説明

電気錠

【課題】電動アクチュエータの駆動を切り替えるスイッチ内の端子が劣化し、または、水漏れにより端子間の短絡が生じても、電動アクチュエータを制御する制御回路に動作不良が生じ、または制御回路が故障することを防止する。
【解決手段】スイッチ11または12の切り替わりに基づき供給される入力信号Siの電圧レベルの漸増・漸減を利用し、駆動制御信号出力部57から出力される制御信号Sdのレベルが切り替わるタイミングと、停止制御信号出力部58から出力される制御信号Ssのレベルが切り替わるタイミングとをずらし、例えば停止制御部54が動作状態から非動作状態に切り替わってから所定時間経過後に、駆動制御部53が非動作状態から動作状態に切り替わるように制御する。これにより、従来からスイッチ11、12として用いていたC接点型スイッチのノーマルクローズ端子を使用する必要がなり、端子の擦れ合いや端子短絡の影響を除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータによりデッドボルトを移動させて施解錠を行う電気錠に関する。
【背景技術】
【0002】
電気錠は、電動アクチュエータ、例えばモータによりデッドボルトを解錠位置から施錠位置へ、または施錠位置から解錠位置へ移動させることにより施解錠を行う。例えば電気錠が扉に取り付けられている場合、デッドボルトが解錠位置にあるときには扉を開けることが可能になり、デッドボルトが施錠位置にあるときには扉を開けることができなくなる。
【0003】
電気錠において、デッドボルトを解錠位置から施錠位置に移動させるときには、例えばモータを正転させ、一方、デッドボルトを施錠位置から解錠位置に移動させるときにはモータを逆転させる。この場合、デッドボルトが解錠位置にある間に、モータを駆動するための駆動電圧が印加されたときには、モータを正転させ、一方、デッドボルトが施錠位置にある間に、モータを駆動するための駆動電圧が印加されたときには、モータを逆転させる。このため、電気錠は、デッドボルトが解錠位置にあるか施錠位置にあるかに応じてモータの回転方向を切り替える手段を備えている。
【0004】
ある種の電気錠は、モータの回転方向を切り替える手段として、少なくとも2つのスイッチを備えている。これら2つのスイッチは、電気錠のケーシング内において、上下に互いに向かい合い、かつ、短い距離を置いて互いに離間して配置されている。ここで、これら2つのスイッチのうち、上側に配置されたスイッチを「上側スイッチ」といい、下側に配置されたスイッチを「下側スイッチ」という。
【0005】
さらに、この種の電気錠は、上側スイッチと下側スイッチとの間を上下方向に移動し、上側スイッチおよび下側スイッチを選択的に押下するスイッチ押下部材を備えている。スイッチ押下部材は、例えば、デッドボルトが解錠位置から施錠位置へ移動するときに下方向に移動し、下側スイッチを押下する。一方、デッドボルトが施錠位置から解錠位置へ移動するときに上方向に移動し、上側スイッチを押下する。このようなスイッチ押下部材の移動は、モータの回転動力を、歯車およびカム等を備えた動力伝達機構を介して当該スイッチ押下部材に伝達することにより実現されている。
【0006】
さらに、このような電気錠は、上側スイッチおよび下側スイッチの選択的な押下に応じてモータの回転方向を切替制御するモータ制御回路を備えている。そして、このモータ制御回路は施錠制御回路と解錠制御回路とを有している。
【0007】
施錠制御回路は駆動制御部と停止制御部とを備えている。駆動制御部は、自身が動作状態の間に、モータを駆動するための駆動電圧が印加されたとき、モータを正転させる。停止制御部は、自身が動作状態となったときに、モータの正転を停止させる。そして、施錠制御回路は、上側スイッチが非押下状態から押下状態に切り替わったときに、駆動制御部を動作状態にすると共に、停止制御部を非動作状態にし、一方、上側スイッチが押下状態から非押下状態に切り替わったときに、停止制御部を動作状態にすると共に、駆動制御部を非動作状態にする。
【0008】
一方、解錠制御回路も駆動制御部および停止制御部を備えている。駆動制御部は、自身が動作状態の間に、モータを駆動するための駆動電圧が印加されたとき、モータを逆転させる。停止制御部は、自身が動作状態となったときに、モータの逆転を停止させる。そして、解錠制御回路は、下側スイッチが非押下状態から押下状態に切り替わったときに、駆動制御部を動作状態にすると共に、停止制御部を非動作状態にし、一方、下側スイッチが押下状態から非押下状態に切り替わったときに、停止制御部を動作状態にすると共に、駆動制御部を非動作状態にする。
【0009】
このような電気錠は次のように動作する。すなわち、デッドボルトが解錠位置にあり、スイッチ押下部材が上方向に位置し、上側スイッチが押下状態である間、施錠制御回路において、駆動制御部は動作状態であり、停止制御部は非動作状態である。この間、モータを駆動するための駆動電圧が印加されると、施錠制御回路の駆動制御部がモータを正転させる。これにより、デッドボルトが解錠位置から施錠位置に移動する。
【0010】
デッドボルトが施錠位置に到達すると、スイッチ押下部材が下方向に移動し、まず、上側スイッチが押下状態から非押下状態に切り替わる。これに応じ、施錠制御回路において、駆動制御部が動作状態から非動作状態に切り替わり、続いて停止制御部が非動作状態から動作状態に切り替わる。そして、動作状態に切り替わった停止制御部がモータの正転を停止させる。このとき、デッドボルトが施錠位置に到達したことが他の手段により検出され、この検出結果に従って、モータを駆動するための駆動電圧の印加が停止する。さらに、スイッチ押下部材の下方向への移動により、下側スイッチが非押下状態から押下状態に切り替わる。
【0011】
下側スイッチが非押下状態から押下状態に切り替わると、これに応じ、解錠制御回路において、停止制御部が動作状態から非動作状態に切り替わり、続いて駆動制御部が非動作状態から動作状態に切り替わる。駆動制御部が動作状態である間、モータを駆動するための駆動電圧が印加されると、解錠制御回路の駆動制御部がモータを逆転させる。これにより、デッドボルトが施錠位置から解錠位置に移動する。
【0012】
デッドボルトが解錠位置に到達すると、スイッチ押下部材が上方向に移動し、まず、下側スイッチが押下状態から非押下状態に切り替わる。これに応じ、解錠制御回路において、駆動制御部が動作状態から非動作状態に切り替わり、続いて停止制御部が非動作状態から動作状態に切り替わる。そして、動作状態となった停止制御部がモータの逆転を停止させる。このとき、デッドボルトが解錠位置に到達したことが他の手段により検出され、この検出結果に従ってモータを駆動するための駆動電圧の印加が停止する。さらに、スイッチ押下部材の上方向への移動により、上側スイッチが非押下状態から押下状態に切り替わる。
【0013】
上側スイッチが非押下状態から押下状態に切り替わると、これに応じ、施錠制御回路において、停止制御部が動作状態から非動作状態に切り替わり、続いて駆動制御部が非動作状態から動作状態に切り替わる。
【0014】
このような電気錠についてさらに詳しく説明すると、上側スイッチおよび下側スイッチにはそれぞれC接点型スイッチが用いられている。C接点型スイッチは、コモン端子、ノーマルクローズ端子およびノーマルオープン端子を備えている。C接点型スイッチが非押下状態のときには、当該スイッチ内に設けられたバネ等の付勢部材によりコモン端子に付勢力が加えられ、これにより、コモン端子とノーマルクローズ端子とが互いに接触し、電気的に互いに接続されている。一方、C接点型スイッチが押下されると、コモン端子が付勢部材による付勢力に抗して移動し、コモン端子とノーマルオープン端子とが互いに接触し、電気的に互いに接続されるようになる。
【0015】
上側スイッチのコモン端子には入力信号が印加され、ノーマルクローズ端子は施錠制御回路の停止制御部に接続され、ノーマルオープン端子は施錠制御回路の駆動制御部に接続されている。これにより、上側スイッチが非押下状態のときには、コモン端子とノーマルクローズ端子とが接触し、入力信号が施錠制御回路の停止制御部に供給され、当該停止制御部が動作状態となる。一方、上側スイッチが押下状態のときには、コモン端子とノーマルオープン端子とが接触し、入力信号が施錠制御回路の駆動制御部に供給され、当該駆動制御部が動作状態となる。
【0016】
下側スイッチについても同様である。すなわち、下側スイッチのコモン端子には入力信号が印加され、ノーマルクローズ端子は解錠制御回路の停止制御部に接続され、ノーマルオープン端子は解錠制御回路の駆動制御部に接続されている。これにより、下側スイッチが非押下状態のときには、コモン端子とノーマルクローズ端子とが接触し、入力信号が解錠制御回路の停止制御部に供給され、当該停止制御部が動作状態となる。一方、下側スイッチが押下状態のときには、コモン端子とノーマルオープン端子とが接触し、入力信号が解錠制御回路の駆動制御部に供給され、当該駆動制御部が動作状態となる。
【0017】
ここで、上側スイッチが非押下状態から押下状態に切り替わる動作に着目すると、上側スイッチが非押下状態から押下状態に切り替わるとき、上側スイッチにおいて、コモン端子が、ノーマルクローズ端子に接触した状態から、まずノーマルクローズ端子から離れ、次にノーマルオープン端子に向けて所定距離移動し、次にノーマルオープン端子に接触する。このため、コモン端子がノーマルクローズ端子に接触した状態からノーマルオープン端子に接触した状態になるまで、短い時間ではあるもののある程度の時間がかかる。この結果、上側スイッチが非押下状態から押下状態に切り替わるときには、施錠制御回路において、まず停止制御部が動作状態から非動作状態に切り替わり、ある程度の時間が経過した後、駆動制御部が非動作状態から動作状態に切り替わる。すなわち、コモン端子の移動にかかる時間によって、停止制御部の動作状態から非動作状態への切替と、駆動制御部の非動作状態から動作状態への切替との間にタイムラグが生じる。このタイムラグは、停止制御部と駆動制御部とが同時に動作状態となることを防止する効果があるため、当該電気錠において積極的に利用されている。また、上側スイッチが押下状態から非押下状態に切り替わる場合、下側スイッチが非押下状態から押下状態に切り替わる場合、および下側スイッチが押下状態から非押下状態に切り替わる場合にも同様なタイムラグが生じ、これらのタイムラグにより停止制御部と駆動制御部とが同時に動作状態となることが防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上述した電気錠において次のようないくつかの問題がある。まず、上側スイッチが非押下状態であり、コモン端子とノーマルクローズ端子とが接触している間に、上側スイッチに衝撃や振動が加わり、このため、コモン端子とノーマルクローズ端子とが接触している部分が擦れ合い、コモン端子またはノーマルクローズ端子の接触面が荒れる場合がある。すなわち、コモン端子とノーマルクローズ端子との接触は、上側スイッチ内に設けられた付勢部材の付勢力により維持されているため、衝撃や振動が加わると、両端子が擦れ合い、コモン端子またはノーマルクローズ端子の接触面の摩耗が進行する場合がある。このように、コモン端子またはノーマルクローズ端子の接触面が荒れると、コモン端子とノーマルクローズ端子とが接触している状態における両端子間の抵抗値が高くなる。この結果、コモン端子に入力信号が印加されたときに、コモン端子からノーマルクローズ端子を経て停止制御部に供給される電流が減少し、停止制御部において動作不良が発生するおそれがあるという問題がある。
【0019】
これと同様な現象は、下側スイッチにおいても起こり得る。特に、下側スイッチについては、スイッチ押下部材が下方向に移動する際に、モータからの動力が伝達されるよりも先に、スイッチ押下部材が自重により下方向に移動してしまい、短時間ではあるものの、下側スイッチの上に乗っかることがある。この場合、下側スイッチの重さだけでは、下側スイッチを押下することはできないので、モータからの動力がスイッチ押下部材に伝達されるまでの間、下側スイッチは非押下状態を維持する。このとき、例えば電気錠のモータの駆動やデッドボルトの移動により生じた振動がスイッチ押下部材を介して下側スイッチに伝わると、この時点では、下側スイッチにおいてコモン端子とノーマルクローブ端子とが互いに接触した状態にあるので、この振動によってコモン端子とノーマルクローズ端子とが擦れ合う。電気錠の使用が長期間続くと、コモン端子とノーマルクローズ端子との擦れ合いが断続的に膨大な回数繰り返されることになる。この結果、両端子間の抵抗値が増加するおそれがある。
【0020】
次に、上述した電気錠には、水漏れ等により電気錠内に水が入ったときに、上側スイッチにおいて、コモン端子がノーマルクローズ端子およびノーマルオープン端子の双方と水を介して同時に電気的に接続され、このため、施錠制御回路において停止制御部と駆動制御部とが同時に動作状態となり、回路の焼損等の故障が生じるおそれがあるという問題がある。
【0021】
上述したような問題を解決するために、例えば上側スイッチ、下側スイッチの変更や、施錠制御回路や解錠制御回路の変更等、電気錠においてモータの回転制御に係る構成を変更することが考えられる。しかしながら、上述したように、施錠制御回路および解錠制御回路のそれぞれにおいて、駆動制御部と停止制御部とが同時に動作状態となることを防止するためのタイムラグを作り出す必要があり、この必要を充たす新たな構成を考え出すことは容易でない。また、電気錠の構成の大きな変更は電気錠の製造コストの上昇を招く。
【0022】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、電気錠の内外において生じる衝撃または振動のために、デッドボルトが解錠位置にあるか施錠位置にあるかに応じて電動アクチュエータの動作の切替制御を行うスイッチ内における端子が劣化し、このために、スイッチの切り替わりに基づいて電動アクチュエータを制御する制御回路に動作不良が発生するのを防止することができる電気錠を提供することにある。
【0023】
また、本発明の第2の課題は、水漏れ等のために、デッドボルトが解錠位置にあるか施錠位置にあるかに応じて電動アクチュエータの動作の切替制御を行うスイッチ内における各端子が水を介して電気的に接続され、このために、スイッチの切り替わりに基づいて電動アクチュエータを制御する制御回路が故障するのを防止することができる電気錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の第1の電気錠は、解錠位置と施錠位置との間を移動するデッドボルトと、前記デッドボルトを移動させる電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータの駆動および停止を制御する制御回路と、第1の状態と第2の状態との間で切り替わるスイッチと、前記電動アクチュエータの動力により、または前記デッドボルトの移動に伴い移動し、前記デッドボルトが解錠位置および施錠位置のうちの一方の位置に到達したときに前記スイッチの状態を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替え、前記デッドボルトが解錠位置および施錠位置のうちの他方の位置に到達したときに前記スイッチの状態を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えるスイッチ操作部材とを備え、前記制御回路は、前記スイッチが前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わったときに第1の制御信号の出力を停止し、所定時間経過後、第2の制御信号を出力し、一方、前記スイッチが前記第2の状態から前記第1の状態に切り替わったときには前記第2の制御信号の出力を停止し、所定時間経過後、前記第1の制御信号を出力する切替制御部と、前記第1の制御信号および前記第2の制御信号のうちの一方が入力されている間、前記電動アクチュエータを駆動可能な状態にする駆動制御部と、前記第1の制御信号および前記第2の制御信号のうちの他方が入力されたとき、前記電動アクチュエータを停止させる停止制御部とを備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明の第1の電気錠において、切替制御部は、スイッチが第1の状態から第2の状態に切り替わったときに第1の制御信号の出力を停止し、所定時間経過後、第2の制御信号を出力し、一方、スイッチが第2の状態から第1の状態に切り替わったときには第2の制御信号の出力を停止し、所定時間経過後、第1の制御信号を出力する。これにより、停止制御部と駆動制御部とが同時に動作状態となることを防止することができる。
【0026】
そして、本発明の第1の電気錠が備えているスイッチは、第1の状態と第2の状態との間で切り替わるスイッチである。このスイッチは、C接点型スイッチの例えばコモン端子とノーマルオープン端子のみを用いることで実現することができる。これにより、衝撃または振動によってC接点型スイッチのコモン端子とノーマルクローズ端子とが擦れ合って両端子間の抵抗値が高くなっても、このことは電気錠の動作に何ら影響を与えない。したがって、衝撃または振動のためにスイッチ内における端子が劣化し、これに起因して制御回路において動作不良が発生するのを防止することができる。
【0027】
また、C接点型スイッチのコモン端子とノーマルオープン端子のみを用いて電気錠における上記スイッチを実現した場合、水漏れ等により、C接点型スイッチにおいてコモン端子がノーマルクローズ端子およびノーマルオープン端子の双方に水を介して同時に電気的に接続されても、コモン端子とノーマルクローズ端子との水を介しての接続は、電気錠の動作に何ら影響を与えない。したがって、水漏れ等のために制御回路が故障するのを防止することができる。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の第2の電気錠は、上述した本発明の第1の電気錠において、前記制御回路は、前記スイッチが前記第1の状態であるときに第1のレベルを有する入力電圧を前記切替制御部に印加し、前記スイッチが前記第2の状態であるときには、前記第1のレベルよりも大きい第2のレベルを有する入力電圧を前記切替制御部に印加する入力電圧印加部を備え、前記切替制御部は、前記入力電圧が前記第1のレベルから前記第2のレベルに増加する間に第1の基準レベル以上となったときに前記第1の制御信号を停止し、前記入力電圧が前記第2のレベルから前記第1のレベルに減少する間に前記第1の基準レベル未満となったときに前記第1の制御信号を出力する第1の制御信号出力部と、前記入力電圧が前記第1のレベルから前記第2のレベルに増加する間に、前記第1の基準レベルよりも大きい第2の基準レベル以上となったときに前記第2の制御信号を出力し、前記入力電圧が前記第2のレベルから前記第1のレベルに減少する間に前記第2の基準レベル未満となったときに前記第2の制御信号を停止する第2の制御信号出力部とを備えていることを特徴とする。
【0029】
本発明の第2の電気錠によれば、切替制御部において、スイッチが第1の状態から第2の状態に切り替わったときに第1の制御信号の出力を停止し、所定時間経過後、第2の制御信号を出力し、一方、スイッチが第2の状態から第1の状態に切り替わったときには第2の制御信号の出力を停止し、所定時間経過後、第1の制御信号を出力するといった動作を、確実かつ容易に実現することができ、これにより、停止制御部と駆動制御部とが同時に動作状態となることを確実かつ容易に防止することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、たとえ、電気錠の内外において生じる衝撃または振動のために、デッドボルトが解錠位置にあるか施錠位置にあるかに応じて電動アクチュエータの動作の切替制御を行うスイッチ内における端子が劣化したとしても、スイッチの切り替わりに基づいて電動アクチュエータを制御する制御回路に動作不良が発生するのを防止することができる。
【0031】
また、本発明によれば、たとえ、水漏れ等のために、デッドボルトが解錠位置にあるか施錠位置にあるかに応じて電動アクチュエータの動作の切替制御を行うスイッチ内における各端子が水を介して電気的に接続されたとしても、スイッチの切り替わりに基づいて電動アクチュエータを制御する制御回路が故障するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態による電気錠の内部を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態による電気錠に設けられたスイッチの状態がスイッチ押下部材により切り替えられる様子を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態による電気錠に設けられたスイッチを示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態による電気錠に設けられたモータ制御回路を示す回路図である。
【図5】本発明の実施形態による電気錠に設けられたモータ制御回路における施錠制御回路の動作等を示すタイミングチャートである。
【図6】比較例による電気錠に設けられたモータ制御回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態による電気錠の内部構造を示している。図2は、当該電気錠に設けられたスイッチの状態がスイッチ押下部材により切り替えられる様子を示している。図1において、本発明の実施形態による電気錠1は、例えば建物の部屋の扉に取り付けられ、施錠時には扉を開扉不能にし、解錠時には扉を開扉可能にする。
【0034】
電気錠1のケーシング2内にはデッドボルト3が設けられている。デッドボルト3は、その先端部がケーシング2に形成された孔4を介してケーシング2外へ進出し、またはケーシング2内へ後退することができるように、ケーシング2内に移動可能に支持されている。
【0035】
また、ケーシング2内には、デッドボルト3を移動させる電動アクチュエータとしての直流モータ5が設けられている。また、ケーシング2内には電気回路基板6が設けられ、電気回路基板6には、直流モータ5の回転を制御するためのモータ制御回路41(図4参照)が形成されている。モータ制御回路41にはケーブル7が接続され、ケーブル7はケーシング2に形成された小孔8を介してケーシング2の外部へ伸び、扉の近傍や部屋内に設けられた操作装置、電源装置等に接続されている。
【0036】
また、ケーシング2内には、直流モータ5の回転動力を直線状の動力に変換してデッドボルト3に伝達する動力伝達機構9が設けられている。デッドボルト3は、直流モータ5の駆動により、施錠位置Aから解錠位置Bに、または解錠位置Bから施錠位置Aに左右方向(矢示C、D方向)に移動する。
【0037】
また、電気錠1のケーシング2内には、複数のスイッチ11、12、13、14が設けられている。スイッチ11は、後述するレバー25(図2、図3参照)が上向きとなるように配置されている。また、スイッチ12、13は、それぞれのレバー25が下向きとなるように、左右方向に並べて配置されている。また、スイッチ11は、スイッチ12、13と上下方向において、所定の間隔を置いて向かい合うように配置されている。一方、スイッチ14は、スイッチ11、12、13が配置された場所とは別の場所に配置されている。
【0038】
スイッチ11、12、13、14は、電気回路基板6に形成されたモータ制御回路41にケーブルを介して接続されている。スイッチ11は、デッドボルト3を解錠位置Bから施錠位置Aに移動させるために直流モータ5の正転および正転停止を切り替えるためのスイッチである。スイッチ12は、デッドボルト3を施錠位置Aから解錠位置Bに移動させるために直流モータ5の逆転および逆転停止を切り替えるためのスイッチである。スイッチ13は、デッドボルト3が解錠位置Bに到達したことを確認するためのスイッチである。スイッチ14は、デッドボルト3が施錠位置Aに到達したことを確認するためのスイッチである。以下、説明を分かりやすくするために、スイッチ11を「下側スイッチ11」、スイッチ12を「上側スイッチ12」という。
【0039】
また、ケーシング2内には、スイッチ操作部材としてのスイッチ押下部材16が設けられている。スイッチ押下部材16は、下側スイッチ11および上側スイッチ12を選択的に押下する部材である。また、スイッチ押下部材16は、スイッチ13を押下する機能を兼ねている。スイッチ押下部材16は、全体的に見てL字状に形成され、上下方向に伸長する操作部16Aと、左右方向に伸長する押下部16Bとを備えている。押下部16Bは、操作部16Aの上端側に結合され、または操作部16Aの上端部を曲げることにより形成されている。スイッチ押下部材16は、操作部16Aが後述するカム17に接触し、かつ押下部16Bが下側スイッチ11と上側スイッチ12(およびスイッチ13)との間に位置するように配置されている。また、スイッチ押下部材16は、上下方向(矢示E、F方向)に移動可能となるようにケーシング2内に支持されている。
【0040】
ここで、直流モータ5の回転動力をデッドボルト3に伝達する動力伝達機構9にはカム17が設けられ、直流モータ5の回転動力は、デットボルト3に伝達されると共に、カム17を介してスイッチ押下部材16の操作部16Aにも伝達される。これにより、スイッチ押下部材16は直流モータ5の回転により上下方向に移動する。すなわち、直流モータ5の回転によりカム17が例えば時計回りに回動すると、図2(1)に示すように、スイッチ押下部材16が下方向に移動し、押下部16Bが下側スイッチ11を押下する。一方、直流モータ5の回転によりカム17が例えば反時計回りに回動すると、図2(2)に示すように、スイッチ押下部材16が上方向に移動し、押下部16Bが上側スイッチ12およびスイッチ13の双方を押下する。
【0041】
また、ケーシング2内には、図1に示すように、デッドボルト3が施錠位置Aに位置するときにスイッチ14を押下し、デッドボルト3が解錠位置Bに位置するときにスイッチ14から離れる押下部材18が設けられている。
【0042】
図3は下側スイッチ11を示している。後述するように、下側スイッチ11は、モータ制御回路41における施錠制御回路42の切替制御部52へ入力する入力信号SiのレベルをレベルLv1とレベルLv2との間で切り替える機能を実現することができれば足りるので、例えばA接点型スイッチまたはB接点型スイッチにより実現することができる。さらに、下側スイッチ11は、C接点型スイッチのコモン端子とノーマルオープン端子のみを用いることによっても実現することができる。後述するように、現在は図6に示すようなモータ制御回路81を有する電気錠が既に普及しており、この電気錠ではC接点型スイッチが採用されている。したがって、本実施形態における電気錠1においもC接点型スイッチを採用すれば、現在において既に普及している電気錠に本発明を適用して本実施形態に係る電気錠1を低コストで実現することができる。そこで、電気錠1においては、下側スイッチ11としてC接点型スイッチが採用されている。
【0043】
図3に示すように、下側スイッチ11のケーシング20内には、コモン端子21、ノーマルクローズ端子22、ノーマルオープン端子23および付勢部材24が設けられている。付勢部材24は、コモン端子21に対し、当該コモン端子21がノーマルクローズ端子22に接触する方向に付勢力を与えている。また、下側スイッチ11のケーシング20の一側にはレバー25が設けられている。レバー25は、細長い棒状の部材であり、その基端側がケーシング20に回動可能に支持され、先端側が自由端となっている。また、ケーシング20には、レバー25の移動をコモン端子21に伝達する従動部材27が設けられている。また、下側スイッチ11のケーシング20の他側には外部端子28、29、30が設けられている。外部端子28にはコモン端子21が接続され、外部端子29にはノーマルクローズ端子22が接続され、外部端子30にはノーマルオープン端子23が接続されている。
【0044】
下側スイッチ11のレバー25が押下されていないときには、レバー25の先端側がケーシング20から離れる方向に移動しており、この結果、従動部材27によりコモン端子21は押下されておらず、コモン端子21は付勢部材24の付勢力によりノーマルクローズ端子22と接触している。この状態が非押下状態である。一方、下側スイッチ11のレバー25が押下されると、レバー25の先端側がケーシング20に接近する方向に移動し、これに伴い、従動部材27が移動してコモン端子21を押し、これによりコモン端子21が付勢部材24の付勢力に抗して移動し、ノーマルクローズ端子22から離れ、ノーマルオープン端子23と接触する。この状態が押下状態である。上側スイッチ12も下側スイッチ11と同じ構成を有する。また、スイッチ13、14も下側スイッチ11と同じ構成としてもよい。
【0045】
図4は、電気回路基板6に形成されたモータ制御回路41を示している。図4において、モータ制御回路41は、施錠制御回路42および解錠制御回路43を備えている。施錠制御回路42および解錠制御回路43には、図4に示すように、直流モータ5が接続されている。また、施錠制御回路42には下側スイッチ11が接続されている。すなわち、施錠制御回路42において、下側スイッチ11のコモン端子21が入力制御部51の抵抗55と抵抗56との間に接続され、ノーマルオープン端子23が端子45に接続され、ノーマルクローズ端子22には何も接続されていない。また、解錠制御回路43には上側スイッチ12が接続されている。すなわち、解錠制御回路43において、上側スイッチ12のコモン端子21が入力制御部51の抵抗55と抵抗56との間に接続され、ノーマルオープン端子23が端子45に接続され、ノーマルクローズ端子22には何も接続されていない。
【0046】
施錠制御回路42は、下側スイッチ11の切り替わりに基づいて、デッドボルト3を解錠位置Bから施錠位置Aに移動させるために直流モータ5の正転および正転停止を制御する回路である。施錠制御回路42は、入力制御部51、切替制御部52、駆動制御部53および停止制御部54を備えている。
【0047】
入力制御部51は、端子44、45間に印加される制御電圧を抵抗55および抵抗56により分圧し、入力信号Siを生成する回路部である。入力制御部51は、下側スイッチ11が押下状態のときには、入力信号Siの電圧レベルをLv1とし、下側スイッチ11が非押下状態のときには、入力信号Siの電圧レベルをLv2とする。入力信号Siの電圧レベルLv1は例えば0ボルトに設定されており、電圧レベルLv2は例えばプラスの所定の電圧値に設定されている。
【0048】
切替制御部52は、入力信号Siに基づいて、駆動制御部53の動作状態・非動作状態を切り替えると共に、停止制御部54の動作状態・非動作状態を切り替える回路部である。切替制御部52は、駆動制御信号出力部57、停止制御信号出力部58およびインバータ59を備えている。
【0049】
駆動制御信号出力部57は、入力信号Siに基づいて、駆動制御部53の動作状態・非動作状態を切り替える回路部である。駆動制御信号出力部57は、入力信号Siの電圧レベルが、Lv1からLv2に増加する間に基準レベルRef2以上となったときに、駆動制御信号を出力する。また、駆動制御信号出力部57は、入力信号Siの電圧レベルが、Lv2からLv1に減少する間に基準レベルRef2未満となったときに、駆動制御信号の出力を停止する。具体的には、駆動制御信号出力部57は、入力信号Siの電圧レベルが、Lv1からLv2に増加する間に基準レベルRef2以上となったときに、駆動制御信号Sdの電圧レベルをローレベルからハイレベルに切り替え、入力信号Siの電圧レベルが、Lv2からLv1に減少する間に基準レベルRef2未満となったときに、駆動制御信号Sdの電圧レベルをハイレベルからローレベルに切り替える。
【0050】
停止制御信号出力部58は、インバータ59と協働し、入力信号Siに基づいて、停止制御部54の動作状態・非動作状態を切り替える回路部である。停止制御信号出力部58およびインバータ59は、入力信号Siの電圧レベルが、Lv1からLv2に増加する間に基準レベルRef1以上となったときに、停止制御信号の出力を停止する。また、停止制御信号出力部58およびインバータ59は、入力信号Siの電圧レベルが、Lv2からLv1に減少する間に基準レベルRef1未満となったときに、停止制御信号を出力する。具体的には、停止制御信号出力部58は、入力信号Siの電圧レベルが、Lv1からLv2に増加する間に基準レベルRef1以上となったときに、出力信号の電圧レベルをローレベルからハイレベルに切り替える。そして、インバータ59はこの信号を反転させた信号を停止制御信号Ssとして出力するので、このとき、インバータ59から出力される停止制御信号Ssの電圧レベルは、ハイレベルからローレベルに切り替わる。一方、停止制御信号出力部58は、入力信号Siの電圧レベルが、Lv2からLv1に減少する間に基準レベルRef1未満となったときに、出力信号の電圧レベルをハイレベルからローレベルに切り替える。この結果、このとき、インバータ59から出力される停止制御信号Ssの電圧レベルは、ローレベルからハイレベルに切り替わる。
【0051】
ここで、基準レベルRef1は、電圧レベルLv1よりも大きく電圧レベルLv2よりも小さい所定の電圧に設定されている。また、基準レベルRef2は基準レベルRef1より大きく電圧レベルLv2よりも小さい所定の電圧値に設定されている。
【0052】
駆動制御信号出力部57は、例えばコンパレータ(比較器)により構成することができる。この場合、コンパレータの一方の入力端子に入力信号Siを入力し、他方の入力端子に基準レベルRef2を有する基準信号を入力し、コンパレータの出力端子から出力される信号を駆動制御信号Sdとして駆動制御部53に供給する。また、停止制御信号出力部58もコンパレータ(比較器)により構成することができる。この場合、コンパレータの一方の入力端子に入力信号Siを入力し、他方の入力端子に基準レベルRef1を有する基準信号を入力し、コンパレータの出力端子から出力される信号をインバータ59に供給する。
【0053】
駆動制御部53は直流モータ5を正転駆動可能な状態にする回路部である。すなわち、駆動制御部54は、自身が動作状態である間に、直流モータ5を駆動させるための駆動電圧が端子46,47間に印加されたとき、図4中の矢示G方向に電流を流し、直流モータ5を正転させる。駆動制御部53は、駆動制御信号出力部57から出力される駆動制御信号Sdの電圧レベルがローレベルからハイレベルに切り替わったとき(駆動制御信号が出力されたとき)、動作状態となり、駆動制御信号出力部57から出力される駆動制御信号Sdの電圧レベルがハイレベルからローレベルに切り替わったとき(駆動制御信号の出力が停止されたとき)、非動作状態となる。
【0054】
停止制御部54は、自身が動作状態となったときに、直流モータ5の正転を停止させる回路である。具体的には、停止制御部54は、直流モータ5の停止時に生じる逆起電力による電流を矢示H方向に流す。停止制御部54は、インバータ59から出力される停止制御信号Ssの電圧レベルがローレベルからハイレベルに切り替わったとき(停止制御信号が出力されたとき)、動作状態となり、インバータ59から出力される停止制御信号Ssの電圧レベルがハイレベルからローレベルに切り替わったとき(停止制御信号の出力が停止されたとき)、非動作状態となる。
【0055】
一方、解錠制御回路43は、上側スイッチ12の切り替わりに基づいて、デッドボルト3を施錠位置Aから解錠位置Bに移動させるために直流モータ5の逆転および逆転停止を制御する回路である。解錠制御回路43は、図4に示すように、施錠制御回路42と同様の構成を有している。もっとも、施錠制御回路42が直流モータ5の正転および正転停止を制御するのに対し、解錠制御回路43は直流モータ5の逆転および逆転停止を制御するので、解錠制御回路43において直流モータ5に印加される駆動電圧の向きは、施錠制御回路42において直流モータ5に印加される駆動電圧の向きと逆であり、それに伴い、電流の方向も逆である(図4中の矢示J、K参照)。
【0056】
図5は施錠制御回路42の動作を示している。図5において、デッドボルト3が施錠位置Aにあり、スイッチ押下部材16が下方向に移動しており、スイッチ押下部材16の押下部16Bにより下側スイッチ11のレバー25が押下され、下側スイッチ11においてコモン端子21とノーマルオープン端子23とが接触し、両端子間が電気的に接続され、この結果、下側スイッチ11が押下状態である間(例えば図5中の時点t0〜時点t1)、入力制御部51から出力される入力信号Siの電圧レベルはLv1である。
【0057】
入力信号Siの電圧レベルがLv1であり、すなわち基準レベルRef1未満である間、停止制御信号出力部58から出力される信号の電圧レベルはローレベルであり、インバータ59がこの信号を反転させるので、インバータ59から停止制御部54に供給される停止制御信号Ssの電圧レベルはハイレベルである。これにより、停止制御部54は動作状態となっている。また、入力信号Siの電圧レベルがLv1であり、すなわち基準レベルRef2未満である間、駆動制御信号出力部57から駆動制御部53に供給される駆動制御信号Sdの電圧レベルはローレベルである。これにより、駆動制御部53が非動作状態となっている。
【0058】
施錠制御回路42において、停止制御部54が動作状態であり、駆動制御部53が非動作状態である間は、解錠制御回路43において、駆動制御部53が動作状態であり、停止制御部54が非動作状態である。したがって、この間に、電気錠1の利用者が電気錠1を解錠動作させる操作を行い、これに応じ、直流モータ5を駆動させるための駆動電圧が端子46,47間に印加されると、解錠制御回路43の駆動制御部53により直流モータ5が逆転駆動され、デッドボルト3が施錠位置Aから解錠位置Bに移動する。
【0059】
デッドボルト3が解錠位置Bに到達し、スイッチ押下部材16が上方向に移動し、スイッチ押下部材16の押下部16Bが下側スイッチ11のレバー25から離れ、下側スイッチ11においてコモン端子21とノーマルオープン端子23とが付勢部材24の付勢力により切り離され、両端子間が電気的に遮断され、この結果、下側スイッチ11が非押下状態となると(時点t2)、入力制御部51から出力される入力信号Siの電圧レベルがLv1からLv2に向かって増加し始める。このとき、モータ制御回路41内に存在する浮遊容量その他の電気的な要因により、入力信号Siの電圧レベルがLv1から増加を開始してLv2に到達するまでに、短い時間ではあるもののある程度の時間(時点t2〜時点t5)がかかる。すなわち、入力信号Siの電圧レベルはLv1からLv2に向かって漸次増加し、入力信号Siの電圧レベルがLv1からLv2に向かって増加する軌跡は、傾斜した線を描く。
【0060】
入力信号Siの電圧レベルがLv1からLv2に向かって増加する間、まず、入力信号Siの電圧レベルが基準レベルRef1以上となる(時点t3)。このとき、停止制御信号出力部58から出力される信号の電圧レベルがローレベルからハイレベルに切り替わり、インバータ59がこの信号を反転させるので、インバータ59から停止制御部54に供給される停止制御信号Ssの電圧レベルがハイレベルからローレベルに切り替わる。これにより、停止制御部54が動作状態から非動作状態に切り替わる。
【0061】
次に、入力信号Siの電圧レベルが基準レベルRef1以上となってからしばらくすると、入力信号Siの電圧レベルが基準レベルRef2以上となる(時点t4)。このとき、駆動制御信号出力部57から駆動制御部53に供給される駆動制御信号Sdの電圧レベルがローレベルからハイレベルに切り替わる。これにより、駆動制御部53が非動作状態から動作状態に切り替わる。
【0062】
その後、入力信号Siの電圧レベルがLv2に到達する(時点t5)。このとき、解錠制御回路43においては、スイッチ押下部材16の押下部16Bにより上側スイッチ12が非押下状態から押下状態に切り替えられ、停止制御部54が動作状態となり、駆動制御部53が非動作状態となる。したがって、解錠制御回路43の停止制御部54により、直流モータ5の逆転が停止する。また、このとき、スイッチ押下部材16の押下部16Bによりスイッチ13が押下され、これに応じて、直流モータ5を駆動するための駆動電圧の印加が停止する。そして、施錠制御回路42においては、停止制御部54が動作状態から非動作状態に切り替わり、そして、駆動制御部53が非動作状態から動作状態に切り替わったことにより、直流モータ5を正転駆動することが可能な状態となる。
【0063】
この状態が継続している間(例えば時点t6〜7t)、電気錠1の利用者が電気錠1を施錠動作させる操作を行い、これに応じ、直流モータ5を駆動させるための駆動電圧が端子46,47間に印加されると、施錠制御回路42の駆動制御部53により直流モータ5が正転駆動され、デッドボルト3が解錠位置Bから施錠位置Aに移動する。
【0064】
デッドボルト3が施錠位置Aに到達し、スイッチ押下部材16が下方向に移動し、スイッチ押下部材16の押下部16Bが下側スイッチ11のレバー25を押下し、下側スイッチ11においてコモン端子21が付勢部材24の付勢力に抗して移動してノーマルオープン端子23と接触し、両端子間が電気的に接続され、この結果、下側スイッチ11が押下状態となると(時点t8)、入力制御部51から出力される入力信号Siの電圧レベルがLv2からLv1に向かって減少し始める。このとき、モータ制御回路41内に存在する浮遊容量その他の電気的な要因により、入力信号Siの電圧レベルがLv2から減少を開始してLv1に到達するまでに、短い時間ではあるもののある程度の時間(時点t8〜時点t11)がかかる。すなわち、入力信号Siの電圧レベルはLv2からLv1に向かって漸次減少し、入力信号Siの電圧レベルがLv2からLv1に向かって減少する軌跡は、傾斜した線を描く。
【0065】
入力信号Siの電圧レベルがLv2からLv1に向かって減少する間、まず、入力信号Siの電圧レベルが基準レベルRef2未満となる(時点t9)。このとき、駆動制御信号出力部57から駆動制御部53に供給される駆動制御信号Sdの電圧レベルがハイレベルからローレベルに切り替わる。これにより、駆動制御部53が動作状態から非動作状態に切り替わる。
【0066】
次に、入力信号Siの電圧レベルが基準レベルRef2未満となってからしばらくすると、入力信号Siの電圧レベルが基準レベルRef1未満となる(時点t10)。このとき、停止制御信号出力部58から出力される信号の電圧レベルがハイレベルからローレベルに切り替わり、インバータ59がこの信号を反転させるので、インバータ59から停止制御部54に供給される停止制御信号Ssの電圧レベルがローレベルからハイレベルに切り替わる。これにより、停止制御部54が非動作状態から動作状態に切り替わる。
【0067】
その後、入力信号Siの電圧レベルがLv1に到達する(時点t11)。このように、施錠制御回路42において、駆動制御部53が動作状態から非動作状態に切り替わり、そして、停止制御部54が非動作状態から動作状態に切り替わると、施錠制御回路42の停止制御部54により直流モータの正転が停止する。また、このとき、解錠制御回路43においては、スイッチ押下部材16の押下部16Bにより上側スイッチ12が押下状態から非押下状態に切り替えられ、停止制御部54が非動作状態となり、駆動制御部53が動作状態となる。したがって、解錠制御回路43の駆動制御部53により、直流モータ5を逆転駆動することが可能な状態となる。
【0068】
なお、上側スイッチ12の押下状態・非押下状態に対応した解錠制御回路43の動作は、上述した下側スイッチ11の押下状態・非押下状態に対応した施錠制御回路42の動作と同様である。もっとも、下側スイッチ11が押下状態であるときには上側スイッチ12が非押下状態となるので、施錠制御回路42において停止制御部54が動作状態であり、駆動制御部53が非動作状態である間は、解錠制御回路43では、駆動制御部53が動作状態であり、停止制御部54が非動作状態である。また、下側スイッチ11が非押下状態であるときには上側スイッチ12が押下状態となるので、施錠制御回路42において駆動制御部53が動作状態であり、停止制御部54が非動作状態である間は、解錠制御回路43では、停止制御部54が動作状態であり、駆動制御部53が非動作状態である。
【0069】
以上説明した通り、本発明の実施形態による電気錠1によれば、下側スイッチ11が押下状態から非押下状態に切り替わると、施錠制御回路42において、まず停止制御部54が動作状態から非動作状態に切り替わり、次に駆動制御部53が非動作状態から動作状態に切り替わる。そして、停止制御部54の動作状態から非動作状態への切り替わりと、駆動制御部53の非動作状態から動作状態への切り替わりとの間にタイムラグがある。また、下側スイッチ11が非押下状態から押下状態に切り替わると、施錠制御回路42において、まず駆動制御部53が動作状態から非動作状態に切り替わり、次に停止制御部54が非動作状態から動作状態に切り替わる。そして、駆動制御部53の動作状態から非動作状態への切り替わりと、停止制御部53の非動作状態から動作状態への切り替わりとの間にタイムラグがある。これらの点は、上側スイッチ12が押下状態から非押下状態に切り替わったときの解錠制御回路43、および上側スイッチ12が非押下状態から押下状態に切り替わったときの解錠制御回路43においても同じである。
【0070】
このように、施錠制御回路42においても、解錠制御回路43においても、駆動制御部53と停止制御部54とが同時に動作状態になることがない。
【0071】
電気錠1によれば、このような動作を、入力信号Siにおける電圧レベルが漸次増加することを利用して、停止制御信号出力部58から出力される停止制御信号Ssの電圧レベルがハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングに対して、駆動制御信号出力部57から出力される駆動制御信号Sdの電圧レベルがローレベルからハイレベルに切り替わるタイミングを遅延させることにより実現し、また、入力信号Siにおける電圧レベルが漸次減少することを利用して、駆動制御信号出力部57から出力される駆動制御信号Sdの電圧レベルがハイレベルからローレベルに切り替わるタイミングに対して、停止制御信号出力部58から出力される停止制御信号Ssの電圧レベルがローレベルからハイレベルに切り替わるタイミングを遅延させることにより実現している。これにより、下側スイッチ11としてC接点型スイッチを採用した場合には、そのコモン端子21とノーマルオープン端子23のみを用いれば足り、ノーマルクローズ端子22を用いる必要がない。したがって、電気錠1の内外で生じる衝撃や振動により、コモン端子21とノーマルクローズ端子22とが擦れ合い、これに起因して施錠制御回路42の動作に動作不良が発生するのを防止することができる。上側スイッチ12についても同様に、解錠制御回路43に動作不良が発生するのを防止することができる。
【0072】
また、水漏れ等により、下側スイッチ11においてコモン端子21がノーマルクローズ端子22およびノーマルオープン端子23の双方と水を介して同時に電気的に接続されても、コモン端子21とノーマルクローズ端子22との水を介しての接続は、施錠制御回路42の動作に何ら影響を与えない。したがって、水漏れ等のために施錠制御回路42が故障するのを防止することができる。上側スイッチ12についても同様に、水漏れ等のために解錠制御回路43が故障するのを防止することができる。
【0073】
ここで、本発明の実施形態による電気錠1におけるモータ制御回路41と、図6に示す比較例としての電気錠におけるモータ制御回路81とを対比し、上述した本発明の実施形態による電気錠1の効果をさらに述べる。
【0074】
図6に示す比較例としての電気錠におけるモータ制御回路81は、施錠制御回路82と解錠制御回路83とを備えている。施錠制御回路82(または解錠制御回路83)において、下側スイッチ11(または上側スイッチ12)のコモン端子21は抵抗86と抵抗87との間に接続され、ノーマルクローズ端子22は停止制御部54に接続され、ノーマルオープン端子23は駆動制御部53に接続されている。これにより、下側スイッチ11のコモン端子21には、端子84、85間に印加される電圧を抵抗86、87により分圧した電圧を有する入力信号Siが入力される。
【0075】
下側スイッチ11(または上側スイッチ12)が非押下状態であり、コモン端子21がノーマルクローズ端子22と接続されている間は、入力信号Siが停止制御信号Stとして停止制御部54に供給され、これにより停止制御部54が動作状態となる。このとき、コモン端子21はノーマルオープン端子23とは接続されていないので、入力信号Siが駆動制御信号Seとして駆動制御部54に供給されず、駆動制御部53が非動作状態となる。
【0076】
一方、下側スイッチ11(または上側スイッチ12)が押下状態であり、コモン端子21がノーマルオープン端子23と接続されている間は、入力信号Siが駆動制御信号Seとして駆動制御部53に供給され、これにより駆動制御部53が動作状態となる。このとき、コモン端子21はノーマルクローズ端子22とは接続されていないので、入力信号Siが停止制御信号Stとして停止制御部54に供給されず、停止制御部54が非動作状態となる。
【0077】
下側スイッチ11(または上側スイッチ12)が押下状態から非押下状態へ、または非押下状態から押下状態へ切り替わるときには、コモン端子21がノーマルクローズ端子22とノーマルオープン端子23との間の空間を移動し、移動中の期間は、コモン端子21はノーマルクローズ端子22およびノーマルオープン端子23のいずれにも接触しない。このため、下側スイッチ11が押下状態と非押下状態との間で切り替わるときには、入力信号Siが駆動制御部53および停止制御部54のいずれにも供給されない期間がある。この期間が、駆動制御部53および停止制御部54のうちの一方の動作状態から非動作状態への切り替わりと、駆動制御部53および停止制御部54のうちの他方の非動作状態から動作状態への切り替わりとの間のタイムラグとなり、これにより、駆動制御部53と停止制御部54とが同時に動作状態となることが防止される。
【0078】
ところが、この比較例としての電気錠では、ノーマルクローズ端子23を用いて停止制御信号Stの停止制御部54への供給を行っている。このため、衝撃または振動により、コモン端子21とノーマルクローズ端子22とが擦れ合い、両端子が接触しているときの両端子間の抵抗値が増加し、この結果、停止制御信号Stの停止制御部54への供給が不十分または不安定となるおそれがある。また、水漏れ等により、コモン端子21がノーマルクローズ端子22およびノーマルオープン端子23の双方と水を介して同時に電気的に接続されると、駆動制御部53または停止制御部54に焼損等の故障を生じさせてしまうおそれがある。
【0079】
本発明の実施形態による電気錠1によれば、上述したように、比較例としての電気錠において下側スイッチ11(または上側スイッチ12)のコモン端子21がノーマルクローズ端子22とノーマルオープン端子23との間を移動することによるタイムラグを、入力信号Siの電圧レベルの漸増・漸減を利用して電気回路(駆動制御信号出力部57および停止制御信号出力部58)により実現している。そして、本発明の実施形態による電気錠1によれば、ノーマルクローズ端子22を使用しないことで、コモン端子21とノーマルクローズ端子22との擦れ合いや水漏れ等によって生じるおそれのある駆動制御部53または停止制御部54への悪影響を除去することができる。
【0080】
さらに、図4に示すモータ制御回路41と、図6に示すモータ制御回路81とを比較すると分かる通り、本発明の電気錠1は、比較例としての電気錠のモータ制御回路81を部分的に変更すれば、モータ制御回路41を形成することができ、これにより、上述したような端子間の擦れ合いや水漏れ等による駆動制御部53または停止制御部54への悪影響を除去し得るといった効果を得ることができる。すなわち、このような効果を得るために、下側スイッチ11、上側スイッチ12として用いるスイッチを変更する必要がなく、また、電気錠1の内外で生じる衝撃や振動の下側スイッチ11、上側スイッチ12への伝達を抑制するための機構を追加する必要もなく、また、電気錠1のケーシング2内に水が入るのを防止するために、穴を塞いだり、隙間をなくしたり、シールを行ったりといった防水手段を追加する必要もない。したがって、本発明を適用した電気錠の改良を、電気錠の製造コストの上昇を招くことなく実現することができる。
【0081】
なお、上述した実施形態における、下側スイッチ11または上側スイッチ12の押下状態・非押下状態と駆動制御部53の動作状態・非動作状態との対応関係、あるいは、下側スイッチ11または上側スイッチ12の押下状態・非押下状態と停止制御部54の動作状態・非動作状態との対応関係は、デッドボルト3の位置に応じて直流モータ5の制御を実現できることや、駆動制御部53と停止制御部54とが同時に動作状態となるのを回避できることといった条件を充足する範囲で、任意に設定、変更することができる。
【0082】
また、上述した実施形態では、デッドボルト3を移動させるための電動アクチュエータとして直流モータ5を例にあげたが、本発明はこれに限らず、他の電動アクチュエータを用いることもできる。
【0083】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気錠もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 電気錠
3 デッドボルト
5 直流モータ(電動アクチュエータ)
11 下側スイッチ
12 上側スイッチ
16 スイッチ押下部材(スイッチ操作部材)
41 モータ制御回路(制御回路)
42 施錠制御回路
43 解錠制御回路
51 入力制御部(入力電圧印加部)
52 切替制御部
53 駆動制御部
54 停止制御部
57 駆動制御信号出力部(第2の制御信号出力部)
58 停止制御信号出力部(第1の制御信号出力部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
解錠位置と施錠位置との間を移動するデッドボルトと、
前記デッドボルトを移動させる電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータの駆動および停止を制御する制御回路と、
第1の状態と第2の状態との間で切り替わるスイッチと、
前記電動アクチュエータの動力により、または前記デッドボルトの移動に伴い移動し、前記デッドボルトが解錠位置および施錠位置のうちの一方の位置に到達したときに前記スイッチの状態を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替え、前記デッドボルトが解錠位置および施錠位置のうちの他方の位置に到達したときに前記スイッチの状態を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えるスイッチ操作部材とを備え、
前記制御回路は、
前記スイッチが前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わったときに第1の制御信号の出力を停止し、所定時間経過後、第2の制御信号を出力し、一方、前記スイッチが前記第2の状態から前記第1の状態に切り替わったときには前記第2の制御信号の出力を停止し、所定時間経過後、前記第1の制御信号を出力する切替制御部と、
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号のうちの一方が入力されている間、前記電動アクチュエータを駆動可能な状態にする駆動制御部と、
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号のうちの他方が入力されたとき、前記電動アクチュエータを停止させる停止制御部とを備えていることを特徴とする電気錠。
【請求項2】
前記制御回路は、前記スイッチが前記第1の状態であるときに第1のレベルを有する入力電圧を前記切替制御部に印加し、前記スイッチが前記第2の状態であるときには、前記第1のレベルよりも大きい第2のレベルを有する入力電圧を前記切替制御部に印加する入力電圧印加部を備え、
前記切替制御部は、
前記入力電圧が前記第1のレベルから前記第2のレベルに増加する間に第1の基準レベル以上となったときに前記第1の制御信号を停止し、前記入力電圧が前記第2のレベルから前記第1のレベルに減少する間に前記第1の基準レベル未満となったときに前記第1の制御信号を出力する第1の制御信号出力部と、
前記入力電圧が前記第1のレベルから前記第2のレベルに増加する間に、前記第1の基準レベルよりも大きい第2の基準レベル以上となったときに前記第2の制御信号を出力し、前記入力電圧が前記第2のレベルから前記第1のレベルに減少する間に前記第2の基準レベル未満となったときに前記第2の制御信号を停止する第2の制御信号出力部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電気錠。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72245(P2013−72245A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213050(P2011−213050)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)