説明

電池保温システム

【課題】極力電力を使わず電池を保温する。
【解決手段】車輪12を駆動するモータ13とこのモータ13にエネルギを供給する電池とを搭載した自動車に用いる電池保温システム20において、本発明では前記のモータ13から排出された空気を前記の電池4まで導入可能に配設されるダクト22を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池保温システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪を駆動するモータとこのモータに電力を供給する電池とを搭載した自動車がある。この電池は、放電により走行時に必要な電力を供給するだけでなく、繰り返し充電可能ないわゆる二次電池である。このような二次電池が充放電を行う際には、適度に調節された温度環境が必要である。このような温度調節を行うシステムとして、例えば下記特許文献1に挙げるようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−252688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動車の航続距離を少しでも長くするには、なるべく走行時の車輪を駆動するモータのために電池の電力を温存したいため、電池の温度調節のための空調装置やブロア等の電気機器には極力電力を使いたくないという要望がある。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、極力電力を使わず電池を保温することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る電池保温システムは次の手段をとる。
本発明の第1の発明に係る電池保温システムは、車輪を駆動するモータと該モータにエネルギを供給する電池とを搭載した自動車に用いる電池保温システムであって、前記モータから排出された空気を前記電池まで導入可能に配設されるダクトを備えることを特徴とする。
【0006】
第1の発明に係る電池保温システムによれば、車輪を駆動するモータの廃熱を利用して電池を保温可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の形態のアンダーカバー上の構造を示す平面図。
【図2】右側前輪が内蔵するインホイールモータ周辺を拡大して示す平面図。
【図3】図1の電池ケースをIII‐III線で切断して示す断面図。
【図4】第2の形態のアンダーカバー上の構造を示す平面図。
【図5】図4の電池ケースをV‐V線で切断して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本発明を実施するための第1の形態を、図1から図3までを参照しながら説明する。
本実施形態の自動車は、左右の前輪12,12と、これらの前輪12,12を駆動するインホイールモータ13,13と、このインホイールモータ13,13にエネルギを供給する電池とを搭載した電気自動車である。この搭載された電池は、走行時に必要な電力を供給するだけでなく、制動時のエネルギを電力として回収して蓄えることができるいわゆる二次電池である。このような二次電池が充放電を行うには、適度に調節された温度環境が必要である。以下、二次電池の充放電の作動条件となる適度な温度範囲を、単に「適温」と表現する。
【0009】
図1は、自動車の下部構造のうちアンダーカバー11上の構造を示している平面図である。図示左方が車体の前方向である。
車体の左右両側には、車体の前後方向に伸びる中空金属製のサイドメンバ10,10が設けられている。このサイドメンバ10,10は車体の下部に配設されるフレームの一部を成すものである。図1にはこのサイドメンバ10,10の一部のみが示されている。前記の前輪12,12及びインホイールモータ13,13は、図示されない部分のサイドメンバ10,10に固定されている。
このサイドメンバ10,10の間には車体の下部を覆うアンダーカバー2が固定されている。このアンダーカバー2はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製である。アンダーカバー2の上には、本発明でいう電池保温システム20の構成要素として、冷却風等の空気の通路となる各種のダクトと、前記の電池を収容する電池ケース3とが設けられている。このダクトは、導風ダクト21と、温風ダクト22と、冷風ダクト23と、コンデンサ用ダクト24とを含む。本発明で言う「ダクト」はこの温風ダクト22に相当するものである。
【0010】
導風ダクト21,21は、アンダーカバー2の前端からインホイールモータ13,13までを、空気を導入可能に接続している。この導風ダクトは、車の走行時、車体前方の外気を走行風として自然に取り込み可能となるように上流側が車体前方に向けて開口している。自然に取り込まれた外気は、この導風ダクト21内を通り、冷却風としてインホイールモータ13,13に導入される。これにより、作動時に高温となるインホイールモータ13,13を、自然に取り込まれた外気を利用して冷却可能である。
温風ダクト22,22は、インホイールモータ13,13から電池ケースまでを、空気を導入可能に接続している。インホイールモータ13,13を通過する際にその廃熱により暖められた温風は、この温風ダクト22内を通り電池ケース3に導入される。これにより、電池ケース3に収容された電池がこの温風によって保温される。
【0011】
また、アンダーカバー2の上には、本発明でいう電池保温システム20の構成要素として、クーラー25、温調ユニット26が設けられている。
クーラー25は、電池の温度調節のため、外気を用いて冷気を作り出し、これをブロアにより強制的に送風する。なお、前記のコンデンサ用ダクト24は、このクーラー25の一部であるコンデンサに使用する冷却風として外気を導入するためのダクトである。
温調ユニット26は、温度計により電池の温度を測定し、電池を冷却するか保温するかを判断する。夏などにおいて電池温度が適温よりも高く、温調ユニット26が電池を冷却すべきと判断したときには、温調ユニット26は前記のクーラー25に冷気を作らせる。
また、前記の冷風ダクト23は、クーラー25から電池ケース3までを、空気を導入可能に接続している。クーラー25により作られた冷気は、この冷風ダクト23内を通り電池ケースまで導入される。
【0012】
図2は車体右側前輪が内蔵するインホイールモータ13周辺の拡大図である。図示左方が車体の前方向である。なお、車体左側前輪が備えるインホイールモータ13周辺も図2に示すものと同様である。
インホイールモータ13は、その作動により発生した廃熱を放出可能な放熱部13aを備えている。前記のように導風ダクト21を通じてインホイールモータ13に導入された冷却風としての外気は、この放熱部13aを通過する際に熱を奪ってインホイールモータ13を冷却する。一方、放熱部13aを通過した冷却風は廃熱により暖められ温風となる。
温風ダクト22の入口には、回動によりこの温風ダクト22を開閉可能なフラップ22aが設けられている。このフラップ22aは、前記の温調ユニット26により制御されている。冬などにおいて電池温度が適温よりも低く、温調ユニット26が電池を保温すべきと判断したときはフラップ22aが開かれ、夏などにおいて電池温度が適温よりも高く、温調ユニット26が電池を保温する必要がないと判断したときはときは閉じられる。インホイールモータ13により暖められた温風は、フラップ22aが開状態では温風ダクトを通過可能となり、閉状態では通過不能となる。したがって、電池温度が適温よりも低いときのみ、インホイールモータ13の排出した温風が図1に示す電池ケース3に導入される。なお、フラップ22aが閉状態のときは、この温風は図示しないダクトによって車外に排出される。
【0013】
電池ケース3は、前記のようにアンダーカバー2上に設けられている。電池ケース3は、図1に示すように、前輪12,12が内蔵するインホイールモータ13,13よりも後方で、左右のサイドメンバ10,10に挟まれた空間に配設されている。電池ケース3がインホイールモータ13,13よりも後方に位置することで、前記の導風ダクト21,21および温風ダクト22,22により走行風を自然に取り込むために有利な流路が形成される。
図3は、電池ケース3をIII‐III線で切断して示す断面図である。電池ケースには、車幅方向に長い電池スタック4が、車体の前後方向に複数本並べて収容されている。それぞれの電池スタック4には多数の電池セルが直列に接続されて納められている。電池ケース3は、リーンホース部材30と、断熱材31と、シールド板32と、放熱板33とを備える。
リーンホース部材30は、CFRP等の高強度材料で中空に形成された補強部材であり、電池スタック4の間において、左右のサイドメンバ10,10を橋渡すように設けられている。このリーンホース部材30により電池の重量を支える電池ケース3が高強度となる。
断熱材31は、電池と外部との間を断熱する断熱性を有する部材であり、電池全体を囲むように設けられる。自動車の停止時、走行風を導風ダクト21から取り込めない又はインホイールモータ13,13から廃熱が発生しない理由により、温風を電池ケース3に導入できない状態が継続しても、この断熱材31により熱が外部に逃げて電池が過冷却状態となることを防ぎ、もって電池を適温に保つことが可能である。
シールド板32は、電磁波シールド効果を有する鉄製の板であり、電池ケース3の上部を覆うように設けられる。このシールド板32により、電池およびその周辺に設けられる電気部品を外部の電磁波から保護する。
放熱板33は、熱伝導性に優れた材料で形成された板部材であり、前記の断熱材31の内部において全ての電池スタック4の上部を覆うように設けられる。放熱板33は温風ダクト22から導入された温風から熱を受け取る。放熱板33は熱伝導性に優れるため、温風から受け取った熱は放熱板33全体に行き渡る。放熱板33の熱は、絶縁性及び熱伝導性に優れた図示しない伝熱ジェルを介して、各電池スタック4に伝えられる。このように、熱伝導性に優れた放熱板33により、車体の前後方向に渡って複数収容されている電池スタック4に均等に熱を伝えることができる。したがって、電池を均等に保温することができる。
【0014】
本発明を実施するための第1の形態は、以上のように構成される。
この構成によれば、温風ダクト22,22は、インホイールモータ13,13から電池ケースまでを、空気を導入可能に接続している。これにより、電池ケース3に収容された電池を、インホイールモータ13,13の廃熱により暖められた温風によって保温することができる。
また、導風ダクト21,21が、アンダーカバー2の前端からインホイールモータ13,13までを、空気を導入可能に接続している。これにより、走行時に自然に取り込まれた外気を利用して、電池を保温するための温風を作ることが可能である。
【0015】
次に、本発明を実施するための第2の形態を、図4および図5を参照しながら説明する。図4は第2の形態のアンダーカバー上の構造を示す平面図であり、図5は図4の電池ケースをV‐V線で切断して示す断面図である。以下では、前記の第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付すことにより説明を省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0016】
車体の左右両側には、本発明でいう電池保温システム20の構成要素として、車体の前後方向に伸びる中空金属製のサイドメンバ15,15が設けられている。このサイドメンバ15,15は車体の下部に配設されるフレームの一部を成すものである。またこのサイドメンバ15,15は中空状であるため、内部を空気が通過可能となっている。
アンダーカバー2上には、本発明でいう電池保温システム20の構成要素として、温風ダクト27,27および冷風ダクト28,28が設けられている。温風ダクト27,27が、インホイールモータ13,13から中空金属製のサイドメンバ15,15まで空気を導入可能に配設されている。また、冷風ダクト27,27が、クーラー25からサイドメンバ15,15までを、空気を導入可能に接続している。クーラー25により作られた冷気は、この冷風ダクト27,27内を通り電池ケース3まで導入される。この温風ダクト27,27および冷風ダクト28,28は、前記の中空状のサイドメンバ15,15と連通している。
電池ケース3には、本発明でいう電池保温システム20の構成要素として、リーンホース部材30が設けられている。このリーンホース部材30は、CFRP等の高強度材料で中空に形成された補強部材であり、電池スタック4の間において、左右のサイドメンバ15,15を橋渡すように設けられている。このリーンホース部材30により電池の重量を支える電池ケース3が高強度となる。また、前記の中空状のサイドメンバ15,15はこの中空状のリーンホース部材35のそれぞれと連通している。この中空状のリーンホース部材35はその長手方向に渡って、電池スタック4に通ずる多数の孔が設けられており、図4および図5に矢印で示すように、電池スタック4に均等に温風又は冷風を導入可能となっている。
本発明で言う「ダクト」は、第2の実施形態においては、温風ダクト27,27とサイドメンバ15,15とリーンホース部材35とに相当する。
【0017】
本発明を実施するための第2の形態は、以上のように構成される。
この構成によれば、温風ダクト27,27は、インホイールモータ13,13からサイドメンバ15,15までを、空気を導入可能に接続しており、この温風ダクト27,27は前記の中空状のサイドメンバ15,15と連通しており、前記の中空状のサイドメンバ15,15はこの中空状のリーンホース部材35のそれぞれと連通しており、この中空状のリーンホース部材35はその長手方向に渡って、電池スタック4に通ずる多数の孔が設けられている。これにより第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0018】
10,15 サイドメンバ
11 アンダーカバー
12 前輪
13 インホイールモータ
13a 放熱部
2 アンダーカバー
20 電池保温システム
21 導風ダクト
22 温風ダクト
22a フラップ
23 冷風ダクト
24 コンデンサ用ダクト
25 クーラー
26 温調ユニット
3 電池ケース
30,35 リーンホース部材
31 断熱材
32 シールド板
33 放熱板
4 電池スタック



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を駆動するモータと該モータにエネルギを供給する電池とを搭載した自動車に用いる電池保温システムであって、前記モータから排出された空気を前記電池まで導入可能に配設されるダクトを備えることを特徴とする電池保温システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−216341(P2012−216341A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79642(P2011−79642)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】