説明

電源供給制御装置、及びこれを備える電子装置

【課題】電源の瞬時電圧降下を容易に緩和することができる電源供給制御装置、及びこれを備える電子装置を提供する。
【解決手段】電子装置が、複数の電子回路部のうちの少なくとも1つの電子回路部の電源供給線に設けられるスイッチ部と、このスイッチ部を制御する電源供給制御装置と、を備える。スイッチ部は、オン状態のときには複数の電子回路部のうちの少なくとも1つの電子回路部に電源から電力を供給し、オフ状態のときには該少なくとも1つの電子回路部への電力の供給を遮断する。電源供給制御装置は、電源から該少なくとも1つの電子回路部に電力の供給を開始するとき、スイッチ部のオン/オフの切り換えを繰り返した後に、スイッチ部をオン状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源供給制御装置、及びこれを備える電子装置に関し、特に電子回路部の電源供給線に設けられるスイッチ部を制御する電源供給制御装置、及びこれを備える電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置を複数の電子回路部に分割し、使用されていない電子回路部への電源の供給を止めることは、電子装置の消費電力の削減に有効な手法である。また、各電子回路部の電源供給線のインピーダンスを下げるために、各電子回路部の電源供給線にキャパシタを配することも一般的に行われている。
【0003】
図8は、従来の電子装置の一例を示す回路図である。図8に示すように、電子装置100は、電源101から電力の供給を受けている状態の第1電子回路部102aと、スイッチ部104を介して電源101から電力の供給を受ける第2電子回路部102bと、を有している。
【0004】
電子装置100は、電源供給制御装置105によって制御されるスイッチ部104により、第2電子回路部102bへの電力の供給を遮断できるようにした設計されている。電源供給制御装置105から入力される制御信号Xの出力がハイレベルであるとき、スイッチ部104がオン状態となる。また、電源供給制御装置105から入力される制御信号Xの出力がローレベルであるとき、スイッチ部104がオフ状態となる。このように、電源供給制御装置105は、スイッチ部104のオン/オフの切り換えを制御することにより、第2電子回路部102bへの電力の供給と遮断とを制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−104140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電源101から電力の供給が遮断されていない状態の第2電子回路部102bに電力の供給を開始すると、スイッチ部104をオフ状態からオン状態に切り換えた直後に突入電流が流れる。そして、第2電子回路部102bの電源供給線に配されたキャパシタ103に電荷が急速に移動するため、電源101に瞬時電圧低下が発生し、既に電源101から電力の供給を受けている状態の第1電子回路部102aに動作異常を引き起こすという問題が発生する。
【0007】
従来の電子装置100では、電源供給線のインピーダンスが十分に低いことが必要である。また、従来の電子装置100では、内部抵抗106の抵抗値が低い電源101及び内部抵抗107の抵抗値が低いスイッチ部104が使用される。しかしながら、電源供給線のインピーダンスや、内部抵抗106の抵抗値が低い電源101や内部抵抗107の内部抵抗値が低いほど、電源101の瞬時電圧降下の幅が大きくなる。
【0008】
これに対して、特許文献1では、電源から電力の供給を開始したときに生じるキャパシタへの電荷の急速な移動に伴う突入電流を回避するために、電源の出力電圧を段階的又は線形的に増加させている。しかしながら、図8に示す従来の電子装置に特許文献1を適用して、電源101の出力電圧を段階的又は線形的に増加させると、第1電子回路部102aに供給される電圧も段階的又は線形的に変化することになるので、第1電子回路部102aが動作異常を引き起こしてしまう。
【0009】
また、電源101の瞬時電圧降下を緩和するため、図9のように、第2電子回路部102bの電源供給線にインダクタ109を接続するなどの対策が考えられる。しかしながら、インダクタなどの部材を追加すると、部品点数の増加につながり、実装面積の増加や製造コストの上昇を招くという問題があった。また、電源供給線にインダクタを接続すると、電源供給線の交流インピーダンスを増加させるため、ノイズ耐性が減少するという問題も生じことになる。
【0010】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、電源の瞬時電圧降下を容易に緩和することができる電源供給制御装置、及びこれを備える電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の電源供給制御装置は、オン状態のときには複数の電子回路部のうちの少なくとも1つの電子回路部に電源から電力を供給し、オフ状態のときには前記電源から前記少なくとも1つの電子回路部への電力の供給を遮断するスイッチ部を制御し、前記電源から前記少なくとも1つの電子回路部に電力の供給を開始するとき、前記スイッチ部のオン/オフの切り換えを繰り返した後に、前記スイッチ部をオン状態にする。
【0012】
上記構成の電源供給制御装置によれば、複数の電子回路部のうちの少なくとも1つの電子回路部に電源から電力の供給を開始するとき、電源供給制御回路装置が、スイッチ部のオン/オフの切り換えを繰り返した後に、スイッチ部をオン状態にすることにより、電源の瞬時電圧降下を容易に緩和することができる。
【0013】
上記構成において、前記複数の電子回路部は、前記スイッチ部を介して前記電源から電力の供給を受ける第1電子回路部と、前記電源から電力の供給を受けている状態の第2電子回路部と、を少なくとも1つずつ含み、前記少なくとも1つの電子回路部は前記第1電子回路部であって、前記電源から前記第1電子回路部に電力の供給を開始するとき、前記スイッチ部のオン/オフの切り換えを繰り返した後に、前記スイッチ部をオン状態にしてもよい。
【0014】
また、上記構成において、前記スイッチ部がオフ状態から、予め定められた期間、前記スイッチ部のオン/オフの切り換えを繰り返した後に、前記スイッチ部をオン状態にしてもよい。
【0015】
また、上記構成において、前記スイッチ部のオン/オフの切り換えを予め定められた周期で繰り返してもよい。
【0016】
また、上記構成において、前記スイッチ部が半導体スイッチであってもよい。
【0017】
また、上記目的を達成するために、本発明の電子装置は、上記の電源供給制御装置と、複数の電子回路部のうちの少なくとも1つの電子回路部の電源供給線に設けられ、オン状態のときには電源から前記少なくとも1つの電子回路部に電力を供給し、オフ状態のときには前記電源から前記少なくとも1つの電子回路部への電力の供給を遮断するスイッチ部と、を備える。
【0018】
上記構成の電子装置によれば、複数の電子回路部のうちの少なくとも1つの電子回路部に電源から電力の供給を開始するとき、電源供給制御回路装置が、スイッチ部のオン/オフの切り換えを繰り返した後に、スイッチ部をオン状態にすることにより、電源の瞬時電圧降下を容易に緩和することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電源の瞬時電圧降下を容易に緩和することができる電源供給制御装置、及びこれを備える電子装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る電子装置の回路図である。
【図2】本実施形態に係る電子装置の等価回路図である。
【図3】電源供給制御装置によるスイッチ部のオン/オフの切り換え制御の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】実施例1における第1キャパシタ及び第2キャパシタに充電されている電圧の経時変化を示すグラフである。
【図5】実施例2における第1キャパシタ及び第2キャパシタに充電されている電圧の経時変化を示すグラフである。
【図6】実施例3における第1キャパシタ及び第2キャパシタに充電されている電圧の経時変化を示すグラフである。
【図7】比較例における第1キャパシタ及び第2キャパシタに充電されている電圧の経時変化を示すグラフである。
【図8】従来の電子装置の一例を示す回路図である。
【図9】電源供給線にインダクタを配した電子装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る電子装置の回路図である。また、図2は、本実施形態に係る電子装置の等価回路図である。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る電子装置1は、電源11と、2つの電子回路部12と、2つのキャパシタ13と、スイッチ部14と、電源供給制御装置15と、を備える。また、電源11は内部抵抗16を有し、スイッチ部14は内部抵抗17を有している。
【0023】
電源11は、電子装置1の電力源であり、2つの電子回路部12に電力を供給する。
【0024】
2つの電子回路部12は、第1電子回路部12aと、第2電子回路部12bとを含む。第1電子回路部12aは、電源11から電力の供給を受けている状態の電子回路ユニットである。第2電子回路部12bは、スイッチ部14を介して、電源11から電力の供給を受ける電子回路ユニットである。
【0025】
2つのキャパシタ13は、第1電子回路部12aの電源供給線に配される第1キャパシタ13aと、第2電子回路部12bの電源供給線に配される第2キャパシタ13bと、を含む。第1キャパシタ13aは、第1電子回路部12aの電源供給線のインピーダンスを下げるために、第1電子回路部12aの電源供給線と接地との間に配置されている。言い換えると、第1キャパシタ13aの一端は電源11とスイッチ部14との間の導電経路に接続され、他端は接地されている。また、第2キャパシタ13bは、第2電子回路部12bの電源供給線のインピーダンスを下げるために、第2電子回路部12bの電源供給線と接地との間に配置されている。言い換えると、第2キャパシタ13bの一端はスイッチ部14と第2電子回路部12bとの間の導電経路に接続され、他端は接地されている。
【0026】
スイッチ部14は、第2電子回路部12bの電源供給線に設けられた半導体スイッチであり、第2電子回路部12bに電源11から電力を供給するための電源供給線のオン/オフを切り換える。スイッチ部14の一端は電源11に接続され、その他端は第2電子回路部12b及び第2キャパシタに接続されている。スイッチ部14は、オン状態のときには第2電子回路部12bに電源11から電力を供給し、オフ状態のときには電源11から第2電子回路部12bへの電力の供給を遮断する。こうすれば、第2電子回路部12bを使用しないときには、第2電子回路部12bへの電力の供給を遮断することができるので、電子装置1の消費電力を削減することができる。
【0027】
電源供給制御装置15は、スイッチ部14を制御する制御回路ユニットである。電源供給制御装置15は、スイッチ部14のオン/オフを制御するための制御信号Xをスイッチ部14に出力する。たとえば、制御信号Xの出力がローレベル(以下、単にLと呼ぶ。)であるとき、スイッチ部14はオフ状態となり、制御信号Xの出力がハイレベル(以下、単にHと呼ぶ。)であるとき、スイッチ部14はオン状態となる。
【0028】
次に、電源供給制御装置15によるスイッチ部14のオン/オフの切り換えの制御方法について説明する。第2電子回路部12bに電力の供給を開始するとき、電源供給制御装置15は、スイッチ部14がオフ状態から、予め定められた期間、スイッチ部14のオン/オフの切り換えを予め定められた周期で繰り返した後に、スイッチ部14をオン状態にする。図3は、電源供給制御装置によるスイッチ部のオン/オフの切り換え制御の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【0029】
図3に示すように、時刻t<0において、電源供給制御装置15の制御信号Xの出力はLである。そのため、スイッチ部14はオフ状態となっている。次に、時刻t=0において、期間t1の間、制御信号Xの出力がHとなり、スイッチ部14がオン状態となる。その後、期間t2の間、制御信号Xの出力がLとなり、スイッチ部14がオフ状態となる。以後、時刻t=0から時刻Tまでの予め定められた期間、予め定められた周期(t1+t2)で、制御信号Xは、期間t1の間では出力Hとなり、期間t2の間では出力Lとなる出力の切り換え動作を繰り返す。その後、時刻T≦tでは、制御信号Xの出力がHとなる。
【0030】
そのため、スイッチ部14も同様に、時刻Tまでの間、周期(t1+t2)で、期間t1の間ではオン状態となり、期間t2の間ではオフ状態となる切り換え動作を繰り返した後、時刻T≦tにおいてオン状態となる。
【0031】
なお、期間t1及びt2や周期(t1+t2)は、第2電子回路部12bの電源供給線のインピーダンス、第2キャパシタ13bの静電容量、電源11の内部抵抗16やスイッチ部14の内部抵抗17の抵抗値により定まる第2キャパシタ13bの充電時間(たとえば充電が完了するまでの期間)よりも短い時間に設定される。
【0032】
このように、電源供給制御装置15は、時刻t<0において、スイッチ部14をオフ状態にするための第1制御信号を出力する。そして、第2電子回路部12bに電力の供給を開始するとき、電源供給制御装置15は、時刻t=0から時刻t=Tまでの予め定められた期間、予め定められた周期(t1+t2)で、スイッチ部14をオン状態にするための第2制御信号と、スイッチ部14をオフ状態にするための第1制御信号とをスイッチ部14に繰り返し出力する。さらに、時刻T≦tにおいて、電源供給制御装置15は、スイッチ部14をオン状態にするための第2制御信号をスイッチ部14に出力する。
【0033】
このような制御信号Xの出力の変化は次の数式1〜3で表すことができる。

【0034】
この結果、スイッチ部14は、時刻t<0においてオフ状態であるが、時刻t=0から時刻t=Tまでの予め定められた期間、予め定められた周期(t1+t2)で、期間t1の間ではオン状態となり、期間t2の間ではオフ状態となる切り換え動作を繰り返した後、時刻T≦tにおいてオン状態となる。こうすれば、後述する実施例1〜3及び比較例の結果から明らかなように、第2電子回路部12bに電力の供給を開始するときの電源11の瞬時電圧降下を容易に緩和することができる。
【0035】
次に、実施例1〜3として、上述のようなスイッチ部14のオン/オフの切り換えの制御を行ったときの結果を示す。なお、本実施形態の電子装置1では、電源11の出力電圧は、第1キャパシタ13aの蓄積電圧とほぼ同じ値となる。よって、以下の実験例1〜3では、電源11の出力電圧の経時変化として、第1キャパシタ13aの蓄積電圧の経時変化を示す。
<実施例1>
【0036】
実施例1では、次の条件下において、第1キャパシタ13a及び第2キャパシタ13bの蓄積電圧を測定した。
電源11の出力電圧(定常状態):3.3V、
電源11の内部抵抗16の抵抗値:0.05Ω、
スイッチ部14の内部抵抗17の抵抗値:0.05Ω、
第1キャパシタ13aの静電容量:300μF、
第2キャパシタ13bの静電容量:300μF、
期間t1:3μsec、
期間t2:97μsec、
時刻t=0から時刻Tまでの時間:490msec
【0037】
図4は、実施例1における第1キャパシタ13a及び第2キャパシタ13bに充電されている電圧の経時変化を示すグラフである。図4では、グラフL1aが第1キャパシタ13aに充電されている電圧の経時変化(すなわち電源11の出力電圧の経時変化)を示し、グラフL1bが第2キャパシタ13bに充電されている電圧の経時変化を示している。また、時刻t=0は、第2電子回路部12bに電力の供給を開始した時刻である。
【0038】
図4に示すように、実施例1では、第2電子回路部12bへの電力の供給開始直後における第1キャパシタ13aでの瞬時電圧降下の幅は最大で0.08Vであった。この幅は、定常状態(たとえば期間t<0又はT≦t)における電源11の出力電圧3.3Vのおよそ2.4%程度である。
<実施例2>
【0039】
実施例2では、次の条件下において、第1キャパシタ13a及び第2キャパシタ13bの蓄積電圧を測定した。
電源11の出力電圧(定常状態):3.3V、
電源11の内部抵抗16の抵抗値:0.05Ω、
スイッチ部14の内部抵抗17の抵抗値:0.05Ω、
第1キャパシタ13aの静電容量:300μF、
第2キャパシタ13bの静電容量:300μF、
期間t1:2μsec、
期間t2:98μsec、
時刻t=0から時刻Tまでの時間:490msec
【0040】
図5は、実施例2における第1キャパシタ13a及び第2キャパシタ13bに充電されている電圧の経時変化を示すグラフである。図5では、グラフL2aが第1キャパシタ13aに充電されている電圧の経時変化(すなわち電源11の出力電圧の経時変化)を示し、グラフL2bが第2キャパシタ13bに充電されている電圧の経時変化を示している。また、時刻t=0は、第2電子回路部12bに電力の供給を開始した時刻である。
【0041】
図5に示すように、実施例2では、第2電子回路部12bへの電力の供給開始直後における第1キャパシタ13aの瞬時電圧降下の幅は最大で0.06Vであった。この幅は、定常状態(たとえば期間t<0又はT≦t)における電源11の出力電圧3.3Vのおよそ1.8%程度である。
<実施例3>
【0042】
実施例3では、次の条件下において、第1キャパシタ13a及び第2キャパシタ13bの蓄積電圧を測定した。
電源11の出力電圧(定常状態):3.3V、
電源11の内部抵抗16の抵抗値:0.05Ω、
スイッチ部14の内部抵抗17の抵抗値:0.05Ω、
第1キャパシタ13aの静電容量:300μF、
第2キャパシタ13bの静電容量:300μF、
期間t1:5μsec、
期間t2:95μsec、
時刻t=0から時刻Tまでの時間:490msec
【0043】
図6は、実施例3における第1キャパシタ13a及び第2キャパシタ13bに充電されている電圧の経時変化を示すグラフである。図6では、グラフL3aが第1キャパシタ13aに充電されている電圧の経時変化(すなわち電源11の出力電圧の経時変化)を示し、グラフL3bが第2キャパシタ13bに充電されている電圧の経時変化を示している。また、時刻t=0は、第2電子回路部12bに電力の供給を開始した時刻である。
【0044】
図6に示すように、実施例3では、第2電子回路部12bへの電力の供給開始直後における第1キャパシタ13aの瞬時電圧降下の幅は最大で0.13Vであった。この幅は、定常状態(たとえば期間t<0又はT≦t)における電源11の出力電圧3.3Vのおよそ3.9%程度である。
<比較例>
【0045】
次に、比較例として、前述のような電源供給制御装置15によるスイッチ部14のオン/オフの切り換えの制御を行わなかったときの結果を示す。比較例では、第2電子回路部12bに電力の供給を開始する時刻以前(時刻t<0)ではスイッチ部14がオフ状態であり、第2電子回路部12bに電力の供給を開始する時刻以後(時刻t≧0)ではスイッチ部14をオン状態にした。また、比較例では、次の条件下において、期間0≦t≦1000msecでの、第1キャパシタ13a及び第2キャパシタ13bの蓄積電圧を測定した。
電源11の出力電圧:3.3V、
電源11の内部抵抗16:0.05Ω、
スイッチ部14の内部抵抗17:0.05Ω、
第1キャパシタ13aの静電容量:300μF、
第2キャパシタ13bの静電容量:300μF
【0046】
図7は、比較例における第1キャパシタ13a及び第2キャパシタ13bに充電されている電圧の経時変化を示すグラフである。図7では、グラフlaが第1キャパシタ13aに充電されている電圧の経時変化(すなわち電源11の出力電圧の経時変化)を示し、グラフlbが第2キャパシタ13bに充電されている電圧の経時変化を示している。また、時刻t=0は、第2電子回路部12bに電力の供給を開始した時刻である。
【0047】
図7に示すように、比較例では、第2電子回路部12bへの電力の供給開始直後における第1キャパシタ13aの瞬時電圧降下の幅は最大で0.89Vであった。この幅は、定常状態(たとえば期間t<0)における電源11の出力電圧3.3Vのおよそ27.0%に及ぶ。
【0048】
以上のように、実施例1〜3では、比較例と比べて、第2電子回路部12bへの電力の供給開始直後における第1キャパシタ13aの瞬時電圧降下の幅を非常に小さくすることができた。そのため、実施例1〜3では、比較例と比べて、第2電子回路部12bに電力の供給を開始するとき、既に電力が供給されている第1電子回路部12aの動作異常を発生しにくくすることができる。
【0049】
このように、本実施形態に係る電子装置1では、電源11から第2電子回路部12bに電力の供給を開始するとき、予め定められた期間、第2電子回路部12bに電力を予め定められた周期で間欠的に供給することにより、第2電子回路部12bに電力の供給を開始した直後に発生する電源11の瞬時電圧降下を容易に緩和することができる。
【0050】
以上、本発明について実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせに色々な変形例が可能であり、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0051】
なお、本実施形態では、たとえば、制御信号Xの出力がLであるとき、スイッチ部14はオフ状態となり、制御信号Xの出力がHであるとき、スイッチ部14はオフ状態となるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、制御信号Xの出力がHであるとき、スイッチ部14はオフ状態となり、制御信号Xの出力がLであるとき、スイッチ部14はオフ状態となってもよい。
【0052】
また、本実施形態では、電子装置1が第1電子回路部12a及び第2電子回路部を1つずつ備えているが、本発明はこの構成に限定されない。第1電子回路部12aは複数であってよいし、第2電子回路部12bも複数であってもよい。第1電子回路部12aが複数である場合には、個別の第1キャパシタ13aが各々の第1電子回路部12aの電源供給線に設けられる。また、第2電子回路部12bが複数である場合には、個別の第2キャパシタ13bが各々の第2電子回路部12bの電源供給線に設けられる。さらに、第2電子回路部12bが複数である場合には、全ての第2電子回路部12bが1つのスイッチ部14を介して電源11から電力を供給されてもよい。或いは、各々の第2電子回路部12bが個別のスイッチ部14を介して電源11から電力を供給されてもよい。言い換えると、個別のスイッチ部14が各々の電子回路部12の電源供給線に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、部品点数及び実装面積の増加や製造コストの上昇を招くことなく、消費電力及び電源の瞬時電圧降下の低減を実現する電源供給制御装置や電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1、100 電子装置
11、101 電源
12 電子回路部
12a、102a 第1電子回路部
12b、102b 第2電子回路部
13、103 キャパシタ
13a 第1キャパシタ
13b 第2キャパシタ
14、104 スイッチ部
15、105 電源供給制御装置
16、106 電源の内部抵抗
17、107 スイッチ部の内部抵抗
109 インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オン状態のときには複数の電子回路部のうちの少なくとも1つの電子回路部に電源から電力を供給し、オフ状態のときには前記電源から前記少なくとも1つの電子回路部への電力の供給を遮断するスイッチ部を制御し、
前記電源から前記少なくとも1つの電子回路部に電力の供給を開始するとき、前記スイッチ部のオン/オフの切り換えを繰り返した後に、前記スイッチ部をオン状態にすることを特徴とする電源供給制御装置。
【請求項2】
前記複数の電子回路部は、前記スイッチ部を介して前記電源から電力の供給を受ける第1電子回路部と、前記電源から電力の供給を受けている状態の第2電子回路部と、を少なくとも1つずつ含み、
前記少なくとも1つの電子回路部は前記第1電子回路部であって、
前記電源から前記第1電子回路部に電力の供給を開始するとき、前記スイッチ部のオン/オフの切り換えを繰り返した後に、前記スイッチ部をオン状態にすることを特徴とする請求項1に記載の電源供給制御装置。
【請求項3】
前記スイッチ部がオフ状態のときから、予め定められた期間、前記スイッチ部のオン/オフの切り換えを繰り返した後に、前記スイッチ部をオン状態にすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電源供給制御装置。
【請求項4】
前記スイッチ部のオン/オフの切り換えを予め定められた周期で繰り返すことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電源供給制御装置。
【請求項5】
前記スイッチ部が半導体スイッチであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電源供給制御装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電源供給制御装置と、
複数の電子回路部のうちの少なくとも1つの電子回路部の電源供給線に設けられ、オン状態のときには電源から前記少なくとも1つの電子回路部に電力を供給し、オフ状態のときには前記電源から前記少なくとも1つの電子回路部への電力の供給を遮断するスイッチ部と、
を備えることを特徴とする電子装置。
【請求項7】
前記複数の電子回路部の各々の電源供給線のインピーダンスを下げるためのキャパシタをさらに備え、
前記複数の電子回路部の各々において、前記キャパシタが、個別の前記電源供給線と接地との間に接続されることを特徴とする請求項6に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59214(P2013−59214A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196418(P2011−196418)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】