説明

電球位置調整装置および照明器具

【課題】位置調整の際の操作性を確保でき、保持部61に保持したハロゲン電球35の位置を繊細にかつ少なくとも光軸方向に大きく調整できる電球位置調整装置36を提供する。
【解決手段】第2および第3の移動機構64,65を、保持部61と第2および第3の調整摘み68,69との間に亘って、第1の移動機構63により保持部61を移動させる光軸方向に伸縮可能に接続する。第1の移動機構63によって保持部61とともにハロゲン電球35を光軸方向に移動させた際に、第2および第3の移動機構64,65が伸縮して第2および第3の調整摘み68,69との接続を維持する。保持部61とともにハロゲン電球35を移動させても第1ないし第3の調整摘み67,68,69の位置が変わることがなく、位置調整の際の操作性を確保できる。第1ないし第3の移動機構63,64,65によって、保持部61とともにハロゲン電球35の位置を繊細に、かつ、少なくとも光軸方向に大きく調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電球を保持する保持部とともに電球の位置を調整する電球位置調整装置およびこれを備えた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば舞台、映画、あるいはスタジオなどの演出空間において使用され、映画あるいはテレビジョン番組などの撮影用途に用いるスポットライトなどの照明器具がある。このような照明器具として、ハロゲン電球を光源とし、このハロゲン電球からの光を反射体である反射鏡(放物ミラー)により集光した光を照射するビームスポットライトが知られている。このようなビームスポットライトは、反射鏡に対するハロゲン電球の位置が配光に大きく影響を与えるので、電球の位置を調整するための電球位置調整装置(電球位置調整機構)が配置されている。この電球位置調整装置は、電球を保持する保持部に対してねじが螺合されており、このねじの端部は、電球および反射鏡を収容する灯体に設けられた取付面から突出して、この取付面に配置された被操作部としての摘みと接続されている。そして、使用者は、この摘みを回転操作することによるねじ送りによって、保持部とともに電球の位置を調整可能となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3009005号公報(第7−9頁、図1および図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、図6(a)に示すように、電球1の位置を多方向に調整可能とするために、保持部(ソケット)2を同軸の摘み3,4により固定し、摘み3を緩めて横方向(X軸方向)および縦方向(Y軸方向)をフレキシブルに調整し、さらに摘み4の操作によるねじ送りを利用して前後方向(Z軸方向)に保持部2の位置を調整する電球位置調整装置5がある。しかしながら、この構成の場合、保持部2と摘み3,4とが1本の軸で繋がっており、調整の操作性が良好である反面、電球1の位置の微調整が容易でない。また、例えば出力が2kW以上の大型の照明器具になると、電球1および保持部2も大型化し重くなるため、調整が困難になるという問題がある。
【0005】
また、図6(b)に示すように、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向にそれぞれ単独の調整軸6,7,8を備える電球位置調整装置9もある。この構成は、X軸方向およびY軸方向の調整軸6,7,8をそれぞれZ軸方向に動かすものである。しかしながら、この構成の場合、電球1の位置の微調整も可能できめ細かな調整が可能であるものの、保持部2がZ軸方向に移動する際にはX軸方向およびY軸方向の調整軸6,7も一体的に移動するため、必然的にそれを調整するための摘み10,11も動いてしまう。そのため、X軸方向およびY軸方向の調整用の摘み10,11と、Z軸方向の調整用の摘み12とを同一の取付面上に配置できず、操作性が良好でなく、これら摘み10,11,12を照明器具の外面に配置する場合には、X軸方向およびY軸方向の調整用の摘み10,11のZ軸方向への移動を考慮した構成としなければならないという問題がある。このような電球位置調整装置9は、特に保持部2のZ軸方向の移動量を多くとりたい照明器具の場合、Z軸方向への移動によって摘み10,11が照明器具内に潜り込むこととなるため、このような照明器具には適さない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、位置調整の際の操作性を確保でき、保持部に保持した電球の位置を繊細にかつ少なくとも第1方向に大きく調整できる電球位置調整装置およびこれを備えた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の電球位置調整装置は、第1ないし第3の被操作部と;可動的に設けられ、電球を保持する保持部と;この保持部と第1の被操作部とに亘って接続され、この第1の被操作部の操作により保持部を所定の第1方向に沿って移動させる第1の移動機構と;保持部と第2および第3の被操作部とに亘って第1方向に沿って伸縮可能に接続され、第2および第3の被操作部の操作により保持部を第1方向に対してそれぞれ交差する互いに異なる第2方向および第3方向へとそれぞれ移動させる第2および第3の移動機構と;を具備しているものである。
【0008】
本発明および以下の発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0009】
第1ないし第3の被操作部は、例えば回転可能な摘みなどであり、使用者が外部操作可能となっている。
【0010】
保持部は、例えば電源部に対して電気的に接続されたピン孔を備えたソケットなどを含む。
【0011】
第1ないし第3の移動機構は、それぞれ例えばねじ送りによって保持部とともに電球を移動させるものである。
【0012】
第1方向は、例えば電球の光軸方向とする。
【0013】
第2および第3方向は、例えば電球の光軸方向にそれぞれ互いに直交する方向とする。
【0014】
請求項2記載の照明器具は、請求項1記載の電球位置調整装置と;この電球位置調整装置の第1ないし第3の被操作部が配置される取付面を備え、電球位置調整装置を保持する器具本体と;電球位置調整装置の保持部に保持された電球と;この電球からの光を反射させる反射面を内部に備え、器具本体に配置された反射体と;を具備しているものである。
【0015】
器具本体は、例えば筒状に形成されており、一端側に平面状の取付面を備えている。
【0016】
電球としては、例えば長手状のバルブを有するハロゲン電球が用いられる。
【0017】
反射体は、例えば拡開状に形成された放物面、あるいは楕円面などの曲面を反射面とする反射ミラーである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の電球位置調整装置によれば、第2および第3の移動機構を、保持部と第2および第3の被操作部との間に亘って、第1の移動機構により保持部を移動させる第1方向に伸縮可能に接続することで、第1の移動機構によって保持部とともに電球を第1方向に移動させた際に、第2および第3の移動機構が伸縮して第2および第3の被操作部との接続を維持するので、保持部とともに電球を移動させても第1ないし第3の被操作部の位置が変わることがなく、位置調整の際の操作性を確保できるとともに、第1ないし第3の移動機構によって、保持部とともに電球の位置を繊細に、かつ、少なくとも第1方向に大きく調整できる。
【0019】
請求項2記載の照明器具によれば、請求項1記載の電球位置調整装置を備えることで、位置調整の際の操作性を確保でき、保持部に保持された電球の位置を繊細に、かつ、少なくとも第1方向に大きく調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態の電球位置調整装置を示し、(a)は電球位置調整装置の平面図、(b)は電球位置調整装置の側面図、(c)は電球位置調整装置の背面図である。
【図2】同上電球位置調整装置を備えた照明器具の縦断側面図である。
【図3】同上照明器具の正面図である。
【図4】同上照明器具の側面図である。
【図5】同上照明器具の背面図である。
【図6】従来例の電球位置調整装置を示し、(a)は第1の従来例の電球位置調整装置の縦断側面図、(b)は第2の従来例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1は電球位置調整装置を示し、(a)は電球位置調整装置の平面図、(b)は電球位置調整装置の側面図、(c)は電球位置調整装置の背面図、図2は電球位置調整装置を備えた照明器具の縦断側面図、図3は照明器具の正面図、図4は照明器具の側面図、図5は照明器具の背面図である。
【0023】
図2ないし図5において、21は照明器具を示し、この照明器具21は、例えば舞台、映画、あるいはスタジオなどの演出空間において使用され、映画あるいはテレビジョン番組などの撮影用途に用いる(ビーム)スポットライトである。そして、この照明器具21は、器具本体22、この器具本体22をスタジオあるいは舞台などの天井に設置されるバトン(図示せず)に対して吊下げ支持する器具支持体23、および光照射範囲を制限するバンドア24を備えている。
【0024】
器具本体22は、筒状の本体部26、およびこの本体部26の前部に取り付けられた複数であって4つの保持体27を備えており、例えばアルミニウムなどの放熱性に優れた金属部材により形成されている。そして、この器具本体22は、第1方向としての光軸方向である前後方向(Z軸方向)に沿って長手状に形成されている。
【0025】
本体部26は、八角形筒状の第1の本体である後部本体31と、この後部本体31の前部に位置する円筒状の第2の本体である前部本体32と、これら後部本体31と前部本体32とを連結する連結部33とを一体に有している。そして、この本体部26の内部には、電球であるハロゲン電球35、このハロゲン電球35の位置を調整する電球位置調整装置36、ハロゲン電球35の点灯用の電源を供給する電源部37、ハロゲン電球35からの光を前方へ向けて反射させる反射体としての放物ミラー38、この放物ミラー38の前部に位置する半透過部材としてのガラス39、およびこのガラス39の前方に位置するレンズ40が配置されている。
【0026】
後部本体31は、前後方向に沿って軸方向を有しており、前部本体32と反対側である後端部が閉塞板42により閉塞されている。また、後部本体31の下部には取手43が前後両端にそれぞれ取り付けられている。さらに、後部本体31の下部の一側には、電源コード44が接続される端子部45が取り付けられている。そして、後部本体31の上部および下部の各側部には、放熱用の複数の開口46が形成されている。
【0027】
閉塞板42は、平板状に形成されており、器具本体22の後部に露出する後面が、器具本体22の後面を構成する平面状の取付面48となっている。
【0028】
また、前部本体32は、後部本体31の前方にこの後部本体31と同軸に形成されており、後部本体31の最大外形よりも大きい径寸法を有している。
【0029】
また、連結部33は、後部本体31側である後側から前部本体32側である前側へと徐々に拡径するように形成されている。さらに、この連結部33には、放熱用の複数の開口部51が放射状にそれぞれ形成されている。
【0030】
また、ハロゲン電球35は、例えば2kW程度の定格ランプ電力を有するものであり、長手状のバルブ53と、このバルブ53に収容されたフィラメント54とを備えている。
【0031】
バルブ53は、例えば石英ガラスなどの光透過性部材により形成されており、一端部(基端部)である後端側が封止された封止部53aとなり他端部(先端部)である前端側が排気チップオフ部53bとなる、いわゆる片封止形バルブであり、内部に不活性ガスおよびハロゲンガスが封入されている。
【0032】
また、フィラメント54は、バルブ53の中心軸に沿って長手方向に配置されており、図示しない支持部材であるサポーターによってバルブ53内に保持されている。サポーターは、バルブ53の封止部53aに埋設された封止金属箔を介して図示しない端子ピンと電気的に接続されている。これら端子ピンは、バルブ53の後端側からこのバルブ53の外部へと導出されており、封止金属箔およびサポーターとともにバルブ53に固定されている。
【0033】
また、電球位置調整装置36は、図1(a)ないし図1(c)に示すように、ハロゲン電球35を保持する保持部61、この保持部61の下方に位置する保持部材としての取付板62、この取付板62に保持されて保持部61に接続された第1ないし第3の移動機構63,64,65およびガイド軸66、および、第1ないし第3の移動機構63,64,65に接続された第1ないし第3の被操作部としての第1ないし第3の調整摘み67,68,69を備えている。そして、この電球位置調整装置36は、図2に示すように、支持体としての支持ブラケット70を介して器具本体22の後部本体31内の後端の下部に支持されており、この後部本体31内に収容されている。
【0034】
図1(a)ないし図1(c)に示す保持部61は、前後方向(Z軸方向)に移動可能な第1の移動部としてのベース部73と、このベース部73に対して第2方向としての第1光軸交差方向である左右方向(X軸方向)に回動可能に連結された第2の移動部としての左右回動部74と、この左右回動部74に対して第3方向としての第2光軸交差方向である上下方向(Y軸方向)に回動可能に連結された第3の移動部としての上下回動部75とを有している。そして、この上下回動部75には、ソケット76が一体的に保持されている。このソケット76には、ハロゲン電球35の端子ピンが挿入されることで電気的に接続される図示しないピン孔が形成されている。これらピン孔は、電源部37と電気的に接続されている。
【0035】
左右回動部74は、平板状の第2の移動部本体としての左右回動部本体74aと、この左右回動部本体74aの左右両側から上方へと突出する第2の移動部本体側板としての側板部74b,74bとを一体に有する正面視U字状に形成されており、左右回動部本体74aの左右方向の中心近傍において、ベース部73に対して第2方向回動軸である左右回動軸78を介して連結されている。この左右回動軸78は、平面視でハロゲン電球35の中心軸と同軸上に位置している。
【0036】
また、上下回動部75は、平板状の第3の移動部本体としての上下回動部本体75aと、この上下回動部本体75aの左右両側から上方へと突出する第3の移動部本体側板としての側板75b,75bとを有する正面視U字状に形成されており、左右回動部74の側板部74b,74b間に位置している。そして、この上下回動部75は、側板75b,75bがそれぞれ側板部74b,74bに対して第3方向回動軸である上下回動軸79を介して連結されている。これら上下回動軸79は、ハロゲン電球35の中心軸よりも僅かに上方に位置している。
【0037】
また、取付板62は、前後方向に長手状の保持部材本体としての取付板本体62aと、この取付板本体62aの前後両端から上方へとそれぞれ垂直状に突出する一方および他方の取付部としての前側板部62bおよび後側板部62cとを一体に有する側面視U字状に形成されている。取付板本体62aは、支持ブラケット70上に一体的に固定されている。また、後側板部62cは、前側板部62bよりも上方へと突出している。
【0038】
また、第1の移動機構63は、保持部61を前後方向に沿って移動させるためのものであり、長尺状の第1の移動軸(第1の調整軸)である第1のねじ部81、および、この第1のねじ部81を付勢する付勢部材であるコイルばね82を備えている。第1のねじ部81は、前後方向に沿って配置されており、先端部が取付板62の前側板部62bに回動可能に軸支されているとともに、基端側が取付板62の後側板部62cに回動可能に挿通されて基端部が第1の調整摘み67と接続され、中間部から先端側寄りの部分が雄ねじ状に形成され、ベース部73に挿通されて螺合されている。すなわち、この第1のねじ部81は、保持部61(ベース部73)と第1の調整摘み67との間に亘って接続されている。また、コイルばね82は、第1のねじ部81の基端側寄りの外周に突設された鍔部83と取付板62の後側板部62cとの間に介在されており、第1のねじ部81を前方に向けて付勢している。なお、この第1の移動機構63によりハロゲン電球35(保持部61)を光軸方向である前後方向に移動可能な距離は、例えばフィラメント54の長さと同じ距離とする。
【0039】
また、第2の移動機構64は、保持部61の左右回動部74および上下回動部75をベース部73に対して左右回動軸78を中心として左右方向に回動させて移動させるためのものであり、長尺状の第2の移動軸(第2の調整軸)である第2のねじ部85、および、この第2のねじ部85と接続される一方の接続軸86を備えている。
【0040】
第2のねじ部85は、第1のねじ部81の上方の側部に位置しており、先端部が一方の回動体87を介して左右回動部74の外側部に接続され、基端側が一方の接続軸86に同軸状に挿入され、先端側寄りの中間部が雄ねじ状に形成され、ベース部73に取り付けられた一方の保持体88に一方の軸受89を介して螺合されている。また、この第2のねじ部85の基端側には、一方の接続部としての一方のスライド軸90(一方のみ図示)が互いに反対の位置で径方向に突出している。
【0041】
一方の回動体87は、左右回動部74の一方の側板部74bの外側部に固定された一方の固定体92に左右方向に回動可能に軸支されている。
【0042】
また、一方の接続軸86は、基端側が取付板62の後側板部62cに対して回動可能に挿通されて基端部が第2の調整摘み68と接続され、先端側が開口している。また、この一方の接続軸86には、第2のねじ部85の一方のスライド軸90がそれぞれ挿入されてガイドされる一方の接続受部としてのスリット94(一方のみ図示)が先端側から軸方向に平行な直線状に切り欠き形成されている。
【0043】
したがって、第2の移動機構64は、第2のねじ部85が一方の接続軸86に対して相対的に前後方向へと移動可能な二重構造となっていることにより、保持部61(左右回動部74)と第2の調整摘み68との間に亘って、前後方向に伸縮可能に接続されている。
【0044】
同様に、第3の移動機構65は、保持部61の上下回動部75を左右回動部74に対して上下回動軸79を中心として上下方向に回動させるためのものであり、長尺状の第3の移動軸(第3の調整軸)である第3のねじ部96、および、この第3のねじ部96と接続される他方の接続軸97を備えている。
【0045】
第3のねじ部96は、第1のねじ部81の上方の側部で、かつ第2のねじ部85と反対側に位置しており、先端部が他方の回動体99を介して上下回動部75に接続され、基端側が他方の接続軸97に同軸状に挿入され、先端側寄りの中間部が雄ねじ状に形成され、ベース部73に他方の保持体100に他方の軸受101を介して螺合されている。また、この第3のねじ部96の基端側には、互いに反対の位置で他方の接続部としての他方のスライド軸102,102が径方向に突出している。
【0046】
他方の回動体99は、上下回動部75の上下回動部本体75aの下部に左右方向に回動可能に軸支された他方の固定体104に対して、上下方向に回動可能に軸支されている。
【0047】
また、他方の接続軸97は、基端側が取付板62の後側板部62cに対して回動可能に挿通されて基端部が第3の調整摘み69と接続され、先端側が開口している。また、この他方の接続軸97には、第3のねじ部96の他方のスライド軸102,102が挿入される他方の接続受部としてのスリット106,106が先端側から軸方向に平行な直線状に切り欠き形成されている。
【0048】
したがって、第3の移動機構65は、第3のねじ部96が他方の接続軸97に対して相対的に前後方向へと移動可能な二重構造となっていることにより、保持部61(上下回動部75)と第3の調整摘み69との間に亘って、前後方向に伸縮可能に接続されている。
【0049】
また、ガイド軸66は、保持部61の前後方向への移動をガイドするものであり、第1の移動機構63の第1のねじ部81と平行に配置され、両端部が取付板62の前側板部62bおよび後側板部62cに固定されている。
【0050】
また、第1の調整摘み67は、第1のねじ部81と同軸状に位置し、器具本体22の閉塞板42の後面である取付面48に回動可能に軸支されている。
【0051】
同様に、第2および第3の調整摘み68,69は、第2および第3のねじ部85,96および一方および他方の接続軸86,97と同軸状に位置し、器具本体22の閉塞板42の後面である取付面48に回動可能にそれぞれ軸支されている。
【0052】
したがって、第1ないし第3の調整摘み67,68,69は、同一の取付面48上に位置している。
【0053】
また、図2に示す放物ミラー38は、内部に回転二次曲面状の反射面である放物面38aを有しており、この放物面38aの中央部に、放物面38aの回転軸すなわちハロゲン電球35の光軸方向に沿ってハロゲン電球35が挿入される挿入孔38bが形成されている。そして、この放物ミラー38は、後側から前側へと徐々に拡開するように形成されており、器具本体22の後部本体31から連結部33を介して前部本体32の後端部近傍に亘って収容されている。
【0054】
挿入孔38bは、断面円形状に形成されており、ハロゲン電球35の封止部53aが放物ミラー38の外部、すなわち放物面38aと反対側である後側に突出し、ハロゲン電球35の排気チップオフ部53bおよびフィラメント54が放物ミラー38の放物面38a側である前側に位置するようにハロゲン電球35が挿入される通孔である。この挿入孔38bに挿入されたハロゲン電球35は、フィラメント54が放物面38aの焦点位置と重なるように位置が調整されている。
【0055】
また、ガラス39は、放物ミラー38の前端部を覆って、すなわちハロゲン電球35の光軸方向と交差する方向に沿って取り付けられ、器具本体22の前部本体32に収容されている。さらに、このガラス39の例えば後側、すなわち放物ミラー38側には、ハロゲン電球35からの可視光を透過し赤外光(赤外線)を反射する赤外線反射膜39aが形成されている。
【0056】
また、レンズ40は、前側に凸状に湾曲して形成されており、取付ブラケット108を介して前部本体32の前端部を閉塞するように固定されている。さらに、このレンズ40の発光面である前面は、保護部材であるレンズ保護網109(図3)により保護されている。
【0057】
また、図2ないし図5に示す各保持体27は、例えば器具本体22の前部本体32の前端部の上下および左右の4箇所に取り付けられ、この前部本体32の前端部およびレンズ40よりも前方に突出している。さらに、これら保持体27の間には、バンドア24が回動可能に取り付けられるバンドア取付部111が着脱可能に保持されている。このバンドア取付部111は、レンズ40の前面を露出させるように枠状に構成されている。
【0058】
また、器具支持体23は、器具本体22の後部本体31の前端部の両側に取り付けられる軸部材113,114、これら軸部材113,114を介して回動可能に支持するアーム115を有し、アーム115によってスタジオあるいは舞台などのバトンに吊下げ支持されている。
【0059】
次に、照明器具21および電球位置調整装置36の動作を説明する。
【0060】
電源部37(図5)を介して電源コード44(図4)から給電されて発光したハロゲン電球35からの光は、図2に示す放物ミラー38の放物面38aにより反射され、可視光はガラス39を通過した後、レンズ40を介して前方へと照射され、赤外光(赤外線)はガラス39の赤外線反射膜39aにより反射された後、放物ミラー38の放物面38aによりさらに反射されてハロゲン電球35のフィラメント54に回帰し、このフィラメント54を加熱して活性化させる。照射面に対して光を照射する範囲は、バンドア24の開閉により調整される。
【0061】
図1に示すハロゲン電球35の光軸方向である前後方向の位置を調整する際には、使用者が第1の調整摘み67を回動させると、この第1の調整摘み67に接続された第1の移動機構63の第1のねじ部81が回動することで、この第1のねじ部81と螺合しているベース部73が前後方向にねじ送りされる。したがって、このベース部73に取り付けられた左右回動部74、およびこの左右回動部74に取り付けられた上下回動部75とともにソケット76が前後方向に移動することで、このソケット76に取り付けられたハロゲン電球35が前後方向に移動する。
【0062】
このとき、第2および第3の移動機構64,65では、ベース部73に取り付けられた一方および他方の保持体88,100に対して一方および他方の軸受89,101を介して固定された第2および第3のねじ部85,96がベース部73と一体的に前後方向に移動する。これら第2および第3のねじ部85,96は、各一方および他方のスライド軸90,102が各一方および他方の接続軸86,97のスリット94,106にそれぞれ挿入されていることにより、取付板62(閉塞板42)側に位置する一方および他方の接続軸86,97に対して第2および第3のねじ部85,96の位置が相対的に前後する。したがって、第2および第3の移動機構64,65が前後方向に伸縮することで、第1の移動機構63による保持部61(ハロゲン電球35)の前後方向への移動が吸収され、一方および他方の接続軸86,97すなわち第2および第3の調整摘み68,69の前後方向の位置は、第1の移動機構63による保持部61(ハロゲン電球35)の前後方向への移動量に拘らず、第1の調整摘み67の前後方向の位置とともに取付面48に対して不変となる。
【0063】
また、ハロゲン電球35の左右方向の位置を調整する際には、使用者が第2の調整摘み68を回動させると、この第2の調整摘み68に接続された第2の移動機構64の一方の接続軸86が回動することで、この一方の接続軸86の各スリット94に各一方のスライド軸90がそれぞれ挿入されている第2のねじ部85が一方の接続軸86と一体的に同方向に回動する。そして、この第2のねじ部85の回動により、第1のねじ部81との螺合によって前後方向の位置が固定されているベース部73(一方の軸受89)に対して第2のねじ部85の先端部が相対的に進退し、この第2のねじ部85の先端部と接続されている一方の回動体87が前後に押動されることで、左右回動部74が左右回動軸78を中心としてベース部73に対して左右方向に回動される。したがって、この左右回動部74とともに上下回動部75およびこの上下回動部75に取り付けられたソケット76が一体的に左右方向に回動することで、このソケット76に取り付けられたハロゲン電球35が左右方向に移動する。
【0064】
このとき、第1の移動機構63は、第1のねじ部81がベース部73に取り付けられているため、左右回動部74および上下回動部75(ソケット76)の回動とは無関係に一定の位置を保つ。また、第2の移動機構64は、左右回動部74の左右方向の回動に対応して一方の回動体87が左右回動部74(一方の固定体92)に対して反対方向に回動することにより、第2のねじ部85が一方の接続軸86と同軸上の位置を保つ。さらに、第3の移動機構65は、左右回動部74の左右方向の回動に対応して他方の固定体104が左右回動部74に対して反対方向に回動することにより、第3のねじ部96が他方の接続軸97と同軸上の位置を保つ。
【0065】
また、ハロゲン電球35の上下方向の位置を調整する際には、使用者が第3の調整摘み69を回動させると、この第3の調整摘み69に接続された第3の移動機構65の他方の接続軸97が回動することで、この他方の接続軸97のスリット106,106に他方のスライド軸102,102が挿入されている第3のねじ部96が他方の接続軸97と一体的に同方向に回動する。そして、この第3のねじ部96の回動により、第1のねじ部81との螺合によって前後方向の位置が固定されているベース部73(他方の軸受101)に対して第3のねじ部96の先端部が相対的に進退し、この第3のねじ部96の先端部と接続されている他方の回動体99が前後に押動されることで、上下回動部75が上下回動軸79を中心として左右回動部74に対して上下に回動される。したがって、この上下回動部75とともにこの上下回動部75に取り付けられたソケット76が上下方向に一体的に回動することで、このソケット76に取り付けられたハロゲン電球35が上下方向に移動する。
【0066】
このとき、第1の移動機構63は、第1のねじ部81がベース部73に取り付けられているため、上下回動部75(ソケット76)の回動とは無関係に一定の位置を保つ。また、第2の移動機構64は、第2のねじ部85が左右回動部74およびベース部73に取り付けられているため、上下回動部75(ソケット76)の回動とは無関係に一定の位置を保つ。さらに、第3の移動機構65は、上下回動部75の上下方向の回動に対応して他方の回動体99が上下回動部75に対して反対方向に回動することにより、第3のねじ部96が他方の接続軸97と同軸上の位置を保つ。
【0067】
上記の第1ないし第3の移動機構63,64,65による位置の調整を組み合わせることで、保持部61(ソケット76)とともにハロゲン電球35の放物ミラー38に対する位置を三次元的に調整できる。
【0068】
このように、上記一実施の形態によれば、第2および第3の移動機構64,65を、保持部61と第2および第3の調整摘み68,69との間に亘って、第1の移動機構63により保持部61を移動させる光軸方向に伸縮可能に接続することで、第1の移動機構63によって保持部61とともにハロゲン電球35を光軸方向に移動させた際に、第2および第3の移動機構64,65が伸縮して光軸方向への移動量を吸収し、第2および第3の調整摘み68,69との接続を維持する。このため、保持部61とともにハロゲン電球35を移動させても第1ないし第3の調整摘み67,68,69の位置が変わることがない。換言すれば、保持部61の移動方向および移動量に拘らず、第1ないし第3の移動機構63,64,65(第1ないし第3の調整摘み67,68,69)が独立して位置を保ち、同一の取付面48上に第1ないし第3の調整摘み67,68,69を位置させることができるので、位置調整の際の操作性を確保できる。すなわち、上記一実施の形態では、第1ないし第3の調整摘み67,68,69の位置が同一の取付面48上で不変であるから、使用者は、第1ないし第3の調整摘み67,68,69の操作量に拘らず、それらの位置を逐一確認することなく操作でき、例えばハロゲン電球35の位置を目視確認しながら第1ないし第3の調整摘み67,68,69を操作することなども可能となるので、ハロゲン電球35の位置の調整が容易になる。
【0069】
そして、同一の取付面48上に位置する第1ないし第3の調整摘み67,68,69を操作することにより、第1ないし第3の移動機構63,64,65によって、保持部61とともにハロゲン電球35の位置を繊細に、かつ、光軸方向に大きく調整できる。すなわち、第1の移動機構63によって保持部61とともにハロゲン電球35を光軸方向に大きく移動させても、第2および第3の調整摘み68,69の操作性が低下することがない。
【0070】
特に、保持部61およびハロゲン電球35を光軸方向に移動させる際に、第2および第3の調整摘み68,69が取付面48とともに光軸方向に移動することなどがないため、器具本体22をこのような移動を考慮した構成とする必要がなく、照明器具21(器具本体22)の構成を簡略化できる。
【0071】
また、ハロゲン電球35の位置を繊細に調整できる電球位置調整装置36を備えるため、この電球位置調整装置36によって、ハロゲン電球35のフィラメント54の位置と放物ミラー38の焦点の位置とを精度よく調整できるので、優れた配光の照明器具21を提供できる。
【0072】
なお、上記一実施の形態において、保持部61とともにハロゲン電球35を第2および第3の移動機構64,65により左右方向および上下方向に移動させることができれば、回動によって移動させる構成に限定されるものではない。
【0073】
また、ハロゲン電球35は、前後方向に沿って長手方向を有するように放物ミラー38の挿入孔38bに挿通してソケット76に保持する構成だけでなく、例えば上下方向に沿って長手方向を有するように放物ミラー38の反射面に対向させてソケット76に保持する構成などでもよい。
【0074】
さらに、電球としては、ハロゲン電球35以外でも、例えば放電灯などを用いてもよい。
【0075】
また、反射体は、放物ミラー38以外でも、例えば楕円面などを反射面として有する任意の構成とすることができる。
【0076】
そして、第1ないし第3の移動機構63,64,65により保持部61(電球)を移動させる方向は、前後方向、左右方向および上下方向に限定されず、互いに交差(直交)する任意の三軸方向とすることができる。
【符号の説明】
【0077】
21 照明器具
22 器具本体
35 電球であるハロゲン電球
36 電球位置調整装置
38 反射体としての放物ミラー
38a 反射面である放物面
61 保持部
63 第1の移動機構
64 第2の移動機構
65 第3の移動機構
67 第1の被操作部としての第1の調整摘み
68 第2の被操作部としての第2の調整摘み
69 第3の被操作部としての第3の調整摘み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ないし第3の被操作部と;
可動的に設けられ、電球を保持する保持部と;
この保持部と第1の被操作部とに亘って接続され、この第1の被操作部の操作により保持部を所定の第1方向に沿って移動させる第1の移動機構と;
保持部と第2および第3の被操作部とに亘って第1方向に沿って伸縮可能に接続され、第2および第3の被操作部の操作により保持部を第1方向に対してそれぞれ交差する互いに異なる第2方向および第3方向へとそれぞれ移動させる第2および第3の移動機構と;
を具備していることを特徴とする電球位置調整装置。
【請求項2】
請求項1記載の電球位置調整装置と;
この電球位置調整装置の第1ないし第3の被操作部が配置される取付面を備え、電球位置調整装置を保持する器具本体と;
電球位置調整装置の保持部に保持された電球と;
この電球からの光を反射させる反射面を内部に備え、器具本体に配置された反射体と;
を具備していることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−51068(P2013−51068A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187355(P2011−187355)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】