説明

電界発光灯

【目的】 有機分散型電界発光灯の高輝度、高効率化を目的とする。
【構成】 電界発光灯の絶縁層2において、粒径1μm以上のチタン酸バリウムなどの高誘電体粒子2aと粒径0.6μm以下のチタン酸バリウムなどの小粒径の高誘電体粒子2bを混合し、有機バインダ中に分散して絶縁層を形成したことを特徴とする。
【効果】 2種類の異なる粒径の高誘電体粒子を絶縁層2に用いることにより小粒子が隙間を埋める結果、絶縁層2の誘電率、反射率が向上し、高輝度、高効率化を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電界発光灯に関し、特に液晶ディスプレイのバックライト等に利用される有機分散型電界発光灯の絶縁層に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の有機分散型電界発光灯の構造について図面を参照して説明する。
【0003】図6は従来の電界発光灯20の要部拡大断面図である。図のようにアルミ箔からなる背面電極11上に絶縁物(例えば、チタン酸バリウムのような高誘電体粉末)および蛍光体(例えば、硫化亜鉛を銅で活性化した発光体)を有機バインダ(例えば、シアノエチルセルロース)中にそれぞれ分散したものを順次塗布して絶縁層12、発光層13を形成し、その上に集電帯(図示せず)を印刷した透明導電フィルム等からなる透明電極14を設けた電界発光灯素子17を、上下より吸湿フィルム(例えば、ナイロン(デュポン社商標))15、15で覆い、更に上下から防湿性の外皮フィルム(例えば、フッ素フィルム)16、16で密閉封止した構造を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記構造の電界発光灯において、絶縁層12は発光層に効果的に電界を与えるための高誘電体層であり、蛍光体の発光を効率良く反射させるための反射層であり、発光層の耐圧を確保する絶縁層である。しかし、従来、絶縁層に用いる高誘電体は1〜2μmの粒径を有するチタン酸バリウムであるが、平均粒径が比較的大きいとか、粒径のバラツキが大きい等の理由により、図7のように粒子が最密充填状態でも直径の約10%の隙間18が生じ、それ故絶縁層12の誘電率、反射率が向上せず、高輝度、高効率化を実現することが困難であった。その対策として、非常に小粒径のチタン酸バリウムで絶縁層を形成し隙間を減少させるという方法があるが、小粒径のチタン酸バリウムは非常に高価であり、かつ分散性が悪く凝集しやすいためその使用が困難であった。
【0005】本発明の目的は、絶縁層を改良し高輝度、高効率の電界発光灯を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための技術手段として本発明は、背面電極、絶縁層、発光層及び透明電極を有する電界発光素子を電極からリードを導出した状態で上下から外皮フィルムで挟着封止した電界発光灯において、前記絶縁層が、粒径1μm以上のチタン酸バリウムなどの高誘電体粒子Pと粒径0.6μm以下のチタン酸バリウムなどの高誘電体粒子Qとを含むことを特徴とする。
【0007】また、前記高誘電体粒子Pを50wt%以上含み、かつ前記高誘電体粒子Qを1wt%以上50wt%未満含むことを特徴とする。
【0008】
【作用】安価な1〜2μmのチタン酸バリウムに0.6μm以下の小粒径チタン酸バリウムを小量混ぜ込むことにより粒子間の隙間を埋めて絶縁層の誘電率や反射率を向上し、コスト増を抑制しつつ電界発光灯の高輝度、高効率化を実現でき、また、低電圧低周波駆動ができるため寿命向上にもつながる。
【0009】
【実施例】以下、本発明について図面を参照して説明する。
【0010】図1は本発明の電界発光灯10の一実施例の要部拡大断面図である。図においてアルミ箔等からなる背面電極1上に通常の粒径のチタン酸バリウム(A)2aと小粒径チタン酸バリウム(B)2bからなる高誘電体を有機バインダ中に分散させたもの及び蛍光体を有機バインダ中に分散させたものを塗布し、それぞれ絶縁層2、発光層3を形成し、その上に透明電極(例えば、透明導電フィルム)4を設けた電界発光素子7を、直接または吸湿フィルム5、5を介して、上下から防湿性の外皮フィルム6、6で封止している。なお、透明電極4、背面電極1からリードがそれぞれ外部に導出されている(図示せず)。
【0011】ここで、前記絶縁層2に使用したチタン酸バリウムA、Bの粒径、混合割合及びこれらの絶縁層を使用した電界発光灯の輝度等についての実験結果を示す。
【0012】○使用材料:チタン酸バリウムA(平均粒径 約1.5μm:MAX 2.5μm、MIN 0.7μm、全粒子の90%以上が1〜2μm)、チタン酸バリウムB(小粒子:4種類)、シアノエチルプルランなお、チタン酸バリウムA、Bの混合比率とBの4種類の粒径は表1の通りである。
【0013】
【表1】


【0014】○作製方法:有機溶剤中にチタン酸バリウムA、B混合品75wt%、シアノエチルプルラン25wt%の割合で混ぜ込み絶縁層用インクを作製し、ドクターブレード法により絶縁層を形成した。
【0015】○実験結果:図3に小粒子の添加率とEL輝度の関係を示す。
【0016】即ち、小粒子の添加率を増すにつれて絶縁層のチタン酸バリウムの空洞が埋まり、誘電率や反射率が向上し、電界発光灯の輝度が向上する。なお、効果が顕著にみられるのは既存粒子粒径の約10%以下の平均粒径を有するチタン酸バリウムを添加した時であり、その小粒子を数wt%以上添加することにより輝度が向上し、約20wt%以上添加することにより添加した小粒子の粒径に応じた最高輝度が得られ、従来のチタン酸バリウム(平均粒径1.5μm)単独に比べると輝度で約1.5倍向上させることができる。
【0017】また、図4には上記実験で0.1μmのチタン酸バリウムを20wt%添加した素子の輝度が50、100、150cd/m2 の時の駆動電圧と駆動周波数の関係を示す。すなわち本発明による電界発光灯は同一輝度において低電圧、低周波駆動ができ寿命向上を果たすこともできる。上記の実験結果から、輝度改善効果のある小粒子の平均粒径Dと添加率Nの範囲は、例えば輝度改善効果が10%以上の場合は図5の右上がりの実線による斜線部で、5%以上改善は左上がりの破線による斜線部で表せる。なお、添加率の上限はコストの制約他を考慮して50wt%未満が妥当である。
【0018】また、上記実施例では、チタン酸バリウムAの最大粒径が2.5μmのものを使用したが、これより大粒径のものであっても本発明の効果はかわらない。また、小粒径の平均粒径として最小0.1μmのものを使用したが、0.1μm以下の平均粒径のものでも十分効果があることは本発明の作用と図3の結果から明らかである。
【0019】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれば安価な主たる粒径が1〜2μmのチタン酸バリウムに0.6μm以下の小粒径のチタン酸バリウムを1wt%以上50wt%未満混ぜ込むことにより粒子間の隙間を埋め、絶縁層の誘電率や反射率をあげ、電界発光灯の高輝度、高効率化を実現できる。また、低電圧低周波駆動ができるため寿命も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる電界発光灯の一実施例を示す要部拡大断面図
【図2】 本発明の電界発光灯に使用したチタン酸バリウムの粒径分布を示す図
【図3】 本発明による電界発光灯の小粒子の添加率と輝度の関係を示す図
【図4】 本発明による電界発光灯を所定の輝度で発光させた時の駆動電圧と周波数の関係を示す図
【図5】 本発明による輝度改善効果と小粒子の平均粒径と添加率の関係を示す図
【図6】 従来の電界発光灯の要部拡大断面図
【図7】 絶縁層の粒子の最密充填状態を示す模式図
【符号の説明】
1 背面電極
2 絶縁層
2a チタン酸バリウム
2b チタン酸バリウム(小粒子)
3 発光層
4 透明電極
5 吸湿フィルム
6 外皮フィルム
7 電界発光素子
10 電界発光灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】背面電極、絶縁層、発光層および透明電極を有する電界発光素子を電極からリードを導出した状態で上下から外皮フィルムで挟着封止した電界発光灯において、前記絶縁層が、粒径1μm以上の高誘電体粒子Pと粒径0.6μm以下の高誘電体粒子Qとを含むことを特徴とする電界発光灯。
【請求項2】前記高誘電体粒子Pを50wt%以上含み、かつ前記高誘電体粒子Qを1wt%以上50wt%未満含むことを特徴とする請求項1記載の電界発光灯。
【請求項3】前記高誘電体粒子がチタン酸バリウムであることを特徴とする請求項1および請求項2記載の電界発光灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−5366
【公開日】平成6年(1994)1月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−157833
【出願日】平成4年(1992)6月17日
【出願人】(000156950)関西日本電気株式会社 (26)