説明

電波ビーコン

【課題】従来に比べて整備が容易な電波ビーコンを提供する。
【解決手段】従来は進行方向ごとにそれぞれ電波ビーコンを設置する必要があったが、本発明にかかる電波ビーコンは、1台で両進行方向の車両に対して情報提供を行うことができる。2本の指向性アンテナを設置し、進行方向に並ぶ2つの領域それぞれに同一内容のデータを含む電波信号を位相が互いに180度反転するように送出する。このデータには、両進行方向用のデータが含まれている。この場合、一方の進行方向用のデータを送信し終えたら、他方の進行方向用のデータを180度位相反転させて送信するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーション装置等の車載機に対して交通情報を提供する路上通信装置である電波ビーコンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電波ビーコンは、図1(a)のように、進行方向別に道路脇の設置柱に所定の高さで取り付けられており、道路上の所定の領域に交通情報等を含む電波を送出する機能を備えている。
各電波ビーコンの電波送出アンテナは図1(a)のように2方向に電波を送出できるようになっており、各送出電波の振幅変調の位相は互いに180度逆転している(上流側の領域に送出される電波を「逆相」、下流側を「正相」とする)。
車両は、電波ビーコンの近傍を通過する際、まず逆相の電波を受信可能な領域に進入し、その後、正相の電波を受信可能な領域に進入する。そして、この逆相から正相に位相が反転した時点で、この電波によって送信されているデータは自己宛のデータであると認識し、そのデータを取り込む、という動作を行うようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特公平6−44035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、逆相から正相の場合だけではなく、正相から逆相に反転したときにも車載機はデータを取り込むことができる、と記載されているが、現在普及している車載機は、正相から逆相に反転した場合のデータは自己宛のものではないとして破棄するように製作されており、逆相から正相に反転したことを検出した場合にのみ、そのデータが自己宛のデータであると認識して取り込むようになっている。
したがって、図1に示すように、車両の進行方向毎にそれぞれ電波ビーコンを設置する必要が生じ、電波ビーコンの整備やメンテナンスに手間やコストがかかるという問題がある。より多くの道路に効率よく整備するためには、新しいタイプの電波ビーコンを開発することが望ましい。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、従来に比べて整備が容易な電波ビーコンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる電波ビーコンは、道路上の進行方向に並べて設定された2つの領域に対して交通情報を含む電波信号を送出する機能を備え、この道路上を進行する車両であればその進行方向が上り方向か下り方向かを問わず受信可能な方式で電波信号を送出する電波送出回路を備えており、前記2つの領域のうち1の領域に対して送出される電波信号と、他の領域に対して送出される電波信号との振幅変調成分は互いに180度反転しており、さらに、各領域に送出される電波信号の振幅変調成分は、それぞれ所定の時間毎に同時に180度反転するように構成されている(請求項1)。
【0007】
この発明にかかる電波ビーコンであれば、2つの領域それぞれに対して正相と逆相の電波を交互に送出できるようになるため、1台の電波ビーコンを設置するだけで、互いに対向する2方向(上り方向および下り方向)に進行する車両のいずれもがデータを受信することができるようになる。従って、電波ビーコンの設置工事やメンテナンスがしやすくなり、電波ビーコンの整備が容易になり大変便利である。
【0008】
なお、前記電波送出回路は、上り方向に進行する車両用に用意された上り方向用データと下り方向に進行する車両用に用意された下り方向用データとを含む車両用データを記憶する記憶部と、前記記憶部から前記車両データの全部又は一部を読み出して送信データとして出力するデータ送信部と、前記送信データを送信するための搬送波信号を発生させる搬送波発信部と、前記搬送波発信部から出力される搬送波信号を前記データ送信部から出力される送信データによって変調して出力するデータ変調部と、前記データ送信部のデータ送信に同期して振幅変調用変調信号を発生させる変調信号発生部と、前記振幅変調用信号の位相を180度反転させる180度移相器と、前記変調信号発生部が発生させた振幅変調用変調信号を用いて前記送信データを振幅変調し、前記1の領域に送出する電波信号を生成する前記第一振幅変調部と、前記変調信号発生部が発生させた振幅変調用変調信号の位相を前記180度移相器で180度反転させた信号を用いて前記送信データを振幅変調し、前記他の領域に送出する電波信号を生成する前記第二振幅変調部とを備えており、前記変調信号発生部は、前記所定の周期で、発生させる振幅変調用変調信号を180度反転させるようにすると良い(請求項2)。
【0009】
この回路構成は、従来の電波ビーコンの回路を改良することで比較的容易に設計することが可能な構成であるため、従来の電波ビーコンの設計情報を活用して開発期間を短縮することが可能となる。
この回路において、所定の周期とは、例えば概ね100ミリ秒毎といった周期でも良いし、ある方向用データの送信を開始してから終了するまで、といった周期でも良い。なお、上り方向用データと下り方向用データとの内容が全く同一の内容となることがあっても良い。
【0010】
また、前記電波送出回路において、前記データ送信部は、上り方向用データ及び下り方向用データを交互に読み出して送信データとしてデータ変調部に出力するものであり、前記変調信号発生部は、前記送信データの内容が入れ替わる時点において、発生させる振幅変調用変調信号を180度反転させるようにしても良い(請求項3)。
【0011】
このように上り方向用と下り方向用のデータを交互に送出し、データを入れ替える毎に振幅変調用変調信号を180度反転させるようにすることで、いずれの方向に進行する車両に対しても、自身の進行方向用のデータを受信できる機会を均等に提供することが可能になる。
【0012】
なお、前記変調信号発生部は、発生させる振幅変調用変調信号を180度反転させる時点の直前の時点で、変調信号の周期よりも短い周期のパルス信号を発生させるとさらに好ましい(請求項4)。
送信データの中身を、上り方向用から下り方向用あるいはその逆に入れ替える直前のタイミングで、振幅変調の信号に短い周期のパルス信号を付加することで、このデータを受信する車両側が、受信した電波の振幅変調信号を復調する処理を実行する場合に、信号が立ち上がるかもしくは立ち下がるタイミングを監視する機能を備えているのであれば、その監視機能によっても、位相の反転が検出されるようになると考えられるため、車両側における位相反転の検出をより一層確実なものとすることができる点で大変有利である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の電波ビーコンは、従来2台設置しなければ実現されなかった機能を1台で実現するようにしたため、従来の電波ビーコンに比べて整備が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)は従来の電波ビーコンの設置図であり、図1(b)が本発明に係る電波ビーコンの設置図である。
【0015】
〔システムの全体構成〕
図1の(a)および(b)にあるように、従来は車両の進行方向毎に2台の電波ビーコンを設置する構成であったが、本発明の電波ビーコンは、1台で2つの進行方向の車両に対応することが可能な構成である。
図1(b)のように、本発明の電波ビーコンは道路の進行方向に並ぶ2つの領域Aと領域Bにそれぞれ電波を送出する機能を備えている。これらの領域は一部が重複するように設定されることが一般的である。
【0016】
この領域Aと領域Bには、GMSK等の方式でデータ変調を施した後に、データの送出と同期する1KHzの変調信号で振幅変調された電波信号が送出されている。
この領域Aと領域Bに送出される電波は、互いに180度逆転した変調信号に基づいて振幅変調されており、これら2つの領域が重複する部分では、2つの電波の振幅変調成分が互いに打ち消しあうようになっている。
特許文献1には、この振幅変調成分の打消し合う現象を確認した時点が重複した部分(電波ビーコンの設置地点近傍)を通過した時点であると車載機に認識させることで、自車の走行位置を正確に特定できるという位置標定に関する技術についても紹介されている。
【0017】
〔従来の電波ビーコンの動作〕
まず、従来の電波ビーコンから車両がデータを受信する場合の動作について、図1(a)を用いて説明する。
車両に搭載された車載機は、電波ビーコンの電波送出領域に進入すると、電波ビーコンからデータを受信した時点でそのデータから同期信号を検出し、その同期信号に基づいて変調信号fm2を再生させる。
また、電波ビーコンからデータを受信したら、電波ビーコンから送られてきた電波の振幅変調成分を復調して変調信号fm1を抽出する。
そして、受信データに基づいて再生する変調信号fm2と、電波ビーコンの振幅変調信号fm1とを比較することで、車載機は、電波ビーコンからの電波が正相か逆相かを判断することができる機能を備えている。
従来の電波ビーコンの場合は、車両進行方向上流側の逆相領域に逆相の電波を送出しているから、車載機はまず逆相の電波を受信したと認識する。
そして、逆相の領域を退出した後に続けて正相の領域に進入し、今度は正相の電波を受信したと認識する。
【0018】
車載機は、この逆相から正相に位相が180度反転したことを認識した時点で、それまで受信していた情報およびその後受信する情報は、自己に対して送信されている情報であると認識して取り込む機能を備えている。
このように、車両進行方向上流側に逆相の電波を、下流側に正相の電波をそれぞれ送出することで、電波ビーコンは車載機に対して必要な交通情報等を提供することができるようになっている。
【0019】
なお、この場合、逆相領域と正相領域に対して送出されているデータの中身は全く同一である。すなわち、データ変調成分は2つの領域で常に同一の信号となっている。
一方、振幅変調成分は逆相領域と正相領域とでは180度反転している。従って、既述の通り、逆相領域と正相領域が重複する電波ビーコン設置地点直近では、両方の領域に送出される電波の振幅変調成分が互いに打ち消しあって弱まり、車載機が受信できる振幅変調成分の受信レベルが急激に落ち込むことになる。
多くの車載機は、この振幅変調成分のレベルの落ち込みを検知した時点で、予め車載機が記憶している電波ビーコン設置地点を通過したものと判断し、GPS信号等によって検出した自己の走行位置を補正する機能を備えている。
このように、電波ビーコンの設置地点直近に振幅変調成分の受信レベルが急激に落ち込む領域を設定する機能は、電波ビーコンの備えるべき重要な機能の1つとなっている。
【0020】
〔本発明の電波ビーコンの動作〕
次に、本発明の電波ビーコンの動作の概要を、図1(b)を用いて説明する。
従来は、図1(a)のように双方向通行の道路の両端にそれぞれの進行方向用の電波ビーコンを2台設置し、各電波ビーコンから進行方向に応じたデータを送信する、という運用が行われてきたが、本発明により、双方向通行の道路においても、1台だけ設置して双方向の車両に情報を送信することが可能な電波ビーコンを提供できるようになる。
【0021】
本発明の電波ビーコンは、従来と同様に道路脇の設置柱に設けられ、道路の進行方向に並んで2つの領域Aおよび領域Bに電波を送出する機能を備えている。そして、1台で両進行方向の車線に対して電波を送出する。この2つの領域Aと領域Bとは、電波ビーコンの設置地点近傍で互いに重複するように設定される。
この領域Aと領域Bのそれぞれに送出される電波は図3に示す通りである。
【0022】
まず、領域Aに送出される電波は、図3(a)に示す電波を1サイクルとして、このサイクルを繰り返すようにして送出される。
領域Aの1サイクルの前半では、主に道路上を左から右に向かって進行する車両C1向けのデータであるアプリデータ1をデータ変調した信号で、振幅変調成分が逆相となる電波を送出する。そして、アプリデータ1を送出し終えたら、今度は主に右から左に向かって進行する車両C2向けのデータであるアプリデータ2をデータ変調した信号で、振幅変調成分が正相となる電波を送出する。
【0023】
一方、領域Bに送出される電波は、図3(b)に示す電波を1サイクルとして、このサイクルを繰り返すようにして送出される。
領域Bの1サイクルの前半では、主に道路上を左から右に向かって進行する車両C1向けのデータであるアプリデータ1をデータ変調した信号で、振幅変調成分が正相となる電波を送出する。そして、アプリデータ1を送出し終えたら、今度は主に右から左に向かって進行する車両C2向けのデータであるアプリデータ2をデータ変調した信号で、振幅変調成分が逆相となる電波を送出する。
【0024】
各領域の1サイクルの先頭は同期するように制御されており、領域Aに逆相の電波が送出されている時には、領域Bには正相の電波が送出されており、そのデータの中身は共にアプリデータ1である。
また、領域Aに正相の電波が送出されている時には、領域Bには逆相の電波が送出されており、そのデータの中身は共にアプリデータ2である。
従って、領域AとBの重複部分では、データ変調成分が常に同じで、それぞれ180度反転した振幅変調成分を持つ電波として送出され、振幅変調成分が互いに打消し合い、電波ビーコン設置地点近傍の受信レベルが急激に落ち込む機能を実現するようになっている。
【0025】
なお、領域Aおよび領域Bの車両進行方向の領域長さは、想定される車両の走行速度が最大の場合(例えば180km/h)であっても、少なくともその車両が電波ビーコンの1サイクルの電波送出期間内はその領域にとどまるような長さとして設定されることが好ましい。すなわち、領域Aと領域Bをあわせた領域の長さは、トータルで2サイクルの電波送出期間内はその領域にとどまるような長さとして設定されることが望ましい。
例えば、1サイクルのデータ送信所要時間が100msで、車両の最高走行速度を180km/hとすると、車両は100msの間に最大で5m走行するので、領域Aおよび領域Bの車両進行方向の領域長さはそれぞれ5m以上に設定される。そして、双方の領域が重複する部分も含めて、領域Aと領域Bをあわせた領域の長さがトータルで10m以上となるように設定しておくことが望ましい。
【0026】
〔本発明の電波ビーコンの回路構成〕
上記のような動作を実現するために、本発明の電波ビーコンは図2に示すような回路構成を備えている。
データ送信部11は、記憶部に記憶した車両向けのアプリケーションデータであるアプリデータ1とアプリデータ2を順次読み出し、データ変調部12にアプリケーションデータを出力する。データ変調部12は、搬送波発信部14で発生させた搬送波をアプリケーションデータで変調して第一振幅変調部15及び第二振幅変調部16に出力する機能を備えている。
この第一振幅変調部15には変調信号発生部13が発生させる振幅変調信号fm(通常は1KHzの周波数の信号)が、一方の第二振幅変調部16には変調信号発生部13が発生させた振幅変調信号fmを180度移相器17で180度反転させた振幅変調信号が、それぞれ供給されている。
【0027】
そして、第一振幅変調部15及び第二振幅変調部16は、供給されるこれらの振幅変調信号に基づいて、入力されたアプリケーションデータのデータ変調信号を振幅変調して出力する機能を備えている。
このようにして、同一内容のアプリケーションデータが互いに180度異なる振幅変調を施されて領域A及び領域Bに対して送出されるようになっている。
なお、変調信号発生部13で発生させる振幅変調信号fmは、データ送信部11がアプリケーションデータの先頭を出力するタイミングと同期するように制御されている。
【0028】
ここで、本発明では、振幅変調信号を発生させている変調信号発生部13が、アプリケーションデータの送出タイミングに応じて発生させる振幅変調信号fmを随時180度反転させる機能をさらに備えている。
具体的には、図3のアプリデータ1のフッタの送出を終えて次のアプリデータ2のヘッダを送出する前の時点(図中の破線で示す時点)で変調信号発生部13の振幅変調信号fmを180度反転させる。そうすると、図3に示すように、領域Aと領域Bに送出されている電波の振幅変調成分の位相が180度反転し、それまで正相の電波が送出されていた領域には逆相の電波が、逆相の電波が送出されていた領域には正相の電波が、それぞれ送出されるようになる。
そして、同じように、アプリデータ2のフッタの送出を終えて次のアプリデータ1のヘッダを送出する前の時点で変調信号発生部13の振幅変調信号fmを再び180度反転させる。そうすると、各領域の電波が再び反転し、前回アプリデータ1が送出されていた時と同じ位相で電波が送出されるようになる。
このように、アプリケーションデータを送出する度に振幅変調信号fmを180度反転させるように変調信号発生部13を制御することで、本発明の電波ビーコンの動作を実現することが可能になる。
【0029】
〔本発明の電波ビーコンから電波を受信する車両の動作〕
次に、この本発明の電波ビーコンから電波を受信する車両の動作を説明する。
なお、本発明の電波ビーコンは、少なくとも数年〜十数年程度の期間に順次設置することを想定しているから、通常は、従来の電波ビーコンと混在して設置される。従って、従来の電波ビーコンからの電波を正常に受信できていた従来までの車載機と全く同一の車載機で、従来の電波ビーコンおよび本発明の電波ビーコンの双方から必要な情報を受信することができるようにすることが望ましい。
そこで、従来の電波ビーコンから電波を受信できた車載機が、本発明の電波ビーコンからも正常に電波を受信することができ、従来の電波ビーコンの場合と同様の機能を実現することができるものであることを説明する。
【0030】
図1(b)の左から右に進行する車両C1に搭載された車載機は、道路上を進行中に、電波ビーコンの電波送出領域である領域Aに進入したら、電波ビーコンからの搬送波を検知する。搬送波を検知したら、その搬送波のデータを復調してアプリケーションデータを読み込むと共に、既述の通りの方法で、データに同期した振幅変調成分を抽出する。
ここで、車両C1が、アプリデータ1を送出するタイミングで領域Aに進入したと仮定すると、車両C1の車載機は、逆相の電波を受信したと認識する。領域Aでは、アプリデータ1の送出が完了すると、今度は正相のアプリデータ2の送出が開始されるため、車両C1は領域A内において、正相のアプリデータ2を受信することになる。
車両C1の車載機は、逆相から正相に位相が180度反転したことを検知するので、車両C1はこの時点で自己に対して電波が送出されているものと判断して、送出されているアプリデータ1およびアプリデータ2のいずれのデータをも取り込むことが出来る。
【0031】
一方、車両C1が、アプリデータ2を送出するタイミングで領域Aに進入したと仮定すると、車両C1の車載機は、正相の電波を受信したと認識する。領域Aでは、アプリデータ2の送出が完了すると、今度は逆相のアプリデータ1の送出が開始されるため、車両C1は領域A内において、逆相のアプリデータ1を受信することになる。
車両C1の車載機は、正相から逆相に位相が180度反転したことを検知するだけなので、車両C1はこの時点では自己に対して電波が送出されているものとは判断せず、データを取り込まない。
この場合、車両C1の走行速度が想定する最高走行速度(例えば180km/h)よりも小さいのであれば、車両C1は、逆相のアプリデータ1の送出が終わり、さらに次の正相のアプリデータ2の送出が開始された時点にもなお領域A内にとどまっているため、車両C1の車載機は、この時点で逆相から正相に位相が180度反転したことを検知してデータを取り込むことができる。
【0032】
もし、車両C1が想定される最高走行速度かそれに非常に近い速度で走行しているとすると、車両C1は、逆相のアプリデータ1の送出が終わる頃には、領域Aを退出して領域Bに進入することになる。
領域Bでは、領域Aとは逆に、逆相でアプリデータ2が送出されているため、車両C1の車載機は、逆相のアプリデータ1の次に逆相のアプリデータ2を受信することになる。従って、このタイミングにおいても、車両C1はデータを取り込むことは無い。
しかし、その後、領域Bにおいて、逆相のアプリデータ2の送出が終了し正相のアプリデータ1の送出が開始されると、この時点でようやく車両C1の車載機は逆相から正相に位相が180度反転したことを検知してデータを取り込むことができる。
この場合、車両C1は既にアプリデータ1およびアプリデータ2の双方を受信済みであるから、両方のデータを取り込むことができる。
【0033】
以上のように、車両C1は、どのような速度でどのタイミングで領域Aに進入したとしても、逆相から正相に位相が反転するタイミングを検知することができるため、主に自身の進行方向用のデータであるアプリデータ1を確実に受信することができる。
同様に、図1(b)の道路上を右から左に走行する車両C2についても、車両C1と同様に主に自身の進行方向用のデータであるアプリデータ2を確実に受信することができる。
【0034】
また、既述の通り、本発明の電波ビーコンであれば、設置地点近傍の2つの領域の重複部分では、振幅変調成分が互いに打消し合い、受信レベルが急激に落ち込む機能を実現できるため、車載機による位置標定機能も従来通り実現することが可能である。
【0035】
〔本発明の電波ビーコンの動作の変形例〕
以上のような動作を行う場合、図3の位相を180度反転させる時点(破線を施した時点)では、逆相から正相に変化する前後における振幅変調信号fmは、図に示す通り、一定期間Highに保たれる。同様に、正相から逆相に変化する前後における振幅変調信号fmは、一定期間Lowに保たれる。
位相が反転したことを車両側で確実に検出させるためには、位相反転が起きる時点で振幅変調信号のレベルが変化し、車両側が信号を取り出した場合にエッヂを検出できるような仕組みを備えさせておくことで、車両側における位相反転の検知を万全なものとすることができると考えられる。
【0036】
そこで、位相が180度反転する直前のタイミング、具体的には、位相反転直前に送信するデータのフッタ部分を送信する時点において、図4(a)や(b)に示すようなエッヂ検出用パルスを短い期間(例えばフッタ部分の送出期間等)だけ送出することが望ましい。
このようにすることで、位相が反転する直前に、車両側の振幅変調成分検出処理における受信処理の確実性を高め、位相反転の検知を万全なものとすることができるようになる。
【0037】
なお、本発明の電波ビーコンは以上の実施形態に示す方法以外の動作方法とすることもできる。
例えば、車載機の位置標定機能を実現しなくても良い(車載機としてのニーズが乏しい)ということであれば、電波ビーコンの電波信号送出領域を大きな1つの領域だけにして、正相と逆相で交互にアプリケーションデータを送出するという方法を用いても良い。
【0038】
また、アプリケーションデータの送出方法についても、アプリデータ1とアプリデータ2を交互に送信するのではなく、アプリデータ1を複数回送信した後でアプリデータ2を複数回送信し、これを繰り返すといった方法でも良い。この場合、上り方向と下り方向の交通量や平均走行速度に差があるのであれば、例えば交通量が多い方向に進行する車両向けのアプリケーションデータの送信回数を増加させても良いし、平均走行速度が速い方向に進行する車両向けのアプリケーションデータの送信回数を増加させるという方法でも良い。この交通量や平均走行速度は、電波ビーコン近傍に設置された車両感知器等から得られる感知器情報を参考にして取得すれば良い。
なお、どちらの方向に走行する車両に対しても同一のアプリケーションデータを送出しても良い。つまり、アプリデータ1とアプリデータ2の内容が全く同一であっても良い。
【0039】
また、変調信号発生部13が振幅変調信号の位相を180度切り替えるタイミングも、1つの進行方向用のアプリケーションデータを送出する毎に切り替えなくてもよく、アプリデータ1とアプリデータ2の双方を送り終えた後のタイミングで切り替えても良いし、何回か送った後でも良い。このタイミングは電波ビーコンの電波送出領域内でいずれの方向に進行する車両であっても、振幅変調信号が逆相から正相に切り替わったと認識できる程度の周期で切り替えれば良い。
【0040】
なお、本発明における電波ビーコンは、1の筐体によって実現されていても良いし、複数の筐体の組み合わせによって実現されても良い。また、これらは、どのような回路構成で実現されていても良く、それぞれ1つのコンピュータによって実現されていても良いし、複数のコンピュータを組み合わせて実現されていても良い。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来の電波ビーコン及び本発明に係る電波ビーコンの設置の概要を示す模式図である。
【図2】本発明に係る電波ビーコンの回路構成の一例を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る電波ビーコンから電波を送出する原理を説明する図である。
【図4】本発明の電波ビーコンから電波を送出する他の方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
1 電波ビーコン
10 記憶部
11 データ送信部
12 データ変調部
13 変調信号発生部
14 搬送波発信部
15 第一振幅変調部
16 第二振幅変調部
17 180度移相器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の進行方向に並べて設定された2つの領域に対して交通情報を含む電波信号を送出する機能を備え、この道路上を進行する車両であればその進行方向が上り方向か下り方向かを問わず受信可能な方式で前記電波信号を送出する電波送出回路を備える電波ビーコンであって、
前記2つの領域のうち1の領域に対して送出される電波信号と、他の領域に対して送出される電波信号との振幅変調成分は互いに180度反転しており、
さらに、各領域に送出される電波信号の振幅変調成分は、それぞれ所定の周期で同時に180度反転するように構成されていること
を特徴とする電波ビーコン。
【請求項2】
前記電波送出回路は、
上り方向に進行する車両用に用意された上り方向用データと下り方向に進行する車両用に用意された下り方向用データとを含む車両用データを記憶する記憶部と、
前記記憶部から前記車両データの全部又は一部を読み出して送信データとして出力するデータ送信部と、
前記送信データを送信するための搬送波信号を発生させる搬送波発信部と、
前記搬送波発信部から出力される搬送波信号を前記データ送信部から出力される送信データによって変調して出力するデータ変調部と、
前記データ送信部のデータ送信に同期して振幅変調用変調信号を発生させる変調信号発生部と、
前記振幅変調用信号の位相を180度反転させる180度移相器と、
前記変調信号発生部が発生させた振幅変調用変調信号を用いて前記送信データを振幅変調し、前記1の領域に送出する電波信号を生成する前記第一振幅変調部と、
前記変調信号発生部が発生させた振幅変調用変調信号の位相を前記180度移相器で180度反転させた信号を用いて前記送信データを振幅変調し、前記他の領域に送出する電波信号を生成する前記第二振幅変調部とを備えており、
前記変調信号発生部は、前記所定の周期で、発生させる振幅変調用変調信号を180度反転させること
を特徴とする請求項1に記載の電波ビーコン。
【請求項3】
前記データ送信部は、上り方向用データ及び下り方向用データを交互に読み出して送信データとしてデータ変調部に出力するものであり、
前記変調信号発生部は、前記送信データの内容が入れ替わる時点において、発生させる振幅変調用変調信号を180度反転させること
を特徴とする請求項2に記載の電波ビーコン。
【請求項4】
前記変調信号発生部は、発生させる振幅変調用変調信号を180度反転させる時点の直前の時点で、変調信号の周期よりも短い周期のパルス信号を発生させること
を特徴とする請求項2又は3に記載の電波ビーコン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−139417(P2010−139417A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316892(P2008−316892)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)