上記配線構造体,支持枠202,及び支持柱207は、全て同じ高さに形成されている必要はなく、ある程度異なる高さに形成されていても良い。上記配線構造体,支持枠202,及び支持柱207で、封止膜206が支持されている状態となっていればよい。ただし、これらが全て同じ高さとなっている状態は、後述するように、より容易に製造することが可能となり、製造上有利である。
【0033】
なお、基板201は、例えば、表面にシリコン酸化膜などの絶縁層を備えたシリコン基板や、ガラスなどの絶縁基板、また、埋め込み絶縁層を備えたSOI(Silicon On Insulator)基板などであればよい。支持枠202で囲う領域の表面が絶縁材料で構成されていればよい。基板201には、基板配線203,配線支持部204a,及び配線支持部204bを介して上部配線205に接続する集積回路が形成されていても良い。
【0034】
例えば、シリコン基板に集積回路が形成され、この上に層間絶縁層を介して支持枠202,基板配線203,配線支持部204a,配線支持部204b,及び上部配線205などが形成され、上記層間絶縁層に形成されたスルーホールを介し、基板配線203及び配線支持部204bが上記集積回路に接続していればよい。また、基板201の他の領域に、集積回路が設けられていても良い。また、基板配線203,配線支持部204a,配線支持部204b,及び上部配線205は、Au,Cu,Alなどの金属材料から構成されていればよい。また、支持枠202及び支持柱207は、配線同様の金属材料から構成されていてもよく、また、絶縁材料から構成されていても良い。支持枠202及び支持柱207を金属材料から構成する場合、これらが、配線構造体と電気的に絶縁されていればよい。
【0035】
ここで、上部配線205は、この周囲の構造体から離間して配置され、上部配線205の周囲には空間が形成されており、上部配線205は、比誘電率がほぼ1となる雰囲気に配置されていることになる。このため、上部配線205においては、シリコン酸化物や金属酸化物などの絶縁層に接し又は覆われている場合に比較し、寄生容量が低減する。
【0036】
また、基板配線203,配線支持部204a,配線支持部204b,及び上部配線205のように多層配線構造とすることで、多数の配線を限定された領域内に形成することが可能となり、高集積化が可能となる。また、複雑な配線構造を要するさまざまな受動素子を形成することが可能となる。なお、基板201から封止膜206の方向において、基板配線203と上部配線205との間に、複数の配線の層が形成されて多層配線構造とされていても良い。
【0037】
本実施の形態では、上部配線205を螺旋状に形成するとともに、上部配線205の螺旋の内側の配線端部を、配線支持部204a及び基板配線203を介して螺旋の外側に引き出すことにより、スパイラルインダクタを構成している。スパイラルインダクタは、高周波回路の性能を左右する重要な素子であり、優れた高周波性能を備えたインダクタの実現が強く望まれている。本実施の形態に示した電気装置によるインダクタでは、前述したように、周囲に空間を備えて基板201より離間して形成した厚膜の配線により形成しているため、優れた高周波性能が得られる。
【0038】
次に、インダクタの電気的特性の向上と、機械的強度の向上を両立させるための構造について説明する。高周波回路においては、主に数nH以上のインダクタンスを備えたインダクタが利用され、このためには、数100μm程度の面積を要する。一方、インダクタの周囲には磁界が生じ、インダクタの近傍の配線には相互インダクタンスを介して渦電流が流れ、損失やノイズの原因となるため、インダクタの近傍にはインダクタ以外の配線を配置しないことが望ましい。ところが、このように大きな領域において、封止膜206を支持する配線が存在しない場合、封止膜206の機械的強度が低下する。
【0039】
これに対し、本実施の形態では、インダクタを構成している配線構造体の内側に、インダクタを構成する配線とは電気的に絶縁された支持柱207を設けることで、封止膜206の支持箇所を増やし、封止膜206の強度を増強している。さらに、インダクタ近傍の支持柱207や支持枠202を、インダクタを構成する配線とは直交する方向に延在するパターン(構造体)とすることによって、支持枠202及び支持柱207が金属から構成されている場合であっても、インダクタと支持枠202及び支持柱の相互インダクタンスを減少させ、渦電流の発生による損失を大幅に低減させている。
【0040】
より具体的には、支持柱207は、絶縁体又は金属によって形成することができるが、絶縁体を用いた場合、インダクタの電気特定に影響を与えることなく封止膜206の強度を増強することができる。一方、支持柱207を金属から構成した場合、インダクタを構成する配線(上部配線205)と支持柱207とを同時に形成することが可能となるため、製造性を向上させることができる。また、インダクタ近傍の支持柱207を、上部配線205とは直交する方向に延在するパターンから構成することによって、インダクタと支持柱207との相互インダクタンスを減少させ、渦電流の発生による損失を大幅に低減させることができる。
【0041】
また、支持柱207は、図2(b)にも示すように、断面視T字型として下部を上部より小さく(細く)し、封止膜206と接する箇所以外の支持柱207と、上部配線205との間隔をより大きくすることで、インダクタと上部配線205との間の相互インダクタンスをより減少させ、損失をさらに減少させることができる。同様に、側壁枠202にも、図2(a)の平面図に示すように、インダクタを構成する上部配線205とは直交する方向に延在するパターン(部分)を設け、封止膜206を支持するために必要な部分の面積を大きくし、これ以外の部分と上部配線205との間隔をより大きくすることで、損失を低減することができる。
【0042】
なお、本実施の形態においては、インダクタを例にして説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、高周波信号を伝播するさまざまな配線構造に対して適用可能であることはいうまでもない。例えば、配線構造によって形成される素子としては、トランスフォーマであってもよい。また、配線が、高周波の伝送線路であっても良い。
【0043】
[実施の形態3]
次に、本発明に係る実施の形態3について、図3を参照して説明する。図3は、本実施の形態にかかる電気装置の構成を模式的に示す断面図である。この電気装置は、基板301と、基板301の所定領域(内部配線形成領域)を囲うように配置された支持枠302と、支持枠302の内部の基板301の上に形成された配線支持部303と、配線支持部303の上に形成されて基板301より離間している内部配線304を備えている。従って、配線支持部303以外の領域の内部配線304と基板301との間には、空間が形成されている。また、隣の内部配線304との間にも、空間が形成されている。これらのことは、前述した実施の形態1の電気装置と同様である。
【0044】
また、この電気装置は、基板301に埋設されて形成された引き出し配線306と、支持枠302の外側の領域の基板301に形成された外部配線307とを備えている。引き出し配線306は、配線支持部303と外部配線307との両方に接続し、配線支持部303と外部配線307とを電気的に接続している。従って、内部配線304は、配線支持部303及び引き出し配線306を経由して、外部配線307に電気的に接続している。外部配線307は、例えばワイヤボンディングを用いて本電気装置のパッケージと接続することによって、電気装置の外部の装置と電気的な接続を行うことができる。また、フリップチップ実装技術を用いて外部配線307と外部のチップを接続することも可能である。
【0045】
なお、本実施の形態の電気装置でも、配線支持部303の上に支持されている内部配線304が、基板301の上において、支持枠302と同じ高さに形成されている。言い換えると、配線支持部303とこの上に形成された内部配線304とから構成された配線構造体は、支持枠302と同じ高さに形成されている。また、本実施の形態の電気装置でも、上述したように支持枠302と同じ高さに形成されている配線構造体と、支持枠302とに支持された状態に形成され、支持枠302の内側の空間(配線形成空間)を封止する封止膜305を備えている。なお、上記配線構造体及び支持枠302、同じ高さに形成されている必要はなく、ある程度異なる高さに形成されていても良い。上記配線構造体及び支持枠302で、封止膜305が支持されている状態となっていればよい。ただし、これらが全て同じ高さとなっている状態は、後述するように、より容易に製造することが可能となり、製造上有利である。
【0046】
本実施の形態の電気装置においても、前述した実施の形態1の電気装置と同様であり、内部配線304は、寄生容量が低減された状態となっている。また、内部配線304の形成領域(内部配線形成領域)を支持枠302により囲むとともに、封止膜305によって封止しているため、内部配線304が外部の環境から遮蔽されており、実装工程等における異物の付着を防ぐことができる。また、封止膜305は、この周辺部が支持枠302に支持されると共に、内部の領域も、配線支持部303及び内部配線304よりなる配線構造体により支持されて補強されている。このため、単独の封止膜305に封止膜305に要求される強度が低減し、封止膜305の薄膜化が可能となる。これにより、電気装置をより薄型にすることが可能となり、例えば、より多くのチップの積層実装などが可能となる。
【0047】
また、内部配線304の一部(上面)が封止膜305の内側面に接着して形成されていれば、複数の内部配線304が封止膜305により機械的に結合された状態となり、強度が増強された状態となる。これにより、実装工程における水流や実使用時における振動などに対して、配線が十分な耐性を備えた電気装置が得られるようになる。また、封止膜305の内側面が内部配線304に接着していれば、封止膜305が配線形成空間に対して外側に撓む(膨らむ)ことも抑制できるようになる。
【0048】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について、図4を参照して説明する。図4は、本実施の形態にかかる電気装置の構成を示す断面図である。この電気装置は、基板401と、基板401の所定領域(内部配線形成領域)を囲うように配置された支持枠402と、支持枠402の内部の基板401の上に形成された基板配線403と、基板配線403の上に形成されて基板401より離間している上部配線405を備えている。この電気装置では、基板配線403と上部配線405とが、内部配線となる。
【0049】
また、上部配線405は、一部が配線支持部404aにより基板配線403に接続し、他の一部が配線支持部404bに接続し、かつ配線支持部404bにより基板401の上に支持されている。従って、配線支持部404a,404b以外の領域の上部配線405と基板401との間には、空間が形成されている。
【0050】
本実施の形態における電気装置においても、配線支持部404a及び配線支持部404bに支持されている上部配線405は、基板401の上において、支持枠402と同じ高さに形成されている。言い換えると、配線支持部404a及び配線支持部404bと上部配線405とから構成された配線構造体は、支持枠402と同じ高さに形成されている。
【0051】
本実施の形態の電気装置では、このように配線構造体と支持枠402とが同じ高さに形成されている上に、封止膜406を備えている。封止膜406は、配線構造体及び支持枠402に支持され、支持枠402の内側の空間(配線形成空間)を封止している。従って、上部配線405の上面は、封止膜406の内側の面に接して形成されていることになる。なお、上部配線405の上面が、封止膜406の内側の面に接着していても良い。ところで、上記配線構造体及び支持枠402、同じ高さに形成されている必要はなく、ある程度異なる高さに形成されていても良い。上記配線構造体及び支持枠402で、封止膜406が支持されている状態となっていればよい。ただし、これらが全て同じ高さとなっている状態は、後述するように、より容易に製造することが可能となり、製造上有利である。
【0052】
加えて、本実施の形態の電気装置は、封止膜406に、上部配線405の一部(上面)が露出する開口部406aを備えている。封止膜406は、配線構造体を構成している上部配線405の封止膜406を支持している領域(接触面)の一部を露出させる開口部406aを備えている。開口部406aにおいては、上部配線405の一部が露出している状態であり、基板401,支持枠402,及び封止膜406により形成されている内部空間(密閉空間)は、この外部空間と開口部406aにより連通されてはいない。開口部406aが形成されていても、封止膜406は、支持枠402に囲われている領域を封止している。
【0053】
このように開口部406aを設けて上部配線405の一部を露出することで、支持枠402により取り囲まれた領域の内側に形成された上部配線405に対しても、開口部406aを介して外部の装置配線と電気的接続を行うことができるようになるため、電気装置の高密度な実装が可能となる。
【0054】
次に、上述した本実施の形態における電気装置の製造方法について、図5〜図7を参照して説明する。まず、図5(a)に示すように、例えばシリコンからなる基板501の上に、例えばシリコン酸化膜からなる層間絶縁層502が形成された状態とする。基板501は、複数のトランジスタ,抵抗,容量,配線などから構成された半導体集積回路を備えていてもよく、例えば、集積回路の配線と電気的に接続するためのコンタクトホールなどが、層間絶縁層502の所定の箇所に形成されていてもよい。なお、図5〜図7では、基板501の最小単位の電気装置の部分となる一部領域を示しており、基板501の図示していない領域にも、同様の構成の複数の電気装置が形成される。
【0055】
このような基板501を用意したら、図5(a)に示すように、層間絶縁層502の上に第1シード層503が形成された状態とする。第1シード層503は、スパッタ法や蒸着法などにより、例えば、まずチタンを堆積して、この上に金を堆積することで形成すればよい。チタンの膜厚は0.1μm程度とし、金の膜厚は0.1μm程度とすればよい。
【0056】
次に、図5(b)に示すように、第1シード層503の上に、支持枠の一部となる第1金属パターン504a,基板配線の一部となる第2金属パターン504b,配線支持部の一部となる第3金属パターン504cが形成された状態とする。これら金属パターンの形成について簡単に説明すると、まず、第1シード層503の上に感光性レジスト材料を塗布して感光性レジスト膜が形成された状態とし、所望のパターンを備えるマスクを用いて露光することにより、所望箇所に開口部を備えたレジストパターンが形成された状態とする。感光性レジスト(レジストパターン)の膜厚は、15μm程度とすればよい。
【0057】
次に、このレジストパターンの開口部に露出する第1シード層503の上に、めっき法により金のパターンが形成された状態とし、この後、レジストパターンが除去された状態とする。めっき膜は、膜厚10μm程度に形成すればよい。これらのことにより、第1シード層503の上に、第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cが形成された状態が得られる。
【0058】
次に、第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cをマスクとして第1シード層503をエッチング除去し、図5(c)に示すように、第1シード層503が第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cに対応して各々電気的に分離した状態とする。例えば、第1シード層503の上層にある金は、ヨウ素、ヨウ化アンモニウム、水、エタノールからなるエッチング液によりウェットエッチングすればよい。このエッチングにより露出した第1シード層503の下層のチタンは、フッ化水素水溶液によりウェットエッチングすればよい。
【0059】
次に、図5(d)に示すように、分離した第1シード層503と、第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cとを覆うように、第1樹脂犠牲層505が形成された状態とする。第1樹脂犠牲層505は、例えば、ポリアミド,ポリアミド酸,ポリベンゾオキサゾール(もしくはこの前駆体)などのベース樹脂にポジ型感光剤を付加したものを用いればよい。また、第1樹脂犠牲層505は、これら材料を回転塗布することで形成することができる。ポリベンゾオキサゾールをベース樹脂とするポジ型の感光性を有する樹脂としては、例えば、住友ベークライト株式会社製の「CRC8300」がある。
【0060】
次に、図5(e)に示すように、第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cの上部の第1樹脂犠牲層505を除去し、第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cの上面が露出した状態とする。感光性を有する第1樹脂犠牲層505を公知のリソグラフィ技術によりパターニングすることにより、第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cの上面を露出した状態とすることができる。第1樹脂犠牲層505をパターニングする際には、前処理として120℃のプリベークを4分程度行い、パターニング後には310℃程度の加熱処理を行い、樹脂の膜が熱硬化された状態とする。
【0061】
次に、図6(f)に示すように、露出した第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cの上面と第1樹脂犠牲層505の上面とに第2シード層506が形成された状態とする。第2シード層506は、第1シード層503と同様に形成すればよく、チタンの膜厚は0.1μm程度とし、金の膜厚は0.1μm程度とすればよい。
【0062】
次に、図6(g)に示すように、第2シード層506の上に、支持枠の一部となる第4金属パターン507a,基板配線に接続する配線支持部の一部となる第5金属パターン507b,配線支持部の一部となる第6金属パターン507cが形成された状態とする。これらは、第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cと同様に形成すればよく、レジストパターンの膜厚は、15μm程度とし、めっき膜は、膜厚10μm程度に形成すればよい。
【0063】
次に、第4金属パターン507a,第5金属パターン507b,及び第6金属パターン507cをマスクとして第2シード層506をエッチング除去し、図6(h)に示すように、第4金属パターン507a,第5金属パターン507b,及び第6金属パターン507cに対応して各々電気的に分離した状態とする。この形成は、第1シード層503の分離と同様に行えばよい。
【0064】
次に、図6(i)に示すように、分離した第2シード層506と、第4金属パターン507a,第5金属パターン507b,及び第6金属パターン507cを覆うように、第2樹脂犠牲層508が形成された状態とする。加えて、第4金属パターン507a,第5金属パターン507b,及び第6金属パターン507cの上部の第2樹脂犠牲層508を除去し、第4金属パターン507a,第5金属パターン507b,及び第6金属パターン507cの上面が露出した状態とする。これら第2樹脂犠牲層508の形成及びパターニングは、第1樹脂犠牲層505と同様に行えばよい。
【0065】
次に、図6(j)に示すように、露出した第4金属パターン507a,第5金属パターン507b,及び第6金属パターン507cの上面と第2樹脂犠牲層508の上面とに第3シード層509が形成された状態とする。第3シード層509は、第1シード層503及び第2シード層506と同様に形成すればよい。加えて、支持枠の一部となる第7金属パターン510a及び上部配線となる第8金属パターン510bが形成された状態とする。これらの形成は、第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cなどと同様であり、膜厚を30μmとしたレジストパターンを用い、めっき膜の膜厚は20μm程度として行えばよい。なお、この場合においても、前述同様に、第7金属パターン510a及び第8金属パターン510bを形成した後、これらに対応して第3シード層509が電気的に分離した状態とする。これらの形成は、前述と同様に行えばよい。
【0066】
次に、第1樹脂犠牲層505及び第2樹脂犠牲層508が除去された状態とし、図6(k)に示すように、層間絶縁層502の上に、まず、第1シード層503,第1金属パターン504a,第2シード層506,第4金属パターン507a,第3シード層509,及び第7金属パターン510aよりなる支持枠が形成された状態とする。この支持枠は、図4に示す支持枠402に相当する。
【0067】
また、層間絶縁層502の上に、第1シード層503及び第2金属パターン504bよりなる基板配線が形成された状態とする。この基板配線は、図4に示す基板配線403に相当する。また、層間絶縁層502の上に、第1シード層503,第3金属パターン504c,第2シード層506,及び第6金属パターン507cよりなる配線支持部が形成された状態とする。この配線支持部は、図4に示す配線支持部404bに相当する。
【0068】
また、下層配線である第1金属パターン504aの上に、第2シード層506及び第5金属パターン507bよりなる配線支持部が形成された状態とする。この配線支持部は、図4に示す配線支持部404aに相当する。また、上記配線支持部に支持された状態で、第3シード層509及び第8金属パターン510bからなる上部配線が形成された状態とする。この上部配線は、図4に示す上部配線405に相当する。
【0069】
ここで、同時に形成された第1金属パターン504a,第2金属パターン504b,及び第3金属パターン504cは、同じ高さ(膜厚)に形成され、同時に形成された第4金属パターン507a,第5金属パターン507b,及び第6金属パターン507cは、同じ高さに形成され、同時に形成された第7金属パターン510a及び第8金属パターン510bは、同じ高さに形成されている。また、分離された各シード層も、各々同じ膜厚である。従って、これらの積層により形成された支持枠及び上部配線は、同じ高さに形成された状態となる。
【0070】
なお、第1樹脂犠牲層505及び第2樹脂犠牲層508の除去は、例えば、オゾン雰囲気中で250〜300℃に加熱することで行えばよい。このようなオゾンに第2樹脂犠牲層508及び第1樹脂犠牲層505を接触させることで、これらをアッシング除去することができる。
【0071】
次に、図7(l)に示すように、感光性有機樹脂材料からなる膜厚10μm程度の感光性樹脂膜511が予め塗布形成されているシートフィルム512を用意する。次いで、図7(m)に示すように、よく知られたSTP法により、感光性樹脂膜511が第7金属パターン510a及び第8金属パターン510bの上面に貼り付けられた状態とする(非特許文献3参照)。このSTP法による貼り付けについて簡単に説明すると、まず、シートフィルム512の感光性樹脂膜511形成面を第7金属パターン510a及び第8金属パターン510bの上面に熱圧着する。次いで、シートフィルム512を感光性樹脂膜511から剥離し、感光性樹脂膜511に100℃・1時間程度の熱処理を加える。このことにより、感光性樹脂膜511が第7金属パターン510a及び第8金属パターン510bの上面に貼り付けられた状態が得られる。なお、STP法に限らず、他の方法で感光性樹脂膜511が形成された状態としても良いことは言うまでもない。
【0072】
次に、よく知られたフォトリソグラフィ技術により感光性樹脂膜511をパターニングし、また、300℃程度に加熱して硬化させ、図5(1)に示すように、第7金属パターン510a及び第8金属パターン510bの上に、開口部511aを備えた封止膜511が形成された状態とする。このパターニングでは、支持枠となる第7金属パターン510aの外形に等しい状態に、封止膜511が形成された状態とする。また、上部配線となる第8金属パターン510bの一部正面が露出するように、開口部511aが形成された状態とする。このように形成された封止膜511は、図4に示す封止膜406に相当する。また、このようにして形成された封止膜511は、第7金属パターン510a(支持枠)及び第8金属パターン510b(上部配線)の上面に接着した状態に形成される。
【0073】
この後、例えば、基板501を所定の寸法のチップ毎に切り出す(ダイシングする)ことで、上述したように封止膜511に封止された上記支持枠の中に配線構造体を備えた電気装置を各々備えた複数のチップが形成される。このダイシングにおいては、よく知られているように高圧水流が供給されているが、支持枠と共に配線構造体により支持された状態で封止膜が形成されているため、配線構造体に対する異物の付着や配線構造体の破損などを防ぐことができる。
【0074】
ところで、上述では、支持枠となる第7金属パターン510aと上部配線(配線構造体)となる第8金属パターン510bが、層間絶縁層502(基板501)の上に同じ高さとなるように形成したが、これに限るものではない。これらが異なる高さに形成されていても良い。ただし、内部に配置される配線構造体となる部分を支持枠より高く形成する場合、この高さの差(段差)が上部配線の厚さより小さくなるようにした方がよい。
【0075】
上記段差が上部配線の厚さより大きくなると、前述したようなSTP法などにより感光性樹脂膜511を貼り合わせるときに、上部配線の部分が樹脂膜に埋め込まれる状態となり、上部配線の側方の寄生容量の増加を招く。また、このような状態では、樹脂膜が上部配線の側部より基板側に進入する場合も発生し、進入した樹脂膜の部分により、配線構造体の一部が破損する場合も発生する。このような状態を抑制するためにも、上記段差は、上部配線の厚さより小さくした方がよい。
【0076】
また、支持枠を内部に配置される配線構造体となる部分より高く形成する場合、この高さの差(段差)が、貼り付ける樹脂膜の厚さより小さくなるようにした方がよい。この場合、前述したようなSTP法などにより感光性樹脂膜511を貼り合わせるときに、支持枠の上端部が樹脂膜に埋め込まれる状態となるが、段差が樹脂膜より大きいと、支持枠の上端部が樹脂膜を貫通し、樹脂膜で封止が行えない場合が発生する。このような状態を抑制するためにも、上記段差は、封止膜の厚さより小さくした方がよい。
【0077】
なお、上述では、図4を用いて説明した電気装置の製造方法について説明したが、同様の方法により、図1,図2,図3を用いて説明した電気装置も製造できることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1における電気装置の構成を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図2】本発明の実施の形態2における電気装置の構成を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図3】本発明の実施の形態3における電気装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態4における電気装置の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における電気装置の製造方法例を示す工程図である。
【図6】本発明の実施の形態における電気装置の製造方法例を示す工程図である。
【図7】本発明の実施の形態における電気装置の製造方法例を示す工程図である。
【図8】従来よりある電気装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
101…基板、102…支持枠、103…配線支持部、104…内部配線、105…封止膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
この基板の上に形成されて所定の領域を囲う支持枠と、
前記基板の上の前記支持枠で囲われた領域に配置された配線構造体と、
前記配線構造体及び前記支持枠に支持されて、前記支持枠に囲われた領域を封止する封止膜と
を少なくとも備え、
一部の前記配線構造体は、前記基板の表面より離間して前記基板との間に空間を形成している
ことを特徴とする電気装置。
【請求項2】
請求項1記載の電気装置において、
前記配線構造体は、前記支持枠と同じ高さに形成されている
ことを特徴とする電気装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電気装置において、
前記配線構造体は、前記基板から前記封止膜の方向において、複数の配線が配置された多層配線構造を備える
ことを特徴とする電気装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気装置において、
前記支持枠の内側領域における前記基板の上に前記配線構造体から離間して形成され、前記封止膜を支持する支持柱を更に備える
ことを特徴とする電気装置。
【請求項5】
請求項4記載の電気装置において、
前記支持柱は、前記配線構造体を構成している配線とは直交する方向に延在する構造を備える
ことを特徴とする電気装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気装置において、
前記支持枠は、前記配線構造体を構成している配線とは直交する方向に延在する構造を備える
ことを特徴とする電気装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気装置において、
前記基板の上の前記支持枠の外側領域に配置されて前記配線構造体に電気的に接続する外部配線を備える
ことを特徴とする電気装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気装置において、
前記封止膜は、前記配線構造体の前記封止膜を支持している領域の一部を露出させる開口部を備える
ことを特徴とする電気装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気装置において、
前記配線構造体は、スパイラルインダクタ,トランスフォーマ,及び伝送線路の少なくとも1つから構成されている
ことを特徴とする電気装置。
【請求項10】
基板の上に犠牲膜を用いて金属膜を積層して積層した前記金属膜により前記基板の上に所定の領域を囲う支持枠及び前記支持枠で囲われた領域に配置された配線構造体が形成された状態とする工程と、
前記犠牲膜を除去し、一部の前記配線構造体が、前記基板の表面より離間して前記基板との間に空間を形成した状態とする工程と、
前記犠牲膜を除去した後、前記支持枠及び前記配線構造体の上面に接触する封止膜を貼り付け、前記配線構造体及び前記支持枠に支持されて前記支持枠に囲われた領域を封止する前記封止膜が形成された状態とする工程と
を少なくとも備えることを特徴とする電気装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の電気装置の製造方法において、
前記封止膜を貼り付けた後、前記配線構造体の前記封止膜を支持している領域の一部を露出させる開口部が前記封止膜に形成された状態とする工程
を備えることを特徴とする電気装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−111052(P2009−111052A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280133(P2007−280133)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)