説明

電源装置

【課題】電源コードが不要で、電池の交換などのメンテナンス作業も行うことなく、効率よく駆動用電力が得られる電源装置を実現すること。
【解決手段】時間変動する磁束に関連した誘導起電力を出力するように構成された複数の磁束検出素子を磁束発生体の近傍に設け、これら複数の磁束検出素子の誘導起電力をエネルギー源とすることを特徴とする電源装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、詳しくは、電源コードを介することなく非接触で給電を行うことができ、メンテナンスも不要な電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を駆動源とする電気機器に電力を供給する方法としては、電池あるいは商用電源と電気機器とを電源コードを介して接続することが一般に行われている。
【0003】
ところが、電池による電力供給の場合は、蓄電された電気エネルギーを放電した後は、電池の交換や充電が必要である。したがって、定期的なメンテナンスが必要であるだけでなく、設置場所も制約されることになる。
【0004】
そして、商用電源に電源コードを接続して電力供給を行う場合には、電気機器を電源コンセントの近くに設置するという設置場所の制約や、電源コンセント設置などの電源工事を行う必要がある。
【0005】
これら電源コードを用いることに起因する不都合を解決する給電方法として、特許文献1に記載されているように、たとえば無線通信装置において、受信電波のエネルギーを電源エネルギーとして使用することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−134981
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、受信電波のエネルギーを電源エネルギーとして使用するのにあたっては、大きなエネルギーを取り込むためには、受信アンテナの形状を大きくする必要がある。
【0008】
また、十分な電力を取り込むためには、長時間の受信が必要であり、その間は送信が行えないという不都合が生じる。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決するものであって、その目的は、電源コードを介することなく非接触で、電池の交換などのメンテナンス作業も行うことなく、効率よく駆動用電力が得られる電源装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
時間変動する磁束に関連した誘導起電力を出力するように構成された複数の磁束検出素子を磁束発生体の近傍に設け、これら複数の磁束検出素子の誘導起電力をエネルギー源とすることを特徴とする電源装置である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載の電源装置において、
前記磁束検出素子は、互いに直交するコアにそれぞれコイルが巻き付けられた2軸コイルを含むことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の電源装置において、
前記複数の磁束検出素子は、前記磁束発生体が発生する磁束の方向に対して水平な平面上に配列されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載の電源装置において、
前記複数の磁束検出素子は紐状に連結され、前記磁束発生体の外周に巻き付けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1に記載の電源装置において、
前記電源装置は、
前記磁束検出素子の誘導起電力を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力を平滑するコンデンサと、
前記コンデンサの出力に基づき安定した電力を発生する安定化回路、
とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
これらにより、電源コードを介することなく非接触で、電池の交換などのメンテナンス作業も行うことなく、効率よく駆動用電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明で用いる磁束検出素子の具体例を示す構成説明図である。
【図2】1個の2軸コイルBCを用いた電源回路の具体例図である。
【図3】複数の2軸コイルBCを用いた具体的な構成例を示す構成説明図である。
【図4】図3の構成における磁束方向の説明図である。
【図5】図4の各コイルにおける磁束の方向と出力電圧の関係を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施例を示す構成説明図である。
【図7】本発明の他の実施例を示す構成説明図である。
【図8】本発明に基づく電源装置を用いたセンサ端末の構成例図である。
【図9】本発明に基づく電源装置を用いたアクチュエータ端末の構成例図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明で用いる磁束検出素子の具体例を示す構成説明図であって、(A)は2軸コイルBCの例を示し、(B)は3軸コイルTCの例を示している。
【0018】
図1(A)において、互いに直交するコア1a、1bにはそれぞれコイル2a、2bが巻き付けられていて、コイル2aから電圧Vが出力され、コイル2aから電圧V2が出力される。2軸コイルBCは、磁束発生体から発生する磁束が、2軸コイルBCの2軸を含む平面上を貫く場合を検出するのに好適である。
【0019】
図1(B)において、互いに直交するコア1a、1b、1cにはそれぞれコイル2a、2b、2cが巻き付けられていて、コイル2aから電圧Vが出力され、コイル2aから電圧V2が出力され、コイル2cから電圧V3が出力される。3軸コイルTCは、磁束発生体から発生する磁束が、任意の方向を向いている場合を検出するのに好適である。
【0020】
これら2軸コイルBCおよび3軸コイルTCは、たとえばマイクロ加工技術により外形寸法を1mm*1mm*1mm程度の小型部品として構成することができる。
【0021】
図2は、1個の2軸コイルBCを用いた電源回路の具体例図である。2軸コイルBCのそれぞれのコイル2a、2bには、各コイル2a、2bに発生した起電力を整流する整流回路3a、3bが接続されている。これら整流回路3a、3bには、各整流回路3a、3bの出力を平滑するコンデンサ4a、4bが接続されている。これらコンデンサ4a、4bには、各コンデンサ4a、4bの出力に基づき安定した電力を発生する安定化回路5a、5bが接続されている。これら安定化回路5a、5bの出力は、並列接続されている。
【0022】
図3は、複数の2軸コイルBCを用いた具体的な構成例を示す構成説明図である。図3において、2線ケーブル6は2本の導線7a、7bが平行状態で絶縁被覆されたものである。2線ケーブル6をたとえば商用電源の配線に用いることにより、これら2本の導線7a、7bには交流電流が流れるとともに、絶縁被覆の外周近傍にも時間変動する磁束が発生する。
【0023】
複数の2軸コイルBCは、2線ケーブル6から発生する磁束の方向に対して水平であって2本の導線7a、7bに対して垂直な平面になる基板8上に、2線ケーブル6を囲むようにして配列される。なお、これら各2軸コイルBCには、それぞれ図2に示すような回路部品が接続されているが図示しない。
【0024】
図4は、図3の構成で用いられる2線ケーブル6の2本の導線7a、7bの周辺における磁束方向の説明図である。図4に示すように、複数の2軸コイルBCには、それぞれの配置位置に応じて、それぞれ異なった方向の磁束FLXが貫通する。
【0025】
図5は、図4に配置されている2軸コイルBCa〜BCcのそれぞれの配置位置における磁束の方向と出力電圧の関係を示す説明図である。ファラデーの電磁誘導の法則により、各コイルに生じる誘導起電力Vは、コイルを貫く磁束φの単位時間当たりの変化に比例する。
【0026】
ここで、2軸コイルBCa〜BCcそれぞれのコイルの巻き数をnとすると、各コイルに生じる誘導起電力Vは以下のように表すことができる。
【0027】
<2軸コイルBCa>
【0028】

【0029】

【0030】
<2軸コイルBCb>
【0031】

【0032】

【0033】
<2軸コイルBCc>
【0034】

【0035】

【0036】
このように2軸コイルBCa〜BCcの位置に応じて磁束φの方向が異なるが、図2の2軸コイルBC1個で構成された具体例でも説明したように、平面上のいかなる方向の磁束であっても、周囲の磁束が時間変動するときに、直交する2軸のコイル2a、2bの出力を合成することにより、無駄なく、効率よく、電気エネルギーに変換することができる。
【0037】
時間変動する周囲の磁束を、互いに直交するコアにそれぞれコイルが巻き付けられた2軸コイルを含む磁束検出素子で検出して電気エネルギーに変換できるので、電池や商用電源から電力供給を受ける場合のような電源コードの接続は不要になる。
【0038】
複数の磁束検出素子を磁束発生体の近傍に設けることにより、磁束発生体の周囲における磁束の方向が平面上のどのような方向であっても、磁束検出素子のコイルにより無駄なく、効率よく、電気エネルギーに変換することができる。
【0039】
磁束検出素子のコイル取り付けにあたり、高度の位置精度は不要であり、効率よく取り付け作業を行える。
【0040】
また、磁束検出素子の検出電圧は一旦コンデンサに蓄えられるので、周囲の磁束が途切れた場合でも、電気エネルギーを連続的に出力することができる。
【0041】
図6は、本発明の他の実施例を示す構成説明図である。図6の実施例では、MEMSや半導体技術を用いて基板8上に多数の微小な2軸コイルBCを2次元アレイ状に形成配列するとともに、基板8の中央部分に2線ケーブル6を貫通させるための窓部81を設けている。
【0042】
図6の構成によれば、図3の基板よりも広い範囲に多数の2軸コイルBCが形成配列されているので、周囲の磁束をさらに無駄なく電気エネルギーに変換できる。
【0043】
図7も、本発明の他の実施例を示す構成説明図である。図7の実施例では、磁束発生体である単線ケーブル9の磁束を検出する場合を示している。この場合、単線ケーブル9は導線10が1本のみであることから、発生する磁束の方向は比較的単純である。したがって、2軸コイルBCの1軸を省略した1軸コイル構成としてもよい。図7において、コア1aは単線ケーブル9の外周を取り巻くようにリング状に形成されていて、コア1aの一部にコイル2aが巻きつけられている。
【0044】
なお、図示しないが、複数の磁束検出素子を紐状に連結して磁束発生体の外周に巻きつけるようにしてもよい。
【0045】
本発明に基づく電源装置を用いることにより、電池交換などのメンテナンスが不要で、商用電源からの電源コードの接続による電力供給も不要なリモート端末を実現できる。
【0046】
図8は、センサ端末の構成例を示している。本発明に基づく電源装置100は、電源装置100の近傍に敷設されている電源ケーブル200を磁束供給源として、センサ300および通信部400に供給すべき駆動電力を生成する。
【0047】
センサ300としては、温度、磁界、流量、電流、湿度、空気成分、塵埃など、たとえば石油・化学・薬品・発電・上下水道などの各種プラントやオフィスなどにおける各種の物理量を電気信号として測定するものがある。センサ300は、測定信号を通信部400に出力する。なお、図には示していないが、電源装置100の出力側に、コンデンサや2次電池で構成される蓄電装置を接続することにより、周囲の磁束が途切れた場合でも、長時間にわたり電気エネルギーを連続的に出力することができる。
【0048】
通信部400は、センサ300が測定した測定信号を外部に送信出力する。通信部400としては、無線通信、光通信、あるいは本発明の電源装置における磁束供給源となる電源ケーブル200に高周波信号を重畳させてもよい。
【0049】
図9はアクチュエータ端末の構成例であり、図8と共通する部分には同一の符号を付けている。電源装置100は、電源装置100の近傍に敷設されている電源ケーブル200を磁束供給源として、アクチュエータ500および通信部400に供給すべき駆動電力を生成する。なお、図には示していないが、電源装置100の出力側に、コンデンサや2次電池で構成される蓄電装置を接続することにより、周囲の磁束が途切れた場合でも、長時間にわたり電気エネルギーを連続的に出力することができる。
【0050】
通信部400は、外部から入力されるアクチュエータ500を駆動するための制御信号を受信し、アクチュエータ500に出力する。
【0051】
アクチュエータ500としては、たとえば石油・化学・薬品・発電・上下水道などの各種プラントやオフィスなどを構成するスイッチやバルブなどがある。
【0052】
以上説明したように、本発明によれば、電源コードを介することなく非接触で、電池の交換などのメンテナンス作業も行うことなく、効率よく駆動用電力が得られる電源装置を実現することができ、石油・化学・薬品・発電・上下水道などの各種プラントやオフィスなどにおけるリモート端末の電源装置に好適である。
【符号の説明】
【0053】
1a、1b コア
2a、2b コイル
3a、3b 整流回路
4a、4b コンデンサ
5a、5b 安定化回路
6 2線ケーブル
7a、7b 導線
8 基板
9 単線ケーブル
10 導線
BC 2軸コイル
TC 3軸コイル
100 電源装置
200 電源ケーブル
300 センサ
400 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間変動する磁束に関連した誘導起電力を出力するように構成された複数の磁束検出素子を磁束発生体の近傍に設け、これら複数の磁束検出素子の誘導起電力をエネルギー源とすることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記磁束検出素子は、互いに直交するコアにそれぞれコイルが巻き付けられた2軸コイルを含むことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記複数の磁束検出素子は、前記磁束発生体が発生する磁束の方向に対して水平な平面上に配列されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記複数の磁束検出素子は紐状に連結され、前記磁束発生体の外周に巻き付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電源装置は、
前記磁束検出素子の誘導起電力を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力を平滑するコンデンサと、
前記コンデンサの出力に基づき安定した電力を発生する安定化回路、
とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。

【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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