説明

電波CF発電

【課題】 電波を受信するアンテナは、従来は導電性があり電磁誘導作用を示す銅線などの金属で作り、アースも金属が用いられているが、有限資源の金属の代替として、導電性のある炭素繊維(CF)のアンテナとアースで電波を受信すると、電波受信性能がよいので、CFに電磁誘導機能が存在する事を探る。
【解決手段】 図2の電波受信回路に於て、アンテナ接続端子1−AにCFをアンテナとして接続し、アース接続端子2−EにCFをアースとして接続して、バリコン4−VCで特定周波数の電波に同調させると、負荷接続端子7−aと8−bに生ずる起電力と端子電流は、金属アンテナと金属アースを用いるよりも大きい。この結果から、CFには金属より優れた電磁誘導機能がある事を確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CFアンテナとCFアースをコイルに接続したゲルマラジオが感度良く聴取出来る事から、従来、CFにその存在が知られていない電磁誘導作用の性質がある事を突止め、CFアンテナとCFアースを接続してゲルマラジオが電波を受信して得られる電力は、金属アンテナと金属アースを接続してゲルマラジオが電波を受信して得られる電力より大きい事を見出したので、このCFの性質を利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を受信する空中線回路(アンテナ・コイル・アース)に於て、アンテナとアースには従来より金属が使われており、特開2003−111312の「電波電源システム」に於ける電波受信にも、従来からの金属アンテナが使われている。
又、アースは近くにある金属で大きい程よい(日刊工業新聞社発行:伊藤健一著「アースの話」)と言われるが、重くては持ち運び困難である。
このように、電波受信の空中線回路では金属使用が恒常となっており、これが電波受信性能の向上を阻んでいる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
池の水をビンで汲み取るのに、ビンの口が小さくては水を汲み取りにくい。電波受信でも、受信の入り口である空中線回路の性能が、受信効率を左右する事は論を持たない。
そこで、電気伝導性と電磁波シールド性は知られているが、電磁誘導機能については未知であるCFをアンテナに、電気伝導性のよいCFをアースに用いて、空中線回路の性能を探ってみる事が、本発明が解決しようとする課題であると考えた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決するための手段については、特願2004−043622に於て開示済であるが、以下[0005][0006]に再度記載する。
図1は、電波受信の基本回路であるゲルマラジオ(科学教材社のRA−1G)の回路図である。
ゲルマラジオの原理は周知であるので省略する。
このアンテナ接続端子1−A又はアース接続端子2−Eに各種の検体を接続して、負荷接続端子7−a、8−bに生ずる起電力と端子電流を測定する事で、課題を解決する手段を探った。
なお、ゲルマラジオは便宜上1134kHz(東京の文化放送)に同調しておく。
【0005】
(アース材の選定)
アンテナ接続端子1−Aを家庭用100Vの電源コンセントに接続し、アース接続端子2−Eには各種の検体を接続して、負荷接続端子7−a、8−bに生ずる起電力と端子電流を測定した。
測定は12時から12時30分の間に、東京都葛飾区金町の2階建家屋1階で行ない、(1)以外の検体の長さは便宜上200cmとし、(1)と同じコンクリート床面上に横たえた。
測定結果は次の通りである(数値は代表値で、決定値ではない)。
アース材の検体 起電力(V) 電流(mA)
(1)小型印刷機(約450kg) 1.35 0.048
(2)2.6mmφ鉄線(約45g) 0.60 0.024
(3)2.6mmφ銅線(約50g) 0.60 0.024
(4)PAN系CF10束(約16g) 1.35 0.047
(5)ピッチ系CF10束(約18g) 1.33 0.045
この結果、(4)は(1)と同程度の負荷出力をする事が観察される。
但し、PAN系CFは東邦テナックス社のHTA−12K E30(三菱レイヨン社のTR50S 15Lに相当)を、ピッチ系CFは三菱化学産資社のK6376Uを用いた(以下、同)。
【0006】
(アンテナ材の選定)
[0005]の結果から、PAN系又はピッチ系を問わずCFは金属よりアース性能が優れている事が示されたので、アース接続端子2−Eには長さ200cmのPAN系CF10束を接続し、アンテナ接続端子1−Aには銅線又はPAN系CFの各種検体をアンテナとして接続し、負荷接続端子7−a、8−bに生ずる起電力と端子電流を測定した。
なお、ピッチ系CFは折れ易いので用いない。
測定は12時から12時30分間に、東京都葛飾区東金町の江戸川河岸で行なった。
検体の長さは便宜上360cmで垂直型アンテナ(図4−13)とし、アースは江戸川護岸のコンクリートブロック面上に横たえた。
測定結果は次の通りである(数値は代表値で、決定値ではない)。
アンテナ材の検体 起電力(V) 電流(mA)
(1)0.5mmφ銅線(約6.6g) 0.52 0.06
(2)PAN系CF1束(約3.0g) 0.92 0.09
(3)PAN系CF2束(約6.0g) 1.25 0.12
(4)PAN系CF10束(約30.0g) 1.94 0.21
(1)と(3)を比べてみると、(3)は(1)の約5倍の電力を得られる事が観察される。
【0007】
[0005]と[0006]の結果を観察すると、空中線回路の性能はCFをアンテナとアースに用いると向上するので、この発電方法を「電波CF発電」と呼称し、電波CF発電が課題を解決するための手段である事を示した。
[0006]の結果は、CFに電磁誘導機能がある事を示している。即ち、電波を受信したCFアンテナ内に誘導起電力が生じ誘導電流が流れて、CFアンテナは金属アンテナと同じ電磁誘導作用を起した事が分かる。
CFの電磁誘導機能については、特願2006−197432に於て、次の現象によって示した。
CFで作ったコイル内に棒磁石を出し入れすると、コイルに誘導起電力が生ずる。あるいは、CF又は炭素が磁束を切るように動くと、CF又は炭素に誘導起電力が生ずる。
【0008】
(アンテナの型状別受信効果)
図2の空中線回路で、アンテナの型状別負荷出力を試行した。
試行は12時から12時30分の間に、東京都葛飾区東金町の江戸川河岸で行なった。
図2回路は便宜上1134kHz(東京の文化放送)に同調しておく。
アンテナの型状は図4の様な垂直型、T字型、逆L字型とする。地上からの高さは共通で、材質はPAN系CFを用い、アンテナ接続端子1−Aに接続した。
アースは長さ200cmのPAN系CF20束を、江戸川護岸のコンクリートブロック面上に横たえ、アース接続端子2−Eに接続した。
測定結果は次の通りである(数値は代表値であって、決定値ではない)。
アンテナの型状 起電力(V) 電流(mA)
(1)垂直型(PAN系CF10束) 3.32 0.30
(2)T字型(PAN系CF10束) 4.32 0.30
(3)逆L字型(PAN系CF10束) 7.52 0.32
この測定値を参考にして、用途によってアンテナ型状を選択する。
【0009】
(図2の回路から4−VCを外した図3回路の負荷出力)
様々な周波数の電波から特定の電波を受信するために、図1、図2の回路では4−VCを接続して同調回路を形成している。
アンテナには様々な周波数の電波による誘導電流が生じている。そこで、これらの合成電流による出力を4−VCを外した図3の回路で計測した。
試行は11時から11時30分の間に、東京都葛飾区東金町の江戸川河岸で行なった。
アンテナの型状は図4−14のT字型で、材質はPAN系CF10束を用いた。
アースは長さ200cmのPAN系CF20束を、江戸川護岸のコンクリートブロック面上に横たえ、アース接続端子2−Eに接続した。
測定値は次の通りである(数値は代表値で、決定値ではない)。
起電力(V):5.60 電流(mA):0.20
この結果と[0008]の(2)と比べると、同調回路が形成されている図2の回路では、VCを外した図3の回路より起電力は小さいが、生ずる電流が多い事が観察される。
【0010】
(CFアンテナ・CFアースと金属アンテナ・金属アースによる負荷出力)
[0009]の試行と同日同場所で、図3の回路に下記のCFアンテナとCFアースを接続した負荷出力と、同じく金属アンテナと金属アースを接続した負荷出力を測定した。
CFアンテナ:PAN系CF10束(長さ360cm)
CFアース:PAN系CF20束(長さ200cm)
金属アンテナ:0.5mmφ銅線(長さ360cm)
金属アース:2.6mmφ銅線(長さ200cm)
測定値は次の通りである(但し、アンテナの型状は図4−13の垂直型とし、数値は代表値で決定値ではない)。
(1)CFアンテナ・CFアース:起電力(V)3.25 電流(mA)0.15
(2)金属アンテナ・金属アース:起電力(V)1.54 電流(mA)0.07
この結果からも、CFのアンテナとアースは、金属のアンテナとアースより受信性能がよい事が観察される。
【発明の効果】
【0011】
アースにCFを用いた場合、[0005]によって長さ200cmのPAN系CF10朿(約16g)は、約450kgの金属塊(小型印刷機)とほぼ同等のアース性能がある事が示され、従来からアースは近くにある大きな金属塊と言われている説は否定された。
又、アンテナにCFを用いると、長さが360cmの0.5mmφ銅線(約6.6g)より、長さが360cmのPAN系CF1束(約3.0g)が、優れた電波受信性能を示す事が[0006]によって観察された。
この様なCFが電波受信現象を示すのは、CFの電磁誘導作用によるもので、CFの電磁誘導機能は金属の電磁誘導機能より優れている事が確かめられた。
従って、金属の代替として、金属より優れた受信性能のCFをアースとアンテナ又はコイルに使用する事で、次の様な本発明の効果がある。
(1)CFの電磁誘導作用を利用して、電波を受発信するシステムの性能を高める事が できる。
(2)ラジアルアースの敷設面積を縮小できる。
(3)大きな電力を使って発信されている電波を効果的に受信して発電する事で、電気 エネルギーの有効利用に役立つ。
(4)昼夜天候の別なく広範囲に飛び交う電波による電波CF発電と、太陽光発電、風 力発電、熱発電等との併用で、相互に短所を補う発電装置を作る事ができる。
(5)電波CF発電のために特定周波数の電波を発信する電波発信事業を創設できる。
(6)電波CF発電によって、小電力照明灯を容易に点す事が可能になり、無灯火地域 の解消に役立つ。
(7)避電装置にCFを備えて、避電性能を高める事が考えられる。
(8)化学的にも安定しているCFの用途が広がり、銅又は他の金属の消費を節約でき る。
なお、CFにはナノカーボンが存在する(日本実業出版社発行:武末高裕著「ナノカーボン革命」)ので、CFの製造方法によってナノカーボンの含有量に変化があっても、これにより本発明は限定されない。
又、CFが樹脂又は導電性接着剤又はナノカーボン又は金属によって加工されたものであっても、これにより本発明は限定されない。
更に、[請求項5]の電波受信装置(電波CF発電装置)が、複数個で並列又は直列にして用いられていても、これは本発明の範囲に入る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
多岐に亘る用途が考えられる本発明の電波CF発電は、実施するための形態を特定できないので、実施例によってその一端を示す。
【実施例1】
【0013】
図1で、ゲルマラジオのアンテナ接続端子1−Aに家庭用100Vの電源コンセントを接続し、アース接続端子2−Eにアース(長さ200cmのPAN系CF10束)を接続する。
場所は東京都葛飾区金町四丁目の2階建家屋の1階で、アースはコンクリート床面上に横たえる。
クリスタルイヤホンを負荷接続端子7−a、8−bに接続して任意の周波数、例えば文化放送(1134kHz)に同調させると、7−a、8−bに生ずる起電力は1.38Vで端子電流は0.048mAを示し、ラジオ放送は感度良く聴取できた。
【実施例2】
【0014】
[0009]の試行と同時間帯に、太陽光発電モジュール(動作特性1.0V・400mA)の出力を計測し、次の値を得た。
起電力(V):1.05 電流(mA):318.0
[0006][0008][0009]で観察される様に、電波CF発電は起電力は太陽光発電より大きいが、生ずる電流は小さい。
そこで上記太陽光発電モジュールと、[0009]の電波CF発電装置を直列に接続して、次の値を得た。
起電力(V):6.90 電流(mA):10.45
この様に、互いに短所を補う事によって大きな電力が得られる。
電波CF発電は昼夜を通して24時間作動が可能であるので、太陽光発電と風力発電又は熱発電に連結して、大きな効果を挙げる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 ゲルマラジオ(鉱石ラジオ)の回路図
【図2】 図1回路に、電解コンデンサを並列に接続した回路図
【図3】 図2の回路から4−VCを外した回路図
【図4】 アンテナの型状を表わす図
【符号の説明】
【0016】
1 アンテナ接続端子A
2 アース接続端子E
3 コイルL(SM2467)
4 バリコンVC
5 検波器D(ゲルマニウムダイオード1N60)
6 抵抗器R(1MΩ)
7 イヤホン接続端子a
8 イヤホン接続端子b
9 電解コンデンサC(33μF/16V)
10 負荷接続+端子c
11 負荷接続−端子d
12 電解コンデンサC(47μF/50V)
13 垂直型アンテナ(長さ360cm)
14 T字型アンテナ(垂直の長さ360cm、水平の長さ70cm)
15 逆L型アンテナ(垂直の長さ360cm、水平の長さ70cm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未知であった炭素繊維(以下、CFと略記)の電磁誘導機能を確認した本発明により、CFの電磁誘導機能が金属より優れている事を利用して、CFで作られるアンテナ(以下、CFアンテナと呼称)。
【請求項2】
CFの導電性を利用してアースに用いると、金属のアースより性能が優る事を確認した本発明により、CFで作るアース(以下、CFアースと呼称)。
【請求項3】
CFの電磁誘導作用を利用して、CFで作るコイル(以下、CFコイルと呼称)。
【請求項4】
[請求項1][請求項2]によって、アンテナ接続端子にCFアンテナを接続し、アース接続端子にCFアースを接続して電波を受信するゲルマラジオ(鉱石ラジオ)、又はそのキット。
【請求項5】
[請求項1][請求項2][請求項3]によって、アンテナ・コイル・アースからなる空中線回路に、CFアンテナ・CFコイル・CFアースを用いて作る電波受信装置。
【請求項6】
未知であったCFの電磁誘導機能を確認した本発明によって、CFの電磁誘導作用を利用して作られる製品、又は装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−21968(P2009−21968A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205921(P2007−205921)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(594183967)有限会社新日本社 (12)