説明

電熱ヒータ付きハンドル用グリップ部材

【課題】合成ゴムのモールドの際及びモールド後に、給電線やその接続部分に加わる応力を回避する。
【解決手段】シート状電気発熱体5をコア本体1の表面に接着し、シート状電気発熱体5に電線7を接続し、コア本体1の円弧状の端縁に沿ってリング状部2を形成し、円弧状のベース部材13をリング状部2に沿って取り付け、ベース部材13上に引き込んだ電線7と電線7の電気発熱体5への接続部分とを、円弧状のカバー部材14によって覆う。このように組み立てたコア本体1の内外面、リング状部2の外面、ベース部材13の外面、カバー部材14の外面に合成ゴムをモールドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートバイ、スノーモービル等のグリップに用いる電熱ヒータ付きハンドル用グリップ部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オートバイ、スノーモービル等のハンドルの合成ゴム製グリップには、例えば特許文献1に示すように、握り手を暖める電熱ヒータが内蔵されていることがある。この電熱ヒータには、給電線を半田付けや溶接等により電気的に接続し、シート状の電気発熱体を、円筒状の合成樹脂製コアの表面に付設して、周囲をコア共々合成ゴムによりモールドして覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−67366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オートバイ等の速度調整に際しては、グリップをその軸線を中心に回転させるために、グリップ内の電熱ヒータへの給電線は軸線を中心として円弧状に配置することが好ましい。
【0005】
しかしモールドの際に、加熱溶融合成ゴムの射出に伴い金型内の電気発熱体と給電線端部との間に、位置ずれ、反発、変形、熱膨張、冷却収縮等が生じたり、或いはモールド中又はモールド後に給電線に外部から引張力が加わることにより、給電線端部の半田付けや溶着等の接続部分に大きな応力がかかって、断線などが発生し易いという問題がある。
【0006】
特に、可撓性電気絶縁シートに発熱源を配して形成したシート状発熱体を、筒状の合成樹脂製コアの表面に接着剤で接着した場合には、前述のモールドの際の問題が顕著に現れる。
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、合成ゴムのモールドの際及びモールド後に、給電線に加わる応力の発生を回避し得る電熱ヒータ付きハンドル用グリップ部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するための本発明に係る電熱ヒータ付きハンドル用グリップ部材は、円筒体又は半円筒体から成るコア本体の表面にシート状の電気発熱体を接着し、該電気発熱体に給電線を接続したグリップ部材において、前記コア本体の円弧状の端縁に沿ってリング状部を一体に形成し、円弧状のベース部材を前記リング状部に沿って取り付け、前記ベース部材上に引き込んだ前記給電線と前記給電線の前記電気発熱体への接続部分を、前記給電線を収容する電線溝を有する円弧状のカバー部材によって覆い、前記電気発熱体を接着した前記コア本体の内外面、前記リング状部の外面、前記ベース部材の外面、前記カバー部材の外面を合成ゴムによりモールドしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電熱ヒータ付きハンドル用グリップ部材によれば、グリップ端部の給電線、接続部分を円弧状のベース部材、カバー部材により覆っているので、合成ゴムのモールドの際に電気発熱体に少々の位置ずれ、反発、変形、熱膨張、冷却収縮等が生じても、或いはモールド中又はモールド後に給電線に外部から引張力が加わっても、給電線には大きな応力がかかることはなく、断線などが生ずる虞れは少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電熱ヒータ付きハンドル用グリップ部材の斜視図である。
【図2】コアと電熱ヒータを分離した状態の斜視図である。
【図3】電熱ヒータを分解した状態の斜視図である。
【図4】コア本体の内面の斜視図である。
【図5】電気発熱体の縁部を重ね合わせて固定した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例の斜視図、図2はコア本体と電熱ヒータを分離した状態の斜視図、図3は電熱ヒータの分解斜視図である。グリップの骨格部材となるコア本体1は、合成樹脂材により半円筒状に成形され、コア本体1の基端にリング状部2、端末にリング状部3が設けられ、コア本体1の外面には電熱ヒータ4が接着されている。
【0012】
電熱ヒータ4はシート状電気発熱体5と電線カバー6と電線7とから成っている。コア本体1の外面の両端近傍には、それぞれヒータ定着用突子8が外側に向けて一体に突設され、コア本体1の両長手方向外縁に、シート状電気発熱体5の両縁を挿入する一対の支持溝9が相互に内向きに形成されている。また、コア本体1の基端のリング状部2の外面適所には、給電線である電線7を支持する係止爪10aを付設した一対の挟止片10が保持部として対向して配置されている。
【0013】
シート状電気発熱体5では、コア本体1の外面に適合する適宜な大きさと形状を備え、可撓性を有し円弧状に弯曲された合成樹脂製の電気絶縁板11の片面に電熱線12が貼り付けられている。この電熱線12は電気絶縁板11に、例えば1枚のSUS(不銹鋼)箔を接着剤で貼り付けた後に、このSUS箔全体をハーフカットで適宜に打ち抜きして不要部を除去することにより、長くて細い電気抵抗線による電熱線12が、一連の蛇行状又はジグザク状に電気絶縁板11のほぼ全面に分布するよう形成され、コア本体1の外面に接する側に配置されている。なお、電気絶縁板11の厚みは200μm程度、電熱線12の厚みは30μm程度とされている。
【0014】
電熱線12の両端部12a、12bは電気絶縁板11の基端部11aに配され、この基端部11a及びその反対側の末端部11bの近傍には、それぞれコア本体1のヒータ定着用突子8が嵌合する定着用透孔11cが穿孔されている。
【0015】
更に、電熱線12の両端部12a、12bには電線7が接続されている。電線7は絶縁被覆が施された2本の給電線7a、7bの外側に、共通の絶縁外被が施されたものであり、端部の絶縁外被を剥ぎ、更に各給電線7a、7bの先端の絶縁被覆を剥いで、露出した芯線を電熱線12の両端部12a、12bにそれぞれ半田付けや溶着することにより電気的な接続がなされている。
【0016】
電気絶縁板11の基端部11aには、コア本体1の基端のリング状部2に適合する角筒状の電線カバー6が円弧状に装着されている。この電線カバー6は、電気絶縁板11の基端部11aの内面側に当接し、電線7と電熱線12の両端部12a、12bとの接続部分を覆う幅広いベース部材13と、その外面側に被せて電線7を覆うU字状の溝を有する幅狭のカバー部材14との結合から成っている。
【0017】
ベース部材13の一端部には、カバー部材14の一端部内に入り込む電線受台13aが一体に形成され、この電線受台13aの先端面とこの先端面に対峙するカバー部材14内の対応面には、電線7の絶縁外被を挟持して固定する複数の突条から成る電線挟持部13b、14aがそれぞれ形成されている。また、電線受台13aの両側面には一対の係合凹部13cが形成され、この一対の係合凹部13cに対応するカバー部材14の一端部の両側壁内面には、対応する一対の係合凸部14bが形成されていて、互いに嵌合して係止するようになっている。
【0018】
電気絶縁板11の基端部11aの中央部分には、アンカ突子挿入孔11dが穿孔されており、基端部11aの隅部には電線受台13aに対応する切欠部11eが設けられ、ベース部材13にはアンカ突子挿入孔11dに嵌挿するアンカ突子13dが形成されている。
【0019】
また、ベース部材13のアンカ突子13dに隣接する位置には、コア本体1のヒータ定着用突子8が挿入される位置決め透孔13eが穿孔されている。
【0020】
電熱ヒータ4の組み立てに際しては、ベース部材13を電気絶縁板11の基端部11aの内面側に給電線7a、7bの接続部分を覆うように当接し、ベース部材13から突出するアンカ突子13dを電気絶縁板11のアンカ突子挿入孔11dに嵌挿し、電線7をベース部材13上に位置させて、その上からカバー部材14を被着する。更に、カバー部材14の一端部をベース部材13の電線受台13aに嵌合して、係合凹部13cと係合凸部14bとを係合させる。
【0021】
これにより、電線7の接続部分がベース部材13により覆われ、更に電線7の絶縁外被が電線挟持部13b、14aにより相互に挟持固定され、電線7は電線カバー6内に保持される。なお、この場合に電線7の接続部分は、電気絶縁板11とコア本体1との間に挟み込み、電線7のみを電線カバー6内に保持するようにしてもよい。
【0022】
次に、このように構成した電熱ヒータ4を、コア本体1の外面に接着剤を用いて取り付ける。このとき、電気絶縁板11の2つの定着用透孔11c及びベース部材13の位置決め透孔13eをコア本体1の2つのヒータ定着用突子8にそれぞれ嵌合し、シート状電気発熱体5の両縁をそれぞれコア本体1の支持溝9に挿入して位置決めする。更に、表出する電線7の一部をコア本体1の一対挟止片10の係止爪間に嵌挿し定位置におく。その後に、電熱ヒータ4上に突出しているコア本体1のヒータ定着用突子8の先端を溶融し、電熱ヒータ4が抜け出さないようにする。
【0023】
また必要に応じて、電気絶縁板11と電線カバー6の間、ベース部材13とカバー部材14の間、電線7とコア本体1の挟止片10間に、エポキシ接着剤等を充填して相互に強固に固定する。更に、半円筒形のコア本体1の切欠部に、同様の半円筒形状のコア半部を付設して組み立てた電熱ヒータ4付きのコア本体1の内外面に、射出成型により合成ゴムをモールドする。
【0024】
このように電線カバー6では、ベース部材13側の係合凹部13cとカバー部材14側の係合凸部14bとを係合させるので、カバー部材14をベース部材13に対し安定かつ強固に固定できると共に、電線挟持部13b、14a相互により電線7を挟持固定でき、コア本体1の基端のリング状部2に一対の係止爪10a付きの挟止片10を設けているので、電線カバー6外に引き出した電線7を安定して支持することができる。
【0025】
このように構成した電熱ヒータ4付きのコア本体1に合成ゴムのモールドを施す際には、加熱溶融合成ゴムの射出に伴う金型内でのシート状電気発熱体5と給電線7a、7bとの間の位置ずれ、反発、変形等を回避でき、たとえ各部に多少の熱膨張、冷却収縮等が生じたとしても、或いはモールド中又はモールド後に電線7に引張力が加わるようなことがあっても、電線カバー6の存在によって給電線7a、7bの接続端部及び半田付け部分に大きな応力がかかることはなく、断線が生ずるようなことはない。また、電線カバー6の電線挟持部13b、14aにより電線7を挟持しているので、合成樹脂材が電線カバー6内に入り込むこともない。
【0026】
モールドの際に、コア本体1の内面には、モールド合成ゴムとの固着力を高めるために、図4に示すように、多数の長短の長溝15が互い違いに配されているので、コア本体1へのモールド合成ゴムの固着力を高めることができ、コア本体1と合成ゴム間のずれを抑制することができる。
【0027】
なお、上述の実施例では、コア本体1と電熱ヒータ4のシート状電気発熱体5とを半円筒状に形成しているが、これらは円筒状に形成してもよい。
【0028】
この場合には図5に示すように、支持溝9を用いずに、シート状電気発熱体5'を両縁で重なる状態で円筒に形成し、重なった両縁の両端近傍にそれぞれ共通の2組の定着用透孔11c'を形成して、これらの定着用透孔11c'を円筒状のコア本体1'の端部近傍から一体に突設されたヒータ定着用突子8にそれぞれ挿入し位置決めすることができる。
【0029】
なお、この場合でも支持溝9を用いて、電気発熱体5'の両縁を固定してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 コア本体
4 電熱ヒータ
5 シート状電気発熱体
6 電線カバー
7 電線
7a、7b 給電線
11 電気絶縁板
12 電熱線
13 ベース部材
14 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体又は半円筒体から成るコア本体の表面にシート状の電気発熱体を接着し、該電気発熱体に給電線を接続したグリップ部材において、前記コア本体の円弧状の端縁に沿ってリング状部を一体に形成し、円弧状のベース部材を前記リング状部に沿って取り付け、前記ベース部材上に引き込んだ前記給電線と前記給電線の前記電気発熱体への接続部分を、前記給電線を収容する電線溝を有する円弧状のカバー部材によって覆い、前記電気発熱体を接着した前記コア本体の内外面、前記リング状部の外面、前記ベース部材の外面、前記カバー部材の外面を合成ゴムによりモールドしたことを特徴とする電熱ヒータ付きハンドル用グリップ部材。
【請求項2】
前記カバー部材の電線溝に収容した前記給電線を前記ベース部材の挟持部により挟み込んで保持する請求項1に記載の電熱ヒータ付きハンドル用グリップ部材。
【請求項3】
前記カバー部材から外部に引き出された前記給電線を、前記リング状部に設けた一対の挟止片により保持する請求項1に記載の電熱ヒータ付きハンドル用グリップ部材。
【請求項4】
前記コア本体の内面に多数の長短の長溝を形成して、これらの長溝を互い違いに配置し、前記合成ゴムの前記コア本体への固着力を高めた請求項1に記載の電熱ヒータ付きハンドル用グリップ部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−1024(P2010−1024A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231709(P2009−231709)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【分割の表示】特願2004−9323(P2004−9323)の分割
【原出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【出願人】(390005430)株式会社ホンダアクセス (205)