説明

電気製品の音検査方法及び電気製品の音検査装置

【課題】 電気製品のスピーカから、例えば、着信したメロディー等の着信音等が、正確に、再生することを検査する、電気製品の音検査装置を提供する。
【解決手段】 記憶部に記憶された音声信号の音量値を無音レベルを零とした負方向を正負逆転変換したものを基準音声信号D1とし、次に、電気製品Sから出力される音声信号を集音マイク3において集音した音声信号の音量値を、無音レベルを零とした負方向を正負逆転変換したものを検査音声信号D2とし、無音として認識するための閾値Sth0を設定し、検査音声信号D2中に、閾値Sth0以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号D1と検査音声信号D2とを経時的に比較し、基準音声信号D1と検査音声信号D2との音量値の差が所定以上となる時間を累計し、その累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、不一致と判断するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気製品のスピーカから、例えば、着信したメロディー等の着信音等が、正確に、再生することを検査する、電気製品の音検査方法、及び、この電気製品の音検査方法を実施するのに適した電気製品の音検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、携帯電話機等の情報端末機その他の電気製品として、通常のDTMF音とは異なる着信音等を、例えば、着信メロディーサイトからダウンロード(録音)し、これを着信音として用いることができるようにしたものが、幅広く出回っている。
【0003】
このような電気製品は、工場から出荷する前に、携帯電話機等の情報端末機その他の電気製品が、録音した着信メロディー等の着信音等を正確に再生できるか否かの品質試験が行われている。
【0004】
ところで、2つの音声信号が同じか否かを比較する方法としては、各々の音声信号を集音マイクにより集音したものを、発振器に入力し、発振器の振幅を記録したものを、重ねたり、並列に表示したりするようなことが、通常、行われている。
【特許文献1】実用新案登録第3046906号公報
【特許文献2】特開平5−34391号公報
【特許文献3】特開平8−123454号公報
【特許文献4】特開2002−372968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2つの音声信号が同じか否かを比較する際に、発振器の振幅を記録したものをそのまま用いた場合、2つの音声信号の振幅を記録したものの対比を機械化して行う場合、2つの音声信号が同期して対比されている場合は、問題が無いものの、同期していない場合、例えば、一方の音声信号の振幅が、無音を中心に、「正」側に振れているときに、他方の音声信号の振幅が、無音を中心に、「負」側に振れている場合(図3は無音を中心に振幅が正負に振れることを示す図である。)、これらの差を求めると、実際には、2つの音声信号が同じか又は極めて近似したものであるにも関わらず、2つの音声信号が、著しく、異なっている、と判断することになる。
【0006】
また、2つの音声信号を、重ねたり、並列に表示したりした場合、2つの音声信号が同じか否かは、目視でおこなったり、又は、大きさ、形を認識させ、同一か否かを判断させる音声認識システムが必要になる、という問題がある。
【0007】
一方、着信音その他の音声情報の再生ができないような製品を出荷してしまうような事態が発生すると、市場においてそのような製品は欠陥商品となるため、そのような欠陥商品を市場に送り出さないための、録音した着信音その他の音声情報を正確に再生できるか否か等の品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができるようにした、電気製品の音検査方法及び電気製品の音検査装置の開発が望まれている。
【0008】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであって、工場から出荷する前に、電気製品が録音した着信音その他の音声情報を正確に再生できるか否かといった、電気製品の品質・信頼性試験を無人で機械によって行うことができ、しかも、比較する電気製品が録音した着信音その他の音声情報の再生時間にずれが生じて、実際には、2つの音声信号が同じか又は極めて近似したものであるにも関わらず、2つの音声信号が、著しく、異なっている、という判断をし、電気製品が録音した着信音その他の音声情報を正常に動作するにも関わらず、これを欠陥商品と認識するようなことがない、電気製品の音検査方法、及び、この電気製品の音検査方法を実施するのに適した電気製品の音検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の電気製品の音検査方法は、基準の音声信号と被検査対象の音声信号の一致性を経時的に調べて、被検査対象の音声信号の一致/不一致を判断する電気製品の音検査方法であって、基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換したものを、基準音声信号とし、被検査対象の音声信号の音量値を、無音レベルを零とし、基準音声信号と同方向に、正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換したものを、検査音声信号とし、
基準音声信号と検査音声信号との音量値の差が所定以上となる時間を累計し、その累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、不一致と判断するようにした。
【0010】
請求項2に記載の電気製品の音検査方法は、請求項1に記載の電気製品の音検査方法の、無音として認識するための無音用閾値を音量に設定し、基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換後、検査音声信号中に、無音用閾値以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号と検査音声信号とを経時的に比較開始するようにした。
【0011】
請求項3に記載の電気製品の音検査装置は、基準の音声信号と被検査対象の音声信号の一致性を経時的に調べて、被検査対象の音声信号の一致/不一致を判断する電気製品の音検査装置であって、電気製品に設けられているスピーカから出力される音声信号を集音する集音マイクと、集音マイクが集音した音声信号を格納する記憶部と、記憶部に記憶された音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換する正負逆転変換手段とを備え、正負逆転変換手段により、電気製品を用いて、録音した着信音等の音声信号を再生した音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換したものを基準音声信号とし、次に、電気製品を用いて、録音した着信音等の音声信号を再生した音声信号の音量値を、無音レベルを零とし、基準音声信号と同方向に、正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換したものを検査音声信号とし、基準音声信号と検査音声信号との音量値の差が所定以上となる時間を累計し、その累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、不一致と判断するようにした。
【0012】
請求項4に記載の電気製品の音検査装置は、請求項3に記載の電気製品の音検査装置の、無音として認識するための無音用閾値を音量に設定する無音用閾値手段と、基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換後、無音用閾値手段が、検査音声信号中に、無音用閾値手段により設定した無音用閾値以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号と検査音声信号とを経時的に比較開始するようにした。
【0013】
請求項5に記載の電気製品の音検査装置は、請求項3又は請求項4に記載の電気製品の音検査装置の、録音する音情報サイトを呼び出す情報を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された音情報サイトを呼び出す情報を、電気製品の外部入力手段へ入力する外部入力手段入力操作手段とを更に備える。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の電気製品の音検査方法では、基準の音声信号と被検査対象の音声信号の一致/不一致の検査を、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた基準音声信号と、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた検査音声信号とを、同期又は実質的に同期するように、経時的に、比較判断するのではなく、録音記録した音声信号の音量値を、無音レベルを零とした、正方向又負方向のいずれか一方に変換したものを基準音声信号とし、この基準音声信号と、次に、電気製品のスピーカから出力される着信音その他の音声信号の音量値を、無音レベルを零とし、正方向又負方向のいずれか一方に変換した基準音声信号と同方向に、正方向又は負方向に変換した検査音声信号とを、同期又は実質的にするように、経時的に、比較判断するようにしている。
【0015】
この結果、この電気製品の音検査方法を用いれば、基準音声信号と検査音声信号との2つの音声信号が、同期せず、若干のずれが生じて(実質的に同期して)再生されている場合であっても、電気製品が録音した着信音その他の音声情報が正確に再生できるか否かの検査を、発振器が出力する、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた基準音声信号と、発振器が出力する、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた検査音声信号とが、同期せず若干のずれを生じている場合のように、実際には、2つの音声信号が同じか又は極めて近似したものであるにも関わらず、2つの音声信号が、著しく、異なっている、という判断をすることがない。
【0016】
ところで、基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向又は負方向のいずれか一方を正負逆転変換後した場合、実際には、零と規定した無音レベルから、正方向又は負方向のいずれか一方に所定の高さの音レベルが検出される。
【0017】
従って、例えば、この電気製品の音検査方法において、無音として認識するための閾値(無音用閾値)を設定し、電気製品を用いて、録音した着信音等の音声信号を再生した音声信号中に、無音として認識するための閾値(無音用閾値)以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号と検査音声信号とを経時的に比較し、基準音声信号と検査音声信号との音量値の差が所定以上となる時間を累計し、その累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、その電気製品を不良品と判断するようにすれば、従来の、2つの音声信号を、重ねたり、並列に表示したりした場合、2つの音声信号が同じか否かを、目視で行う必要がない。
【0018】
即ち、この電気製品の音検査方法を用いれば、電気製品が録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができる。また、この電気製品の音検査方法を用いれば、大きさ、形を認識させ、同一か否かを判断させるような複雑・高度の音声認識システムを用いることなく、電気製品が録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができる。
【0019】
請求項2に記載の電気製品の音検査方法では、無音として認識するための無音用閾値を音量に設定し、基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向又は負方向のいずれか一方を正負逆転変換後、検査音声信号中に、無音用閾値以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号と検査音声信号とを経時的に比較開始するようにしている。
【0020】
基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向又は負方向のいずれか一方を正負逆転変換後した場合、実際には、零と規定した無音レベルから、正方向又は負方向のいずれか一方に所定の高さの音レベルが検出される。
【0021】
一方、電気製品が、例えば、着信したメロディー等の着信音等を正確に再現できるかを高精度に且つ高い信頼性でもって検査するためには、基準音声信号と検査音声信号とをできるだけ、同期して、経時的に比較開始するためには、零と規定した無音レベルに対応する、無音として認識するための無音用閾値を設定することが好ましい。
【0022】
この電気製品の音検査方法では、無音として認識するための無音用閾値を設定し、無音用閾値以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号と検査音声信号とを経時的に比較開始するようにし、基準音声信号と検査音声信号とできるだけ、同期して、経時的に比較できるようにしているので、電気製品が、例えば、着信したメロディー等の着信音等を正確に再現できるかを高精度に且つ高い信頼性でもって検査することができる。
【0023】
また、この電気製品の音検査方法では、無音として認識するための閾値(無音用閾値)を設定し、電気製品を用いて、録音した着信音等の音声信号を再生した音声信号中に、無音として認識するための閾値(無音用閾値)以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号と検査音声信号とを経時的に比較し、基準音声信号と検査音声信号との音量値の差が所定以上となる時間を累計し、その累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、その電気製品を不良品と判断するようにしているので、従来の、2つの音声信号を、重ねたり、並列に表示したりした場合、2つの音声信号が同じか否かを、目視で行う必要がない。
【0024】
即ち、この電気製品の音検査方法を用いれば、電気製品が録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができる。また、この電気製品の音検査方法を用いれば、大きさ、形を認識させ、同一か否かを判断させるような複雑・高度の音声認識システムを用いることなく、電気製品が録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができる。
【0025】
請求項3に記載の電気製品の音検査装置は、請求項1に記載の電気製品の音検査方法を装置クレームとして規定するものであって、この電気製品の音検査装置では、電気製品が録音した着信音その他の音声情報が正確に再生できるか否かの検査を、発振器が出力する、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた基準音声信号と、発振器が出力する、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた検査音声信号とを、同期するように、経時的に、比較判断するのではなく、録音記録した音声信号の音量値を、無音レベルを零とした、正方向又負方向のいずれか一方に変換したものを基準音声信号とし、この基準音声信号と、次に、電気製品のスピーカから出力される着信音その他の音声信号の音量値を、無音レベルを零とし、正方向又負方向のいずれか一方に変換したものを基準音声信号と同方向に、正方向又負方向のいずれか一方に変換した基準音声信号と同方向に、正方向又は負方向に変換した検査音声信号とを、同期又は実質的にするように、経時的に、比較判断するようにしている。
【0026】
この結果、この電気製品の音検査装置を用いて、電気製品の、例えば、着信したメロディー等の着信音等を正確に再現できるかを検査すれば、基準音声信号と検査音声信号との2つの音声信号が、同期せず、若干のずれが生じて(実質的に同期して)再生されている場合であっても、電気製品が録音した着信音その他の音声情報が正確に再生できるか否かの検査を、発振器が出力する、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた基準音声信号と、発振器が出力する、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた検査音声信号とが、同期せず若干のずれを生じている場合のように、実際には、2つの音声信号が同じか又は極めて近似したものであるにも関わらず、2つの音声信号が、著しく、異なっている、という判断をすることがない。
【0027】
また、この電気製品の音検査装置において、無音として認識するための閾値(無音用閾値)を設定すれば、電気製品を用いて、録音した着信音等の音声信号を再生した音声信号中に、閾値(無音用閾値)以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号と検査音声信号とを経時的に比較し、基準音声信号と検査音声信号との音量値の差が所定以上となる時間を累計し、その累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、その電気製品を不良品と判断するようにすれば、従来の、2つの音声信号を、重ねたり、並列に表示したりした場合、2つの音声信号が同じか否かを、目視で行う必要がない。
即ち、この電気製品の音検査装置を用いれば、電気製品が録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができる。
【0028】
また、この電気製品の音検査装置を用いれば、大きさ、形を認識させ、同一か否かを判断させるような複雑・高度の音声認識システムを用いることなく、電気製品が録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができる。
【0029】
請求項4に記載の電気製品の音検査装置では、無音として認識するための無音用閾値を音量に設定し、基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向又は負方向のいずれか一方を正負逆転変換後、検査音声信号中に、無音用閾値以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号と検査音声信号とを経時的に比較開始するようにしている。
【0030】
基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向又は負方向のいずれか一方を正負逆転変換後した場合、実際には、零と規定した無音レベルから、正方向又は負方向のいずれか一方に所定の高さの音レベルが検出される。
【0031】
一方、電気製品が、例えば、着信したメロディー等の着信音等を正確に再現できるかを高精度に且つ高い信頼性でもって検査するためには、基準音声信号と検査音声信号とできるだけ、同期して、経時的に比較開始するためには、零と規定した無音レベルに対応する、無音として認識するための無音用閾値を設定することが好ましい。
【0032】
この電気製品の音検査装置では、無音として認識するための無音用閾値を設定し、無音用閾値以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号と検査音声信号とを経時的に比較開始するようにし、基準音声信号と検査音声信号とできるだけ、同期して、経時的に比較できるようにしているので、電気製品が、例えば、着信したメロディー等の着信音等を正確に再現できるかを高精度に且つ高い信頼性でもって検査することができる。
【0033】
また、この電気製品の音検査装置では、無音として認識するための閾値(無音用閾値)を設定し、電気製品を用いて、録音した着信音等の音声信号を再生した音声信号中に、無音として認識するための閾値(無音用閾値)以上の音声信号を検出した時点で、基準音声信号と検査音声信号とを経時的に比較し、基準音声信号と検査音声信号との音量値の差が所定以上となる時間を累計し、その累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、その電気製品を不良品と判断するようにしているので、従来の、2つの音声信号を、重ねたり、並列に表示したりした場合、2つの音声信号が同じか否かを、目視で行う必要がない。
【0034】
即ち、この電気製品の音検査装置を用いれば、電気製品が録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができる。また、この電気製品の音検査方法を用いれば、大きさ、形を認識させ、同一か否かを判断させるような複雑・高度の音声認識システムを用いることなく、電気製品が録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができる。
【0035】
請求項5に記載の電気製品の音検査装置では、装置で自動的に、品質・信頼性試験の対象となる電気製品に録音する着信音その他の音情報サイトを呼び出すことができるようにしたので、品質・信頼性試験を、音情報サイトの呼び出し段階から、無人で機械によって行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る電気製品の音検査方法の一例、及び、電気製品の音検査方法の一例を実施するのに好適な電気製品の音検査装置の一例を、図面を参照しながら、更に、詳しく説明する。
【0037】
図1は、本発明に係る電気製品の音検査装置の構成の一例を概略的に説明する構成図である。
【0038】
また、図2は、本発明に係る電気製品の音検査方法の一例の概念を模式的に示す説明図である。
この電気製品の音検査装置1は、演算処理手段2と、集音マイク3とを備える。
演算処理手段2は、演算処理部や記憶手段等を備える制御装置4と、表示手段5と、テンキーや、ファンクションキー、文字入力キーその他のキーを有する外部入力手段6とを備える。
【0039】
この音検査装置1では、品質・信頼性試験の試験対象となる電気製品Sを、音検査装置1の所定の場所に設置する。
【0040】
より特定的に説明すると、この電気製品の音検査装置1を用いて、電気製品Sの品質・信頼性試験を行う際には、電気製品Sのスピーカ(より特定的には、着信音等の音声情報を出力するために設けられているスピーカ)SPの近傍位置に、集音マイク3をセットする。
【0041】
尚、図1中、7で示す部材装置は、電気製品(この例では、動画対応の携帯電話)Sのキー入力部(電気製品Sの外部入力手段)Saを押し操作する外部入力手段入力操作手段を示している。
【0042】
この例では、外部入力手段入力操作手段7として、キー入力部(電気製品Sの外部入力手段)Saの数に対応するように、空気式、油圧式又は電磁式などのアクチュエータ手段を設けたものを用いている。
また、図1中、8で示す部材装置は、品質・信頼性試験の対象となる電気製品Sの表示画面が正常に動作するか否か試験を行う際に、電気製品の表示画面を撮像する撮像手段を示している。
【0043】
また、品質・信頼性試験の対象となる電気製品Sは、外部からの音、その他の外乱等を遮断するために、二点鎖線で示したケース体9の中に設置される。
【0044】
尚、この電気製品の音検査装置1は、検査の品質・信頼性を保持するために、温度及び湿度が一定に保たれた場所に設置されている。
【0045】
品質・信頼性試験の試験対象となる電気製品(この例では、携帯電話)Sは、電気製品(この例では、携帯電話)Sのキー入力部(電気製品Sの外部入力手段)Saの各々に、外部入力手段入力操作手段7の各々のアクチュエータ手段が正しく押し操作できるように、セットする。
【0046】
そして、外部入力手段入力操作手段7は、演算処理手段2の記憶部に、音情報サイトを呼び出す情報(アクセス情報、通常は、電話番号又はインターネットのホームページアドレス)を記憶させておき、演算処理手段2の記憶部又は外部入力手段6から発呼信号が入力されると、音情報サイトを呼び出す情報(アクセス情報、通常は、電話番号又はインターネットのホームページアドレス)を電気製品(この例では、携帯電話)Sのキー入力部(電気製品Sの外部入力手段)Saがダイヤル(入力)するように押し操作するようになっている。
【0047】
この電気製品の音検査装置1では、電気製品(この例では、携帯電話)Sのキー入力部(電気製品Sの外部入力手段)Saがダイヤル(入力)することで呼び出され、これにより、スピーカSPから出力される着信音その他の音声情報が、集音マイク3によって集音され、集音マイク3によって集音された着信音その他の音声情報が、振幅情報として、時間−音圧(音量)情報の相関データとして、演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)の記憶部に格納されるようになっている。
【0048】
演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)の記憶部に格納した、振幅情報は、演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)により、絶対値の情報に変換され、時間−音圧情報の絶対値情報の相関データとして、演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)の記憶部に格納され表示されるようになっている(図2中、D1で示すデータを参照。)。
この電気製品の音検査装置1では、演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)の記憶部に格納された、時間−音圧情報の絶対値情報の相関データ(図2中、D1で示すデータを参照。)の中から、無音として認識するための閾値を設定できるようにしている(図2中、無音として認識するための閾値Sth0を参照。)。
【0049】
この電気製品の音検査装置1では、外部入力手段入力操作手段7を用い、電気製品(この例では、携帯電話)Sが録音した着信音その他の音声情報の再生操作を、又は、外部から、品質・信頼性試験の対象になっている、電気製品(この例では、携帯電話)Sへダイヤルする等し、電気製品(この例では、携帯電話)Sが録音した着信音その他の音声情報の再生をする。
【0050】
電気製品(この例では、携帯電話)Sが録音し、再生している着信音その他の音声情報は、集音マイク3により集音され、集音した、電気製品(この例では、携帯電話)Sが録音し、再生している着信音その他の音声情報が、演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)へ送られる。
【0051】
演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)は、集音マイク3から送られてくる、電気製品(この例では、携帯電話)Sが録音し、再生している着信音その他の音声情報を振幅情報として、時間−音圧情報の相関データとして認識し、これを、絶対値に変換する。
ここで、絶対値に変換する、とは、無音レベルを零とした負方向を正方向に逆転変換することである。
【0052】
そして、演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)は、時間−音圧情報の絶対値情報の相関データ中に、最初に、無音として認識するための閾値Sth0以上の振幅情報の絶対値情報のデータを確認した時点(以下、この位置を比較開始位置S2とする。)で、予め、演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)の記憶部に格納された、時間−音圧情報の絶対値情報の相関データ(図2中、D1で示すデータを参照。)の再生を開始(以下、この位置を比較開始位置S1とする。)し、演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)は、集音マイク3から送られてくる、電気製品(この例では、携帯電話)Sが録音し、再生している着信音その他の音声情報を振幅情報として、時間−音圧情報の相関データとして認識し、これを、絶対値に変換した、時間−音圧情報の絶対値情報の相関データ(図2中、D2で示すデータを参照。)(以下、「検査音声信号」という。)と、予め、演算処理手段2(より特定的には、制御装置4)の記憶部に格納された、時間−音圧情報の絶対値情報の相関データ(図2中、D1で示すデータを参照。)(以下、「基準音声信号」という。)とを、比較開始位置S1、S2から所定の時間、経時的に比較し、同時間における、基準音声信号と検査音声信号とのレベル差が所定以上となる時間を累計し、この時間の累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、品質試験の対象となる電気製品を不良品と判断するようにしている。
【0053】
以上の説明から明らかなように、この電気製品の音検査装置1では、基準の音声信号と被検査対象の音声信号の一致/不一致の検査を、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた基準音声信号と、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた検査音声信号とを、同期するように、経時的に、比較判断するのではなく、録音記録した音声信号の音量値を、無音レベルを零とした負方向を正負逆転変換したものを基準音声信号(図2に示すデータD1を参照。)とし、その次に、電気製品のスピーカSPから出力された音声信号の音量値を、無音レベルを零とした負方向を正方向に逆転変換したものを検査音声信号(図2に示すデータD2を参照。)とし、基準音声信号(図2に示すデータD1を参照。)を、検査音声信号(図2に示すデータD2を参照。)中に、無音として認識するための閾値Sth0以上の振幅情報のデータ(音量)を確認した時点(比較開始位置S2)で、検査音声信号(図2に示すデータD2を参照。)と、同期するように、再生し、基準音声信号(図2に示すデータD1を参照。)と、検査音声信号(図2に示すデータD2を参照。)とを、比較開始位置S1、S2から所定の時間、経時的に、比較判断するようにしている。
【0054】
この結果、この電気製品の音検査装置1では、基準音声信号(図2に示すデータD1を参照。)と検査音声信号(図2に示すデータD2を参照。)との2つの音声信号が同期せず若干のずれが生じて比較・判断された場合であっても、電気製品が録音した着信音その他の音声情報が正確に再生できるか否かの検査を、発振器が出力する、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた基準音声信号と、発振器が出力する、無音状態を中心に、正側、負側に振れる振幅をそのまま用いた検査音声信号とが、同期せず若干のずれを生じている場合のように、実際には、2つの音声信号が同じか又は極めて近似したものであるにも関わらず、2つの音声信号が、著しく、異なっている、という判断をすることがない。尚、正側と負側の両方の振幅を比較する(二つの基準信号を使用する。)という問題解決方法も考えられるが、この方法は判定に多くの時間を要する問題点がある。
尚、上述の実施例では、基準音声信号と検査音声信号とを無音レベルを零とした負方向を正方向に逆転させたが、逆に、無音レベルを零とした正方向を負方向に逆転させてもよい。
また、この電気製品の音検査装置1では、無音として認識するための閾値Sth0を設定し、品質・信頼性試験の対象となる電気製品Sを用いて、録音した着信音等の音声信号を再生した音声信号中に、閾値Sth0以上の音声信号を検出した時点(比較開始位置S2)で、基準音声信号(図2に示すデータD1を参照。)と検査音声信号(図2に示すデータD2を参照。)とを、比較開始位置S1、S2から所定の時間、経時的に比較し、基準音声信号(図2に示すデータD1を参照。)と検査音声信号(図2に示すデータD2を参照。)との音量値の差が所定以上となる時間を累計し、その累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、品質・信頼性試験の対象となる電気製品を不良品と判断するようにしているので、従来の、2つの音声信号を、重ねたり、並列に表示したりした場合、2つの音声信号が同じか否かを、目視で行う必要がない。
【0055】
即ち、この電気製品の音検査装置1を用いれば、電気製品が録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができる。
【0056】
また、この電気製品の音検査装置1を用いれば、大きさ、形を認識させ、同一か否かを判断させるような複雑・高度の音声認識システムを用いることなく、電気製品Sが録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができる。
【0057】
また、この電気製品の音検査装置1では、装置で自動的に、品質・信頼性試験の対象となる電気製品Sに録音する着信音その他の音情報サイトを呼び出すことができるようにしたので、品質・信頼性試験を、音情報サイトの呼び出し段階から、無人で機械によって行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る電気製品の音検査方法及び電気製品の音検査装置を用いれば、電気製品が録音した着信音その他の音声信号を正確に再生できるか否かの品質・信頼性試験を、無人で機械によって行うことができるので、本発明に係る電気製品の音検査方法及び電気製品の携帯電話等の情報端末機その他の電気製品の品質・信頼性試験に幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る電気製品の音検査装置の構成の一例を概略的に説明する構成図である。
【図2】本発明に係る電気製品の音検査方法の概念を概略的に示す説明図である。
【図3】無音レベルで正負方向に延在する変更前の音声信号を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 電気製品の音検査装置
2 演算処理手段
3 集音マイク
4 制御装置
5 表示手段
6 外部入力手段
7 外部入力手段入力操作手段
8 撮像手段
9 ケース体
S 電気製品
Sa キー入力部
Sp スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準の音声信号と被検査対象の音声信号の一致性を経時的に調べて、被検査対象の音声信号の一致/不一致を判断する電気製品の音検査方法であって、
前記基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換したものを、基準音声信号とし、
前記被検査対象の音声信号の音量値を、無音レベルを零とし、前記基準音声信号と同方向に、正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換したものを、検査音声信号とし
前記基準音声信号と前記検査音声信号との音量値の差が所定以上となる時間を累計し、
その累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、不一致と判断するようにした、電気製品の音検査方法。
【請求項2】
無音として認識するための無音用閾値を音量に設定し、前記基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向、負方向のいずれか一方を前記正負逆転変換後、前記検査音声信号中に、前記無音用閾値以上の音声信号を検出した時点で、前記基準音声信号と前記検査音声信号とを経時的に比較開始するようにした、請求項1に記載の電気製品の音検査方法。
【請求項3】
基準の音声信号と被検査対象の音声信号の一致性を経時的に調べて、被検査対象の音声信号の一致/不一致を判断する電気製品の音検査装置であって、
前記電気製品に設けられているスピーカから出力される音声信号を集音する集音マイクと、
前記集音マイクが集音した音声信号を格納する記憶部と、前記記憶部に記憶された音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換する正負逆転変換手段とを備え、
前記正負逆転変換手段により、前記電気製品を用いて、録音した着信音等の音声信号を再生した音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換したものを基準音声信号とし、
次に、前記電気製品を用いて、録音した着信音等の音声信号を再生した音声信号の音量値を、無音レベルを零とし、基準音声信号と同方向に、正方向、負方向のいずれか一方を正負逆転変換したものを検査音声信号とし、
前記基準音声信号と前記検査音声信号との音量値の差が所定以上となる時間を累計し、その累計値が、予め設定された判定用閾値以上になった場合、不一致と判断するようにした、電気製品の音検査方法。
【請求項4】
無音として認識するための無音用閾値を音量に設定する無音用閾値手段と、
前記基準の音声信号の音量値を、無音レベルを零とした正方向、負方向のいずれか一方を前記正負逆転変換後、前記無音用閾値手段により設定した無音用閾値を検出する無音用閾値手段を備え、
前記無音用閾値手段が、前記検査音声信号中に、前記無音用閾値手段により設定した無音用閾値以上の音声信号を検出した時点で、前記基準音声信号と前記検査音声信号とを経時的に比較開始するようにした、請求項3に記載の電気製品の音検査装置。
【請求項5】
録音する音情報サイトを呼び出す情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された音情報サイトを呼び出す情報を、前記電気製品の外部入力手段へ入力する外部入力手段入力操作手段とを更に備える、請求項3又は請求項4に記載の電気製品の音検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−33734(P2006−33734A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213226(P2004−213226)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)