説明

電源設備用のエージェント装置、蓄電池用のエージェント装置、中継設備用のエージェント装置、スマートグリッドシステム、及び、コンピュータプログラム

【課題】電力の流入流出に関する管理を従来よりもきめ細かに実現可能となる技術を提供する。
【解決手段】本発明の中継設備用のエージェント装置30は、送電網1に含まれる中継設備の管理用として設けられ、他の電気設備の管理用として周辺に設けられている他のエージェント装置と通信可能である。エージェント装置30は、中継設備に流入してくる流入電力量及び当該流入電力量の電源種別毎の内訳を取得する流入電力情報取得部31と、中継設備から流出させる流出電力量を電源種別毎に求める流出電力情報取得部32と、流出電力情報取得部によって求められた電源種別毎の流出電力量を、要求に応じて他のエージェント装置へ出力する情報出力部33とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電網に含まれる様々な設備の管理用として設けられるエージェント装置、このエージェント装置を備えたスマートグリッドシステム、及び、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護への意識の高まりから、CO排出削減など環境負荷低減の要求が高まっている。その対応策の一つとして、太陽光発電設備、風力発電設備などの自然エネルギーを利用した発電設備の開発が進み、特に太陽光発電については小規模(家庭用)太陽発電設備(ソーラパネル)を家屋や企業などに設置することもある。
太陽光や風力などの自然エネルギーを利用した電源は出力が不安定であることから、このような電源を、既存の大規模電力網と連係させて電力の安定供給を確保するためには、様々な技術が必要となる。
【0003】
その技術の一つとして、スマートグリッドが注目されており、このスマートグリッドではスマートメータと呼ばれる機器が設置される(例えば、特許文献1参照)。スマートメータは、家屋や企業内のエアコン、冷蔵庫などの電気機器、さらには前記小規模太陽発電設備と接続されており、これらの稼働状況を把握する機能の他に、通信機能を備えている。そして、スマートメータは、電気機器及び小規模太陽発電設備の稼働状況の情報を、前記通信機能を用いて電力会社に送信することができ、多くのスマートメータから集約された情報が電力会社のホストコンピュータによって管理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−36118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スマートメータを用いたスマートグリッドによれば、集約された情報に基づいて、電力会社側から家屋や企業などの電力需用者に対して、スマートメータを介して様々なサービスを提供することが可能となる。
しかし、このような型式のシステム(マスタースレーブ型のシステム)では、電力会社のホストコンピュータが、多くの電力需用者、及び、今後増加していく上記小規模太陽発電設備を一元的に管理することとなるため、例えば電力の流入流出に関する管理をきめ細かに行うことは困難となることが予想される。
【0006】
そこで、本発明は、電力の流入流出に関する管理を従来よりもきめ細かに実現可能となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記目的を達成するため、本発明は、送電網に含まれる電源設備の管理用として設けられ、他の電気設備の管理用として周辺に設けられている他のエージェント装置と通信可能な電源設備用のエージェント装置であって、前記電源設備から前記他の電気設備へと供給可能な電力量を取得する電力量取得部と、前記電源設備の種別についての情報を取得する情報取得部と、取得された前記電力量及び前記種別についての情報を、要求に応じて前記他のエージェント装置へ出力する情報出力部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の電源設備用のエージェント装置によれば、電力量取得部及び情報取得部が取得した情報を、要求に応じて情報出力部は他のエージェント装置へ出力するので、この情報を受けた他のエージェント装置では、電源設備用のエージェント装置が管理する電源設備から当該他のエージェント装置が管理する他の電気設備へと供給される電力量を、電源設備の種別と共に認識することができる。
したがって、このような電源設備用のエージェント装置及び他のエージェント装置を複数含むスマートグリッドシステムを構築すれば、従来のように電力会社のホストコンピュータが多数の電気設備を一元的に管理する必要がなくなるため、従来よりもきめ細かな電力の流入流出に関する管理が可能となる。
【0009】
(2)また、本発明は、送電網に含まれる蓄電池の管理用として設けられ、他の電気設備の管理用として周辺に設けられている他のエージェント装置と通信可能な蓄電池用のエージェント装置であって、前記蓄電池への充電に要する電力量を取得する充電用電力量取得部と、前記蓄電池からの放電により前記他の電気設備へと供給可能な電力量を取得する放電用電力量取得部と、放電の際に、前記放電用電力量取得部によって取得された前記電力量及び前記他の電気設備への電力供給が前記蓄電池の放電によるものであることを示す情報を、要求に応じて前記他のエージェント装置へ出力する情報出力部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の蓄電池用のエージェント装置によれば、放電の際に、放電用電力量取得部が取得した情報及び他の電気設備への電力供給が蓄電池の放電によるものであることを示す情報を、要求に応じて他のエージェント装置へ出力するので、この情報を受けた他のエージェント装置では、蓄電池から当該他のエージェント装置が管理する他の電気設備へと供給される電力量を認識することができる。
したがって、このような蓄電池用のエージェント装置及び他のエージェント装置を複数含むスマートグリッドシステムを構築すれば、従来のように電力会社のホストコンピュータが多数の電気設備を一元的に管理する必要がなくなるため、従来よりもきめ細かな電力の流入流出に関する管理が可能となる。
【0011】
(3)また、本発明は、送電網に含まれる中継設備の管理用として設けられ、他の電気設備の管理用として周辺に設けられている他のエージェント装置と通信可能な中継設備用のエージェント装置であって、前記中継設備に流入してくる流入電力量及び当該流入電力量の電源種別毎の内訳を取得する流入電力情報取得部と、前記中継設備から流出させる流出電力量を電源種別毎に求める流出電力情報取得部と、前記流出電力情報取得部によって求められた電源種別毎の流出電力量を、要求に応じて前記他のエージェント装置へ出力する情報出力部とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の中継設備用のエージェント装置によれば、流入電力情報取得部が取得した中継設備に流入してくる流入電力量及びその流入電力量の電源種別毎の内訳を取得するので、当該中継設備において、流入してくる流入電力量を電源種別毎に認識することができる。また、流出電力情報取得部によって求められた電源種別毎の流出電力量を、要求に応じて他のエージェント装置へ出力するので、これを受けた他のエージェント装置では、中継設備用のエージェント装置が管理する中継設備から当該他のエージェント装置が管理する他の電気設備へと供給される(流出させる)電力量を、電源種別毎に認識することができる。
したがって、このような中継設備用のエージェント装置及び他のエージェント装置を複数含むスマートグリッドシステムを構築すれば、従来のように電力会社のホストコンピュータが多数の電気設備を一元的に管理する必要がなくなるため、従来よりもきめ細かな電力の流入流出に関する管理が可能となる。
【0013】
(4)また、本発明は、送電網に含まれる各設備の管理用として設けられているエージェント装置を複数備えたスマートグリッドシステムであって、前記エージェント装置に、前記(1)〜(3)の少なくとも一項に記載のエージェント装置が含まれていることを特徴とする。
本発明によれば、前記(1)〜(3)の少なくとも一つのエージェント装置を複数備えたスマートグリッドシステムとなり、従来のように電力会社のホストコンピュータが多数の電気設備を一元的に管理する必要がなくなるため、従来よりもきめ細かな電力の流入流出に関する管理が可能となる。
【0014】
(5)また、本発明は、コンピュータを、前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のエージェント装置として機能させるためのコンピュータプログラムである。
このプログラムにより、前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のエージェント装置として機能させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電力会社のホストコンピュータが多数の電気設備を一元的に管理する必要がなくなるため、従来よりもきめ細かな電力の流入流出に関する管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のスマートグリッドシステムの一例を示すモデル図である。
【図2】スマートグリッドシステムの一部の構成を示す構成図である。
【図3】電源設備用のエージェント装置の構成図である。
【図4】蓄電池用のエージェント装置の構成図である。
【図5】需要電気設備用のエージェント装置の構成図である。
【図6】中継設備用のエージェント装置の構成図である。
【図7】エージェント装置の動作の具体例について説明するためのモデル図である。
【図8】エージェント装置の動作の他の具体例について説明するためのモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔1.全体構成について〕
図1は、本発明のスマートグリッドシステムの一例を示すモデル図であり、図2は、このスマートグリッドシステムの一部の構成を示す構成図である。このスマートグリッドシステム(以下、単にシステムともいう)は、大規模な発電所からなるベース電源設備、送電所(変電所)などの中継設備、分散型電源設備、及び、電力需用者の需要電気設備を含む送電網1を備えている。これら電気設備間は送電線によって接続されている。
【0018】
本実施形態において、前記ベース電源設備は火力発電所P1であるが、この他に、水力発電所、原子力発電所であってもよい。前記中継設備は、一つの電気設備から送電を受け一つの電気設備へと送電する送電所(変電所)L1の他に、複数の送電線が合流する送電所L2、送電線を複数に分岐させる送電所L3がある。なお、この中継設備には、地中や柱上に設けられている規模が小さいものも含まれる。
【0019】
前記分散型電源設備は、風力発電所S1の他、小規模の太陽光発電設備(家庭用太陽光発電設備)S2,S3がある。なお、図1には含まれていないが、分散型電源設備として、ガスタービン発電機及び燃料電池などがある。
前記需要電気設備は、生産機械などを備えている工場M1の他に、エアコン及び冷蔵庫などの電気機器を備えている家屋(一般家庭)M2,M3がある。
【0020】
そして、本発明のスマートグリッドシステムでは、前記送電網1に含まれる様々な前記電気設備の管理用のエージェント装置が設けられている。本実施形態に係るエージェント装置は、各種プログラムを備えたコンピュータを有しており、電気設備の管理(電力の流入及び流出などの監視及び制御)を行う機能を備えている。なお、以下の説明では、エージェント装置を、単にエージェントと呼んで説明する。
【0021】
前記エージェントは、エージェントとして機能させるためのコンピュータプログラムをインストールしたコンピュータを有して構成されている。後述するエージェントの各機能は、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されることで発揮される。コンピュータは、処理装置、記憶装置、入出力装置などを有している。なお、コンピュータプログラムは、CD−ROM、DVD−ROMなどの記録媒体に格納して販売、譲渡することができる。また、コンピュータプログラムの販売・譲渡は、コンピュータプログラムがネットワーク経由でダウンロード可能に格納されたサーバから、コンピュータにダウンロードさせることで行ってもよい。
【0022】
本実施形態のスマートグリッドシステムでは、電源設備用のエージェント10(図3参照)、蓄電池用のエージェント20(図4参照)、需要電気設備用のエージェント40(図5参照)、及び、中継設備用のエージェント30(図6参照)が設けられている。
【0023】
前記「電源設備」には前記発電所、前記分散型電源設備が含まれ、本実施形態(図1)では、電源設備用のエージェントとして、火力発電所P1用のエージェント10−1、風力発電所S1用のエージェント10−2、太陽光発電設備S2,S3用のエージェント10−3,10−4が設けられている。以下、これら電源設備用のエージェント10−1,10−2,10−3,10−4の各々を「エージェント10」と呼ぶこともある。
【0024】
前記送電網1中の蓄電池B1、B2も電源設備に含まれるが、エージェントとしては蓄電池用の(専用の)エージェント20−1,20−2が設けられている。以下、これら蓄電池用のエージェント20−1,20−2の各々を「エージェント20」と呼ぶこともある。
【0025】
本実施形態(図1)では、前記「中継設備」に、送電所L1−1,L1−2の他に、送電線を合流させる送電所L2、送電線を分岐させる送電所L3があり、さらには、地中や柱上に設けられている規模が小さい送電器L4,L5も含まれている。そして、中継設備用のエージェントとして、エージェント30−1〜30−6が設けられている。以下、これら中継設備用のエージェント30−1〜30−6の各々を「エージェント30」と呼ぶこともある。
【0026】
需要電気設備用のエージェントは、需要電気設備の管理用として設けられており、本実施形態(図1)では、工場M1用のエージェント40−1、家屋M2,M3の用のエージェント40−2,40−3が設けられている。以下、需要電気設備用のエージェント40−1〜40−3の各々を「エージェント40」と呼ぶこともある。
【0027】
〔2.電源設備用のエージェントについて〕
電源設備用のエージェント10−1,10−2,10−3,10−4それぞれは、送電網1に含まれる電源設備(発電設備)の管理用として、当該電源設備の近傍に設けられている。また、この電源設備用のエージェント10は、他の電気設備の管理用として隣接して(周辺に)設けられている他のエージェントと通信可能である。他の電気設備としては、分散型電源設備、中継設備、蓄電池、需要電気設備がある。通信手段としては、電力線通信(PLC)を用いてもよく、また、無線、有線を問わず、既設又は新設のものである。
【0028】
エージェント10は、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されることで発揮される機能部として、図3に示しているように、電力量取得部11と、情報取得部12と、電源設備用の情報出力部13とを備えている。
【0029】
前記電力量取得部11は、自己が管理している電源設備から他の電気設備へと供給可能な電力量を取得する。図1の実施形態では、火力発電所P1用のエージェント10−1の電力量取得部11は、火力発電所P1の制御装置と通信可能であり、当該火力発電所P1が発電し送電所L1−1へと供給可能な電力量についての情報を刻々と取得する。図1の実施形態では、電力量「−80」を取得する。なお、電力量について、マイナスは流出させる(供給する)電力量を示し、プラスは流入する(需要する)電力量を示す。
【0030】
また、風力発電所S1用のエージェント10−2の電力量取得部11は、風力発電所S1の制御装置と通信可能であり、当該風力発電所S1が発電し送電所L2へと供給可能な電力量についての情報を刻々と取得する。図1の実施形態では、電力量「−20」を取得する。
【0031】
太陽光発電設備S2(S3)用のエージェント10−3(10−4)の電力量取得部11は、太陽光発電設備S2(S3)の制御装置と通信可能であり、当該太陽光発電設備S2(S3)が発電し送電器L4(L5)へと供給可能な電力量についての情報を刻々と取得する。図1の実施形態では、電力量「−20」(「−10」)を取得する。
【0032】
図3の前記情報取得部12は、電源設備の種別についての情報を取得する。電源設備の種別とは、火力、水力、風力または太陽光などについての電源種別(発電種別)である。情報取得部12は、この種別についての情報をエージェント10の設置の際に取得する。例えば、自己が管理する電源設備(発電設備)の情報として、情報取得部12へと管理者が情報入力する。
火力発電所P1用のエージェント10−1の情報取得部12は、電源種別についての情報として「火力発電」の情報を取得する。他のエージェント10においても同様に「風力発電」「太陽光発電」の情報を取得する。
【0033】
図3の前記情報出力部13は、他のエージェントと通信するための通信機能部であり、エージェント10を構成するコンピュータの通信インターフェースを通じて、各種情報の送受信が可能である。具体的には、情報出力部13は、前記電力量取得部11及び前記情報取得部12によって取得された前記電力量及び前記種別(電源種別)についての情報を、要求に応じて他のエージェントへ出力する。つまり、情報出力部13は、他のエージェントからの要求信号を受けると、当該他のエージェントに対して前記各情報を送信する。この際、自己(エージェント)の識別情報(ID)と共に送信する。
【0034】
例えば、図1において、送電所L1−1用のエージェント30−1が、隣接している火力発電所P1用のエージェント10−1の情報出力部13に対して、要求信号を送信すると、当該情報出力部13は、電源種別についての情報として「火力発電」及び供給可能な電力量についての情報として「−80」を、エージェント10−1の識別情報に対応付けて、送電所L1−1用のエージェント30−1に送信することができる。これにより、送電所L1−1用のエージェント30−1では、前記識別情報に対応付けられた各種情報を取得することが可能となる。
【0035】
同様に、風力発電所S1用のエージェント10−2の情報出力部13は、電源種別についての情報として「風力発電」及び供給可能な電力量についての情報として「−20」を、エージェント10−2の識別情報に対応付けて送信することができる。
また、太陽光発電設備S2(S3)用のエージェント10−3(10−4)の情報出力部13は、電源種別についての情報として「太陽光発電」及び供給可能な電力量についての情報として「−20」(「−10」)を、エージェント10−3(10−4)の識別情報に対応付けて送信することができる。
【0036】
以上の構成を備えた電源設備用のエージェント10によれば、電力量取得部11及び情報取得部12が取得した情報を、要求に応じて情報出力部13は他のエージェントへ出力することができるので、この情報を受けた他のエージェントでは、電源設備用のエージェント10が管理する電源設備から当該他のエージェントが管理する他の電気設備へと供給される電力量を、電源設備の種別と共に認識することができる。なお、この電源設備用のエージェント10は、送電網1の端部に位置する設備用として設けられていることから、端部(終端)エージェントとなる。
【0037】
〔3.蓄電池用のエージェントについて〕
蓄電池用のエージェント20−1,20−2それぞれは、送電網1に含まれる蓄電池B1,B2の管理用として設けられ、当該蓄電池B1,B2の近傍に設けられている。この蓄電池用のエージェント20は、他の電気設備の管理用として隣接して(周辺に)設けられている他のエージェントと通信可能である。他の電気設備としては、発電設備、分散型電源設備、中継設備、需要電気設備がある。通信手段としては、電力線通信(PLC)を用いてもよく、また、無線、有線を問わず、既設又は新設のものである。
【0038】
エージェント20は、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されることで発揮される機能部として、図4に示しているように、充電用電力量取得部21と、放電用電力量取得部22と、蓄電池用の情報出力部23とを備えている。
【0039】
前記充電用電力量取得部21は、蓄電池の制御装置と通信可能であり、蓄電池への充電に要する電力量を取得する。図1の実施形態では、蓄電池B1において充電が行われていることから、エージェント20−1の充電用電力量取得部21は、充電が行われる際に、送電器L4から供給される電力量であって、その充電に必要となる電力量(時間あたりの電力量)についての情報を刻々と、前記制御装置から取得する。
【0040】
前記放電用電力量取得部22は、蓄電池の制御装置と通信可能であり、蓄電池からの放電により他の電気設備へと供給可能な電力量を取得する。図1の実施形態では、蓄電池B2において放電が行われていることから、エージェント20−2の放電用電力量取得部22は、放電が行われている際に、当該蓄電池B2が放電することによって送電器L5へと供給可能な電力量についての情報を刻々と、前記制御装置から取得する。
図1の実施形態では、充電が行われている蓄電池B1に関して充電に必要となる電力量「5」が取得され、放電が行われている蓄電池B2に関して放電により供給可能となる電力量「−10」が取得される。
【0041】
図4の前記情報出力部23は、他のエージェントと通信するための通信機能部であり、エージェント20を構成するコンピュータの通信インターフェースを通じて、各種情報の送受信が可能である。具体的には、情報出力部23は、放電の際に、前記放電用電力量取得部22によって取得された前記電力量についての情報、及び、他の電気設備への電力供給が蓄電池の放電によるものであることを示す情報(前記電源種別)を、要求に応じて前記他のエージェントへ出力する。つまり、情報出力部23は、他のエージェントからの要求信号を受けると、当該他のエージェントに対して前記各情報を送信する。この際、自己(エージェント)の識別情報(ID)と共に送信する。また、エージェント20は蓄電池用であることから、前記電源種別についての情報として「蓄電池」を予め記憶しており、この情報を、要求に応じて出力する。
【0042】
例えば、蓄電池B2の管理用のエージェント20−2において、隣接している送電器L5用のエージェント30−6が、当該エージェント20−2の情報出力部23に対して、要求信号を送信すると、当該情報出力部23は、送電器L5へと供給可能な電力量についての情報として「−10」、及び、電源種別についての情報として「蓄電池」を、エージェント20−2の識別情報に対応付けて、送電器L5用のエージェント30−6に送信することができる。これにより、送電器L5用のエージェント30−6では、前記識別情報に対応付けられた各種情報を取得することが可能となる。
【0043】
以上の構成を備えた蓄電池用のエージェント20によれば、自己が管理する充電池の放電の際に、放電用電力量取得部22が取得した電力量についての情報及び他の電気設備への電力供給が蓄電池の放電によるものであることを示す情報を、要求に応じて他のエージェントへ出力するので、この情報を受けた他のエージェントでは、蓄電池から当該他のエージェントが管理する他の電気設備へと供給される電力量を認識することができる。なお、この蓄電池用のエージェント20は、送電網1の端部に位置する設備用として設けられていることから、端部(終端)エージェントとなる。
【0044】
〔4.需要電気設備用のエージェントについて〕
需要電気設備用のエージェント40−1,40−2,40−3それぞれは、送電網1に含まれる需要電気設備(工場M1,家屋M2,M3)の管理用として設けられ、当該需要電気設備の近傍に設けられている。この需要電気設備用のエージェント40は、他の電気設備の管理用として隣接して(周辺に)設けられている他のエージェントと通信可能である。他の電気設備としては、発電設備、分散型電源設備、中継設備、蓄電池がある。通信手段としては、電力線通信(PLC)を用いてもよく、また、無線、有線を問わず、既設又は新設のものである。
この需要電気設備用のエージェント40は、送電網1の端部に位置する設備用として設けられていることから、端部(終端)エージェントとなる。
【0045】
エージェント40は、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されることで発揮される機能部として、図5に示しているように、消費電力量取得部41と、需要電気設備用の情報出力部42とを備えている。
【0046】
前記消費電力量取得部41は、需要電気設備(工場M1,家屋M2,M3)における消費電力を監視しており(検出しており)、当該消費電力を取得する。図1の実施形態では、工場M1では産業活動により電気が消費されており、この工場M1用のエージェント40−1の消費電力量取得部41は、当該工場M1で消費している電力量についての情報を刻々と取得する。図1の実施形態では、電力量「120」を取得する。同様に、家屋M2(M3)用のエージェント40−2(40−3)の消費電力量取得部41は、当該家屋M2(M3)で消費している電力量についての情報を刻々と取得する。図1の実施形態では、電力量「5」(「10」)を取得する。
【0047】
図5の前記情報出力部42は、他のエージェントと通信するための通信機能部であり、エージェント40を構成するコンピュータの通信インターフェースを通じて、各種情報の送受信が可能である。具体的には、情報出力部42は、前記消費電力量取得部41によって取得された前記電力量についての情報を、要求に応じて他のエージェントへ出力する。つまり、情報出力部42は、他のエージェントからの要求信号を受けると、当該他のエージェントに対して前記情報を送信する。この際、自己(エージェント)の識別情報(ID)と共に送信する。
【0048】
例えば、図1に示す家屋M2の管理用のエージェント40−2において、隣接している送電器L4用のエージェント30−5が、当該エージェント40−2の情報出力部42に対して、要求信号を送信すると、当該情報出力部42は、家屋M2において消費している電力量についての情報として「5」を、エージェント40−2の識別情報に対応付けて、送電器L4用のエージェント30−5に送信することができる。これにより、送電器L4用のエージェント30−5では、前記識別情報に対応付けられた前記情報を取得することが可能となる。
【0049】
また、図1に示す家屋M3の管理用のエージェント40−3において、隣接している送電器L5用のエージェント30−6が、当該エージェント40−3の情報出力部42に対して、要求信号を送信すると、当該情報出力部42は、家屋M3において消費している電力量についての情報として「10」を、エージェント40−3の識別情報に対応付けて、送電器L5用のエージェント30−6に送信することができる。これにより、送電器L5用のエージェント30−6では、前記識別情報に対応付けられた前記情報を取得することが可能となる。
【0050】
〔5.中継設備用のエージェントについて〕
中継設備用のエージェント30−1、30−2、30−3、30−4、30−5、30−6それぞれは、送電網1に含まれる中継設備の管理用として、当該中継設備の近傍に設けられている。また、この中継設備用のエージェント30は、他の電気設備の管理用として隣接して(周辺に)設けられている他のエージェントと通信可能である。他の電気設備としては、発電設備、分散型電源設備、蓄電池、需要電気設備がある。通信手段としては、電力線通信(PLC)を用いてもよく、また、無線、有線を問わず、既設又は新設のものである。
この中継設備用のエージェント30は、送電網1の分岐部に位置する設備用として設けられていることから、分岐部エージェントとなる。
【0051】
エージェント30は、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されることで発揮される機能部として、図6に示しているように、流入電力情報取得部31と、流出電力情報取得部32と、中継設備用の情報出力部33とを備えている。
【0052】
前記流入電力情報取得部31は、自己が管理する中継設備に流入してくる流入電力量、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳(比率)を取得する。さらに、管理する対象となる中継設備が、複数の供給元から電力が流入してくる合流送電所となる中継設備では、この流入電力情報取得部31は、複数の供給元それぞれに関しての、前記流入電力量、及び、前記内訳を取得する。
図6の前記流出電力情報取得部32は、自己が管理する中継設備から、隣りの他の電気設備へと流出させる流出電力量を、電源種別毎に求める。この機能の具体例については後に説明する。
【0053】
図6の前記情報出力部33は、他のエージェントと通信するための通信機能部であり、エージェント30を構成するコンピュータの通信インターフェースを通じて、各種情報の送信が可能である。具体的には、情報出力部33は、前記流出電力情報取得部32によって求められた電源種別毎の流出電力量を、要求に応じて他のエージェントへ出力する。つまり、情報出力部33は、他のエージェントからの要求信号を受けると、当該他のエージェントに対して前記各情報を送信する。この際、自己(エージェント)の識別情報(ID)と共に送信する。つまり、情報出力部33は、前記流出電力量についての情報を、エージェント30の識別情報に対応付けて、他のエージェントに送信することができる。これにより、送信先の他のエージェントでは、前記識別情報に対応付けられた情報を取得することが可能となる。
【0054】
〔5.1 エージェント30−1について〕
送電所L1−1は、隣接する火力発電所P1から電力の供給を受けることが可能であることから、送電所L1−1用のエージェント30−1の流入電力情報取得部31は、送電所L1−1に流入してくる流入電力量として「80」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「80:火力発電」(すべて火力発電による電力)である旨の情報を取得する。
なお、流入電力量が「80」及びその内訳が「80:火力発電」である旨の情報は、エージェント30−1が火力発電所P1用のエージェント10−1に対して要求信号を送信して取得したものであり、上記のとおり、エージェント10−1の前記情報出力部13が出力したものである。
【0055】
そして、送電所L1−1用のエージェント30−1の流出電力情報取得部32は、自己が管理している送電所L1−1から、隣りの送電所L2へと流出させる流出電力量を電源種別毎に求める。本実施形態では、全てを流出させるので「80:火力発電」となる。
エージェント30−1の情報出力部33は、この流出電力情報取得部32によって求められた電源種別毎の流出電力量「80:火力発電」を、要求に応じて合流送電所L2のエージェント30−2へ出力することができる。
【0056】
〔5.2 エージェント30−2について〕
送電所L2は、隣接する送電所L1−1及び風力発電所S1から電力の供給を受けることが可能であることから、送電所L2用のエージェント30−2の流入電力情報取得部31は、送電所L1−1から送電所L2に流入してくる流入電力量として「80」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「80:火力発電」である旨の情報と、風力発電所S1から送電所L2に流入してくる流入電力量として「20」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「20:風力発電」である旨の情報と、を取得する。
【0057】
なお、流入電力量が「80」及びその内訳が「80:火力発電」である旨の情報は、エージェント30−2が送電所L1−1用のエージェント30−1に対して要求信号を送信して取得したものであり、上記のとおり、エージェント30−1の前記情報出力部33が出力したものである。
また、流入電力量が「20」及びその内訳が「20:風力発電」である旨の情報は、エージェント30−1が風力発電所S1用のエージェント10−2に対して要求信号を送信して取得したものであり、上記のとおり、エージェント10−2の前記情報出力部13が出力したものである。
【0058】
そして、送電所L2用のエージェント30−2の流出電力情報取得部32は、自己が管理している送電所L2から、隣りの送電所L3へと流出させる流出電力量を電源種別毎に求める。本実施形態では、全てを流出させるので「80:火力発電」「20:風力発電所」となる。
エージェント30−2の情報出力部33は、この流出電力情報取得部32によって求められた電源種別毎の流出電力量「80:火力発電」「20:風力発電所」を、要求に応じて分岐送電所L3のエージェント30−3へ出力することができる。
【0059】
〔5.3 エージェント30−5について〕
送電器L4は、太陽光発電設備S2及び蓄電池B1から電力の供給を受けることが可能であるが、蓄電池B1は充電中であるので、送電器L4用のエージェント30−5の流入電力情報取得部31は、送電器L4に流入してくる流入電力量として「20」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「20:太陽光発電」である旨の情報を取得する。
なお、流入電力量が「20」及びその内訳が「20:太陽光発電」である旨の情報は、エージェント30−5が太陽光発電設備S2用のエージェント10−3に対して要求信号を送信して取得したものであり、上記のとおり、エージェント10−3の前記情報出力部13が出力したものである。
【0060】
そして、送電器L4用のエージェント30−5の流出電力情報取得部32は、自己が管理している送電器L4から、隣りの送電所L3へと流出させる流出電力量を電源種別毎に求める。本実施形態では、全てを流出させるので、太陽光発電による「20」から蓄電池B1の充電のための消費電力「5」と家屋M2での電力消費「5」とを減算することにより「10:太陽光発電」となる。
エージェント30−5の情報出力部33は、この流出電力情報取得部32によって求められた電源種別毎の流出電力量「10:太陽光発電」を、要求に応じて分岐送電所L3のエージェント30−3へ出力することができる。
【0061】
〔5.4 エージェント30−6について〕
送電器L5は、太陽光発電設備S3及び蓄電池B2から電力の供給を受けることが可能であり、蓄電池B2は放電中であるので、送電器L5用のエージェント30−6の流入電力情報取得部31は、太陽光発電設備S3から送電器L5に流入してくる流入電力量として「10」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「10:太陽光発電」である旨の情報と、蓄電池B2から送電器L5に流入してくる流入電力量として「10」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「10:蓄電池」である旨の情報とを取得する。
【0062】
なお、太陽光発電設備S3からの流入電力量が「10」及びその内訳が「10:太陽光発電」である旨の情報は、エージェント30−6が太陽光発電設備S3用のエージェント10−4に対して要求信号を送信して取得したものであり、上記のとおり、エージェント10−4の前記情報出力部13が出力したものである。
また、蓄電池B2からの流入電力量が「10」及びその内訳が「10:蓄電池」である旨の情報は、エージェント30−6が蓄電池B2用のエージェント20−2に対して要求信号を送信して取得したものであり、上記のとおり、エージェント20−2の前記情報出力部23が出力したものである。
【0063】
そして、送電器L5用のエージェント30−6の流出電力情報取得部32は、自己が管理している送電器L5から、隣りの送電所L3へと流出させる流出電力量を電源種別毎に求める。本実施形態では、全てを流出させるので、家屋M3において「10」の電力消費(太陽光発電設備S3による「5」及び蓄電池B2による「5」の電力消費)がされておりこれを減算して、電源種別毎の流出電力量は「5:太陽光発電」「5:蓄電池」を求める。
エージェント30−6の情報出力部33は、この流出電力情報取得部32によって求められた電源種別毎の流出電力量「5:太陽光発電」「5:蓄電池」を、要求に応じて分岐送電所L3のエージェント30−3へ出力することができる。
【0064】
〔5.5 エージェント30−3について〕
送電所L3は、隣接する送電所L2、送電器L4及び送電器L5から電力の供給を受けることが可能であることから、送電所L3用のエージェント30−3の流入電力情報取得部31は、送電所L2から送電所L3に流入してくる流入電力量として「100」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「80:火力発電」「20:風力発電所」である旨の情報と、送電器L4から送電所L3に流入してくる流入電力量として「10」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「10:太陽光発電」である旨の情報と、送電器L5から送電所L3に流入してくる流入電力量として「10」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「5:太陽光発電」「5:蓄電池」である旨の情報と、を取得する。
このように、電力の流入元の電気設備が複数であるが、その流入元毎に情報を取得することができる。
【0065】
なお、送電所L2からの流入電力量が「100」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「80:火力発電」「20:風力発電所」である旨の情報は、エージェント30−3が送電所L2用のエージェント30−2に対して要求信号を送信して取得したものであり、上記のとおり、エージェント30−2の前記情報出力部33が出力したものである。
また、送電器L4からの流入電力量が「10」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「10:太陽光発電」である旨の情報は、エージェント30−3が送電器L4用のエージェント30−5に対して要求信号を送信して取得したものであり、上記のとおり、エージェント30−5の前記情報出力部33が出力したものである。
さらに、送電器L5からの流入電力量が「10」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「5:太陽光発電」「5:蓄電池」である旨の情報は、エージェント30−3が送電器L5用のエージェント30−6に対して要求信号を送信して取得したものであり、上記のとおり、エージェント30−6の前記情報出力部33が出力したものである。
【0066】
そして、送電所L3用のエージェント30−3の流出電力情報取得部32は、自己が管理している送電所L3から、隣りの送電所L1−2へと流出させる流出電力量を電源種別毎に求める。本実施形態では、全てを流出させるので、前記流入電力情報取得部31が取得した各情報((「80:火力発電」「20:風力発電所」「10:太陽光発電」「5:太陽光発電」「5:蓄電池」)を集計することにより得られ、その結果、「80:火力発電」「20:風力発電所」「15:太陽光発電」「5:蓄電池」となる。
エージェント30−3の情報出力部33は、この流出電力情報取得部32によって求められた電源種別毎の流出電力量「80:火力発電」「20:風力発電所」「15:太陽光発電」「5:蓄電池」を、要求に応じて送電所L1−2のエージェント30−4へ出力することができる。
【0067】
〔5.6 エージェント30−4について〕
送電所L1−2は、隣接する送電所L3から電力の供給を受けることが可能であることから、送電所L1−2用のエージェント30−4の流入電力情報取得部31は、送電所L1−2に流入してくる流入電力量として「120」、及び、当該流入電力量の電源種別毎の内訳として「80:火力発電」「20:風力発電所」「15:太陽光発電」「5:蓄電池」である旨の情報を取得する。
なお、流入電力量が「120」及びその内訳が「80:火力発電」「20:風力発電所」「15:太陽光発電」「5:蓄電池」である旨の情報は、エージェント30−4が送電所L3用のエージェント30−3に対して要求信号を送信して取得したものであり、上記のとおり、エージェント30−3の前記情報出力部33が出力したものである。
【0068】
そして、送電所L1−2用のエージェント30−4の流出電力情報取得部32は、自己が管理している送電所L1−2から、隣りの工場M1へと流出させる流出電力量を電源種別毎に求めるが、本実施形態では全てを流出させるので、「80:火力発電」「20:風力発電所」「15:太陽光発電」「5:蓄電池」となる。
エージェント30−4の情報出力部33は、この流出電力情報取得部32によって求められた電源種別毎の流出電力量「80:火力発電」「20:風力発電所」「15:太陽光発電」「5:蓄電池」を、要求に応じて工場M1のエージェント40−1へ出力することができる。
【0069】
以上の構成を備えた中継設備用のエージェント30によれば、自己が管理する中継設備に流入してくる流入電力量及びその流入電力量の電源種別毎の内訳を、流入電力情報取得部31が取得することができるので、当該中継設備において、流入してくる流入電力量を電源種別毎に認識することができる。しかも、電力の流入元の設備が複数である場合にその流入元毎に認識(取得)することができる。
また、流出電力情報取得部32が求めた電源種別毎の流出電力量を、要求に応じて他のエージェントへ出力することで、これを受けた他のエージェントでは、中継設備用のエージェント30が管理する中継設備から当該他のエージェントが管理する他の電気設備へと供給される(流出させる)電力量を、電源設備の種別毎に認識することができる。
【0070】
上記のようなエージェント10,20,30,40を複数含むスマートグリッドシステムを構築することにより、各エージェントは、隣り(周辺)のエージェントから、電力量の情報と、その電力量の供給先(出所)の内訳(比率)についての情報とを得ることができる。つまり、各エージェント(特に中継設備用のエージェント30)は、自己が管理する設備に供給された電力は、どのような発電設備によって発電された電力であるかを認識することが可能となる。そして、これら情報を、別の(隣りの)エージェントに与えることができるので、従来のように電力会社のホストコンピュータが多数の電気設備を一元的に管理する必要がなくなるため、従来よりもきめ細かな電力の流入流出に関する管理が可能となる。
【0071】
例えば、図1において、家屋M2が第1の都市に含まれており、家屋M3が別である第2の都市に含まれている場合、第1の都市では晴天であるが、第2の都市は曇であっても、第1の都市では太陽光発電による電力を有効に工場M1などへ給電することが可能となる。これに対して、従来のマスタースレーブ型のシステムでは、このような都市ごとの制御は困難となる。
【0072】
また、図1に示している状態から、さらに、例えば送電所L1−2の下流側に、別の送電所及び工場(図示せず)が新設されたり、送電網1の一部に他の発電所が新設された場合であっても、本発明によれば、送電所、工場、発電所それぞれを管理するエージェントを追加すればよい。そして、上記実施形態のとおり、隣り合うエージェント間で情報の送受信を行うことで、電力の流入流出に関する管理が可能となる。すなわち、送電網1のトポロジの変更にも柔軟に対応することが可能となる。
【0073】
〔6. エージェントの動作について〕
以上の構成を備えたスマートグリッドシステムに含まれるエージェントの動作の具体例について説明する。
〔6.1 動作例1〕
工場M1と送電線を介して繋がっている送電所L1−2用のエージェント30−4は、その隣り(電力の供給方向で言えば上流側に隣り)の送電所L3用のエージェント30−3と通信可能である。送電所L3から送電所L1−2への供給電力量は「120」である。そして、この供給電力量の内訳は、上記のとおり「80:火力発電」「20:風力発電所」「15:太陽光発電」「5:蓄電池」である。そして、工場M1での消費電力が「120」である。
ここで、電力の単価として、火力発電が7円/kW時、風力発電が5円/kW時、太陽光発電が48円/kW時、蓄電池が48円/kW時であるとする。
【0074】
工場M1における消費電力が「100」に減少し、これをエージェント40−1が認識し、エージェント30−4を通じて、エージェント30−3にこの情報が通知されたとする。この場合、エージェント30−3は、電力の単価が様々である発電設備のうち、電力の単価が高い発電設備による電力から順に、供給を停止するための処理を行う。つまり、本実施形態では、エージェント30−3は、単価が最も高い蓄電池による電力を供給しているエージェント30−6と、次に高い太陽光発電による電力を供給しているエージェント30−5とに対して、給電を中止(減少)させるべく、その旨の情報を送信する。
【0075】
この場合、図7に示しているように、エージェント30−5は、エージェント20−1と協働して、蓄電池B1を充電するための電力量を増加させる制御を行い、送電所L3へ供給する電力量をゼロとする。そして、エージェント30−6は、エージェント20−2と協働して、蓄電池B1による給電を停止させる制御を行い、送電所L3へ供給する電力量をゼロとする。以上より、工場M1では、単価が比較的安い火力発電と風力発電とによる電力を利用することが可能となる。
【0076】
〔6.2 動作例2(電力料金のネゴシエーション)〕
また、電源設備用のエージェント10(情報出力部13)は、隣接する他のエージェントに対して、電力の単価(電力価格)についての情報を出力することができる。そして、この情報を受けた他のエージェント(情報出力部)は、隣接するさらに他のエージェントに対して、電力の単価についての情報を出力することができる。これにより、全てのエージェントが、電力設備毎の電力の単価の情報を取得することができる。
【0077】
例えば、「送電器L4から送電所L3への供給電力の単価が高い」と当該送電所L3用のエージェント30−3が判定すると、当該エージェント30−3(情報出力部33)はエージェント30−5に対して、自己が管理する送電所L3への給電は不要である旨の情報(要求情報)を出力する。
この場合、エージェント30−5は、エージェント20−1と協働して、蓄電池B1の充電量に応じた処理を行う。つまり、エージェント20−1は、蓄電池B1がまだ十分に充電することが可能であるか否かを判定し、充電可能であると判定すると、前記要求情報を受諾し、エージェント30−5と協働して、送電所L3への送電を停止し、その代わりに蓄電池B1への充電を行う。これに対して充電不可能であると判定すると、エージェント20−1は蓄電池B1による電力の単価を下げる処理を行い、その旨の情報を、エージェント30−5を通じて、エージェント30−3へ送信する。エージェント30−3が、この電力の単価の低減を受諾すると、その旨の情報を、エージェント30−5を通じてエージェント20−1へ送信し、単価を下げた電力を、蓄電池B1から送電所L3へ供給する(販売する)。この結果、安価な電力を優先して供給することができる。
【0078】
〔6.3 動作例3(電力料金のネゴシエーション)〕
前記〔6.1 動作例1〕で説明したように、工場M1における消費電力量が「120」から「100」に減少した場合において、エージェント40−1から、エージェント30−4,30−3を通じて、エージェント30−2が、給電過多の情報を取得したとする。なお、本実施形態(図8参照)では、送電所L2から送電所L3への供給電力量が「85」でよいとする。また、上記のとおり、電力の単価は、火力発電が7円/kW時、風力発電が5円/kW時である。
【0079】
この場合、エージェント30−2は、火力発電による電力の単価が、風力発電による場合よりも高いため、火力発電所P1からの給電量を制限する旨、及び、その制限量の情報を、エージェント30−1を通じて、エージェント10−1へ通知する。本実施形態では、火力発電所P1からの供給量を「65」に制限する旨の情報が通知される。これにより、図8に示しているように、送電所L2から送電所L3への供給電力量が、火力発電所P1から「65」と風力発電所から「20」との合計「85」となる。この結果、安価な電力を優先して供給することができる。
【0080】
上記の実施形態はすべて例示であり本発明の範囲を制限するものではない。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での変更が含まれる。
前記各実施形態では、エージェントを、各種プログラムを備えたコンピュータとして説明したが、各エージェントは、センサと、このセンサからの出力を処理するコンピュータ(又はプログラマブルロジックコントローラ)とから構成してもよい。
【0081】
また、前記実施形態では、エージェント10,20,30,40の全てを、しかもそれぞれのエージェントを複数設けた場合を説明したが、本発明のスマートグリッドシステムに含まれるエージェントには、エージェント10,20,30のうちの少なくとも一つのエージェントと、需要電気設備用のエージェント40とが含まれていればよい。例えば、蓄電池を含まない送電網である場合、蓄電池用のエージェントは不要となる。
【符号の説明】
【0082】
1:送電網、 P1:火力発電所、 B1:蓄電池、 B2:蓄電池、 S1:風力発電所、 S2:太陽光発電設備、 S3:太陽光発電設備、 L1−1:送電所、 L1−2:送電所、 L2:送電所、 L3:送電所、 L4:送電器、 L5:送電器、 M1:工場、 M2:家屋、 M3:家屋、 10:電源設備用のエージェント(エージェント装置)、 11:電力量取得部、 12:情報取得部、 13:情報出力部、 20:蓄電池用のエージェント(エージェント装置)、 21:充電用電力取得部、 22:放電用電力取得部、 23:情報出力部、 30:中継設備用のエージェント(エージェント装置)、 31:流入電力情報取得部、 32:流出電力情報取得部、 33:情報出力部、 40:需要電気設備用のエージェント(エージェント装置)、 41:消費電力量取得部、 42:情報出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電網に含まれる電源設備の管理用として設けられ、他の電気設備の管理用として周辺に設けられている他のエージェント装置と通信可能な電源設備用のエージェント装置であって、
前記電源設備から前記他の電気設備へと供給可能な電力量を取得する電力量取得部と、
前記電源設備の種別についての情報を取得する情報取得部と、
取得された前記電力量及び前記種別についての情報を、要求に応じて前記他のエージェント装置へ出力する情報出力部と、
を備えていることを特徴とする電源設備用のエージェント装置。
【請求項2】
送電網に含まれる蓄電池の管理用として設けられ、他の電気設備の管理用として周辺に設けられている他のエージェント装置と通信可能な蓄電池用のエージェント装置であって、
前記蓄電池への充電に要する電力量を取得する充電用電力量取得部と、
前記蓄電池からの放電により前記他の電気設備へと供給可能な電力量を取得する放電用電力量取得部と、
放電の際に、前記放電用電力量取得部によって取得された前記電力量及び前記他の電気設備への電力供給が前記蓄電池の放電によるものであることを示す情報を、要求に応じて前記他のエージェント装置へ出力する情報出力部と、
を備えていることを特徴とする蓄電池用のエージェント装置。
【請求項3】
送電網に含まれる中継設備の管理用として設けられ、他の電気設備の管理用として周辺に設けられている他のエージェント装置と通信可能な中継設備用のエージェント装置であって、
前記中継設備に流入してくる流入電力量及び当該流入電力量の電源種別毎の内訳を取得する流入電力情報取得部と、
前記中継設備から流出させる流出電力量を電源種別毎に求める流出電力情報取得部と、
前記流出電力情報取得部によって求められた電源種別毎の流出電力量を、要求に応じて前記他のエージェント装置へ出力する情報出力部と、
を備えていることを特徴とする中継設備用のエージェント装置。
【請求項4】
送電網に含まれる各設備の管理用として設けられているエージェント装置を複数備えたスマートグリッドシステムであって、
前記エージェント装置に、請求項1〜3の少なくとも一項に記載のエージェント装置が含まれていることを特徴とするスマートグリッドシステム。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエージェント装置として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−249380(P2012−249380A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117846(P2011−117846)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】