説明

電気配線用接続構造、遊技機用電装機器及び遊技機

【課題】電装機器,制御基板等を直接コネクタを介して確実な接続ができる電気配線用接続構造、遊技機用電装機器及び遊技機を提供する。
【解決手段】 取付部130に設けられ接続端子100a,110aを有する一対の100,110の電気配線用接続構造であって、前記コネクタ100,110のいずれかは弾性体により形成される支持部120に設けられ、支持部120は前記コネクタ100,110の挿抜方向に弾性変形可能であり、前記コネクタ100,110を結合する際に、前記接続端子100a,110aが挿入方向へ所定量を超えて移動したときに前記支持部120が弾性変形して該接続端子100a,110aの過度の移動量を吸収し、前記コネクタ100a,110aが結合状態で抜去方向へ所定量移動したとき、前記支持部120が弾性変形してその移動を吸収するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に接続する電気配線用接続構造に関する。また、本発明は、その接続構造を備えた遊技機用電装機器、及びその電装機器が装着された遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばぱちんこ機(遊技機)の機枠には、遊技盤、発射ハンドル、払出装置等で例示されるように、電気配線を含む機器(電装機器)が多数装着されている。これらの電装機器は、電源や制御信号の入出力,グランド(アース)を行うために、接続端子(雄型コネクタと雌型コネクタ)を介して、主制御基板、発射制御基板、払出制御基板等の配線基板とそれぞれ電気的に接続されている。多くはハーネスを用いて接続しているが、ハーネスを用いた場合には、ドアの開閉作業などに影響して電気的な接続不良が生じやすい上に、ケーブル類が絡み合ってノイズを発生させやすく、良好な制御状態を維持しにくいなどの様々な問題がある。そこで、ハーネスを用いることなく各種制御基板同士のコネクタを直接接続し得る構成を備えた遊技機が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−154688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各種制御基板同士のコネクタを直接接続しようとするとコネクタの接続状態が判りづらく、強く押し過ぎることによる接続端子の破損や、接続端子の未到により未接続な状態となり電気的な接続不良を引き起こしやすいという問題がある。このことから、組付作業者の熟練度合い等によって不良品の発生率が左右され、製品の歩留まりを悪化させ、ひいてはぱちんこ機全体の製造コストを上昇させる要因ともなっていた。また、扉の開閉作業などの振動等により不用意にコネクタの抜去方向に負荷される外力が掛かると、誤って接続端子が抜去したり不完全な接続により電気的な接続不良が発生しやすく、遊技に支障をきたす等の問題がある。さらに、設計上コネクタの位置関係を厳密なものとしなければならないため、クリアランスを小さくしなければならず、組み付けに手間がかかり、接続端子の破損等の不具合が発生しやすくなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、電装機器,制御基板等を直接コネクタを介して確実な接続ができる電気配線用接続構造、遊技機用電装機器及び遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、取付部に設けられ接続端子を有する一対のコネクタの電気配線用接続構造であって、前記コネクタのいずれかは弾性体により形成される支持部に取付けられ、前記支持部は前記コネクタの挿抜方向に弾性変形可能であり、前記コネクタを結合する際に、前記接続端子が挿入方向へ所定量を超えて移動したときに前記支持部が弾性変形して該接続端子の過度の移動量を吸収し、前記コネクタの抜去方向に負荷される外力が不用意に掛った際に、前記支持部が弾性変形してその負荷を吸収するようにしたことを特徴とする。ここでいう「弾性体」は、力を加えると変形するが、力を除荷すれば元の寸法に戻る性質を備えた材料を示し、ブタジエンゴム,ブチルゴム等の合成ゴム、ポリノルボルネン,ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂の他に、薄板状の弾性体金属を含む。
【発明の効果】
【0007】
この電気配線用接続構造においては、コネクタのいずれかは本体部に弾性体により形成される支持部に取付けられ、前記支持部がコネクタの挿抜方向に弾性変形可能であることにより、コネクタ接続時の過度の力や扉の開閉作業などの振動等が、支持部が弾性変形することにより吸収され、接続端子の破損や電気的な接続不良をなくすことができる。つまり、この電気配線用接続構造におけるコネクタの接続状態では、コネクタの抜去方向に負荷される外力が不用意に掛っても、支持部が所定範囲移動するように弾性変形してコネクタの抜去方向の負荷を吸収するため、誤ってコネクタが抜去することはない。また、コネクタの接続解除は、コネクタに対して抜去方向に所定量(支持部材の弾性限界)を超える外力を加えた際にコネクタが抜去方向に移動して接続端子の接続が解除される。また、支持部を弾性体で形成することにより、同様の目的のために別途スプリングを設けたり弾性片を形成したりする必要がなくコストの低減に寄与するとともに、余分なスペースを必要としないのでコンパクト化(小型化)に寄与する。
【0008】
また、これらの電気配線用接続構造において、前記支持部は所定の厚みを有する板状部を有し、該板状部に前記コネクタを取付ける構成とすることができる。この構成により、コネクタの動きに対応して支持部が弾性変形しやすくなり、接続端子の破損や電気的な接続不良を確実になくすことができる。
【0009】
また、前記コネクタは前記支持部に対してコネクタの挿抜方向に交差する方向に移動可能に設けられる構成とすることができる。このように、組付時(接触開始時及び挿入時)におけるフローティング移動を可能とすることによって、両接続端子を電装機器に組み込む際の組付誤差や各パーツに存在する寸法公差を広範囲に吸収でき、組付時の振動・衝撃等にも対応(吸収)できるようになるので、組付作業者の熟練度合いにかかわらず接続不良による不良品の発生率を低減することができる。また、この構成を採用することにより、支持部の弾性変形とコネクタのフローティング移動により、コネクタはコネクタの挿抜方向とコネクタの挿抜方向と交差する方向へ移動可能に支持されるため、コネクタは支持部(弾性体)を介して3次元的な移動が可能になり、コネクタとの間に存在する広範囲のずれを吸収して、正常の結合を実現することができる。
【0010】
具体的には、コネクタのフローティング機構は、挿入方向の隙間を形成して挿入側コネクタの浮動状態の維持を可能とする浮動隙間と、移動方向のスペースを形成して挿入側コネクタのフローティング移動を可能とする移動スペースとを有する。例えば、フローティング機構において、挿入側コネクタと支持部との間にそれぞれ介装されたスリーブ付き座金及び座金により浮動隙間を形成し、スリーブ付き座金の内径をビスのねじ外径よりも大径とすることにより移動方向の移動スペースを形成している。
【0011】
また、これらの電気配線用接続構造において、前記支持部は前記取付部と別体に形成され、該取付部に設けられる支持部に前記支持部の周縁部が支持される構成とすることができる。このように、支持部を別体に形成してコネクタをこの支持部を介して取り付けるようにすることにより、予めコネクタを支持部に取り付けておくことができるため、取付部への取り付けが容易になる。また、支持部の周縁部を支持するように設けることで、支持部が弾性変形しやすくなり、コネクタへの負荷が軽減する。
【0012】
また、この電気配線用接続構造において、前記支持部は前記取付部に対してコネクタの挿抜方向に交差する方向に移動可能に設けられる構成とすることができる。この構成を採用することにより、コネクタが支持部を介して取付部に対して移動が可能となるため、前記コネクタのフローティング構造と同様に組付時の接続不良による不良品の発生率を低減することができる。
【0013】
また、具体的には、配線基板に実装され固定保持された被挿入側コネクタに対して挿入可能に突出形成される挿入側コネクタと、その挿入側コネクタに対して前記挿入方向とは反対側に位置する第一受止部を有し、その第一受止め部により前記挿入側コネクタを受け止め保持するとともに、前記挿入側コネクタの移動方向を含む面と平行な面内でフローティング移動可能な支持部と、その支持部に対して前記挿入方向とは反対側に位置する第二受止部を有し、その第二受止部により前記支持部を受け止め保持する取付部と、を備え、前記挿入方向において、前記挿入側コネクタの先端は前記支持部の先端よりも突出して位置することにより、前記挿入側コネクタの先端部が前記被挿入側コネクタに挿入される際に、前記支持部が前記取付部に対してフローティング移動が可能であるようにすればよい。
【0014】
さらに、前記コネクタ自体がフローティングする第一のフローティング移動と支持部がフローティングする第二のフローティング移動とを併用して二段階のフローティング移動を可能とすることにより、挿入側コネクタのフローティング移動範囲(すなわち調整可能範囲)の拡大を図ることができる。そして、二段階のフローティング移動により、遊技中における振動・衝撃等によりコネクタの挿抜方向に交差する方向に掛る負荷を確実に吸収できるようになるので、コネクタの破損及び接触不良を引き起こすことがなく、遊技者は遊技を中断することなく遊技に集中して楽しむことができる。また、第一のフローティング移動と第二のフローティング移動とは互いに独立しているので、挿入側コネクタと支持部とは挿入方向から見て交差する方向に同時に移動することができるようになる。なお、第一のフローティング移動→第二のフローティング移動の順に発生するのが一般的であるが、第二→第一の順に発生する場合、ほぼ同時に発生する場合、さらには第一又は第二のみ発生する場合もあり得る。
【0015】
また、本発明の遊技機用電装機器は、上記した電気配線用接続構造を備え、ぱちんこ機等の遊技機に装着されてその遊技機での遊技の実行に関与するとともに、前記取付部が前記遊技機に装着するための本体部を構成することができる。
【0016】
このように、上記した電気配線用接続構造を介して遊技機用電装機器を遊技機(の機枠)に装着する際、支持部が前記コネクタの挿抜方向に弾性変形可能とすることによって、両接続端子を電装機器に組み込む際の過度の力を吸収でき、組付時の振動・衝撃等にも対応(吸収)できるようになるので、組付作業者の熟練度合いにかかわらず接続不良による不良品の発生率を低減することができる。また、組付後に受ける振動・衝撃等にも対応(吸収)できるので、電装機器として輸送・保管する流通段階や各種応用装置・製品へ組み込む搭載段階においても、不良品の発生率を低減することができる。
【0017】
また、本発明の遊技機は、上記遊技機用電装機器が前記本体部を介して機枠に装着されている構成とすることができる。
【0018】
このように、組付後においても支持部の変形が可能となる。これによって、組付後に受ける振動・衝撃等にも対応(吸収)できるので、遊技機を輸送・保管する流通段階や遊技機を遊技店に設置する設置段階においても、不良品の発生率を低減することができる。
【0019】
具体的には、次のような場合を例示することができる。
(1)遊技機の機枠としてのぱちんこ機の前面枠に対して、遊技機用電装機器としての発射ハンドルが直線的移動によって装着される場合;
(2)遊技機の機枠としてのぱちんこ機の内枠に対して、遊技機用電装機器としての払出装置が直線的移動又は回動によって装着される場合;
(3)遊技機の機枠としてのぱちんこ機の内枠に対して、遊技機用電装機器としての遊技盤が回動によって装着される場合。
【0020】
また、被挿入側コネクタ側の取付部には、その被挿入側コネクタに対して挿入方向とは反対側において、フローティング移動を伴いつつ、挿入側コネクタの先端部が被挿入側コネクタに挿入されるように誘導案内するための誘導案内部が配置されていることが望ましい。
【0021】
このように、挿入側コネクタの先端部が誘導案内部で誘導案内されて被挿入側コネクタに挿入されるときにフローティング移動が可能であるから、両コネクタの組付誤差や寸法公差(位置ずれ)をフローティング移動によって速やかに吸収することができる。具体的には、誘導案内部は、挿入方向の先端側(下手側)に向かうほど間隔が狭まるような平面状又は曲面状の傾き(例えばテーパ状平面)を有する誘導壁にて構成することができる。また、誘導案内部は、被挿入側コネクタとは別体に形成される場合と、被挿入側コネクタと一体に形成(例えば一体成形)される場合とがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、この発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。図1は遊技機としてのぱちんこ機の正面図、図2はぱちんこ機の背面図である。ぱちんこ機1は、図1及び図2に示すように、そのぱちんこ機1の外郭を形成する額縁状の外枠2を備え、その外枠2の前面に一側を枢支して、その前面側に向かって片開き可能に内枠3が支持されている。内枠3には、ガイドレール4により遊技領域5aが形成された遊技盤5(遊技機用電装機器)が装着され、その下方に発射機構(図示せず)が設けられている。また、内枠3の一側に軸支され遊技盤5の正面を覆う透明板と遊技球を貯留し、貯留した遊技球を整流して発射機構に遊技球を供給する球受皿7を備えた前枠6が開閉自在に設けられている。そして、ぱちんこ機1を正面視して球受皿7の下方に球受皿7の余剰球を貯留する余剰皿9が設けられ、その右側には、電動モータ等の駆動手段(図示せず)により打球槌(発射装置;図示せず)を作動させて遊技球を発射するために、遊技者によって操作され遊技球の発射力を調節する発射ハンドル8(遊技機用電装機器)が取り付けられている。
【0023】
内枠3は、図2に示すように中央に窓部11が開設された縦長方形の枠状に形成され、窓部11の背面上方には、補給経路(図示せず)から補給される遊技球を貯留する球タンク12が設けられると共に、球タンク12の下流側に遊技球を整列して流下する直線又は屈曲状の球誘導路13が設けられる。そして、その下流にモータ,ソレノイド等の電気的駆動源の駆動により所定個数の遊技球を払出す球払出装置(遊技機用電装機器)14が設けられ、その下方には、球払出装置14から払出された遊技球を球受皿7へ導く排出樋15が設けられている。
【0024】
なお、本明細書において、上下方向とは遊技盤5の盤面に沿う形で遊技球が流下する方向(例えば、鉛直方向)を意味する。また、左右方向とは遊技盤5の盤面に沿う形で上下方向と交差する方向(例えば、水平方向)を意味し、遊技者側からみて左側、右側をいう。さらに、前後方向とは遊技盤5と交差(例えば、直交)する方向を意味し、遊技者に対面する側(手前側)が前面側(前方側)であり、その反対側(奥側)が後面側(後方側)となる。
【0025】
遊技盤5(遊技機用電装機器)の盤面(前面)には、図1に示すようにガイドレール4によって全体として円形に区画された遊技領域5aが形成されている。遊技領域5aの中央には液晶表示部および電飾を備えた表示装置18が搭載され、表示装置18の下方(遊技領域5aの中央下部)に電気的駆動源により扉が開閉する大入賞口19(アタッカー)が配置されている。また、表示装置18と大入賞口19との間には、入賞により液晶表示部を変動表示させる電動チューリップ(電チュー)にて構成される始動口20が配置されている。また、遊技領域5aには電飾装置を備えた入賞口21が設けられている。このように、遊技盤5には多くの電気部品が設けられている。
【0026】
図3は本発明に係る電気配線用接続構造を備えた発射ハンドルを背面から見た斜視図、図4はその発射ハンドルを分解して示す背面斜視図、図5は図3の背面図である。図3及び図4に示すように、発射ハンドル8は、後方側に位置して前方側に開口するグリップ本体8aと、前方側に位置して後方側に開口するキャップ8bとが合掌状に向き合うように組み合わされ、グリップ本体8aとキャップ8bとの間に回動レバー8c(回動操作部材)が配置されている。この発射ハンドル8は、グリップ本体8aの円筒状の本体部130(取付部)がビス等の締結部材131を介してぱちんこ機1の前枠6に形成された取付凹部6aに固定(装着)され(図9(b)参照)、キャップ8bは本体部130に固定されている。また、発射ハンドル8(本体部130)に保持された矩形状の雄型コネクタ110(挿入側コネクタ)のピン孔110a(接続端子)が、発射ハンドル用中継基板23(配線基板)に実装(固定保持)された矩形状の雌型コネクタ100(被挿入側コネクタ)の接続ピン100a(接続端子)に挿入[接続]されている(図7〜図9参照)。なお、発射ハンドル用中継基板23を介して発射ハンドル8と発射制御基板(図示せず)との間で制御信号や電源の入出力が行われる。
【0027】
上記した雄型コネクタ110は、発射ハンドル8の本体部130の後端開口部に支持部材120(支持部)を介して設けられており、本体部130には後端開口部から遊技者側(挿入方向とは反対側)に位置し、複数(例えば3ヶ所)のボス部130a及び内壁に所定間隔をもって突出し支持部材120が支持される複数(例えば4ヶ所)のリブ壁130b(支承部)が形成されている。つまり、本体部130の後端開口部に支持部材120の収納部(取付部)が形成されている。
【0028】
雄型コネクタ110は、支持部材120に雌型コネクタ100への挿入方向(後方側)へ突出して取付けられており、図4に示すように、左右方向に延び、後述する第一フローティング機構10を介して支持部材120に浮動状態に維持される台座111と、その台座111の中央部から後方側(挿入方向)へ突出する差込部112とを有し、挿入方向(突出方向)に対して交差(例えば直交)する方向にフローティング移動可能である。
【0029】
支持部材120は、ブタジエンゴム,ブチルゴム等の合成ゴム、ポリノルボルネン,ポリ塩化ビニル系樹脂等の所定方向に弾性変形可能な弾性体により擬似円盤状に形成され、発射ハンドル8の本体部130の複数(例えば4ヶ所)のリブ壁130bに周縁部が受け止め保持され雄型コネクタ110の挿抜方向に弾性変形可能である。また、支持部材120は、所定の厚みを有する板状部を有し、ほぼ中央に雄型コネクタ110の配線を挿通する挿通孔120cが形成され、雄型コネクタ110の前方側(挿入方向とは反対側)に挿通孔120cを挟んで複数(例えば2ヶ所)の着座部120a(第一受止部)を有し、その着座部120aにより雄型コネクタ110を受け止め保持するとともに、後述する第二フローティング機構30を介して雄型コネクタ110(台座111)の移動方向を含む面と平行な面内で、雄型コネクタ110の挿入方向(突出方向)に対して交差(例えば直交)する方向にフローティング移動可能である。これにより、雄型コネクタ110が挿抜方向及び挿抜方向と交差する方向へ移動可能に支持されるため、雄型コネクタ110は支持部材120(弾性体)を介して3次元的な移動が可能になり、コネクタとの間に存在する広範囲のずれを吸収して、正常の結合を実現することができる。なお、支持部材120は、薄板状の弾性体金属により形成してもよい。
【0030】
第一フローティング機構10は、図5及び図6において、雄型コネクタ110の台座111の長手方向(左右方向)の両端部(周方向で見ると対角線上)に各々配置され、雄型コネクタ110の周方向や半径方向への移動(第一のフローティング移動)を可能にする。一方、第二フローティング機構30は、第一フローティング機構10の外側において、周方向に複数(例えば120°間隔で3ヶ所)配置され、支持部材120の周方向や半径方向への移動(第二のフローティング移動)を可能にする。
【0031】
具体的には,図6(a)に示すように、第一フローティング機構10は、雄型コネクタ110の台座111と支持部材120の着座部120aとの間、及び台座111を着座部120aへ浮動可能に取り付けるためのビス25(取付部材)と台座111との間にそれぞれ介装されたスリーブ付き座金26a及び座金26bとにより挿入方向の第一浮動隙間を形成して、雄型コネクタ110の浮動状態の維持を可能とする。また、スリーブ付き座金26aの内径d2をビス25のねじ外径d1よりも大径とすることにより移動方向の第一移動スペースS1を形成し、雄型コネクタ110のフローティング移動を可能とする。
【0032】
一方、図6(b)に示すように,第二フローティング機構30は、本体部130のリブ壁130bに受け止め保持された支持部材120を、本体部130の内側に膨出した複数(例えば3ヶ所)のボス部130a(膨出部;図5参照)に取り付けるためのビス27に一体化されて、ビス27と支持部材120との間に介装された座金27aが挿入方向の第二浮動隙間を形成して、支持部材120の浮動状態の維持を可能とする。また、本体部130のボス部130aと、そのボス部130aを取り囲む形で支持部材120の外周面に形成された複数(例えば3ヶ所)の周縁切欠部120bとにより移動方向の第二移動スペースS2を形成して、支持部材120のフローティング移動を可能とする。
【0033】
図6(a)の拡大図に示すように、雄型コネクタ110の第一移動スペースS1は、S1=d2−d1で表され、支持部材120の第二移動スペースS2よりも小さい(S1<S2)。これにより、コネクタの接続時に第一移動スペースS1で吸収しきれなかったズレを第二移動スペースS2で確実に調整(吸収)することができる。また、雄型コネクタ110の差込部112の先端は、挿入方向(突出方向)において支持部材120及び本体部130のいずれの先端よりも突出して位置している。
【0034】
次に、図7は発射ハンドル8を前枠に装着する状態を概念的に示す斜視図、図8はその内部構造を示す側面断面図、図9はそれに続いてコネクタの接続過程を示す側面断面図である。
【0035】
図8に示すように、雌型コネクタ100は、前枠6に一体的に固定される保持板16(機枠)に保持される発射ハンドル用中継基板23を介して設けられている。保持板16の背面側には、雌型コネクタ100を備えた発射ハンドル用中継基板23の収納部16aが形成されており、前方側において、上記した第一のフローティング移動を伴いつつ、雄型コネクタ110の差込部112の先端部が雌型コネクタ100に挿入される開口16bを挟んで、雄型コネクタ110を雌型コネクタ100に誘導案内するための誘導壁16c(誘導案内部)が一体形成されている。具体的には図7に示すように、この誘導壁16cは、挿入方向の先端側(下手側;後方側)に向かうほど間隔が狭まるような一対のテーパ状平面を有する形態で、雄型コネクタ110の移動方向に沿って複数対(例えば3対)並設されている。なお、誘導壁16cの基部側(挿入方向の先端側)には、テーパ状平面に続いて挿入方向に平行な平面が雌型コネクタ100に向かって形成されているので、雄型コネクタ110の差込部120は、その姿勢が一対の平行状平面によって挿入方向に整えられて保持される(図9参照)。また、誘導壁16cの平行状平面とともに開口16bを囲むように開口16bを挟んで平行状平面を備えた保持壁16dが形成されている。保持壁16dは雄型コネクタ110の移動方向に沿って複数対(例えば2対)並設されている。
【0036】
このように構成された発射ハンドル8を前枠6へ装着するために、雄型コネクタ110を雌型コネクタ100へ挿入(接続)する手順について、図8及び図9により説明する。図8において、発射ハンドル8の本体部130を前枠6の取付凹部6a内で後方側に押し込む。雄型コネクタ110の差込部112の先端が誘導壁6cと接触すると、雄型コネクタ110は、第一のフローティング移動(例えば左方向への移動)を伴いながら、誘導壁16cのテーパ状平面に沿って挿入方向へ誘導案内される(図9(a))。これによって、雄型コネクタ110と雌型コネクタ100との位置ずれを矯正できる。
【0037】
さらに、雄型コネクタ110の差込部112の先端部が雌型コネクタ100へ挿入されると、雄型コネクタ110の第一のフローティング移動に加えて、支持部材120が第二フローティング機構30を介し、本体部130に対して第二のフローティング移動可能となる。これによって、雄型コネクタ110と雌型コネクタ100との位置ずれをさらに矯正しつつ限度まで挿入し、組付(接続)作業を終了する(図9(b))。このとき、雄型コネクタ110は誘導壁16cの平行状平面と保持壁16dとにより確実に保持され、雄型コネクタ110の挿抜方向に交差する方向の移動を阻止してがたつくことはなく、本体部130の先端(開口端)が基準位置Bに位置して、保持板16との距離Lを維持する。ただし、組付時において、実際には第一及び第二のフローティング移動はほぼ同時に発生することが多い。なお、組付時に発射ハンドル8や前枠6が振動・衝撃を受けても、第二のフローティング移動によってそれらを吸収できる。
【0038】
また、雄型コネクタ110の差込部112の先端部が雌型コネクタ100への挿入を終了したときに、支持部材120及び本体部130は雌型コネクタ100から離間して非接触状態を維持している(図9(b))。したがって、組付後に発射ハンドル8や前枠6が振動・衝撃を受けても、第二のフローティング移動によってそれらを吸収できる。
【0039】
このように、組付時(接触開始時及び挿入時)における二段階(第一及び第二)のフローティング移動を可能とすることによって、フローティング移動範囲(すなわち調整可能範囲)の拡大を図ることができる。そして、二段階のフローティング移動により、両コネクタ100,110を前枠6や発射ハンドル8に組み込む際の組付誤差や各パーツに存在する寸法公差(位置ずれ)を広範囲に吸収でき、組付時の振動・衝撃等にも対応(吸収)できるようになるので、組付作業者の熟練度合いにかかわらず接続不良による不良品の発生率を低減することができる。
【0040】
また、第一のフローティング移動と第二のフローティング移動とは互いに独立しているので、雄型コネクタ110の移動範囲(調整可能範囲)を拡大することができる。また、雄型コネクタ110と支持部材120とは挿入方向から見て交差する方向に同時に移動することができるようになり、ねじれを伴うような複雑な位置ずれをも吸収できるようになる。
【0041】
さらに、雌型コネクタ100側に誘導壁6cを設けることによって、第一フローティング機構10を円滑に作動させることができる。その結果、両コネクタ100,110の組付誤差や寸法公差(位置ずれ)を第一のフローティング移動によって速やかに吸収することができる。
【0042】
また、この雄型コネクタ110を雌型コネクタ100に結合する際に、ピン孔110a(接続端子)が挿入方向(図10(a)黒矢印方向)へ所定値以上の負荷により本体部130が基準位置Bから所定量を超えて移動して保持板16との距離L1が縮小(L1<L)したときに、支持部材120が(挿入方向に)弾性変形してピン孔110a(接続端子)の過度の移動量を吸収し、接続端子(接続ピン100a,ピン孔110a)の破損を防止して電気的な接続不良をなくすことができ、最良の接続状態を保持することができる。具体的には、図10(a)に示すように、支持部材120の周縁部が弾性変形して皿状となり挿入方向への所定値以上の負荷を吸収する。つまり、雄型コネクタ110が取り付けられている中央部はほとんど弾性変形することなく、安定した結合状態を維持している。
【0043】
また、この結合状態において、遊技者のハンドル操作等によって雄型コネクタ110の抜去方向(図10(b)黒矢印方向)に負荷される外力が不用意に掛り本体部130が基準位置Bから後退して、保持板16との距離L2が拡大(L<L2)したとしても、雄型コネクタ110は雌型コネクタ100との結合をそのまま維持して、支持部材120が抜去方向に弾性変形してその負荷(移動)を吸収するため、雄型コネクタ110は雌型コネクタ100から抜去することはなく、接続ピン100aとピン孔110aとが離脱することを防止して、最良の接続状態を保持し続けることができる。具体的には、図10(b)に示すように、支持部材120の周縁部が弾性変形して丘状となり抜去方向への負荷を吸収する。つまり、雄型コネクタ110が取り付けられている中央部はほとんど弾性変形することなく、安定した結合状態を維持している。
【0044】
一方、操作ハンドル8の交換時に、雄型コネクタ110と雌型コネクタ100とを分離する必要がある時、雄型コネクタ110の引き抜き力が抜去方向に所定量(支持部材120の弾性変形の限度)を超えて移動したときに接続ピン100aとピン孔110aとの接続が解除され、雄型コネクタ110と雌型コネクタ100を分離することができる。
【0045】
なお、実施の形態において支持部材を別体に形成し、本体部(取付部)にフローティング状態に取り付けるようにしたが、本体部(取付部)に固定的に設けるようにしてもよい。また、コネクタが取り付けられる部位(支持部材)を弾性樹脂(弾性体)として、取付部を剛性樹脂として二重成型等により一体的に形成するようにしてもよい。つまり、コネクタを取付ける部位が弾性体により形成されていればよい。
【0046】
また、実施の形態において発射ハンドルを遊技機用電装機器の例として、その電気配線用接続構造について説明したが、本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0047】
例えば、本発明に係る電気配線用接続構造を球払出装置14の装着時にも適用することができ、例えば球払出装置14側に雄型コネクタ110(挿入側接続端子)が設けられ、内枠3側に雌型コネクタ100(被挿入側接続端子)を設け、本発明の電気配線用接続構造により接続するようにすればよい。本発明の電気配線用接続構造を球払出装置14の取り付けに適用することで、内枠3等を開閉する際の振動により雄型コネクタ110と雌型コネクタ100の抜去方向に誤って負荷がかかっても、支持部材120が弾性変形してその負荷を吸収するので、雄型コネクタ110と雌型コネクタ100の接続が解除されたり接続不良を引き起こしたりすることがない。
【0048】
また、遊技盤5を内枠3に装着する際に、遊技盤5側の電気部品と内枠3側の遊技盤用中継基板間で行う電気的接続を本発明の電気配線用接続構造により接続するようにしてもよく、特に遊技盤5の一側を固定して遊技盤5を回動しながら装着する際には、実施例に示したフローティング構造と相俟って確実な接続状態を保持することができる。
【0049】
なお、本発明に係る電気配線用接続構造は、これらの遊技機用電装機器の他に遊技機に用いられる全ての電装機器の電気的接続にも適用できるのはいうまでもない。さらに、遊技機用電装機器以外の電装機器に備えられる接続構造に適用してもよい。また、本発明に係る遊技機用電装機器は、ぱちんこ機以外の遊技機(例えば、スロットマシン、アレンジボール、アレンジぱちんこ(アレパチ)、雀球遊技機等)に装着される電装機器に適用してもよい。
【0050】
また、実施の形態では雄型コネクタ110を弾性体により形成した支持部材120を介して取り付けるようにしたが、雌型コネクタ100を支持部材120を介して取り付けるようにしても同様の効果を奏することができる。当然のことながら雄型コネクタ110と雌型コネクタ100の両側を弾性体により形成した支持部材120を介して取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る遊技機としてのぱちんこ機の正面図である。
【図2】図1の背面図である。
【図3】本発明に係る電気配線用接続構造を備えた発射ハンドルの背面斜視図である。
【図4】図3の発射ハンドルを分解して示す背面斜視図である。
【図5】図3の背面図である。
【図6】(a),(b)は図3の発射ハンドルのコネクタ部の断面図である。
【図7】図3の発射ハンドルを前枠に装着する状態を概念的に示す斜視図である。
【図8】図7の内部構造を示す側面断面図である。
【図9】(a),(b)は図8に続いてコネクタの接続過程を示す側面断面図である。
【図10】(a),(b)は支持部材の作用を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ぱちんこ機(遊技機)
3 内枠(取付部、機枠)
5 遊技盤(遊技機用電装機器)
5a 遊技領域
6 前枠(取付部、機枠)
6a 取付凹部
8 発射ハンドル(遊技機用電装機器)
8a グリップ本体
8b キャップ
8c 回動レバー
10 第一フローティング機構
14 球払出装置(遊技機用電装機器)
16 保持板(取付部、機枠)
23 発射ハンドル用中継基板
30 第二フローティング機構
100 雌型コネクタ(コネクタ)
100a 接続ピン(接続端子)
110 雄型コネクタ(コネクタ)
110a ピン孔(接続端子)
111 台座
112 差込部
120 支持部材(支持部)
120a 着座部
120b 周縁切欠部
130 本体部(取付部)
130a ボス
130b リブ壁(支承部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部に設けられ接続端子を有する一対のコネクタの電気配線用接続構造であって、
前記コネクタのいずれかは弾性体により形成される支持部に取付けられ、
前記支持部は前記コネクタの挿抜方向に弾性変形可能であり、
前記コネクタを結合する際に、前記接続端子が挿入方向へ所定量を超えて移動したときに前記支持部が弾性変形して該接続端子の過度の移動量を吸収し、
前記コネクタが結合状態で抜去方向へ所定量移動したとき、前記支持部が弾性変形してその移動を吸収するようにしたことを特徴とする電気配線用接続構造。
【請求項2】
前記支持部は所定の厚みを有する板状部を有し、該板状部に前記コネクタを取付けたことを特徴とする請求項1記載の電気配線用接続構造。
【請求項3】
前記コネクタは前記支持部に対してコネクタの挿抜方向に交差する方向に移動可能に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の電気配線用接続構造。
【請求項4】
前記支持部は前記取付部と別体に形成され、該取付部に設けられる支承部に前記支持部の周縁部が支持されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気配線用接続構造。
【請求項5】
前記支持部は前記取付部に対してコネクタの挿抜方向に交差する方向に移動可能に設けられることを特徴とする請求項4記載の電気配線用接続構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の電気配線用接続構造を備え、ぱちんこ機等の遊技機に装着されてその遊技機での遊技の実行に関与するとともに、
前記取付部が前記遊技機に装着するための本体部を構成することを特徴とする遊技機用電装機器。
【請求項7】
請求項6に記載の遊技機用電装機器が前記本体部を介して機枠に装着されていることを特徴とする遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−136927(P2010−136927A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317088(P2008−317088)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(591150270)日本ぱちんこ部品株式会社 (293)
【Fターム(参考)】