説明

電池用電極箔のプレス方法

【課題】ロールプレス後の塗工部の長さと未塗工部の長さを同じにするために、未塗工部に切り欠きを設けると、外部回路と接続する端子部分の形状や大きさに制約が加わる。
【解決手段】長尺の集電箔の長手方向に連続的に電極活物質が塗布された塗工部分1と、集電箔の長手方向に連続的に電極活物質が塗布されていない未塗工部分2とを有する電池用電極箔10のプレス方法において、未塗工部分2に凹凸の形状を転写して、未塗工部分2を延伸した後、電池用電極箔10を長手方向に連続してプレスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用の電極を製造する過程において、電極箔をプレスする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池用電極の製造方法としては、集電箔に電極活物質を塗布して、乾燥させた後、厚み調整と活物質層の空隙率調整の目的のためにロールプレスによる圧延工程を設けることが一般的である。この圧延工程では、電極活物質が塗布されている塗工部が圧延され、電極活物質が塗布されていない未塗工部は圧延されない。このため、特許文献1には、ロールプレス前に、電極活物質が塗布されていない未塗工部に切り欠きを設けておくことにより、ロールプレス後の塗工部の長さと未塗工部の長さがほぼ等しくなるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−208129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、未塗工部に切り欠きを設けるため、外部回路と接続する端子部分の形状や大きさに制約が加わるという問題が生じる。
【0005】
本発明は、未塗工部に切り欠きを設けることなく、プレス後の塗工部の長さと未塗工部の長さをほぼ等しくする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電池用電極箔のプレス方法は、長尺の集電箔の長手方向に連続的に電極活物質が塗布された塗工部分と、集電箔の長手方向に連続的に電極活物質が塗布されていない未塗工部分とを有する電池用電極箔をプレスする方法である。このプレス方法は、未塗工部分に凹凸の形状を転写して、未塗工部分を延伸するステップと、未塗工部分を延伸した後、電池用電極箔を長手方向に連続してプレスするステップとを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電極箔の未塗工部に切り欠きを設けることなく、プレス後の塗工部の長さと未塗工部の長さをほぼ等しくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ストライプ塗工によって、塗工部と未塗工部が形成された集電箔の平面図である。
【図2】電極箔の未塗工部にエンボス加工を施すとともに、エンボス加工後に、電極箔をプレスする様子を示す図である。
【図3】集電箔が巻き出しロールから巻き出されてから、巻き取りロールによって巻き取られるまでの経路を示す側面図である。
【図4】未塗工部に施されるエンボス加工の形状の様々な例を示す図である。
【図5】未塗工部と塗工部との境界付近におけるエンボス加工の形状のピッチが未塗工部の中心部分におけるエンボス加工の形状のピッチよりも短いエンボス加工の一例を示す図である。
【図6】電極箔を切断して電池用の極板に加工する際の周期がエンボス加工の模様の周期の2倍(整数倍)としたエンボス加工の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、一実施の形態における電池用電極箔のプレス方法について説明する。なお、電池用電極箔から製造される電池は、例えば、電気自動車やハイブリッド車に搭載されて使用される。
【0010】
電池用の電極の製造では、集電箔の片面または両面に電極活物質を塗布して乾燥させた後、ロールプレスを行う。ロールプレス後の電極箔10は切断加工されて、所望の大きさの電極板が製造される。
【0011】
集電箔は、導電性材料から構成されている。集電箔を構成する材料に特に制限はなく、例えば、金属や導電性高分子材料または非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂が採用される。
【0012】
電極活物質には、正極を構成するための正極活物質、および、負極を構成するための負極活物質がある。正極活物質および負極活物質としては、既知の材料を用いることができる。
【0013】
集電箔に電極活物質を塗布する際、集電箔の幅方向に塗工部と未塗工部とを交互に形成する、いわゆるストライプ塗工が知られている。ストライプ塗工は、集電箔の長手方向に連続的な未塗工部を形成する塗工方法であり、集電箔の幅方向に連続的な未塗工部を形成する間欠塗工に比べて、塗工速度の高速化を実現しやすい。
【0014】
図1は、ストライプ塗工によって、塗工部1と未塗工部2が形成された電極箔10の平面図である。塗工部1は、集電箔に電極活物質が塗布されている部分であり、未塗工部2は、電極活物質が塗布されていない部分である。図1に示すように、塗工部1および未塗工部2はそれぞれ、長手方向に連続的に形成されている。
【0015】
一実施の形態における電池用電極箔のプレス方法では、プレス前の電極箔10に対して、未塗工部2に凹凸加工を施す。凹凸加工とは、加工対象に凹凸を形成するための加工であり、例えば、エンボス加工である。
【0016】
図2は、電極箔10の未塗工部2にエンボス加工を施すとともに、エンボス加工後に、電極箔10をプレスする様子を示す図である。エンボス加工は、エンボス加工ロール21によって、電極箔10の幅方向に存在する全ての未塗工部2に対して行われる。
【0017】
エンボス加工ロール21は、電極箔10の未塗工部2を上側および下側の両側から挟み込む上下のロールから構成される。上述したように、全ての未塗工部2に対してエンボス加工を行うため、エンボス加工ロール21は、電極箔10の未塗工部2のそれぞれに対応して設けることが好ましい。
【0018】
未塗工部2に対してエンボス加工が施された電極箔10は、厚み調整および活物質層の空隙率調整等のために、プレスロール22によってプレスされる。プレスロール22も、電極箔10を上側および下側の両側から挟み込む上下のロールから構成されている。
【0019】
なお、プレスロール22によるプレス後の電極箔10は、未塗工部2に対して塗工部1が延伸されているため、未塗工部2のみに対して凹凸加工を施すのは困難である。従って、一実施の形態における電池用電極箔のプレス方法では、未塗工部2に凹凸加工を施してから、電極箔10のプレスを行う。
【0020】
図3は、集電箔10が巻き出しロール31から巻き出されてから、巻き取りロール32によって巻き取られるまでの経路を示す側面図である。電極活物質が塗布された電極箔10は、上述したように、エンボス加工ロール21によって、未塗工部2にエンボス加工が施される。その後、電極箔10は、プレスロール22によってプレスされ、巻き取りロール32によって巻き取られる。
【0021】
ここで、未塗工部2に対してエンボス加工を施した電極箔10を幅方向に引き伸ばした後、プレスロール22で加圧することが好ましい。エンボス加工後の未塗工部2は、幅方向にも凹凸の歪みによる長さの差が発生している。一般的には、そのままプレスロール22による加圧を行っても問題ないが、歪みの程度によっては、余った集電箔がプレスロール22の直下でZ字状に折り曲げられる可能性があり、そのようにしてできた歪みは、後工程では除去しにくい。従って、プレスロール22による加圧を行う前に、電極箔10を幅方向に引き伸ばして張力を加えることにより、上述した折り曲げが生じるのを防ぐことが好ましい。
【0022】
同様の理由により、巻き取りロール32による巻き取り時に、電極箔10の折り曲げが生じるのを防ぐため、電極箔10を幅方向に引き伸ばした後、巻き取りロール32で巻き取るようにしてもよい。
【0023】
図4は、未塗工部2に施されるエンボス加工の形状の様々な例を示す図である。図4(a)は、大きさが均一の円形形状を、図4(b)は、大きさが異なる円形形状を、図4(c)は楕円形状を、図4(d)はひし形の形状をそれぞれ示している。図4の(a)〜(d)において、斜線を付している部分は、上側に凸となる部分であり、斜線を付していない部分は、下側に凸となる部分である。ただし、エンボス加工の形状が図4(a)〜(d)に示す形状に限定されることはない。
【0024】
プレスロール22によってプレスされた電極箔10が巻き取りロール32によって巻き取られる際、未塗工部2の長さが塗工部1の長さよりも短いと、張力が未塗工部2にのみ加わり、電極箔10が切断する可能性がある。従って、一実施の形態における電池用電極箔のプレス方法では、巻き取り方向(長手方向)において、エンボス加工後の未塗工部2の長さと、プレスロール22によってプレスされた塗工部1の長さとがほぼ同じか、または、エンボス加工後の未塗工部2の長さの方が少し長くなるように、エンボス加工を施す。
【0025】
理想的には、エンボス加工後の未塗工部2の長さと、プレスロール22によってプレスされた塗工部1の長さが等しいことが望ましい。しかし、エンボス加工後の未塗工部2の長さと、プレスロール22によってプレスされた塗工部1の長さを完全に一致させることは難しい。また、エンボス加工後の未塗工部2の長さが、プレスロール22によってプレスされた塗工部1の長さよりもわずかに短い場合でも、長さの差が累積されることによって、未塗工部2への張力の集中が懸念される。従って、エンボス加工後の未塗工部2の長さと、プレスロール22によってプレスされた塗工部1の長さとがほぼ同じか、または、エンボス加工後の未塗工部2の長さの方が少し長くなるように、エンボス加工を施しておく。これにより、電極箔10が巻き取りロール32によって巻き取られる際に、張力が塗工部1に加わるので、未塗工部2に過大な張力が加わるのを防いで、電極箔10が切断するのを防ぐことができる。
【0026】
なお、電極箔10の未塗工部2に凹凸加工を施すので、電極取り出し端子の平坦性が失われた状態で、後の電池製造工程に送られる。しかし、電極取り出し端子には、超音波溶接のような圧着接合が行われるため、若干の凹凸が問題になることはない。
【0027】
ここで、未塗工部2にエンボス加工を施す際に、未塗工部2の中心部分と、塗工部1との境界付近とで、エンボス加工の形状を異なる形状としてもよい。例えば、未塗工部2と塗工部1との境界付近におけるエンボス加工の形状のピッチを、未塗工部2の中心部分におけるエンボス加工の形状のピッチよりも短くしておく。
【0028】
図5は、未塗工部2と塗工部1との境界付近におけるエンボス加工の形状のピッチP1が未塗工部2の中心部分におけるエンボス加工の形状のピッチP2よりも短いエンボス加工の一例を示す図である。未塗工部2の中心付近は、エンボス加工によって大きな波うち状態となっていても、電極箔10がプレスされた後の塗工部1の長さと大差無ければ問題にはならない。一方、未塗工部2と塗工部1との境界付近では、プレスロール22によって加圧される前と後では、長さが大きく異なる。このため、未塗工部2と塗工部1との境界付近におけるエンボス加工の形状のピッチを、未塗工部2の中心部分におけるエンボス加工の形状のピッチよりも短くしておくことにより、上述した長さの差を吸収して、プレスロール22の直下で電極箔10の切断が生じるのを効果的に抑制することができる。
【0029】
また、電極箔10を切断して電池用の極板に加工する際の周期がエンボス加工の模様の周期と同じか、または、整数倍となるように、エンボス加工を施すことが好ましい。すなわち、電池用の極板に加工するために、長尺の電極箔10を切断した際に、それぞれの極板における未塗工部2のエンボス加工の形状が同じとなるようにする。これは、電極箔10の未塗工部2は、電池用極板に加工される際に重ね合わせられて超音波溶接などによって機械的に接合されるため、重ね合わせられた未塗工部2のエンボス加工の模様を一致させることにより、集電箔の浮きを抑制して、接合の信頼性を向上させるためである。図6は、電極箔10を切断して電池用の極板に加工する際の切断周期T1がエンボス加工の模様の周期T2の2倍(整数倍)としたエンボス加工の一例を示す図である。
【0030】
さらに、エンボス加工ロール21によるエンボス加工を、1回の転写工程ではなく、複数回の転写工程により行うようにしてもよい。例えば、1回の転写工程では、未塗工部2の延伸が足りない場合や、上述した未塗工部2の中心付近と境界付近とで異なる形状のエンボス加工を施す場合に、複数回の転写工程によってエンボス加工を施すことにより、未塗工部2の必要な延伸を得ることができる。
【0031】
以上、一実施の形態における電池用電極箔のプレス方法は、長尺の集電箔の長手方向に連続的に電極活物質が塗布された塗工部分1と、集電箔の長手方向に連続的に電極活物質が塗布されていない未塗工部分2とを有する電池用電極箔10のプレス方法である。このプレス方法において、未塗工部分2に凹凸の形状を転写して、未塗工部分2を延伸した後、電池用電極箔10を長手方向に連続してプレスするので、プレス後の塗工部分の長さと未塗工部分の長さをほぼ等しくすることができる。これにより、プレス後の電極箔10が巻き取りロール32によって巻き取られる際に、張力が未塗工部2にのみ加わるのを防いで、電極箔10の切断を未然に防ぐことができる。また、ストライプ塗工による電極箔を高速にプレスして巻き取ることが可能となり、電極の製造を高速化することができる。さらに、連続生産による塗工膜厚安定性も向上し、生産コストの低減を図ることができる。
【0032】
特に、一実施の形態における電池用電極箔のプレス方法によれば、未塗工部分2を延伸する際に、エンボス加工によって未塗工部分2に凹凸の形状を転写するので、簡易な方法により、未塗工部分2の延伸を実現することができる。
【0033】
また、一実施の形態における電池用電極箔のプレス方法によれば、未塗工部分2を延伸する際に、延伸後の未塗工部分2の長さがプレス後の塗工部分1の長さと同じか、または長くなるように、未塗工部分2に凹凸の形状を転写する。これにより、電極箔10が巻き取りロール32によって巻き取られる際に、張力が塗工部1に加わるので、未塗工部2に過大な張力が加わるのを防いで、電極箔10が切断するのを確実に防ぐことができる。
【0034】
本発明は、上述した一実施の形態に限定されることはない。例えば、未塗工部2に施す凹凸加工は、上述したエンボス加工に限定されることはない。
【符号の説明】
【0035】
1…塗工部
2…未塗工部
10…電極箔
21…エンボス加工ロール
22…プレスロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の集電箔の長手方向に連続的に電極活物質が塗布された塗工部分と、前記集電箔の長手方向に連続的に前記電極活物質が塗布されていない未塗工部分とを有する電池用電極箔のプレス方法であって、
前記未塗工部分に凹凸の形状を転写して、未塗工部分を延伸するステップと、
前記未塗工部分を延伸した後、前記電池用電極箔を長手方向に連続してプレスするステップと、
を備えることを特徴とする電池用電極箔のプレス方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池用電極箔のプレス方法において、
前記未塗工部分を延伸するステップでは、エンボス加工によって前記未塗工部分に凹凸の形状を転写する、
ことを特徴とする電池用電極箔のプレス方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池用電極箔のプレス方法において、
前記未塗工部分を延伸するステップでは、延伸後の未塗工部分の長さがプレス後の塗工部分の長さと同じか、または長くなるように、前記未塗工部分に凹凸の形状を転写する、
ことを特徴とする電池用電極箔のプレス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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