説明

電源監視回路及び方法

【課題】省電力状態時にバックアップされているメモリデータの保護と主電池の挿抜検出を行う電源監視回路を提供する。
【解決手段】主電池1から電力供給を受ける電源回路3と、主電池の挿抜を検出する主電源挿抜検出回路4と、電源回路から電源供給を受けて高負荷デバイス9に電源を供給する電源供給制御回路5とを備え、主電源挿抜検出回路は、主電池の挿抜状態をCPU6へ通知する信号S4−1を出力すると共に、主電池が抜かれた場合に電源供給を制限する電源供給制御マスク信号S4−2を電源供給制御回路に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末の電源監視回路において、省電力状態下における電源状態監視(電池等の挿抜監視)をハードウェア制御で行う電源監視回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯端末の電源監視回路の構成を、図4を参照して説明する。主電池1から電池ロック検出信号がCPU6へ入力されている。CPU6は、電池ロックの開閉を検出すると省電力状態へ移行する。しかし、省電力状態下では主電池の挿抜検出は行えない。
【0003】
また、高負荷デバイス9からの信号によりCPU6が復帰される省電力状態時、主電池を挿抜されることによってバックアップされているCPUやメモリを安全に退避させるために、高負荷デバイス9の電源供給を停止させる。
【0004】
あるいは、専用の電源コントロール用のCPUが常に動作し、電源監視を行う構成とすることもできる(ソフトウェアで監視する)。
【0005】
また、電源を電池パック又は予備電池に切り替える切替手段と、電池パックの電圧レベルを検知する電圧検出手段とを備え、電池パックを交換する際に、切替手段に対して電源を電池パックから予備電池に切り替えるように指示し、電池パックの交換が行われたことを電圧検出手段が検出したとき、電源を予備電池から電池パックに切り替えるように指示する電池パック交換処理機能付き携帯電話装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−165514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術の構成では、次のような課題がある。
【0007】
第1の課題は、省電力モード時にソフトウェアを停止(サスペンド)しているため、主電池の挿抜検出をできないことである。
【0008】
第2の課題は、主電池の挿抜によるデバイスの電源供給不可のため、異常状態からの復帰時に再起動が必要であり、この再起動に時間がかかることである。
【0009】
そこで本発明は、省電力状態時にバックアップされているメモリデータの保護と主電池の挿抜検出を行う電源監視回路及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明は、主電池から電力供給を受ける電源回路と、主電池の挿抜を検出する主電源挿抜検出回路と、前記電源回路から電源供給を受けて高負荷デバイスに電源を供給する電源供給制御回路とを備えた電源監視回路であって、前記主電源挿抜検出回路は、主電池電流検出信号と外部電源電流検出信号とを入力とする論理AND回路により、外部電源電流がオフのとき、主電源の挿抜を検出し、前記論理AND回路の出力と装置の省電力モードを示すシステムイネーブル信号を信号ラッチ回路に入力することにより主電池の挿抜状態を保持して、CPUが省電力モードから復帰した際に主電池の挿抜状態を通知すると共に、主電池が抜かれた場合に電源供給を制限する電源供給制御マスク信号を前記電源供給制御回路に出力することを特徴とする。
【0011】
以上の構成によって、CPUが省電力状態時、主電池を挿抜された際に、バックアップされているCPUやメモリのデータを安全に確保し、高負荷デバイスの電源供給を停止すると共に、主電池の挿抜状態を記憶する。
【0012】
次回の起動時に、CPUがこの状態を検出した場合、デバイスの初期化のみを追加処理し、電源異常時の起動時間の短縮化をはかると共に、省電力状態直前からの処理が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による第1の効果は、CPUの省電力モード時に、ハードウェアによる主電池の挿抜を監視しているので、プログラムの停止状態であっても、電源異常を検出することが可能となることである。
【0014】
第2の効果は、主電池挿抜による電源異常検出後、次回起動時に必要最低限のデバイスの再初期化で起動することが可能となることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の電源監視回路の概略構成図である。主電池1及び外部電源2(ACアダプタ等)は、装置を動作させるための電源であり、それぞれS1−1、S2−1のルートを経て電源回路3へ電源供給する。
【0017】
電源検出信号S1−2及びS2−2は、主電池挿抜検出回路4へ入力され、主電池挿抜検出回路4は主電池の挿抜状態をCPU6へ通知すると共に、高負荷デバイス9へ電源を供給する電源供給制御回路5へ制御信号を与える機能を有する。
【0018】
Wake検出回路8は、高負荷デバイス9からの信号S9−1を受けて、省電力状態のCPU6を復帰させるためのWake信号S8−1を出力する回路である。
【0019】
図2は、電源監視回路を構成する主電池挿抜検出回路の詳細構成を示す。主電池挿抜検出回路4は、論理AND回路41、信号ラッチ回路42を有し、外部電源による給電がなく、CPU6が省電力状態時に、主電池が挿抜されたことを次回の起動時に検出することを可能とする。
【0020】
論理AND回路41には、主電池電流検出信号S1−2と外部電源電流検出信号S2−2が入力され、その出力が信号ラッチ回路42に入力される。論理AND回路41が主電池電流検出信号S1−2を外部電源電流検出信号S2−2によってマスク(論理的にANDする)することによって、外部からの給電がない状態で主電池挿抜検が可能となる。すなわち外部電源電流検出信号S2−2がオフ状態であり、かつ主電池電流検出信号S1−2がオフ状態となったとき、主電池が抜かれたことを検出する。
【0021】
信号ラッチ回路42には、論理AND回路41からの出力とシステムイネーブル信号S0−1が入力され、CPU6に通知信号S4−1を出力すると共に、電源供給制御回路5へ電源供給制御マスク信号S4−2を出力する。システムイネーブル信号S0−1は、装置の省電力モードを表す。この信号がアクティブになったときシステム電源がオンされ、CPU、メモリ等の副電池7によるバックアップ系電源が通常電源に切り替わる。また、CPU6から通知信号クリア信号S6−1が出力されて、信号ラッチ回路42に入力される。
【0022】
信号ラッチ回路42にシステムイネーブル信号S0−1をコントロール信号として入力することによって、論理AND回路41の出力をシステムイネーブル信号S0−1でマスクする。これにより、システムイネーブル信号S0−1が装置の省電力モードを示すとき、論理AND回路41の出力が主電池が抜かれたことを示す状態になったことを保持して、主電池の挿抜検出を可能とする。
【0023】
高負荷デバイス9を動作させている状態において、バックアップされているデータを安全に保護するため、電源供給制御回路5へ電源供給制御マスク信号S4−2を出力することにより、電源供給制御を行うことを可能とする。省電力モードで主電池1が抜かれ、その後主電池1が接続された場合、CPU、メモリ等に電源供給し、高負荷デバイス9には電源供給しない。その状態で装置が再起動されると、ソフトウェアにて高負荷デバイス9に電源供給を開始する。
【0024】
小型軽量化が必要な携帯端末では、主電池は非常に大きくて重いものであり、通常バックアップ用の副電池は小型で供給電流量の小さいものを使用する。このため、主電池が抜かれれば、装置の動作に十分な電流が得られず、副電池で供給できる電流は小さいので、高負荷デバイスに電源を供給すれば、電源回路のアラートでバックアップ系の電源が停止し、メモリデータが破壊されて初期起動による復帰のみとなる。もし、ファイルのオープン中にデータが破壊された場合、システムソフトの再インストールが必要となる。
【0025】
電源供給制御マスク信号S4−2によって動作中の高負荷デバイス9の電源供給を制御し、バックアップされているメモリ61のデータ及びCPU6の保護をハードウェアで実施する。すなわち、省電力モードで主電池1が抜かれると、高負荷デバイス9の電源供給を制御してオフとし、メモリのデータ等を副電池7にてバックアップする。
【0026】
その後、主電池1が接続されてデータ保護が確保されれば、再起動し、装置の状態を主電池が抜かれる前の状態に戻す処理を行う。すなわち次回の起動時に、CPU6は通知信号S4−1の状態により主電池1の挿抜があったことを検出して、主電池挿抜検出回路4の初期化を行い、高負荷デバイス9への電源供給を再開した後、これの初期化を行い、主電池挿抜前の状態に戻すことができる。
【0027】
なお、本実施例の高負荷デバイス9とは通信デバイス等であり、外部からのアクセス(通信)を受けて、CPU6をWakeUpさせる信号を出力することが可能なデバイスである。
【0028】
このようにして、本実施例では、負荷の重いデバイス9を電源制御し、かつCPU6の省電力状態下で主電池の挿抜を監視し、安全に電源制御を実施することができる。
【0029】
なお、図1の構成中で、電源回路及びバックアップ系回路等は周知であり、本発明とは直接関係しないので、その詳細な構成は省略する。
【実施例2】
【0030】
図3は、本発明の実施例2の構成を示す。その基本的構成は実施例1と同様であるが、電源供給制御回路5が複数のデバイス9〜11を制御する。本実施例では、主電池挿抜検出回路4は、設定された優先順位を元に負荷デバイスを複数制御することを可能とする。各回路の基本的な動作は上記実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の電源監視回路の概略構成図である。
【図2】主電池挿抜検出回路の構成図である。
【図3】本発明の実施例2の構成図である。
【図4】従来の携帯端末の電源監視回路の構成図である。
【符号の説明】
【0032】
1 主電池
2 外部電源
3 電源回路
4 主電池挿抜検出回路
5 電源供給制御回路
6 CPU
7 副電池
8 Wake検出回路
9 高負荷デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電池から電力供給を受ける電源回路と、
主電池の挿抜を検出する主電源挿抜検出回路と、
前記電源回路から電源供給を受けて高負荷デバイスに電源を供給する電源供給制御回路とを備えた電源監視回路であって、
前記主電源挿抜検出回路は、主電池の挿抜状態をCPUへ通知する信号を出力すると共に、主電池が抜かれた場合に電源供給を制限する電源供給制御マスク信号を前記電源供給制御回路に出力することを特徴とする電源監視回路。
【請求項2】
前記主電源挿抜検出回路は、主電池電流検出信号と外部電源電流検出信号とを入力とする論理AND回路を有し、
外部電源電流がオフのとき、主電源の挿抜を検出することを特徴とする請求項1に記載の電源監視回路。
【請求項3】
前記論理AND回路の出力と装置の省電力モードを表すシステムイネーブル信号とを入力とする信号ラッチ回路をさらに有し、
前記信号ラッチ回路は、システムイネーブル信号が省電力モードを示すとき、主電池の挿抜状態を保持して、CPUが省電力モードから復帰した際に主電池の挿抜状態を通知することを特徴とする請求項2に記載の電源監視回路。
【請求項4】
高負荷デバイスからの信号を受けて、省電力状態のCPUを復帰させるためのWake信号を出力するWake検出回路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電源監視回路。
【請求項5】
主電池から電力供給を受ける電源回路と、主電池の挿抜を検出する主電源挿抜検出回路と、前記電源回路から電源供給を受けて高負荷デバイスに電源を供給する電源供給制御回路とによる電源監視方法であって、
前記主電源挿抜検出回路が、主電池の挿抜状態をCPUへ通知する信号を出力すると共に、主電池が抜かれた場合に電源供給を制限する電源供給制御マスク信号を前記電源供給制御回路に出力することを特徴とする電源監視方法。
【請求項6】
前記主電源挿抜検出回路は、主電池電流検出信号と外部電源電流検出信号との論理ANDにより、外部電源電流がオフのとき、主電源の挿抜を検出し、
装置のシステムイネーブル信号が省電力モードを示すとき、主電池の挿抜状態を保持して、CPUが省電力モードから復帰した際に主電池の挿抜状態を通知することを特徴とする請求項5に記載の電源監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−246644(P2006−246644A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60729(P2005−60729)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】