説明

電池用電極板の製造方法

【課題】 生産性の低下やコスト高を招くことなく、電極板間の短絡不良の原因となる大きなバリの発生を抑制しながら電極板材料を切断して電池用電極板を得ることのできる製造方法を提供する。
【解決手段】 帯状の電極板材料1を長さ方向に向け所定量だけ間欠的に移送して位置決め停止する工程と、互いに摺動する上部ストリッパ12および上部切断金型11と、互いに摺動する下部ストリッパ14および下部切断金型13との間で、電極板材料1の切断箇所を上下から押圧して圧縮成型しながら、その圧縮した箇所を、上部および下部の切断金型11,13の各々の切り刃部11a,13aを互いに摺動させながら切断する工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、三次元金属多孔体またはエキスパンドメタルなどの三次元骨格を有する基材に活物質を充填または塗着してなる電池用電極板を製造する方法に関するものであり、さらに、詳しくは、帯状の電極板材料を、バリの発生を抑制しながら所定の寸法に切断する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、AV機器あるいはパソコンや携帯型通信機器などの電子機器のポータブル化やコードレス化が急速に促進されており、これらの電気機器の駆動電源として信頼性が高く、メンテナンスが容易であることから、ニッケルカドミウム蓄電池またはニッケル水素電池やリチウム二次電池などが使用されている。これらの電池に使用される正極板および負極板としての電極板は、三次元金属多孔体またはエキスパンドメタルなどの三次元骨格を有する基材に活物質を充填または塗着してなる帯状の電極板材料を所定の寸法に切断することにより得られる。
【0003】
ところが、従来の電極板材料の切断方法では、電極板材料が三次元骨格を有する基材に活物質を充填または塗着してなる構成を有していることに起因して、電極板材料の切断すべき部位の両側前面にフラット状の切断金型を接触させた状態で電極板材料を切断する際に、切断時の切りカスが切断金型によって切断済みの電極板の表面に圧着されたり、切断時に切断バリが、切れ刃が戻る際に電極板材料と切断金型が接触することによる反りバリとしてそれぞれ発生する。このようなバリが発生した電極板を電池に組み込むと、電極板、例えば正極板の切断面の切断バリがセパレータを突き破って負極板に直接接触して重大な短絡不良の原因となる。特に、切断面に対し平行方向に延びる切断バリは短絡不良の原因となる可能性が高い。したがって、電極板材料を切断する際には、切断面に発生する切断バリを小さく抑制することにより、電池の短絡不良の主要な原因を排除して、電池の品質を安定させることが極めて重要である。
【0004】
そこで、上述した切断バリの発生を抑制しながら電極板材料を切断するために、従来では、電極板材料の切断すべき部位の両側近傍をそれぞれ一対の切断金型によって挟持固定したのち、その一対の切断金型をそれぞれ電極板材料の厚み方向に沿って互いに逆方向に移動させることにより、電極板材料を切断する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、この特許文献1では、電極板材料の切断すべき部位とその両側近傍の箇所の厚みを、他の箇所の厚みよりも予め薄く形成しておき、電極板材料を切断する際に、薄く形成した部分の両側をそれぞれ一対の切断金型によって挟持固定したのち、その一対の切断金型をそれぞれ電極板材料の厚み方向に沿って互いに逆方向に移動させる切断方法も提案されている。
【0005】
また、切断バリの発生を抑制しながら電極板材料を切断する他の方法として、電極板材料を切断加工用金型で切断したのち、切断箇所の外側の電極板材料を、上型を構成する切れ刃と外側ストリッパとの両者で、アンビルの上面に押し付けた状態で、切れ刃の内側に設けられた内側ストリッパと、下型の一部を構成するリフターを用いて、切断済みの電極板を表裏両面から、適度な加圧力を加えて挟み、切れ刃の内側に、所定の距離だけ一旦押し込み、その後、電極板を切れ刃の先端に向けて引き戻す工程を経るものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−319644号公報
【特許文献2】特開2002−126828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の電極板材料の切断方法では、電極板材料の切断すべき部位と上下の切断金型との間に僅かではあるが隙間が存在しているので、切断時の剪断力が切断すべき部位に集中せず、その結果、電極板材料が引きちぎられた状態で切断されて、バリの発生を防止することが困難である。また、電極板材料の切断すべき部位とその両側近傍の箇所の厚みを予め薄く形成する手段では、薄い箇所を上下の切断金型で挟んだ時点で、両切断金型と電極板材料との間に隙間が生じるので、その薄い箇所が引きちぎられながら切断されるので、大きなバリが発生する。しかも、この切断方法では、電極板材料の所定の箇所毎に厚みの薄い箇所を予め成型するための工程が別途必要となって、生産性の低下を招くだけでなく、切断時には、電極板材料の薄い箇所が上下の切断金型に正確に合致するように電極板材料を高精度に間欠送りする必要があり、切断装置が高価なものとなる。
【0007】
一方、後者の電極板材料の切断方法は、電極板材料から切断により分離した電極板を、これの表裏両面から適度な加圧力を加えて挟み込んで平面状に保持しながら切断加工用金型の切れ刃の内側に所定の距離だけ一旦押し込み、その後に、電極板を切れ刃の先端部まで引き戻すことにより、切断加工用金型の内側の所定距離を電極板の切断面と平行な方向に1回以上往復させて、金型から排出するので、切断時に発生したバリの大部分は引きちぎられるか、あるいは電極板材料に取り残されるため、電極板の切断面からは極端に大きなバリが排除できる効果を得られる。その反面、この切断方法は、非常に複雑な構成と動作とを必要とするので、装置が高価になるとともにランニングコストが高くつき、加工用金型の寿命が確保できないなどの問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、生産性の低下やコスト高を招くことなく、電極板間の短絡不良の原因となる大きな切断バリの発生を抑制しながら電極板材料を切断して電池用電極板を得ることのできる製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明の電池用電極板の製造方法は、帯状の電極板材料を長さ方向に向け所定量だけ間欠的に移送して位置決め停止させる工程と、互いに摺動する上部ストリッパおよび上部切断金型と、互いに摺動する下部ストリッパおよび下部切断金型との間で、前記電極板材料の切断箇所を上下から押圧して圧縮成型しながら、その圧縮した箇所を、前記上部および下部切断金型の各々の切り刃部を互いに摺動させながら切断する工程とを有していることを特徴としている。
【0010】
このような構成の電池用電極板の製造方法によれば、切断部位を圧縮しながら切断することによって活物質の崩落が生じなく、切断部位を圧縮して充填密度をさらに高めるようにして切断することにより切断時に電極板材料の基材の動きを止めることができ、上下切断金型の各々の切り刃部が互いに摺動し、且つ切断金型の各々の切り刃部と対面するストリッパとが互いに摺動することによってバリの発生する隙間が存在せず、切断部位を予め圧縮するのではなく圧縮しながら切断することによって予め圧縮したのちに切断する場合のような切断金型と圧縮部との非接触に起因する切断時の電極板材料の引きちぎりが生じない。このようにバリの発生する余地をことごとく排除したことにより、得られた電極板には、バリを最小限に抑制し、特に電池に組み込んだ時に電極板間の短絡を発生するような大きなバリは発生しない。また、電極板材料の切断部位は圧縮しながら切断するので、従来のように圧縮を別工程で予め行う場合のような生産性の低下を招くことがない。
【0011】
この電池用電極板の製造方法において、相対向する上部ストリッパと下部切断金型との間および相対向する上部切断金型と下部ストリッパとの間でそれぞれ電極板材料の切断部位を圧縮するようにすると、電極板材料の切断部位を効果的に上下から押圧して圧縮することができる。
【0012】
また、上記電池用電極板の製造方法において、上部切断金型および上部ストリッパの各々の下端部と下部切断金型および下部ストリッパの各々の上端部とに、それぞれ圧縮押圧用突部を突設して、これら4つの圧縮押圧用突部による上下からの押圧によって電極板材料の切断部位を局部的に集中して圧縮するようにすると、電極板材料の切断部位が、押圧面積を小さく設定した各圧縮押圧用突部からの押圧力を局部的に集中して受けて、基材と活物質とが共に効果的に圧縮され、特に、三次元骨格を有する基材が厚み方向の中央部に集められて、スポンジ状から金属リッチの状態に圧縮されて充填密度の高くなる部位に変性される。これにより、切断時の活物質の崩落を防止することができる。
【0013】
さらに、上記電池用電極板の製造方法において、切断前に、上部ストリッパを、これの圧縮押圧用突部が上部切断金型の圧縮押圧用突部よりも所定量だけ下方にずれた位置に保持されるように弾性体で付勢して、前記上部切断金型の圧縮押圧用突部が前記上部ストリッパの圧縮押圧用突部と面一となる位置まで下降した時点から電極板材料の切断を開始するように設定すると、電極板材料を所定の厚みに圧縮し終えた時点から上下の成型金型による切断を開始するように設定することができ、バリの発生を効果的に抑制しながら電極板材料を切断できる。
【0014】
また、上記の電池用電極板の製造方法において、電極板材料の切断面にこれの厚み方向の中央部から圧縮部が側方に突出する形状になるように切断すると、切断金型の切り刃部が磨耗した場合に、切断バリや反りバリが発生しても、これらのバリは、厚み方向の中央部の圧縮部から突出しているので、電極板の表面から突出することがなく、電池に組み込んだ時に電極間の短絡発生の原因とならず、何ら支障が生じない。換言すれば、切断金型は、各々の切り刃部の磨耗が或る程度進行するまで使用することが可能となり、十分な寿命を確保することができるので、高い生産性を図ることができる。
【0015】
また、本発明の別の電池用電極板の製造方法は、帯状の電極板材料を長さ方向に向け所定量だけ間欠的に移送して位置決め停止させる工程と、互いに摺動する上部ストリッパおよび上部切断金型と、互いに摺動する下部ストリッパおよび下部切断金型との間で、前記電極板材料の切断箇所を上下から押圧して圧縮成型しながら、その圧縮した箇所を、前記各々の切断金型の切り刃部を互いに摺動させながら切断する工程とを有した電池用電極板の製造方法において、相対向する前記下部切断金型および前記上部切断金型との間でそれぞれ前記電極板材料を圧縮する前記上部ストリッパおよび下部ストリッパに圧縮用の加圧力を付与するとともに、これら加圧力を予め設定した所定範囲内になるように自動的に調整して付与するようにしたことを特徴としている。
【0016】
このような構成の電池用電極板の製造方法によれば、電極板材料における切断部位を所要の厚みに圧縮しながら切断するので、切断部位の充填密度をさらに高めるように変性しながら切断することによって、切断時に電極板材料の基材の動きを止めることができる上、上下の両切断金型の切り刃部が互いに摺動し、且つ切断金型の各々の切り刃部と対面するストリッパとが互いに摺動することによってバリの発生する隙間が存在しないから、バリが発生する余地をことごとく排除したことになり、バリが殆ど生じないように切断することができる。これに加えて、電極板材料の切断部位を圧縮するために上部および下部ストリッパにそれぞれ付与する加圧力を種々の電極板材料に対応して所定の加圧力範囲内になるように自動的に調整するので、何れの電極板材料であっても、これを適切な充填密度に圧縮した状態で切断することができるから、圧縮不足によるバリの発生や圧縮過多に起因する活物質の崩落の発生を極力抑制することができる。また、上部および下部ストリッパに付与する加圧力範囲は切断工程開始前に設定するだけでよいため、例えば切断すべき電極板材料の種類が異なる毎に圧縮コイルスプリングを交換する場合のような生産性の低下を招くことがない。
【0017】
また、上記電池用電極板の製造方法において、上部ストリッパおよび下部ストリッパに、電極板材料の圧縮時に加わる反力に応じて加圧力が予め設定された範囲内になるように自動調整される加圧シリンダを用いて加圧力を付与するようにすると、上下の各ストリッパに加圧力を付与するための加圧シリンダが、電極板材料の活物質の充填密度が圧縮の進行に伴い変化するのに対応してピストン棒を後退変位させながら、ストリッパへの加圧力が予め設定された所定の加圧力範囲内になるように追従するように作用して、ストリッパに付与する加圧力を自動調整する機能を有している。このような加圧シリンダにより上下ストッリパに加圧力を付与することにより、サーボモータなどを用いる場合に比較して、コストを低減しながらストリッパに付与する加圧力を所定範囲内になるように確実に自動調整することができるとともに、加圧力範囲の設定が容易である汎用性を有したものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電池用電極板の製造方法によれば、生産性の低下やコスト高を招くことなく、圧縮過多に起因する活物質の崩落発生を極力抑制しながら切断バリを最小化した電極板材料の切断ができ、電極板の歩留り向上を図ることができるとともに、電池に組み込んだ時に電極板間の短絡不良が生じることのない電池用電極板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図1〜図3、及び図8〜図9を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る電池用電極板の製造方法を具現化した電極板製造装置を示す概略正面図である。この電極板製造装置は、帯状の電極板材料1を所定寸法ずつ間欠送りして所定寸法に順次切断することにより、電極板2を得るものである。電極板材料1は、例えば、ペースト状の活物質をスポンジ状三次元ニッケル金属多孔体からなる基材中に充填したもの、あるいはペースト状の活物質をエキスパンドメタルからなる基材に塗着したものである。
【0020】
帯状の上記電極板材料1は、繰り出しリール(図示せず)などに巻回されて、その繰り出しローラの回転によりアキューム装置3に供給されたのち、定寸送り機構4において、チャッキング部材7で挟持された状態でチャッキング部材7がガイドレール8に沿って所定距離だけ移動することにより、一定量だけ間欠的に切断金型機構10に送り込まれる。送り量確認センサ9は、電極板材料1が所定量移送されたことを検知して検知信号を出力する。上記定寸送り機構4は、送り量確認センサ9から検知信号を受けた時点でチャッキング部材7の移動を停止させることにより、電極板材料1を所定量だけ正確に間欠送りする。このとき、アキューム装置3における一方向回転可能なストッパローラ3aは一定量送り込まれた電極板材料1の戻り動作を防止する。
【0021】
上記切断金型機構10は、上部切断金型11、上部ストリッパ12、下部切断金型13および下部ストリッパ14を備えて構成されており、上部切断金型11と下部ストリッパ14および上部ストリッパ12と下部切断金型13がそれぞれ上下で相対向する配置で設けられている。上部切断金型11の切り刃部11aと上部ストリッパ12の対向側面および下部切断金型13の切り刃部13aと下部ストリッパ14の対向側面は、共に隙間無く接触した相対配置で設けられて互いに摺動するようになっている。また、上部切断金型11、上部ストリッパ12、下部切断金型13および下部ストリッパ14には、電極板材料1の切断箇所に向け突出する圧縮押圧用突部11b,12a,13b,14aが形成されている。左右に隣接する上部切断金型11および上部ストリッパ12の各々の圧縮押圧用突部11b,12aは、これらが合体して断面台形状を形作るとともに、左右に隣接する下部切断金型13および下部ストリッパ14の各々の圧縮押圧用突部13b,14aは、こららが合体して断面台形状を形作る。
【0022】
上記上部切断金型11および上部ストリッパ12は上型17に取り付けられ、下部切断金型13および下部ストリッパ14は下型18に取り付けられている。下型18は、プレスヘッド19上にダイプレート20が固定されてなり、ダイプレート20上に上記下部切断金型13および下部ストリッパ14が設けられている。すなわち、下部切断金型13はダイプレート20上に載置固定され、下部ストリッパ14は、下部ガイド軸24を介して上下動自在にダイプレート20に取り付けられているとともに、圧縮コイルスプリング27により上方に付勢されて、通常時に図示の上限位置に保持されている。この上限位置の下部ストリッパ14の圧縮押圧用突部14aは、下部切断金型13の圧縮押圧用突部13bと面一に位置して、間欠送りされてくる電極板材料1の支持受け台として機能する。
【0023】
一方、上型17は、プレスヘッド19上に立設された複数本のガイドポスト21に沿って昇降されるプレスフレーム22の下面にパンチプレート23が固定されてなり、パンチプレート23に上記上部切断金型11および上部ストリッパ12が設けられている。すなわち、上部切断金型11はプレスフレーム22の下面に固定され、上部ストリッパ12は、上部ガイド軸28を介して上下動自在にプレスフレーム22に取り付けられているとともに、圧縮コイルスプリング29により下方に付勢されて、通常時に図示の下限位置に保持されている。この下限位置の上部ストリッパ12の圧縮押圧用突部12aは、上部切断金型11の圧縮押圧用突部11bよりも所定量だけ下方にずれた位置に保持されており、これについての詳細は後述する。上部切断金型11と下部切断金型13とにより電極板材料1を切断して得られた電極板2は、搬送コンベア30によって所定位置に移送される。なお、下部ストリッパ14には、搬送コンベア30に干渉することなく上下動するための中空部14bが設けられている。
【0024】
つぎに、上記電極板製造装置によって電極板材料1を所定寸法に切断して電極板2を得る作用について、図2を参照しながら説明する。図2(a)〜(c)は、電極板材料1の切断動作を工程順に示した拡大断面部である。図2(a)に示すように、切断前の状態では、上部ストリッパ12および下部ストリッパ14が、それぞれ圧縮コイルスプリング29,29の付勢力を受けて下限位置および上限位置に保持されて、上部切断金型11および下部切断金型13に並置されている。このとき、下部切断金型13と下部ストリッパ14との各々の圧縮押圧用突部13b,14aは合体して断面台形状を形作っており、この下部切断金型13と下部ストリッパ14との各々の圧縮押圧用突部13b,14a上に、移送されてくる電極板材料1が載置される。但し、上部ストリッパ12の圧縮押圧用突部12aは、上述したように上部切断金型11の圧縮押圧用突部よりも僅かに下方にずれた位置に保持されている。
【0025】
上記状態において、電極板材料1が所定量だけ移送されて位置決め停止されたならば、図1の上型17のプレスフレーム22がガイドポスト21に沿って下降動作を開始する。これにより、図2(b)に示すように、プレスフレーム22と共に下降する上部ストリッパ12の圧縮押圧用突部12aと下部切断金型13の圧縮押圧用突部13bとの間で電極板材料1が押し潰されていく。このとき、上部ストリッパ12を支持する上部ガイド軸28は、圧縮コイルスプリング29を圧縮させながらパンチプレート23内に挿入され、その挿入が所定寸法で停止する機能により上下動を停止したのち、下降し続ける上部切断金型11の圧縮押圧用突部11bが上部ストリッパ12の圧縮押圧用突部12aと面一になる。この時点での状態を図3に拡大して示している。
【0026】
図3に示すように、電極板材料1における切断すべき箇所は、共に面一に位置する上部切断金型11および上部ストリッパ12の各々の圧縮押圧用突部11b,12aと下部切断金型13および下部ストリッパ14の各々の圧縮押圧用突部13b,14aとで上下から押圧されて、厚み方向の中央部において所定の厚みに圧縮される。このとき、電極板材料1の切断箇所は、押圧面積を小さく設定した各圧縮押圧用突部11b,12a,13b,14aからの押圧力を局部的に集中して受けて、基材1aと活物質1bとが共に効果的に圧縮されるが、特に、三次元骨格を有する基材1aが中央部に集められて、スポンジ状から金属リッチの状態に圧縮されて充填密度の高くなる部位に変性される。
【0027】
図2(b)の状態から上型17がさらに下降を続けることにより、図2(c)に示すように、上部切断金型11の切り刃部11aは、下降が停止した上部ストリッパ12に対しこれの対向側面に摺動しながら相対的に下方に突出して、下部切断金型13の切り刃部13aと摺動しながら電極板材料1の圧縮部を切断する。このとき、下部ストリッパ14は、下降する上部切断金型11の切り刃部11aにより電極板材料1を介し押圧力を受けて、切り刃部11aとの間に電極板材料1を挟持した状態で一体的に押し下げられながら、切り刃部11aにより電極板材料1が確実に切断されるように電極板材料1を受け止め、電極板材料1が切断され終えて切り刃部11aの下動が停止した時点で停止する。この切断により、電極板材料1から分離された電極板2が得られる。
【0028】
そののち、上型17が上昇し、各ストリッパ12,14が各々の圧縮スプリング27,29の付勢力によって元の位置に復帰する。図8は、電極板材料1を所定の寸法に切断して得られた電極板2を示し、切断箇所である圧縮部2aの厚みdは、元の厚みDの1/10〜1/2の範囲内に設定されている。この厚みdの設定は、上部ストリッパ12の圧縮コイルスプリング29として、適切なばね定数のものを選択して用いることによって調整される。
【0029】
このような切断工程を経て得られた電極板2は、電極板材料における切断部位を所定の厚みdに圧縮しながら上,下切断金型11,13の各々の切り刃部11a,13aで切断するので、従来のように切断部位の両面を挟んだ状態で切断する場合のような活物質1bの崩落は生じない。また、上記切断工程では、上述のように切断時に活物質1bの崩落が生じないのに加えて、切断部位を圧縮して充填密度をさらに高めるようにして切断することにより切断時の基材1aの動きを止めることができ、両切断金型11,13の各々の切り刃部11a,13aが互いに摺動し、且つ切断金型11,13の各々の切り刃部11a,13aと対面するストリッパ12,14とが互いに摺動することによってバリの発生する隙間が存在せず、切断部位を予め圧縮するのではなく圧縮しながら切断することによって予め圧縮したのちに切断する場合のような切断金型と圧縮部との非接触に起因する切断時の電極板材料1の引きちぎりが生じない。このようにバリの発生する余地をことごとく排除したことにより、得られた電極板2には、バリが殆ど生じなく、特に電池に組み込んだ時に電極板間の短絡を発生するような大きなバリは発生しない。
【0030】
また、電極板材料1の切断部位は圧縮されながら切断されるので、従来のように圧縮を別工程で予め行う場合のような生産性の低下を招くことがない。さらに、切断金型11,13の切り刃部11a,13aが磨耗した場合には、図8に示すように、切断バリ31や反りバリ32が発生するが、これらのバリ31,32は、厚み方向の中央部の圧縮部2aから突出するものであって、その圧縮部2aの厚みdが元の厚みDの1/10〜1/2の範囲内に設定されているから、電極板2の表面から突出しないので、電池に組み込んだ時に電極間の短絡発生の原因とならず、何ら支障が生じない。換言すれば、切断金型11,13は、各々の切り刃部11a,13aの磨耗が或る程度進行するまで使用することが可能であるから、十分な寿命を確保することができると言える。
【0031】
図9は上記切断工程を経て得られた電極板2A,2Bを示し、図9(a)の電極板2Aは、上下切断金型11,13によって抜き切断されたもので、側面全周における厚み方向の中央部に薄い圧縮部202が形成されている。図9(b)の電極板2Bは、フープ状の電極板材料1を切断したもので、送り方向の前後位置の側面における厚み方向の中央部に薄い圧縮部202が形成されている。
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図4〜図9を参照しながら詳細に説明する。なお、上記第1の実施の形態と共通する構成要素については同じ参照符号付して説明を省略し、主として相違点についてのみ説明する。
【0033】
図4に示す本発明の第2の実施の形態に係る電池用電極板の製造方法を具現化した電極板製造装置は、第1の実施の形態における圧縮コイルスプリング27に代えてエアシリンダまたは油圧シリンダからなる下部加圧シリンダ33がプレスヘッド19に上下方向の配置で設けられており、上記下部ストリッパ14は、下部加圧シリンダ33のピストン棒33aの先端に固着された取付プレート33bに固定されて、上方に付勢された状態で支持されている。
【0034】
上記下部加圧シリンダ33は、所望の加圧力の範囲を手動操作によりマニュアル設定できるようになっており、電極板材料1の圧縮時に下部ストリッパ14から反力を受けたときに、下部ストリッパ14に対する加圧力が常に設定範囲内になるようにピストン棒33aが後退するようになっている。通常時には、下部加圧シリンダ33のピストン棒33aが吐出位置に保持されて、下部ストリッパ14が図示の上限位置に保持されている。この上限位置の下部ストリッパ14の圧縮押圧用突部14aは、下部切断金型13の圧縮押圧用突部13bと面一に位置して、間欠送りされてくる電極板材料1の支持受け台として機能する。
【0035】
一方、上型17は、プレスヘッド19上に立設された複数本のガイドポスト21に沿って昇降されるプレスフレーム22の下面にパンチプレート23が固定されてなり、このパンチプレート23の下面に上記上部切断金型11が固定されている。プレスフレーム22には、エアシリンダまたは油圧シリンダからなる上部加圧シリンダ34が上下方向の配置で設けられており、上記上部ストリッパ12は、上部加圧シリンダ34のピストン棒34aの先端に固着された取付プレート34bに固定されて、下方に付勢された状態で支持されている。
【0036】
上記上部加圧シリンダ34は、下部加圧シリンダ33と同様に、所望の加圧力の範囲を手動操作によりマニュアル設定できるようになっており、電極板材料1の圧縮時に上部ストリッパ12から反力を受けたときに、上部ストリッパ12に対する加圧力が常に設定範囲内になるようにピストン棒34aが後退するようになっている。通常時には、上部加圧シリンダ34のピストン棒34aが吐出位置に保持されて、上部ストリッパ12が図示の下限位置に保持されている。この下限位置の上部ストリッパ12の圧縮押圧用突部12aは、上部切断金型11の圧縮押圧用突部11bよりも所定量だけ下方にずれた位置に保持されており、これについての詳細は後述する。
【0037】
上部切断金型11と下部切断金型13とにより電極板材料1を切断して得られた電極板2は、搬送コンベア30によって所定位置に移送される。なお、下部ストリッパ14には、搬送コンベア30に干渉することなく上下動するための中空部14bが設けられている。
【0038】
このように、第1の実施の形態にて示した上下部のストリッパ12,14を付勢する圧縮コイルスプリング29,27に代えて、エアシリンダまたは油圧シリンダからなる下部加圧シリンダ33と上部加圧シリンダ34を備えた構成とすると、切断すべき電極板材料1の基材や活物質の種類或いは活物質の充填密度が異なる度に圧縮コイルスプリング29,27を取り替える必要がなくなる。
【0039】
つぎに、上記電極板製造装置を用いて電極板材料1を所定寸法に切断することにより電極板2を得る工程について、図5を参照しながら説明する。図5(a)〜(c)は、電極板材料1の切断動作を工程順に示した拡大断面部である。図5(a)に示すように、切断前の状態では、上部ストリッパ12および下部ストリッパ14がそれぞれ上部および下部加圧シリンダ34,33により下限位置および上限位置に保持されて、上部切断金型11および下部切断金型13に並置されている。このとき、下部切断金型13と下部ストリッパ14との各々の圧縮押圧用突部13b,14aは合体して断面台形状を形作っており、この下部切断金型13と下部ストリッパ14の各々の圧縮押圧用突部13b,14aの上面は、互いに面一に保持されて、移送されてくる電極板材料1が載置される。但し、上部ストリッパ12の圧縮押圧用突部12aは、上述したように上部切断金型11の圧縮押圧用突部よりも僅かに下方にずれた位置に保持されている。
【0040】
上記状態において、電極板材料1が所定寸法だけ移送されて位置決め停止され、図4の上型17のプレスフレーム22がガイドポスト21に沿って下降動作を開始する。これにより、図5(b)に示すように、プレスフレーム22と共に下降する上部ストリッパ12の圧縮押圧用突部12aと下部切断金型13の圧縮押圧用突部13bとの間で電極板材料1が上下から押し潰される状態で圧縮されていく。このとき、押し潰れる電極板材料1から圧縮押圧用突部12aに作用する反力は、電極板材料1を押し潰していくのに伴い徐々に大きくなり、その反力がそのまま上部加圧シリンダ34に加わる。一方、プレスフレーム22の下降に伴って、上部切断金型11の圧縮押圧用突部11bと下部ストリッパ14の圧縮押圧用突部14aとの間でも電極板材料1が押し潰されていく。このとき、押し潰れる電極板材料1から下部ストリッパ14の圧縮押圧用突部14aに作用する反力は、電極板材料1を押し潰していくのに伴い徐々に大きくなり、その反力がそのまま下部加圧シリンダ33に加わる。
【0041】
上記上部および下部加圧シリンダ34,33は、予めマニュアル設定された加圧力の範囲を維持するように機能する。図6は、電極板材料1の活物質を圧縮したときの活物質の充填密度と加圧力との関係の実験結果を示したものであり、充填密度が2.0g/cc以下の場合には、活物質の圧縮不足によって切断バリや反りバリが発生し易く、充填密度が3.0g/cc以上の場合に、活物質の圧縮過多によって活物質の崩落が発生し易いことが判明した。したがって、電極板材料1は活物質が2.0g/cc〜3.0g/ccの充填密度範囲A内に圧縮される加圧力範囲Bで圧縮すれば、バリや活物質の崩落の発生を抑制しながら圧縮部を形成することができる。但し、図6の実験結果は一例であって、基材や活物質の種類の相違あるいは圧縮前の活物質の充填密度の相違によって若干異なる。
【0042】
そこで、切断すべき各電極板材料1毎に好ましい加圧力範囲Bを予め実験的に求めておき、切断工程の開始前に、切断すべき電極板材料1の加圧力範囲Bが上部および下部加圧シリンダ34,33にマニュアル設定される。上部および下部加圧シリンダ34,33は、圧縮される電極板材料1からストリッパ12,14を介して受ける反力が大きくなるのに対応してピストン棒34a,33aを後退変位させることにより、電極板材料1への加圧力が加圧力範囲B内を維持するように機能する。
【0043】
したがって、下降する上部ストリッパ12が電極板材料1をこれの活物質が所定の充填密度となる状態まで圧縮すると、その時点から、上部加圧シリンダ34では上型17の下降に対応してピストン棒34aが後退変位され、上型17が下降するのに対し上部ストリッパ12が下動を停止する。そのため、下降し続ける上部切断金型11の圧縮押圧用突部11bは、やがて上部ストリッパ12の圧縮押圧用突部12aに対し面一となる位置まで下降する。一方、下部ストリッパ14は少なくとも上部切断金型11の圧縮押圧用突部11bが上部ストリッパ12の圧縮押圧用突部12aに対し面一となる位置に下降する時点まで下部加圧シリンダ33により上限位置に保持されて、電極板材料1を支持し続ける。これにより、電極板材料1は下部ストリッパ14の圧縮押圧用突部14aと上部切断金型11の圧縮押圧用突部11bとの間でも圧縮される。この時点での状態を図7に拡大して示している。
【0044】
図7に示すように、電極板材料1における切断すべき箇所は、共に面一に位置する上部切断金型11および上部ストリッパ12の各々の圧縮押圧用突部11b,12aと下部切断金型13および下部ストリッパ14の各々の圧縮押圧用突部13b,14aとで上下から所定の加圧力で押圧されて、厚み方向の中央部において所定の厚みに圧縮される。このとき、電極板材料1の切断箇所は、押圧面積を小さく設定した各圧縮押圧用突部11b,12a,13b,14aからの押圧力を局部的に集中して受けて、基材1aと活物質1bとが共に効果的に圧縮されるが、特に、三次元骨格を有する基材1aが中央部に集められて、スポンジ状から金属リッチの状態に圧縮されて充填密度の高くなる部位に変性される。
【0045】
図5(b)の状態から上型17がさらに下降を続けることにより、図5(c)に示すように、上部切断金型11の切り刃部11aは、下降が不能となった上部ストリッパ12に対しこれの対向側面に摺動しながら相対的に下方に移動して、下部切断金型13の切り刃部13aと摺動しながら電極板材料1の圧縮部を切断する。このとき、下部加圧シリンダ33は、下部ストリッパ14への加圧力が所定の加圧力範囲Bを維持した状態でピストン棒33aを後退変位させながら、上部切断金型11の下降に伴い切断される電極板材料1を介して押し下げられる下部ストリッパ14を支持して、下部ストリッパ14と一体的にピストン棒33aが後退する。これにより、電極板材料1の圧縮部は、活物質が所定の充填密度となる圧縮状態を維持しながら切断され、その切断により、電極板2が得られる。そののち、上型17が上昇し、各ストッリパ12,14は対応する加圧シリンダ34,33の吐出動作によって元の位置に復帰する。
【0046】
図8は、電極板材料1を所定の寸法に切断して得られた電極板2を示し、切断箇所である圧縮部2aの厚みdは、元の厚みDの1/10〜1/2の範囲内に設定されている。この厚みdは、上部および下部シリンダ34,33に所定の加圧力範囲Bを設定したことにより得られたものである。
【0047】
上述の切断工程では、電極板材料1における切断部位を所要の厚みdに圧縮しながら上,下切断金型11,13の各々の切り刃部11a,13aで切断するので、圧縮により充填密度が高められた切断部位を切断することによって切断時の電極板材料1の基材1aの動きを止めることができる上に、両切断金型11,13の各々の切り刃部11a,13aが互いに摺動し、且つ切断金型11,13の各々の切り刃部11a,13aと対面するストリッパ12,14とが互いに摺動することによってバリの発生する隙間が存在せず、さらに、切断部位を予め圧縮するのではなく、圧縮しながら切断することによって予め圧縮したのちに切断する場合のような切断金型と圧縮部との非接触に起因する切断時の電極板材料1の曲げが生じない。このようにバリの発生する余地をことごとく排除したことにより、得られた電極板2にはバリが殆ど生じなく、特に電池に組み込んだ時に電極板間を短絡させるような大きなバリは発生しない。
【0048】
しかも、上記切断工程では基材1aや活物質1bの種類または活物質1bの充填密度などが個々に相違する種々の種類の電極板材料1を生産性の低下を招くことなく、且つ活物質1bの崩落発生を極力抑制しながら切断することができる顕著な効果を得ることができる。すなわち、電極板材料1の切断部位を圧縮する上部および下部ストリッパ12,14をそれぞれ加圧しながら支持する上部および下部加圧シリンダ34,33は、電極板材料1の活物質1bの充填密度が圧縮の進行に伴い変化するのに対応して、ピストン棒34a,33aを後退変位させながら、上部および下部ストリッパ12,14への加圧力が予め設定された所定の加圧力範囲B内になるように追従するように機能する。
【0049】
したがって、上部および下部ストリッパ12,14への加圧力は基材1aや活物質1bの種類または活物質1bの充填密度などが個々に相違する種々の電極板材料1に対応して、所定の加圧力範囲B内になるように自動的に調整されるから、何れの電極板材料1であっても、これを適切な充填密度に圧縮した状態で切断することができる。特に、圧縮過多に起因する活物質の崩落の発生を極力抑制することができる。しかも、上部および下部ストリッパ12,14への加圧力範囲Bは、切断工程開始前に上部および下部加圧シリンダ34,33に手動操作でマニュアル設定するだけでよいから、生産性の低下を招くことがない。また、上部および下部ストリッパ12,14への加圧力は、シリンダ34,33により自動調整しながら付与するようにしたので、高価なサーボモータなどを用いる場合に比較して、コストを低減することができるとともに、加圧力範囲の設定が容易である汎用性を有したものとなる。
【0050】
なお、本第2の実施の形態では、上部および下部ストリッパ12,14への加圧力範囲Bを手動操作で上部および下部シリンダ34,33にマニュアル設定して多品種の電極板材料1に対応する場合を例示して説明したが、加圧力範囲Bを自動設定する構成とすることもできる。すなわち、基材1aや活物質1bの種類または活物質1bの充填密度などが個々に相違する種々の種類の電極板材料1に対応した所定の加圧力範囲Bが予め記憶されたメモリと、マイクロコンピュータなどを有して装置全体を制御するコントローラとを設けた構成とする。そして、切断工程の開始に際して、切断すべき電極板材料1の種類をコントローラに指定入力することにより、コントローラは指定された電極板材料1の種類に対応する加圧力範囲Bをメモリから読み出して、その加圧力範囲Bに基づきシリンダ34,33を制御して上部および下部ストリッパ12,14への加圧力を自動調整する。
【0051】
本発明の第2の実施の形態にかかる電極板製造装置を用いれば、上記第1の実施の形態と同様に切断金型11,13の切り刃部11a,13aが磨耗することにより切断バリ31や反りバリ32が発生(図8参照)した場合でも、これらのバリ31,32は厚み方向の中央部の圧縮部2aから突出するものであって、その圧縮部2aの厚みdが元の厚みDの1/10〜1/2の範囲内に設定されているから、電極板2の表面から突出することがないので、電池に組み込んだ時に電極板間の短絡発生の原因とならず、何ら支障が生じない。換言すれば、切断金型11,13は、各々の切り刃部11a,13aの磨耗が或る程度進行するまで使用することが可能であるから、十分な寿命を確保することができると言える。
【0052】
また、第2の実施の形態にかかる電極板製造装置を用いても、第1の実施の形態にかかる装置と同様に、図9(a)に示すような、上下切断金型11,13によって抜き切断して側面全周における厚み方向の中央部に薄い圧縮部202を形成した電極板2Aや、図9(b)に示すような、フープ状の電極板材料1を切断して送り方向の前後位置の側面における厚み方向の中央部に薄い圧縮部202を形成した電極板2Bを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明の電池用電極板の製造方法は、電極板材料における切断箇所を電極板材料の種類の相違に拘らず所定範囲の加圧力で圧縮して厚み方向の中央部に薄い圧縮部を形成しながら上下の切断金型で切断したことにより、生産性の低下やコスト高を招くことなく、圧縮過多に起因する活物質の崩落発生を極力抑制しながら切断バリを最小化した電極板材料の切断ができ、電極板の歩留り向上を図ることができるとともに、電池に組み込んだ時に電極板間の短絡不良が生じることのない電池用電極板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電池用電極板の製造方法を具現化した電極板製造装置を示す概略正面図
【図2】(a)〜(c)は同上の電極板製造装置における電極板材料の切断動作を工程順に示した拡大断面図
【図3】図2(b)の一部の拡大図
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る電池用電極板の製造方法を具現化した電極板製造装置を示す概略正面図
【図5】(a)〜(c)は同上の電極板製造装置における電極板材料の切断動作を工程順に示した拡大断面図
【図6】電極板材料を圧縮する際の活物質の充填密度と加圧力との関係を示す特性図
【図7】図5(b)の一部の拡大図
【図8】製造後の電極板の断面図
【図9】(a),(b)はいずれも製造後の異なる種類の電極板の斜視図
【符号の説明】
【0055】
1 電極板材料
2,2A,2B 電極板
2a 圧縮部
202 圧縮部
11 上部切断金型
11a 切り刃部
11b 圧縮押圧用突部
12 上部ストリッパ
12a 圧縮押圧用突部
13 下部切断金型
13a 切り刃部
13b 圧縮押圧用突部
27,29 圧縮コイルスプリング(弾性体)
33 下部加圧シリンダ
34 上部加圧シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の電極板材料を長さ方向に向け所定量だけ間欠的に移送して位置決め停止させる工程と、
互いに摺動する上部ストリッパおよび上部切断金型と、互いに摺動する下部ストリッパおよび下部切断金型との間で、前記電極板材料の切断箇所を上下から押圧して圧縮成型しながら、その圧縮した箇所を、前記上部および下部切断金型の各々の切り刃部を互いに摺動させながら切断する工程とを有していることを特徴とする電池用電極板の製造方法。
【請求項2】
相対向する上部ストリッパと下部切断金型との間および相対向する上部切断金型と下部ストリッパとの間でそれぞれ電極板材料の切断部位を圧縮するようにした請求項1記載の電池用電極板の製造方法。
【請求項3】
上部切断金型および上部ストリッパの各々の下端部と下部切断金型および下部ストリッパの各々の上端部とに、それぞれ圧縮押圧用突部を突設して、これら4つの圧縮押圧用突部による上下からの押圧によって電極板材料の切断部位を局部的に集中して圧縮するようにした請求項2記載の電池用電極板の製造方法。
【請求項4】
切断前に、上部ストリッパの圧縮押圧用突部が上部切断金型の圧縮押圧用突部よりも所定量だけ下方位置に保持されるように弾性体で付勢して、前記上部切断金型の圧縮押圧用突部が前記上部ストリッパの圧縮押圧用突部と面一となる位置まで下降した時点から電極板材料の切断を開始するように設定した請求項3記載の電池用電極板の製造方法。
【請求項5】
電極板材料の切断面に前記電極板材料の厚み方向の中央部から圧縮部が側方に突出する形状になるように切断した請求項1ないし4の何れかに記載の電池用電極板の製造方法。
【請求項6】
帯状の電極板材料を長さ方向に向け所定量だけ間欠的に移送して位置決め停止させる工程と、
互いに摺動する上部ストリッパおよび上部切断金型と、互いに摺動する下部ストリッパおよび下部切断金型との間で、前記電極板材料の切断箇所を上下から押圧して圧縮成型しながら、その圧縮した箇所を前記各々の切断金型の切り刃部を互いに摺動させながら切断する工程とを有した電池用電極板の製造方法において、
相対向する前記下部切断金型および前記上部切断金型との間でそれぞれ前記電極板材料を圧縮する前記上部ストリッパおよび下部ストリッパに圧縮用の加圧力を付与するとともに、これら加圧力を予め設定した所定範囲内になるように自動的に調整して付与するようにしたことを特徴とする電池用電極板の製造方法。
【請求項7】
上部ストリッパおよび下部ストリッパに電極板材料の圧縮時に加わる反力に応じて加圧力が予め設定された範囲内になるように自動調整される加圧シリンダを用いて加圧力を付与したことを特徴とする請求項6に記載の電池用電極板の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−128841(P2007−128841A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7426(P2006−7426)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】